ベースライン調査とは

前向きコホート観察研究を開始するにあたって、「ベースライン」の調査が行われます。

ベースライン調査
調査対象:要因と疾病罹患との関連を調べる研究では、注目している疾病には罹患していない人々を対象とする。当該疾病の既往歴がある者は、因果関係の逆転が起きている可能性があるので除外する。人数は、数千人から数万人のことが多い。検出力は疾病の発生数に強く依存するので、罹患率の低い疾病ほど、追跡期間が短いほど、調査人数は多数必要となる。想定している母集団からの無作為抽出であることが望ましいが、実行可能性から有作為標本にならざるを得ないことが多い。
項目:記述疫学や横断研究によって設定された疫学的仮説や、症例・対照研究や先行研究の結果も考慮して、注目している疾病との関連が疑われる項目について調査項目を決め、その時点における曝露状況を調べる。出生前コホートの場合は、アウトカムが出生時の項目であれば妊娠中の調査、アウトカムが生後のものであれば妊娠中の出生時の調査である。(出生前コホート研究マニュアル https://www.niph.go.jp/soshiki/07shougai/birthcohort/data/part1.pdf)

コホート研究では最初にベースライン調査を行い、対象者の曝露状況を把握します。そして、その集団を追跡し、その後の帰結の発生の有無を把握し、ベースラインデータで曝露群/非曝露群に分けてそれぞれの群での帰結の発生頻度を比較し、曝露と帰結の関係を明らかにするものです。多数の対象者を追跡して帰結の発生の有無を確認するので、1つのコホート研究で1つの曝露/1つの帰結のみの観察というのは稀で、ベースラインで多くの項目のデータを入手し、さまざまな帰結に対して評価を行うのが一般的です。このときに、1人の対象者が曝露Aの解析では曝露群、曝露Bの解析では非曝露群となることもよくあります。(コホート研究(cohort studies)疫学入門〜疾病の原因と病の関係性を明らかにするための考え方)

追跡開始に先立って実施する「ベースライン調査」における身体活動に関連するメイン指標として、これまでに「有酸素能力」、「有酸素能力以外の体力」を測定している。(東京ガススタディ 運動疫学研究 2011;13(2):151-159.

654 名からなる多施設ぜん息コホートのベースラインの臨床情報は、2010 年 3 月から 2014 年 4 月の間に収集されている。症例ごとに登録基準日が設定されており、その時点でのベース ライン臨床情報として、患者背景 (年齢, 性別, BMI, 喫煙歴, 発症経過, 発症年齢, 罹患年数, 家族歴, ペット飼育歴, 病型 (アトピー/非アトピー))、併存症 (胃食道逆流症, アレルギー性鼻 炎, 副鼻腔炎, COPD, NSAIDs 過敏症, 精神疾患)、治療内容 (治療ステップ, 吸入/経口ステロ イド量, 気管支拡張薬, 抗 IgE 抗体)、コントロール状態 (ぜん息コントロールテスト, 治療下 での重症度)、呼吸機能 (スパイロメトリー, 強制オシレーション法)、気道炎症 (呼気一酸化窒 素濃度, 末梢血好酸球数・比率, 血清ペリオスチン値, 血清 TGF-β 値)、アトピー素因 (血清総 IgE 値, ハウスダスト・ヤケヒョウヒダニ・スギ特異的 IgE)などが既に収集されている。(気管支ぜん息の動向等に関する調査研究 https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/investigate/pdf/29-3-1-2_01.pdf)