マルクーシュ(マーカッシュ)・クレームとは?

質問:マルクーシュ・クレームって何?マーカッシュって言葉が特許の教科書に出てきたけど、それと同じ?いつから認められた書き方?世界共通?

Gemini:結論から言うと、「マルクーシュ」と「マーカッシュ」は全く同じものです。英語のスペルは “Markush” なので、日本語の教科書や先生によって「マルクーシュ」と読んだり「マーカッシュ」と読んだりするだけで、指している内容は一緒です。ご質問の4つのポイント(定義、同一性、歴史、世界共通か)について、わかりやすく解説します。

1. マルクーシュ・クレームとは?

「性質が似ている仲間」をひとまとめにして、「A、B、またはCから選ばれる物質」という書き方をしたクレームのことです。

通常、特許のルールでは「不明確」になるのを防ぐため、「AまたはB」というような書き方(択一形式)は嫌がられます。しかし、化学分野ではこれを使わないと特許が書けない事情があるため、特別に認められています。

  • 書き方の型(定型文):

    「~からなる群より選ばれる(selected from the group consisting of…)」というフレーズが使われます。

2. 歴史:いつから認められた?

1925年のアメリカから始まりました。もう100年の歴史があります。

  • 事件名: Ex parte Markush(マルクーシュ審決)

  • 人物: ユージン・A・マルクーシュ(Eugene A. Markush)という発明家。

  • 経緯:

    彼は新しい染料を発明しましたが、その材料として「アニリン」の仲間と「ハロゲン」の仲間など、化学的には別々のグループに属する物質が、どちらも同じように使えることを発見しました。しかし、この両方を一度に言い表す「既存の単語(上位概念)」がこの世になかったのです。「言葉がないなら、並べて書くしかないじゃないか!」と主張し、特許庁(長官)がこれを認めたのが始まりです。

3. なぜ必要なの?(機械分野との違い)

機械なら「釘、ネジ、ボルト」をまとめて**「留め具(fastener)」**という便利な言葉(上位概念)があります。しかし化学物質の場合、「ベンゼン環がついているヤツ」と「ピリジン環がついているヤツ」をまとめて呼ぶ言葉がないことが頻繁にあります。「言葉がないから特許が取れない」では困るので、「AとBとCのどれか!」とリストアップする書き方が定着しました。

4. 世界共通?

はい、世界共通です。日本(JPO)、アメリカ(USPTO)、ヨーロッパ(EPO)を含む主要国で、化学・医薬分野の標準的な書き方として認められています。日本の特許庁の審査基準にも、明確に認められる要件が記載されています。ただし、**「リストアップしたAとBとCが、本当に似たような性質(類似の機能・効果)を持っていること」**が条件です。「鉄と、綿と、水」のように全然違うものをマルクーシュ形式でまとめることは(単一性違反などで)認められません。

まとめ

  • マルクーシュ = マーカッシュ(英語読みの違いなだけ)

  • 1925年、米国発祥

  • **「適当な総称がないから、並べて書く」**という化学特有の裏技的ルール。

  • 現在は世界中の特許実務でスタンダードになっている。

教科書に出てくるのは、まさにこの歴史的経緯と、「化学分野特有のクレーム解釈」を学ぶためです。