高校の生物で勉強する両生類(カエルやイモリ)の場合、中胚葉や内胚葉がどのように生じたのかといえば、外胚葉のある部分が陥入して内部に潜り込み、潜り込んだものが中胚葉になり、内胚葉はもともと植物半球の内側の部分が起源ということになります。
しかし、ヒト(哺乳類)の場合はかなり様相が異なります。受精卵(一細胞)は卵割により内細胞塊(inner cell mass)と外細胞塊とに分かれて、内細胞塊がさらに胚盤葉上層(epiblast)と胚盤葉下層(hypoblast)にわかれ、胚盤葉上層(epiblast)が外胚葉、中胚葉、内胚葉になります。その際、胚盤葉上層(epiblast)に原始線条(primitive streak)と呼ばれる構造が出現してその部分から細胞が内側に潜り込んでいきます。潜り込んだ細胞が胚盤葉下層(hypoblast)と置き換わって内胚葉になります。そして、潜り込まなかった、もともとそこにあった細胞が外胚葉になります。そして、原始線条(primitive streak)の部分から潜り込んだ細胞のうち、外胚葉と内胚葉との中間の位置におさまったものが中胚葉になります。
- ビジュアル人体発生学 羊土社 41ページ 図2-15
- Gastrulation | Formation of Germ Layers | Ectoderm, Mesoderm and Endoderm JJ Medicine チャンネル登録者数 99.6万人
人間の消化器系は、口、口腔、食道、胃、小腸、大腸、肛門までが一本の管の構造をしています。口から肛門までの一本の管はどのように形成されたのでしょうか?
消化管の内側の部分(つまり、食べ物の通り道)の空間は発生学的には何に由来するかといえば、卵黄嚢(yolk sac)の空間に由来します。腸管の壁(上皮細胞)は何に由来するのかといえば、内胚葉の細胞です。では原始腸管はどのようにして形成されるのでしょうか。受精後第4週の時期に、平たい三層(外胚葉、中胚葉、内胚葉)の「板」にすぎなかった胚子が、屈曲(folding)をすることにより、丸まって管ができ、その管が原始腸管になります。わかりやすい例でいえば、食パン2枚の間にポテトサラダが詰まっているサンドイッチを考えるといいでしょう。2枚の食パンの上がのほうが外胚葉、ポテトサラダが中胚葉、下側の食パンが内胚葉だとしてください。これを、想像での話ですが、上側の食パンが外側になるように円筒形に丸めます。すると下側の食パン(内胚葉)は、管ができたときにその管の壁になっています。これがすなわち、消化管の上皮細胞というわけです。
消化器系の発生は,原腸形成後につくられる単純な 1 本の管から始まる.ヒトでは内胚葉は始め盤状であ が,折り畳みという現象に伴い,胚子の頭方および 尾方が袋状となり前腸および後腸が形成される.中腸は始め卵黄囊と広く接しているが,やがてこ こも管状化し原始腸管が完成する.https://www.nms.ac.jp/sh/jmanms/pdf/011030155.pdf
- 人体誕生(ブルーバックス)
- General Embryology – Detailed Animation On Embryonic Folding Medical Animations チャンネル登録者数 17万人
消化管の上皮は内胚葉由来ですが、その周りの組織、すなわち消化管の壁をつくる組織は中胚葉由来です。
管は主に内胚葉とそれを囲む中胚葉から成り,ここに神経叢をつくる神経堤が入り込む.https://www.nms.ac.jp/sh/jmanms/pdf/011030155.pdf
一本の管が作られたあと、食道、胃、小腸、大腸といった区域化がなされます。また、肝臓や膵臓などの臓器もこの管の壁から芽が出ることでつくられます。このような位置決めはどのような分子メカニズムによって実現しているのでしょうか。
- 前腸内胚葉 Sox2
- 中腸と後腸の内胚葉 ホメオボックス遺伝子Cdx1,Cdx2
- 十二指腸部位 膵臓形成の鍵となるホメオボックス遺伝子 Pdx1
- 中胚葉で主に発現する遺伝子 Hox
- 大腸 主に 9~13 番の Hox
https://www.nms.ac.jp/sh/jmanms/pdf/011030155.pdf
- Carlson Human Embryology and Developmental Biology FIG.15.2