医学部における生物学教育

大学の医学部では、将来、医師として人々の診療にあたり、同時にヒトを対象とした研究をも行うことになるかもしれない学生たちが学んでいます。このように将来進む道がある程度定まっている医学部の学生に対して、どのような生物学教育を行うのが効果的なのでしょうか。

  1. 愛媛大学大学院医学系研究科 医化学・細胞生物学 (金川 基 教授) 医学科1年生の細胞生物学と医学研究コースを担当 医療の現場で感じた疑問を科学的に解決し臨床に還元 できる研究医― Physician Scientist-の育成 学部生の段階で、しっかりとした基礎力を獲得し、リサーチマインドを育む 単なる教科書的な知識ではなく、医師や研究者にとっての重要な力 教科書の内容を論理的に理解  論理的思考力は、将来医師になった時にも必ず役に立つ
  2. 医学の日進月歩と生涯勉強 呼吸器外科学 教授 新谷 康 大阪大学医学系研究科 教授リレーエッセイ 最近は進行肺がんに対して、放射線、抗がん剤治療に免疫療法を加える治療が手術に負けない成績である可能性が示されました。… 今後のがん治療は、個々のがんの遺伝子を分析した結果をもとに薬剤を選ぶ「ゲノム医療」に向かって進んでいます。将来は「ゲノム医療」が、外科治療がよいのか内科治療がよいのかを決定するツールになり、患者さんのさらなる個別化医療につながるはずです。
  3. 医学部担当講義プレテュトーリアル 岐阜大 生体の構成成分である糖、脂質、蛋白質、核酸のそれぞれについて、性状と生体内における代謝とその調節機構 それらの物質の代謝異常、細胞応答における細胞内情報伝達の仕組み、細胞増殖、細胞分化、アポトーシス、および老化の基本な分子メカニズム
  4. 医学生物学 生物学と医学 生命の起源,生物学と医学の関連第 細胞のはたらき 細胞の成分,構造と機能  細胞増殖と遺伝 細胞周期と分裂,メンデル遺伝 遺伝子のはたらき 遺伝子の構造,情報,複製,発現  物質とエネルギー酵素,消化と呼吸 生体化学反応 細胞から個体へ 多細胞生物の成立,組織、器官 動物の発生個体の維持と調節 血液と免疫,自律神経刺激と生体反応 受容体,効果器,神経系,行動  ホメオスタシス(腎,膵,肝) 生物の集団 生物の多様性,種の進化  生態学など マウス解剖

 

参考

  1. 痛みや鎮痛における個人差の遺伝的要因 日本緩和医療薬学雑誌(Jpn. J. Pharm. Palliat. Care Sci.)2 : 99_110(2009)COMT活性が強ければドーパミンが代謝され,エンドルフィンが放出されるので,痛み感受性が下がる.また,この多型はオピオイド系の痛み刺激に対応する反応性にも影響を及ぼすことが報告されている2).さらに,COMT遺伝子の 4 つの SNP によって構成される対立遺伝子の組み合わせが,筋骨格系疼痛の感受性に違いを引き起こすことも示されている3).
  2. 抗がん剤の薬理学 慶應義塾大学医学部臨床薬剤学 谷川原祐介 第57回日本癌治療学会学術集会2019年10月26日(福岡)教育セッション19 (ESS19)薬理反応の個人差は、どこから生ずるか?
  3. 第7回薬効・副作用の個人差―私にはなぜ効かないの? 『朝日新聞(福岡版)』(2007年3月3日)掲載