日本の科学研究力が落ちたことは、論文数増加の停滞、トップ被引用論文数ランキングの急落など周知の事実ですが、その理由に関しては、いろいろなことが言われています。
研究費の不足
大物研究者による研究費の独占
研究者の自由な発想で研究ができる科研費などの研究費の不足
選択と集中の政策
競争的研究費が途絶えると研究が止まる
研究時間の不足
大学運営業務の増大による研究時間の減少
- 実験機器の管理や大学の運営、教育などで時間が取られ、現在、自分の研究時間は“1割にも満たない” https://www3.nhk.or.jp/news/special/sci_cul/2017/09/story/news_170928_2/
研究支援職の不足
職業としての魅力の無さ
定職の無さ
経済的な不安定さ
研究職の魅力の無さ
研究者のなりての不足
博士課程の学生への経済支援の不足
研究の裾野の広がらなさ
選択と集中の弊害
評価システムの欠陥
研究成果を社会実装するための支援職の不足
知財などの支援者の不足
目利きの不足
テーマ選定、研究成果のビジネス化
科学政策の影響
1990年代 大学院重点化
- 清水孝雄氏は、国立大学の研究力低下の一番の要因は、2004年度の国立大学の法人化にあるとみる。 https://www.m3.com/news/open/iryoishin/663311 大学院生の定員を学部生の1.5倍程度に設定し、全国的には重点化前の2.5倍になりましたが、教員の増員はなかったため、教員一人当たりの仕事は増えたため、研究の質低下につながった。
2004年度 国立大学法人化による運営費交付金削減
大企業が自社の優れた基礎研究者を評価・活用しなかったこと
- https://www.webchikuma.jp/articles/-/436 会社の「役立たず」としてつぶされようとしている大企業の世界的科学者たち 世界をリードしてきた国内外の科学者・技術者たち100人以上にインタビューし、大企業から離脱した科学者を日本と米国で継続的に観測 日本が直面する科学とイノベーションの危機を脱するための根治療法は、つまるところ一つしかない。リストラされていく優秀な科学者や技術者たちがベンチャー企業を立ち上げてイノベーターに転身する選択を促すことだ。 もはやイノベーションなど生まれないとみなされている産業においても、イノベーションの種子はいくつも眠っている。問題はそれを見出す眼力と新産業を興そうとする強い意志があるかどうかなのだ。 ベンチャー企業でもソフトウェアやアプリ制作などのいわゆるIT企業はさほど大きな投資を必要としないものの、新しい物質の創生やデザインに基づくブレークスルー技術には莫大な資本投資を要し、資金なしに新たな産業は創出できない。どんなに優れた技術と将来性を有していても、日本において科学者の起業家が成功することはあまりにも難しく、最初のステージにすら立てないというのが実情
- 山口 栄一 YAMAGUCHI Eiichi 京都大学名誉教授 立命館大学教授 https://www.elp.kyoto-u.ac.jp/professor/yamaguchi/
参考
- 緊急シンポジウム ~激論 なぜ、我が国の論文の注目度は下がりつつあるのか、我々は何をすべきか?~ 開催日時:2024年3月11日(月)12:30~17:30 https://www.jst.go.jp/all/event/2023/20240123.html
- 研究力復活へ、それぞれができることから取り組もう~JST緊急シンポジウム開催報告~2024年04月09日 https://www.jst.go.jp/report/2024/240409.html
- https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/f4d552a033d525cfea2d7d8d6d24a4c875edb513 ヤフーニュースによる深堀り
- https://scienceportal.jst.go.jp/explore/reports/20240430_e01/ シンポジウム報告
- 大隅教授インタビュー https://gendai.media/articles/-/99751?page=2 流行りになってからその研究を始めたとしても、エポックメイキング(画期的)な仕事はできません。だとすれば、そのようなランキングには最初から大した意味はない 論文の引用回数に従って国からの研究費を傾斜配分する、といったことは止めた方がいいと思います。そのようなやり方では、若い研究者が萎縮して「必ず成果が見込める研究」にしか手を出さなくなる。本来「面白い事」にチャレンジするはずの研究者マインドが失われてしまいます。 継続的に資金を提供して、安心して未知の事柄に挑戦できる環境を整えてあげる
- https://toyokeizai.net/articles/-/611965?page=3
- https://www.tufu.or.jp/horizon/2021/2168
- https://www.businessinsider.jp/article/262572/