脳部位の機能、霊長類に固有の脳部位など

視床枕

視床枕は、マウスなどのげっ歯類には存在せず霊長類の脳では大きな容積を占めていること、回路としては大脳皮質注3)のなかでも視覚系皮質領域と密接に結合していることは知られていましたが、その働きや意義については不明でした。

視床枕:脳深部に左右一対ずつある領域。一般的に、右(左)の視床枕には、左(右)視野からの視覚情報が入力される。げっ歯類の脳には存在せず進化の過程で拡大し、霊長類の視床の最大容積を占める。https://www.jst.go.jp/pr/announce/20130513/index.html

前障(ぜんしょう)

ファイル:Ajima Fig 1.jpg CC-BY https://bsd.neuroinf.jp/wiki/前障

 

図1.マウス脳における前障の位置

前障は、ヒトを含む哺乳類の大脳皮質の深部に位置する薄いシート状の領域です(図1)。小さな領域にもかかわらず、大脳皮質のほぼ全ての領域を含む多くの脳部位からの入力を受け、逆にほぼ全ての大脳皮質領域に出力する一方で大脳皮質以外の脳部位にはほとんど出力しないというユニークな解剖学的特徴を有しています。https://kompas.hosp.keio.ac.jp/sp/contents/medical_info/science/202306_02.html

 

前障は、哺乳類の大脳皮質の深部に存在する薄いシート状の脳領域です。この前障はほとんど全ての大脳皮質領野と双方向に神経連絡していることから、その役割として多感覚の統合、注意の割り当て、意識の調節などの仮説が提唱されてきましたが、その実体は未解明のままでした。‥ 嗅覚研究の過程で、非常に興味深いトランスジェニックマウスを偶然、作製することができました。‥ もともとは嗅覚系の神経細胞にCre組換え酵素を発現させようとしてトランスジェニックマウスを作製したのですが、そのCreが前障に異所的に発現してしまったのです。

https://www.riken.jp/press/2020/20200512_1/index.html

「前障(ぜんしょう)」が,大脳皮質の「徐波」活動を制御 https://optronics-media.com/news/20200513/64455/

Narikiyo, K., Mizuguchi, R., Ajima, A. et al. The claustrum coordinates cortical slow-wave activity. Nat Neurosci 23, 741–753 (2020). https://doi.org/10.1038/s41593-020-0625-7

「前障※1」という微小な脳領域の一部の細胞集団を活性化すると不安様行動が生じ、逆に抑制すると不安やうつ様行動を改善 https://www.amed.go.jp/news/release_20220322.html

Claustrum mediates bidirectional and reversible control of stress-induced anxiety responses Misaki Niu, Atsushi Kasai, Masato Tanuma, Kaoru Seiriki, Hisato Igarashi, Takahiro Kuwaki, Kazuki Nagayasu, Keita Miyaji, Hiroki Ueno, […], and Hitoshi Hashimoto Science Advances 18 Mar 2022 Vol 8, Issue 11 DOI: 10.1126/sciadv.abi6375

参考

  1. https://bsd.neuroinf.jp/wiki/前障 前障は哺乳類に特徴的な脳の一領域。大脳皮質(島皮質)の内側、線条体の外側に位置し、前後方向・背腹方向に伸展した薄い灰白質である。前障はほとんどすべての大脳皮質及び扁桃体基底外側部と双方向性の結合をもつ。この特徴的な神経結合様式や電気生理学的実験の結果などをもとにして、これまでに多くの研究者が前障の機能についての考察を行い、多種感覚情報の統合、サリエンシーの検出、注意の割り当て、意識のオン/オフなど、高次脳機能における前障の関与についての仮説が提唱されている。
  2. 当たればすごく大きな仕事につながるような革新的・挑戦的なテーマを各自に1つずつ与えています。しかしながらそれが頓挫してしまってはダメなので、リスキーなテーマに加えて、手堅く確実に論文になるような研究テーマも与えて、これらを上手く組み合わせて研究をしていくのが生き残るためには必要かなと思います。https://www.riken.jp/press/2020/20200512_1/index.html