学ぶ、学んだという場合にはいろいろな段階があるといわれます。最初が学んだ結果として、「知っている」という状態。しかし知識として知っていてもそれを実際の場面に適用できなければ意味はありません。なので次の段階として「できる」があります。やろうとすれば「できる」けれども、普段から習慣として実践していなければ意味はありません。ですから次の段階として「やっている」があります。ここまでをまとめると、
- 知っている(たとえば、その問題を解くのに必要な数学の公式があることを知っている)
- わかる(その数学の公式の導出方法を読んで理解している)
- できる(読んだ数学の教科書を閉じて、自分でその数学の公式の導出をできる)
- やっている(できている)(いつでも、ササっとその公式の導出ができる)
となります。「知っている」と「わかる」は、理解しやすさの程度に応じて、簡単なことなら「知ってる・わかる」は同じと考えていいことも多いです。
座学で一方的な講義をした場合には、学生を「知っている」や「わかる」の状態にもっていくことしかできません。「できる」状態にさせるためには、演習の時間が必要です。演習により「できる」ようになった学生が、そのあと自分でそれを習慣化してくれて初めて、教育が効果的になされたというわけです。
まあ、学生は初めて聞いてすぐにはわからないことが多いので、実際には学生が自分で復習して「わかる」ところまで持っていく必要があります。
演習では題材を与えて実践させることになりますが、このステップは「具体例」を「抽象化・一般化」する作業です。多くの演習はここで止まります。理想的には、
(教師が与えた)具体例→(その具体例に取り組み)抽象化→別の具体例への適用
のすべてのステップを演習の時間の授業構成に含めるのが良いのでしょう。学生実験であれば後半のステップはやりようがありません。
実験課題→実験・結果の考察
となります。
文章の分析や書き方の科目であれば、
文章→分析(分析方法の習得)→別の文章に学んだことを適用
といった授業設計ができるでしょう。
さて、ダイエットに当てはめると、
- 知っている・わかる(たとえば、ダイエットの知識)
- できる(気が向いたときに、太らないように運動したり、無駄に食べないようにすること)
- やっている(運動を習慣にしている、暴飲暴食をしない生活をしている)
といったことになります。この定式化は、仕事でもスポーツでも音楽でも英語の勉強でも何にでも応用可能です。これらの段階で一番大事なのはなんといっても最後です。知ることわかること、試しにやってみることは誰にでもできることなのですが、やり続けることが難しい。イチロー選手や大谷翔平選手があれほどの偉業を達成したのは、最後の段階の「やっている」を実行していたからでしょう。
英語の勉強を例にとれば、
- シャドウイングは英語の上達に有効だと知っている
- シャドウイングがなぜ有効か理解している
- シャドウイングを実際にやってみることができる
- シャドウイングを日常生活の一部に取り込んでルーチンとして毎日やっている
といった図式も考えられます。毎日かどうかは重要ではなく、週一回でもいいです。頻度は問題でなく、継続している状態、つまり「習慣化している」ことが大事です。
実際のところ、「試しにやってみる」も実際には大きな壁で、ほとんどの人は試そうとしません。「行動に移せない壁」、「習慣化できない壁」の2つが立ちはだかっているんですね。