臓器移植とは
免疫抑制剤の進歩により臓器移植は対象臓器の非可逆的臓器不全に対する確立した治療法の一つとなっている.しかし種々の合併症を併発する危険性も内包しており,急性・慢性拒絶反応もその一つである.(総説特集 遺伝子チップを用いた臨床免疫研究の最前線 マイクロアレイの臓器移植への応用 松井郁一,斎 浦 明 夫,菅原寧彦,児玉龍彦,幕 内 雅 敏 Jpn. J. Clin. Immunol., 28(2)73~78(2005))
臓器移植研究のゴール
移植臓器の短期生着率は飛躍的に向上してきた1。しかし,慢性拒絶反応に対する効果的な予防や治療方法が存在しないことや,免疫抑制薬そのものの副作用により,長期成績は未だ満足できるものとなっていなし。このため免疫寛容の誘導は免疫抑制法がこれほど進歩した現在でも,移植医療の究極の目標として捉えられている。
免疫寛容:個体の免疫抑制を行うことなく,移植片だけが特異的に拒絶されず,感染症などに対する生体の防御機能は正常に保たれている状態
([シリーズ:移植医療と組織適合性] 第3回 臓器移植における免疫寛容の基礎と臨床 村上徹,河合達郎マサチューセッッ総合病院夕1科ハーバード大学医学部 MHC Vol.14, No.3 )
腎移植の歴史
- 1954年 長期生着第1例 一卵性双生児間の腎移植 ボストン にて
- 1960年代 アザチオプリンとステロイドの併用による免疫抑制療法の開発
- 1970年代 日本でも腎移植が本格化
- 1980年代 免疫抑制剤シクロスポリン
- 1990年代 免疫抑制剤タクロリムス
(臓器移植の現状と展望腎移植)
慢性拒絶反応とは
慢性拒絶反応の病因については慢性拒絶反応を合併している患者の免疫状態についてT細胞,NKT細胞,マクロファージなどのエフェクター細胞や抗体と補体,また,抗体依存性細胞性細胞障害(ADCC)を生じる抗体などいろいろな角度から二十数年にわたり検討されているが,現在までのところ明確な結論は得られていない.(慢性拒絶反応の克服 小野佳成 大島伸一)
2/22/19:Chronic rejection after kidney transplantation: Is there hope? 2019/02/23 UW Department of Medicine
参考
- シリーズ:臓器移植とクロスマッチ] 第1回 腎移植におけるクロスマッチ 小林 孝彰 名古屋大学大学院医学系研究科移植免疫学寄附講座 MHC 2012 年 19 巻 2 号 p. 199-209 現在,クロスマッチ陽性などドナー特異的HLA抗体(DSA:Donor Specific Antibody)陽性移植に対して,脱感作療法を用いて移植を実施する症例が増加している。… 移植後には,DSAはグラフト(内皮細胞)に吸着されるため,NDSAのみが先に検出される
- [シリーズ:各臓器移植についての拒絶反応の解説・移植 の新しい治療法の紹介] 第4回 移植における液性免疫制御の重要性とHLA血清学一直接クロスマッチからHLAタイプ&スクリーンへ一佐治 博夫特定非営利活動法人HLA研究所, HC Vol.18,No.1 37
- [シリーズ:移植医療と組織適合性] 第4回献腎移植の現場でのHLA検査 MHC Vol.15. No.1
- 制御性T細胞による免疫寛容の誘導 2008/10/06
参考(YOUTUBE)
- 2/22/19:Chronic rejection after kidney transplantation: Is there hope? 2019/02/23 UW Department of Medicine