自殺者数に関する科研費研究採択課題57件

スポンサーリンク

KAKENデータベースで「自殺者数」で検索した結果です。概要の文章中の太字や下線は自分が自分の勉強のために付したものです。

  1. 生きづらさを抱える自殺企図者への多職種協働支援~好事例集積と支援プログラム構築~ 2021-04-01 – 2025-03-31 寺岡 征太郎 和洋女子大学, 看護学部, 准教授 (30626015) 小区分58060:臨床看護学関連 基盤研究(C) 研究開始時の概要:自殺者数自体は減少傾向にあるが、新型コロナウイルス感染症の流行によって「生きづらさ」を感じている人が増え、自殺者数が再び増加することが危惧されている。特に、自殺未遂者が再企図によって自殺完遂に至るケースが多いことからも、「生きづらさ」を感じている自殺企図者に対する多職種連携・協働を軸とした手厚い支援が不可欠といえる。
    そこで本研究では、①自殺企図者の「生きづらさ」に対応する多職種協働を基盤とした支援の実態調査(good practice事例の集積)、②再企図抑止を目的とした多職種協働支援プログラムの作成と試行に取り組む。 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  2. 市町村別自殺のパネルデータ解析:経済的不況に特に脆弱であるのはどのような地域か? 2021-04-01 – 2024-03-31 吉岡 英治 旭川医科大学, 医学部, 准教授 (70435957) 小区分58030:衛生学および公衆衛生学分野関連:実験系を含まない 基盤研究(C) 研究開始時の概要:本研究は以下の2つの目的で実施する。
    1)まず失業率とその他の社会経済的要因との自殺リスクに対する交互作用を検討することである。この研究では、日本における1999年から2016年までの市町村別の自殺者数と失業率、その他の社会経済的変数などのデータからパネルデータを構築して実施する。
    2)次に最近の日本における失業率が自殺率へ及ぼす影響が、性年齢階級によってどのような違いがあるのかということを明らかにする。本研究では、2009年から2021年までの市町村別の自殺者数(年齢階級別)を使用する。 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  3. アジア高地在住高齢者におけるうつ病とソーシャルキャピタルの関連性-医療人類学検討 2021-04-01 – 2024-03-31 石川 元直 東京女子医科大学, 医学部, 非常勤講師 (20529929) 小区分52010:内科学一般関連 基盤研究(C) 研究開始時の概要:わが国の自殺者数に占める高齢者の割合は高く高齢者のうつ病対策は重大な課題である。近年、標高と自殺率には正の相関があるとの報告が相次いでいるが、申請者はヒマラヤやアンデスの高地に住む高齢者にはうつ病が少ないということを報告してきた。その理由として社会の絆や結束といった良好なソーシャルキャピタルや宗教観がうつ病の発症に抑止的に働いている可能性がある。本研究では標高や文化の影響を検討するために、他地域の高地住民や低地住民と比較することで、うつ病の発症に抑止的に働く因子を解明する。さらに医療人類学の観点から日本の高齢者に応用すべくどんな方法で支援をしたらいいかを考え、ヘルスケアデザインの策定を行う。 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  4. メディアと自殺:メディア上の自殺に関する情報の実態とその自殺者数への影響の解明 2020-04-01 – 2024-03-31 上田 路子 早稲田大学, 政治経済学術院, 准教授 (50791357) 小区分08010:社会学関連 基盤研究(B) 研究開始時の概要:日本をはじめ、世界中の多くの国において自殺は最も深刻な社会問題の一つである。自殺についてのメディア情報をきっかけに自殺の連鎖が起きることは各国で報告されているが、現代日本社会では自殺に関する情報が様々なメディアに溢れている。国際的に推奨されていない内容を含む報道が新聞やテレビで日常的に行われているのはもちろん、若者が触れる機会の多いソーシャルメディア上では悪影響を与える可能性のある内容が頻繁にやり取りされている。本研究は本研究は伝統的なメディア及びソーシャルメディア上における自殺に関する報道・情報の実態をデータを用いて明らかにし、メディア上の情報が人々に与える影響を解明することを目的とする。 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  5. 日本人労働者における食事・運動要因と抑うつ症状発症との関連:前向きコホート研究 2019-08-30 – 2021-03-31 三木 貴子 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, その他部局等, 臨床研究センター疫学・予防研究部 特任研究員 (20849070) 0908:社会医学、看護学およびその関連分野 研究活動スタート支援 研究開始時の概要:日本の自殺死亡率が高く、自殺者数のうち過半数がうつ病の兆候を示していることから、その予防要因を科学的に明らかにすることは急務である。近年、食事・運動要因等は身体疾患だけでなく精神健康に関しても重要な要因であることが指摘されてきている。しかしながら、食事・運動要因等の生活習慣と精神健康の関連を検証した前向きコホート研究は世界的にも少なく、日本における報告はほとんどない。本研究では、日本人を対象とした前向き職域栄養疫学研究により生活習慣(食事・運動要因等)と抑うつ症状との関連をデータ検証、及び総説する。 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:今年度は、うつ病の予防対策として生活習慣(食事・運動要因等)と精神健康の関連を明らかにすることを目的とし、以下の研究を実施した。
    まず、前述した目的を達成するために、日本人を対象とした前向き職域栄養疫学研究のデータベースの構築に取り組んだ。これまでに関東地方の企業の従業員(約2800名)を対象として定期健康診断時に栄養、抑うつ症状、運動などに関する自記式調査、採血(研究のための針刺しは実施せず)を2012-13年(ベースライン調査)、2015-16年(3年後調査)、2018年(6年後調査)に実施していた。2019年4-5月に上記と同様の調査を6年後調査として実施した。データクリーニングを行い、ベースライン調査と追跡調査のデータを連結し、6年間にわたる前向き職域栄養疫学研究のデータベースを構築した。
    次に上記のデータベースにて、食事の抗酸化能と抑うつ症状発症との縦断的な関連を分析した。この結果は「Prospective study on the association between dietary non-enzymatic antioxidant capacity and depressive symptoms」として国際英文雑誌Clinical Nutrition ESPENに掲載された。本研究は食事の抗酸化能と抑うつ症状との関連を検証した初めての縦断研究である。本研究結果は第30回日本疫学会にて発表した。
  6. 若年者の自殺予防チェックリスト開発と対策モデルの構築 2019-04-01 – 2023-03-31 青石 恵子 名古屋大学, 医学系研究科(保健), 准教授 (00454372) 小区分58060:臨床看護学関連 若手研究 研究開始時の概要:若年層の自殺死亡率が低下しない現状から「子ども・若者の自殺対策を更に推進する」ことが重点施策として挙げられており、若者への支援の充実が求められている。研究者は宮崎市在住の中学生を対象として自殺親和状態と自殺の要因とされる生活習慣や行動との関連を調査した。ここで明らかになった危険因子を中学生の自殺予防対策としてのスクリーニングのために活用することを目指し、①自殺関連行動・状態についての具体的な手掛かりを得る自殺危険因子の精選、②自殺予防対策に資する中学生の生活チェックリストの作成、③地域に密着した生活習慣・行動と自殺の要因となる危険因子との関連をもとにした中学生自殺対策モデルの構築を目的とする。 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:【研究背景】若年層の自殺死亡率が低下しない現状から「子ども・若者の自殺対策を更に推進する」ことが重点施策として挙げられており、若者への支援の充実が求められている。【研究目的】危険因子を中学生の自殺予防対策としてのスクリーニングのために活用することを目指し、①自殺関連行動・状態についての具体的な手掛かりを得る自殺危険因子の精選、②自殺予防対策に資する中学生の生活チェックリストの作成、③地域に密着した生活習慣・行動と自殺の要因となる危険因子との関連をもとにした中学生自殺対策モデルの構築を本研究の目的とする。
    【2019年度の実施内容】学校関係者に提示するための資料作成を中心に作業を進めた。文献の検討をする中で2018年度は児童・生徒の自殺者数が10万人あたり2.5人に急激な増加となり、若年者の自殺対策が急務な状況となった。研究計画書や倫理申請に時間がかかってしまったことで、研究の開始が遅れ、対象者のリクルート中であり、対象とする中学校教諭の確保が不十分な状況である。今回初めてテキストマイニングで分析するため、分析の事前準備は整えることは出来ている。
  7. 生物心理社会モデルに基づく日本人青年の自殺機序の解明と予防的介入方法の開発 2019-04-01 – 2023-03-31 石井 僚 奈良教育大学, 学校教育講座, 特任准教授 (50804572) 小区分10020:教育心理学関連 若手研究 研究開始時の概要:日本人青年の自殺者数は、他先進国では類を見ない程の高水準である一方、青年の自殺メカニズムに関するエビデンスは十分に蓄積されていない。本研究では、リスク要因として指摘され続けている社会経済的地位の低さが、青年にどのような心理状態をもたらして自殺へ結びつくのかを解明し、メカニズムに基づく予防的介入方法を開発する。 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:2019年度は主に2つの方向で研究を遂行した。
    1つは、日本人青年の自殺の問題について、青年期の発達課題であるアイデンティティや死生観といった心理的要因に着目した質問紙調査の分析を行った。大学生189名を対象に質問紙調査を行い、媒介分析を行った結果、古くから自殺との関連が指摘されてきたアイデンティティの混乱(稲村, 1977)と、自殺のリスク指標との関連は、死を苦しみ等からの解放と捉える死生観によって、部分的に媒介されていることが示された。他先進国では類を見ない程の高水準である日本人青年の自殺の心理的機序の一部が明らかとなった。なお、本結果については国内学会において発表された。
    もう1つは、自殺のリスク要因として指摘され続けている社会経済的地位についてである。社会経済的地位の低下を招く不適切な金融行動を起こしてしまうメカニズムを検討するため、予備実験を行った。大学生276名を対象に質問紙を用いた実験を行った結果、不適切な金融行動の経験を持つ個人は、そうした経験を持たない個人よりも、不適切な金融行動によって金銭を獲得することでポジティブな感情を持つことが示された。そして、不適切な金融行動による金銭の獲得に対してポジティブな感情を持つこととと、金融を扱う能力の高さの間には、全般的な認知能力をコントロールした上でも関連がみられた。この結果を基に、指標を精査した上で実験室実験を行っていくこととなった。
  8. 自殺率の高い離島の市における自殺の現状分析と自殺防止に関する研究 2019-04-01 – 2023-03-31 波名城 翔 長崎ウエスレヤン大学, 現代社会学部, 講師 (70768811) 小区分08020:社会福祉学関連 若手研究 研究開始時の概要:自殺者の増加を背景に自殺対策に向けた取り組みが行われており、自殺者は年々減少傾向にある。離島の町村では自殺率が低い一方で離島の市の自殺率は全国平均より高い状況にある。以上を背景に本研究では、全国の離島の自殺の分析、自殺率の低い離島の町村への調査、離島の市の調査を実施することで、離島における自殺の現状分析と対策を検討し、離島の市における自殺率の減少に寄与することを目的に実施する。 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:離島の市町村の現状について明らかにしていくために、橋等で本土とつながっていない離島63市町村(8市31町24村)を対象に厚生労働省が公表している「地域における自殺の基礎資料」の2010年から2018年までの資料から統計データを作成した。更に、沖縄県伊江村において自殺予防に向けた取り組みのインタビューを行った。
    63市町村の自殺者の推移は、2010年179人、2011年195人と増加していたが2012年以降は130人から140人の間で推移し2018年には102人まで減少していた。対象期間において、自殺者が0人の島は10村で東京都1村、鹿児島県2村、沖縄県7村であった。
    2018年に自殺者が存在した市町村は、28市町村であり、8市7町では毎年自殺者が存在していた。また、2017年との比較では6市4町は自殺者が横ばいあるいは前年度より増加していた2018年の人口10万対自殺率は、5市4町が全国より高かった。自殺者数が前年度より増加し且つ自殺率が高いのは、香川県1町、長崎県3市、鹿児島県1市1町であった。
    離島の統計データの全国との比較では、自殺者の70歳以上の割合(34%)「同居人有」の割合(73%)、自殺手段の「首つり」の割合(80%)が全国と比較して高く、また、自殺場所は、「自宅等」は56%と全国(63%)より低いことが明らかになった。
    伊江村においては、専門の精神科医療機関がない中で、保健師が中心となって支援や連携体制を構築することで、自殺予防対策を行っていた。
    2017年に自殺対策大綱が閣議設定され、自殺総合対策における当面の重点施策として12の施策が示された。精神保健医療福祉サービスや民間団体などの社会資源が乏しい離島においては行政を中心とした支援体制の構築が求められることが示唆された。
  9. 地域における自殺対策の政策学的研究 2019-04-01 – 2022-03-31 森山 花鈴 南山大学, 社会倫理研究所, 准教授 (40635702) 小区分06010:政治学関連 若手研究 研究開始時の概要:日本における自殺者数は、2011年まで自殺者数が3万人以上となる事態が続いていた(警察庁統計)。この状況から、日本では国をあげて自殺実態の分析や多数の自殺予防・自死遺族支援に係る政策が実施されてきた。その結果、2012年から自殺者数は3万人を切り、現在まで減少が続いている。しかし、未だ市町村レベルでは自殺の現状は明らかになっていないばかりか、どのような自殺対策が実施されて自殺が減ったのか、この自殺者数減少の要因は明らかになっていない。そのため、本研究では、地域(市町村)における自殺の現状および自殺対策に焦点をあて、市町村において必要とされる自殺対策の政策モデルを提示することを目的とする。 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:本研究は、地域(市町村)における自殺の現状および自殺対策に焦点をあて、市町村において必要とされる自殺対策の政策モデルを提示することを目的としている。そのため、2019年度(初年度)は、市町村における自殺対策の現状把握と、実態分析のための自殺者数・自殺対策に関する資料収集を実施した。また、実際に展開されてきた地域の自殺対策がどれだけ若者世代に認知されているのかを確かめるため、大学生に対して地域資源に関する基礎調査も実施した。
    研究実績として挙げられるのは、まず、2019年5月に新潟大学で開催された日本行政学会2019年度総会・研究会での発表である。そして、9月に南山大学で開催された第43回日本自殺予防学会総会(大会長)での発表である。また、論文としては『アカデミア社会科学編』第17号(南山大学)へ投稿を行った。
    海外調査としては、2020年3月にフィンランドへ赴き、国の機関である国立健康福祉センターと地域での対策を実施しているエスポ―市の福祉サービス施設を訪問した。ここでは、行政担当者や行政の精神科医からヒアリングを実施した。さらに、自死遺族支援に関する調査のために、フィンランドにおいて精神障害者支援や自死遺族支援を行う民間団体からもヒアリングを実施した。
    なお、国内では、自殺対策には自殺予防の観点と自死遺族支援の観点があるため、必要とされる自死遺族支援については自死遺族団体の関係者からヒアリングを実施した。さらに、毎月自殺対策に関する研究会を実施した。
  10. 緊縮政策と自殺・死亡―1930年代と50年代の地方財政緊縮の社会的影響の因果分析 2019-04-01 – 2022-03-31 古市 将人 帝京大学, 経済学部, 准教授 (50611521) 小区分07050:公共経済および労働経済関連 基盤研究(C) 研究開始時の概要:公的医療サービスや失業者の生活支援など、政府支出は人々の生活を支えている。そのような政府支出の削減が人々の健康を悪化させる可能性が、先行研究では指摘されてきた。本研究は、戦前・戦後の日本で実施された政策に注目して、政府支出の削減や財政再建が経済活動や人々の健康に与えた影響を明らかにする。本研究は、以上の分析を行うために、各種の統計の収集と整理を行う。次に、日本で行われた財政再建や歳出削減の歴史的背景を検討した上で、財政再建と歳出削減が経済や社会に与えた効果を推定する。歳出削減や財政再建という現代的論点に対して、歴史的定量的な知見を提供することを本研究は試みる。 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:研究一年目は、既存統計の利用可能性の検討と、戦前の分析に必要な死亡・自殺統計の道府県パネルデータの構築作業を中心に行った。『内務省統計報告』、『日本帝国人口動態統計』、『死因統計』、『警察統計』などの基礎統計書を精査し、パネルデータ構築の準備作業を行った。また、戦前の分析に必要な財政統計の収集と整理も行った。その際、戦前の自殺統計や死亡統計に関する先行研究や当時の研究を収集し、統計の利用可能性の確認を行った。
    以上の作業の結果、1884年から1941年までの警察統計による府県別自殺統計の整備はほぼ終了することができた。2年目に外注する予定のデータについても、対象となるデータの選定と収集を現在進めている。一部の変数については、統計の収集と整理を終え、データ入力を行う段階になっている。
    次に、本研究と関係する先行研究や資料を整理した。各種の研究書・論文のみならず、戦前と戦後の緊縮政策を理解する上で必要な資料や報告書を収集した。また、先行研究では、本研究で着目したデータを用いた研究が十分に行われていない点を確認した。
    本研究のメインテーマは、日本における緊縮政策が社会や経済に与えた効果の歴史的検証である。戦前期については、基礎的な分析が可能になったため、予備的な分析に着手している。また、戦前期の自殺者数に関する記述統計分析は、学術的な貢献になると考えられるため、メインテーマの研究と並行して、論文執筆の準備を始めた。
  11. 内科診療所受診者を対象に初診時に実施するうつ状態のリスク評価の有効性 2018-04-01 – 2022-03-31 藤枝 恵 久留米大学, 医学部, 助教 (80420735) 小区分58010:医療管理学および医療系社会学関連 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:我が国の自殺者数は約2万人であり、交通事故死亡者数の5倍以上である。自殺者の8割以上がうつ状態であったという報告もある。このようなうつ状態の患者の割合は、内科診療所受診者の5.5~64%に上るが、内科ではうつ状態が見逃されることが多く、内科診療所の医師は自殺のリスクの高いうつ状態の患者を日常的に見ていることをほとんど意識していない。
    そこで、申請者らがこれまでに明らかにしたうつ状態の関連因子を用いて、初診時に半年後の「うつ状態のリスク評価」を行う。そして、無作為化比較試験(randomized controlled trial(RCT))により、①うつ状態の発症、②希死念慮(死にたいという気持ち)を伴ううつ状態の発症、③うつ状態の慢性化に対する「うつ状態のリスク評価」の効果を算出する。研究対象は、内科診療所の初診患者、または過去半年以上受診していない患者で、35歳から64歳の者とする。慢性疾患などで常に通院している人を除くため対象者を限定する。該当者に順に調査に関する説明を行い、同意が得られれば対象者として登録し、登録時調査を実施する。
    登録時調査では、対象者から、性別、年齢、身長、体重、教育歴、飲酒、喫煙などの生活習慣、婚姻状況、職業、既往歴、入院歴、治療中の病気、うつ状態の程度、希死念慮等についての情報を収集し、医療機関からは、主訴、診断、処方などについての情報を得る予定である。
    当該年度は、産前産後の休暇および育児休業により、研究を中断したため、研究を実施していない。
  12. 感覚処理感受性に着目した抑うつ低減モデルの構築―将来的な自殺予防に向けて― 2018-04-01 – 2021-03-31 大石 和男 立教大学, コミュニティ福祉学部, 教授 (60168854) 小区分10020:教育心理学関連 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:本研究課題では,(1)従来の研究で指摘されてきた,感覚処理感受性(Sensory Processing Sensitivity;以下,SPSと略記)と抑うつ傾向との正の関連における機序について,詳細な知見を得ること,および(2)既存の心理尺度に関する問題点が指摘されるSPSの測定方法の再検討といった2点を目的としている。令和元年度は,(1)の目的に沿う2件,および(2)の目的に沿う1件の研究を行った。
    第一に,大学生430名を対象として,SPSと抑うつ傾向との関連に対する首尾一貫感覚(Sense of Coherence;以下,SOCと略記)の調整効果を検討した。SOCとは,自分の生きている世界は首尾一貫しているという感覚のことであり,強いSOCを持つ個人ほど抑うつ傾向の低いことが明らかにされている。分析の結果,SOCが強い場合はSPSと抑うつ傾向との間に有意な関連が示されなかった。この結果から,SPSが高い個人のSOCを強化することで,彼らの抑うつ傾向を低減できることが示唆された。第二の研究では,SOCの強化に寄与することが示唆されているライフスキルに注目して,SPSと抑うつ傾向の関連に対する調整効果の検討を行うため,大学生868名を対象に質問紙調査を実施した。分析の結果,SPSが高い場合には,情動対処スキルと対人関係スキルが抑うつ傾向の低減に寄与する可能性が示された。
    最後に,既存のSPS測定尺度における因子構造や各項目の特性について検討するため,日本人成人1,626名に質問紙調査を実施した。分析の結果,各項目は個々人のSPSの程度を識別できる性質を有していた一方で,因子構造については一部で先行研究と異なる結果が示されるなど,いくつかの課題も指摘できる。
  13. 長期成人虐待の法医病理学的診断法の確立ー帯状回に着目した慢性ストレス暴露の証明ー 2017-04-01 – 2020-03-31 山下 裕美 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 助教 (50706174) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:近年、高齢者虐待や中高年層の自殺者の増加、ドメスティック・バイオレンス等の「長期ストレス」が新たな社会問題となっており、法医解剖でも遭遇する。この「長期ストレス」に曝露されたか否かの診断の指標として、児童虐待のような子どもでは、「胸腺の萎縮」が用いられる。しかし、成人は加齢変化により胸腺が脂肪織化するため用いることができず診断に苦慮している。そこで、これまでの研究で「長期ストレス」への関与が疑われた帯状回に着目し遺伝子解析を行った。ストレス特異的反応遺伝子のキー遺伝子を同定するために、現在、解析の途中である。研究実績の概要:
  14. 手段制限による自殺予防の政策導入のためのfeasibility研究 2017-04-01 – 2021-03-31 反町 吉秀 青森県立保健大学, 健康科学部, 教授 (80253144) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:本研究は、自殺手段の法的規制や入手可能性の低減の自治体による施策化や国レベルでの自殺対策政策への導入に対して政策提言を行うことを目的としている。
    平成31年度は、継続的に検討してきた「日本における1950-60年代の催眠剤による自殺とアクセス制限の関連」について、催眠剤の生産量に注目し市中での入手可能性(availability)および生産減少に影響を与えた要因について、薬事工業生産動態統計、東京都監察医務院の公表データ等を用いた解析の結果、我が国の過去(1950年代~60年代おける)における睡眠薬による自殺の減少は、市販薬の生産量減少や販売規制などによる入手可能性の低下が寄与しているを示唆する結果を、論文として発表した。
    他方、B県ホットスポットにおけるパトロール活動とゲートキーパー活動による自殺念慮を持つ訪問者のアクセス制限による自殺予防活動について、活動を担った保健師等を研究協力とし、活動の実態及び自殺者数に関わるデータを入手し、その効果について疫学的分析を行った。ホットスポット訪問者による自殺者数は、当該地域において、活動が開始された2009年から2018年にかけて、隣接自治体では自殺者数に変化が見られなかったが、当該地域を含む自治体では、自殺者数に約70%の減少が見られたこと、パトロール職員からの警察への年間通報件数と訪問者による自殺者数の間には、負の相関がみられることなどを明らかにし、パトロール活動とゲートキーパー養成を中心とする予防事業が有効であることが示唆する結果を得た。
  15. 自殺の社会経済的要因と自殺対策の実証分析:エビデンスに基づいた政策評価と提言 2017-04-01 – 2020-03-31 上田 路子 早稲田大学, 政治経済学術院, 准教授 (50791357) 基盤研究(B) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:社会経済的要因と自殺リスクの因果関係やそのメカニズムについては部分的な解明しか進んでいない。本研究課題では、自殺の社会経済的要因に注目した4つのプロジェクトを実施した。主な研究成果として、著名人の自殺についての100万件近くのツイッター上の投稿を分析し、著名人の自殺の報道後に自殺者数が大幅に上昇するのは、その死がツイッターで大きく話題になったときのみであることを示した。また、著名人の自殺をどのような感情を持って受け止めているかを探るため、ツイッターの投稿に含まれる感情を機械学習の手法を用いて分類し、報道後の自殺者数は人々が著名人の自殺に「驚き」を感じたときに最も上昇することを明らかにした。研究実績の概要:
  16. 日本における自殺対策の政策学的研究 2016-04-01 – 2019-03-31 森山 花鈴 南山大学, 法学部, 准教授 (40635702) 若手研究(B) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:日本における自殺死亡率(人口10万人あたりの自殺者数)は、G7の中で第1位と、世界的に見ても高い水準にある。本研究では、インタビュー調査等を踏まえ、「個人の私的領域分野の問題として扱われてきた自殺の問題が、なぜ国家が介入するべき問題として政府に認識され、全国で推進される政策となったのか」を政策学的に分析した。さらに、自殺者数の減少をもたらした政策上の要因を探究した上で、効果的な自殺対策を推進するための国家・地域モデルを検討した。研究実績の概要:
  17. 致死性の低い手段による自殺未遂者の予後に関する研究 2016-04-01 – 2020-03-31 竹内 崇 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 講師 (70345289) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:致死性の低い故意の自傷も、自殺の危険因子であることが明らかにされており、身体的に重症度の軽い自殺未遂も軽視すべきではない。本研究結果より、手段が意図的な過量服薬で、精神科治療上の転帰を自宅退院とした「低致死リスク群」の特徴は、女性、双極性障害、自殺企図の既往が少ない、精神科への受診歴あり、受診中断が少ない、という傾向があることがわかった。また、この「低致死リスク群」の前方視研究により、自殺関連行動の反復の予測因子として、女性、既婚でない(未婚もしくは離婚)の可能性があることがわかった。今後さらに詳細な解析を行っていく予定である。研究実績の概要:
  18. 現代日本の自殺動向による社会学的自殺理論の再構成 2016-04-01 – 2020-03-31 江頭 大蔵 広島大学, 社会科学研究科, 教授 (90193987) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:デュルケームの『自殺論』における自殺類型論について、4つの自殺類型の分類原理である「社会的統合」と「社会的規制」が反対方向の作用であることを示すことにより、その配置を再構成した。この図式に基づいて、ソーシャルキャピタル指数と男女の自殺率の相関関係が逆であること、また、自殺率の著しい地域格差が、二極分化した労働環境によるものであることを、統計データを用いて示した。また、文献資料を用いて、社会集団への過剰な統合が集団本位主義とアノミーが結びついた過労自殺の温床となっていることを示した。研究実績の概要:
  19. 宇宙・地球環境要因を用いた重要疾患の増悪予測モデルの構築 2015-04-01 – 2018-03-31 西村 勉 公益財団法人先端医療振興財団, その他部局等, 研究員 (10447980) 若手研究(B) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:過去40年分の日毎、都道府県別、疾患別の死亡データを厚労省から入手した。過去40年分の日毎の宇宙・気象等の環境要因を入手した。1972年から2013年のデータを用いて、各疾患による日毎の死亡者数と宇宙・地球に関連する環境要因との関連性を検証した。多くの環境要因と多くの疾患による死亡者数との間に相関がみられた。研究代表者が台湾の中国医薬大学との共同研究において、地磁気の擾乱と自殺者数との相関について日本の結果の再現性を台湾のデータで確認した。さらに他の疾患についても環境要因との関連性を検証し、重要疾患の増悪予測モデルを構築した。研究実績の概要:
  20. 児童思春期の学校における自殺関連要因の前方視的研究 2015-04-01 – 2018-03-31 齊藤 卓弥 北海道大学, 医学研究院, 特任教授 (20246961) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:本研究では対象は、6歳から18歳の札幌市の小中学高校生に対してに対して本人および保護者から得た上で、1年目の希死念慮が2年目にどのように変化したかを2年連続して回答した小中高校生118名を対象に評価した。同時に、希死念慮と、抑うつ尺度、BCL(子ども行動チェックリスト)、Birleson:自己記入式抑うつ評価尺度(DSRS-C)、FTTを実施し、児童思春期における自殺行動に関連する、心理、コミュニケーション能力、発達障害の影響について探索的研究を行った。に自殺念慮の変化ならびにそれに関する要因を解析した。研究実績の概要:
  21. 微量なリチウムの抗自殺作用:自殺企図患者の血中リチウム濃度を指標とした研究 2015-04-01 – 2019-03-31 塩月 一平 大分大学, 医学部, 講師 (00444886) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:大分大学医学部救命救急センターに入院し、医薬品としてのリチウム治療を受けていない患者230名を対象に血中リチウム濃度を測定して、「男性の自殺企図者は男性の非企図者と比較して、有意にリチウム濃度が低いが、女性ではそのような傾向はみられない」という仮説を検討したが、支持されなかった。むしろ、精神疾患があると、微量なリチウムでも自殺予防効果を発揮する可能性が示唆された研究実績の概要:
  22. 内科診療所受診者における自殺予防に関する疫学研究 2015-04-01 – 2020-03-31 藤枝 恵 久留米大学, 医学部, 助教 (80420735) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:内科診療所の初診、または6か月以上受診していない、35歳以上65歳未満の患者を研究対象とした。診察前に自記式調査票を使用して、性別、年齢、体重、生活習慣、基礎疾患、睡眠状況等についての情報を収集した。登録時と半年後にうつ状態および希死念慮についての評価を行った。多変量解析の手法により、多要因の影響を補正し解析したところ、睡眠障害を有する者では、希死念慮を伴ううつ状態の発症リスクが上昇することが示唆された。研究実績の概要:
  23. 危険な自殺手段制限のための基礎的研究 2015-04-01 – 2018-03-31 吉岡 英治 旭川医科大学, 医学部, 准教授 (70435957) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:本研究では、以下の3点に関する検討を行った。1)2003から2013年の日本で急増した練炭自殺の地理的影響を解析した。2)1950から1975年の自殺率の変動におけるそれぞれの自殺手段の占める割合を解析した。3)1968から1994年のガス自殺の推移を解析した。解析結果は、以下のようであった。1)僻地部で練炭自殺の増加が著しく、男性では練炭自殺の急増により自殺率の地域差が拡大していた。2)若い世代では服毒自殺が最も多かった。3)家庭用ガスに含まれる一酸化炭素が70年代に減少したが、これに伴いガス自殺が減少した。研究実績の概要:
  24. 住民参加型自殺予防対策の効果に関する実証的検証研究 2015-04-01 – 2019-03-31 佐々木 久長 秋田大学, 医学系研究科, 准教授 (70205855) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:ゲートキーパー養成のための資料を作成して実施した養成講座受講者を対象とした調査で、住民は身近に心配な人がいることを認識しており、機会があれば支援したいという気持ちを持っていることが確認できた。地域で自殺対策に取り組んでいるボランティアを対象に調査を行った。この結果、居場所づくりを通して、希死念慮や抑うつ状態にある人との接点を持っていることが確認された。また保健師を対象にしたインタビュー調査で、保健師がボランティアを支援することと、ボランティアが地域の情報を提供し見守りをすることで、より効果的な自殺対策を展開する可能性が示唆された。研究実績の概要:
  25. 政治経済学的アプローチによる自殺原因と対策の研究 2014-04-01 – 2017-03-31 松林 哲也 大阪大学, 国際公共政策研究科, 准教授 (40721949) 若手研究(B) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:本研究では(1)自殺報道が一般の人々の自殺に与える影響、(2)これまでの自殺対策の効果の検証、(3)人々を取り巻く制度環境が自殺に与える影響、の3課題についての研究を推進してきた。統計分析の結果、著名人の自殺報道に対しツイート上で大きな反応があった場合にのみ自殺者数が増えること、経済状況の好転が自殺率の低下につながっている可能性があること、鉄道駅のホームドアには強い自殺防止効果があること、早生まれの若者の自殺率が高いこと、学年暦と若者の自殺数には強い相関があること、誕生日前後には自殺が増えることなどが明らかになった。研究実績の概要:
  26. 職種別自殺リスクの実証分析 2014-04-01 – 2016-03-31 池田 真介 政策研究大学院大学, 政策研究科, 助教授 (90598567) 若手研究(B) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:第一に、市区町村レベルの自殺率と社会経済変数の関係を明らかにした。具体的には、統計モデルの一致推定には動学パネル回帰分析の手法が有益であること、また男性では貯蓄率が、女性では生命保険支払額と女性失業者数と女性総労働力人口が、各性別自殺率と負相関することを示した。
    第二に、都道府県レベルの職種・年齢・性別の就労人口数・自殺者数を記述統計・グラフ分析した。具体的には、職種別粗自殺率の複雑な年齢効果が自殺者数と労働力人口の年齢効果の違いから来ること、1998年以降の自殺率の急上昇は一部の職種が主たる要因であること、および地域ごとの傾向や異質性が強いことを明らかにした。研究実績の概要:
  27. 地域の自殺予防に資するレジリエンス社会の構成要因の探索 2014-04-01 – 2018-03-31 金子 善博 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所 自殺総合対策推進センター, 室長 (70344752) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:我が国の自殺率の変化には社会経済的要因の影響が大きい。本研究ではその影響を小さくできるようなレジリエンス社会の構成要因を探索的に検討した。基礎自治体を対象としたマクロレベル研究では自殺率の変動を小さくするような一貫性のある社会経済要因は確認できなかった。一方、住民調査研究からは、表現することが忌避されてきた「死にたい」といえる状況が自殺予防に資することが示唆された。研究実績の概要:
  28. 思春期のいじめ被害者における援助希求行動を促進/妨害する要因の検討 2014-04-25 – 2017-03-31 特別研究員奨励費 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:研究課題1)「どのような若者が援助希求行動をしないのか」を解決するため日本の中高生約2万人を対象とした精神保健調査の解析を行った結果、いじめの被害を受けている生徒で希死念慮が深刻になるほど、つまり自殺リスクの高い生徒ほど援助希求行動が行われない傾向があることが示された(Kitagawa et al., 2014, PLOS ONE)。この結果を受けて、希死念慮や自傷行為といった自殺リスクの高い生徒を特定するため、本人が回答しやすく、周囲も問いやすい質問に着目した。具体的には食欲の低下、不眠に着目し、これら身体的不調が希死念慮や自傷行為と関連するかについて調べた。その結果、食欲がないという訴えをもつ者、不眠を訴える者はそれぞれの訴えのない者に比して、希死念慮、自傷行為のオッズ比が3-5倍となることが明らかとなった。これらの関連は自殺と関わりの強い不安・抑うつ症状を考慮にいれた解析を行っても、引き続き同様の傾向が見られた。この研究は、国際学術雑誌に掲載された(Kitagawa et al.,2016, Appetite)。さらに、食欲不振、不眠以外の身体愁訴と自殺リスクの関連について検討を進め、国際学術雑誌への投稿を進めている。
    上記の研究結果を踏まえ、タブレット端末を活用した自殺リスクを含む精神不調スクリーニングツールの開発を進めている。ツールに搭載したアルゴリズムは、国際的に標準化された尺度による評価に加え、先行研究の知見をもとにスクリーニングを行うものである。また生徒が抵抗感少なく回答できるよう構造の工夫を行った。約10校に導入済みである。
    研究課題2)では、いじめ対策プログラム冊子を作成済みであり、多数のメディアに取り上げられた。小中高等学校、教育委員会等からの問い合わせを受け、現在までに約5000冊を配布した。第2版の作成、効果検証を進めていることろである。
  29. 自殺企図後のうつ病者を「生への意欲」につなげる看護アプローチ 2013-04-01 – 2017-03-31 長田 恭子 金沢大学, 保健学系, 助教 (60345634) 挑戦的萌芽研究 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:自殺企図を行ったうつ病あるいは双極性障害をもつ者の希死念慮を緩和していく過程における語りの変化と研究者の関わりを明らかにすることを目的として、ナラティヴ・アプローチの原則に基づいた非構造化面接を行った。その結果、【死への執着】【自殺前と変わらない孤独感】【先がみえない不安】【現実に直面することによる自信喪失】【生きることに気もちが向く】【生への意欲の芽生え】の6つのカテゴリーが抽出された。
    参加者は生と死の間を揺れ動きながらも前に進んでいること、一度は自ら死を選ぶほどの絶望の淵に立たされた人であっても、わずかながらの希望をもち将来に向かって歩き始めていることが明らかになった。研究実績の概要:
  30. 大学生における精神科治療と学業転帰―自殺予防の観点から― 2013-04-01 – 2016-03-31 石井 映美 筑波大学, 医学医療系, 助教 (30593008) 挑戦的萌芽研究 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:本学保健管理センター精神科受診学生でH16-25年度に学業転帰が決定した学群学生208名を卒業群、退学群に分け、それぞれの診療録を調査した。そして診療録から抽出した要因のうち、何が転帰決定に有意に関与したかを統計学的手法を用いて検討した。
    いくつかの要因のうち、引きこもり期間と留年・休学(過年在籍)の有無・期間が、有意に転帰に関与することがわかった。また、退学群の方が有意に初診時重症度が高く、初診時学年が低いことがわかった。担当教官と治療者の面談回数も多かった。学生の修学を支援するためには、治療はもとより、引きこもりを防ぐための学内の取り組みや、教育組織との連携が重要であると思われた。研究実績の概要:
  31. 地域の総合的自殺対策の科学的政策評価と新たなベンチマーク評価指標の開発 2013-04-01 – 2017-03-31 本橋 豊 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所 自殺総合対策推進センター, センター長 (10174351) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:地域の総合的自殺対策の評価に関する研究、地域の自殺実態を明らかにするプロファイリングのベンチマーク指標の開発を行うことにより研究を行った。 地域の総合的自殺対策推進のための自殺実態プロファイルを開発し、地域自殺実態の一目瞭然化を行った。官庁統計を主体に全ての市区町村で共通のフォーマットによる自殺実態プロファイルを新たなベンチマーク評価指標とした。今後、新たなベンチマークとなりうる地域自殺実態プロファイルに基づき、地域の総合的な自殺対策の推進と、PDCAサイクルに基づく科学的評価が行われることが必要である。研究実績の概要:
  32. 安心安全な社会構築のための時間政策的な研究 2012-04-01 – 2015-03-31 辻 正二 保健医療経営大学, 保健医療学部, 教授 (10123936) 挑戦的萌芽研究 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:本研究、安全な社会を構築するための時間政策的な研究である。今回の研究では、時鐘を聞くことのできる地域に住む人は、住んでいない人や過去に住んでいた人に比べて、地域への愛着度が高くなり、永住意識に関しても高くなることが分かった。三つの時鐘の機能の比較では、寺と教会の時鐘は、コミュニティ意識形成に関しては似た傾向を示し、カラクリ時計の時鐘機能がコミュニティ意識の形成に一番影響力を強いことがわかった。研究実績の概要:
  33. 小地域を単位としたうつ病予防介入と自殺対策 2012-04-01 – 2015-03-31 坂下 智恵 青森県立保健大学, 健康科学部, 講師 (70404829) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:壮年期一般住民を対象としたうつ病スクリーニングとフォローアップ及び健康教育を用いた多層的予防介入を、①小地域に在住する全壮年者群への配布(局所的配布)と②自治体全域の特定年齢者群(広域的配布)の二つの配布方法によって実施した。両者のスクリーニング効率を比較したところ、参加率、把握されたうつ病エピソード有症率及び陽性反応的中度に差はなかった。一部の区域で自殺率の変化を比較したところ、自殺率の減少は局所的配布よりも広域的配布の方が大きいことが示唆された。局所的配布によりプログラムの受入れが良好となったことにより、広域的配布の成功につながったことが示唆される。今後は両者間の自殺率への影響を検討する。研究実績の概要:
  34. 日本型自助組織「断酒会」による社会啓発活動の変遷―薬物乱用対策から自殺予防へ 2012-04-01 – 2015-03-31 眞崎 睦子 北海道大学, メディア・コミュニケーション研究院, 准教授 (40374631) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:自助組織(自助グループ、self help group)とは、共通の問題を抱える個人及びその家族が自らの意思で参加し、「言いっ放し・聞きっ放し」という特徴的なコミュニケーションにより問題の解決あるいは緩和をはかる団体である。1930年代にアメリカのアルコール依存症者の間で始まり、欧米を中心に様々な問題を抱える当事者たちの間で形成されるようになった。本研究では、日本型の自助組織として発展をとげてきた「断酒会」の社会啓発活動のあり方及びその変遷を探る。研究実績の概要:
  35. 自殺の定量的分析 -経済状況と自殺の関係について- 2012-04-01 – 2015-03-31 特別研究員奨励費 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:これまで自殺と社会・経済状況の関係や、日本の自殺の実態に関する研究を行ってきた。自殺問題の研究を行う中で、自殺に至る直前に多くの人がうつ病にかかることが分かった。しかし、うつ病に至るまでに、職場環境の悪化や失業、病気、家族の不和など様々な問題が潜んでいる。そこで、私は自殺問題の研究から得られた知見をさらにメンタルヘルスや主観的幸福度の研究へと発展させ、ライフステージで起こりうる様々なショックに対して人々がどう対応しているのか、という研究を行った。特に、2011年に起こった東日本大震災が、高齢者のメンタルヘルスや主観的幸福度に与えた影響について研究を行った。分析に用いたデータは、中高齢者を対象としたパネルデータ「くらしと健康の調査(以下、JSTAR)」である。JSTARは都市ごとにデータの収集を行っており、第三回の調査は震災の6ヶ月後に行われ、被災地である仙台市が第一回から継続して調査となっている。震災の前と後の両方で、被災地である仙台市と直接の影響は受けなかった他の都市のパネルデータを用いて、差と差の検定を行った。結果、震災後に仙台市の高齢者の中でも60代の女性の主観的幸福度が下がっていること、睡眠の問題などいくつかの精神状態の悪化が見られることが分かった。この研究結果は、国内の学会のみならず国際学会でも発表を重ねており、英文査読雑誌にも投稿済みである。
    採用第3年度は、アメリカ・南カリフォルニア大学経済学部にて、在外研究を行った。そこでは、日本経済の専門家や幸福の経済学の先駆的研究者、高齢者の研究を行う経済学者らを中心に、日本のみならず海外の自殺問題の研究をも議論し、ヒントを数多く得た。その中で、医療や年金といった社会保障制度が日本の高齢者の自殺を防ぎ、高齢者の主観的幸福度にも寄与しているのではないか、と考えるようになり、今後の研究の中心テーマを築くことができた。
  36. 地域高齢者に対する自殺予防の視点を備えた傾聴ボランティアの養成に関する研究 2011 – 2012 竹内 美樹 兵庫大学, 健康科学部, 講師 (60611770) 研究活動スタート支援 研究開始時の概要: 研究概要:自殺予防の視点を備えた「傾聴ボランティア」活動で、負担とやりがいを調査した。結果、負担なのは(1)うつ病等の知識が少ない、(2)活動中に起こったグループ内の問題等であった。やりがいは(1)感謝されてプライドが満足できる、(2)ボランティアに参加するとポジティブ思考になる、であった。考察として、傾聴ボランティア養成講座の中で、うつ病等の病気の知識の時間数を増やし、対応法を習得してから実践に出ることが、不安軽減と活動継続につながることが示唆された。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  37. 社会医学・行政が連携した大規模調査に基づく具体的自殺予防対策プログラムの構築 2011 – 2013 井上 顕 島根大学, 医学部, 准教授 (40469036) 若手研究(B) 研究開始時の概要: 研究概要:日本の自殺死亡率は世界でも上位である。日本における自殺者数は1998年に30,000人以上と急増して未だ急増前の推移にまで戻っていない。本研究においては(1)「各都道府県別自殺予防対策と動向の比較」、(2)「自殺の詳細な実態調査」、(3)「海外調査」を行い、これらをまとめた上で、(4)「有効な自殺予防対策を立案」するという流れであった。(1)から(3)をまとめ、(4)において年齢層ももちろん考慮した上で、「精神疾患」、「失業・借金苦」、「病苦」に殊に焦点をあてた自殺予防対策を立案することが大切な1項である。医学・行政・対策に関連する分野等の側面から全観点も含め、対策を検討する必要もある。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  38. 東アジアの高齢者自殺問題とその社会文化的要因に関する研究 2011 – 2013 朴 光駿 佛教大学, 社会福祉学部, 教授 (30351307) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:本研究は、東アジア地域全体が著しく高い自殺率を示していることに着目し、高齢者自殺を死に関わる東アジアの社会文化問題としてとらえ、子女に対する過度の出費、自立しない成人子女の問題などは高齢者の自殺リスクを高める要因であることを証明するための研究である。また、高齢者自殺に対する仏教の態度を、仏教経典の内容分析を通じて明らかにし、仏教は自殺を禁止していない、という見解を批判的に検討し、仏教本来の教えに基づいた自殺観を提示し、それを現代的に解釈した
    研究成果は日本・韓国・中国の学術論文集に発表され、韓国(2013年)と日本(2012年)で単行本として発刊されている。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  39. 学生の自殺予防におけるコミュニティ・モデルの有用性に関する研究 2010-04-01 – 2014-03-31 杉岡 正典 香川大学, 学内共同利用施設等, 講師 (70523314) 若手研究(B) 研究開始時の概要: 研究概要:本研究は,近年増加している大学生の自殺問題に対する予防策を構築するために,学生相談体制におけるコミュニティ・モデルの有用性と課題について検討した。その結果,①自殺願望や自傷行為のある学生が一定数いること,②学生間で自殺や死にたい気持ちについて話題になり相談が行われることはまれではないこと,にもかかわらず,自殺予防に関する教育を受ける機会は乏しかったこと,③教職員へのコンサルテーションや教職員への研修(FD/PD)のニーズが高いこと,④心理教育には一定の有用性が確認されたが,自殺問題を抱える学生とかかわることの戸惑いと心的負担があること,が示唆された。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  40. 南九州における高齢者うつ病の疫学的研究 2010 – 2012 藤瀬 昇 熊本大学, 医学部附属病院, 講師 (20305014) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:熊本県内の農山村部と都市部において高齢者うつ状態の実態調査を行った。北日本を中心としたわが国の従来の報告とは異なり、独居とうつ状態とが有意に関連していた。さらに独居であっても社会的サポートを充実させることでうつ状態への進展を防ぐことが出来る可能性が示唆された。また、社会的サポートの乏しさは山間部に、睡眠障害は都市部に特有のリスク因子であった。今後、高齢者のうつ予防介入を行うにあたっては地域特性を考慮した取組みが効果的であると考えられた。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  41. 科学的政策決定のための統計数理基盤整備とその有効性実証 2010-04-01 – 2015-03-31 北川 源四郎 大学共同利用機関法人情報・システム研究機構(新領域融合研究センター及びライフサイ, 新領域融合研究センター, センター長 (20000218) 基盤研究(A) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:本研究では,科学的情報収集に基づく社会価値選択,価値を決定する構造モデル導出,価値のモデル上での最適化,最適化された価値の社会への還元からなる情報循環設計を科学的政策決定の統計数理科学的枠組みと位置づけ,政策の科学的決定に資する統計数理体系構築を目的とした.
    本研究を通じて,公的ミクロ情報分析統計基盤の確立,情報循環加速ツールの開発,時空間可視化ツールの開発を達成し,同成果を自殺予防対策研究,観光政策研究,産業環境政策研究に応用し,それぞれの政策立案に資する新たな知見を得るとともに,データに基づく政策を提言した.研究実績の概要:
  42. 住宅用火災警報器等の普及による住宅における火災規模及び死者数の比較に関する研究 2010 – 2012 特別研究員奨励費 研究開始時の概要: 研究概要:本年度は最終年度であるので、主に本論の作成をした。それとともに、統計学を利用した延焼拡大防止の評価について時間を費やした。
    この評価においては、その前段階の評価手法の確立が困難であった。手法として、統計学を利用し延焼拡大防止の評価をしようとしたが、本論作成の時間とのバランスの問題で評価手法を確立できずに終わるに至る。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  43. 社会保障制度の政治的決定メカニズムについて 2010 – 2011 特別研究員奨励費 研究開始時の概要: 研究概要:平成23年度は主に、1、自殺の経済学的分析と2、高齢化社会における社会保障の政治的決定の研究を行った。
    1.1990年代後半以降、日本において自殺問題は最も深刻な社会問題の一つとなっている。自殺者は1997年~1998年にかけてのいわゆる金融危機の時期に35%もの急増を見せ、1998年以降は毎年3万人以上の自殺者がいる。そこで、所得の減少や流動性制約が人々を自殺に追い込むのではないかという仮説のもと、自殺研究に経済学的な視点をもたらすことが急務であると判断し研究を行なった。具体的には、1997年から1998年にかけての金融危機と自殺者急増の関係と、1998年以降の自殺者数の高止まりの原因を寄与度分解と回帰分析を使って明らかにした。結果、1998年の自殺者の急増は主に中高年の男性によるところが大きく、なかでも自営業者の自殺がこの時期に急増していることが大きく影響していた。そして、失業率と自己破産件数が自殺率に有意な影響を与えていた。これは金融危機時の「貸し剥がし・貸し渋り」によって、多くの自営業者が倒産し、多くの雇用者も失業したことから、彼らが自殺においこまれたということができる。そして1998年以降の高止まりは20代,30代の若年層の自殺の増加が寄与していることを明らかにした。そこで、なぜ若年層の自殺が増加しているのかという問題に対して、雇用状態に注目した研究も行った。その研究により、若年層の非正規雇用の増加と同年齢層の自殺率の増加は強い正の相関があり、40, 50代の中年層の無業率と同年齢層の自殺率に相関があることを明らかにした。また、研究を遂行するにあたっては、自死遺族の方々から、自殺した方が持っていたであろう悩みや職業等の状況、遺族支援の実情の聞き取りも行った。
    2.高齢化が税率と政府支出に占める社会保障費の割合に与える影響について投票行動を含んだ理論モデルを完成させた。現在、国際学術雑誌へ投稿準備中である。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  44. 自殺未遂経験のあるうつ病入院患者に精神科看護師が行う看護行為の理論化 2009 – 2010 三瓶 舞紀子 順天堂大学, 医療看護学部, 助教 (70550820) 研究活動スタート支援 研究開始時の概要: 研究概要:精神科看護師が行っている自殺未遂経験のあるうつ病入院患者への看護行為を明らかにすることを目的とし、精神科病棟看護師30名へのインタビュー内容をGrounded Theory(strauss et al.,2007)を用いて分析した。その結果、中核カテゴリ【再度の自殺を防止する】と関連する5つのカテゴリ【患者の気分の変動を最小限にする】【再度の自殺の徴候を察知する】【患者の馴染みになる】【一進一退の患者につきあう】【患者自身で解決する力をつける】が抽出された。本研究により当該患者への看護行為が明らかになった。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  45. 自殺と地磁気擾乱との関連性を検証するための研究 2009-04-01 – 2013-03-31 多田 春江 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (10432379) 若手研究(B) 研究開始時の概要: 研究概要:日本全体の月毎の自殺者数と月毎のK指数平均値との関連性を、他の要因を調整した上で、重回帰分析を用いて男女別に解析したところ、男性では、統計学的に有意な相関がみられたが、女性ではみられなかった。
    地磁磁気の擾乱が自殺に影響を与えるのであれば、地磁気の強い場所ほど、地磁気の変動も大きいため、自殺者数が増える可能性が考えられる。そこで、都道府県別の月毎の自殺による標準化死亡比と各都道府県の地磁気の強さとの関連性を、他の要因を調整した上で、重回帰分析を用いて男女別に解析したところ、男性では、統計学的に有意な相関がみられたが、女性ではみられなかった。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  46. 空間データの構造解析とその集積性の研究 2009 – 2011 石岡 文生 岡山大学, 大学院・法務研究科, 助教 (20510770) 若手研究(B) 研究開始時の概要: 研究概要:ある郡における病気の発生率等の様な領域毎に得られる各種の空間データに対して、有意に高い領域群(集積性、クラスター)を検出する新たな手法を確立した。具体的には、空間データが本来もつ階層構造の上位に位置する領域から優先的にホットスポット領域を探索していく。これにより、大量の領域からなる空間データや、多次元空間データ、時空間データなど、先行研究では困難であった各種の空間データに対するホットスポット検出を可能にした。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  47. 気候変動と自殺遂行の関連についての検討 2008 – 2010 井上 顕 藤田保健衛生大学, 医学部, 講師 (40469036) 若手研究(B) 研究開始時の概要: 研究概要:日本の自殺者数は1998年に急増し、近年においてもその推移であることから分かるように、自殺減少のための確立した対策が早急に必要である。本研究では気候要因の側面に着目し、各気候項目が自殺遂行への影響について日本の自殺死亡率の高・低都道府県を複数対象とした他、いくつかの事項に関して統計学的検討を行い、また、季節の点からも検討した上で、考察した。そして、日本全体としての観点とともに各地域からも考察し、様々な要因の検討とともに注意を払うべき気候変動を考えることが重要である。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  48. 中山間地域高齢者の抑うつ状態に対する栄養介入の効果 2008 – 2010 山下 一也 島根県立大学, 短期大学部・看護学科, 教授 (30210412) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:魚摂取を増やす介入(魚料理教室)がうつ状態に与える影響について検討した。対象者は高齢者22名で、月1回の料理教室の開催を1年半行った。75歳以下の群ではツング自己評価式抑うつ尺度37.4±6.1点(前)から31.7±7.7点(後)へと減少傾向がみられた(0.05<p<0.1)。75歳以上の群では変化は認められなかった。魚摂取は前期高齢者では、うつ状態の改善効果が期待できることが示唆された。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  49. うつ病患者-家族支援:eラーニングの教育効果と活用の可能性についての研究 2007 – 2008 北川 明 福岡県立大学, 看護学部, 講師 (20382377) 若手研究(B) 研究開始時の概要: 研究概要:社会問題であるうつ病および自殺者数増加の防止、低減を目指し、その中で現代社会において最も急速に発展を遂げてきているインターネットを利用してのヘルスケア教育の在り方や今後の課題についての知見を得ることを目的とし、うつ病患者に対しアンケート調査を行った。その結果、「不安(70%)」、「落ち込む(70%)」、「不眠(70%)」といったことに悩んでいた。また、うつ病の情報収集にインターネットを利用したいと考えているものは70%であった。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  50. Age-Period-Cohort分析による都道府県別自殺動向の世代特徴の解明 2007 – 2009 小田切 陽一 山梨県立大学, 看護学部, 教授 (20152506) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:自殺は公衆衛生学上の重要課題であり、効果的な対策を講ずる上で高リスク集団の把握が必要である。1985~2004年の15-79歳の自殺死亡について、ベイズ型年齢-時代-コホート分析をおこない、性別、都道府県別の結果について、クラスター分析により、年齢・時代・コホート効果の変動パターンを類型化した。50歳代男性を中心とした年齢効果、1998年以降の時代効果および特徴的な世代(男性:1926年生まれ以降1844,61,81年ピーク、女性:1956年以降)効果として高リスク集団が把握された。またクラスター分析の結果からは、男女ともに大都市圏を含む都道府県に類似性を認めた。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  51. 初発統合失調症者の25年長期転帰に関わる社会心理学的・生物学的要因の影響 2006 – 2007 中根 秀之 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 准教授 (90274795) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:【目的】長崎大学精神神経科学教室では1978年からWHOの共同研究の一つとして、初発統合失調症患者における転帰研究を行っている。今回我々はその継続的研究として、昨年度より超長期経過と転帰について調査を行った。
    【方法】対象は、1979年から2年間に発病した統合失調症事例(107例)である。発病率調査のために設定された長崎市内及び近郊の30の病院、医院、保健所などの施設(Case Finding Network)を中心に、協力依頼施設にて追跡を行った。各主治医に研究の趣旨や方法を説明し、承諾が得られた場合対象者に接触した。対象者・家族に研究の趣旨を説明し同意が得られた事例について、調査を行った。評価項目としてPANSS、SANS、Mini-ICF-Rating for Mental Disorders(Mini-ICF-P)、DAS、LCS、KAS、WHOQOL-26、バウムテスト、GAF、GAS、CGI等を用いた。Mini-ICF-PはWHOが発表したICFをもとにしてLinden M(2005)によって開発された新しい評価尺度である。この調査はヘルシンキ宣言の主旨に沿った倫理的配慮の下、十分なインフォームド・コンセントを得た上で、プライバシーに関する守秘義務の遵守と匿名性の保持に十分な配慮をして行った。本研究は長崎大学医学部倫理委員会で承認されている。
    【結果】現在、調査は進行中であるが、17例(男性6例、女性11例)の面接調査を行った。9例の死亡が確認された。そのうち6例が自殺であった。その他生存確認例が3例であった。
    【結論】DUPの長短が超長期の症候学的転帰に影響を及ぼすことが確認された。またMini-ICF-PとDASの間に有意な正の相関が認められた。今後、社会適応度評価の新たなアセスメントツールとしてini-ICF-Pの有用性が示唆された。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  52. 自殺予防活動をメンタルヘルスの視点から評価する指標の開発 2006 – 2007 佐々木 久長 秋田大学, 医学部, 准教授 (70205855) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:自殺予防活動を自殺者数(自殺率)で評価するのは簡単なことではない。また実際に展開される心の健康づくりなどの自殺予防活動は、一次予防的な側面も持っている。そこで、メンタルヘルスの視点から、活動を評価する指標を開発することを試みた。
    本研究は、自殺予防活動に積極的に取り組んで来た地域と、隣接する地域の住民を対象にした横断的調査を実施し、自殺予防活動が住民に与えた影響を調べた。調査内容は基本的属性の他、社会的支援、抑うつ度(SDS)、希死念慮や自殺・自殺予防に対する態度、ストレス・ストレス対処行動である。なお、調査直前に対象地域で児童連続殺害事件が発生したためPTSDに関する項目も加えた。
    両地域の比較分析の結果、自殺予防活動を展開した地域では、近隣からの道具的支援、自治体相談窓口の認知、そして相談相手の存在という点で肯定的な反応が多かった。PTSDについては17%の住民に該当する可能性が示唆された。
    さらに地理的に離れた地域でも同様の調査を実施した所、自殺予防活動に取り組んできた地域は、ストレス対処行動において「否認」が少なく「相談」が多かったのに対し、取り組んでいない地域は「否認」が多く「欲求を満足する」が多かった。
    以上の結果から、自殺予防活動は社会的支援とストレス対処行動を指標にすることで、その取り組みの成果を評価することが出来るということがわかった。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  53. 地域づくり型自殺予防対策の有効性に関する研究-ソーシャルキャピタルモデルの構築- 2006 – 2008 本橋 豊 秋田大学, 医学部, 教授 (10174351) 基盤研究(B) 研究開始時の概要: 研究概要:秋田県で行われてきた住民参加型の自殺対策モデルにより、秋田県の自殺者数は毎年約24人減少することが明らかになった。秋田県の自殺対策モデルはソーシャル・キャピタルモデルとして解釈できることから、地域の自殺対策の推進におけるソーシャル・キャピタルモデルの有用性が本研究で検証されたと考える。総合的な地域づくり型自殺予防対策が有効性を示したことは、何よりも自殺対策におけるソーシャル・キャピタルの重要性を根拠づけるものと考えられる。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  54. うつ病の病態解明を目指した発現プロテオミクス 2005 – 2006 河合 香里 徳島大, 研究員 (80398007) 若手研究(B) 研究開始時の概要: 研究概要:現代社会においては自殺者数の増加が大きな問題になっているが、自殺者の約7割がうつ状態であるといわれており、ストレスに起因するうつ病発症のメカニズムを解明することは急務である。我々は、末梢血白血球を用いたストレスの客観的かつ簡便な評価システムであるDNAチップを(株)日立製作所と共同開発し、うつ病特異的に変動する遺伝子群を同定した。
    本研究ではDNAチップの結果に基づき、うつ病特異的に変動する遺伝子群の機能解析を行い、うつ病発症に関連するストレス応答のバイオマーカーを探索することを目的として、以下の検討を行った。
    1)末梢血白血球mRNAを用いたリアルタイムPCRによるDNAチップの結果の検証
    うつ病患者および健常者より採取された末梢血白血球よりRNAを抽出し、リアルタイムPCRによって、DNAチップで同定された約100個の遺伝子についての発現変動を検討した。なおサンプル採取にあたっては、本研究の目的・情報管理などについて説明を行うとともに、書面での合意を取得している。
    2)ストレス負荷モデルマウスを用いた脳内遺伝子発現変化の検討
    うつ病患者の末梢血白血球での遺伝子発現変化と脳内での変化の相関について明らかにしたいが、倫理上患者の脳サンプルで行うことは困難である。そのため、ストレス負荷時の脳内遺伝子発現変動についてはマウスを用いて検討した。C57BL/6マウスに1時間および6時間の拘束ストレスを3週間にわたり負荷し、血液・脳を採取した。ストレス負荷により血中コルチコステロンレベルの上昇が認められた。脳内の遺伝子発現変動については、リアルタイムPCRで検討するとともに、それらの発現部位を同定する目的で、in situ hybridizationおよび免疫組織学的検討を現在進めているところである。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  55. 高齢者のうつ病早期治療と自殺予防を目的とする都市型地域介入プログラムの開発 2005 – 2006 粟田 主一 東北大学, 大学院医学系研究科, 非常勤講師 (90232082) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:1.日本語版WHO-5の有用性を地域在住高齢者の自殺念慮検出という文脈で評価した.70歳以上高齢者696人に一連のアンケート調査を実施Chronbach α係数は0.87,Loevinger係数は0.64.WHO-5合計点は,同居家族数,身体疾患数,身体機能,手段的ADL,抑うつ症状と有意に相関.自殺念慮をもつ高齢者ではWHO-5合計点が有意に低い.ROC曲線分析は自殺念慮のある高齢者を有意に識別.主観的ソーシャルサポート(PSS)欠如と組み合わせ,WHO-5合計点12点以下またはいずれかの項目で0点または1点であることをカットオフにすると,より適切に自殺念慮を識別できた(感度87%,特異度75%,陰性的中度99%,陽性的中度10%).日本語版WHO-5はPSSとの組み合わせで地域在住高齢者の自殺念慮を効果的に検出できる.
    2.高齢者のうつ病早期治療と自殺予防を日的とする都市型地域介入プログラムを開発するために、ポピュレーション戦略とハイリスク戦略を組み合わせた総合的地域介入プログラムの効果を,自殺念慮と精神的健康度を転帰の指標として調査した.普及啓発,保健相談,地域活動強化,スクリーニング型介入は地域住民のソーシャルサポートを高め,保健専門職による訪問・ケースマネジメント型介入がうつ病高齢者の精神的健康度を高め,自殺念慮を軽減した.また、2002年にスタートした本研究および2004以降に仙台市でモデル事業化されている総合的地域介入事業が高齢者の自殺率に及ぼす効果を検証するために、仙台市における高齢者の自殺死亡数の推移を調査したところ、1990年〜2001年までは80歳以降の後期高齢期に自殺率のピークが認められていたが,2002-2005年の4年間で後期高齢期の自殺率ピークが消失した.後期高齢期の自殺率ピークの消失は,男女いずれの群にも認められた.高齢者の自殺率減少が最も目立つ区は,モデル事業として介入事業をスタートさせた宮城野区であった.うつ病高齢者を対象とする総合的地域介入事業は,高齢者の自殺予防に有効である可能性が高い. 研究成果の概要:研究実績の概要:
  56. 家族を自殺で亡くした人へのSpiritual Careに関する研究 2002 – 2004 吉野 淳一 札幌医科大学, 保健医療学部, 助教授 (80305242) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:家族を自殺で亡くした人へのSpiritual Careとして3つのアプローチを行った。
    一つは、自死遺族の思いを語る集い(癒しの会)というグループアプローチである。もう一つは、シャーマンへのインタビューにより、この世とあの世をつなぐ役割を負って来た者の認識を知り、自死をどのように捉えているかを知ることである。最後は、自死遺族の夢の中での自死者との対話に焦点を当て、コミュニケーションが死後も続けられていることを遺族とともに確認していくことである。
    これらの3つのアプローチは、トランスパーソナル心理学/精神医学会、日本家族研究・家族療法学会等で発表してきた。
    家族を自殺で亡くした人へのSpiritual Careの中核を構成するであろう””癒し””は、生きること死ぬことの本態とその関連を知りつつ自らが納得できるストーリーと出会っていく旅の中にそのヒントが隠されているのではないかと思われる。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  57. 豪雪・過疎地における老人自殺予防に関する研究 2000 – 2003 細木 俊宏(2002-2003) 新潟大学, 医歯学総合病院, 助手 (00313544)
    高橋 邦明(2000-2001) 新潟大学, 医学部・附属病院, 助手 (00303149) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:高齢化社会のモデルとして豪雪・過疎地である中郷村を選び、松之山町で成功した自殺予防介入方法を異なる地域で用いることによって、有効な自殺予防介入を検証した。平成13年(平成12年度)から3回にわたって、対象者である60歳以上の中郷村村民全員(1684〜1688人)に新潟大学方式自己記入式うつ病尺度(SDS)を配布し、SDSを回収した。回収されたSDS点数をもとに、うつ状態や自殺の危険性を評価するためにDCRによる診断面接を行なった。2年目からは積極的な介入を行なうため、自責感、焦躁感、希死念慮の有無が自殺の危険性と関連している質問項目として5つを選び、診察対象者を絞り込んだ。対象者を精神科医師が診断面接し、うつ状態や自殺の危険性を評価し、自殺予防介入方法としてその妥当性を検討した。また啓蒙活動としてうつ病について講演をおこなった。平成12年度〜14年度の3年間で8名が自殺したが、7名のSDS点数は60点未満であり、診断対象から外れていた。また1名は絞込み項目で点数が低いことから診察対象から除外された。そのためSDSの総得点、絞り込むための項日は自殺既遂者を特徴づけるものとはいえなかった。しかし自殺既遂者によるアンケート結果から、自分が社会や家族にとって必要とされるか、仕事を気楽にできるか、充実した人生であるか、頭はすっきりしているか、息苦しいか、動悸がないか、などへの回答が自殺既遂者と非既遂者で異なる傾向があった。
    現時点まで介入前後における中郷村の自殺率の変化は認められない。啓蒙活動の継続や地元スタッフ参加協力による共同活動を通して、地域における自殺予防介入の重要性とその必要性についてある程度の理解が得られた。しかしうつ病の早期発見、早期治療から自殺を予防していくためには今回用いた手法の限界、絞込みや訪問診察などの介入方法、評価方法に改善すべき点があると考えられた。 研究成果の概要:研究実績の概要:
タイトルとURLをコピーしました