特041 国内優先権、 特043 パリ条約、 特184の3 PCT出願

プロンプト:パリ条約、PCT、国内優先権など国際出願に関するもろもろを、網羅的にかつわかりやすくまとめて。頭がこんがらがったので。

Gemini:その気持ち、痛いほどわかります!特許法の学習において、「パリ条約」「PCT」「国内優先権」が絡み合うこのエリアが、最大の挫折ポイントの一つです。「条文番号」と「中身」がごちゃ混ぜになる原因は、ルート(道筋)が整理できていないからです。シンプルに**「3つのルート」**に分けて整理しましょう。これで頭の中の地図が完成します。

【全体地図】3つのルートだけ覚えればいい

まず、以下のどれに当てはまるか?で適用条文が決まります。

  1. 【国内ルート】 日本 $\rightarrow$ 日本 (国内優先権)

  2. 【パリルート】 外国 $\rightarrow$ 日本 (直接)

  3. 【PCTルート】 どこか $\rightarrow$ PCT $\rightarrow$ 日本 (国際特許出願)

これらを一つずつ解きほぐします。

1. 【国内ルート】 日本 $\rightarrow$ 日本

「去年の俺の出願(日本)をベースに、改良して出し直す」

  • 状況: 日本で出願Aをして、1年以内に内容を追加して日本で出願Bをする。

  • 使う条文:第41条(国内優先権)

  • 何が起きる?

    • 出願Bの審査時、共通する発明は「出願Aの日」に出したとみなされる。

    • 先願Aは「みなし取下げ」で消滅する(重複防止)。

  • ポイント: ここには外国も国際も関係ありません。「41条」はドメスティックな話です。

2. 【パリルート】 外国 $\rightarrow$ 日本(直接)

「アメリカで出した出願を、日本でも直接出しに来た」

  • 状況: 米国で出願Aをして、1年以内に日本国特許庁へ直接出願Bをする。

  • 使う条文:第43条(パリ条約による優先権)

  • 何が起きる?

    • 出願Bの審査時、新規性などの判断基準日が「米国出願Aの日」になる。

    • 手続き: 日本への出願と「同時」に優先権主張し、1年4ヶ月以内に証明書を出す。

  • ポイント: これが「THE・優先権」の基本形です。

3. 【PCTルート】 PCTを経由して日本へ

ここが混乱の元凶です。**「入り口」「優先権の処理」**の2段構えで考えます。

ステップ①:日本に入ってくる(入り口)

PCT出願(国際出願)を日本に入れるには、まずこの条文を通ります。

  • 使う条文:第184条の3(国際特許出願)

  • 何が起きる?

    • **「このPCT出願は、日本の特許出願とみなす!」**と宣言されます。

    • これによって初めて、日本の特許法の土俵に乗ります。

ステップ②:優先権はどう扱う?

土俵に乗った後、「そういえばこれ、優先権ついてるよね?」という処理をします。

ここで、**「元ネタ(基礎出願)がどこか」**によって2パターンに分かれます。

パターンA:外国 $\rightarrow$ PCT $\rightarrow$ 日本

(例:米国の出願を基礎にPCTをして、日本に来た)

  • 基本は「パリルート(43条)」と同じ考え方ですが、PCT用の特例を使います。

  • 使う条文:第184条の15(優先権主張の特例)

  • 仕組み: 「本来は日本出願と同時に主張しなきゃダメ(43条)だけど、国際段階で主張してあるから、それでOKとみなすよ」という読み替え規定です。

パターンB:日本 $\rightarrow$ PCT $\rightarrow$ 日本(自己指定)

(例:日本の出願を基礎にPCTをして、日本に戻ってきた)

  • これは実質的に「国内ルート(41条)」と同じことをPCT経由でやっています。

  • 使う条文:第41条第1項のカッコ書き & 第184条の15

  • 仕組み: 184条の3で「日本出願」とみなされた結果、**「日本の出願(基礎) $\rightarrow$ 日本の出願(PCT)」**という形になるので、第41条(国内優先権)のルールが適用されます。

    • 重要: だから、PCT経由であっても、基礎になった日本の出願は**「みなし取下げ」**になります。

【最終まとめ】 混乱解消マトリクス

この表だけスクショして保存してください。

ルート 状況 優先権の条文 基礎出願の運命
国内ルート 日本 $\rightarrow$ 日本

第41条

 

(国内優先権)

消える

 

(みなし取下げ)

パリルート 外国 $\rightarrow$ 日本

第43条

 

(パリ優先権)

消えない

 

(外国の主権だから日本は消せない)

PCTルート

 

(外国発)

外国 $\rightarrow$ PCT $\rightarrow$ 日本

第184条の15

 

(実質は43条の特例)

消えない

PCTルート

 

(日本発)

日本 $\rightarrow$ PCT $\rightarrow$ 日本

第41条

 

(184条の3を経由して適用)

消える

 

(国内優先権と同じ扱い!)

つまり…

  • 184条の3 は、PCTを日本出願に変身させる「入り口の魔法」。

  • 41条 は、日本と日本をつなぐ「上書き保存(古いの消去)」。

  • 43条 は、外国の日付を借りる「借用書」。

  • 184条の15 は、PCT経由の時に43条を使いやすくする「変換アダプタ」。

これで少し整理できましたでしょうか?

「日本発のPCT(自己指定)」が、実は41条の世界に引きずり込まれる…というあたりが、一番のハマりポイントだったかもしれません。

 

質問:今の回答で、PCTルートで 日本 → PCT → 外国 を含めなかったのは、日本の特許に絞ったってこと?

Gemini:その通りです!さすが、全体像が見えてきましたね。おっしゃる通り、先ほどのまとめは**「日本の特許法(日本の特許庁)がどう判断するか?」**という視点に絞っていました。なぜ「日本 → PCT → 外国」をあえて外したのか。理由はシンプルで、**「そこから先は日本の法律(特許法)の管轄外だから」**です。この違いを整理すると、特許法の勉強において「どこまで覚えればいいか」の境界線がハッキリします。

## 1. なぜ「日本 → 外国」は特許法の試験(条文)に出にくい?

日本の特許法(第1条~第204条)は、あくまで**「日本の特許庁と、日本の審査官のためのルールブック」**です。

あなたが「日本 → PCT → アメリカ」に出願した場合を想像してください。

  1. 日本でPCT出願する時:

    • 日本の特許庁(受理官庁)に書類を出します。ここまでは日本の特許法(国際出願法)のルールです。

  2. アメリカに移行した後:

    • 審査をするのはアメリカの審査官です。

    • 彼らが使うルールブックは**「米国特許法」**です。

    • 彼らがあなたの優先権を認める根拠は、日本の特許法43条ではなく、**「パリ条約(という国際条約)」と「米国特許法」**です。

つまり、「日本の特許法第43条(優先権主張)」は、外国へ出ていく時には使われません。(43条は、日本に入ってくる人に「優先権証書を出せ」と命令する条文だからです。)

## 2. ベクトル(方向)で整理すると完璧

混乱の原因は、**「Inbound(日本に入ってくる)」「Outbound(日本から出ていく)」**が混ざっていることです。

条文勉強のメインは、圧倒的にInboundです。

方向 ルート 適用される日本の法律 備考

Inbound

 

(日本へ入る)

外国 $\rightarrow$ 日本

 

PCT $\rightarrow$ 日本

第43条

 

第184条の3 など

試験のメイン!

 

「日本の審査官がどう扱うか」の規定。

Outbound

 

(日本から出る)

日本 $\rightarrow$ 外国

 

日本 $\rightarrow$ PCT $\rightarrow$ 外国

特になし

 

(条約に基づく権利)

日本の法律は「行ってらっしゃい(受理)」まで。

 

向こうでの扱いは現地の法律次第。

## 3. ただし、1つだけ「特大の落とし穴」がある

「じゃあ、日本から出ていくPCT(日本 $\rightarrow$ PCT $\rightarrow$ 外国)は無視していいんだね?」

ここで**「自己指定(日本も指定国に含む)」**という罠があります。

多くの日本企業は、PCT出願をする際、**「外国(アメリカ等)」だけでなく「日本」**も指定国に入れます(全指定が自動ですが)。

すると、1つのPCT出願の中に2つの顔を持つことになります。

  • 顔A(対 外国): 日本を出ていく出願 $\rightarrow$ 日本の特許法は関係なくなる。

  • 顔B(対 日本): ブーメランのように日本に戻ってくる出願 $\rightarrow$ 第41条(国内優先権)が発動!

先ほどの解説で「PCTルート(日本発)」を含めたのは、この**「顔B(ブーメラン)」**があるため、日本の特許法上、無視できない(みなし取下げ等の影響が出る)からです。

## まとめ:頭の中のスイッチを切り替える

  • **「第43条」「第41条」「第184条」**という単語が出たら $\rightarrow$ **「日本に入ってくる(日本の審査官が見る)」**話をしているんだな、と考える。

  • **「日本から外国へ出す」という話なら $\rightarrow$ それは「条約」「外国の法律」**の話だな、と割り切る。(日本の特許法の条文操作などの細かい議論は発生しない)

これで、「なぜ解説から省かれたのか」が腑に落ちましたでしょうか?

この「管轄(どこの国の法律か)」の意識を持つだけで、条文を読む解像度がグッと上がります!