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活性酸素種(ROS)とは?ROS,酸素分子、ラジカルなどについて

活性化酸素種(ROS)とは

活性化酸素種( reactive oxygen species; ROS) は、酸素原子を含む反応性の高い化合物の総称です。

通常、三重項酸素が励起してできる一重項酸素(1O2)、酸素が一電子還元された超酸化物スーパーオキシド(O2)、スーパーオキシドが不均化して生じた二電子還元種である過酸化水素(H2O2)、過酸化水素より生成するヒドロキシラジカル(HO・)の4つを指します。(’活性酸素(かっせいさんそ)  e-ヘルスネット 厚生労働省)

活性酸素種(ROS)の種類の覚え方

活性酸素種(ROS)という言葉は、日常的に非常によく目にする言葉ですが、一重項酸素、スーパーオキシド、過酸化水素、ヒドロキシラジカルの4つが活性酸素種(ROS)と呼ばれると言われても互いの関係がわかりにくいと思います。

活性酸素「種」というくらいなので、種類がたくさんあることが理解しにくい原因です。しかし、酸素分子O2がどの程度還元されたか(電子をいくつもらったか)という段階で分けて考えるとすっきり整理できます。

まず酸素が水になるのは、酸素が完全に還元された状態です。「還元される=電子をもらう」が定義でした。酸素分子O2が、電子を1個ずつもらう(還元される)ステップで考えます。

「電子を1つ貰う」=「e-  + H+ をセットでもらう」の意味です。

  1. 酸素分子 O2
  2. スーパーオキシド ・O2 ー  + H+ (酸素分子O2が、電子をひとつ貰った)
  3. 過酸化水素 H2O2 (スーパーオキシドが電子を一つもらった。もとのO2で考えると、電子を2つもらった)
  4. ヒドロキシラジカル ・HO (過酸化水素が電子を一つもらった。もとのO2で考えると、電子を3つもらった。2つ貰ったらH2O(完全に還元)ができて、のこりがヒドロキシラジカル)
  5.  H2O (ヒドロキシラジカルが電子を1つもらた。もとのO2から考えれば電子を合計4つ貰った。もとから考えればH2O分子が2つできたことになります。)

(生体における活性酸素フリーラジカルの産生と消去 図1 より)

参考記事

  1. 最近よく耳にする活性酸素とは: 岡山理科大学
  2. 生体における活性酸素フリーラジカルの産生と消去 (PDF) 今田 伊助, 佐藤 英介, 井上 正康 大阪市立大学医学部

次亜塩素酸 hypochlorous acid について

「次亜塩素酸」という単一の物質名が書かれた水溶液は、しばしば pH が異なりしかも pH の違いによって殺菌に要する時間が数十倍となる 11) ことがあるため、市場に混乱を生じさせる要因となっている。pHの違いによって殺菌効果の差は、次亜塩素酸の性質である、非解離の次亜塩素酸(HClO)とプロトン(H+)が解離した次亜塩素酸イオン(ClO-)との間の平衡が大きく影響している(式 2)11-13)。

𝐇𝐂𝐥𝐎 ⇄ 𝐇+ + 𝐂𝐥𝐎− ········· (式 2)

非解離の次亜塩素酸のほうが、解離型の次亜塩素酸イオンよりも殺菌効果が高く、Marks は pH
に依存した非解離の次亜塩素酸の濃度のみが殺芽胞速度に影響すると報告している 14)。

https://www.thcu.ac.jp/uploads/imgs/20200622122100.pdf

Marks HC, Wyss O, Strandskov FB. Studies on the Mode of Action of Compounds Containing Available Chlorine. J Bacteriol. 1945 Mar;49(3):299-305. doi: 10.1128/jb.49.3.299-305.1945. PMID: 16560921; PMCID: PMC374040.

次亜塩素酸も活性酸素種の一つとされるようです。

次亜塩素酸の殺菌効果は,活性酸素ラジカル種の一つであるヒドロキシルラジカル(・OH)によるタンパク質,核酸の分解・変性によるものであると報告されている https://www.jstage.jst.go.jp/article/electrochemistry/73/11/73_962/_pdf

好中球にはミエロパーオキシダーゼという酵素が大量に存在し、活性酸素の一種である過酸化水素を塩素イオンと反応させ次亜塩素酸を作り出すからです。なぜ好中球は次亜塩素酸を発生させるこの酵素を大量に有しているか考えたとき、理由はまさに「除菌作用の為」と言えます。https://www.disolva.jp/space/shikumi.html

  1. 生体における活性酸素フリーラジカルの産生と消去 今田 伊助, 佐藤 英介, 井上 正康 大阪市立大学医学部 https://www.jstage.jst.go.jp/article/kagakutoseibutsu1962/37/6/37_6_411/_pdf
  2. Sin-Yi Liou, Michael C. Dodd, Evaluation of hydroxyl radical and reactive chlorine species generation from the superoxide/hypochlorous acid reaction as the basis for a novel advanced oxidation process, Water Research, Volume 200, 2021, 117142, ISSN 0043-1354, https://doi.org/10.1016/j.watres.2021.117142.

亜塩素酸について

亜塩素酸(HClO₂)の活性分子種は、塩素過酸化ラジカル(ClOO・)であるということが、最近の研究によって分かり https://www.sankei-group.com/corp/products/asui/

酸素分子の性質

  1. 基礎無機化学第13分子構造と結合(回V)分子軌道法(I):分子軌道法の基礎と二原子分子 molecularscience.jp ペアを作っていない電子(不対電子)を2つもち,このスピンが磁性を示す.(液体酸素は磁石にくっつく
  2. 酸素分子の電子配置   かがくののおと 8 軌道に1つしか電子が入っていないとき,その電子をラジカルとよぶ.ラジカルは,普通は反応中間体のような,不安定な分子に現れ,反応性が高い.酸素分子はいろんな反応をしやすい.

電子のスピンの多重度とは

電子の多重度Mは、

M=1+2∑s(ただしsはスピン量子数で1/2か-1/2をとる)

で定義され、M=1のときを一重項状態M=3のときを三重項状態と呼ぶそうです。電子が軌道間を遷移する場合は、多重度が変化することは通常許されない(=低い確率でしか起きない)という原理が、蛍光と燐光の違いを生み出しています。一重項励起状態から一重項基底状態に遷移する場合に起こる発光が蛍光です。一重項励起状態から系間移動で三重項励起状態に移りそこから一重項基底状態に遷移する場合に起こる発光が燐光です。蛍光は許容遷移のためミリ秒より短い時間で起きるのに対し、燐光は禁制遷移のため遅く、ミリ秒より長い時間で起きるのだそう。下のリンクの説明が非常にわかりやすかったです。

  1. 一重項、三重項有機分子の発光の物理 電光石産小さな石たちの物語-半導体のお話
  2. 多重度 (化学)(ウィキペディア) 多重度は、全スピン角運動量をSとしたとき、2S+1で定義される。全ての電子が対になっている場合はS = 0で、多重度は1である。この場合は一重項(singlet)と呼ばれる。分子が1個の不対電子を有している場合はS = 1/2で、多重度は2S + 1 = 2(二重項、doublet)である。不対電子が2個の場合は同様に三重項(triplet)と呼ばれる。

三重項(トリプレット)酸素

基底状態の酸素分子は三重項酸素と呼ばれ、3O2で表される。これは2つ存在するπ*2p軌道を1個ずつの電子が占有しており、全スピン量子数が1の状態(一重項酸素 ウィキペディア)

偶数個の電子をもつ原子,分子において,電子の多重度D=2S+1=3となるような,スピン量子数S=1の状態三重項状態 コトバンク)

三重項(基底状態)、一重項(励起状態)のうちのΔ状態と、Σ状態を説明する下図がわかりやすいです。

(画像:CC BY-SA 3.0 Molekülorbital-Sauerstoff.png

  1. 一重項酸素 Singlet Oxygen けむすて
  2. 一重項と三重項とは 物理のかぎしっぽ

三重項酸素は、軌道に電子が単独で存在する状態なのでフリーラジカル2つの不対電子を有するのでビラジカルと呼ばれる。ただし、三重項分子は一般的に一重項である有機化合物(生体分子を含む)と反応しないのだそう。

  1. 三重項酸素 薬学用語解説 日本薬学会

一重項(シングレット)酸素

分子軌道の1つπ*2p軌道上の電子が一重項状態(=全スピン量子数が0)で占有されている励起状態。一重項状態は、2つ存在するπ*2p軌道をそれぞれ1個ずつの電子が占有しているΣ状態と、2つ存在するπ*2p軌道の一方のみを2個の電子が占有し、もう一方のπ*2p軌道は空軌道のΔ状態の2種類ある。(参照:一重項酸素 ウィキペディア)

多電子原子や分子の全電子のスピン量子数の和(合成スピン角運動量S)が0である状態.この状態の多重度(2S+1)は1なので,一重項状態といわれる.(一重項状態 コトバンク)

酸素分子は基底状態が三重項状態であり、三重項状態では反応性はあまり高くないのですが、励起状態である一重項酸素分子は、反応性が高く、いわゆる活性酸素の一つです。

  1. 一重項酸素の研究(活性酸素分子の生成,検出,定量)(akikuchi.ynu.ac.jp)

Δ1状態よりΣ1状態の方がエネルギーが高いため、Σ1状態は速やかにΔ1状態に遷移する。このため一重項酸素といえば通常Δ1状態のものを指す。一重項酸素(Δ1)は活性酸素の一種ではあるが、軌道上に単独の電子を持たず、フリーラジカルではない。(一重項酸素 薬学用語解説 日本薬学会)

ややこしいですね。酸素の基底状態は三重項状態で、フリーラジカルであるが、反応性は高くない。酸素の励起状態は一重項状態で、フリーラジカルではないが反応性が高く、活性酸素種の一つである。とまとめられそうです。

  1. 生体における一重項酸素の生成と消去 ー酸化ストレスとの関わりを考えるー 2016

 

酸素分子の分子軌道に関する参考サイト

  1. 【分子軌道論】結合性、反結合性軌道の解説と窒素、酸素の分子軌道例 化学徒の備忘録(かがろく)|化学系ブログ
  2. 酸素分子O2 eng.kagawa-u.ac.jp 酸素原子の1s軌道同士、2s軌道同士および2pz軌道同士から3組のσ-σ*軌道を作り、2px軌道同士および2py軌道同士から2組のπ-π*軌道を作ります。
  3. 酸素の分子軌道 第一部:化学と物質構造・共有結合 sekigin.jp

分子軌道法に関する参考サイト

  1. 分子軌道法(ウィキペディア)分子軌道波動関数は、既知のn個の原子軌道の線形結合(重ね合わせ)で表せると仮定する。LCAO(原子軌道の線型結合、Linear Combination of Atomic Orbital)近似と呼ばれる。原子価結合法(1927年)の後、フント、マリケン、スレイター、レナード-ジョーンズらによって開発された。当初は「フント-マリケン理論」と呼ばれていた。
  2. 原子構造と化学結合 .doshisha.ac.jp
  3. 分子軌道理論を用いた有機反応機構の考察 園田 高明
  4. 【量子化学】分子軌道法とエネルギー準位図の書き方をわかりやすく解説 大学生のための量子化学

その他の参考

混乱しやすい概念、関連するトピックなど。

  1. フロンティア軌道 化学反応における役割 米澤貞次郎

 

ROSの生理作用

  1. Circadian Rhythm Connections to Oxidative Stress: Implications for Human Health Melissa Wilking,1 Mary Ndiaye,1 Hasan Mukhtar,1,2 and Nihal Ahmadcorresponding author1,2,3 Antioxid Redox Signal. 2013 Jul 10; 19(2): 192–208. PMCID: PMC3689169 doi: 10.1089/ars.2012.4889

 

酸・塩基とは?酸化還元反応との違いは?

酸やアルカリとは何でしょうか?お酢には酢酸が数%はいっていて、酸っぱい味がします。酸は酸っぱいというのは経験的に知っていることでしょう。アルカリはというと、実験をしたことがある人の場合、NaOHなどの強アルカリは手につくと手がヌルヌルするという経験をしたことがあるのではないでしょうか。

  1. 優しい電気化学入門
  2. リトマス試験紙はどうして色が変化するのですか?

酸やアルカリは子供でも聞いたことがあるくらい当たり前の概念ですが、高校、大学と勉強を深めるほど、話がややこしくなってきて、当たり前だったはずのことがだんだんわからなくなります。

アレニウスによる酸・塩基の定義

一番素朴な中学レベルの酸、アルカリの話がこれだったと思います。

酸は、水に溶けると水素イオンH+を生じる物質であり、塩基は、水に溶けると水酸化物イオンOHを生じる物質である。(酸と塩基 (acid and base)

HClは水に溶けるとH+ とCl-になるので酸です。NaOHは水に溶けるとNa+ とOH-になるので塩基です。この定義の方法だと、水に溶ける物質に関してしか酸や塩基が定義できません。

塩基とアルカリは同じ?違う?

塩基とアルカリの言葉の違いに関してですが、塩基のうちで水に溶ける性質を持つ物質をアルカリと呼びます。

  1. NHK高校講座 化学基礎 第25回 酸と塩基

ブレンステッド=ローリーによる酸・塩基の定義

高校で習う普通の酸、塩基の定義は、ブレンステッドさんと、ローリーさんが考えた定義のことで、水素イオンを相手に与える物質が「酸」、水素イオンを相手からもらう物質が「塩基」です。

例で考えると、塩化水素HClが水に溶けてイオンになる場合、

HCl + H2O → H3O+ + Cl-

という反応が起こります。HClはH+を見ずに与えたので、「酸」、水はH+を受け取ってH3O+になったので、「塩基」です。

水が塩基というのもなんだか変な気がしますが、定義に従うとそういうことになります。逆の反応を考えると、H3O+は、H+をCl-にわたしてH2Oになっているので、「酸」であり、Cl-は、H+をうけとってHClになっているので「塩基」の役割を果たしています。反応の前後で、酸が塩基になり、塩基が酸に変化する関係になっており、オキソニウムイオンH3O+(酸)は水(塩基)の「共役酸」、塩化物イオンCl-(塩基)は塩化水素(酸)の「共役塩基」と呼ばれます。

別の例としてアンモニアが水に溶けてアンモニウムイオンになる反応は、

NH3 + H2O → NH4+ + OH-

酸と塩基の関係を考えるとH+のやりとりで定義されるので、逆反応の場合も同様に考えると、

NH3(塩基) + H2O(酸) ⇔  NH4+(アンモニアの共役酸) + OH-(水の共役塩基)

となっています。ここで面白いのは、先ほどの反応では水は「塩基」だったのに、こんどの反応では水は「酸」になっています。酸や塩基というのは、物質ごとに固定された性質ではなくて、化学反応ごとにその物質が果たす役割のことなのですね。

水素イオンH+とオキソニウムイオンH3O+は同じ?違う?

教科書によってH+と書いていたりH3O+と書いていたりしますが、両者は同じものなのか違うものなのかで悩みます。結論をいうと同じものだそうです。H+(プロトン、陽子)は水の中で陽子としては存在できなくてかならずH3O+の形になっているようです。しかし、いちいちH3O+と書くのが大変なので、省略してH+と表記することが一般的だそう。

水溶液における水素イオン濃度 [ H ] は,ヒドロニウムイオン濃度[ H3O ](オキソニウムイオンともいう)で表記するのが通例であるが,以下の pH 関連の解説では,過去からの慣例に従い水素イオン濃度 [ H+ ] の表現を用いる。(第三部:化学反応 酸・塩基とは 情報技術館 SEKIGIN)

 

ルイスによる酸・塩基の定義

ブレンステッド=ローリーによる酸・塩基の定義では、プロトンH+のやり取りで定義されていました。ルイスによる定義では、「電子対」のやり取りで考えます。電子対を与えるものが塩基、受け取るものが酸です。先ほどの例、

NH3 + H2O → NH4+ + OH-

を考えるとNH3はH+を受け取るのでブレンステッド=ローリーの定義により塩基ですが、ルイスの定義によれば電子対を与えているので塩基ということになり、両者は当たり前ですが一致します。ルイスによる定義はブレンステッド=ローリーの定義を拡張したものなので、ブレンステッド=ローリーによる酸・塩基は、ルイスによる酸・塩基と一致します。

ルイスの定義が本領を発揮するのはH+が関与しない反応の場合です。

三フッ化ホウ素 BF3 + ジエチルエーテル C2H5-O-C2H5 → BF3-O-(C2H5)2

Bは原子番号5で、外側の殻には電子が3つあり、共有結合をFとつくっているので電子が6個あります。オクテット則によれば電子対を受け取ると安定化します。そこでジエチルエーテルの酸素から電子対をもらってマイナスになり、ジエチルエーテルの酸素はプラスになり、結合します(付加体)。三フッ化ホウ素は電子対をもらったので、酸(ルイス酸と呼ぶ)です。ルイスによる定義に基づいた酸なのでルイス酸と呼びます。

  1. How many π bonds are in a molecule of boron trifluoride?(socratic.org)

酸化還元と酸・塩基との違い

ルイスによる酸・塩基の定義は電子対のやりとりがもとになっていました。それを聞くと、あれ、酸化還元反応も電子のやりとりだったよな、一体何が違うの?という素朴な疑問が生じます。自分に限らず、世の中の人もみなそう思うようです。

  1. ルイス酸、ルイス塩基の定義は、電子の授受で成されていますが、これは酸化還元の定義の1つでもあるものではないでしょうか?‥ この定義の存在意義が分からなくなってしまいました。 YAHOO!知恵袋 「電子」と「電子対」を混同してますよ。酸化還元反応は、一方の物質から他方に「電子が移動する」ものです。 ルイスの酸塩基反応は一方の物質が「電子対」を供与し、他方がそれを受容することで「結合をつくる」ものです。電子対は共有されるだけで一方から他方へ移動するわけではありません。
  2. 酸化還元反応と酸塩基反応との本質的な違いはあるんでしょうか?関わっている電子の数が異なるだけのように思えるのですが・・・ OKWAVE Lewisの酸塩基では、結合(共有結合、配位結合、イオン結合を含めて)が出来る。酸化還元は、電子の授受で結合は出来ない。

掲示板ですでに回答がなされていました。

酸化還元反応といったとき、電子のやりとりを問題にしています。ブレンステッド=ローリーによる酸・塩基の定義に基づいて塩基や酸というときは、プロトンを受け取る物質か、与える物質かということを問題にしています。もののやりとりという意味では似ていますが、渡されるものが電子か、プロトンかという違いがあります。

酸化:電子を奪われる;水素を奪われる;酸素が結合する;酸化数が増える

還元:電子を受け取る;水素を受け取る;酸素を奪われる

塩基:プロトン(陽子、H+)を受け取る

酸:プロトンを与える

ブレンステッド=ローリーの定義までであれば(=高校の化学までであれば)、酸化還元と酸塩基との違いは、電子かプロトンかの違いですよという理解もできたのですが、ルイスによる酸・塩基の定義にまで拡張すると(=大学で化学を勉強すると)、本質的な違いは何か?を再度考える必要があったというわけです。

酸・塩基のどの定義を使えばいいのか?

アレニウスの定義、ブレンステッド=ローリーの定義、ルイスの定義と拡張してきたので、結局大学生になったらルイスの定義で全てを済ませればいいのかというとそういうものでもないようです。多くの場合はブレンステッド=ローリーの定義によって化学反応を理解し、その定義に収まらない化学反応に関してはルイスの定義で理解するというスタンスみたいですね。

(特に水溶液系では)ブレンステッド・ローリーの定義は今でも大切です。そもそもルイスによる定義はプロトンが関与しないので,pH(水素イオン濃度)で酸の強さを表すことができず,それだけを考えても不便です。ですから概念としてはルイスで統一できたとしても,ブレンステッド・ローリーが使える範疇ではこちらを使うというのが実際です。(一般性を高めた酸・塩基 Chemist Eyes)

参考

  1. 基礎講座有機化学 化学同人
  2. 化学I 基礎理解 第2部 物質の変化 第9章 酸化還元反応 新興出版社 啓林館
  3. 酸化・還元と酸化数 NHK高校講座
  4. 電気陰性度とは?覚え方や周期表での大小/希ガスの値が無い理由を解説 スママナビング
  5. 酸化還元と酸塩基反応の定義〜1行で解答出来ますか?〜 スママナビング 陽子の授受か電子の授受か
  6. 酸化数のルールを覚えて酸化剤・還元剤を見抜く方法を解説! スママナビング

 

RS表示法

化合物をネットで調べていると、化合物の名称の前にRやSがついていることがよくあります。これはRS表示法に基づく記載方法です。RS表示法は、不斉炭素をもつ化合物の原子団の向きをきめるもので、かりに不斉炭素Cに4つの原子団L1,L2,L3,L4があったとします。ここで1~4の番号付けは、CIP順位則(Cahn–Ingold–Prelog priority rule)というルールに従います。

CIP順位則では、原子番号が大きいものの順位を高くする(小さい番号を与える)ことになります。例えば、メチル基 (−CH3)、アミノ基 (−NH2)、ヒドロキシ基 (−OH) の場合、炭素(原子番号6)、窒素(原子番号7)、酸素(原子番号8)なので、順位はヒドロキシ基が1番、アミノ基が2番、メチル基が3番です。同順位の場合には、その原子団についている他の原子で順位を決めます。

次にL4を紙面の置く方向に配置して、L1,L2,L3を見ます。1,2,3が時計回りならR, 反時計回りになっていればSと決めています。

  1. 基礎講座有機化学 化学同人 158ページ

DL表示法

不斉炭素を含む化合物には鏡像異性体が存在します。生体物質の場合は、この区別は非常に重要で、一方の構造しか酵素で認識されないため、他方は存在しないということになります。例えばアミノ酸であればL型しか存在しませんし、グルコースでいえばD型しか存在しません。

DL型の区別方法ですが、グリセルアルデヒド CH(=O)(-OH)(-CH2OH)を基準に決められています。グリセルアルデヒド をフィッシャーの投影式で描いたときに、水酸基ーOHが右側にくるものをD体としています。

グルコースのように不斉炭素がたくさんある場合は、フィッシャー投影式で一番下にくる不斉炭素に結合する水酸基が右側にあればD体とします。

アミノ酸の場合は、どうようにアミノ基が右がわにくるものをD体とします。

D-(+)-グリセルアルデヒド

のようにD体であることを示します。その次の(+)は旋光性を表していますが、DLとの関連性はありません。D-グリセルアルデヒドの旋光性がたまたま(+)だったのでこのように表記しているのです。D-(-)-グリセルアルデヒドなる物質が別に存在するというわけでもありません。

L-システイン のようにL型であることを示すことがあります。全然関係ないのですが、α‐アミノ酸という言い方をすることがあります。混乱しないように、ここで説明しておきます。αの意味は、アミノ基がα位の炭素に結合しているという意味です。α位というのは、カルボキシ基がついている炭素のことです。生体を構成するタンパク質を構成する20個のアミノ酸はすべて、αアミノ酸ですので、わざわざαアミノ酸と呼ばずに単にアミノ酸と呼ぶことが多いです。わざわざαアミノ酸と呼ぶことがある理由は、アラニンのように炭素鎖がある場合、側鎖であるメチル基の炭素(β位)にアミノ基がつく異性体β‐アラニンが考えられるからです。

 

糖やアミノ酸を表示するのに便利なフィッシャー投影式とは

分子の立体構造を表示するとき、例えば乳酸CH(-OH)(-CH3)(-COOH)を表示するなら、中心の炭素原子から4つの結合が外に向いているわけですが、実線、太線(またはくさび型の太線)、破線(またはくさび型の破線)を用いて奥行を表現するのでした。実線は紙面方向の結合、太線は手前に飛び出しているもの、破線は紙面より向こう側へ向かう結合といった具合です。

しかしこれとは別の表記方法としてフィッシャー投影式というものがあります。フィッシャー投影式では実線しか使いませんがその代わりに、向きに関しての規則があります。乳酸CH(-OH)(-CH3)(-COOH)を例に説明すると、

  1. 酸化状態がもっとも高い炭素を上側に描く(カルボキシ基やアルデヒド基が上にくる)
  2. 最も長い炭素鎖を縦方向に描く
  3. 不斉炭素から左右、横方向に伸びる結合は紙面から手前にくるようにする。(逆にいうと、不斉炭素から伸びる縦方向の結合は、紙面の向こう側に向かうようになっている)
  4. 中心の炭素は省略して、描かない

制御性T細胞(Treg)とは

 

Tregとがんとの関係

制御性T細胞(Treg)は免疫を抑制する方向で働き、過剰な免疫応答を抑制しています。しかし、がんにおいては、がんと闘うべき免疫システムを抑制するという好ましくない状態を作り出してしまします。

Regulatory T cells (Tregs) were initially identified in both mice [1] and humans [2] as CD4+ T cells constitutively expressing the α receptor to IL-2 (CD25) and inhibiting the immune response of effector T cells, notably their production of interferon-γ. These cells are known to be a key contributor to the maintenance of immune tolerance, preventing the emergence of organ-specific auto-immune disease. However, in cancer-bearing animals or patients, Tregs expand, migrate to tumor sites and suppress antitumor immune response mediated by NK cells, CD4+ and CD8+ T cells, and myeloid cells, through different molecular mechanisms [3]. The discovery that the transcription factor forkhead box P3 (FOXP3) was a more specific marker for distinguishing Tregs from other populations of T lymphocytes [4] strengthened their identity. Thus, nuclear immunolabeling with anti-FOXP3 antibodies has been widely used to characterize Treg cells on tissue sections, notably in human tumors.(Prognostic role of FOXP3+ regulatory T cells infiltrating human carcinomas: the paradox of colorectal cancer Cancer Immunology, Immunotherapy volume 60, pages909–918 (2011))

  1. CD4 and FOXP3 as predictive markers for the recurrence of T3/T4a stage II colorectal cancer: applying a novel discrete Bayes decision rule BMC Cancer volume 22, Article number: 1071 (2022) 18 October 2022
  2. The prognostic value of tumor-infiltrating lymphocytes in colorectal cancer differs by anatomical subsite: a systematic review and meta-analysis World Journal of Surgical Oncology volume 17, Article number: 85 (2019)
  3. FOXP3+ Tregs: heterogeneous phenotypes and conflicting impacts on survival outcomes in patients with colorectal cancer Immunologic Research volume 61, pages338–347 (2015) 大腸癌における制御性T細胞の役割に関する相反する報告のレビュー
  4. CD4+ T Cells Expressing Latency-Associated Peptide and Foxp3 Are an Activated Subgroup of Regulatory T Cells Enriched in Patients with Colorectal Cancer Published: September 30, 2014 https://doi.org/10.1371/journal.pone.0108554
  5. Expression of Foxp3 in Colorectal Cancer but Not in Treg Cells Correlates with Disease Progression in Patients with Colorectal Cancer Published: January 30, 2013 https://doi.org/10.1371/journal.pone.0053630
  6. Regulatory (FoxP3+) T-cell Tumor Infiltration Is a Favorable Prognostic Factor in Advanced Colon Cancer Patients Undergoing Chemo or Chemoimmunotherapy J Immunother. 2010 May; 33(4): 435–441. doi: 10.1097/CJI.0b013e3181d32f01 PMCID: PMC7322625 NIHMSID: NIHMS1597178 PMID: 20386463
  7. High density of FOXP3-positive T cells infiltrating colorectal cancers with microsatellite instability British Journal of Cancer volume 99, pages1867–1873 (2008) Published: 04 November 2008

制御性T細胞に関する論文

  1. Immunologic self-tolerance maintained by activated T cells expressing IL-2 receptor alpha-chains (CD25). Breakdown of a single mechanism of self-tolerance causes various autoimmune diseases S Sakaguchi 1, N Sakaguchi, M Asano, M Itoh, M Toda J Immunol . 1995 Aug 1;155(3):1151-64.

油、脂質、油脂、動物性脂質、植物性脂質、などの違いについて

脂肪の構造

生体内の脂肪の化学構造はというと、グリセロールCH3(-OH)-CH2(-OH)-CH3-(OH)と3つの脂肪酸 C-C-C-… -C-COOHがエステル結合をした中性脂肪トリグリセリド(トリグリセライド、トリアシルグリセロールとも呼ばれる)です。魚の脂肪分や動物の肉の脂肪分の見た目や味がかなり異なるのは、この中性脂肪を構成する脂肪酸の種類(炭素鎖の長さ、不飽和度すなわち二重結合の数)が異なるためです。

動物の脂と植物の油の違い

植物油と動物油脂との違い、匂いの説明に関しては、ほぼ日刊イトイ新聞の説明が非常にわかりやすかったです。

室温で液体のものを「油」 室温で固体のものを「脂」 図体の大きいイモムシは
相手の分子(この場合は脂肪)をひっぱる力も大きくなります。 分子間力が大きい脂肪はどうなるでしょう?寄り集まる力が大きいので融点、つまり固体の溶ける温度が高くなります。 バターは融点の低い、つまり揮発しやすいチビな脂肪酸イモムシが含まれた脂肪です。だから良い香りが私たちの鼻に届くのです~。 二重結合が増えるほど分子は液体になりやすい

例えば植物油の例としてオリーブオイルを考えてみると、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸(一価および二価)などの成分からなりますが、70%が不飽和脂肪酸であるオレイン酸(18:1(n-9))です。炭素数18で1個の二重結合が9位と10位の炭素間にシスの形であります。自然界の不飽和脂肪酸は基本的にシス型です。

  1. 三大栄養素の一つ!脂質について知って欲しいこと: 動物油脂 九州大学附属図書館
  2. 牛や豚の油はパルミチン酸(C16:0)やステアリン酸(C18:0)といった飽和脂肪酸が豊富

トランス脂肪酸

  1. すぐにわかるトランス脂肪酸 農林水産省

血液検査の脂質検査の値

自分の健康診断の結果を見ると、総コレステロール177㎎/dL、HDLコレステロール56㎎/dL、LDLコレステロール104㎎/dL、中性脂肪117㎎/dL、nonHDLコレステロール121㎎/dLとなっていました。

HDLコレステロール(いわゆる善玉コレステロール)は低いほうが動脈硬化の危険ありだそうで、40mg/dL以上が正常範囲。逆にLDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)は高いと危険で、120を超えると要注意だそうです。中性脂肪(TG)(トリグリセリド)は高いと動脈硬化の経験、低くても病気の可能性があり基準値は30~149だそう。Non-HDLコレステロールは、動脈硬化の原因となる全てのコレステロールだそうで基準範囲は90~149だそうです。一応、どれも基準値の範囲内に収まっていました。

以前一人暮らしをしていたときにはやたらと菓子パンを買って食べていた時期がありますが、そうするとてきめんで、中性脂肪の値が要注意な範囲に突入していました。食生活を改善(無駄な菓子パンをやめた)したら、もとにもどりました。パンは炭水化物であって脂肪ではありませんんが、脂肪はそもそも炭素の鎖なので、炭水化物を取りすぎると分解された炭素が脂肪の合成に使われるわけです。

LDLとは

The LDL particle is made of a monolayer of phospholipid, unesterified cholesterol forms the surface membrane, and fatty acid esters of cholesterol make up the hydrophobic core. One copy of the hydrophobic apo-B protein is embedded in the membrane, mediating the binding of LDL particles to specific cell-surface receptors.(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK519561/

LDL (≈2.5 MDa) are one type of several spherical particles that transport lipids in the blood. The only protein component of LDL is apolipoprotein B-100 (apoB-100), one of the largest known proteins (4,536 aa, ca. 550 kDa). The apoB-100-containing lipoproteins are secreted from the liver as triglyceride-rich, very LDL (VLDL), which are converted in the blood circulation to LDL. LDL, about 220 Å in diameter, are much smaller in size than the originally secreted VLDL, which range from 600 to 800 Å. LDL contain 22% apoB-100, 22% phospholipids, 8% cholesterol, 42% cholesteryl esters, and 6% triglycerides (wt/wt). (https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC17531/

脂肪の取りすぎがなぜ動脈硬化に繋がるのか

脂質のおおい食物を多量に摂取するとなんだか血管にべっとりとその油がついて動脈硬化になりそうなイメージですが、動脈硬化はそうやってなるものではないようです。ただの間違った空想でした。

内臓まわりに脂肪がたまると、肥大化した内臓の脂肪細胞から血管を傷つける物質が分泌されます。すると、血管に炎症が起こり、動脈硬化が進行してしまいます。(動脈硬化は治る!予防・治療法、薬と食事による改善 更新日2021年9月18日 NHK)

動脈硬化の主役は「アテローム性プラーク」と呼ばれる血管壁の中に溜まった「垢」です。「アテローム」は「粥腫」と和訳され、「粥のようなドロドロした塊」がその語源です。「プラーク」は「垢」という意味です。‥ 酸化LDLコレステロールを吞食した泡沫細胞の死骸が集積 してできたのが壊死中心です。これが核となってプラークは大きくなります。(香里ヶ丘大谷ハートクリニック

血管内皮細胞と血管壁の間に入りこんだLDLコレステロールが酸化されると毒性を持つ酸化LDLになり、それを免疫細胞のマクロファージが食べて処理しようとしますが、酸化LDLが大量にあるとこの免疫反応によって死んだ免疫細胞がプラーク(細胞の死骸がかゆ状になったもの)を形成し、そのプラークが肥大化していきます。組織修復をしようとして線維化(組織が硬くなる)が起きて動脈の柔軟性が失われてしまうというのが動脈硬化にいたるストーリーでした。動脈を塞いだ部分は、食べた脂肪ではなくて、なんとかしようと頑張った免疫細胞たちの死骸および残された酸化LDLコレステロールだったんですね。

  1. 動脈硬化になる仕組みと対処法について Kracie
  2. 動脈硬化の進行 生活習慣病オンライン
  3. 動脈硬化について うしおだ診療所 副所長 渡部 琢也医師
  4. 動脈硬化と食品中の脂肪の種類 日本心臓財団 泡沫細胞が死滅すると、中身のコレステロールがまき散らされます。まき散らされたコレステロールが血管の内膜に蓄積し、これが動脈硬化に繋がるのです。

血管壁に脂肪がべったりつくイメージは一体どこから来たんだろうと思いましたが、昔の学説ではそういうものもあったようです。その記憶が自分に残ってしまっていたのでしょうか。

動脈硬化は、以前は知らず知らずのうちに血管に過剰な脂質がたまってできていくものとされていました。しかし最近では (知っておきたい動脈硬化 スマートウェルネス)

ネットの記事をみていると脂肪(コレステロール)が血管壁に蓄積すると説明しているものもたくさんありました。

家族性高コレステロール血症(FH)とは

 

不飽和脂肪酸の酸化経路

ウィキペディア 

がん

がん、腫瘍、良性腫瘍、悪性腫瘍、肉腫、悪性新生物など似たような言葉が使われていて非常に混乱するため、言葉の定義を纏めておきます。

腫瘍の分類

自分も長い間誤解していましたが、腫瘍=がん ではありません。細胞が異常に増殖した状態が腫瘍で、それが最初に生じた場所に留まって増殖しているだけであって、周りの組織にまではみだしていっていなければ良性腫瘍です。周りの組織まにまで侵入する形で広がっているのが悪性腫瘍(がん)ということになります。まとめると以下のようになるかと思います。

  • 腫瘍 tumor(=新生物):
    • 上皮性腫瘍
      • 良性 benign tumor
      • 悪性(がん cancer; malignant tumor
    • 非上皮性腫瘍
      • 良性
      • 悪性(=肉腫 sarcoma

腫瘍(新生物)とは

腫瘍(新生物)には上皮性腫瘍と非上皮性腫瘍があります。上皮性腫瘍は表皮や消化管、腺組織の性質を具えた腫瘍で、悪性である場合「」と言います。これに対し非上皮性腫瘍は、非上皮性間葉組織(中胚葉由来の脂肪組織、線維組織、血管、リンパ管、筋、腱、滑膜、骨、軟骨)および外胚葉由来の末梢神経組織の性質を具えた腫瘍で、悪性である場合「肉腫」といいます。(肉腫 東京医科大学病院)

上の説明がいちばんスッキリしていると思いました。

がんとは

  1. がんの基礎知識がんという病気について がん情報サービス がんのことを「悪性腫瘍」ということもあります。‥ 何らかの原因でできた異常な細胞が、体の中に細胞のかたまりを作ることがあります。これが腫瘍です。‥ 悪性腫瘍とは、このような腫瘍のうち、無秩序に増殖しながら周囲にしみ出るように広がったり(浸潤)、体のあちこちに飛び火して新しいかたまりを作ったり(転移)するもののことをいいます。一方、浸潤や転移をせず、周りの組織を押しのけるようにしてゆっくりと増える腫瘍良性腫瘍といいます。

悪性新生物とは

生命保険や健康保険の説明書内で、悪性新生物という言葉を良く見かけます。

  1. 病気:悪性新生物とは 作・山口百子:2002/12/09 国立栄養健康研究所  悪性新生物とはがん並びに肉腫のことです。

肉腫(にくしゅ)とは

  1. 肉腫(サルコーマ) 更新日 : 2022年12月9日 公開日:2014年4月28日 国立がん研究センター  全身の軟部組織(筋肉、脂肪、神経など)から発生する腫瘍骨軟部腫瘍と言い、悪性の骨軟部腫瘍肉腫(英語ではSarcomaサルコーマ)と言います。

浸潤(しんじゅん)とは

  1. Q1 がんの転移とは何ですか?浸潤とどう違うのですか? 安井 弥 (広島大学大学院医歯薬学総合研究科分子病理研究室・教授)jamr.umin.ac.jp 浸潤とは、原発巣のがん細胞が直接に周囲の組織や臓器に広がっていくことです。転移でも、リンパ管や血管にたどり着くまでの最初のステップには、この浸潤の過程が必要です。
  2. 悪性腫瘍と良性腫瘍の違いはなにか? mrso.jp がん細胞の最大の特徴は、浸潤だ。悪性腫瘍は、まわりの組織臓器にも入り込み広がっていく。
  3. 腎癌 Minds版やさしい解説 がん細胞が、発生した場所で増え続けていくとともに、周りの器官に直接広がっていくこと浸潤(しんじゅん)といいます。
  4. 非浸潤がん firstopi.jp がんが発生した場所(乳管や小葉の中)にとどまっているタイプのもの

転移とは

  1. Q1 がんの転移とは何ですか?浸潤とどう違うのですか? 安井 弥 (広島大学大学院医歯薬学総合研究科分子病理研究室・教授)jamr.umin.ac.jp がん細胞が発生した場所(原発巣)から離れて、リンパ節や肝臓、肺などの他の臓器に移動して定着し、そこで再び増殖して腫瘍(転移性腫瘍)を形成

転移が起きる3つのルート

リンパ行性転移

  1. Q1 がんの転移とは何ですか?浸潤とどう違うのですか? 安井 弥 (広島大学大学院医歯薬学総合研究科分子病理研究室・教授)jamr.umin.ac.jp
  2. 周囲にあるリンパ管に侵入し、リンパ流にのってリンパ節に運ばれ、そこで転移性腫瘍をつくる まず、原発巣の近くのリンパ節に転移し、そこからリンパ管を伝わって次々に遠くのリンパ節まで転移

血行性転移

  1. Q1 がんの転移とは何ですか?浸潤とどう違うのですか? 安井 弥 (広島大学大学院医歯薬学総合研究科分子病理研究室・教授)jamr.umin.ac.jp
  2. 原発巣の近くにある毛細血管や細い静脈にがん細胞が侵入し、血流を介して全身の臓器に転移  静脈の流れにしたがってがん細胞は移動するので、大腸がんでは肝臓に腎がんでは肺に転移しやすい

播種性転移

  1. Q1 がんの転移とは何ですか?浸潤とどう違うのですか? 安井 弥 (広島大学大学院医歯薬学総合研究科分子病理研究室・教授)jamr.umin.ac.jp からだには胸腔(肺)や腹腔(消化管や肝臓など)という隙間があり、それに面した臓器に発生したがんが別の部位に転移性腫瘍を形成

 

がんの薬物療法

ホルモン療法

  1. 予後不良で知られるトリプルネガティブ乳がんの新規治療標的を同定―新たながん個別化治療の開発に期待― 北海道大学 日本医療研究開発機構 用語解説 ホルモン療法 乳がん標準治療の一つであり、乳がんの増殖を促すホルモンの働きを阻害する治療法のこと。乳がん細胞の表面にホルモン受容体が出ている場合にのみこの治療法が有効

細胞内情報伝達機構

人間が他の人間とコミュニケーションをとるのと同様に、細胞も他の細胞とコミュニケーションをとっています。その仕組みとして、一方の細胞が「シグナル伝達物質」を出して、相手の細胞がそのシグナルを「受容体」によって受け取り、さらに細胞内へとそのメッセージを伝えて、受けて側の細胞の挙動が変化するという仕組みがあります。挙動の変化の具体例としては、代謝の変化であったり、遺伝子発現の変化であったり、細胞の形や動きの変化であったりします。

受容体と結合する分子のことはリガンドと呼ばれるため、シグナル伝達物質は受容体に対するリガンドとして働くと言えます。シグナル伝達物質には大別すると水溶性のものと脂溶性のものとがあります。

水溶性のものとしては、タンパク質、ペプチドホルモン、神経伝達物質、サイトカインなどがあります。これらは、水にとけて油にはとけないため、「油」である細胞膜を通過できません。そのため、細胞膜上にある受容体のタンパク質と結合することにより、その情報が内部へと伝わることになります。

脂溶性のものとしては、ステロイドホルモン、甲状腺ホルモン、ビタミンDなどがあります。脂溶性なので、脂質でできている細胞膜や核膜を通過することができます。

リガンドが水溶性か脂溶性かをなぜ考えるのかというと、それによって受容体が細胞のどこに存在しうるかが決まるからです。hbjj

水溶性リガンド→細胞膜を通過できないので、受容体は細胞膜表面にないといけない

脂溶性リガンド→細胞膜を通過できるので、細胞質中に受容体があるか、もしくは、さらに核膜も通過可能なので、核内に受容体があってもいい。

  1. ホルモンの化学構造|内分泌 2017/01/22 看護roo!  アミノ酸型ホルモンは甲状腺ホルモン(T3およびT4)だけである。アミノ酸は本来、水溶性であるが、甲状腺ホルモンベンゼン環を2個ももつ化合物なので脂溶性である。
  2. 第2章栄養素とその代謝 2-3:チロシン代謝[tyrosine metabolism] ニュートリー株式会社 甲状腺ではチロシンから甲状腺ホルモンが合成される.甲状腺で合成されるのは主にヨウ素が4つ結合したチロキシン(T4)である.全身に分布するトリヨードサイロニン(T3)の大部分は,T4が肝臓や腎臓などの甲状腺以外の組織で脱ヨード化して生じたものである.甲状腺ホルモンとしての作用は,T4よりもT3の方が10倍高いといわれている.

お酒(アルコール)の飲みすぎが体に悪い理由を生化学的に説明すると

お酒は適度に飲むと健康に良いと言われますが、大量に摂取するといろいろ不具合が生じます。そもそも代謝がおっつかなくてエタノールの血中濃度が高すぎると、エタノールそのものが毒になります。また、中間代謝物であるアルデヒド自体にも毒性があります。アルコール代謝が最後まで進んだとしても、やはり問題が生じますが、どのような問題なのかを生化学的に考えてみたいと思います。

お酒(アルコール)はエタノールですが、エタノールCH3-CH2-OHは酸化されてアセトアルデヒドCH3-CHOになり、さらに酸化されて酢酸CH3-COOHになります。この2つの酸化反応でNAD+が還元されるので、2当量のNADHが産生されます。つまり、アルコールを大量に摂取すると、NADHが大量に産生されることになります。

肝臓で産生された酢酸は、骨格筋、心臓、腎臓などでアセチルCoAに変換されてエネルギー源となります。

  1. 食事とスタミナ(hobab.fc2web.com)
  2. 酢酸の生理機能

NADHが大量に産生されたときに、代謝系のどこが影響を受けるかというと、例えば、乳酸からピルビン酸が作られる過程があります。乳酸がピルビン酸になるときにはNAD+が使われてNADHが生じます。すでにNADHが飲酒により大量に存在すると、乳酸→ピルビン酸という反応が進まなくなります。その結果、乳酸→ピルビン酸→糖新生 の経路が抑制されます。もし糖が十分にない場合には糖新生が抑制される結果、低血糖になってしまいます。また乳酸が代謝されないため、乳酸アシドーシスになる恐れがあります。

化学反応が起きるかどうかを決めるのは、反応前後のギブス自由エネルギーの差でした。それは、

ΔG=ΔG0+RT ln 「生成物濃度」/「反応物濃度」

と書けます。エネルギー代謝の反応が進むためには

ΔG=ΔG0+RT ln 「生成物濃度」/「反応物濃度」

「生成物濃度」/「反応物濃度」が大事で、[NADH]/[NAD+]が大きくなってしまうと(比が1よりおおきいとその対数は0よりおおきくなる)、この第2項が負にならなくなって、結果的に右辺全体として負にならなくなってしまいます。するとギブス自由エネルギー差が負にならなくなり、反応が進みません。クエン酸回路をまわしたり、脂肪酸をβ酸化するのは、[NADH]/[NAD+] の比が小さい(NADHが少ない)状態で、NADHを産生することが目的なわけです。NADHが多量に存在して[NADH]/[NAD+]の比が大きいということは、クエン酸回路や脂肪酸β酸化がまわらない、つまり阻害されるということになります。肝臓で脂肪酸の分解ができないということは、肝臓に脂肪がたまる一方になり、つまりは脂肪肝と呼ばれる病的な状態になってしまいます。

  1. マークス臨床医学 第29章 エタノール代謝 498~510ページ
  2. 畠山『生化学』164ページ
  3. GLUCOSE | Metabolism and Maintenance of Blood Glucose Level V. Marks, in Encyclopedia of Human Nutrition (Second Edition), 2005
  4. Ethanol-induced oxidative stress: basic knowledge Genes Nutr. 2010 Jun; 5(2): 101–109. Published online 2009 Dec 24. doi: 10.1007/s12263-009-0159-9 PMCID: PMC2885167 PMID: 20606811

 

急性アルコール中毒(死)

短時間での大量飲酒(一気飲みなど)で死亡する場合は、上で説明した代謝がそもそもおっつかなくて、アルコールが肝臓で処理されるのが間に合わなくて血液中のアルコール濃度が高くなりすぎて、脳にアルコールが入り、神経系の働きを直接乱してしまうことが原因のようです。

  1. 急性アルコール中毒 ドクターズファイル 血液に溶けたアルコールが脳に作用し、まひなどの症状を起こすことで発症

 

お酒に弱い人・お酒が飲めない人

世の中には一定数、お酒が全く飲めない人が存在します。その人達がお酒が飲めない理由は、エタノールの代謝でアルデヒドから酢酸に変換する酵素ALDHを持っていないか、働きが弱いからだと考えられます。アセトアルデヒドは毒性があり、吐き気や動悸、二日酔いなどの原因となります。

エタノール → アセトアルデヒド

アルコール脱水素酵素(alcohol dehydrogenase: ADH

アセトアルデヒド → 酢酸

アルデヒド脱水素酵素(aldehyde dehydrogenase:ALDH)

ADHには、ADH1BとADH1Cの型があります。ALDHには、ALDH1とALDH2があり、ALDH2が主要な働きをする酵素。ALDH1は補助的です。ALDH2の活性の強さが、お酒の強さを決めると言われているようです。

  1. アルコール代謝関連遺伝子(アルコール・アルデヒド脱水素酵素)と飲酒量に基づく胃がん罹患について
  2. 1B型アルコール脱水素酵素 1B型アルコール脱水素酵素は、エタノールをアセトアルデヒドに酸化する酵素の一つです。かつてADH2と呼ばれていました。現在の正式名はADH1Bです。
  3. 2型アルデヒド脱水素酵素 2型アルデヒド脱水素酵素は、エタノールの代謝産物のアセトアルデヒドを分解する主要な酵素です。ALDH2と略します。日本、中国、韓国などの東アジアのひとでは遺伝子の点突然変異により、酵素の働きが弱いひとが多くみられます。
  4. アルデヒド脱水素酵素2(ALDH2)の構造・機能の基礎と ALDH2遺伝子多型の重要性