反応機構の表し方(巻矢印)

有機化学では化学反応を示すときによく矢印で電子の動きを示しています。あれがどういう原理原則に基づいて描かれているのかがよくわかっていませんでした。基礎講座有機化学(化学同人)という教科書の51ページ~に丁寧な説明がありました。

巻矢印:電子対(対になった電子2個!)の動きを表す。

  • 矢印の根元(始点)は電子対で、矢印の示す先は、電子対を受け取る原子。
  • 例えば、A-Bという分子がA+とB-にイオン化するのであれば、結合を示す棒線が巻矢印の始点になり、負に帯電する原子Bに向かう矢印を書く。

巻矢印(片羽の矢頭):電子1個の動きを表す。

例:プロペンと臭化水素の反応

プロペン H3C-CH=CH2 と臭化水素 H-Brとが反応する場合は二重結合のパイ電子が臭化水素のHを「攻撃」してH-Br間の電子対はBrに渡されて臭化物イオンBr-ができ、臭化水素の水素は、プロペンに付加して、カルボカチオン中間体ができる。付加するHが二重結合をつくっていた2つの炭素のどちら側に結合するが問題。描かれた巻矢印の解釈の約束事として、巻矢印の弧の内側の炭素のほうが結合をつくる炭素(57ページ)。どちら側に結合するかは、わかっていないと巻矢印を描けないということになります。

例:アルドール反応

アルドール反応(380ページ)で巻矢印を自分で考えて描こうとしたときに、あれ?どっちの炭素が結合するんだろうと疑問を持ちました。この場合はカルボニル基の炭素ではないほうの炭素がアニオンとなりその電子が求核反応を行い結合をつくるようです。

  1. エノール・エノラートの反応 (www2.meijo-u.ac.jp/~tnagata)

教科書を目で追うだけだとサラッと読み飛ばしてしまいますが、さてさて、と思いながら実際に手を動かして、化合物の構造を書いて、電子の動きを巻矢印で示そうとすると、あれれ?と疑問がたくさん湧いてきて、教科書に書いてあったことが簡単に自分で再現できないことに気付きます。勉強するときは、白い紙とペンが必須ですね。