質問:弁理士受験ノウハウ&体験の本(ちょっと古め)を見てたら吉藤 幸朔 『特許法概説』が、弁理士試験を受験する人の「基本書」として挙げられていたんだけど、こんな古い本を今でも読むべきなの?特許法は、改正につぐ改正があったけど?
- 第6版 1982/7/1
- 第10版 1994/11/1
Gemini:結論から申し上げますと、弁理士試験の「受験対策」として、今その本(吉藤『特許法概説』)をメインに据えて読むことは、絶対にお勧めしません。おっしゃる通り、特許法は「改正の歴史」そのものであり、1982年の法律知識で現在の試験に臨むのは、「地図を持たずに登山する」よりも危険(古い地図を信じて遭難するリスクがある)だからです。なぜかつては「バイブル」と呼ばれ、今は「取り扱い注意」なのか、その理由と現在の最適解を整理します。
1. なぜ「受験用」としては危険なのか
最大の理由は、ご懸念の通り「法改正による情報の陳腐化」です。
1982年以降、特許法は根本的な部分で何度も大改正されています。吉藤先生の本には、現在の試験で最重要となる以下の条文や概念が存在しない、あるいは全く内容が異なります。
- 特許法104条の3(特許無効の抗弁):先ほどの「特許侵害訴訟」の話題で触れたこの条文は、2004年の改正で導入されたものです(キルビー判決を受けて)。吉藤本には載っていません。
- 職務発明(35条):企業の知財戦略の要ですが、何度も改正されており、当時の解釈とは全く異なります。
- 特許異議申立制度:廃止されたり復活したりしており、手続の流れが当時とは別物です。
- 国際的な調和(TRIPS協定など):1994年のTRIPS協定以降の国際的なルールや、存続期間の変更などが反映されていません。
リスク:
「今はもう存在しない条文」や「今は逆の結論になる判例」を正しいと誤認して覚えてしまう危険性が極めて高いです。
2. それでもなぜ「名著」として名前が挙がるのか
吉藤幸朔先生は、特許庁の審査・審判の実務に精通し、法改正にも携わったレジェンドです。
この本がすごいのは、単なる解説ではなく**「法の趣旨(なぜその条文があるのか)」**が、これ以上ないほど深く、論理的に書かれている点です。
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「趣旨(青本)」の原液: 現在の予備校テキストや基本書に書かれている「趣旨」の説明の多くは、元をたどれば吉藤先生の考え方がベースになっています。
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実務家・学者の教養: ベテランの弁理士や研究者が、「法の根底にある思想」を確認するために読み返す本としては、今でも一級品です。
3. 現在の受験生はどうすべきか
「最新の法律に対応した基本書」または「予備校テキスト」を使用してください。
もし、学術的な興味ではなく「弁理士試験合格」が最優先であれば、以下の基準で選ぶべきです。
現在の「スタンダード」とされる基本書(例)
吉藤本の代わりに、現在多くの受験生や実務家が参照しているのは以下のような書籍です(必ず最新版を選んでください)。
- 中山 信弘『特許法』(弘文堂):現在の学術的な権威です。非常に分厚いですが、法解釈の深さは吉藤本に匹敵します。ただし、初学者には難解すぎる嫌いがあります。
- 高林 龍『標準特許法』(有斐閣):判例を重視しており、実戦的です。
- 島並 良 他『特許法入門』(有斐閣):「入門」とありますが、レベルは高く、論理的で読みやすいです。受験生にも人気があります。
- 予備校のテキスト(LEC、TACなど):合格だけを目指すなら、これが最強です。学者の本は「自説(通説ではない説)」が含まれることがありますが、予備校本は「試験に出る通説・判例」に絞って、最新の改正を完全に反映しているからです。
まとめ:吉藤本との付き合い方
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試験勉強用: 買わなくていいです(読まなくていいです)。 混乱の元です。
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合格後: 実務家になってから、「特許法の歴史的背景を知りたい」「条文の深い意味を味わいたい」と思った時に、古本で手に入れて、今の法律との違いを楽しみながら読むのが正解です。
特許法概説 第13版 1998/12/1 吉藤 幸朔, 熊谷 健一 著は?
- 特許法概説 第11版 1996/5/1 吉藤 幸朔, 熊谷 健一 著
- 特許法概説 第13版 1998/12/1 吉藤 幸朔, 熊谷 健一 著
Gemini:結論から申し上げます。「10版(1994年)よりは『だいぶマシ』ですが、今の実務や試験に使うには『まだ全然足りない(致命的な穴がある)』」という評価になります。1994年版と比べれば、非常に大きな進化(特に均等論)が含まれていますが、そのわずか2年後に起きる「特許法史上最大の革命(キルビー判決)」がまだ載っていないからです。この「13版(1998年)」が立っている歴史的な立ち位置を整理します。
✅ 13版(1998年)で「アップデートされた」重要事項
この版は、90年代後半の激動のいくつかをカバーしています。10版との決定的な違いはここです。
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「均等論」が入った(超重要)
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状況: 1998年2月の最高裁「ボールスプライン事件」判決を受けて、その年の12月に出版されています。
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変化: それまで「特許は文言通り」が原則でしたが、「形が違っても特許侵害になり得る(均等論)」という最高裁判例が確立されました。この解説が載っているのは大きいです。
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特許の寿命(存続期間)が正しくなっている
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変化: 1995年改正に対応しており、「出願から20年」という現在のルールになっています(10版はここが古かった)。
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❌ 13版(1998年)でも「まだ載っていない」致命的な事項
ここが「全然足りない」と判断せざるを得ない理由です。この本の出版直後(2000年代以降)に、現代特許法の骨格を作る大事件が立て続けに起きています。
1. 「キルビー判決」と「104条の3」がない(最大のリスク)
これがないと、現在の特許侵害訴訟の話が全く通じません。
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何が起きたか: 2000年(平成12年)に最高裁で「キルビー事件判決」が出され、2004年に法改正(104条の3)されました。
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影響: 「裁判所でも特許の無効を主張できる(権利行使制限の抗弁)」という、現在の特許係争のメインウェポンが、1998年の本には影も形もありません。「無効審判を待たなきゃいけない」という古い常識のまま止まっています。
2. 「進歩性」の判断基準が古い
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何が起きたか: 2000年代以降、知財高裁の設立とともに「進歩性」の判断ロジック(動機づけ、阻害要因など)が非常に精緻化されました。
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影響: 昔の「なんとなく容易」という感覚的な記述とは、現在の審査基準や判決のロジックはかなり異なります。
3. 「職務発明(35条)」が古いまま
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何が起きたか: 青色LED訴訟(2000年代前半)を経て、条文がガラッと変わりました。
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影響: 企業知財の現場で最も重要な「予約承継」や「相当の利益」の話が、この本では旧法のままです。
4. その他、21世紀の改正すべて
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知財高裁の設置(2005年)
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異議申立制度の復活(2015年)
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プロダクト・バイ・プロセス・クレームの最高裁判決(2015年)
結論:どう使うべきか?
「歴史的名著として本棚に飾るか、パラパラと『均等論』の項目だけ読む」 のが精一杯の使い道です。
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10版(1994) = ガラケー以前の「ショルダーフォン」時代の解説書
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13版(1998) = インターネット黎明期の「iモード」時代の解説書
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現在 = 「スマートフォン」時代の法律
というくらいの差があります。「iモード」の本でスマホの使い方は学べないのと同じで、13版であっても、今の学習用テキストとしてはおすすめできません。
もし「吉藤先生のような、重厚で学術的な本で勉強したい」という意図であれば、現在なら以下のような本が後継的ポジションにあります。
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『特許法』(高林龍 著)
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『特許法』(茶園成樹 著)
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『知的財産法』(中山信弘 著)
これらは現代の法改正や判例を反映しつつ、理論面も深く解説しています。実用を兼ねるなら、こちらへの乗り換えを強くおすすめします。
質問:「ショルダーフォン」って何?
Gemini:「ショルダーフォン」とは、今のスマートフォンの**「ひいおじいちゃん」**にあたる、日本初の「持ち運べる携帯電話」のことです。若い世代の方は、お笑い芸人の平野ノラさんが「しもしも~?」と言いながら肩にかけている、あの巨大な電話をイメージしていただくと分かりやすいです!具体的な特徴は以下の通りです。
☎️ ショルダーホン(1985年発売)の衝撃スペック
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デカくて重い!
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重さは約3kgもありました(今のスマホの約15〜20倍)。
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カバンのような本体(バッテリーと無線機)に受話器がついていて、その名の通りショルダーストラップで肩から担いで持ち運んでいました。
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もともとは「自動車電話」を車から降ろして使えるように改良したものでした。
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超高級品!
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保証金だけで20万円、基本料金も数万円。
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当時のビジネスマンでも、一部の経営者やエリートしか持てない**「ステータスの象徴」**でした。
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機能は「電話」だけ!
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もちろんメールもネットもカメラもありません。通話のみです。
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📚 なぜその例えを使ったか?
私が、1994年の『特許法概説(第10版)』を「ショルダーフォンの時代の解説書」と表現したのは、それくらいの「技術と常識の隔たり」があることをお伝えしたかったからです。
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ショルダーフォン (1985) → 今のスマホ (2025) (重さ3kgで通話のみ → 手のひらサイズでAIも使える)
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吉藤先生の第10版 (1994) → 今の特許法 (2025) (キルビー判決前・均等論なし → 知財高裁あり・世界標準ルール)
もし今、あなたが最新のiPhoneを使いたいのに、手元に「ショルダーフォンの取扱説明書」しかなかったら、「電源の入れ方」すら違って役に立ちませんよね?1994年の本で今の特許法を勉強するのは、それと同じくらい「土台の仕組みが変わってしまっている」ということを強調したかったのです。