VERIGENEの使用例
感染症の患者さんを呼吸器科で診療する際に、起因菌を同定するための検査装置としてVERIGENEというものがあるそうです。
Flex Testing with the VERIGENE® System: Respiratory Pathogens and Beyond (Webinar) 2018/01/08 Luminex Corporation
感染症の患者さんを呼吸器科で診療する際に、起因菌を同定するための検査装置としてVERIGENEというものがあるそうです。
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科研費の申請書を書いている研究者の方々の多くが悩んでいることの一つが、「着想に至った経緯」や「国内外の研究動向と本研究の位置づけ」は、「本研究の学術的背景」とどう書き分ければよいのか?という点です。背景も経緯も似たようなものですし、背景と動向も似たようなものです。内容がそもそも被っているからといって同じことを繰り返し書いてもいいのでしょうか。全く同じことを書くのは、芸が無さすぎです。審査委員だって、同じような記述が2回も3回も繰り返されていたら、面白くないでしょう。
さて、経緯や動向と背景とをどう書き分ければいいのかという疑問を抱くのは当然のことです。というのもこの悩みは2018年度科研費の様式の変更に伴って必然的に発生したものだからです。変更前の2017年度の科研費の申請書を見てみると、セクションの割り振りが今とは大きく違っていて、最初の2ページは「研究目的」を書くページです。指示としては3つのことを書くようになっていて、①研究の学術的背景(本研究に関連する国内・国外の研究動向及び位置づけ、応募者のこれまでの研究成果を踏まえ着想に至った経緯、これまでの研究を発展させる場合にはその内容等) と明確な指示がありました。つまり、様式を作った側も、動向や位置づけ、着想を学術的な背景の中身として考えていたのです。もともと同じ場所に書く内容だったのですから、同じに感じるのは当たり前。
このような科研費申請書の様式の変遷を考えれば、多少の内容のオーバーラップは当然だと思います。しかし、同じことを3回繰り返し記述するのはばかげていますので、やはり書き分けたいところです。書き分けるヒントですが、同じことでも違う角度で見れば、違うものように見えます。同じこと内容を書くにしても、書く目的が異なればおのずと力点を置く場所が変わってきます。
書き分けるべきは、「内容」ではないのです。内容は同じでいい、いやむしろ同じでないとおかしいのです。変えるべきは、何をそこでアピールしたいのかということです。
「背景」でアピールしたいことは、自分が立てた「学術的問い」の妥当性です。
「動向」でアピールしたいことは、自分がその問い答えるべきベストの人間だということです。
「着想」は動向・位置づけの中に混ぜ込んで書いてもいいし、分けて書いてもいいと思います。ただし、着想というくらいですので主観的な書き方が許されますし、主観的に書かれていることゆえ客観的な評価の対象とはなりにくいのではないかと思います。なんでこんな面白いこと考え着いたんだろう?という読み手の疑問に答えてあげる程度でいいんじゃないでしょうか。
科研費の様式は、2018年度に非常に大きな変更がありました。そのため、以前から科研費に応募してこられた方は、何をどこに書けばいいのかわからず戸惑っているかもしれません。2018年度科研費以降に初めて様式を見た人も、どこに何を書けばいいのやらわからないという人が多いはずです。そのわかりにくさ、もやもやの一番の原因は何かというと、研究計画や研究方法をどこに書いたらいいのかの明確な指示がない!というところにあると思います。
2017年度科研費の基盤研究(C)の様式(様式S-1-8)を見てみると、3ページ目と4ページめが、「研究計画・方法」のページになっていて、「本欄には、研究目的を達成するための具体的な研究計画・方法について、冒頭にその概要を簡潔にまとめて記述した上で、平成29年度の計画と平成30年度以降の計画に分けて、適宜文献を引用しつつ、焦点を絞り、具体的かつ明確に記述してください。」という明確な指示がありました。
ところが、2018年度以降の科研費の基盤研究(C)の様式(様式S-14)を見ても、「研究計画」の欄がないのです。様式の名として「研究計画調書」とあるほかには、研究計画という言葉が、この様式の中にはそもそも見つかりません。最初の3ページは「1 研究目的、研究方法など」を書くようになっていて、指示としては、
本欄には、本研究の目的と方法などについて、3頁以内で記述してください。冒頭にその概要を簡潔にまとめて記述し、本文には、(1)本研究の学術的背景、研究課題の核心をなす学術的「問い」、(2)本研究の目的および学術的独自性と創造性、(3)本研究で何をどのように、どこまで明らかにしようとするのか、について具体的かつ明確に記述してください。
とあります。「計画」という言葉はなくても「方法」という言葉は「1 研究目的、研究方法など」の中にあるので、方法はこの3ページの中のどこかに書かないといけないことは明らかです。そして、(1)、(2)、(3)という項目の説明を読むと、どうやら方法を書くべき場所は(3)以外には無さそうです。つまり、「(3)本研究で何をどのように、どこまで明らかにしようとするのか」が、2017年度科研費まであった「研究計画・方法」に相当するセクションだと考えられます。
ところが、紛らわしいことに2017年度科研費までの様式だと、「②研究期間内に何をどこまで明らかにしようとするのか」を「研究目的」(基盤研究(C)の場合2ページ分)の中に書くことになっていたのです。2017年度までは「研究計画・方法」というページが2ページ分用意されていたので、「②研究期間内に何をどこまで明らかにしようとするのか」は、文字通り何をどこまで明らかにしようとするのかをサラッと書いておけばよかったのでした。しかし、2018年度科研費以降は、「(3)本研究で何をどのように、どこまで明らかにしようとするのか」のセクションには研究計画・方法をしっかりと具体的に書きこまないといけないはずです。何しろ研究計画・方法を書く欄は他に見当たらないのですから。
このような事情があるために、科研費の申請書で何をどこに書けば良いのかに関して、非常にわかりにくさ、もやもや、が発生しているものと思われます。
そのせいかどうかわかりませんが、(3)本研究で何をどのように、どこまで明らかにしようとするのか のセクションに非常に大雑把な記述しかしていない人が結構います。審査委員が読んだときに、計画が具体的に説明されていないと判断されて採択の可能性は大幅に下がることでしょう。さて、言いたいことを最後に繰り返しておくと、(3)本研究で何をどのように、どこまで明らかにしようとするのかのセクションには研究計画や方法を具体的にしっかりと書きましょうということになります。
耳かきは適度にやれば心地良いのですが、やりすぎると耳の中を傷つけてしまい痛い思いをします。痛いだけで済めばよいのですが、耳の病気になる恐れもあるようです。
大学の医学部では、将来、医師として人々の診療にあたり、同時にヒトを対象とした研究をも行うことになるかもしれない学生たちが学んでいます。このように将来進む道がある程度定まっている医学部の学生に対して、どのような生物学教育を行うのが効果的なのでしょうか。
医学研究では暴露因子の有無と疾患の有無とを集計して関連性を解析することが頻繁に行われています。
疾患 あり a+c 人 | 疾患 なし b+d 人 | |
暴露因子 あり a+b 人 | a 人 | b 人 |
暴露因子 なし c+d 人 | c 人 | d 人 |
の表に該当する人の数が入るわけです。ここではa人、b人、c人、 d人とそれぞれ書いておきます。この表に基づいて、オッズ比やリスク比を求めることが出来ます。
オッズ比=(a/b) / (c/d)
リスク比=(a/(a+b)) /(c /(c+d))
オッズ比とリスク比は、式が似ていますが何が違うのでしょうか?オッズ比とリスク比のどちらを論文で示すべきか?が何できまるのかというと、このデータがどのように収集されたのかで決まります。前向き研究によって、暴露因子の有無で被験者を予め群に分けておき、それぞれの群の被験者たちを何年か追跡調査して、ある時点における疾患の有無を調べたのだとしたら、リスク a/(a+b)を計算することに意味がありますので、リスク比を示すことが適切です。
しかし、稀な疾患の場合は、暴露因子で分けて前向き研究をしてもほとんど疾患を生じる被験者がいなくて研究が成り立たないことがあります。その場合には、後ろ向き研究(症例ー対照研究)が良く用いられます。症例対照研究においては、aやbの人数は研究者が自分で決めるため、恣意的な数字であり、a+b 人のうちa人が病気になったということにはなりません。なのでリスク比を計算することは全く無意味であり、その場合にはオッズ比が計算されます。横断研究の場合も同様です。ある時点において研究対象者を集めてきて、疾患の有無と暴露の有無で4つに分けたとしても、追跡調査をしていない以上、研究対象者の集め方に何らかの偏りがあるためリスクの計算はできません。
ケース・コントロール研究や横断研究など前向きでない研究だとリスクが定義できないので、リスク比の代わりにオッズ比を使う。エンドポイントが稀にしか起きない場合には、オッズ比はリスク比の良い近似になる
(参照:統計検定1級対応 統計学 日本統計学会編 東京図書 263ページ)
ここで暴露因子ありなしそれぞれに関して、「危険度」というものが定義されてそれは、 疾患あり/疾患なし であらわされます。暴露因子ありの場合の危険度は、 a/(a+b)、 暴露因子なしの場合の危険度は c/(c+ⅾ) です。
危険度の比
(a/(a+b) ) / (c/(c+d)) を相対危険度、あるいは相対リスク (Relative risk; RR)といいます。
また、事象が起きる確率 / 事象が起きない確率 という比のことをオッズと呼びます。今の場合暴露因子ありの条件下で、疾患ありの確率/疾患なしの確率は a(a+b) / b(a+b) = a/bで、これがオッズになります。同様に暴露因子なしのときのオッズは c(c+d) /d(c+d) = c/d です。
暴露因子ありのオッズとなしのオッズの比をオッズ比と呼び、 (a/b) / (c/d) となります。暴露因子が疾患の発症に影響していなければ、(a/b)と(c/d)は同じ値になりますので、オッズ比は1になります。暴露因子の影響で疾患が生じているのであれば、オッズ比は >1になります。実際の数をみてみましょう。喫煙と喘息との関係を調べた論文の数字を借りてみます。
喘息あり | 喘息なし | |
喫煙歴あり | 726人 | 13836 人 |
喫煙歴なし | 1306 人 | 35123 人 |
喫煙歴ありの危険率 = 726 / (726 + 13836) = 0.050
喫煙歴なしの危険率= 1306 / (1306+35123) = 0.036
相対危険度 = 0.050 / 0.036 = 1.39
煙草をすうと喘息になる確率が1.39倍に上がってしまうというわけです。「危険率」は日常語と同じ理解でいいので、問題ないですね。
喫煙歴ありのオッズ =726/13836 = 0.053
喫煙歴なしのオッズ = 1306 / 35123 = 0.037
オッズ比 = 1.43
逆に治療薬の効果を調べる研究で、治療薬が効いていれば、治療薬投与の有無に関するオッズ比は、1より小さくなります。1より小さいことが有意であればその治療薬は効果があったといえるわけです。
オッズ比の別の例を論文から引いてみたいと思います。下の例は大腸癌になるリスクがあるSNPを調べた論文です。アレルあたり9%つまりオッズ比1.09という数字が紹介されています。
(アレル有 大腸癌罹患 / アレル有 健常)/ (アレル無 大腸癌罹患 / アレル無 健常) = O.R.
Mean per-allele increase in risk was 9% (OR 1.09; 95% CI 1.05–1.13). https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5105590/
上のO.R.の式で、アレルの有無が大腸癌の罹患に全く影響しないのであれば、分母と分子は同じになります。アレルのせいで大腸癌になりやすいのであれば分子のほうが大きくなるので全体が1より大きい数字になります。今それが1.09だったというわけです。
Colorectal cancerのリスクに関する別の報告例。
Meta-analysis implied considerable association between CRC and rs9929218 (OR = 1.21, 95%CI 1.04–1.42 for GG versus AA; OR = 1.22, 95%CI 1.05–1.42 for GG/AG versus AA). In the subgroup analyses, significantly increased risks were found among Europeans. https://bmccancer.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12885-021-07871-z
上記の相対危険率(=相対リスク=Relative risk; RR))は前向きコホート(つまり暴露因子の有無で分けて分析)での計算であって、症例対照研究だと使えないという注意が下の解説記事にありました。
マウスの解剖 2012/10/05 PLESTIODON
タバコは体に悪いというのはもはや常識で、体に害を及ぼ素可能性がありますという注意書きがタバコの箱に印刷されています。自分も若いときにはなんとなく吸っていましたが、お金もかかるし美味しいとも思っていなかったし、もはやタバコを吸うことがカッコいいと思われる時代でもないし、体にも悪いのでやめました。
論文:The 21st century hazards of smoking and benefits of stopping: a prospective study of one million women in the UK
雑誌&発表年:Lancet . 2013 Jan 12;381(9861):133-41. doi: 10.1016/S0140-6736(12)61720-6. Epub 2012 Oct 27.
Of the 30 most common causes of death, 23 were increased significantly in smokers; for lung cancer, the rate ratio was 21·4 (19·7-23·2).
論文:Early landmark studies of smoking and lung cancer
雑誌&発表年:The Lance Oncology VOLUME 11, ISSUE 12, P1200, DECEMBER 01, 2010 December, 2010DOI:https://doi.org/10.1016/S1470-2045(09)70401-2
レビューアーティクル。1950年に喫煙と肺がんとの関連を始めて示した2つの論文(JAMAとBMJ)が紹介されている。注意すべきこととして、この最初の2報は「関連」を示したものであって、「因果関係」を示したわけではない。
論文:Cigarette smoking and subsequent risk of lung cancer in men and women: analysis of a prospective cohort study
雑誌&発表年:Lancet Oncol 2008 Jul;9(7):649-56. doi: 10.1016/S1470-2045(08)70154-2. Epub 2008 Jun 13.
論文:Mortality in relation to smoking: 22years’ observations on female British doctors (PDF)
雑誌&発表年:BRITISH MEDICAL JOURNAL 5 APRIL 1980
6194名の女性医師を22年間にわたって追跡調査した前向き研究。
基礎系の研究者が動物を用いた実験を行う場合には、動物愛護に関する法律や遺伝子組み換えに関する倫理指針などの遵守が求められますが、医師が臨床試験を行う場合には人を対象とするため、非常に厳しき規制にもとで行う必要があります。診療行為と研究との境界が曖昧だった昔と同じようなことを万が一やってしまうと、違法行為として処罰の対象となる可能性があります。
診療は既に有効性が確立していることを医師が目の前の患者さんに利益をもたらすために行う行為です。それに対して、研究は、目の前の患者さんの利益のために行うわけではなく、将来の大勢の患者さんのために、 まだ有効性が確立していないことを行ってその有効性を検証するものです。
診療:ある患者 もしくは受診者個人の福利を高めるためだけに考案され、それなりに成功が見込める介入行為
研究:仮説を検証し、結論を導き出すことを可能とし、それによって、一般化可能な知識を開発したり、そのような知識に貢献したりするように考案された活動
(参考:ベルモントレポート)
臨床研究は大きくわけると、介入研究と観察研究の2つ分けられます。
「侵襲」と「介入」がキーワードであり、『侵襲あり‐軽微な侵襲‐侵襲なし』と『介入あり‐介入なし』の二つの条件軸を対比した座標のいずれに該当するかによって、倫理的な手続きに差異が生じてきます (<介入の意味>)
侵襲ありならば介入研究ということのようですが、介入ならば侵襲ありというわけではありません。侵襲なしの介入研究はあります。例えば、2群に分けて片方だけエクササイズの習慣を指導するなど。
以前の指針では「侵襲」を伴う研究は「介入研究」と定義されていましたが,今回の指針では,定義が区別されました.(人を対象とする医学系研究に関する倫理指針 日本腹部救急医学会)
臨床研究のテーマをどうやって決めるか、選ぶかを考える際に、どんな臨床研究のテーマがあるのかその種類を考えて頭を整理しておくのが有効です。また、他人の書いた論文を読む際にも、臨床研究テーマの何に分類される研究かという観点で読むと、内容を素早く把握できると思います。
臨床医にとって、主な研究テーマとなり得るものは、
- 新しい疾患概念の創造
- 予知法、診断法の開発
- 治療法の開発
(臨床研究と論文作成のコツ 松原茂樹 編 東京医学社 2011年 118ページより)