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動機・能力・機会:スタンフォード大学BJフォッグのB=MAP(旧称B=MAT)行動モデル

The Fogg Behavior Model (FBM) shows three elements that converge for a behavior to happen: Motivation, Ability and Trigger.

(The Fogg Behavior Model by B J Fogg, Stanford University)(1ページのPDFファイル

So this came together for me in about 2007. And it is a model that describes all behavior types in all cultures so it’s a universal model and it goes like this. A behavior happens with three things come together at the same moment. One, there is motivation to do that behavior. Two, there’s ability to behavior. And, three, there’s a prompt; something that says do this behavior now. And when all those things come together the behavior happens. (Building Habits: The Key to Lasting Behavior Change April 18, 2023 Stanford Business) トランスクリプト付きポッドキャスト(BJフォッグ氏のインタビュー)

以前はFogg Behavior Model (FBM)と呼んだようですが、その後B=MATと言ってみたり、最近ではB=MAP(Pはprompt)と呼んだりしているようです。

  1. https://behaviormodel.org/
  2. 習慣超大全——スタンフォード行動デザイン研究所の自分を変える方法  2021/5/26 BJ・フォッグ ダイヤモンド社ダイヤモンドONLINEの関連記事
  3. Designing for Behavior Change—New Models and Moral Issues An Interview with B.J. Fogg B.J. Fogg &Jim Euchner Research-Technology Management Volume 62, 2019 – Issue 5 Pages 14-19 | Published online: 05 Sep 2019. https://doi.org/10.1080/08956308.2019.1638490 BJフォッグ氏のインタビュー記事 有料
  4. A behavior model for persuasive design Author: BJ Fogg Authors Info & Claims Persuasive ’09: Proceedings of the 4th International Conference on Persuasive TechnologyApril 2009Article No.: 40Pages 1–7https://doi.org/10.1145/1541948.1541999. In this model (FBM), behavior is a product of three factors: motivation, ability, and triggers, each of which has subcomponents. The FBM asserts that for a person to perform a target behavior, he or she must (1) be sufficiently motivated, (2) have the ability to perform the behavior, and (3) be triggered to perform the behavior.

FOGGモデルでは、行動を起こす、行動を変えるための方策として、動機、能力、機会をさらに下位のカテゴリーに細かく分けて、それぞれの要素をどう上げてていくかを議論しているようです。

  1. ユーザーの行動変容のためのFogg行動モデルの実用化(Anders Toxboe, UI Patterns, 2019)2022-05-14 【翻訳】

動機・能力・機会=行動

動機x能力x機会=行動 という図式は一番最初に誰が考えて提唱したものなのでしょうか。

  1. Capability, opportunity, and motivation: an across contexts empirical examination of the COM-B model. Taylor Jade Willmott, Bo Pang, and Sharyn Rundle-Thiele. BMC Public Health. 2021; 21: 1014.
  2. Physical activity capability, opportunity, motivation and behavior in youth settings: theoretical framework to guide physical activity leader interventions. Rosenkranz et al., Published online: 26 Apr 2021 International Review of Sport and Exercise Psychology
  3. Applying the Capability, Opportunity, and Motivation Behaviour Model (COM-B) to Guide the Development of Interventions to Improve Early Detection of Atrial Fibrillation Jatau et al., Clin Med Insights Cardiol. 2019; 13: 1179546819885134.
  4. The behaviour change wheel: a new method for characterising and designing behaviour change interventions. Susan Michie, Maartje M van Stralen, Robert West. Implement Sci . 2011 Apr 23:6:42. At the centre of a proposed new framework is a ‘behaviour system‘ involving three essential conditions: capability, opportunity, and motivation (what we term the ‘COM-B system‘).

何が人間の行動を決めているのか?行動できない人が行動を起こす方法

やらなければいけないことはわかっているのに体が動かず行動を起こせないということがあります。逆に、やらないほうがいいことはわかっているのについついまたやってしまったということもあります。人間の行動はどのように決まっているのでしょうか。どうすれば悪い習慣となっている行動をやめて、好ましい行動を習慣化することができるのでしょう?先延ばし癖を改めるのは、いつになったら可能なのでしょうか。やるべきことをやらずに、やらなくていいこをやってしまう意思決定の仕組みは一体どのようなものなのでしょうか。

B=MAPモデル(旧称:B=MATモデル)

人間の行動について考えると、何が自分を動かしているのだろうと不思議になります。最近本屋で見かけた本に、行動behavior=動機motivation x 能力ability x機会prompt すなわちB=MAPという公式が成り立つと説明されていました。言われてみると確かにそうかもしれないと思います。

機会をtriggerと呼んで、B=MATという言い方もかつてしていたようです。

I once called this element the “Trigger.” I changed this term in late 2017. Now I use “Prompt.” (Fogg Behavior Model Prompts tell people to “do it now!”

Triggerは引き金を引くイメージですがPromptは、今やれ!という神の言葉のように響きます。

例えば自分が思い当たることに関して、先延ばしにしている原因の一つは、自分にできる気がしない、つまり能力が足りていないという思い込みがあります。絶対にやらなくても死ぬわけではないという、動機の弱さもあります。

ちなみにB=MAPというモデルと同じものとして、COM-Bモデルというものがあります。 αべとは、それぞれCapability, Opportunity, and Motivation-Bahavior から取られていて、意味的にB=MAPやB=MATと全く同じですね。

Self-Determination Theory

Self-determination theoryは1970代にリチャード・ライアンとエドワード・デシによって提唱されました。

  1. Why We Do What We Do: Understanding Self-Motivation 1996/8/1 Edward L. Deci , Richard Flaste. If you reward your children for doing their homework, they will usually respond by getting it done. But is this the most effective method of motivation? No, says psychologist Edward L. Deci, who challenges traditional thinking and shows that this method actually works against performance. The best way to motivate people – at school, at work, or at home – is to support their sense of autonomy. Explaining the reasons why a task is important and then allowing as much personal freedom as possible in carrying out the task will stimulate interest and commitment, and it is a much more effective approach than the standard system of reward and punishment.
  2. Self-Determination Theory: 3 Basic Needs That Drive Our Behavior Sprouts チャンネル登録者数 154万人
  3. PubMed検索 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/?term=Self-Determination+Theory&filter=pubt.review

後悔死ぬ前に後悔すること・人生における 後悔と意思決定の関係

人生に後悔はつきものです。なぜなら人生は意思決定の連続であり、人生がうまくいかなくなったときには必ず、意思決定の際にもっとよい選択をすべきだったのにと後悔することになるからです。人生が全て上手くいく人はあまりいないので、ほとんどの人は必ず何かしら人生で後悔する点があるはずです。

人生の途中段階で後悔することがあっても、まだ生き方を変えることができます。しかし死ぬ直前に後悔してももう時間がありません。死ぬ前に後悔することだけは避けたいものですが、多くの人は死ぬ前にどんなことに後悔しているのでしょうか。

一番多いのは、自分の人生を生きなかったというものだそうです。つまり親など他人の影響で人生を選んでしまって、自分らしく生きてこれなかったという後悔です。どんなお稽古事をするか、学習塾に通うかどうか、学校でどんな部活に入るか、中学受験をするか、高校はどこに行くか、大学はどこを志望するか、どんな友達とかかわるか、どんな異性と交際するか、大学院に進学するか、どんな仕事に就くか、どんな人を配偶者にするか、どこに住むか、転職するか、家を買うかマンションを買うか賃貸に住み続けるか、大きなターニングポイントだけでもたくさんの決断が必要になります。どんな洋服を選ぶか、何時間睡眠時間をとるか、発毛剤を使うか、がんの検診を受けるか、今この時間に何をするかなど日常的なことも入れたらもう無数の決断です。

死ぬ前の一番の後悔とは

2012にオーストラリアンの医療関係者Bronnie Wareが本を出版しておりその本で紹介された、人が死ぬ前に後悔することのランキング1位は

I wish I’d had the courage to live a life true to myself, not the life others expected of me

「他人が自分に期待した人生ではなく、自分が心から望んだ人生を選んで生きる勇気が欲しかった」というものです。

Th17細胞の種類と機能

自己免疫疾患における組織の炎症においてTh17細胞が関与しているそうです。しかしTh17細胞は一種類というわけではなく、病態に関与しないTh17細胞もあるとのこと。また、自己免疫性の炎症を引き起こすのはTh17細胞ではなくGM-CSF産生T細胞(ThGM)だという報告もあるようです。混沌としていますね。

  1. Stem-like intestinal Th17 cells give rise to pathogenic effector T cells during autoimmunity Cell 184(26):6281-6298.E23, DECEMBER 22, 2021. However, recent studies propose that IL-17 and Th17 cells are not critical for driving autoimmune tissue inflammation (Haak et al., 2009; McGinley et al., 2020), whereas granulocyte-macrophage colony-stimulating factor (GM-CSF)-producing T cells (ThGM) were proposed as the primary inducers of autoimmune tissue inflammation (Komuczki et al., 2019; Rasouli et al., 2020; Codarri et al., 2011; Galli et al., 2019).
  2. Single-Cell Genomics Unveils Critical Regulators of Th17 Cell Pathogenicity CELL 163(6):1400-1412, DECEMBER 03, 2015
  3. CD5L/AIM Regulates Lipid Biosynthesis and Restrains Th17 Cell Pathogenicity. Cell 163(6):1413-1427, DECEMBER 03, 2015. IL-17-producing Th17 cells are present at tissue inflammation sites and contribute to the pathogenesis of human autoimmune diseases and relevant murine models (Kleinewietfeld and Hafler, 2013, Lee et al., 2014). However, not all Th17 cells induce tissue inflammation and disease (i.e., are “pathogenic”).

致死性不整脈とは?致死性不整脈の疑いとは?

致死性不整脈とは

致死性不整脈とは、脈拍が速すぎて心臓が痙攣したような状態になり、血液を循環させる機能を十分に果たせなくなって心停止が起こることです。直ちに治療を行わなければ、心臓から血液が送り出せない状態にあるため(心停止発作)、数分で死に至ります(突然死)。(参照:グーグル生成AI)

  1. 致死性不整脈とは? 小川聡クリニック 東京都港区赤坂二丁目 拍動のリズムが乱れたり、異常に速くなったり(頻脈)、遅くなったり(徐脈)するのが「不整脈」です。‥ 命に関わる最も危険な不整脈は「心室細動」と呼ばれる不整脈です。心室の拍動が1分間に300回を超え、不規則にけいれんしたような状態になり、発生した瞬間から心臓からの血液の拍出が止まり、脳への血流もなくなるため、数秒以内に意識を失います。そのまま元の拍動が回復しなければ、突然死につながります。倒れた直後に、周囲の人が気付いて、近くにある「AED(自動体外式除細動器)」を用いて、心臓のけいれんを止める処置(電気ショック)が必要です。

不整脈で死に至る理由

  • 心室細動が起きると約10秒で意識を失い、約5分で死に至ります。10秒で脳の細胞は酸欠になり、エネルギー源であるブドウ糖も5分と持ちません。
  • 心室細動から5分で死に至る最大の原因は脳の障害です。
  • 身体の他の臓器の細胞は酸素やブドウ糖が不足しても、脂肪を分解するなど他の方法でエネルギーを補えるので短時間で死ぬことはありません。
  • 心室細動が起きて自然に治ることはほとんどありません

5分で死に至る心室細動…119番だけではダメ、脳血流を保つため一次救命措置が重要 2017/4/23 07:00 産経WEST)

日本の心停止による突然死の統計

日本で突然、心停止となる人は1年間に約8.2万人もいるそうです。一日平均約200人、じつに7分に1人が心臓突然死で亡くなっていることになります。突然の心停止の原因は多くの場合「心室細動」とよばれる重篤な不整脈です。(参照:心臓突然死の現状  日本AED財団)

致死性不整脈の疑いとは

  • 亡くなったときに心電図をつけていれば、致死性不整脈が発生したことが分かる

  • 救急隊が駆けつけたときに心肺停止状態だった場合は、致死性不整脈の発生は分からない

  • 突然死を来す疾患の有無を検索する。具体的には、肺の血管に血の塊がつまる肺血栓塞栓症、大動脈の壁が割け、その隙間に血液が入り込む大動脈解離や、急性心筋梗塞脳出血脳梗塞の有無、気管に物がつまっていないか、臓器が死んでいないか、出血がないかなどを確認する。また、肺炎などの感染がないかも確認する。こうした突然死を来す病気が目で見てなかったことを確認した場合に、暫定診断として「致死性不整脈の疑い」とする

  • その後それぞれの臓器の標本をつくって顕微鏡で確認

  • 致死性不整脈という診断を確定させるには、心臓のリズムを生み出す場所である洞房結節(どうぼうけっせつ)や、洞房結節から発せられる刺激の通り道である刺激伝導系を顕微鏡で見て、何らかの異常がないか

  • 不整脈源性右室異形成症」「肥大型心筋症」など致死性不整脈を引き起こした可能性のある病気の有無

  • 致死性不整脈を引き起こすブルガダ症候群は、遺伝子の異常であり、顕微鏡で心臓の組織を見ても分からない場合がある

  • 様々な突然死の可能性を否定して、最後に残ったものを致死性不整脈とする「除外診断」をせざるを得ない場合も多い。

18歳アイドルの「突然死」にみる死因特定の難しさ NIKKEI STYLE 2017年2月21日 5:40 榎木英介)

致死性不整脈疑い

  1. 滋賀の入院患者殺害、「致死性不整脈で自然死した疑い」元看護助手の再審認める決定 「刑事に好意持ち自白」と否認に転じ 大阪高裁 2017/12/20 14:14 産経WEST 滋賀県東近江市の湖東記念病院で平成15年に入院患者の男性=当時(72)=の人工呼吸器を外して死亡させたとして、殺人罪で懲役12年が確定、服役した元看護助手の西山美香さん(37)が裁判のやり直しを求めた第2次再審請求の即時抗告審で、大阪高裁は20日、再審開始を認める決定をした。後藤真理子裁判長は、西山さんの自白の信用性が高くないとした上で、男性の死因について「致死性不整脈で自然死した疑いがある」と判断した。‥ 高裁の即時抗告審で弁護団は「男性は低カリウム血症による致死性不整脈を起こした可能性が高い」と主張していた。

心室細動への対処方法

不整脈

そういえば自分も小学校のときの健康診断で心音がどうこうと担任の先生に通信欄に書かれた記憶があります。忘れ物が多いという注意と一緒に書かれていたため親に見せられなくて自分で勝手に処分してしまい、そのあと精密検査を受けにいったりはしないままになりました。それ以降、健康診断で聴診器を当てられて心臓に関して何か指摘されたことはないのでいままで気にしないで生きてきました。

  1. 「エビ中」松野莉奈さん 恩師が明かした健康診断の“異変”  女性自身 2017年02月16日(木)06:00 3歳のときはけいれんを起して、あと3分病院へ行くのが遅かったら大変だった ‥ 高校に入学したころの健康診断で不整脈があると診断されました。その後も学年が上がるごとに不整脈の診断が出て再検査を受けていました

不整脈の予知・危険因子

  1. 致死的不整脈の予知

医療コンフリクト・マネジメントとは

医療コンフリクトとは

相対する意見ないし要求などが対立し緊張状態を生じること」。怒りが表出され、苦情、クレーム、紛争、対立に至った状態はもちろんですが、一方が不安、不満を感じながらも胸の内に秘めて表出できない状態もコンフリクトに含めます。(丁寧な説明も「言いくるめられた気が…」、医療メディエーターの役割とは コンフリクト・マネジメントとは? 2019年10月27日 (日) 永井弥生(医療コンフリクトマネージャー/皮膚科専門医)m3.com)

患者の怒り

傾聴・共感が大事といわれるゆえんは、人は自分を承認してくれる人しか信頼しないからである。怒りを表出させている人でも同様である。怒りというのは2次的な感情であり、その奥には実は別の感情がある。医療の結果に対する強い怒りの奥底には、もっとこんなことができたのではという自身の後悔、期待を裏切られた思いなどがある。(医療現場で何が起きているか 不満を胸に秘める患者・家族たち  永井弥生 2019/9/21 14:00 産経新聞)

学校の場での心肺停止または呼吸停止に対する一次救命処置(Basic Life Support;BLS)

  1. 走った後に突然倒れた小6の娘 なぜ学校はAEDを使わなかったのか〈ASUKAモデルの10年・1〉 前田朋子 (2022年9月28日付 東京新聞朝刊)明日香さんに基礎疾患はなく、医師からは心臓に何らかのトラブルが起きた「致死性不整脈の疑い」と説明された。‥ 倒れた時になぜ心臓マッサージをせず、その場にあったAEDも使わなかったのか-。‥ 学校に説明を求めたが、示された文書には明日香さんに回復の兆しがあったように書かれ、病院や救急の記録から読み取れる重篤な症状と食い違う。‥当時市教育長だった桐淵博さん(69)‥ 「誰ひとり胸を押さずAEDを使わなかったのは、講習だけでは足りないからではないか」‥ 「元気に学校へ行った明日香さんを無事に帰すことができず、申し訳ありませんでした」と頭を下げた。事故から2カ月、初の謝罪だった。‥ ASUKAモデルとは 桐田明日香さんの事故を教訓に、さいたま市教育委員会が2012年の命日に完成させた教職員用事故対応マニュアル倒れた人の呼吸の有無がわからない場合なども迷わず胸骨圧迫(心臓マッサージ)と自動体外式除細動器(AED)装着を行うよう促した点が、当時の一般的対応と比べて画期的だった。
  2. 一般教員の一次救命処置実践力向上を目指して—児童死亡事故の教訓を踏まえたさいたま市の取り組みの評価— 日健教誌,2021; 29(1): 28–39 2011 年9 月29 日,さいたま市立小学校6 年生 の桐田明日香さんが,駅伝の練習中1,000 m 走の ゴール直後に突然倒れた.駅伝を指導していた複 数の教員や駆けつけた養護教諭は呼吸と脈があ るととらえたため,明日香さんに対し胸骨圧迫 や AED の装着を行わなかった.しかし,倒れてから11 分後の救急隊到着時には明日香さんは心 肺停止状態であり,その後救急隊による救命処置 が開始され救急搬送されたものの翌日に亡くなった.教員や養護教諭がなぜ BLS を行わなかったのかを明らかにし教訓を得るために,さいたま市教 育委員会は事故対応検証委員会を設置し検証を行 い,その結果をもとに遺族の協力を得ながら「体育活動時における事故対応テキスト~『ASUKA モデル』~」を作成した.ASUKAモデルの特徴 は,医療従事者でない教職員が BLS を行うことを前提に判断・行動チャートが作られていること である.

医療コンフリクト・マネジメントに関する研究

  1. 臨床倫理室での協議を必要とした高齢者の熱傷症例 日臨救急医会誌(JJSEM)2018;21:776-9 80 代,男性。自宅でストーブ上に置いてあったや かんの熱湯により受傷した。…… 全身麻酔時から継 続する人工呼吸器からの早期の離脱は困難と判断し, 気管切開を行い人工呼吸器からの離脱を進める方針と なった。なお,この時点では家族は医師からの説明にも納得しており同意書も問題なく取得可能であった。受傷10日目に家族(長男,長女夫婦)から気管切開・輸血等を含めた一切の治療を行わないでほしいとの申し出があった。
  2. 職場の中でのコミュニケーションスキル 理学療法学第37巻第4号314〜3正8頁(2010年) 病院苦情対応窓口に多いクレーム内容は医師やコメディカルに対する診療や処置など技術面に関すること。次いで言葉づかい,配慮,心遣い,態度,身だしなみの接遇面。そして連絡・引き継ぎ,設備環境などハード・システム面である。職
  3. 医療コンフリクトマネジメント技法を用いた患者対応 第56回日本農村医学会学術総会 発行日: 2007 年 患者の転倒で家族が混乱している時に、医療者が医学的正論を前面に出したことが今回の原因と考える。

 

媒介分析 mediation analysis

媒介分析というのは、独立変数X ⇒ 従属変数Y という因果関係があったときに、XとYの中間に媒介変数Mを仮定するモデルのようです。社会心理学などで多用されるとのこと。参考になる論文としてはBaron and Kenny 1986だそう。

Baron, R. M., & Kenny, D. A. (1986). The moderator-mediator variable distinction in social psychological research: Conceptual, strategic, and statistical considerations. Journal of Personality and Social Psychology, 51, 1173-1182. (無料要旨)

しかしこれ媒介変数の「間接効果」を評価するのが目的のようです。自分が考えていたのはX⇒M⇒Yにしても、X⇒Yの直接効果は無いものでした。つまり単純に因果の鎖という理解です。

  1. 因果媒介分析 理科大ヘルスデータサイエンス学会第1回学術集会 スライド 2022年11月26日

統計ソフトを利用した媒介分析

STATA

  1. Stataで行う因果媒介分析ウェビナー Light Stone Stata18の新機能として、因果媒介分析を行う mediate コマンドが実装されました。 因果媒介分析 アウトカムは連続、バイナリ、またはカウントをサポートします。 媒介変数は、連続、バイナリ、またはカウントにすることができます。処置変数は、バイナリ、多値、または連続のいずれかです。

参考記事

  1. 媒介分析について Nov. 2, 2015  第56回日本社会心理学会イブニングセッション Hiroshi Shimizu Follow Researcher(Psychology) at Kwansei Gakuin University
  2. Rによる媒介分析 2022/04/16 VanderWeele先生のセミナー動画、総説(矢田, 2020)
  3. 媒介分析(mediation analysis)の間違った理解 tomsekiguchi.hatenablog.com
  4. 媒介分析は、興味のある曝露とアウトカムの間の経路上に中間変数があるかどうか評価する方法です。 shuntaros.github.io/mediation-analysis-DNA-methylation
  5. 媒介MEDIATION 旭川医科⼤学公衆衛⽣学・疫学佐藤遊洋 曝露要因(X)が直接(つまり媒介要因(M)を介さず)、アウトカ ム(Y)に与える因果効果を c’ とすると、 c’ は直接効果 (Direct Effect)と呼ばれる。 ・曝露要因(X)が媒介要因(M)を介して、アウトカム(Y)に与え る因果効果は間接効果(Indirect Effect)と呼ばれる。
  6. 仮説検証型研究における仮説の形式 ―主効果,調整,媒介,調整媒介についてのチュートリアル― 産業・組織心理学研究 2023 年,第 36 巻,第 2 号,189-211 平行多重媒介モデル このモデルは,単に多重媒 介モデル(multiple mediator model)とも呼ばれ る(MacKinnon, 2000;2008;Preacher & Hayes, 2008)。XがYに直接に影響を与えると同時に,2 つまたはそれ以上の媒介変数を経由して間接的に影 響を与えるメカニズムを仮定したモデルである。こ の際,複数の媒介変数の間は無相関であるという制 約が置かれている。

媒介分析を用いた論文

  1. Knowledge, attitude and practice survey towards COVID‐19 vaccination: A mediation analysis Mitali Sengupta,corresponding author 1 Smita Dutta, Int J Health Plann Manage. 2022 Jul; 37(4): 2063–2080. Published online 2022 Feb 28. doi: 10.1002/hpm.3449 PMCID: PMC9087425 PMID: 35229357

 

仮説形成に用いられる帰納(インダクション)、アブダクション、プロジェクション

推論の種類として、演繹、帰納、アブダクションといった概念が重要です。

AならばB

すなわち、

A(原因)⇒B(結果)

という因果関係と対応付けて考えると理解しやすいと思います。

演繹deduction

演繹deductionとは、命題Aが真なら、命題Bが成り立つ ということを論理的に導くことです。これは常に正しい推論です。具体的な例としては、数学が該当します。公理や定義を真として受け入れて、さまざまな定理を導いていくので、もちろん命題Bが真になります。

論理式で考えると、A⇒B 今、Aが真なのでBも真であると主張することが演繹です。

演繹は知識を増大させない、なぜならもともと前提に全ての情報が詰まっていたからと言う説明を良く見ます。これに関しては、少なくとも数学(演繹によって数学と言う学問が構築されている!)に関しては、当てはまらないと思います。前提だけでは誰も想像できなかったような面白い定理がたくさん導きだされるからです。

帰納induction

帰納inductionとは、複数の個々の例をいくつか調べて、そこから普遍的な結論を導くことです。同じ種類と思われるいくつかのことを調べて、その種類に属する全てのことが共通に、普遍的な命題Aを満たすと考えます。そのため同じ種類の別のあたらしいものを調べたときも命題Aが成り立つと考えられます。

例えば、コレラという病気はコレラ菌に感染することにより発症する。赤痢という病気は赤痢菌に感染することにより発症する。ということは、「感染性の病気には必ず起因菌が存在する」と結論するのが帰納の考え方です。すると、「同じく感染性のインフルエンザという病気は、インフルエンザ菌に感染することにより発症する」(これは演繹の考え方による結論)のだろうと予測できます。もちろん事実は異なります。インフルエンザは細菌ではなくウイルス(インフルエンザウイルス)感染が原因の病気です。

このように「帰納」による推論は常に正しいというわけではありませんが、「感染症は、起因菌となる細菌により発症する」という一般化した仮説や、そこから演繹により導かれる「インフルエンザという病気は、インフルエンザ菌に感染することにより発症する」という予言・仮説を形成することには役立ちます。仮説はあくまで仮説ですので、検証した結果反証されてもよいのです(その場合はまた新しい仮説を立てればよい)。

論理式で考えると A⇒B

A(感染性の病気に罹患している)⇒B(起因菌である細菌が存在する)

今、Aが真なので、Bも真だろうという推論が「帰納」です。細菌性の感染症に関しては

コレラが発症⇒コレラ菌がみつかる A1⇒B

赤痢が発症⇒赤痢菌がみつかる A2⇒B

普遍的に、

感染症が発症⇒起因菌がみつかる A⇒B

実のところ、

インフルエンザが発症⇒インフルエンザ菌が見つかる A3⇒B

はただしくありません。上の論理式と同値である対偶をとって ¬B⇒¬A を考えてみると、

「インフルエンザ菌が見つからない(存在しない)ならばインフルエンザを発症しない」という主張が「偽」である(ウイルス感染で発症する)ことは明らかでしょう。

ちなみに「帰納」という推論は常に正しいとはいえないですが、「数学的帰納法」は数学的に正しいものです。

帰納による推論は、知識を増大させます。なぜなら、たかだか複数個の個々の事例を調べただけなのに、全体に関して結論しているからで、あmだ調べていない事柄に関する情報が得られた(ただしそれが正しいという保証はない)というわけです。

  1. Mind as Theory Engine: Causation, Explanation and Time By Michael D. Pacer. A Dissertation. University of California, Berkeley Unlike deduction, where true premises lead to true conclusions, inductive reasoning and arguments make no guarantees.

アブダクション abduction

アブダクションは帰納の逆で、A(原因)⇒B(結果) 今、結果Bが真なので、原因Aも真であろうという推論です。もちろん、論理学においてA⇒Bの逆B⇒Aは成り立ちません。「逆は真ならず」という言葉も日常化しているように、これは論理学を知らなくても常識的なことだと思います。しかし、仮説形成という場面においては、B⇒Aを考えるのです。

具体的な例としては、天王星という惑星の動きがニュートン力学によって説明がつかない(という結果Bが真である)のは、さらに外側のすぐそばに別の未知の惑星が存在している(原因A)だという推論です。

A(天王星の外側に未知の惑星が存在)⇒B(天王星の軌道が影響を受ける)

結果Bが先に得られていて、原因Aを推定しています。

繰り返しになりますが再度まとめておきますと、A⇒Bだからといってその「逆」であるB⇒Aは成り立ちませんので、アブダクションという推論は論理的に正しいとはいえません。しかし、「蓋然性」(正しい可能性)はありますので、仮説形成に使うことができます。

  1. https://www.jstage.jst.go.jp/article/kansei/15/3/15_133/_pdf
  2. A critique of using the labels confirmatory and exploratory in modern psychological research. Ross Jacobucci. Front Psychol. 2022; 13: 1020770. Published online 2022 Dec 13.
  3. 【創造法第一回】アブダクションとはなにか 創造法編集社

abductionという名前について

abductionは通常の英語だと誘拐といった意味で、なぜ仮説形成の意味になるのかわかりにくいですが、説明がありました。

論理的思考でabduction という用語を使うとしたら、「正しい形式から離れて、無理やり推論する行為」といった具合になるでしょうか。‥ 仮説推論を整理したパース自体は、abduction という用語について一言述べています。パース曰く、アリストテレスの文献の誤記をギリシア語から英語に翻訳したからそうです。(2 仮説推論と演繹法の相違点 第6章 仮説推論 LAAD)

abductionという英語の訳として、「仮説形成」という言葉を当てる考え方もあるそうですが、戸田山 和久 著「科学的思考」のレッスン 学校では教えてくれないサイエンス(2011/11/8)では、帰納や類推(analogy)も仮説形成に使われるのだから、この訳語をabductionに当てるのはおかしいと述べていて、なるほどと自分も思いましたので、abductionはカタカナでアブダクションとしておきます。

abductionとdeductionとinductionとの違い

Abduction is the process of forming an explanatory hypothesis. It is the only logical operation which introduces any new idea; for induction does nothing but determine a value, and deduction merely evolves the necessary consequences of a pure hypothesis. Deduction proves that something must be;Induction shows that something actually is operative; Abduction merely suggests that something maybe.
Its only justification is that from its suggestion deduction can draw a prediction which can be tested by induction, and that, if we are ever to learn anything or to understand phenomena at all, it must be by abduction that this is to be brought about. (Peirce, 1978, p. 171)(Complementary Frameworks of Scientific Inquiry: Hypothetico-Deductive, Hypothetico-Inductive, and Observational-Inductive January 2009World Futures The Journal of General Evolution 65(1):61-75 DOI:10.1080/02604020701845624 Authors: Farzad Mahootian New York University Timothy E. Eastman) https://www.researchgate.net/publication/232872053_Complementary_Frameworks_of_Scientific_Inquiry_Hypothetico-Deductive_Hypothetico-Inductive_and_Observational-Inductive
  1. 新しいアイデアは推論のプロセスから生まれる https://www.jstage.jst.go.jp/article/kansei/15/3/15_133/_pdf

パースの考え

演繹、帰納、アブダクションが科学研究の推論で使われているということを指摘したのはパース(Peirce)さんのようです。推論には演繹、帰納、アブダクションの3種類があり、それぞれが各段階で使われているといいます。まず観察事実があり、それを説明するためにアブダクションをつかって仮説をたてます。つぎに演繹を使って予言をします。そして帰納により確かめます。

Peirce classified inference into three fundamental kinds: deduction, induction, and abduction.  ‥ he also placed these three kinds of inference at each stage of scientific inquiry. According to him, every scientific inquiry begins with an observation of a surprising fact. The first stage, abduction, of scientific inquiry proposes a hypothesis to explain why the fact arises. The second stage, deduction, derives new conclusions from the hypothesis. The third stage, induction, tests empirically or corroborates the hypothesis and the conclusions.

本当にパースさんの考えかたが科学研究に当てはまるのか例を考えてみます。

観察事実B:ある人が病気になった。

感染(原因A)で病気(結果B)は生じるという「法則」をもともと信じていれば、仮説「その人は、細菌に感染している」といえます。結果から原因を予測しているので、アブダクションに相当します。この仮説に基づいた演繹による予言として、「感染しているのならその人の体内から起因菌が見つけられる。」というものが考えられます。帰納による確認として、1.菌培養法によって検出する。2.ゲノムシーケンシングにより検出する。3.染色方法(形態学)によって検出する(仮想の話です)など、いくらでも検出方法は考えられます。医師が患者さんを目の前にしたときには、こういう推論がなされるのでしょう。もちろん他の原因が否定されるとしての話ですが。

同じ観察事実から、別の人は別の仮説思いつくかもしれません。

観察事実B:ある人が病気になった。

アブダクションによる仮説形成:細菌による感染(原因A)で、病気(結果B)が生じる。(A⇒B 結果から原因を仮定)

演繹による予言:病原菌による感染(原因A)で、病気(結果B)が生じる。(A⇒B 仮説と言葉は同じになってしまいましたが)

帰納による確かめ:コレラ菌を感染させたらコレラを発症した。(A1⇒B1) 赤痢菌を感染させたら赤痢を発症した。(A2⇒B2) チフス菌を感染させたら、腸チフスを発症した。(A3⇒B3) よって、細菌に感染すると、病気になる。(A⇒B) 人間だとできない実験ですが、動物実験でこういう研究デザインはあり得るでしょう。

投射 projection

『科学的思考のレッスン』には投射 projectionというものも紹介されていました。これは上の帰納の説明でいうと、

A1⇒B、A2⇒B なので A3⇒B であると推論することです。これは、

A1⇒B、A2⇒B なので A⇒B(帰納による一般化)、A3はAなので A3⇒B  と考えてもよいのではないかと思います。つまり、投射=帰納+演繹 という組み合わせになっていると理解できます。

投射の例としては、ある命題が正しいかどうかを実験動物を用いて実験したところ、ショウジョウバエでもゼブラフィッシュでもマウスでも正しかった。なのできっと人間でも正しいだろうという推論です。すべての生物種で正しいだろうと推論するのは、「帰納」になります。

類推 analogy

『科学的思考のレッスン』には類推 analogyも紹介されていました。例としては、万有引力の法則のアナロジーとして、クーロンの法則が挙げられていました。質量に関してなりたつ方程式の形が、電荷でも同じなんじゃないかというアナロジーです。根拠は何もなくて、類推したって感じですね。

水素分子で水素原子同士が結合しているのは電子対を共有しているからということのアナロジーで、原子核で陽子同士が結合しているのはなんらかの粒子を共有しているからというのも例になるかと思います(湯川秀樹の中間子)。

しかし、Patterns of Abduction (Schurz, Synthese, 2008)(PDFリサーチゲート)には、analogical abductionなどとabductionを細分化して解説したものがあり、考えようによってはanalogyはabductionの一種と考えられるかもしれません。

クーロンの法則を例にとれば、もともと存在する法則として「なんらかの物理量をもつ2つの物体間にはその物理量の積に比例して距離に反比例する力が働く」というものを認めておけば、質量のかわりに電荷を当てはめただけとも言えます。

力の大きさに関する法則(原因) ⇒ 2物体間に力が働く現象(結果)

と考えて、結果を見て原因を推測しているからabductionというわけです。このとき、質量や電荷を抽象化して「物理量」としたところがミソです。考えてみたら、アナロジーと言う考え方をしたときは必ず何かしらの抽象化の過程を含んでいるように思います。

ケクレがベンゼンの構造を思い立ったのは、「蛇が自身の尻尾に噛みついてグルグルと回り出した」夢を見たからと言われていますが、これぞまさにピュアな類推(類似に基づく推論)かもしれません。

仮説演繹法

仮説演繹法はジョージ・ハーシェルが『自然哲学研究に関する予備的考察』(1930)で定式化し、その後18世紀~19世紀の科学者ウィリアム・ヒューエルや、19世紀の経済学者ウィリアム・ジェヴォンズらによって発展させられました(野家啓一『科学哲学への招待』ちくま学芸文庫119-125頁 【仮説演繹法とは】具体例から特徴・問題点までわかりやすく解説 リベラルアーツガイド)。

その他の方法

帰納、アブダクション、プロジェクションが仮説形成に使えるパワフルなツールだということは上の説明からわかったのですが、仮説形成に使えるツールはこれらだけしかないというわけではありません。

例えば、

A⇒B(因果関係が直接的)

C⇒⇒⇒⇒⇒⇒⇒B(因果関係があるが、直接的ではなく、因果の鎖が長い)

という2つの因果関係があったときに、

C⇒⇒⇒⇒⇒⇒⇒A⇒B (すなわち、Aという過程を、CとBの因果の鎖の中間に置く)を仮説として採用することは理にかなっていると思います。もちろん絶対に正しい保証はありません。

このような推論に名前がついているのかどうかがわからずグーグルで仮説形成に関する記事を探索してもこのタイプが全然ヒットしませんでしたので、ChatGPTに聞いてみました。

質問:”A” directly cuases “B”. “C” ends up in “B” in the process of a chains of causality. Now I formulate a hypothesis that “C” causes “A” and as a result of which “B” occurrs. What is this called for this type of inference?

回答:The type of inference you are describing, where you hypothesize that “C” causes “A,” and as a result, “B” occurs, is known as a “mediating” or “mediated” causation hypothesis. In this scenario, “C” is considered to be a mediator or an intermediate variable that plays a role in the causal pathway from “C” to “A” and then from “A” to “B.” This type of inference involves understanding the indirect causal relationship between “C” and “B” through the mediation of “A.”

mediating causation hypothesisもしくはmediated causation hypothesisでグーグル検索しましたがヒットしませんでした。ChatGPTは過信できませんね。しかし、どうやら、mediating analysis(媒介分析)と呼ばれるものが近いですが、媒介分析はX⇒Yの間に媒介変数Mを仮定してX⇒M⇒YとしてMの効果を評価するので、少し目的が違うようです。

下の講義資料の14枚目のスライドの経路がまさに今の自分の興味でした。

  1. Meta-Level Abduction Katsumi Inoue National Institute of Informatics, Japan April, 2015  Formalizing rule abduction g: a goal, s: an input, r: a (hidden) node g is not directly caused by s, but we know that there is a causal chain to g from s. This is given by an observation: G: caused(g, s).  SOLAR computes a hypothesis H: linked(r, s), given the abducibles {linked(_,_)}.

s ⇒ ⇒ g  因果関係はあるが直接ではない

s ⇒ r ⇒ g 間にrを仮定し、s ⇒ r を仮説とする

 

  1. Meta-Level Abduction (講義スライド)Katsumi Inoue National Institute of Informatics, Japan April, 2015
  2. Rule-Based Abduction for Logic Programming October 1996 Kouichi Hirata, Kyushu Institute of Technology. we classify abduction into five types: rule-selecting abduction, rule-finding abduction, rule-generating abduction, theory-selecting abduction, and theory-generating abduction. ‥ the first three types of abduction, which we call together rule-based abduction,
  3. ルールアブダクションとアナロジーによるスキル創造支援
    プロジェクトの概要 https://www.jstage.jst.go.jp/article/pjsai/JSAI2013/0/JSAI2013_1H3OS02a5/_pdf/-char/ja
  4. アナロジーを組み込んだルール発想推論によるスキル獲得支援 金城 敬太, 尾崎 知伸, 古川 康一, 原口 誠 https://www.jstage.jst.go.jp/article/tjsai/29/1/29_C-TS13_6/_pdf/-char/ja ここでやらんとしていることは、まさに上の自分の知りたかったことそのもののようです。それをコンピューターでやろうという発想でしょうか。
  5. Rule-Based Abduction for Logic Programming https://catalog.lib.kyushu-u.ac.jp/opac_download_md/3195/rifis-tr-106.pdf
  6. Rule Based Abduction (有料)Sai Kiran Lakkaraju & Yan Zhang International Symposium on Methodologies for Intelligent Systems ISMIS 2000: Foundations of Intelligent Systems pp 525–533 PDF 無料ダウンロード at independent.academia.edu
  7. Rule-Based Abduction for Logic Programming October 1996 Authors: Kouichi Hirata Kyushu Institute of Technology 耕一 平田 researchgate.net

仮説の形成

どんな仮説を立てるかは恣意的だと思います。

観察事実B:ある人が病気になった。 から「全ての病気には起因菌が存在する」という仮説を考える人もいるかもしれません。

「全ての病気には起因菌が存在する」という仮説を信じると、帰納的な推論により、壊血病にも起因菌が存在すると予言できます。実際のところこの予言を検証しようとして多くの医師や科学者が起因菌の同定の努力をしたはずですが、報われませんでした。なぜなら、壊血病の原因は細菌ではなく、栄養素(ビタミンC)の不足だったからです。「全ての病気には起因菌が存在する」という仮説は、反証されたのでした。

次々と疾患に対して病原菌が見つかっていった時代には、「病気⇒起因菌が存在」は常識的な考えかただったようです。

  • 病気1⇒起因菌1が存在
  • 病気2⇒起因菌2が存在
  • 病気3⇒起因菌3が存在

帰納により、「病気⇒起因菌が存在」という仮説を信じたくなります。

実際のところ、「全ての病気には起因菌が存在すといる」という仮説は全く正しくなくて、細菌以外が原因の病気は、ウイルス、微生物、栄養の欠乏、遺伝子変異、化学物質などいくらでもあります。

 

Meta-Level Abduction Katsumi Inoue National Institute of Informatics, Japan April, 2015 の講義資料には、Patterns of Abduction (Schurz, Synthese, 2008)の紹介もありました。参考になるかも。(リサーチゲートのPDF

 

こうしてみると、仮説をどれだけ大きなものにするか、あるいは、正しい仮説を思いつくかどうかで、研究成果の大きさが変わってくると言えそうです。

仮説を立てるときには、あらゆる可能性をモレなく考えて、どれが正しそうかという「確率」まで考慮しないとなかなか正しい仮説にたどりつかないのではないかと思います。

例えば、遺伝子は進化の過程で重複していることがあり、多くの場合、一つの遺伝子だけでなくファミリーを形成しています。カルシウムチャンネル1,2,3,4,5といった具合です。じゃあ6番目のカルシウムチャンネルもあるはずだという仮説のもとに、カルシウムチャンネル6を同定するという研究計画を立ててよいのでしょうか?すでに誰かが散々調べつくして1~5で打ち切りになっているのかもしれません。6番めが見つかる可能性は高くないでしょう。ところが、1つしか遺伝子がないものもあれば、嗅覚受容体遺伝子のようになんと数百個あるものもあります。調べてみないとわからない場合もどうしても出てきますね。

参考にしたリソース

  1. Deduction, induction, abduction: The Differences Management Consulting Journal チャンネル登録者数 330人
  2. 科学的思考のレッスン 戸田山 NHK出版

その他の参考サイト

  1. 新しいアイデアは推論のプロセスから生まれる
  2. J.S.ミルの具体的演繹法(1)
  3. ケインズとラムジー : 確率と合理性 をめぐって
  4. 真実発見のアブダクション的・帰謬法的構造と故意の目的論的立証
  5. ロジックツリー作成の原則 MECE
  6. 第10章 論理的思考のまとめ la-ad.net/
  7. 推論と判断の等確率性仮説:思考の対称性とその適応的意味
  8. 因果概念束にもとづく知識構造モデルの研究
  9. 仮説の立て方とは|仮説を立てる【仮説構築力】を身につける方法|例題有  2023-08-15 Mission Driven Brand(外資系コンサルティングと広告代理店のキャリアを持つ筆者が、ビジネスの「できない、わからない」を解決するブログ) あらゆるビジネスは「仮説」こそが成否を握る。なぜなら、仮説を生み出せなければ次の一手を見出しようがなく、検証のしようもなくなるからだ。つまり、ビジネスの成長は止まってしまうことになる。‥ パレートの法則とは、20%の重要なインプットが80%の成果を生み出しているというビジネス上の法則だ。‥ 希少資源である「時間」を重要な20%に充てるには、初めに「何が重要な20%なのか?」について仮説を立てる必要がある。もしあなたが「何が重要な20%なのか?」について仮説を立てることができれば、その20%が80%の成果を生むのだから、生産性は4倍になる。
  10. 小学校理科地球領域における仮説設定能力の実態に関する研究 日本教科教育学会誌 2020. 6  第43巻 第 1 号 pp.71-81

 

大脳基底核(線条体、淡蒼球、)の役割、直接経路、関節経路とは?

大脳基底核という名前について

大脳基底核 basal gangliaのbasalと言う言葉は、これらの脳部位が前脳 forebrainの底(基底)の部分に存在することに由来しています。また、ganglia(神経節)は本来、末梢神経系の領域内で神経細胞が塊になっている部分に用いられる用語であり、中枢神経系の領域内で神経細胞が塊になっている部分は「神経核 nuclueus」と呼ばれます。大脳基底核 basal gangliaは、そういう意味で間違って命名されてしまった名前が現在まで生き延びてしまった結果と言えます。

  1. https://en.wikipedia.org/wiki/Basal_ganglia

大脳基底核を構成する脳部位

大脳基底核は複数の部位を纏めた総称で、いくつかの部位から構成され、線条体striatum(被殻putamen、尾状核caudate nucleus)、淡蒼球globus pallidus(外節、内節)黒質substantia nigra(緻密部pars compacta、網様部pars reticulata)、視床下核subthalamic nucleusからなる。

淡蒼球は外節と内節とにわかれ、淡蒼球内節は黒質網様部と一体の構造で、視床へ出力する。淡蒼球外節は「間節路indirect pathway」の経由地である。

線条体はヒトの場合、被殻と尾状核からなる。齧歯類では被殻と尾状核の区別がない。線条体は、大脳皮質や視床からの入力を受ける。「線条体被殻と淡蒼球」は合わせてレンズ核とも呼ばれる。

黒質は中脳に存在する部位であるが大脳基底核(前脳に属する)の一部としてとらえられる。

File:Anatomy of the basal ganglia.jpg出典:https://en.wikipedia.org/wiki/File:Anatomy_of_the_basal_ganglia.jpg

  1. 大脳基底核(ウィキペディア)

オレキシン(ヒポクレチン)とは

2023年度のノーベル賞候補として、オレキシンの発見者の名前が挙がっています。

クラリベイト社が論文引用回数などに基づいく引用栄誉賞を発表し、23人の研究者が選ばれました。その中に日本人が2人含まれます。一人は、筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構・機構長の柳沢正史博士(63)もうひとりは、ナノ医療イノベーションセンター・センター長の片岡一則博士(72)。柳沢博士は、オレキシンというホルモンの発見者で、不眠症の治療薬の開発に貢献しています。クラリベイト社の引用栄誉賞受賞者は、ノーベル賞受賞の有力候補と考えられます。

  1. 来月2日からノーベル賞発表 英情報調査会社が日本人2人含む有力候補23人を発表 9/19(火) 17:54 テレビ朝日系(ANN)

さてそのオレキシンですが、どんなホルモンなのでしょうか。

オレキシン(ヒポクレチン)とは

オレキシン (orexin) は、1998年に発見された神経ペプチドで、食欲を意味するギリシャ語orexisに由来します。オレキシンはまた、ヒポクレチン (hypocretin) とも呼ばれます。オレキシンは1998年に二つのグループによる独立した研究においてラットの脳から発見されました。ひとつのグループはギリシャ語の食欲を意味するオレキシスからオレキシンと名付け、もう一つのグループは視床下部(hypothalamus)で生産されることから、ヒポクレチンと名付けました。そのため、同じ物質に対して2つの呼び名が存在しています。

オレキシンの主な働きは、覚醒(arousal)、目覚め(wakefulness)、食欲(appetite)の制御です。ヒトの脳にはオレキシンを生産するニューロンが1~2万個あり、主にperifornical areaと外側視床下部に分布します。オレキシンニューロンは中枢神経系全体に広く投射し、覚醒・食欲・そのほかの行動を制御します。視床下部外側野の神経細胞で産生されるオレキシンは、食欲や報酬系に関わるほか、睡眠や覚醒を制御することが知られます。オレキシン産生神経細胞がないと、ナルコレプシーという睡眠障害が生じます。

  1. オレキシン(ウィキペディア)

オレキシン受容体阻害薬

オレキシン受容体拮抗薬の睡眠薬としては、レンボレキサント(商品名:デエビゴ)とスボレキサント(商品名:ベルソムラ)があります。両者ともオレキシン受容体1およびオレキシン受容体2を阻害し、覚醒状態から睡眠へ導きます。

  1. オレキシン受容体拮抗薬について 2021.2.12 高津心音メンタルクリニック(神奈川県川崎市高津区)