抗菌薬関連下痢症とは
- 抗菌薬投与に伴う下痢症の多くは腸管内常在細菌叢の急激な減少に伴う下痢(浸透圧性,水分吸収障害)と考えられており、これらは抗菌薬の中止によって速やかに改善するので問題となりません
- 発熱を伴う腸炎へと進展し特別な治療を必要とする例があります。特に、C.difficile(以下ディフィシル菌)が関与している症例では重篤化し易い
抗菌薬関連下痢症を発症させやすい抗菌薬
抗菌薬関連下痢症はセファロスポリン系(特に第,世代), クリンダマイシン, 広域ペニシリン系, テトラサイクリン系などの抗菌薬投与によって菌交代症として発症します。 その代表的な起炎菌にはClostridium difficile (C. difficile), MRSA, Klebsiella oxytocaなどが挙げられます。(鹿児島市医報 第51巻第2号 (通巻600号)2012(平成24年))
- 薬剤別にみた抗菌薬関連下痢症の発症リスク 環境感染誌Vol.23no.3,2008 ペニシリン系 ampicillin(ABPC), ampicillin/cloxacillin(ABPC/MCIPC), piperacillin(PIPC), ampicillin/sulbactam(ABPC/SBT),セフェム系第1世代 cefazolin(CEZ),セフェム系第2世代 cefmetazole(CMZ), cefotiam(CTM), flomoxef(FMOX),セフェム系第3世代 cefo-perazone/sulbactam(CPZ/SBT), ceftazidime(CAZ), ceftriaxone(CTRX),セフェム系第4世代 cefozopran(CZOP), cefpirome(CPR),モノバクタム系 aztreonam(AZT),アミノグリコシド系 streptomycin(SM), gen-tamicin(GM), amikacin(AMK), isepamicin(ISP), dibekacin(DKB),カルバペネム系 panipenem/beta-mipron(PAPM/BP), meropenem(MEPM),ホスホマイシン系 fosfomycin(FOM),テトラサイクリン系 minocycline(MINO),リンコマイシン系 clindamycin(CLDM),マクロライド系 erythromycin(EM),ニューキノロン系 ciprofloxacin(CPFX), pazufloxacin(PZFX),抗MRSA薬arbekacin(ABK), vancomycin(VCM)
クロストリジウム・ディフィシル( Clostridium difficile )腸炎
多くの抗菌薬は腸内に存在する細菌の種類と量のバランスを変化させます。こうして、クロストリジウム・ディフィシル Clostridium difficileなどの病気を引き起こす特定の細菌が異常に増殖し、普段から腸内に生息している無害な細菌を閉め出してしまいます。クロストリジウム・ディフィシル Clostridium difficileは、抗菌薬の使用後に発生する腸炎の最も一般的な原因です。(クロストリジウム・ディフィシル( CLOSTRIDIUM DIFFICILE )腸炎 MSDマニュアル家庭版)
発熱や感染症で抗菌薬を処方される事がありますが、長期にわたり飲み続けると消化管に住んでいる「賢い菌」の住む環境が悪くなり、代わりに毒素を出す「悪い菌」(クロストリジウムディフィシレ)が増え、腸炎や下痢を起こし、その下痢便から排出された病原菌が病院などで拡がる事が問題になっております。(注目の抗菌薬関連下痢症(クロストリジウムディフィシル)について Infection control nurseの部屋)
Clostridioides(Clostridium)difficile感染症の診療
- 非重症の抗菌薬関連下痢症にはメトロニダゾール 2018/11/29 日経メディカル 2018年10月、日本で初めてとなる『Clostridioides(Clostridium)difficile感染症診療ガイドライン』が発行された。
- Clostridium difficile((クロストリジウム・ディフィシルクロストリジウム・ディフィシル))関連下痢症関連下痢症・腸炎・腸炎の概要と治療 スライド