ペントースリン酸回路とは
ペントースは五炭糖(炭素5個からなる糖)という意味で、アルデヒドをもつ糖(アルドース)の五炭糖はリボース、ケトン基をもつ糖(ケトース)の五炭糖はリブロースと呼ばれます。ペントースリン酸回路は、解糖系のグルコース6リン酸から「脇道」に入って、リブロース5‐リン酸、リボース5‐リン酸を産生し、C7,C3,C4化合物なども作り、解糖系の中間代謝物であるフルクトース6-リン酸になって解糖系を逆行して回路が閉じます。リブロース5‐リン酸やリボース5‐リン酸といったペントースリン酸をつくる回路というわけです。
ちなみに、https://www.osmosis.org/learn/Pentose_phosphate_pathwayの動画を見ていたら、pentose phosphate pathwayの名前の由来は、five carbon sugre (pentose)と、NADPH(nicotinamide adenine dinucleotide phosphate)をつくるからだと説明していましたが、「pentose phosphate」は一語でしょう。ペントースリン酸回路の役割を覚えてもらうために、このような説明をしたのかもしれません。
- https://www.khanacademy.org/test-prep/mcat/biomolecules/carbohydrate-metabolism/v/pentose-phosphate-pathway この動画でも、ペントースリン酸回路の役割の覚え方として、ペントース→リボースリン酸合成、リン酸→NADPHのP という説明があります。ただしあくまでも覚え方、思い出す手掛かりというニュアンスでした。
ChatGPT に訊いてみました。
「pentose phosphate pathway(ペントースリン酸経路)」という名前は、その経路で生成される主要な中間代謝産物が ペントース(5炭糖)リン酸 だからです。
✅ 名前の由来を分解して説明すると:
- pentose(ペントース):炭素が5個ある単糖(例:リボース、キシロースなど)
- phosphate(リン酸):これらの糖にリン酸基が付いたもの(例:リボース5-リン酸)
- pathway(経路):代謝の一連の酵素反応
✅ なぜペントースが出てくるの?
この経路の非酸化的段階で、リボース5-リン酸(ribose-5-phosphate)などのペントースリン酸が作られます。これはヌクレオチドや核酸合成の原料になる非常に重要な糖です。
✅ この経路の主な役割は?
- NADPHの供給(還元反応に必要)
- リボース5-リン酸の供給(DNA/RNA合成に必要)
✅ だからこう呼ばれる:
この経路は 「ペントース(5炭糖)リン酸」 を最終的に生み出す主要な経路の一つなので、
➡️ Pentose Phosphate Pathway(ペントースリン酸経路)と呼ばれています。
やっぱりそうですね。pentose phosphate pathwayは、「pentose phosphate」を作るための経路だからそう呼ばれるということです。ただし、途中でNADPHも作られます。
ペントースリン酸回路の役割
この回路では、次の2つの重要な役割が果たされる。役割の1つは、NADPHを産生することである。‥ペントースリン酸回路は、このような反応に必要なNADPHを産生するための最も主要な反応系である。ペントースリン酸回路のもう1つの役割は、核酸および各種ヌクレオチドの合成原料として必要なリボース5‐リン酸ribose 5-phosphateを産生することである。リボース5-リン酸はこの反応系でのみつくらる。(三輪・中『生化学』184~185ページ)
この教科書の説明はメリハリがあってわかりやすいと思います。
3つめの役割として、エリトロース4‐リン酸の産生(芳香環をもつアミノ酸の材料)を挙げている講義動画(↓)もありました。
Pentose Phosphate Pathway | Hexose Monophosphate Shunt Hussain Biology チャンネル登録者数 18.4万人 メンバーになる チャンネル登録 1575 GLYCOLYSIS PATHWAY : • Glycolysis Pathway
酸化反応経路
ペントースリン酸回路の前半部分、すなわちグルコース6-リン酸からペントース5リン酸が作られるところまでが、酸化反応になります。それ以降は酸化反応ではないようです。
解糖系を逆行して回路が閉じるのはなぜ?と不思議に思います。つまり、解糖系との関係がよくわからんというわけです。それに関しては、ストライヤーの生化学に明解な説明がありました。The flow of glucose 6-phosphate depends on the need for NADPH, ribose 5-phosphate, and ATP という節です(第3版の場合は431ページ Figure 18-2, 第8版の場合は608ページ Figure 20.23)。
どういうときに逆行するのか?解糖系を下る経路とペントースリン酸回路へ向かう経路が枝分かれするのはグルコース6リン酸もしくはフルクトース6リン酸においてですが、これらの地点で反応経路がどっち側に向かうのかはどのようにして決まるのか?それは、必要なものの優先順位が何かで決まるとのことです。つまりエネルギー(ATP)が欲しいのか、核酸の材料が欲しいのか(細胞分裂が盛んなとき)、NADPHが欲しいのか(脂肪酸合成が活発なとき)といった、需要の状態によって反応経路が決まります。
ストライヤーの教科書ではモード1、モード2,モード3、モード4として4つの場合に分けて説明があります。
Mode 1. ribose 5-phosphateが必要
細胞分裂が盛んなときにはDNA合成も盛んである必要があり、核酸の材料であるリボース5リン酸の供給が大事になります。
5 Glucose 6-phosphate + ATP → 6 ribose 5-phosphate + ADP + 2 H+
Mode 2. NADPHとribose 5-phosphateの両方が必要
Glucose 6-phosphate + 2 NADP+ +H2O→ribose 5-phosphate + 2 NADPH +2 H+ +CO2
Mode 3. NADPHが必要
脂肪細胞などでは脂肪酸の合成が活発で、脂肪酸の合成にはNADPHが必要です。コレステロールを産生する細胞っでもNADPHが必須です。
Glucose 6-phosphate + 12 NADP + 7 H2O → 6 CO2 + 12 NADPH + 12 H+ + Pi
Mode 4. NADPHとATPが必要
3 Glucose 6-phosphate + 6 NADP+ + 5 NAD+ + 5 Pi + 8 ADP¡
→ 5 pyruvate + 3 CO2 + 6 NADPH + 5 NADH +8 ATP + 2 H2O + 8 H+
ペントースリン酸回路が亢進している臓器・器官
The highest activity was found in lactating mammary gland and adipose tissue. Lung and liver showed to have a moderately high activity. Brain, kidney, skeletal muscle, and intestinal mucosa showed to have also a significant activity although less than other tissues. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10630623/
https://exchange.scholarrx.com/brick/pentose-phosphate-pathway