特許法
(日本語特許出願に係る条約第十九条に基づく補正)
第百八十四条の七 日本語特許出願の出願人は、条約第十九条(1)の規定に基づく補正をしたときは、国内処理基準時の属する日までに、同条(1)の規定に基づき提出された補正書の写しを特許庁長官に提出しなければならない。(条約第三十四条に基づく補正)
第百八十四条の八 国際特許出願の出願人は、条約第三十四条(2)(b)の規定に基づく補正をしたときは、国内処理基準時の属する日までに、日本語特許出願に係る補正にあつては同条(2)(b)の規定に基づき提出された補正書の写しを、外国語特許出願に係る補正にあつては当該補正書の日本語による翻訳文を、特許庁長官に提出しなければならない。https://laws.e-gov.go.jp/law/334AC0000000121
質問:国際予備審査ってどういうときにやるもの(特許の話ね。)請求が必要だと思うけど、どういうときに請求するの、なんの意図で?国際公開されて、そのまま各国移行すれば済むんじゃないの?
Gemini:
その疑問、ごもっともです!
おっしゃる通り、**「国際公開後にそのまま各国移行する」のが現在は主流(デフォルト)**です。多くの出願人は、予備審査を請求せずに国内移行手続期限(優先日から30ヶ月)を迎えます。
では、あえてコストと手間をかけて**「国際予備審査(予備審)」を請求するのはなぜか?
それは、「国際段階で『悪い結果』をひっくり返しておきたいとき」**がほとんどです。
勉強ノートとして、要点を整理しました。
国際予備審査を請求する「意図」と「タイミング」
1. どういうときに請求するの?(タイミング)
原則として、以下の期限までに請求します。
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優先日から22ヶ月、または
- 国際調査見解書を受け取ってから3ヶ月(いずれか遅い方)
現状: 国際調査報告(ISR)と見解書を受け取った後、「結果を見てから決める」のが一般的です。
2. なんの意図で?(3つの主な理由)
予備審査(Chapter II)を請求する意図は、主に以下の戦略的理由によります。
① 「見解書(Written Opinion)」がネガティブだったため、反論・補正したい
これが最大の理由です。
国際調査の段階で**「進歩性なし(Y)」や「新規性なし(X)」**という判定が出たとします。そのまま各国へ移行すると、移行した全ての国(アメリカ、中国、欧州など)で、同じ拒絶理由を個別に受けてしまい、現地代理人費用や翻訳費用がかさみます。
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予備審のメリット: 国際段階で**「第34条補正(明細書や図面も直せる)」や「答弁書」**を提出し、審査官とやり取りができます。
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狙い: ここで肯定的な見解(特許性あり)勝ち取っておけば、各国の審査が非常に有利になります。
② 「特許審査ハイウェイ(PCT-PPH)」を使いたい
もし予備審査で「特許性あり」という肯定的な報告書(IPRP 第II章)をもらえれば、各国の特許庁で**早期審査(PPH)**を申請できます。
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狙い: 早期権利化を目指す重要案件の場合、予備審で「お墨付き」をもらってから各国へ殴り込みをかけるイメージです。
③ (レアケース)ごく一部の国での移行期限延長
昔(2002年以前)は、予備審を請求しないと国内移行期限が20ヶ月、請求すると30ヶ月に延長されるというルールが主流でした。
現在は、日・米・欧・中を含む主要国は請求しなくても一律30ヶ月なので、このメリットはほぼ消滅しました。
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例外: ルクセンブルク、タンザニアなど、ごく一部の国ではまだ「予備審請求しないと期限が短い」場合がありますが、実務上はあまり出会いません。
【比較表】19条補正だけじゃダメなの?
よくある疑問として「国際調査報告のあとにできる『19条補正』で直せばいいのでは?」というものがあります。予備審(34条補正)との違いはここが重要です。
| 特徴 | 第19条補正(国際調査段階) | 第34条補正(予備審査段階) |
| 補正できる範囲 | 請求の範囲(クレーム)のみ | クレーム、明細書、図面のすべて |
| 審査官との対話 | 一方的に出すだけ(答弁書なし) | 答弁書を出して審査官に再考を促せる |
| タイミング | 国際調査報告を受け取ってから | 予備審査請求と同時、またはその後 |
| 使い道 | とりあえずクレームを絞っておく | 本格的に特許性を主張して反論する |
ここがポイント!
19条補正は「明細書の誤記」や「実施例の追加説明」などはできません。抜本的に発明の内容を説明し直して審査官を説得するには、予備審(34条補正)が必要になります。
まとめ
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基本: そのまま各国移行でOK(コストも安い)。
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予備審をやる場合: 国際調査の結果がボロボロ(拒絶)で、「このまま各国に行くと全滅する! 国際段階で明細書ごと修正して、良い評価に変えてから各国へ行きたい!」という敗者復活戦の意図が強いです。
質問:19条補正とか34条補正って、PCT条約の「条」の番号だよね?これらの条文も覚える必要ある?
Gemini:絶対に覚える必要があります!特許の勉強(特に弁理士試験や実務)において、PCTの条文番号の中で「19条」と「34条」は最重要ランクです。「特許法29条(新規性・進歩性)」と同じくらい、番号だけで会話が成立するレベルの共通言語だからです。一字一句の暗記までは不要ですが、「条文番号」と「手続きの内容・要件」をセットで条件反射的に出てくるようにしておく必要があります。
覚えるべきポイントを整理しました。
なぜこの2つは「条文番号」で覚える必要があるの?
1. 構造上の大きな区切りだから
PCT条約は大きく2つのパート(章)に分かれています。この構造を理解するためのアンカー(目印)になるのが19条と34条です。
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第1章(Chapter I):国際調査
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全出願人が必ず通るルート。
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この章の最後にある補正のチャンスが「19条」。
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第2章(Chapter II):国際予備審査
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オプション(選択制)のルート。
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この章の中で行う補正が「34条」。
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試験では「第1章の段階でできることは?」「第2章を請求した場合の特例は?」といった問われ方をするので、この区分けが必須です。
2. 条文特有のキーワードがあるから
それぞれの条文には、試験でひっかけ問題になりやすい「キーワード」が含まれています。
■ PCT第19条(国際調査段階の補正)
覚えるべき骨子:
時期: 国際調査報告(ISR)を受け取った後
提出先: 国際事務局(IB) ※調査機関ではない!
囲: 請求の範囲(クレーム)について補正できる(明細書・図面はNG)
おまけ: 補正と同時に簡単な「説明書(Statement)」を提出できる(第19条(1))
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ひっかけポイント: 「説明書」を出せるのは19条だけ。34条にはない制度です。
■ PCT第34条(国際予備審査段階の補正)
覚えるべき骨子:
時期: 予備審査を請求したとき、または予備審査報告が作成される前まで
提出先: 国際予備審査機関(IPEA)
範囲: 請求の範囲、明細書、図面のすべてについて補正できる
権利: 口頭で意見を述べたり、審査官と面接したりする権利はない(原則書面のみ)が、補正をする権利はある。
覚え方のコツ(対比イメージ)
これだけ覚えておけば、大体の問題には対応できます。
| 項目 | 19条補正 | 34条補正 |
| ステージ | 第1章(国際調査)のシメ | 第2章(予備審査)のメイン |
| いじれる場所 | クレームだけ | 全部(クレーム・明細書・図面) |
| 提出先 |
国際事務局 (IB)
(ジュネーブに送るイメージ) |
予備審査機関 (IPEA)
(審査官に直接送るイメージ) |
| セット | 「説明書」を付けられる | 「答弁書」と一緒に議論する |
一歩進んだアドバイス
もし試験対策(特に短答式)であれば、条文番号に加えて**「国内法とのリンク」**も意識すると完璧です。
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PCT19条補正 → 日本国内移行時には特許法第184条の7(日本語翻訳文の提出)
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PCT34条補正 → 日本国内移行時には特許法第184条の8(日本語翻訳文の提出)
「19条補正をしたけれど翻訳文を出さなかったらどうなる?」といった問題は頻出です。まずは「19条=クレームのみ・IBへ」「34条=全部・IPEAへ」という基本を叩き込んでおきましょう。
質問:国際予備審査に一番関連する特許法は第何条?それとも無関係?
Gemini:無関係ではありません!国際予備審査(およびその中で行う34条補正)に一番関連する日本の特許法の条文は、ズバリこれです。
特許法 第184条の8(条約第34条の規定による補正の特例)
この条文がなぜ「一番関連する」のか、その意味を整理しておきましょう。
1. なぜ「第184条の8」なのか?
国際予備審査そのもの(審査官がどう審査するか)はPCT条約のルールで行われますが、**「その結果(34条補正)を日本国内にどう反映させるか」**を決めているのが、この特許法184条の8だからです。
この条文は、以下のルールを定めています。
- 翻訳文の提出義務:国際予備審査の段階で「34条補正(明細書やクレームの書き換え)」をした場合、その**「日本語翻訳文」**を日本の特許庁に提出しなさい。
- 期限:国内書面提出期間(原則30ヶ月)までに提出しなさい。
- ペナルティ(重要!):もし翻訳文を出さなかったら、「その34条補正は、なかったものとみなす」。
つまり、せっかく高いお金を払って予備審査を受け、補正をして良い結果(肯定的な見解)を勝ち取ったとしても、**この「184条の8」の手続きをミスると、日本ではすべて水の泡(補正前の状態に戻る)**になってしまうのです。
2. 「無関係?」という疑問の正体
「無関係?」と思われたのは、おそらく以下の感覚からではないでしょうか。
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「予備審査」をしているのは、日本の特許庁の審査官かもしれないけれど、あくまで「国際段階」の話だよね?
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日本の特許法(国内法)は、日本に入ってきてからの話だよね?
その感覚は半分正解です。
日本の特許法には「予備審査をどう進めるか(審査基準など)」は書いてありません。それはPCTガイドラインの話です。
しかし、**「予備審査の『成果物』を日本でどう受け入れるか」**という入り口の部分(税関のような役割)については、日本の特許法(184条シリーズ)がガッツリ関わっています。
3. もうひとつ関連する条文(上級編)
もし余裕があれば、特許法 第184条の10(翻訳文の特例等) も「予備審査に関連する条文」としてメモしておいてください。
これは、**「34条補正の内容が、日本での審査対象になりますよ」**と定めた条文です。
具体的には、34条補正の翻訳文が提出された場合、その翻訳文の内容をもって「特許請求の範囲」や「明細書」とみなして審査を進める、というルールです。
まとめ
- 国際予備審査(34条補正)の受け皿となる条文→ 特許法 第184条の8
- 覚えるべきポイント→ 「34条補正の翻訳文を出さないと、補正はなかったことになる(無効ではなく、みなし不提出)」
この「184条の8」は、弁理士試験の短答試験でも、実務での期限管理でも、非常によく出てくる番号です。「34条補正といったらイッパチヨンのハチ(184-8)」とセットで覚えておくと強いですよ!
質問:19条補正や34条補正って、日本語で出すの?
Gemini:「最初に出願した言語(国際出願の言語)」**に合わせて出します。つまり、
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日本語で国際出願したなら → 補正書も日本語
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英語で国際出願したなら → 補正書も英語
で出します。
「日本の特許庁(JPO)を通して手続するんだから、全部日本語でいいでしょ?」と思いがちなのですが、ここは**「国際段階」の手続きなので、あくまで「出願そのものの言語」**に合わせるのがルールです。
以下に、試験や実務で間違えやすいポイントを整理しました。
1. 補正書の言語の基本ルール
PCT出願(国際出願)がどの言語で書かれているかによって決まります。
| ケース | 出願の言語 | 19条・34条補正の言語 | 提出先 |
| 日本語特許出願ベース | 日本語 | 日本語 |
19条:国際事務局 (IB)
34条:予備審査機関 (IPEA) |
| 英語出願ベース | 英語 | 英語 | 同上 |
イメージ:
英語で書かれた明細書の中に、急に日本語の補正を差し込んでも、審査官(外国人かもしれないし、英語案件担当の日本人)は読めませんし、文章がつながりませんよね。だから言語を統一します。
2. 【超重要】ここからが「試験に出る」話
「国際段階で補正書を出した」だけで安心していませんか?実は、そのあと**「日本国内に移行するとき(国内移行段階)」**に大きな落とし穴があります。ここで、さきほどの**特許法184条の7(19条補正の翻訳文)や184条の8(34条補正の翻訳文)**の話が出てきます。
ケースA:日本語で国際出願していた場合
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国際段階: 補正書は日本語で出した。
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日本移行時: もともと日本語なので、翻訳文は不要。
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そのまま日本の審査官が読みます。楽ちんです。
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ケースB:英語で国際出願していた場合
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国際段階: 補正書は英語で出した。
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日本移行時: 日本の審査官は日本語で審査します。
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したがって、**「補正書の日本語翻訳文」**を日本の特許庁へ提出しなければなりません。
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期限: 国内書面提出期間(優先日から30ヶ月)まで。
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試験でのひっかけポイント!
Q. 英語でした国際出願について、19条補正(英語)をした。日本国内移行時に、この補正内容で審査してもらいたい場合、どうすればよいか?
A. 補正書の**「日本語翻訳文」**を提出する。(これを出さないと、補正はなかったものとして扱われます!)
まとめ
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出すとき(国際段階): 出願した言語に合わせる。(日本語出願なら日本語、英語出願なら英語)
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各国に入るとき(国内段階): 行く国の言葉に翻訳する。(日本に入るなら日本語、アメリカに行くなら英語)
この**「国際段階」と「国内移行段階」**を頭の中でパキッと分けておくのが、PCTを理解する最大のコツです!