「一度死んだはずの特許が生き返ったときに、その間にビジネスを始めた人を救うための権利」です。法律初学者の方にもイメージしやすいように、「ゾンビ特許」という例えを使って解説します。
1. 全体のイメージ:なぜこの権利が必要なのか?
通常、特許権が消滅(特許料の不納などで)したり、無効になったりすれば、誰でもその技術を自由に使えるようになります。
しかし、特許法には「敗者復活戦」のような制度があり、一度消えた特許が、特定の手続きによって復活することがあります。
ここで問題が起きます。
「特許が消えている間に、安心してその技術を使い始めた人はどうなるの?」
後から「特許が復活したから、お前は特許権侵害だ!賠償金を払え!」と言われたら、あまりに不条理ですよね。
そこで、その「空白期間(特許が死んでいた期間)」に善意で事業を始めた人を守るために認められる制度があります。これらは「法定通常実施権」という、「タダ(または対価を払って)で使い続けていいよ」という権利の一種です。
2. 「特112の3(回復した特許権の効力の制限)」とは?
(特許料追納による特許権の回復)
これは、「特許料を払い忘れて特許が切れたけど、あとで復活した場合」の話です。
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条文: 特許法 第112条の3
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シチュエーション:
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特許権者Aさんが、特許料を払い忘れた。
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期限が過ぎ、特許権が消滅した。
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Bさんは「お、特許が切れたぞ」と確認して、その技術を使った製品の製造工場を作った。
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その後、Aさんが「正当な理由」などを主張して追納し、特許権が復活した。
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この場合、BさんはAさんの特許権侵害になってしまうのでしょうか?
答えはNOです。Bさんには通常実施権が与えられ、その事業の範囲内で使い続けることができます。
ポイント:
特許が「死んでいた期間(効力がなかった期間)」に事業を始めた(または準備した)ことが条件です。
原則、ライセンス料(対価)は不要です。
3. 後用権(こうようけん)とは?
(再審により回復した特許権等の効力の制限)
こちらは、「裁判や審判で一度『無効』などが確定したのに、やり直し(再審)でひっくり返った場合」の話です。かなりレアケースです。
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条文: 特許法 第176条
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シチュエーション:
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特許が無効審判で「無効」と確定した。
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Cさんは「無効になったから大丈夫」と信じて、その技術を使ったビジネスを始めた。
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その後、審判の手続きに重大な欠陥があったとして「再審(やり直し)」が行われ、「やっぱり特許は有効でした」と判決がひっくり返った。
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この場合、Cさんを特許権侵害にするのは酷です。そのため、Cさんには「後用権」が与えられます。
ポイント:
無効等の審決が確定した後、再審請求の登録前に、善意(特許が復活することを知らない)で事業を始めたことが条件です。
こちらは、「相当の対価」を払う必要があります。(特112の3の制度との大きな違いです!)
4. まとめと違いの比較表
どちらも「特許が復活した時の、第三者保護」ですが、原因と対価に違いがあります。
| 項目 | 回復した特許権の効力の制限 (112条の3) | 後用権 (176条) |
| 原因 | 特許料の払い忘れからの回復 | 再審による判決の逆転(無効→有効) |
| 発生タイミング | 期間徒過後 ~ 追納登録まで | 無効確定後 ~ 再審請求登録まで |
| 保護される人 | 特許が切れている間に事業を始めた人 | 無効になったと信じて事業を始めた人 |
| 主観要件 | 特になし(善意・悪意を問わないことが多い※) | 善意であること(復活を知らなかった) |
| お金(対価) | 不要(無償) | 必要(相当の対価) |
※112条の3の場合、条文上「善意」は要求されていませんが、制度の趣旨として「消滅したことを信頼した人」を守るものです。
5. 法律初学者が陥りやすい「先使用権」との違い
最後に一つだけ注意点です。これらと似たものに「先使用権(せんしようけん)」(79条)があります。
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先使用権: 特許出願前から独自に発明してビジネスをしていた人の権利。
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「112条の3」や後用権 (176条): 特許権が一度消えた後にビジネスを始めた人の権利。
「いつ始めたか」が全く違うので、混同しないようにしましょう!
疑問:後用権の場合は、対価を払えっていうのも酷だと思うんだけど?無効審判を見届けてからアクションを起こしたんだから、何も落ち度はないよね?
Gemini:「無効審判で勝った(あるいは無効だと確定した)のを見て参入したのに、後でお金払えっておかしくない?」という感覚、とても真っ当です。しかし、特許法には明確な「バランス(衡平:こうへい)の論理」が存在します。結論から言うと、この違いは「特許権者に落ち度(ミス)があったかどうか」で決まっています。その「調和のロジック」を紐解いていきましょう。
1. 根本的な違い:「誰が悪かったのか?」
ここが一番のポイントです。特許権が一時的に消滅した「原因」を比べてみましょう。
A. 「112条の3」(特許料払い忘れ)の場合
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原因: 特許権者が期限管理をミスった(ズボラだった)。
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評価: 「自分のミスで権利を失効させたんだから、その間に参入した人に対して『金払え』なんて言う資格ないよね?」
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結果: 対価不要(無償)。特許権者への一種のペナルティでもあります。
B. 後用権(再審)の場合
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原因: 裁判や審判の手続きに重大な欠陥(嘘の証拠が使われた、代理権がなかった等)があった。
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評価: 特許権者は悪くない。 むしろ、間違った判断で権利を奪われた「被害者」です。
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結果: 対価必要。
ここに「後用権でお金を払う理由」があります。特許権者は何も悪くないのに、「特許権の独占」も奪われ、さらに「ライセンス料」まで貰えないとなると、特許権者があまりにも可哀想(保護が薄すぎる)ということになるのです。
2. 「対価」は「損害賠償」ではない
「お金を払う」というと、悪いことをした罰金のように感じるかもしれませんが、ここの「対価」の性質は違います。
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× 損害賠償: 悪いことをしたから払うお金。
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〇 実施料(ライセンス料): 他人の技術を使わせてもらうレンタル料。
法律の考え方はこうです:
法律の神様の声:
「第三者(あなた)には同情する。無効だと思って工場を建てたんだよね。だから、特許が復活したからといって**『工場を壊せ(差止請求)』とは言わせない**。事業を続ける権利(後用権)はあげよう。
でも、特許権者も被害者なんだ。本来なら独占できたはずの技術を、あなたに使われることになる。だからせめて、『もし最初から正規に契約していたら払っていたはずのレンタル料』くらいは払ってあげてくれないか? それで手打ちにしよう」
つまり、「事業の継続(第三者の利益)」と「経済的補償(特許権者の利益)」を天秤にかけて、ギリギリの妥協点を探った結果が「使用は認めるけど、タダ乗りはダメ」という落としどころなのです。
3. もし「無償」にしてしまったら?(逆の不公平)
もし、後用権も「無償(タダ)」にしてしまうと、どうなるでしょうか。
悪意のある競合他社が、こんなことを考えるかもしれません。
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嘘の証拠をでっち上げて、無理やり特許を無効にする。
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無効になった瞬間に、一気に市場に参入してタダで技術を使いまくる。
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あとで嘘がバレて再審で特許が復活しても、「後用権があるからずっとタダで使えるもんね!」と開き直る。
これでは「正直者が馬鹿を見る」ことになります。
「復活した特許は、最初からずっと有効だったものとして扱う」というのが再審の基本ルールなので、その技術を使っている以上、公平性の観点から「対価」は払うべき、という考え方が採用されています。
まとめ
あなたの言う通り、第三者には落ち度はありません。しかし、特許権者にも落ち度はありません。
「お互いに悪くないもの同士」が衝突した時の交通整理として:
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第三者には: 「ビジネスを潰されない権利(差止請求されない)」を与える。
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特許権者には: 「本来得られたはずの利益(実施料相当額)」を与える。
これで「痛み分け」をしている、と理解するとスッキリするのではないでしょうか。
これに対して「112条の3」は、「特許権者がミスった」という明確な理由があるので、第三者が圧倒的に有利(タダでOK)な扱いになっているのです。
質問:対価として、特許権者が高いライセンス料を吹っ掛けてくるんじゃないの?
Gemini:その懸念、ごもっともです!「足元を見られて、ボッタクリ価格をふっかけられるんじゃないか?」というのは、ビジネスパーソンとして当然の心配です。でも、安心してください。法律はそのあたりもちゃんとガードしています。なぜ「法外な値段」にはならないのか、その「安全装置(セーフティネット)」について解説します。
1. 「言い値」ではない!魔法の言葉「相当の対価」
条文には、単に「お金を払え」と書いてあるのではなく、「相当の対価(そうとうのたいか)」を支払う義務があると書かれています(特許法176条)。
この「相当」というのがキーワードです。
これは、特許権者が「1億円払え!」と言えば1億円になるわけではなく、**「客観的に見て、業界の相場ならこのくらいだよね」**という金額に限定されるという意味です。
具体的には?
通常、以下の基準で計算されます。
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業界の平均的なライセンス料率(例:売上の3%〜5%など)
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その技術が製品にどれだけ貢献しているか
つまり、「もし最初から普通に契約していたら、このくらいの金額で握手していたはずだよね」という、「世間相場(マーケットプライス)」が上限になります。
2. もめるなら裁判所が「適正価格」を決める
もし特許権者が「いや、俺の特許はすごいから相場の10倍払え!」とゴネて、話し合いが決裂したらどうなるか?その場合は、裁判所が決定します。裁判官は、過去の判例や業界のデータを元に、ドライに「適正価格」を算出します。そこに特許権者の「感情」や「吹っかけ」が入る余地はありません。この「最終的には裁判所が適正価格を決めてくれる」という事実があるため、特許権者も無茶な金額を要求しにくくなるのです(どうせ裁判で負けるので)。
3. 一番の強みは「工場を止められない」こと
ここが一番重要です。ビジネスにおいて、相手が法外な値段をふっかけてくる最大の理由は、「嫌なら出ていけ(工場を止めろ)」という脅しが使えるからです(これを「差止請求権」と言います)。
「明日から製品を作れなくなったら倒産する…! 足元見られて悔しいけど、高い金でも払うしかない…」
これが通常の特許侵害の怖いところです。しかし、後用権を持っているあなたには、この脅しが通用しません。
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特許権者: 「高い金を払わないなら、生産を止めさせるぞ!」
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あなた: 「どうぞご自由に。私には後用権(事業を継続する権利)があるので、あなたは私の工場を止める権利を持っていませんよ。金額に不満なら裁判所で相場を決めましょう」
と言い返せるのです。「ビジネスを人質に取られていない」というのは、交渉において最強のカードです。だからこそ、対価は「適正な相場」に落ち着くのです。
まとめ
後用権における「対価」の支払いは、「ボッタクリバーの請求」ではなく、「適正な家賃の支払い」に近いイメージです。
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特許権者: 吹っかける権利はない(裁判所が許さない)。
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あなた: ビジネスを止められる心配はない(後用権がある)。
この2つの要素によって、結果的に「お互いが納得できる常識的な金額」に落ち着くように制度設計されているんですよ。よくできていますよね。
質問:対価の支払いが滞ったら、工場を止められちゃうんじゃないの?
Gemini:の支払いが遅れても、直ちに工場を止められる(差止請求される)ことはありません。ここが、普通の契約とは違う「法定通常実施権(法律が無理やり与えた権利)」の強みです。なぜそうなるのか、「借金」と「泥棒」の違いで解説します。
1. 「特許侵害」と「借金不払い」は別次元の話
法律の世界では、以下の2つを明確に区別します。
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A. 特許権侵害(泥棒): 権利がないのに勝手に使うこと。
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→ 罰:「やめろ!」と言える(差止請求)。
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B. 対価の不払い(借金): 権利はあるけど、払うべきお金を払っていないこと。
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→ 罰:「金払え!」としか言えない(金銭請求)。
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後用権(法定通常実施権)を持っているあなたは、法律によって強力に「使う権利」を与えられています。ですので、対価を滞納したとしても、あなたは「B(借金がある人)」であって、「A(泥棒)」には戻らないのです。
2. 特許権者は何ができるのか?
では、特許権者は泣き寝入りするしかないのか?というと、そうではありません。彼らは民法のルールを使って、徹底的にお金を取り立てに来ます。
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できること:
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裁判所にお願いして、あなたの会社の銀行口座を差し押さえる。
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売掛金を差し押さえる。
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(最悪の場合)会社を倒産させて、そこから回収する。
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できないこと:
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特許権に基づいて「工場の機械を止めろ」と命じること。
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特許権侵害として刑事告訴すること。
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つまり、「お財布は攻撃されるけど、工場の稼働そのものを止める権利(特許権)は行使されない」ということです。
3. 普通のライセンス契約との違い
ここが混乱しやすいポイントです。企業同士が話し合って決める「普通のライセンス契約(許諾による実施権)」であれば、あなたの懸念通りになります。
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普通の契約: 「ライセンス料を〇ヶ月滞納したら、この契約は解除します」という条項が入ります。
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→ 滞納する → 契約解除される → 権利がなくなる → 特許権侵害(工場停止)!
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後用権(法定通常実施権): 法律が与えた権利なので、「契約解除」という概念がありません。
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→ 滞納する → 権利は消えない → 単なる借金トラブル(工場は動いてOK)
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まとめ
後用権は、一度ハシゴを外された(無効だと思ったのに復活した)人を救うための最強クラスのセーフティネットです。多少支払いが遅れたくらいで「はい、やっぱり工場止めてね」と言われてしまっては、救済の意味がなくなってしまいます。だから法律は、「お金の問題(対価)」と「事業の継続(実施権)」を切り離して考えているのです。もちろん、お金を払わないと差し押さえで会社が潰れる可能性はありますが、「特許権侵害だ!」と言われて即日操業停止に追い込まれるリスクはない、と覚えておけばOKです。
112条の3の説明:ストーリー仕立てで
特許法第112条の3(正式名称:特許権の回復後の通常実施権)について、中用権(80条)との対比を明確にしながら、解説を行います。これは、一言で言うと「特許権者がズボラで招いたトラブルから、第三者を守るための権利」です。
1. 112条の3 の具体的ストーリー
~「うっかり失効」と「ぬか喜び」の悲劇~
【登場人物】
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Aさん(特許権者): うっかり屋さん。特許料の管理がズサン。
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Bさん(第三者): 新規参入を狙うメーカー。
【第1幕:特許の「死」】
Aさんは特許を持っていましたが、毎年払うべき「特許料」の支払い期限を忘れ、さらに半年間の猶予期間(追納期間)も過ぎてしまいました。この瞬間、法律上、Aさんの特許権は「消滅」します。特許原簿(戸籍)にも「未納により消滅」と書かれます。
【第2幕:Bさんの参入】
Bさんは特許原簿を見て確認します。「お、Aさんの特許が消滅している!これでこの技術は誰でも使えるフリー素材だ!」Bさんは安心して、その技術を使った製品の製造工場を作り、販売を開始しました。
【第3幕:まさかの「復活(ゾンビ化)」】
その後、Aさんが慌てて特許庁に泣きつきます。「すいません!意図的に払わなかったわけじゃないんです!うっかりミスなんです!」一定の条件(回復要件)が認められ、Aさんが特許料と割増金を払うことで、なんと特許権が復活しました。
※法律上、「最初から消滅しなかったこと」になります。
【第4幕:対立】
復活したAさんがBさんに言います。「特許が復活したから、お前は特許権侵害だ!金払え!工場止めろ!」
2. ここで発動するのが「112条の3」
Bさんからすれば、「ふざけるな」ですよね。「消滅しているのを確認して始めたのに、後出しジャンケンで侵害だなんて納得できない!」そこで、112条の3はBさんを守ります。
法律の結論:
事業継続OK: Bさんはそのまま工場を動かしてOK。
対価(お金)は不要!: BさんはAさんに、一円も払う必要はありません。
3. なぜ「対価不要(タダ)」なのか?(80条との決定的違い)
ここが中用権(80条)との最大の分岐点です。なぜこちらはタダでいいのでしょうか?
理由はシンプルで、「悪いのは100%特許権者(Aさん)だから」です。
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Aさん(特許権者): 期限を守らなかった自分が悪い。復活させてもらっただけありがたいと思え。
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Bさん(第三者): 公的な記録(特許原簿)を信じて行動しただけで、何の落ち度もない。
法律は、「自分のミスで権利を一度腐らせたAさんが、その期間にビジネスを始めたBさんから金を取るなんて、厚かましいにも程がある」と考えます。だから、無償(タダ)なのです。
4. 80条(中用権)との比較まとめ
これで違いがハッキリ見えるはずです。
| 比較項目 | 112条の3 (今回の解説) | 80条 (本来の中用権) |
| 通称 | 回復後の通常実施権 | 中用権 |
| 原因 | 特許料の払い忘れ (期間徒過) | 無効審判 でのひっくり返し |
| 誰のせい? | 特許権者のミス (ズボラ) | 誰のミスでもない (法的な判断の変更) |
| 特許権者への感情 | 「自業自得でしょ」 | 「ちょっと可哀想だね」 |
| 結論(対価) | 無償 (タダ) | 有償 (相当の対価が必要) |
| 発生する期間 | 特許が切れていた期間 | 無効審判の請求登録前 |
5. よくある疑問・注意点
Q. Bさんが「復活するかも」と知っていたら?(悪意)
112条の3の場合、Bさんが「どうせAさんは後で金を払って復活させるだろうな」と予期していたとしても(悪意)、条文上は保護されます(対価不要です)。なぜなら、「特許権者が期限を守らなかった事実」の方が重いからです。特許権者の管理ミスを棚に上げて、他人の内心(善意・悪意)を問う資格はない、という運用です。
Q. 復活した「後」に始めた人は?
Aさんが特許を復活させた後に、Bさんがビジネスを始めた場合は、112条の3は適用されません。単なる特許権侵害になります。「復活した」という事実も特許原簿に載るので、それを見落としたBさんが悪いことになります。
まとめ
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112条の3は、「特許権者がミスって特許を死なせた間に、ビジネスを始めた人を守る権利」。
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特許権者が全面的に悪いので、「お金(対価)は一円も払わなくていい(タダ)」。
この「特許権者のミスの有無」=「お金がいるかいらないか」のセットで覚えましょう。
質問:特112の3にニックネームはある?
Gemini:たった一言でビシッと決まる、業界共通の「〇用権」というカッコいい名前はありません。これ、勉強していると不便ですよね。「名前つけてくれよ!」と私も思います。ただ、実務家や受験生が呼んでいる「通称(略称)」はありますので、それを紹介します。
1. 正式名称と、よく使われる「通称」
条文の見出しそのままですが、これが最も一般的です。
- 正式名称:特許権の回復後の通常実施権(とっきょけんの かいふくごの つうじょうじっしけん)
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実務やゼミでの呼び方(通称):
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「回復後の実施権」(これが一番メジャーです)
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「112条の3の実施権」
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「追納回復後の実施権」
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2. なぜこれには名前がないの?(余談)
「中用権」「後用権」という名前は、明治時代の古い特許法や、お手本にしたドイツ法などの歴史的背景から定着した、伝統ある「あだ名」です。一方、112条の3(特許料の追納による回復)という制度自体が、国際的な条約(PLTなど)に合わせて比較的最近になって整備された新しい制度なんです。(昔は、期限を過ぎたら問答無用で特許は死んでいました。復活なんてありえなかったのです)新入りの制度なので、歴史ある「〇用権」というあだ名をもらえていない、というイメージですね。
まとめ
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80条のような「〇用権」という定まった名前はない。
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人前で言うときは「回復後の実施権」と言うのが正解。
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脳内では「払い忘れの時のアレ(タダのやつ)」と覚えておく。