非古典的 MHC クラス I 分子とは

免疫学の教科書をみると、主要組織適合性抗原MHCにはMHCクラスIとMHCクラスIIの説明が詳細で、非古典的 MHC クラス I 分子に関して言及があっても、あまり詳細ではありません。それはつまり研究の進展が他よりも遅かったということだと思います。

MHCクラスI分子やMHCクラスII分子がペプチドを提示するということを免疫学の教科書で読んだときに、タンパク質以外の物質の認識はどのように行われるのか疑問に思いました。その答えが、まさにこの「非古典的 MHC クラス I 分子」でした。非古典的 MHC クラス I 分子のあるものは脂質を提示し、またあるものは糖鎖を提示するというのです。自然界はなんと巧妙にできているのでしょう。

クラスIファミリー全体を見渡すと、古典的クラスI分子は少数であり、非古典的と称されるクラスI分子の方がはるかに多い。近年、非古典的クラスI分子の機能解析が飛躍的に進展し、その多様な機能が明らかになってきた。非古典的クラスI分子のなかには、特殊な抗原提示機能をもつもの、ナチュラルキラー細胞の活性を制御するもの、Fc レセプタ
ーとして機能するもの、脂質代謝鉄輸送など免疫とは無関係な機能をもつものなどが知られている。(非古典的 MHC クラス I 分子の多様な機能日本組織適合性学会 平成23年度・認定 HLA 検査技術者講習会) 

多型性が低く,限られたペプチドおよび非ペプチドを結合する(またはペプチド提示能を持たない)クラス I 分子を非古典的クラス I 分子と呼ぶ。

非古典的クラスI分子の種類:提示する抗原 受容体

  1. HLA-E:HLA クラス I シグナルペプチド NKG2/CD94 由来のペプチド
  2. HLA-F:不明  LILR?
  3. HLA-G:ペプチド  LILRB1,LILRB2,LILRA3,KIR2DL4
  4. CD1a,1b,1c:糖脂質  T 細胞上の TCR
  5. CD1d:糖脂質  NKT 細胞上の TCR
  6. CD1e:提示しない  不明
  7. MICA,MICB:なし  NKG2D

HLA の立体構造と免疫制御受容体の分子認識機構 Major Histocompatibility Complex 2016; 23 (2): 80–95)

 

CD1は第1染色体に位置する遺伝子で、多型性はない。HLAクラスI様の分子で、ペプチドではなく脂質や糖脂質を抗原として提示する。ヒトCD1分子は、CD1a、1b、1e、1d、1eの5つのアイソフォ ームを持ち

MICA/B(MHC class I chain-related gene A/B)は、第6染色体のHLA領域に存在する遺伝子である。HLA分子ほど多くはないが多型性であり

HLA以外の抗原提示分子 日本組織適合性学会)

  1. 特殊なT細胞とクラス1b分子 新しい認識系の存在 RADIOISOTOPES 45, 827 (1996)
  2. Sieling, P. A., Chatterjee, D. et al. CD1-Restricted T Cell Recognition of Microbial Lipoglycan Antigens. Science 269: 227-230. (1995).
  3. Beckman, E. M., Porcelli, S. A. et al. Recognition of a lipid antigen by CD1-restricted αβ+ T cells Nature 372: 691-694. (1994).