エイコサノイドの作用

ブヨに顔をさされてしまい赤くなったのが1日たっても全然なおらず腫れが引きません。家にたまたまあったスチブロン軟膏を塗りました。スチブロンは商品名で、化学名はジフルプレドナートです。ジフルプレドナートはステロイド剤で炎症作用があります。その作用機序はどのようなものでしょうか。

生化学の教科書を紐解くと、アラキドン酸からロイコトリエン、プロスタグランジン、トロンボキサンが合成される過程が説明されており、それらの化学反応を担う酵素に対する阻害剤が示されています。ステロイド剤と非ステロイド剤があります。

エイコサノイドとは、アラキドン酸(炭素数20の脂質)の誘導体で、ロイコトリエン、プロスタグランジン、トロンボキサンなどの生理活性物質の総称です。アラキドン酸はリン脂質の構成要素として細胞膜に存在しており、ホスホリパーゼA2(PLA2)によって遊離して、生理活性物質になります。

 

アラキドン酸は、主に細胞膜のリン脂質のsn-2位にエステル化されて存在する[4] 。主にグリセロリン脂質コリンが結合したホスファチジルコリンに含まれるが、ホスファチジルイノシトールなど他のグリセロリン脂質にも含まれる[5] 。 アラキドン酸は、刺激に応じてホスホリパーゼA2(phospholipase A2; PLA2)の酵素活性により細胞膜から遊離する

  1. アラキドン酸

ステロイド剤がPLA2を阻害するのは、直接結合して阻害するわけではなく、糖質コルチコイド受容体に結合して遺伝子発現を生じた結果、その遺伝子産物がPLA2活性化シグナリングを阻害するというものだそうです。その阻害の作用機序は明らかになるまでは大きな研究テーマだったようです(参照:ステロイド薬の基礎 2011年)。

  1. ステロイド薬の基礎 https://www.jstage.jst.go.jp/article/arerugi/60/2/60_KJ00007063066/_pdf
  2. ジフルプレドナート https://www.info.pmda.go.jp/go/pack/2646725M1236_1_03/2646725M1236_1_03?view=body&lang=ja#DOC_15 作用機序 コルチコステロイドは、標的細胞の細胞質内に入り、そこに存在するレセプターと結合後、核内に移行して遺伝子を活性化し、合成されたメッセンジャーRNAが細胞質内に特異的蛋白リポコルチン合成する。 細胞膜を形成するリン脂質に含まれるアラキドン酸は、ホスホリパーゼA2(PLA2)により遊離後、代謝を受けて各種のプロスタグランジン、トロンボキサン、ロイコトリエンとなり炎症に関与するが、リポコルチンはこのPLA2を阻害することにより、抗炎症作用を発現するものと考えられている4) 。
  3. マイザー軟膏(ジフルプレドナート)に含まれている成分や効果、副作用などについて解説 監修 薬剤師 大越 有紀 更新日:2024年02月28日 マイザー軟膏(ジフルプレドナート)の特長は、代表的なアンテドラッグ(antedrug)ステロイドであることです。アンテドラッグとは特定の部位でのみ優れた効果を発揮した後、体内に取り込まれると急速に代謝し、薬効を消失するよう設計された薬のこと。そのため全身への副作用を少なくでき、安全性と有効性に優れています。

ステロイド剤→受容体に結合→リポコルチン遺伝子発現→PLA2を阻害→アラキドン酸が細胞膜から遊離できない→プロスタグランジン、トロンボキサン、ロイコトリエンの産生が抑制される→炎症作用が抑制される

という作用機序のようです。