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ビタミンB6(ピリドキシン)とは

ビタミンBは1から12までありますが、4,8,10,11が抜けています。つまり、1,2,3,5,6,7,9,12があります。化合物名は「ちりなぱぴびようし」(散りな、パピ美容師)と覚えることに自分はしました。

  1. ビタミン (Vitamin)とは?ビタミンBを語呂合わせで覚える方法ビタミン (Vitamin)とは?

チアミン(VB1)、リボフラビン(VB2)、ナイアシン(VB3)、パントテン酸(VB5)、ピリドキシン(VB6)、ビオチン(VB7)、葉酸(VB9)、シアノコバラミン(VB12)です。

シアノコバラミンは名前が複雑ですが、シアノ+コバルト+アミン からなる造語だと知れば覚えやすいはず。

ビタミンB6は、ピリドキシン、ピリドキサール、ピリドキサミンの3つを合わせた総称で、補酵素として機能するピリドキサールリン酸(PLP)の材料になります。

ギンナン(銀杏)の食べ過ぎに注意

ギンナンには、ギンコトキシン(Ginkgotoxin)という物質が含まれており、食べ過ぎるとこれが「毒」になります。子供の場合、意識不明、けいれんをおこし、最悪の場合、死に至る例もあるそう。

食べ過ぎると中毒を起こす。戦後の食糧難の時代に事故が多発したが、最近でも小児が食べ過ぎて痙攣を起こす事故が時々発生している(銀杏の食べ過ぎで小児が痙攣を起こす理由とは 2018/07/30 medical.nikkeibp.co.jp)

IUPCA名は、4′-O-メチルピリドキシンで、その名前が示すようにピリドキシンに非常に構造が良くにており、ビタミンB6の働きを競合的に阻害してしまいます。

ギンナンの食べ過ぎ→ギンコトキシンがビタミンB6と競合→グルタミン酸脱炭酸酵素の活性の低下→GABAの生合成が阻害→抑制性神経細胞の働きが低下→興奮性神経細胞の活動が優勢→てんかんの発作

というメカニズムが想定されています。

銀杏の経口中毒量は、子どもは7~150個、大人は40~300個と言われています。小さい子どもの場合は中毒を起こしやすく、5~6個程度食べただけで中毒を起こしたという報告もあります。(何個までなら大丈夫? docomo.ne.jp)

  1. 健常成人に発症した銀杏中毒の 1例 JJAAM. 2010; 21: 956-60 患 者:41歳,女性 主 訴:嘔気,嘔吐,下痢,めまい,両上肢振戦, 悪寒

 

ビタミンB6の構造

原子の「番号」のつけ方に関してですが、Nが1番で、メチル基がついている炭素が2番、その順番で1,2,3,4,5,6となり、4位の炭素に結合している炭素が4’となります。ギンコトキシンは、4’の炭素に結合している酸素Oにメチル基が結合しているので、4′-O-メチルピリドキシンという名称になっていることがわかります。

  1. ギンコトキシン(ウィキペディア)

6員環のNに関しては、Hが結合してNが正電荷を帯びたもの(マクマリー生化学反応機構)と、Hがないもの(ウィペディア)と両方の説明があるようです。

ここまで、ギンナンを20個ほど食べながら記事を書きましたが、体調は問題なさそうです。

活性型ビタミンB6(ピリドキシンリン酸)の働き

ビタミンB6の働きがどうも覚えられない原因は、そもそもビタミンB6が非常に多くの役割を担うために自分の頭の中の整理が追い付いていからでした。

  1. 多才な補酵素:PLP 2017/3/15 ケムステーション

畠山『生化学』では、PLPの働きとして、α‐ケト酸のアミノ基転移アミノ酸の脱炭酸(セロトニン、ドパミン、GABAの産生)があげられれています。また、ビタミンB6欠乏症として、皮膚炎が挙げられています。

サッカリンとは

サッカリンは耳に馴染みのある物質名ですが、実際のところそれが何であるのかよくわかっていませんでした。名前からしてサッカライド(糖)もしくは誘導体、もしくはなにか糖に関係する物質だろうと思う程度の理解です。

サッカリンは人工甘味料の一種です。ベンゼン環に窒素と硫黄を含む5員環がくっついた形をしています。

  1. サッカリン(ウィキペディア)

サッカリンは水にとけないので、チューインガムの甘味料に使われるそう。サッカリンナトリウム塩は水溶性で他の食品に使われるみたいです。

甘さは砂糖の数百倍。過去に、発がん性が疑われた時期がありましたが、現在では否定されています。

  1. 添加物のサッカリンナトリウムは、安全性に問題ないか?(一般) 食品・健康食品 年月 2015年8月 福岡県薬剤師会 サッカリンナトリウムの1人当たりのADIは、293mg/人/日である。サッカリンナトリウム(サッカリンとして)の1日摂取量は0.387mg/人/日で、サッカリンナトリウムのADIを大きく下回っており、安全性に問題がないことが確認されている。 ADI(Acceptable Daily Intake)。人が生涯その物質を毎日摂取し続けたとしても、健康への悪影響がないと推定される1日当たりの摂取量
  2. 人工甘味料,特にサッカリンの砂糖代替品としての位置付けについて 明治以降の使用変遷を手掛りとして 光武幸 祉会環境学専攻祉会法講座 北海道大学大学院環境科学研究科邦文紀要 2:1~31 (1986).

糖の誘導体

グルコース

グルコースは、炭素5個と酸素1個が6角形の環状構造をつくっており(ピラノース)、グルコピラノース(D-glucopyranose)とも呼ばれます。D-は自然界の存在する異性体D-型という意味。

単糖の水酸基やその他の官能基が別の官能基に置き換わった誘導体が多数存在しています。

グルコサミン

グルコースの2位の炭素についている水酸基がアミノ基に置換したもの。カタカナにするとわかりにくいですが英語で書くと、glucoseにアミノ基がついたのでamineと総称されるものになりますから、glucose+amine= glucosamine という名前になっています。glucoseの語尾のeは、次とのつながりをよくするためにとれています。

グルクロン酸

糖の主鎖の末端のヒドロキシメチル基がカルボキシ基に置換したものがウロン酸(uronic acid)と呼ばれます。グルコースのウロン酸はglucuronic acid(グルクロン酸)となります。日本語名だとわかりにくいですが、英語名で考えるとgluc+uronicと分解できるので覚えやすいです。

ミオイノシトール(myo-inositol)

イノシトールは炭素6個が6角形の環状につながってそれぞれに水酸基がついた化合物です。水酸基と水素の配置の違いで異性体が存在しますが、1,2,3,5位の炭素についた水酸基が同じ側にある異性体がミオイノシトールと呼ばれます。

イノシトールという名前は、「甘い」という言葉に由来するそうです。

Inositol (myo-inositol, see below) was first isolated by Scherer (7), and called “inosite” because of its sweet taste.(A short history of inositol lipids Robin F. Irvine Journal of Lipid Research Volume 57, Issue 11, November 2016, Pages 1987-1994)

別の論文だと筋肉を意味するinosから来ているとも説明されています。またmyo-も筋肉のという意味です。

Inositol (hexahydroxycyclohexane) was first isolated from muscle in 1850 by Scherer. He coined the name “inositol” from the Greek inos (muscel). Nine stereoisomers of inositol are theoretically possible but only seven occur naturally, the exception being epi- and allo-inositol. Because myo-inositol is regarded as the major isomer among the inositols, with regard to both distribution and fuction, particular attention has been devoted to this compound. Although the name myo-inositol is in fact a pleonasm (it is derived from another Greek word for muscle, myo), its use has become generally accepted, and in this paper, myo-inositol will be refeerred to simply as inositol. (Plant inositides and intracellular signaling Plant Physiol (1993).103:705-709. Bjorn K. Drobak)

イノシトールは、1,4,5ーイノシトール3リン酸(IP3)というセカンドメッセンジャーとして重要な働きをします。これは、膜の成分の一つであるフォスファチジルイノシトールが、フォスフォリパーゼC(PLC)によってジアシルグリセロール(DAG)とIP3に分解され、IP3がセカンドメッセンジャーとなり細胞内の小胞体(カルシウム貯蔵庫)の膜上にあるIP3受容体カルシウムチャンネルに結合して開口しカルシウムを動員するという細胞内情報伝達系をなしています。

  1. Turtles All the Way: Reflections on myo-Inositol Bernard W. Agranoff J Biol Chem. 2009 Aug 7; 284(32): 21121–21126. PMCID: PMC2755834

アスコルビン酸(ビタミンC)

ヒトとモルモットはビタミンCを合成できませんが、ほとんどの動物はグルコースからビタミンCを合成することができます。アスコルビン酸はグルコース同様、炭素6個からなる化合物で、酸素を骨格に含む5員環を持っています。

ビタミンCはコラーゲンのプロリンとリシンを水酸化する酵素の補酵素として重要です。ビタミンCは、抗壊血病因子(antiscorbutic factor)として発見された歴史的な経緯から、アスコルビン酸(ascorbic acid)という名称がつきました。scorbicは壊血病の、a-は「非、無」の意味をあらわす接頭語です。例えばasexual といえば「性がない、無性の」と言う意味。

  1. 壊血病(かいけつびょう、英: scurvy、独: Skorbut)ウィキペディア

アスコルビン酸のIUPC名は、(R)-3,4-ジヒドロキシ-5-((S)-1,2-ジヒドロキシエチル)フラン-2(5H)-オンです。フランは酸素を含む5員環で二重結合を2つもつ化合物。フランの酸素が1番で、酸素が二重結合でついている炭素が2番、そっちまわりで1,2,3,4,5です。3,4位の炭素に水酸基がついています。5番の炭素には、1,2-ジヒドロキシエチル基が結合しています。

環状エステルのことをラクトンと呼びますが、アスコルビン酸はラクトンの骨格を持っているともいえます。

  1. アスコルビン酸(ウィキペディア)
  2. ビタミンC生産 nite.go.jp

リンゴ酸(maleic acid; malate)に関する疑問と答え

TCA回路の中間代謝物8つあるうちの一つがリンゴ酸です。

  1. クエン酸 (citrate)
  2. イソクエン酸 (isocitrate)
  3. α‐ケトグルタル酸 (alpha-ketoglutarate)
  4. スクシニルCoA (succinyl CoA)
  5. コハク酸 (succinate)
  6. フマル酸 (fumarate)
  7. リンゴ酸 (maleic acid; malate)
  8. オキサロ酢酸 (oxaloacetate)

台所でおやつに食べるリンゴを切りながら、そういえばリンゴ酸はリンゴに含まれているんだっけ?と思いました。名前からしてそうなんだろうと思いますが、一応確認しておきます。

リンゴに含まれる酸で一番多いのはリンゴ酸か?

それはそのようです。

In apple, malate is the predominant organic acid, accounting for up to 90% of total organic acid content ().(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8154052/

malic acid accounts for more than 90% of the total acid and largely controls apple fruit acidity (). (https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6997694/

リンゴ酸はリンゴに最も多く含まれるのか?

リンゴ酸はリンゴ以外の果物にも含まれるのか?

リンゴ酸は、リンゴ、桃、琵琶(ビワ、loquat)においては、これらの果物に含まれる有機酸のうちの主要な成分になっているそうです。

Three major organic acids that accumulate in most fruits include malic, citric, and tartaric acid, and their final concentration in ripening fruits depends on the balance between the biosynthesis of organic acid, their degradation, and their vacuolar storage [,]. Organic acids are different in various kinds of fruits. For example, citric acid is the major organic acid in citrus [], while malic acid is the predominant organic acid in apple [], pear [], and loquat [].(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6316603/

リンゴのどこにリンゴ酸があるのか?

Most of the malic acid in apple fruit resides in the vacuole of the parenchyma cells () (https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6997694/

リンゴのリンゴ酸は何をしているのか?

リンゴ酸は誰が見つけたのか?

リンゴ酸は誰が名付けたのか?

リンゴ酸の作用は?

Malate, which is one of the main organic acids, has various biological activities and pharmacological effects including the promotion of ATP production, antioxidant and anti-inflammatory activity, and the ability to reverse oxidative stress ().(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8154052/

 

抗凝固剤ヘパリンとワーファリンの違い?

第103回 看護師国家試験  午前 問題15 抗血小板作用と抗炎症作用があるのはどれか。

  1. ヘパリン
  2. アルブミン
  3. アスピリン
  4. ワルファリン

解説

  1. 看護roo!

ヘパリンとワルファリンの作用が抗凝固作用であることはおさえておく必要があります。

第105回 看護師国家試験 午前問題72 Aさん(60歳、男性)は、胃癌の手術目的で入院した。大動脈弁置換術を受けた既往があり、内服していたワルファリンをヘパリンに変更することになった。確認すべきAさんの検査データはどれか。

  1. PT—INR
  2. 赤血球数
  3. 白血球数
  4. 出血時間
  5. ヘモグロビン値

解説

  1. ワルファリン服用中の薬効評価としてのPT-INR 検査の樹 -復習から明日の芽を-菅原 和行(菅原バイオテク教育研究所)

  2. ナースフル

ヘパリンとワルファリンの作用は抗凝固作用であり、血液凝固に関する検査であるPT-INRが正解となります。

 

ヘパリンとワーファリンとの違い

構造に関していえば、ヘパリンはグリコサミノグリカンの一種であり、一方、ワーファリンはビタミンKと構造が似ていてビタミンKの競合阻害剤となる物質です。

  1. 術前後にワーファリン(R)からヘパリンへ切り替えても問題ないとする根拠について教えてください。(レバウェル看護)

 

参考

  1. グルタミン酸残基のγ-カルボキシ化とビタミンkの働きと代謝経路 yakugakugakusyuu.com
  2. PT INR(プロトロンビン時間 国際標準比)(APO PLUS薬剤師)
  3. 畠山『生化学』 ヘパリンの構造 65ページ、 単糖の誘導体の構造 58ページ

ATPをなぜ大量につくって保存しておかないのか

激しい運動をするとATPは数秒で消費されるそうです。そのため運動を継続するためにはATPを再生する必要があり、そのためには筋細胞ではクレアチンリン酸がリン酸をADPに供与してATPを再生します。クレアチンリン酸も枯渇すると、グルコースからATPを産生するしかありません。

そんなに不便なら最初からATPを大量につくって貯蔵しておけないのか?という疑問が湧きます。

ATP分子はかさばるので貯蔵に向かないから

Quoraの掲示板の答えを読んで、なるほどと思いました。

ATPの分子量は507.18 g/molですが、それに対して、ATPが加水分解により作り出すエネルギーは7 kcal/molしかなくて、グラムあたりだと7/507.18 = 0.0138 kcalしかありません。糖質やタンパク質のエネルギーは4 kcal/g、脂質は8 kcal/gと言われていますので、重量あたりのエネルギー産生能はATPの場合、非常に小さいということがわかります。つまり、ATPという分子は、かさばるばかりで貯蔵には向かないというわけです。

  1. Why can’t ATP be stored? Quora

 

食品のカロリー表示が表すものは何か?

炭水化物は1gあたり4 kcalとされているそうです。

  1. 明日をつくる今日の食卓カロリーについて【基礎編】 大塚食品

グルコースC6H12O6として考えた場合、燃焼熱と合うのでしょうか。C6H12O6=12×6+12+18×6=192  グルコース1gが何モルに相当するかというと、 1/192 = 0.0052083モルです。モル当たりになおすと、4/0.0052083=768 kcal/mol です。ネットの数値とあまり合わないようですね。ヤフー知恵袋の計算だと、3.72kcalなので整数にしたことによる誤差みたいです。カロリー=燃焼熱ということみたいですね。実際にはそんなに効率よくエネルギーを取り出せてはいない(たしか4割くらいの効率)ので、人間が使えるエネルギーは少ないはずです。

  1. グルコース C6H12O6(s) 分子量:180.156 −ΔcHº = 2803.3 kJ mol−1 燃焼熱 ウィキペディア 
  2. グルコースの燃焼熱は 2800 kJ/mol(669 kcal/mol) グルコースの燃焼熱は 2800 kJ/mol(669 kcal/mol)
  3. グルコース1gが燃焼する時の熱量:グルコース1molの燃焼熱は2800kJ、669kcalなので、1g当たりは669÷180=3.72 kcal https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q10240337260

 

参考サイト

  1. 食品表示基準における熱量の算出方法 http://www.mac.or.jp/mail/180501/03.shtml

 

ペントースリン酸回路の役割と重要性

ペントースリン酸回路とは

ペントースは五炭糖(炭素5個からなる糖)という意味で、アルデヒドをもつ糖(アルドース)の五炭糖はリボースケトン基をもつ糖(ケトース)の五炭糖はリブロースと呼ばれます。ペントースリン酸回路は、解糖系のグルコース6リン酸から「脇道」に入って、リブロース5‐リン酸、リボース5‐リン酸を産生し、C7,C3,C4化合物なども作り、解糖系の中間代謝物であるフルクトース6-リン酸になって解糖系を逆行して回路が閉じます。リブロース5‐リン酸やリボース5‐リン酸といったペントースリン酸をつくる回路というわけです。

ちなみに、https://www.osmosis.org/learn/Pentose_phosphate_pathwayの動画を見ていたら、pentose phospate pathwayの名前の由来は、five carbon sugre (pentose)と、NADPH(nicotinamide adenine dinucleotide phosphate)をつくるからだと説明していましたが、「pentose phospate」は一語でしょう。ペントースリン酸回路の役割を覚えてもらうために、このような説明をしたのかもしれません。

  1. https://www.khanacademy.org/test-prep/mcat/biomolecules/carbohydrate-metabolism/v/pentose-phosphate-pathway この動画でも、ペントースリン酸回路の役割の覚え方として、ペントース→リボースリン酸合成、リン酸→NADPHのP という説明があります。ただしあくまでも覚え方、思い出す手掛かりというニュアンスでした。

ペントースリン酸回路の役割

この回路では、次の2つの重要な役割が果たされる。役割の1つは、NADPHを産生することである。‥ペントースリン酸回路は、このような反応に必要なNADPHを産生するための最も主要な反応系である。ペントースリン酸回路のもう1つの役割は、核酸および各種ヌクレオチドの合成原料として必要なリボース5‐リン酸ribose 5-phosphateを産生することである。リボース5-リン酸はこの反応系でのみつくらる。(三輪・中『生化学』184~185ページ)

この教科書の説明はメリハリがあってわかりやすいと思います。

3つめの役割として、エリトロース4リン酸の産生(芳香環をもつアミノ酸の材料)を挙げている講義動画(↓)もありました。

Pentose Phosphate Pathway | Hexose Monophosphate Shunt Hussain Biology チャンネル登録者数 18.4万人 メンバーになる チャンネル登録 1575  GLYCOLYSIS PATHWAY : • Glycolysis Pathway

酸化反応経路

ペントースリン酸回路の前半部分、すなわちグルコース6-リン酸からペントース5リン酸が作られるところまでが、酸化反応になります。それ以降は酸化反応ではないようです。

ペントースリン酸回路が亢進している臓器・器官

The highest activity was found in lactating mammary gland and adipose tissue. Lung and liver showed to have a moderately high activity. Brain, kidney, skeletal muscle, and intestinal mucosa showed to have also a significant activity although less than other tissues. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10630623/

https://exchange.scholarrx.com/brick/pentose-phosphate-pathway

ビタミンDとは?構造、働き、欠乏症

ビタミンDとは

ビタミンDはビタミンという名前ではありますが実際の働きはホルモンで、カルシウムの恒常性に関与しています。血中カルシウム濃度が低下することにより、ビタミンDが産生され、カルシウムの貯蔵庫である骨の分解を促進してカルシウムを血中に放出させます。

ビタミンDの構造はコレステロールに似ており、ステロイドホルモンと同様に核内受容体に結合してカルシウム代謝に関係する遺伝子発現を誘導します。その結果、小腸上皮細胞ではビタミンDの作用により、カルシウムの取り込みを促進させます。

  1. ビタミン D と健康 ―カルシウム・骨の恒常性における役割― 特集号 『社会システム研究』 2017年 7 月 図 1 小腸カルシウム吸収機構 カルシウムの摂取量が不足している時や,妊娠・授乳中の様にカルシウム要求量が高い時は,能動的輸送機構が 働いてカルシウムは効率的に吸収される.

ビタミンDの活性型

ビタミンDは肝臓で25位の炭素が水酸化されて25-ヒドロキシビタミンDになり、ついで、腎臓に行って1位の炭素も水酸化されて1,25ージヒドロキシビタミンDとなります。これが活性型で、作用を発揮します。

  1.  三輪・中『生化学』

ビタミンDの働き

性型ビタミンDは、腸管からのCaの吸収を高め骨の石灰化を促進して骨密度を増加させる(新陳代謝を高める)働きを有しています。(ビタミンDについて-特に骨粗鬆症薬としての活性型ビタミンD製剤について- 2017.1.6 中国中央病院)

  1. Vitamin D and the Kidney: Two Players, One Console Int. J. Mol. Sci. 2022, 23(16), 9135; https://doi.org/10.3390/ijms23169135 Figure 1. Systemic effect of vitamin D. Ca, calcium; P, phosphorus; PTH, parathyroid hormone. この図がわかりやすいかも。
  2. 25-Hydroxyvitamin D(3) suppresses PTH synthesis and secretion by bovine parathyroid cells C S Ritter 1, H J Armbrecht, E Slatopolsky, A J Brown Kidney Int . 2006 Aug;70(4):654-9. doi: 10.1038/sj.ki.5000394.

ビタミンD欠乏症

ビタミンDが欠乏すると、骨軟化症(osteomalacia)になります。成長期の骨軟化症は特に、「くる病(rickets)」と呼ばれます。

  1. Vitamin D and Bone

骨の構造

骨の構造は、鉄筋コンクリートの建物に例えると理解しやすいです。鉄筋に相当するのがコラーゲンなどの繊維で鉄筋の周りを固めるコンクリートに相当するのがヒドロキシアパタイト(水酸化リン酸カルシウム Ca5PO4 3(OH))です。Ca2+が5個で正電荷が10、PO4はマイナス3なのでー3x3=-9 OHはもちろんー1合わせてプラマイゼロ。電荷の数を考えると示性式が覚えやすくなります。

  1. 水酸化リン酸カルシウム(ウィキペディア)
  2. 知っておきたい骨のしくみと骨粗鬆症 ビル に例えると、コラーゲンなどのタンパク質が梁(骨組み)で、カルシウムを主体とするミネラル分がコンクリートにあたります。

骨の形成と吸収(分解)

  1. 知っておきたい骨のしくみと骨粗鬆症 完成しているように見える大人の骨でも、「作っては壊す」「壊してまた作る」という入れ替え作業が絶えず行われているのです。若い人では約2年で、高齢者でも約5年で全身の骨が新しいものに入れ替わるとされています(*2)。

電子伝達系(酸化的リン酸化)をどう捉えるか

グルコースのエネルギー代謝でATPが多量に産生されるのは、電子伝達系においてです。炭水化物からエネルギーを取り出すのに、解糖系、クエン酸回路、電子伝達系と3つの全く異なるシステムが登場して、正直、あまりの複雑さに頭が混乱してしまいました。もうこれは、自然界はこんな巧妙な方法を編み出したんだと驚嘆して受け入れるしかないのでしょう。

大雑把にとらえると、グルコースという分子をつくる原子間の結合(つまり、電子の位置エネルギー)が、組み替えられて二酸化炭素と水になり(つまり、電子の位置エネルギーが一番低い状態にになり)、そのエネルギーの差が、取り出されるわけです。グルコースをもし本当に火をつけて燃やしてしまうと、一挙に大量の熱が発生してそのエネルギーは熱という形態だとなんの役にもたちません。そこで、ちまちまと段階的な化学反応によってエネルギーを取り出していこうというわけです。解糖系でもATPが2当量できますが、ほとんどはクエン酸回路で還元型の電子運搬体をつくり(NADHとFADH2)、これらの電子運搬体が電子伝達系に電子を渡すことで、電子伝達系の複合体の中を電子がポテンシャルエネルギーの勾配を「下り降りて」、その位置エネルギーの差の分で、プロトン勾配にさからってプロトンを輸送しているだけです。そしてプロトン勾配として蓄えられたエネルギー(ミトコンドリア膜電位)を利用して、ADPと無機リン酸をつかって、ADPをリン酸化してATPをつくっています。

ポイントをかいつまむと、炭水化物は酸化され(=電子がヒドリドイオンすなわちH-として奪われ)、電子(すなわちヒドリドイオン)を受け取ったNAD+やFADが還元型(NADH, FADH2)となって「電子運搬体」の役割を果たして、電子伝達系の複合体I,III,IVに渡し、複合体が「電線」として働いて電子がその中を流れて、プロトンをくみ出して、プロトン勾配として蓄えられたエネルギーを利用して(プロトンが勾配によって流入するときのエネルギーを利用して)ATPを作ります。

 

高校や大学の生物の授業で多分説明を受けたのだと思いますが、こんなことが起きているなんて全然想像もつかず、理解できていなかったと思います。

電子伝達系の複合体は電線

複合体は電位差のある地点同士をつなぐ電線に過ぎないと捉えると、物理の電流がする仕事と同じことになり、理解ができます。

電子伝達系と呼ばれるものがその名の通り電子を伝える(electrontransfer)系であるならば,そこは電流の通路ということになる.電流の通路の典型的なものは電線である.電子伝達系というと何か摩訶不思議な構造物を想像するであろうが,これは絶縁物で被われた何の変哲もない電線であると思えばいいつまり,内膜を貫いて電線があると思えばいい.このことを明確に表現している文を目にしたことは未だにない.(「生理学ものがたり」第 2 回 電子伝達系とミトコンドリアの膜電位 滋賀医大名誉教授 北里 宏 日生誌 Vol. 69,No. 12 2007

下の説明は非常に明解でわかりやすいと思いました。電子伝達系はまさに、「電線」として描かれています。

有機物の酸化分解反応と酸素の還元反応という2つの化学反応をリンクさせ、そこから電気化学エネルギーを取り出しているのです。これは、負極の化学反応と正極の化学反応をリンクさせ、その間の電位差分のエネルギーを得る電池と同じ構造です(図を参照)。細胞の中で有機物の酸化により放出された電子は、ミトコンドリア内膜の電子伝達系(負極と正極をつなぐ電線)を経て、酸素に渡されます。(東京薬科大学 生命科学部 生命科学部 学科紹介 応用生命科学科 キーワード解説 生体エネルギー

下の総説(同じ薬科大の先生の論文)でも同様の図がありました。

呼吸鎖電子伝達系はいわば細胞内の電線として機能し,生物はその電線に電流を流すことによってエネルギーを取り出しているとも言える.(微生物の発電 高妻 篤史 東京薬科大学生命科学部 日本物理学会誌 Vol. 71, No. 5, 2016)

こういう説明は概念がつかみやすいと思いますが、生化学の教科書を見てもあまりこういう説明の仕方は見当たらないように思いますので、この解説論文は貴重だと思いました。下のウェブサイトでも同様の説明がなされていました。

ミトコンドリアでNADHがもつ過剰な電子は「呼吸酵素複合体(電子伝達系)」を通じて酸素分子へ流れることでATP合成のためのエネルギーに変換されるが、その様子は電池のマイナス極から+極へ電子が流れる様子と似ている。電池ならマイナス極と+極が電線でつながれてその間にある電球が光ったりする。ミトコンドリアでは電子伝達系の複合体(鉄などの金属原子を含むので、電線のように電子が流れる)が「電線と電球を一体化したもの」に相当する。電球はエネルギーを光のエネルギーに変えるが、電子伝達系の複合体は水素イオンをミトコンドリア内膜の内側から外側へ輸送することによって「水素イオン濃度の差」というエネルギーに変える。(Column1__細胞とエネルギーの結びつき – https://home.hiroshima-u.ac.jp/naka/wiki/wiki.cgi)

電子運搬体と電線(複合体)

電子運搬体であるNADHが複合体Iに電子を渡し、電子は複合体Iの中をながれてユビキノンに電子を渡します。複合体II(コハク酸脱水酵素)が産生する電子運搬体FADH2も電子をユビキノンに渡します。ユビキノンは複合体III(シトクロムc還元酵素)に電子を渡します。電子は複合体IIIの中を流れ、こんどはシトクロムcに電子が渡ります。シトクロムcは電子を複合体IVに渡します。電子は複合体IVの中を流れて最後は酸素分子に渡されて、水が産生されます。