脂肪酸は通常、細胞質で合成されますが、特殊なケースとしてミトコンドリアで合成される脂肪酸があります。ミトコンドリアで合成される脂肪酸は、リポ酸などの補酵素脂肪酸です。
α-リポ酸は下のような構造をしています。別名、チオクト酸だそうで、チオール基(-SH)が2つあって、ジスルフィド結合をして環を形成しており、オクタンの名前の通り炭素8個が繋がっています。そして、酸というとおり、カルボン酸です。炭素鎖と環の分岐に位置する炭素は、4本の手がそれぞれ異なる分子と結合する「不斉炭素」なので、向きまで指定された構造式が描かれています。
- https://ja.wikipedia.org/wiki/Α-リポ酸
α-リポ酸は、糖代謝においてピルビン酸からアセチルCoAができる際の酵素である、「ピルビン酸デヒドロゲナーゼ」の補酵素のうちの一つとして働きます。ヒトの体内でも合成されるので、「ビタミン」とは言えませんが、「ビタミン様(よう)」物質と言われることがあります。
- https://lpi.oregonstate.edu/jp/mic/食事性因子/リポ酸
- http://www.sc.fukuoka-u.ac.jp/~bc1/Biochem/tca_cycl.htm
ChatGPT:
**α-リポ酸(α-lipoic acid)は、補酵素として働くときに「還元型(ジヒドロリポ酸)」から「酸化型(リポ酸)」へ戻る=つまり、「還元型が酸化される」**という反応が起こります。
🔬 α-リポ酸の酸化還元サイクル
🧪 構造的に見ると:
- 酸化型リポ酸(lipoic acid):
- 環状ジスルフィド構造(–S–S–)
- 酸化されている形
- 還元型リポ酸(ジヒドロリポ酸, dihydrolipoic acid):
- ジスルフィドが開いて2つのチオール基(–SH, –SH)になる
- 還元された形
🔁 反応の流れ(例:ピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体)
- α-リポ酸は酸化型(–S–S–)で存在
- 基質(例:ピルビン酸)からアセチル基が転移 → α-リポ酸の一部が**還元型(–SH, –SH)**になりながらアセチル基を受け取る
- アセチル基はCoAへ渡され、α-リポ酸はジヒドロリポ酸のままになる(還元状態)
- ジヒドロリポ酸は、FADやNAD⁺を介して再び酸化型(–S–S–)に戻る
⚙️ まとめ表
状態 | 構造 | 機能 |
---|---|---|
酸化型リポ酸 | ジスルフィド環(–S–S–) | アセチル基を受け取る(反応前) |
還元型リポ酸 | 2つのチオール(–SH, –SH) | アセチル基を運搬、反応後に戻る必要あり |
💡ポイント
- α-リポ酸は酸化還元を繰り返しながら、アシル基や電子をやり取りする「シャトル」のような存在
- そのため「還元型 → 酸化型へ戻る」のはまさに補酵素としての役割そのもの
質問:ジヒドロリポ酸は、FADやNAD⁺を介して再び酸化型(–S–S–)に戻る ということは、このステップで、NADHやFADH2が産生されるの?生化学の教科書にそんなこと書いていたっけ??
ChatGPT:
🔬 結論から言うと:
✅ はい、NADHが産生されます(ピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体などにおいて)。
しかし、FADH₂は解放されません(酵素内で使われる)。
🧬 例:ピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体(PDH複合体)
この複合体は以下の3つの酵素で構成されています:
サブユニット | 酵素名 | 補酵素 |
---|---|---|
E1 | ピルビン酸脱炭酸酵素 | TPP(チアミンピロリン酸) |
E2 | ジヒドロリポイルトランスアセチラーゼ | リポ酸, CoA |
E3 | ジヒドロリポイルデヒドロゲナーゼ | FAD, NAD⁺ |
🔁 還元の流れ(重要ポイント)
- ピルビン酸がアセチル基になり、E2のリポ酸に転移される
→ この時、リポ酸は**還元型(ジヒドロリポ酸)**になる。 - 還元されたジヒドロリポ酸は、E3にある**FADによって再酸化(=–S–S–型に戻る)**される
→ この時、FAD → FADH₂になる - しかしこのFADH₂はすぐにNAD⁺に電子を渡す(=酸化されてFADに戻る)
→ NAD⁺ → NADH + H⁺ が実際に系外に出ていく還元当量
🧪 教科書ではどう書いてある?
- 「FADH₂がNAD⁺に電子を渡すので、実質的な産物はNADHである」という説明が一般的です。
- Lehninger(『レーニンジャー生化学』)やVoetの教科書などでは、**「E3によってリポ酸が再酸化され、その過程でNADHが得られる」**と明記されています。
🔍 まとめ
ステップ | 電子の流れ | 実際に「生じて回収される」もの |
---|---|---|
ジヒドロリポ酸 → 酸化型 | → FAD → NAD⁺ | NADH |
FADH₂自体 | 酵素内循環で使用され、遊離しない | ❌ 出てこない |
✅ 最重要ポイント
生化学の教科書がNADHだけを強調するのは、FADH₂はその場でNAD⁺に渡して再酸化されるから。FADH₂自体は「自由な産物」ではないのです。