血液により体の他の組織へ運搬されるエネルギー源:グルコース、脂肪酸、ケトン体

生体ではエネルギーを利用するときにATPの加水分解によるエネルギーを使っています。エネルギー源の最終的な利用形態はATPと言えるでしょう。ATPは血中を通して他の組織い運ばれるわけではなく、使う細胞で自分で他のエネルギー源から作られます。解糖系から2当量のATPが産生されるほか、酸素があればTCA回路、電子伝達系によってさらにたくさんのATPが産生されます。

つまり、ATPを産生するためのエネルギー源として、血中から何を取り込んで使うことができるのかという話になります。

グルコース

血糖値と言う言葉があるくらいですので、グルコースがエネルギー源の輸送形態として活躍していることは周知の事実です。食事によって、糖質が分解されるとグルコースが産生されて、血中に入ります。食間にはどうなるかというと、肝臓と筋肉では余剰なグルコースはグリコーゲンとして貯蔵されているので、グリコーゲンを分解して使うことになります。

ここで重要なことは、肝臓のグリコーゲンと、筋肉のグリコーゲンでは、代謝のされ方に大きな違いがあります。肝臓のグリコーゲンはグルコースにまで分解されて血中に放出され、他の組織へ運ばれて使われます。それに対して、筋肉のグリコーゲンは、グルコースになることなく解糖系に入ります。つまり、筋肉グリコーゲンは、他の組織のエネルギー源としては使われることなく、筋肉の中でのみエネルギー源としてつかわれることになります。

肝臓と筋肉のグリコーゲン代謝の違いは何に起因するのかというと、グリコーゲンが分解される過程でグルコース1-リン酸ができ、それがさらにグルコース6-リン酸となりますが、肝臓ではグルコース6-ホスファターゼの働きでグルコースになることができて、血液中に放出されることになるわけです。それに対して、この酵素グルコース6-ホスファターゼが筋肉には存在しないために、筋肉ではグリコーゲンが分解されてもグルコースにまではならにのです。グルコース6-リン酸は、解糖系においてはグルコースがリン酸化されてできる代謝物ですので、そのまま解糖系の反応へと進んでいくことになります。

筋肉にはグルコース6-ホスファターゼがないため、「糖新生」を行うこともできません。糖新生は、ピルビン酸から解糖系を「ほぼ」逆行してグルコースを作る経路です。最後のステップは、グルコース6リン酸を脱リン酸化してグルコースにする反応(つまり、解糖系においては、グルコースをリン酸化してグルコース6リン酸にする反応が最初のステップ)です。糖新生が行われる臓器は、主として肝臓と腎臓です。

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脂肪酸

食間などでグルコースが不足すると、グリコーゲンが肝臓で分解されてグルコースが産生され、血中を通って他の組織に輸送されるのでした。しかし、飢餓状態が続くと、グリコーゲンも枯渇してしまいます。そうなると、脂肪組織で脂肪が分解されてトリグリセリドと遊離脂肪酸が生じます。脂肪酸は、血中でアルブミンと結合した状態で各臓器へと運ばれます。脂肪酸をたくさん使う臓器は、骨格筋、心臓、肝臓、肺などです。

脳は、血液脳関門があるために、脂肪酸が入ることができず、「脳は脂肪酸を利用できない」というのはポイントです。

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ケトン体

肝臓へ運ばれてきた脂肪酸に関しては、肝臓において脂肪酸はβ酸化を受けて、アセチルCoAになります。アセチルCoAの状態では血中に入れないので、ここで一旦、ケトン体へと変換されます。このケトン体が血中に乗って、他の組織へと運ばれるわけです。

すでに上で説明したように、飢餓状態においては、グルコースの代わりに、ケトン体が輸送可能なエネルギー源ということになります。脂肪酸で運ばないの?という疑問が生じるかもしれませんが、脳では血液脳関門Blood Brain Barrier (BBB)というものが存在していて、みだりに脳の中に物質が入っていけないようになっており、脂肪酸は脳に入ることができないのです。

遊離脂肪酸が肝臓でβ酸化されてアセチルCoAとなり、さらにケトン体に変換されて血中に放出されます。主として、骨格筋、心臓、腎臓、さらにはにおいて、ケトン体が利用されます。

  1. 脳を安定して働かせられる食事とは(上) 大阪大学名誉教授・関西学院 産業医 杉田 義郎 COOP