有機化合物の中の原子の酸化数

酸化還元反応を理解するための方便として酸化数という概念があります。電気陰性度の差により電子を相手のほうにもっていかれるかどうかで酸化数が決められています。なので、結合している原子同士の電気陰性度の大小関係を知っているというのが、大前提になります。周期表の順を知っていれば、電気陰性度H<C<N<Oを覚えるのはたやすいでしょう。

炭素と酸素が結合していれば、炭素に+1の数値を与えます。つまり電子1つを酸素に奪われるので正電荷になるということで+1になると覚えておけば覚えやすいでしょう。

  1. 酸化数(求め方・ルール・例外・例題・一覧・演習問題) 化学のグルメ

炭素が酸素と二重結合していれば、電子2つ分をとられているので、その結合に関しては酸化数は+2を与えられます。炭素と炭素が結合している場合はどっちにも電子はやらないので、与える酸化数はゼロ。

例えば、アセトアルデヒドCH3CHOのアルデヒド基の炭素の酸化数を考えてみると、Oと二重結合しているので+2,Hと結合しているので‐1、合わせて+1になります。酢酸CH3COOHだと、二重結合のOで+2,OHのOで+1、合わせて+3になります。

  1. http://www9.gunma-ct.ac.jp/staff/nakajima/Lecture/OxidationNumber.pdf
  2. https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q13134725993

酸化数の変化と酸化還元反応でやりとりされる電子の数は一致します。

CH3CHO(アルデヒド基のCの酸化数1)+ H2O → CH3COOH (カルボキシ基のCの酸化数3)+ 2H+ + 2e- (酸化数の変化は+2 つまり電子を2個奪われて酸化された)

  1. http://mikecat.org/chem/redox141214a.pdf
  2. アルデヒドの半反応式の作り方 化学のグルメ STEP3 両辺について、O原子の数をH2Oを用いて合わせる

水素は電気陰性度が一番小さいので、何と結合していても相手に電子を取られた状態になっており、酸化数は+1。共有結合はイオン結合ではないのですが、それでも、イオンの電荷のように考えて数を数えると、わかりやすいと思います。C-Oの結合だと電子を酸素が引き寄せるので酸素がー1,炭素が+1というわけ。水素が結合した炭素は、電子を引き寄せるのでー1になります。

酸化数は高校の化学で勉強したはずですが、完全に忘れてました。年をとると最近の記憶から順に失われるといいますが、ついに高校で学んだことも忘れる年齢になってしまったとは。

ChatGPTにも説明をしておいてもらいましょう。以下、チャットGPTの回答です。

酸化数とは

酸化数(酸化状態)の定義

  1. 仮想的な電子配分に基づく値
    • 各化学結合において、電子対をより電気陰性度の高い原子が「独占的に」もつと仮定したとき、各原子が持つとみなされる電子数から算出される整数値。
    • すなわち、実際には共有結合で電子は両原子間に分布しているが、酸化数計算では「電気陰性度が大きい側が電子対を引き寄せる」と仮定して計算する。
  2. 一般的な算出ルール
    1. 単体元素(O₂, H₂, C(黒鉛)など)は酸化数 0。
    2. イオン化合物では、実際の電荷と一致(NaCl 中の Na⁺ は +1、Cl⁻ は –1)。
    3. 水素(H)はほとんどの場合 +1(ただし金属水素化物では –1)。
    4. 酸素(O)はほとんどの場合 –2(過酸化物では –1、OF₂ では +2)。
    5. 化合物全体の酸化数の和は分子全体の電荷に等しい。

電気陰性度との関係

  • 電気陰性度(χ) とは、「共有電子対を自分側に引きつける力」の指標。高い原子ほど電子を強く引き寄せる。
  • 酸化数計算の前提はまさにこの性質:
    1. 例えば C–O 結合では χ(O) ≈ 3.5、χ(C) ≈ 2.5 で、電子対は酸素側に偏ると見る。
    2. したがって「電子対は O 側に全て渡る」と仮定し、C–O 結合における炭素側の酸化数寄与は +2(電子2個を失ったことに相当)と扱う。
    3. 逆に C–H 結合では χ(C) ≈ 2.5、χ(H) ≈ 2.1 で炭素側がわずかに電子を引き寄せるとみなすため、C–H 結合寄与は –1(電子1個を得た)と扱う。

このように、酸化数は「結合ごとに電子をどう分配したか」を、電気陰性度の大小関係で仮定的に決めた結果 と考えると理解しやすいです。

 

酸化数の計算例1

CH₃OH(メタノール)の炭素の酸化数を求める手順は以下のとおりです。

  1. ルールのおさらい
    • 各分子全体の酸化数の和は、その分子の電荷に等しい。CH₃OH は中性分子なので和は 0。
    • 一般的に、水素(H)の酸化数は+1、酸素(O)は−2 とみなす。
  2. 式の構成要素
    CH₃OH は C(1個)、H(4個)、O(1個)からなる。
  3. 未知数を置く
    • C の酸化数を x とする。

酸化数の和を立てる
x + 4×(+1) + 1×(–2) = 0

計算する
x + 4 − 2 = 0  

x + 2 = 0  

x = −2

結論:CH₃OH 中の炭素の酸化数は –2 です。

 

酸化数の計算例2

エタノール(CH₃–CH₂–OH)では、それぞれの炭素原子ごとに酸化数を求めます。

1. 分子全体の酸化数式

中性分子なので

x1+x2+6(+1)+(−2)=0x_1 + x_2 + 6(+1) + (-2) = 0

→ x1+x2+6−2=0x_1 + x_2 + 6 – 2 = 0
x1+x2=−4x_1 + x_2 = -4

ここで

  • x1x_1:メチル側(CH₃–)の炭素の酸化数 
  • x2x_2:メチレングリコール側(–CH₂–OH)の炭素の酸化数 

2. 個別に見て考える

  1. メチル炭素(C₁, CH₃–) 
    • 結合相手は水素3つ(H は+1)ともう一つの炭素(C–C 結合は電子を折半するので寄与 0)。 
    • よって
      x1+3(+1)+0=0⟹x1=−3x_1 + 3(+1) + 0 = 0 \quad\Longrightarrow\quad x_1 = -3
  2. メチレン炭素(C₂, –CH₂–OH) 
    • 結合相手は水素2つ(+1×2)と酸素を含む炭素側(C–C で 0)および酸素(C–O 結合では電子対がほぼ O 側に偏るので、C から見ると 2e⁻を失ったとみなして酸化数寄与は +2)。 
    • もう少し直接的に求めるには、全体式から:
      x2=−4−x1=−4−(−3)=−1x_2 = -4 – x_1 = -4 – (-3) = -1
    • あるいは局所的に考えても同じ結果になります。 

3. 結論

  • CH₃– 側の炭素:酸化数 –3 
  • –CH₂–OH 側の炭素:酸化数 –1 

以上のように、分子全体のバランス式と各炭素の結合環境を組み合わせて、個別に酸化数を求めます。