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日本の科学研究力が落ちた理由

日本の科学研究力が落ちたことは、論文数増加の停滞、トップ被引用論文数ランキングの急落など周知の事実ですが、その理由に関しては、いろいろなことが言われています。

研究費の不足

大物研究者による研究費の独占

研究者の自由な発想で研究ができる科研費などの研究費の不足

選択と集中の政策

競争的研究費が途絶えると研究が止まる

 

研究時間の不足

大学運営業務の増大による研究時間の減少

  1. 実験機器の管理や大学の運営、教育などで時間が取られ、現在、自分の研究時間は“1割にも満たない” https://www3.nhk.or.jp/news/special/sci_cul/2017/09/story/news_170928_2/

 

研究支援職の不足

 

職業としての魅力の無さ

定職の無さ

経済的な不安定さ

研究職の魅力の無さ

 

研究者のなりての不足

博士課程の学生への経済支援の不足

 

研究の裾野の広がらなさ

選択と集中の弊害

評価システムの欠陥

 

研究成果を社会実装するための支援職の不足

知財などの支援者の不足

目利きの不足

テーマ選定、研究成果のビジネス化

科学政策の影響

1990年代 大学院重点化

  1. 清水孝雄氏は、国立大学の研究力低下の一番の要因は、2004年度の国立大学の法人化にあるとみる。 https://www.m3.com/news/open/iryoishin/663311 大学院生の定員を学部生の1.5倍程度に設定し、全国的には重点化前の2.5倍になりましたが、教員の増員はなかったため、教員一人当たりの仕事は増えたため、研究の質低下につながった。

2004年度 国立大学法人化による運営費交付金削減

 

大企業が自社の優れた基礎研究者を評価・活用しなかったこと

  1. https://www.webchikuma.jp/articles/-/436 会社の「役立たず」としてつぶされようとしている大企業の世界的科学者たち 世界をリードしてきた国内外の科学者・技術者たち100人以上にインタビューし、大企業から離脱した科学者を日本と米国で継続的に観測 日本が直面する科学とイノベーションの危機を脱するための根治療法は、つまるところ一つしかない。リストラされていく優秀な科学者や技術者たちがベンチャー企業を立ち上げてイノベーターに転身する選択を促すことだ。 もはやイノベーションなど生まれないとみなされている産業においても、イノベーションの種子はいくつも眠っている。問題はそれを見出す眼力と新産業を興そうとする強い意志があるかどうかなのだ。 ベンチャー企業でもソフトウェアやアプリ制作などのいわゆるIT企業はさほど大きな投資を必要としないものの、新しい物質の創生やデザインに基づくブレークスルー技術には莫大な資本投資を要し、資金なしに新たな産業は創出できない。どんなに優れた技術と将来性を有していても、日本において科学者の起業家が成功することはあまりにも難しく、最初のステージにすら立てないというのが実情
    1. 山口 栄一 YAMAGUCHI Eiichi 京都大学名誉教授 立命館大学教授 https://www.elp.kyoto-u.ac.jp/professor/yamaguchi/

参考

  1. 緊急シンポジウム ~激論 なぜ、我が国の論文の注目度は下がりつつあるのか、我々は何をすべきか?~ 開催日時:2024年3月11日(月)12:30~17:30 https://www.jst.go.jp/all/event/2023/20240123.html
    1. 研究力復活へ、それぞれができることから取り組もう~JST緊急シンポジウム開催報告~2024年04月09日 https://www.jst.go.jp/report/2024/240409.html
    2. https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/f4d552a033d525cfea2d7d8d6d24a4c875edb513 ヤフーニュースによる深堀り
    3. https://scienceportal.jst.go.jp/explore/reports/20240430_e01/ シンポジウム報告
  2. 大隅教授インタビュー https://gendai.media/articles/-/99751?page=2 流行りになってからその研究を始めたとしても、エポックメイキング(画期的)な仕事はできません。だとすれば、そのようなランキングには最初から大した意味はない 論文の引用回数に従って国からの研究費を傾斜配分する、といったことは止めた方がいいと思います。そのようなやり方では、若い研究者が萎縮して「必ず成果が見込める研究」にしか手を出さなくなる。本来「面白い事」にチャレンジするはずの研究者マインドが失われてしまいます。 継続的に資金を提供して、安心して未知の事柄に挑戦できる環境を整えてあげる
  3. https://toyokeizai.net/articles/-/611965?page=3
  4. https://www.tufu.or.jp/horizon/2021/2168
  5. https://www.businessinsider.jp/article/262572/

 

GDPと研究費

国内総生産 GDPとは

国内総生産とは、経済指標の一つであり、1年間に国内で新たに生み出されたモノやサービスの付加価値の合計額のことをいいます。単に付加価値を合計したものが、名目GDPを呼ばれます。

世界全体での名目GDPに占める各国の割合をみることにより、どの国が経済大国なのかがわかります。例えば、2019年の世界全体のGFPは87兆7千億ドルでした。そのうちの各国の名目GDPの割合はというと、アメリカが24.4%を占めており21兆4千億ドル、2位が中国で16.3%を占めており金額は14兆3 千億ドル。日本はアメリカ、中国に次いで3位で、割合が5.8%、金額が5兆ドルです。そのあとは、ドイツ、インド、イギリス、フランスと続きます。

  1. https://www.nomura.co.jp/el_borde/view/0049/

IMF統計(https://www.globalnote.jp/post-1409.html)によれば、2023年の名目GDPの世界総額に占める各国の割合は、やはり米国がトップで27兆7千億ドル、2位の中国が17兆8千億ドル、3位は日本がドイツに抜かれて、ドイツの4兆5千億ドルです。日本は4位で、4兆2千億ドルです。

経済大国のアメリカと中国を除けば、日本はまだまだその後に続く経済大国の中の一員といえそうです。

国民一人当たりのGDP

 資料:GLOBAL NOTE 出典:IMF 【リンク先URL】 https://www.globalnote.jp/post-1409.html

しかしながら、GDPを国民一人当たりでみてみると、日本の凋落ぶりがよくわかります。ルクセンブルグやモナコといった小国だけれども国民一人当たりのGDPが非常に高い国々はおいておいて、G7や日本の近隣諸国の間で比較してみると、1995年には日本はこれらの国々の中ではトップを誇っていたのに、その後成長がみられず、最新の2023年のデータでは韓国にも抜かれて、下の方の順位で低迷しています。

実質GDPとは

物価変動を差し引いて算出したものが実質GDPと呼ばれます。名目GDPは単純にその時点での経済規模を知るのに便利です。一方、実質GDPは物価変動を考慮しているので、年ごとの推移を考えるときに便利です。名目GDPが去年と今年で同じ金額で、物価が上昇していれば、実質GDPはマイナスというわけです。

実質GDP名目GDP ÷ 物価指数

名目GDPは見かけの数字なので、物価の変動まで考慮した実質GDPのほうが重要視されるそうです。

  1. https://www.nomura.co.jp/el_borde/view/0049/

科学技術研究開発費

科学技術関連の統計に関しては、NSF, WIPO, UNESCOといった機関が公表しているようです。

出典:https://data-explorer.oecd.org/vis?tm=science&pg=0&snb=83&vw=tl&df[ds]=dsDisseminateFinalDMZ&df[id]=DSD_MSTI%40DF_MSTI&df[ag]=OECD.STI.STP&df[vs]=1.3&dq=JPN.A.G_BR…&lom=LASTNOBSERVATIONS&lo=50&pd=%2C&to[TIME_PERIOD]=false

  1. https://data-explorer.oecd.org/vis?tm=science&pg=0&snb=83&vw=tl&df[ds]=dsDisseminateFinalDMZ&df[id]=DSD_MSTI%40DF_MSTI&df[ag]=OECD.STI.STP&df[vs]=1.3&dq=JPN.A.G_BR…&lom=LASTNOBSERVATIONS&lo=50&pd=%2C&to[TIME_PERIOD]=false
  2. https://www.globalnote.jp/category/9/13/
  3. https://data-explorer.oecd.org/vis?df[ds]=dsDisseminateFinalDMZ&df[id]=DSD_MSTI%40DF_MSTI&df[ag]=OECD.STI.STP&vw=tl&dq=USA%2BKOR%2BGBR%2BITA%2BISR%2BJPN%2BDEU%2BFRA%2BDNK%2BCAN.A.G%2BT_RS…&lom=LASTNPERIODS&lo=5&to[TIME_PERIOD]=false

2024年度

  1. 2024年(令和6年)科学技術研究調査の結果 総務省統計局 https://www.stat.go.jp/data/kagaku/kekka/index.html
    1. 統計表 https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00200543&tstat=000001032090&cycle=0&year=20240&month=0&tclass1=000001224360
    2. https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00200543&tstat=000001032090&cycle=0&tclass1=000001224360&tclass2val=0

2023年度

  1. 日本の研究開発費は名目GDP比3.70%(過去最高)第一生命経済研究所https://www.dlri.co.jp/report/macro/400040.html 科学技術研究費22兆497億円(うち、自然科学分野は20兆5,350億円で、研究費全体に占める割合は93.1%)。科学技術研究費の名目GDPに対する比率は3.70% 出典は総務省から「科学技術研究調査」  2021年度から2025年度までの官民合わせた研究開発投資の総額を120兆円(政府投資が呼び水となり民間投資が促進される相乗効果や我が国の政府負担研究費割合の水準等を勘案)が目標 (注意:研究開発投資科学技術研究費は同一ではない) 賃金水準等物価の変動分を除去して算出した実質研究費(2020年度基準)は19兆5608億円 https://www.dlri.co.jp/report/macro/400040.html
  2. 2023年度科学技術研究費を研究開発を担う主体別にみると、企業等が16兆1,199億円(73.1%)、大学等が3兆9,365億円(同17.9%)、非営利団体・公的機関が1兆9,932億円(同9.0%) https://www.dlri.co.jp/report/macro/400040.html 第一生命経済研究所
  3. 2023年度科学技術研究費を費目別にみると、人件費が8兆8,782億円(全体に占める割合40.3%)https://www.dlri.co.jp/report/macro/400040.html 第一生命経済研究所
  4. 2023年度科学技術研究費のうち、自然科学分野に使用した研究費をその性格別にみると、基礎研究費が2兆9,519億円(研究費全体に占める割合14.4%)、応用研究費が4兆2,019億円(同20.5%)、開発研究費が13兆3,812億円(同65.2%)
  5. https://www.dlri.co.jp/report/macro/400040.html 第一生命経済研究所

2022年度

  1. 日本の研究開発費名目GDP比3.65% https://www.dlri.co.jp/report/macro/400040.html 第一生命経済研究所

2020年度

  1. 科学技術研究費19兆2365億円 統計でみる日本の科学技術研究 2021 年(令和3年)科学技術研究調査の結果から 総務省統計局 https://www.stat.go.jp/data/kagaku/kekka/pdf/03pamphlet.pdf  国内総生産(GDP)に対する研究費の比率3.59%
  2. 科学技術研究費1714億ドル https://www.stat.go.jp/data/kagaku/kekka/pdf/03pamphlet.pdf アメリカ合衆国、中国に次いで3位 注1)日本は、「大学等」の研究費のうち「人件費」について、文部科学省「大学等におけるフルタイム換算データに関する調査」から得られたフルタイム換算係数を用いて換算
  3. 2020年度の研究費(科学技術研究費)を性格別にみると、基礎研究費が全体の15.0%応用研究費が20.4%開発研究費が64.6% 研究の性格別の区分について ◇基礎研究 特別な応用、用途を直接に考慮することなく、仮説や理論を形成するため又は現象や観察可能な事実に関して新しい知識を得るために行われる理論的又は実験的研究をいいます。◇応用研究 特定の目標を定めて実用化の可能性を確かめる研究や既に実用化されている方法に関して、新たな応用方法を探索する研究をいいます。 ◇開発研究 基礎研究、応用研究及び実際の経験から得た知識を活用し、付加的な知識を創出して、新しい製品、サービス、システム、装置、材料、工程等の創出又は既存のこれらのものの改良をねらいとする研究をいいます。https://www.stat.go.jp/data/kagaku/kekka/pdf/03pamphlet.pdf
  4. 2021年3月31日現在の非営利団体・公的機関の研究関係従業者数は、7万4800人となっています。職種別にみると、研究者が3万8200人(対前年度比1.6%減)、研究補助者等が3万6600人 https://www.stat.go.jp/data/kagaku/kekka/pdf/03pamphlet.pdf (2011年度からの推移をみると、漸減の傾向
  5. 2020年度の大学等の研究費は、私立が1兆9853億円、国立が1兆4496億円、公立が2411億円となっています。前年度と比較すると、公立が2.8%増となっているのに対し、私立が2.2%減、国立が0.5%減 https://www.stat.go.jp/data/kagaku/kekka/pdf/03pamphlet.pdf
  6. 大学等における任期有り研究者の割合(2020年) https://www.nistep.go.jp/sti_indicator/2021/RM311_28.html 資料:総務省、「科学技術研究調査報告」

 

政治と科学

 

 

  1. “半導体のドン”甘利明・前議員が落選後に初激白、「半導体支援10兆円死守の舞台裏」と「自身の出処進退」 甘利明・元自民党幹事長(半導体戦略推進議員連盟名誉会長)インタビュー ダイヤモンド編集部 特集 製造業 半導体の覇者 2024.11.20 5:25 https://diamond.jp/articles/-/353792 選挙後すぐに、石破政権はAI(人工知能)・半導体産業に2030年度までの7年間で10兆円以上の公的支援を行う方針を示しました。
  2. 自民・甘利前幹事長に「裏金1億円」ネコババ疑惑…落選危機だった自身の選挙に“流用”か 公開日:2024/02/15 14:00 日刊ゲンダイDIGITAL   https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/336220#goog_rewarded
  3. 日本共産党の政策2022 参議院選挙政策58、学術、科学・技術(2022参院選/各分野の政策) https://www.jcp.or.jp/web_policy/2022/06/202207-bunya58.html 官邸主導の軍事・イノベーション偏重から、「学問の自由」を保障する学術、科学・技術振興策に転換します2022年6月 基礎研究は、目先の経済的利益につながらなくとも、科学、技術の全体が発展する根幹であり、ここにこそ国の十分な支援が必要です。基礎研究が枯れてしまえば、政府がいうイノベーション(新しい社会的価値や技術の創造)も望むことができません。 自民党政府は基礎研究を軽視し、目先の経済的利益につながる研究に集中投資するための「選択と集中」を推進してきました。科学技術基本法が制定された1995年以降、科学技術関係予算は、1.5倍になりましたが、増えたのは国が審査し、配分先を決める競争的資金です。予算に占める割合は6%から15%に2.5倍になりました。一方、公的研究機関の研究開発費は2000年度以降、19年度までに1,111億円削減され、国立大学の運営費交付金は04年の法人化後、約1,470億円を超えて削減されました。その結果、自然科学系の学術論文のうち注目度が高い上位10%の論文数の日本の順位は、20年前の4位から10位に後退し、研究力の低下に歯止めがかかりません。自民・公明政権は、こうした失政を改めるどころか、科学技術基本法を改定し、研究機関と大学を財界の求める「科学技術イノベーション政策」に総動員するための体制をつくり、研究のあり方をさらに大きく歪めてきました。
  4. 「チーム甘利」 大学ファンド私物化か 関係組織の要職占める 徹底調査と報告必要 しんぶん赤旗 2022年5月11日(水)  『文部科学教育通信』2019年11月11日号の「国立大学は『知識産業体』の自覚を」と題した甘利氏のインタビュー記事です。この中で甘利氏は、政権復帰後、政府の総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)の議員だった橋本和仁氏から、後に東大総長となる五神真氏を「この人を東大総長にしたいと思っている」「甘利大臣の大学改革にも興味を持っている」と紹介されたと証言。甘利氏が「あなたが総長になったら、私についてきてくれますか」と聞くと、五神氏が「その節には一緒にやります」と応じたとしています。五神氏は、実際に東大総長となり、「運営から経営へ」というキャッチフレーズのもとに国立大学初の大学債(200億円)を発行しました。こうした姿勢は「『運営から経営へ』などという国の方針を鸚鵡(おうむ)返しに唱えることが果たして『自立』だろうか」(駒込武氏編『「私物化」される国公立大学』)と批判されています。
  5. 甘利明氏インタヴュー(2019年11月雑誌掲載)における五神真・前東大総長の発言引用について 投稿日 2022年4月21日 投稿者 TANAKA Jun 自由民主党の国会議員・甘利明氏のインタヴュー(『文部科学教育通信』No.471 2019年11月11日号、聞き手はジャーナリスト・松本美奈氏)はネット上で「全文掲載中」と銘打って公開されている【リンク】。
  6. https://x.com/KomagomeT/status/1517017008260681728
  7. 駒込武氏編『「私物化」される国公立大学
  8. 首相トップの科学技術関連会議、集約で効率運営を 自民が提言 2018年5月25日 2:00 [会員限定記事] 日本経済新聞 https://www.nikkei.com/article/DGKKZO30909200U8A520C1PP8000/ 科学技術政策の強化に向け、自民党の行政改革推進本部甘利明本部長がまとめる提言案が24日、明らかになった。政府内の司令塔機能を強化するため、首相がトップを務める各種会議を集約する。総合科学技術・イノベーション会議IT総合戦略本部などを3年後をめどに統合して「イノベーション統合会議(議長・首相)」を新設するのが柱だ。

大学教職員の雇止め問題、任期付き教員の任期切れ問題

本来は雇用の安定を目的とした「労働契約法18条1項に基づく」無期雇用への転換ですが、それがむしろあだとなって、無期転換の権利が得られる直前に雇用の継続を打ち切られる、いわゆる「雇止め」がアカデミアの世界で当たり前に起こっています。大学事務の場合「5年」を過ぎると無期転換の権利が得られます。任期付き教員には、「労働契約法18条1項の特例である大学の教員の任期に関する法律7条1項」が適用され、無期転換の権利が得られるまでの年数は「5年」でなく「10年」になっています。研究者も同様に「科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律」によって、労働契約法で定めた5年ではなく10年とされています。

事務職員でも、教員でも、研究者でも、要するに無期転換の権利が発生する前に、クビを切られる(雇用契約の更新を行わない)ということが起こるのです。それが「雇止め」です。ただし、雇止めと言う言葉は、研究者や研究職の教員に対しては使われることはなくて、単に任期切れという言い方をするのが普通だと思っていたのですが、新聞記事を見ると、雇止めという言葉は研究者やPIに関しても使われていました。多くの研究者は任期が切れる前に次の職を探すという考え方をしているため、「雇止めされた」というよりも「任期が切れた」と認識していると思います。ずっと働けると期待していた場合に「雇止めされた」という感情が湧くのでしょう。気持ちがどうであれ、実態は同じです。

下の弁護士ドットコムの解説が非常にわかりやすくまとまっています。

  • 改正労働契約法18条1項:同法が施行された2013年4月以降に結ばれた契約を起算点として、契約期間が通算5年を超えると無期転換申込権が発生。
  • 労働者による無期転換の申し込みを使用者は断ることができない
  • 改正労働契約法の例外として「大学教員任期法」(大学の教員等の任期に関する法律) 「労働契約法の特例」として、有期雇用の大学教員については、無期転換申込権が発生するまでの期間を「5年」ではなく「10年」(同法7条)。「10年」を適用するには「多様な人材の確保が特に求められる教育研究組織の職に就けるとき」条件(同法4条)。具体的には「先端的、学際的又は総合的な教育研究であること」
  • 労働契約法の例外として、「科技イノベ活性化法」(科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律)では、研究者についても同じく“10年特例”を適用することを定めている。

「ベテラン教員の雇止め」大学で相次ぐ…約20年勤務も無情通告、「無期転換」はできないのか? 2024年06月14日 10時26分 弁護士ドットコムニュース https://www.bengo4.com/c_5/n_17651/

下のブログ記事もとても分かりやすい。

  1. 研究者の雇い止め問題をいちから解説 2025年1月27日 アカデミアノート

もともと有期であるということが雇用契約書に書かれていたのに、なぜ無期転換を期待するのか?に関して、自分も正直よくわからないところがあります。裁判でいったい何が論点、争点になるのでしょうか?下の解説を読んでなるほどと思いました。

雇止めが無効になるためには,労働契約法19条の要件を満たす必要があります。すなわち,第1の要件として,有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があること。第1の要件が満たされれば,第2の要件として,雇止めに客観的合理的理由がなく,社会通念上相当でない場合に,雇止めが無効になるのです。

大学の准教授に対する雇止め事件2020年1月8日 金沢合同法律事務所 https://kanazawagoudoulaw.com/tokuda_blog/202001088941.html

 

法律の改正が2013年だったため、5年後に無期転換できるかどうかという大問題が表面化したのは2018年でした。

  1. 国立大で多数の雇止め… 国立大で多数の雇止め問題 : 違法・脱法行為許さない運動が全国に拡大 (特集 どうする2018年問題)  雑誌 月刊労働組合 巻号 647号 2018年3月 記事  https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R000000004-I028879471 本文なし

事務系の場合が5年で、研究などの専門職の場合は10年後に無期転換の権利を得るので、2023年が、研究従事者にとっての正念場となりました。

研究者の雇止め問題は、研究者は流動的であるべきという考え方と、研究者にも普通の人間的な生活をする権利があるという考え方の2つが、せめぎあっているように思います。いつまでも短期契約を繰り返すだけだと、住む場所も一定しませんので、結婚して子供をもうけて安定した家庭をもつことが非常に難しくなります。実際、研究者同士が結婚した場合、夫婦がそれぞれの職を優先した結果ずっと別居している例が複数見られます。やはり研究者といえどもずっと流動的な環境を強いられるのは大変すぎます。

多くの研究プロジェクトが、時限付きの予算配分に依っているは、雇止めを生じさせている大きな要因です。人材の雇用財源が切れるのですから、それ以降の雇用はないわけです。最初からそれが分かっていてその職についたのに、なぜ無期雇用を要求できるのか?という論理がそこにあります。一番の問題は、有期雇用の職に就いていた人が、業績を挙げることにより無期雇用の職に就いてしかるべきなのに、そのような無期雇用の職が今の日本のアカデミアの中にはほとんど存在しないことです。そのため、いつまでも有期雇用の職を転々とするはめになってしまいます。教授や独立准教授といったPI(研究室主宰者)の職は、数十倍~数百倍の競争率であり、ほとんどの人はあぶれてしまいます。

 

理研の雇止め問題

2022 年 9 月 30 日に、理研経営陣は理研ホーム ページとマスコミに対して「理研の新しい人事施 策について」を公表した。そこには「通算契約期 間の上限(5/10 年の雇用上限)撤廃」が明記さ れていたが、「通算契約期間の上限」の実際の撤 廃は 2023 年 4 月からであり、2023 年 3 月の雇止 めは強行された。https://www.cc.mie-u.ac.jp/~admin-law/25so-gaku/yoko/E1.pdf

  1. 科学論文なら“不合格”判決に原告が憤るわけ 理研雇い止め訴訟 垂水友里香 社会 環境・科学 速報 科学・テクノロジー 毎日新聞 2025/1/23 05:30 https://mainichi.jp/articles/20250120/k00/00m/040/100000c 男性は既に控訴しており、日本を代表する研究機関を相手取った裁判の審理は控訴審に移る。 2011年に採用された男性は、1年の有期雇用契約を10回更新しながら、10年以上にわたって研究を続けてきた。乳がんの早期検出や手術に用いるがん蛍光マーカーの技術で成果を出し、理研で研究室を主宰する部長職のチームリーダーとなっていた。‥ 理研は16年に就業規則を変更し、有期雇用に10年の上限を設け、その起算点を13年とした。男性は10年の期限を迎える直前の23年3月末に雇い止めされた。
  2. 理研、雇い止め対応変遷 事実上の「無期転換封じ」に訴訟相次ぐ 毎日新聞 2024/12/20 13:19(最終更新 12/20 19:17)理化学研究所(本部・埼玉県和光市)から違法な雇い止めをされたとして、生命科学系の男性研究者(64)が地位の確認を求めた訴訟で、さいたま地裁(鈴木尚久裁判長)は20日、原告側の請求を退けた。
  3. 理研の雇い止め問題で露見、研究者の流動性を支えてきた人事制度のもろさ 2023年06月25日  「10年の雇用上限による雇い止めは97人。チーム解散による雇い止めが87人。合計184人が雇い止めに遭った」。理研労働組合の金井保之執行委員長はこう説明する。2023年3月末に任期満了を迎える予定だった380人の48%が理研を去った。そのうち126人は大学や企業などの仕事に就いた。一方、理研は425人のポストを新設し、196人が理研で新しいプロジェクトを担っている。
  4. 理研、雇い止め批判の回避狙うカラクリの実態 3月末のリストラ強行へ、迫るタイムリミット 奥田 貫 : 東洋経済 2023/03/23 6:00 https://toyokeizai.net/articles/-/661179 理研を訴えている研究者らは、訴訟の中で「APが終わった後も無期転換への申込権を行使すれば、理研で研究を続けられるのか」の説明を求めているが、理研は否定的だ。

東北大学の雇止め問題

  1. 経営法曹 巻号 220号 2024年6月 記事 国立大学法人東北大学… 国立大学法人東北大学(雇止め)事件 仙台高裁令和5年1月25日判決 有期労働契約について、その雇止めが、無期労働契約における解雇と同視することができるといえるためには、当該有期労働契約が、契約期間の満了ごとに当然更新を重ねてあたかも無期労働契約と異ならない状態で存在していたといえることを要するとした1審判断が維持された例 (年間重要判例 年間重要判例検討会(第20回)報告 : 令和5年下期(7~12月)発行の裁判例集登載分) 国立大学法人東北大学(雇止め)事件 仙台高裁令和5年1月25日判決 有期労働契約について、その雇止めが、無期労働契約における解雇と同視することができるといえるためには、当該有期労働契約が、契約期間の満了ごとに当然更新を重ねてあたかも無期労働契約と異ならない状態で存在していたといえることを要するとした1審判断が維持された例 (年間重要判例 年間重要判例検討会(第20回)報告 : 令和5年下期(7~12月)発行の裁判例集登載分) 国立国会図書館請求記号 Z2-832 国立国会図書館書誌ID 033615946 https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R000000004-I033615946

その他の大学の雇止め問題(教育職)

羽衣国際大

大学教員が無期転換を得るのは一律10年というわけではなく、5年か10年間の判断が大学に委ねられるようです。下の裁判の事例は、教育職に就いていた大学教員が5年過ぎたから無期転換をお願いしたのに、あなたの職は例外が適用されるので5年ではなく10年ですよ、だから今10年が経過する前にあなたの雇用の契約更新を行わないことに違法性はないですよという大学側の主張が通ったという話。

  1. 第336号 大学教員の無期転換権行使の有効性 ~大学の教員等の任期に関する特例法の不適用判断を覆した最高裁判決の意義~ ~~学校法人羽衣学園(羽衣国際大学)事件 (最高裁第一小法廷令和6年10月31日判決)※1~~ 文献番号 2025WLJCC001 明治大学 教授 野川 忍  https://www.westlawjapan.com/column-law/2025/250107/

 

 

アイカルディ症候群 Aicardi Syndrome

Aicardi Syndrome 101: Causes, Symptoms, and the Latest in Treatment Strategies Medical Centric チャンネル登録者数 58万人 (3:43)

Aicardi Syndrome Defeating Epilepsy Foundation チャンネル登録者数 6500人(8:29)

参考

  1. Professor Jean Aicardi (1926-2015) Jean Aicardi was arguably the greatest child neurologist of the modern era. His name will live on in the two separate conditions that he described, Aicardi syndrome and Aicardi-Goutières syndrome.  https://www.childneurologysociety.org/memoriam/professor-jean-aicardi/
  2.  Indian J Ophthalmol. 2009 May-Jun;57(3):234–236. doi: 10.4103/0301-4738.49403 Aicardi syndrome: The importance of an ophthalmologist in its diagnosis Parag K Shah 1,✉, V Narendran 1, N Kalpana 1 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC2683450/
  3. https://www.recentscientific.com/aicardi-syndrome-rare-case-report-review-literature
  4. https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0887899414006535

症例報告

  1. CASE REPORTS • Rev. Bras. Saude Mater. Infant. 18 (4) • Oct-Dec 2018 • https://doi.org/10.1590/1806-93042018000400009 Open-access Aicardi syndrome: a case report https://www.scielo.br/j/rbsmi/a/75GPy34TLtNVCNz46wpPMmM/
  2. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9750684/
  3. https://www.scielo.br/j/rbsmi/a/75GPy34TLtNVCNz46wpPMmM/?format=pdf&lang=en
  4. https://www.bioline.org.br/pdf?ni06026
  5. https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0027968423001001

報道

  1. 生後3カ月で国内に約100人しかいない難病と診断された長女。障害の可能性がある子を産むのをためらった母と家族の今【アイカルディ症候群】 2/11(火) 11:55 コメント124件 たまひよONLINE

 

大学事務職員の仕事、評価、昇進、モチベーションに関して

大学の事務の人と話をすると、特に何かを提案した場合のことですが、「前例がないので、できません。」とう言葉がしばしば返ってきます。「昨年と同様にやりましょう。」というのも良く耳にするフレーズです。前例がない新しいことをやらない限り、大学は改善していかないのではないかと、いつも素朴な疑問が生じてしまうのですが、実際のところどうなのでしょうか。

大学事務職員の仕事とはどのようなものであり、それが大学にどう評価されて昇進につながるのか、大学職員はどのようなモチベーションで日々仕事に励んでいるのか、そんなことが疑問として湧いてきました。

何もしないので失敗もしなかった人が昇進する組織なのでしょうか。それとも何かをやろうとして失敗しても、許される組織でしょうか。いまどき、正規雇用の常勤職員は少なくて、ほとんどの人は、非常勤の派遣やアルバイトです。ところが不思議なことに、派遣やアルバイトの人の方が仕事に対する情熱を感じさせることがしばしばあります。正規職員のほうが、淡々としています。この熱量の差も自分にとって謎の一つです。

年代や職階が上がるほど、規則や前例、理事会・教授会の決定に従って忠実に事務処理を行うことを重視する傾向が強ければ、組織に変化は起きにくい。

大学を強くする「大学経営改革」[90] 職員の貢献度を高めるための課題と方策 〜真の「協働」の実現に向けて〜 吉武博通 2020/11/09 リクルート進学総研 https://souken.shingakunet.com/higher/2020/11/90-ceb1.html

言われたことだけをやっていたら先がないという感覚で長いこと生きてきたので、言われたことしかやらない、言われていないことはやらない(勝手にやったら怒られるので)という価値観、仕事観を初めてしったときは、かなり新鮮でした。しかし、教員組織の下に事務組織が置かれているため、教員の指示なしで事務職員が勝手に動くということはあり得ません。

これから期待される理想的な大学職員像とはどのようなものなのでしょうか。

高度化・複雑化する課題に対応していく職員として一般的に求められる資質・能力には、例えば、コミュニケーション能力、戦略的な企画能力やマネジメント能力、複数の業務領域での知見(総務、財務、人事、企画、教務、研究、社会連携、生涯学習など)、大学問題に関する基礎的な知識・理解などが挙げられる。

事例1 学長からは、「生き残りがかかっているのに、戦略的な運営がしにくい。外部資金をどんどん集めるように。」と号令をかけられている。

職員の対応:①②③自分の大学がどのような財務構造になっているのか、調べてみる。④文部科学省等の説明会に行き、詳しい情報を得る。⑤心当たりの教員に外部資金への応募を勧める。支援する。⑥職員から提案して申請や学内改革までつなげる。

4.大学職員の役割~ただの「事務」から一歩踏み出す~ https://www.ynu.ac.jp/about/project/manabi/images/28/pdf/01_1_PPT_Satomi.pdf

上の事例を見ると、これはまさに今はやりのリサーチ・アドミニストレータ-(URA)に求められている役割と重なります。職務が完全にオーバーラップしているんですね。

  1. 大学職員が読むべき10冊 20 タチバナシ タチバナシ 2023年1月4日 19:31 https://note.com/brownhorse/n/n0c06583e4201#e65d11ff-21c8-4baf-9bc3-f42c9ca7e027
  2. 職位ごとの人材像と求められる能力 https://www.nara-ni.ac.jp/about/data/policy/jimujinnzaiikuseihousin.pdf
  3. 事務改革アクションプラン 平成19年3月 豊橋技術科学大学
  4. https://www.tut.ac.jp/develop/actionplan/h19/070329.pdf
  5. 大学事務職員大改造論 -職員が日本の大学を底上げする: 英国・ヨーロッパにおける職員研修を体験して- ロンドン研究連絡センター 松村 彩子 https://www.jsps.org/publications/files/lon_matsumura.pdf
  6. あらためて考えてみる 大学で働くということ ー真の教職協働の実現に向けてー 地域連携推進センター 蜂屋大八  2017 https://tandai.or.jp/manage/wp-content/uploads/%E6%95%99%E5%8B%99/2017kyomu_kenshu_kouen.pdf

日本の科学行政・科学技術政策

日本の科学研究に対する助成事業(研究費の分配)はどのような考えのもとに企画、実施されているのかなどを俯瞰できるように、主要な出来事をまとめておきます。

1949年 日本学術会議 発足

1959年 科学技術会議(1959 ~ 2001年) が内閣総理大臣の諮問機関として旧総理府に設置

1973 “Management: Tasks, Responsibilities, Practice” Peter F. Drucker stated: “Concentration is the key to economic results. No other principle of effectiveness is violated as constantly today as the basic principle of concentration.” In 1967, The Effective Executive Peter Drucker wrote that effective executives must concentrate on a few major areas where they can achieve significant results, warning against dispersing effort too widely. *日本の科学技術予算でよく言われる「選択と集中」はドラッカーの言葉そのものではない。

1980年 米国バイドール法成立8政府資金による研究開発で得た特許を大学や企業に帰属できるようになった)

1990年 バブル崩壊(1989年が株価最高額)

1995年(平成7年)11月15日 科学技術基本法 が施行(尾身幸次氏が制定に尽力)

1996年 第1次科学技術基本計画(1996~2000)

2001年度 第2期科学技術 基本計画(2001 ~ 05年度)*「選択と集中」路線の始まり、特定4 分野への重点投資 注)科学技術予算全体を底上げされたわけではないため、選択されなかった分野や基盤的経費の予算削減をもたらした(国立大学運営費交付金の削減など)。https://www.jstage.jst.go.jp/article/tits/26/5/26_5_63/_pdf/-char/ja *・競争的資金の倍増と間接経費(30%)の導入(間接経費の制度は、米国がお手本)(科学技術庁に対して間接費の導入と引き換えに大蔵省は国立大学の基盤経費の全廃を要求したそう。(参考:『誰が科学を殺すのか』毎日新聞)

2001年 総合科学技術会議議(2001 ~ 2014年)(前身は科学技術会議)中央省庁再編に伴い新設された内閣府に設置

2001年 経産省「大学発ベンチャー1000社計画」(大学などの研究成果を事業化する目的)

2002年 知的財産戦略大綱(知的財産戦略会議)で日本版バイドール法が整備(「国・特殊法人等の委託による研究開発の成果たる知的財産権を受託者に帰属させることができる産業活力再生特別措置法第30条(いわゆる日本版バイ・ドール制度)を、特別な事情のあるものを除き、全ての委託研究開発予算について、2002年度中に適用する。」旨決定)*アメリカに遅れること約20年!

2003年(平成15年)7月 知的財産の創造、保護及び活用に関する推進計画(知的財産戦略本部決定)

2004年(平成16年)5月 知的財産推進計画2004(知的財産戦略本部決定)「日本版バイ・ドール制度の利用を徹底させる」旨決定

2004年 国立大学の法人化、以降、国立大学法人運営費交付金が年1%ずつ削減

2006年(平成18年)9月26日 ~ 第1次安倍内閣~ 2007年(平成19年)9月26日

2008年 リーマン・ショック(9月にアメリカの有力投資銀行リーマンブラザーズが破綻し世界的に株価下落、金融不安(危機)、同時不況)

2009年4月 内閣府 最先端研究開発支援プログラム(FIRST)の制度を創設 Funding Program for World-Leading Innovative R&D on Science and Technology https://www8.cao.go.jp/cstp/sentan/about.html

2009年8月~民主党政権時代~2012年12月

2009年9月4日 第84回総合科学技術会議 30課題を「最先端研究開発支援プログラム」(FIRST)の中心研究者及び研究課題を決定 1000億円を30課題に配分することに

2009年11月13日 事業仕分け「2位じゃだめなんですか」(蓮舫)

2010年(平成22年)3月9日 「最先端研究開発支援プログラム」(FIRST) 1000億円を配分する30課題の中心研究者30名決定

2010年3月 三菱化学生命科学研究所 解散(記事:相模原町田経済新聞2008.04.18

2011年 第4期科学技術基本計画(2011~2015)

2012年12月26日 安倍内閣(第2次)~ 2020年(令和2年)9月16日

2013年 内閣府設置法の一部を改正する法律(平成26年法律第31号)*「科学技術基本計画の策定及び推進に関する事務」、「科学技術に関する関係行政機関の経費の見積りの方針の調整に関する事務」を文部科学省から内閣府に移管 *内閣府に「研究開発の成果の実用化によるイノベーションの創出の促進を図るための環境の総合的な整備に関する施策の推進に関する事務」を追加、内閣府において「戦略的イノベーション創造プログラム」を執行

2013年(平成26年)5月23日 総理大臣官邸において第1回 総合科学技術・イノベーション会議(旧称は総合科学技術会議)CSTICouncil for Science, Technology and Innovation) 戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)について、10課題への予算配分などを決定 (*内閣府設置法改正に伴い、それまで予算の配分権は持っていなかったのが一転、内閣府は独自予算を獲得し、CSTIが自ら運営するトップダウン型の5カ年の研究開発プロジェクト「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP、11課題、総額1580億円)」と「革新的研究開発推進プログラム(ImPACT、16課題、総額550億円)」を開始。CSTIは、客観的な立場で予算の査定をするそれまでの立場から、自ら予算を配分し、大型プロジェクトを運営する存在に転換した。https://www.jstage.jst.go.jp/article/tits/26/5/26_5_63/_pdf/-char/ja

2014年 内閣府設置法改正 総合科学技術・イノベーション会議CSTI(2014~現在)(総合科学技術会議を改組)

2014年 内閣府 戦略的イノベーション創造プログラム(SIP) CSTIが選定した研究テーマ11課題に対して5か年で総額1580億円を助成

2015年3月 大阪バイオサイエンス研究所 解散(記事:大阪府医師会 昭和62年の設立当時、大島靖・大阪市長、佐治敬三・サントリー社長、山村雄一・大阪大学総長、早石修・初代所長が諮問委員として関与した。経済活況期という時代背景の下、資金的余裕が大きな推進力となった)

2016年 第5期科学技術基本計画 『政府研究開発投資について、対GDP比の1%にすることを目指す

2017年12月10日 筑波大学で構内の建物の連絡通路の屋根が崩落NEWSつくば 42年前に建設、老朽化が原因か

2018年(平成30年)「統合イノベーション戦略」 6月15日閣議決定 イノベーションに関連が深い司令塔会議である総合科学技術・イノベーション会議、デジタル社会推進会議、知的財産戦略本部、健康・医療戦略推進本部、宇宙開発戦略本部及び総合海洋政策本部並びに地理空間情報活用推進会議について、横断的かつ実質的な調整を図るとともに、同戦略を推進するため、内閣に統合イノベーション戦略推進会議(以下「会議」という。)を設置 https://www8.cao.go.jp/cstp/tougosenryaku/kaigi.html

2018年度 内閣府 第2期戦略的イノベーション創造プログラム(SIP) 12人のプログラムディレクターPDを2018年3月公募開始(公募期間2週間)、4月12日PD決定(応募者15名)*補正予算で急遽継続が決まったため事前に内定候補を決めていたことが毎日新聞にやらせ公募としてスクープされた。番狂わせ:中村祐輔氏「AIホスピタル」 戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第2期推進委員会

2020年度 日本の科学技術予算(当初予算)は4.4兆円対GDP比率0.70%。(https://www.nistep.go.jp/sti_indicator/2020/RM295_12.html)(?これは文教費も込みの総額か)

2020年度(令和2年度)~高等教育無償化「高等教育の修学支援新制度」(文科省)、「私立高等学校授業料の実質無償化」(文科省)(低所得世帯に対して経済的負担を軽減するため)

2023年度(令和5年度)「こども未来戦略」(閣議決定)令和7年度から、多子世帯の学生等について、大学等の授業料・入学金を無償とする

2024年度(令和6年度)一般会計の令和6年度の文教及び科学振興費は、5兆4,716億円(令和5年度当初予算比+558億円、+1.0%)を計上している。このうち、文教関係費は4兆624億円、科学技術振興費は1兆4,092億円である。また、一般会計の文部科学省所管予算は、5兆3,384億円(令和5年度当初予算比+443億円、+0.8%)を計上している。このうち、文教関係費は4兆563億円、科学技術振興費は8,947億円、その他が3,875億円である ・ 私学助成について、経営改革や連携・統合に取り組む大学への支援を強化することで、予算を重点化するとともに、令和8年度からは、定員充足率や経営状況等が基準に満たない大学に「経営改革計画」の策定を求め、私学助成を適正化(財務省 https://www.mof.go.jp/public_relations/finance/202403/202403f.html)

2025年度 予算案 科学技術関係(科学技術振興費1 兆4221億円(前年度当初に比べ0.9%増)

用語

  1. 当初予算:本予算国の年間予算として当初に成立した予算。別名当初予算。https://www.mof.go.jp/policy/budget/reference/statistics/term.htm
  2. 補正予算:予算作成後の事情の変更によって、その予算に不足を生じた場合、また予算の内容を変える必要が生じた場合に、出来上がった予算を変更する予算。 https://www.mof.go.jp/policy/budget/reference/statistics/term.htm

参考

  1. 各年度の政府予算案(科学技術関係予算)の概要 内閣府 https://www8.cao.go.jp/cstp/budget/index2.html
  2. 第2期科学技術基本計画 https://www8.cao.go.jp/cstp/kihonkeikaku/honbun.html (b) 間接経費 競争的資金の拡大によって、直接に研究に使われる経費は増加してきた。競争的資金をより効果的・効率的に活用するために、研究の実施に伴う研究機関の管理等に必要な経費を手当する必要がある。このため、競争的資金を獲得した研究者の属する研究機関に対して、研究費に対する一定比率の間接経費を配分する。 間接経費の比率については、米国における例等を参考とし、目安としては当面30%程度とする。この比率については、実施状況を見ながら必要に応じ見直しを図る。 間接経費は、競争的資金を獲得した研究者の研究開発環境の改善や研究機関全体の機能の向上に活用する。複数の競争的資金を獲得した研究機関は、それに係る間接経費をまとめて、効率的かつ柔軟に使用する。こうした間接経費の運用を行うことで、研究機関間の競争を促し、研究の質を高める。ただし、当該機関における間接経費の使途については、透明性が保たれるよう使用結果を競争的資金を配分する機関に報告する。 国立大学等については、国立学校特別会計の中に競争的資金を獲得した大学に間接経費が還元される仕組みを整える。 (c) 基盤的経費の取扱い 競争的資金の倍増を図っていく中で、教育研究基盤校費及び研究員当積算庁費のいわゆる基盤的経費については、競争的な研究開発環境の創出に寄与すべきとの観点から、その在り方を検討する。その際、 教育研究基盤校費については、教育を推進する経費であるとともに大学の運営を支えるために必要な経費としての性格を有すること 研究員当積算庁費については、研究機関の行政上の業務遂行に必要な研究費としての性格を有することに留意する。

 

大学教員の任期制問題

 

 

  1. 大学の教員等の任期に関する法律(平成9年6月13日法律第82号)https://hourei.ndl.go.jp/simple/detail?lawId=0000083194&current=-1
  2. 【弁護士が解説】大学の任期付教員と研究者の無期転換 ―10年ルールの適用範囲 労働時間 時間外上限規制 残業 労務リスク 公開日時:2023.02.10 / 更新日時:2023.08.29 https://www.tis.amano.co.jp/hr_news/3194/
  3. 資料大学の教員等の任期に関する法律をめぐる国会議事録の整理阿部泰隆=位田央 http://poll.ac-net.org/2/shiryou/ninkisei-giji.html#intro
  4. 大学における教員「任期制」の背景に関する日米比較考 2005年 https://rihe-publications.hiroshima-u.ac.jp/search/attachfile/63719.pdf

科学技術基本計画 Science and Technology Basic Plan あらため 科学技術・イノベーション基本計画

第7期科学技術基本計画(2026~2030年度)

  1. 第7期科学技術・イノベーション基本計画に向けた論点 参考資料令和6年7月31日版 https://www.mext.go.jp/content/20240730-mxt_sinkou01-000037287_04.pdf

 

第6期科学技術基本計画(2021~2025年度)

Society 5.0という言葉が登場したのがこの時期でした。

Society 5.0, “a human-centered society that balances economic advancement with the resolution of social problems by a system that highly integrates cyberspace4 and physical space” set forth in the Fifth Science and Technology Basic Plan https://www8.cao.go.jp/cstp/english/sti_basic_plan.pdf

  1. Science, Technology, and Innovation Basic Plan [Tentative Translation] March 26, 2021 Government of Japan  https://www8.cao.go.jp/cstp/english/sti_basic_plan.pdf

 

第5期科学技術基本計画(2016~2020年度)

 

第4期科学技術基本計画(2011~2015年度)

1.基本方針
(1)「科学技術イノベーション政策」の一体的展開
(2)「人材とそれを支える組織の役割」の一層重視
(3)「社会とともに創り進める政策」の実現
2.分野別の重点化から課題達成型の
重点化へ (1)「科学技術イノベーション政策」の一体的展開
(2)「人材とそれを支える組織の役割」の一層重視
(3)「社会とともに創り進める政策」の実現
政府研究開発投資 新成長戦略の2020年度までに官民合わせた研究開発投資を
GDP比4%以上にするとの拡充目標、政府負担研究費の割合が諸外
国に比して低水準であること、諸外国が拡充を図っていること等を総合的
に勘案し、官民合わせた研究開発投資を対GDP比4%以上にするとの
目標に加え、政府研究開発投資を対GDP比の1%にすることを目指す
その場合、計画期間中の総額規模を
25兆円 とすることが必要(GDP名目成長率等を前提に試算)
3.基礎研究と人材育成の強化
4. PDCAサイクルの確立やアクションプラン
等の改革の徹底

https://www8.cao.go.jp/cstp/tyousakai/kihon5/1kai/siryo6-2-18.pdf

研究支援者を充実させるという計画が盛り込まれたのが目新しいと思います。

我が国の研究開発力の抜本的強化のための基本方針(平成 25 年 4 月 22 日 科学 技術・学術審議会決定)抜粋 2.研究の質及び生産性の向上、新規性の高い研究の推進 (4)研究に打ち込める環境の整備(研究支援者等の育成、確保) 1. 研究者が本来の活動に集中して、優れた研究成果を上げ、またそれを最大限 活用するためには、国際水準を目指した研究環境の改善、特に研究者ととも に車の両輪として研究を推進する高度な専門性を有したリサーチ・アドミニスト レーターの存在が不可欠である。研究活動の活性化や、研究開発マネジメント (企画立案、研究者間や分野間のネットワーキング等)の強化による研究推進 体制の充実強化を図るため、専門性の高い人材の育成、確保、かつ、安定的 な職種としての定着の促進 2. 研究者が高度な研究を実施する上で不可欠な環境整備、研究機器の維持や 整備等のため、研究基盤を支える人材の育成、獲得、確保のための取組の促 進や、外部連携も含めたこれらの人材のキャリアパスの確立 https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu16/005/shiryo/__icsFiles/afieldfile/2013/11/15/1339959_5_1.pdf

第3期科学技術基本計画(2006~2010年度)

1.基本理念
2つの基本姿勢((1)社会・国民の支持と成果還元、(2)人材育成と競争的
環境:モノから人へ)と6つの大目標の設定 (1飛躍知の発見・発明、2
科学技術の限界突破、3.環境と経済の両立、4イノベーター日本、5生涯はつらつ
生活、6安全が誇りとなる国)
2.科学技術の戦略的重点化
・基礎研究の推進
・政策課題対応型研究開発における重点化
⇒「重点推進4分野」に優先的に資源配分
ライフサイエンス、情報通信、環境、ナノテクノロジー・材料
「推進4分野」に適切に資源配分、
エネルギー、ものづくり技術、社会基盤 、フロンティア
8分野で「分野別推進戦略」を策定、
重要な研究開発課題を選定、戦略目標の明確化、
「戦略重点科学技術」の選択・集中
(「国家基幹技術」を精選、厳正な評価を実施)
政府研究開発投資
GDP比率で欧米主要国の水準を確保するとし
計画期間内における科学技術関係経費の総額の
規模25兆円(実績21.7兆円)
3.科学技術システム改革

https://www8.cao.go.jp/cstp/tyousakai/kihon5/1kai/siryo6-2-18.pdf

選択と集中がどんどん進められていく状況です。

 

第2期科学技術基本計画(2001~2005年度)

1. 基本理念
・新しい知の創造
・知による活力の創出
・知による豊かな社会の創生
2. 政策の柱
・戦略的重点化
– 基礎研究の推進
– 重点分野の設定
ライフサイエンス、情報通信、環境、ナノテクノロジー・材料
エネルギー、製造技術分野、社会基盤分野 、フロンティア
・科学技術システム改革
– 競争的資金倍増
– 産学間連携の強化 等
欧米主要国の動向を意識し、かつ第1期基本計画
の下での科学技術振興の努力を継続していくとの観
点から、計画期間内における科学技術関係経費の
総額の規模24兆円
(実績21.1兆円)

https://www8.cao.go.jp/cstp/tyousakai/kihon5/1kai/siryo6-2-18.pdf

第2期科学技術基本計画では、選択と集中が強化され、競争的資金の割合が増やされた結果、富める者がますます富み、そうでないものが研究力を失い、資金獲得競争にも敗れて、研究が空洞化したように思います。そもそもいくら業績を挙げた研究者といえども一人で数億円~数十億円もの巨額な予算を有効に活用できるものではなく、研究に投資した金額に見合った研究成果は出ていないと思います。薄く広く研究費を分配して革新的な研究の芽がどこかで出ることを期待したほうがいいのです。SNSなどを見ると研究者の間ではそのような意見が多いと思いますが、国は選択と集中を続けており、多くの研究者が研究費不足にあえいでいます。

 

第1期科学技術基本計画(1995~2000年度)

1.政府研究開発投資を拡充 政府研究開発投資について、21世紀初頭に対GDP比率で欧米主要国並みに引き上げるとの考え方の下、計画期間内における科学技術関係経費の総額の規模17兆円(実績17.6兆円)
2.新たな研究開発システムの構築のため制度改革等を推進
競争的研究資金の拡充
ポストドクター1万人計画
産学官の人的交流の促進
・評価の実施等

https://www8.cao.go.jp/cstp/tyousakai/kihon5/1kai/siryo6-2-18.pdf

悪名高い「ポスドク1万人計画」は、第1期科学技術基本計画に盛り込まれて、実行されたものでした。企業によるポスドクの雇用は進まず、かといってアカデミアには職が全くなく、多くのポスドクが行き場を失って高齢になるまでポスドクを繰り返し、ますます定職に就くことがかなわなくなるという惨憺たる状況を生み出してしまったものです。

 

 

参考

  1. https://www8.cao.go.jp/cstp/tyousakai/kihon5/1kai/siryo6-2-18.pdf