研究は研究者が勝手にやってよいものではなく、法律による規制があります。特に人を対象とする臨床研究の場合には、動物実験の研究よりもはるかに大きな制約が課せられています。それはもちろん、過去の非人道的な人体実験の過ちを二度と繰り返さないために作られたものです。また最近のディオバン事件のように、研究不正を抑止する目的で作られた法律もあります(臨床研究法)。法律だけでは具体的な細かい内容まで規程できないため、法律に基づいていくつかの「指針」が策定されており、これらの指針を遵守することが研究者には義務付けられています。指針の正式名称は長いため、よく略称が用いられます。「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」が「ゲノム指針」といった具合です。
臨床研究法
臨床研究法は、ディオバン事件などの反省から作られた法律で、平成30年4月1日から施行されていいます。臨床研究法の中では、第2条で臨床研究が定義されており、特に、「特定臨床研究」に該当する臨床研究を定義して(第2条二)、該当する場合の規定が細かく定められています。
- 臨床研究法 (e-gov)
薬機法
薬機法は、薬事法が2014年11月25日に改正されたあとの通称で、正式な名称は「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」です。国の承認を受ける目的で行われる臨床試験(治験)は、この法律に基づいて行われます。また、化粧品や健康食品の誇大広告を取り締まるのもこの法律。
- 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律 (e-gov)
薬機法に違反した例
- 薬機法違反に関わる違反表現・広告事例集134選 「お肌の調子はどうですか」痩せた体験談 研究機関等が作成した資料を販売に引用 「血圧の気になる方に」「疲れた体に」「医者いらず」ほか
個人情報保護法
「個人情報の保護に関する法律」
- 個人情報の保護に関する法律 (e-gov) 平成十五年 法律第五十七号 2003年公布、2005年全面施行
- 【2022年4月施行】個人情報保護法改正とは?改正点を解説!(新旧対照表つき)(契約ウォッチ)
- 「個人情報保護法」が12年ぶりに改正!個人情報の匿名加工でビッグデータ利活用を促進 (FUJITSU JOURNAL 2017年1月30日)「改正個人情報保護法」として、2017年5月30日に施行 される見込みです。‥ 今回の改正では、主に「個人情報の定義の明確化」や「ビッグデータの利活用促進」などが規定されます。 中でも注目されるのは、「個人情報に匿名加工を行うことで、本人の同意がなくても第三者提供が可能となる」ことです。例えば、マーケティングにおいて「交通機関で集めた移動データを利活用することで、研究機関や広告・イベント運営会社が事故・災害も考慮した安全・効率的なイベント運営を実現 する」などの作業が、本人の同意がなくとも行えるようになります。
動物の愛護及び管理に関する法律
「動物の愛護及び管理に関する法律」の略称は「動物愛護管理法」、「動物愛護法」と呼ばれることもあります。2013年と2019年に法改正が行われました。
- 動物の愛護及び管理に関する法律 (e-gov) 昭和四十八年 法律第百五号
再生医療等の安全性の確保等に関する法律
- 再生医療等の安全性の確保等に関する法律 平成二十五年 法律第八十五号 (e-gov)
ヒトに関するクローン技術等の規制に関する法律
- ヒトに関するクローン技術等の規制に関する法律 (e-gov) 平成十二年 法律第百四十六号
移植に用いる造血幹細胞の適切な提供の推進に関する法律
- 移植に用いる造血幹細胞の適切な提供の推進に関する法律 平成二十四年 法律第九十号 (e-gov)
再生医療を国民が迅速かつ安全に受けられるようにするための施策の総合的な推進に関する法律
- 再生医療を国民が迅速かつ安全に受けられるようにするための施策の総合的な推進に関する法律 (e-gov) 平成二十五年 法律第十三号
参考
- 臨床研究者が遵守すべき法律や指針:「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」その他