特105 書類提出命令

プロンプト:特104条、104条の2, の3,の4,105条、の2,の3,の4,の5,の6,の7の8,の9,の10,の11,の12,105条、105条の2,の3,106条、196条、196条の2,201条、200条の3 とエレメンツの教科書の説明が続くんだけど、順にわかりやすく説明して。

Gemini:その範囲は、一言で言うと**「裁判での殴り合い(訴訟手続)」「ペナルティ(罰則)」**のゾーンです。ここからは**「実際に裁判になったら、どうやって証拠を出させたり、秘密を守ったりするのか?」**という、非常にドラマチックな場面です。スーッと入ってくるように、4つの場面(トピック)に分けて解説しますね。


第1幕:立証のハードルを下げる工夫

(104条、104条の2)

裁判では本来、訴えた側(原告)がすべて証明しないといけません。でも、特許の場合、相手の工場の中なんて見えませんよね?そこで、原告を助けるルールがあります。

104条:生産方法の推定

(生産方法の推定)
第百四条 物を生産する方法の発明について特許がされている場合において、その物が特許出願前に日本国内において公然知られた物でないときは、その物と同一の物は、その方法により生産したものと推定する。

  • 「ブラックボックスの中身は、同じとみなす!」

  • 状況: あなたが「新しい薬の作り方(製法特許)」を持っています。相手も「同じ成分の薬」を売っています。でも、どうやって作ったか(工場の中)は秘密で分かりません。

  • ルール: 「物が同じなら、その作り方もあなたの特許と同じ方法で作ったとみなすよ(推定するよ)」

  • 効果: 相手が「いやいや、違う方法で作ったんです!」と証明しない限り、あなたの勝ちになります。

104条の2:具体的態様の明示義務

(具体的態様の明示義務)
第百四条の二 特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟において、特許権者又は専用実施権者が侵害の行為を組成したものとして主張する物又は方法の具体的態様を否認するときは、相手方は、自己の行為の具体的態様を明らかにしなければならない。ただし、相手方において明らかにすることができない相当の理由があるときは、この限りでない。

  • 「『否認』するなら、自分の手の内を見せろ!」

  • 状況: あなたが「相手の装置は、私の特許(A+B+C)を侵害してる!」と訴えました。

  • 相手: 「違います(否認)。侵害してません」

  • あなた: 「じゃあ、どういう構成なの?」

  • 相手: 「それは企業秘密なんで言えません~」

  • ルール: これを禁止します。相手が「侵害していない」と主張するなら、「じゃあ具体的にどういう装置なのか(具体的態様)」を明らかにしなければなりません。ただの「やってない」は通用しません。


第2幕:最強の返し技「無効の抗弁」

(104条の3、104条の4)

ここは超重要です。「キルビー判決」という有名な最高裁判決から生まれたルールです。

104条の3:特許権者の権利行使の制限(無効の抗弁)

(特許権者等の権利行使の制限)
第百四条の三 特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟において、当該特許が特許無効審判により又は当該特許権の存続期間の延長登録が延長登録無効審判により無効にされるべきものと認められるときは、特許権者又は専用実施権者は、相手方に対しその権利を行使することができない。

  • 「お前の刀(特許)、ボロボロだから切れないよ!」

  • 状況: あなたが「侵害だ!」と訴えました。

  • 相手: 「いや、そもそもあなたの特許、昔からある技術じゃないですか? 本来なら特許庁で拒絶されるべき『無効』な特許ですよね?」

  • ルール: もしその特許が「無効にされるべきもの(ミスで登録されたもの)」だとわかったら、裁判所は「権利行使(侵害請求)は認めない」と判断します。

  • 意味: 特許庁でわざわざ「無効審判」をして特許を消してから出直さなくても、侵害訴訟の中で「その特許は無効だ!」と反撃できるようになりました。

104条の4:訂正審判等との関係

(主張の制限)
第百四条の四 特許権若しくは専用実施権の侵害又は第六十五条第一項若しくは第百八十四条の十第一項に規定する補償金の支払の請求に係る訴訟の終局判決が確定した後に、次に掲げる決定又は審決が確定したときは、当該訴訟の当事者であつた者は、当該終局判決に対する再審の訴え(当該訴訟を本案とする仮差押命令事件の債権者に対する損害賠償の請求を目的とする訴え並びに当該訴訟を本案とする仮処分命令事件の債権者に対する損害賠償及び不当利得返還の請求を目的とする訴えを含む。)において、当該決定又は審決が確定したことを主張することができない。
一 当該特許を取り消すべき旨の決定又は無効にすべき旨の審決
二 当該特許権の存続期間の延長登録を無効にすべき旨の審決
三 当該特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の訂正をすべき旨の決定又は審決であつて政令で定めるもの

  • 「裁判引き延ばし作戦は禁止!」

  • 状況: 相手に「お前の特許は無効だ!」と言われたので、あなたが慌てて特許庁へ行き、「特許の内容を少し修正(訂正)します!」と言って、裁判をストップさせようとすること。

  • ルール: 裁判所は「訂正審判の結果が出るまで裁判を止める必要はないよ」と言えます。ズルズルと裁判が長引くのを防ぐためです。


第3幕:証拠集めと秘密情報のガード

(105条~105条の7あたり)

ここが条文番号だらけで一番しんどいところですが、要は**「証拠は見たいけど、秘密は漏らしたくない」**というジレンマを解決する仕組みです。

105条:書類提出命令

(書類の提出等)
第百五条 裁判所は、特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟においては、当事者の申立てにより、当事者に対し、当該侵害行為について立証するため、又は当該侵害の行為による損害の計算をするため必要な書類の提出を命ずることができる。ただし、その書類の所持者においてその提出を拒むことについて正当な理由があるときは、この限りでない。

  • 「隠してる書類を出せ!」

  • 裁判所が「その書類、裁判に必要だから出しなさい」と命令できます。

  • ポイント: 「企業秘密だから出したくない!」という言い訳に対し、裁判官だけがコッソリその書類を見て(インカメラ手続)、「本当に秘密にするほど大事か? 裁判に必要か?」を判断します。

105条の2:査証(さしょう)

(査証人に対する査証の命令)
第百五条の二 裁判所は、特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟においては、当事者の申立てにより、立証されるべき事実の有無を判断するため、相手方が所持し、又は管理する書類又は装置その他の物(以下「書類等」という。)について、確認、作動、計測、実験その他の措置をとることによる証拠の収集が必要であると認められる場合において、特許権又は専用実施権を相手方が侵害したことを疑うに足りる相当な理由があると認められ、かつ、申立人が自ら又は他の手段によつては、当該証拠の収集を行うことができないと見込まれるときは、相手方の意見を聴いて、査証人に対し、査証を命ずることができる。ただし、当該証拠の収集に要すべき時間又は査証を受けるべき当事者の負担が不相当なものとなることその他の事情により、相当でないと認めるときは、この限りでない。

  • 「専門家による強制立ち入り調査!」

  • 書類だけでは分からない場合(工場のラインの動きなど)、中立な専門家(査証人)が相手の工場に入り込んで調査します。令和元年の改正でできた強力な武器です。

105条の3:相当な損害額の認定

(相当な損害額の認定)
第百五条の三 特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟において、損害が生じたことが認められる場合において、損害額を立証するために必要な事実を立証することが当該事実の性質上極めて困難であるときは、裁判所は、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づき、相当な損害額を認定することができる。

  • 「計算できないなら、裁判官がエイッ!と決める」

  • 損害額の計算がどうしても難しい場合、裁判所が口頭弁論(話し合い)の内容から「まあ、このくらいだろう」と決めることができます。

105条の4~105条の7:秘密保持命令

(秘密保持命令)
第百五条の四 裁判所は、特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟において、その当事者が保有する営業秘密(不正競争防止法(平成五年法律第四十七号)第二条第六項に規定する営業秘密をいう。以下同じ。)について、次に掲げる事由のいずれにも該当することにつき疎明があつた場合には、当事者の申立てにより、決定で、当事者等、訴訟代理人又は補佐人に対し、当該営業秘密を当該訴訟の追行の目的以外の目的で使用し、又は当該営業秘密に係るこの項の規定による命令を受けた者以外の者に開示してはならない旨を命ずることができる。ただし、その申立ての時までに当事者等、訴訟代理人又は補佐人が第一号に規定する準備書面の閲読又は同号に規定する証拠の取調べ若しくは開示以外の方法により当該営業秘密を取得し、又は保有していた場合は、この限りでない。

  • 「ここだけの話(トップシークレット)にする」

  • 裁判で大事な技術情報(営業秘密)を出さないといけない時、「この情報は、弁護士と当事者以外には絶対見せない!漏らしたら罰則!」という命令(秘密保持命令)をかけます。これがあるから、安心して証拠を出せるわけです。

    • ※105条の8以降の細かい枝番は、この秘密保持命令の手続きの細かいルール(誰に通知するか、どう取り消すか等)なので、「秘密を守るための事務手続き」とまとめて覚えてOKです。


第4幕:名誉とペナルティ

(106条、196条~201条、200条の3)

最後は、負けた時の「償い」と「刑罰」です。

106条:信用回復の措置

(信用回復の措置)
第百六条 故意又は過失により特許権又は専用実施権を侵害したことにより特許権者又は専用実施権者の業務上の信用を害した者に対しては、裁判所は、特許権者又は専用実施権者の請求により、損害の賠償に代え、又は損害の賠償とともに、特許権者又は専用実施権者の業務上の信用を回復するのに必要な措置を命ずることができる。

  • 「新聞に『ごめんなさい』を載せる」

  • パクリ商品を売られて、あなたの会社のブランドイメージ(信用)が落ちてしまった場合、お金の賠償だけでなく、「謝罪広告」などを新聞に出させる命令ができます。

196条:侵害の罪

(侵害の罪)
第百九十六条 特許権又は専用実施権を侵害した者(第百一条の規定により特許権又は専用実施権を侵害する行為とみなされる行為を行つた者を除く。)は、十年以下の拘禁刑若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

  • 「泥棒は牢屋へ」

  • 特許権を(故意に)侵害した人は、10年以下の懲役 または 1000万円以下の罰金です。けっこう重いです。

196条の2:詐欺の行為の罪

第百九十六条の二 第百一条の規定により特許権又は専用実施権を侵害する行為とみなされる行為を行つた者は、五年以下の拘禁刑若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

  • 「嘘ついて特許取ったら犯罪」

  • 特許庁を騙して特許を取ったら、3年以下の懲役または300万円以下の罰金です。

201条:両罰規定(りょうばつきてい)

(両罰規定)
第二百一条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、次の各号に掲げる規定の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人に対して当該各号で定める罰金刑を、その人に対して各本条の罰金刑を科する。
一 第百九十六条、第百九十六条の二又は前条第一項 三億円以下の罰金刑
二 第百九十七条又は第百九十八条 一億円以下の罰金刑

  • 「やった社員も、やらせた会社も罰する」

  • 社員が勝手にやったとしても、会社(法人)にも罰金刑が科されます。しかも、会社への罰金は**「3億円以下」**と超高額です。

200条の3:秘密保持命令違反の罪

(秘密保持命令違反の罪)
第二百条の三 秘密保持命令に違反した者は、五年以下の拘禁刑若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
2 前項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
3 第一項の罪は、日本国外において同項の罪を犯した者にも適用する。

  • 「裁判の秘密をバラしたら逮捕」

  • 第3幕で出てきた「秘密保持命令」を破って情報を漏らした人は、5年以下の懲役などになります。これは「親告罪(被害者が訴えないと罪にならない)」ではないのが特徴で、バレたら即アウトの厳しい罪です。


まとめ:ストーリーでつなげる

  1. 裁判開始! 工場の中が見えないから「同じものなら同じ製法とみなす」(104条)。

  2. 相手の反論! 「やってない」と言うなら「じゃあ何やってるか見せろ」(104条の2)。あるいは「お前の特許自体が無効だ」(104条の3)と逆ギレしてくる。

  3. 証拠合戦! 「書類出せ」(105条)、「工場見せろ」(105条の2)。

  4. 秘密ガード! 「出した証拠は絶対漏らすなよ、命令だぞ」(105条の4)。

  5. 決着! 負けたら「謝罪広告」(106条)や「懲役・罰金」(196条~)、秘密をバラしても「刑罰」(200条の3)。

この流れで教科書を読むと、「今どこのフェーズの話をしているか」が見えてくるはずです!