境界性パーソナリティ障害(Bioloar Personality Disorder; BPD)とは

境界性パーソナリティ障害とは

境界性パーソナリティ障害は、不安定な情緒と不安定なに対人関係が特徴で、人をすぐに好きになったり、あっさりと幻滅してしまったり(脱価値化)します。また、自己イメージが安定せず(自己同一性拡散)、他人に見捨てられることに対する不安を常に抱いていて、相手の気持ちを試すために自殺をほのめかしたり企図したりすることを繰り返すことがあります。抑うつ状態を呈することが多く、大うつ病性障害を合併していることも多い。自傷や薬の大量な服用といった自殺企図により救命救急センターに搬送されることも少なくなく、死の転帰に至る危険があり注意を要する。境界性パーソナリティ障害の人は、人間的な距離がある程度ある人に対しては如才なく振る舞うことができ、一見問題がないように見えるが、両親や家族のように関係が深い相手に対しては依存的態度が強い。治療においては医師に対して恋愛感情を抱く(陽性転移)ことがあるが、それが満たされないと憎しみに変化し(陰性転移)、自傷行為などの行動化(acting out)を起こすことがすくなくない。そのため医師・治療者が患者に対して否定的な感情を抱く逆転移が生じることもある。周囲の気を引くようなアピール性の自殺行動が多く、身体的に軽症なリストカットや過量服薬を繰り返すが、本人にはアピールしている自覚はなく無意識にしていることが多い(参考:『精神科の診かた、考え方』73、127、173ページ)。

  1. レジデントノート別冊 各科研修シリーズ これだけは知っておきたい 精神科の診かた、考え方 羊土社 2014年

BPDの要因

幼児期のストレス状況が境界性パーソナリティ障害の発症に寄与している可能性がある。(境界性パーソナリティ障害(BPD) MSDマニュアル家庭版)

BPDの遺伝的要因

生活上のストレス環境に対して病的反応を生じる遺伝的な傾向が認められる場合があり,境界性パーソナリティ障害には明らかに遺伝的要素があると考えられる。境界性パーソナリティ障害患者の第1度親族は,一般集団よりこの障害を有する可能性が5倍高い。(境界性パーソナリティ障害(BPD) MSDマニュアル家庭版)

境界性パーソナリティ障害の治療法

弁証法的行動療法(Dialectical Behavior Therapy; DBT)

境界性パーソナリティ障害における、自己制御、対人関係能力や苦悩忍耐能力の欠如にフォーカスし、これらの習得を目指す。

境界性人格障害(境界性パーソナリティ障害)とは?不安定な対人関係、感受性の過敏さ,自己肯定感の低さ,両極端な判断,自己破壊的な衝動的行動などを特徴とするパーソナリティ障害の一種

 

境界性人格障害とは

境界性人格障害(borderline personality disorder; BPD)は、感情が極めて不安定で気分の波が激しく、善悪の判断が両極端で’(白か黒しかない)、自分というものをはっきり持てず、強いイライラ感が抑えきれずに怒りを爆発させることが多く、自己破壊的な行動に走ることも多いといった症状で特徴づけらるそうです。

境界性人格障害の「境界性」の意味は、神経症と統合失調症との間に位置付けられる症状を持つということだそうです。単に分類の都合で付けられた名前であって、あまりそれ自体に深い意味はなさそうです。

  1. 境界性パーソナリティ障害(BPD) 執筆者: Lois Choi-Kain , MD, Harvard Medical School MSDマニュアルプロフェッショナル版
  2. 境界性人格障害(境界性パーソナリティ障害)とは?(いちメンタルクリニック 大阪市中央区日本橋)

 

境界性人格障害におけるうつ病の併発

境界性人格障害の人は対人コミュニケーションがうまくないうえに繊細な感受性を持つために、他人の言動のせいで心を傷つけられることがおおく、うつを発症しやすいそうです。

  1. 境界性パーソナリティー障害、鬱など併発、診断難しく 2011/1/15 日経スタイル 1月上旬、警察庁は2010年の国内の自殺者は3万1560人と13年連続で3万人を超えた、と発表した。自殺者には鬱病の人が多いといわれるが、最近の調査で自殺未遂者の約6割が「境界性パーソナリティー障害(BPD)」と呼ぶ精神疾患と診断されたことがわかった。
  2. うつ病について(ときわ台メンタルクリニック 東京都板橋区常盤台)

 

境界性人格障害と発達障害

  1. 発達障害と不安・うつ・パーソナリティ障害の関係:「重ね着症候群」について 水谷心療内科 衣笠は、パーソナリティ障害、中でも境界型パーソナリティ障害と診断される患者さんの中に、実は発達障害を持っている人がいることを見い出し、「重ね着症候群」として提唱しました。‥(パーソナリティ障害の上着の下に隠れて、発達障害の下着があり、「重ね着」されているという意味です)

 

境界性人格障害の典型的な行動パターン

気分の変動の激しさ

気分(機嫌の良しあし、強い不快感、苛立ち、不安)が急変する。通常は、数時間しか持続しない。逆に言うと、怒りや不安に襲われて暴言を吐きまくっている人がいても、自然に収まるまで、単に数時間、時間が経過するのを待てばよいということでしょうか。

  1. 境界性パーソナリティ障害(BPD) 執筆者: Lois Choi-Kain , MD, Harvard Medical School MSDマニュアルプロフェッショナル版
  2. 人間関係がこじれがち? 「境界性パーソナリティー障害」の5つのサイン 人間関係の維持が極端に難しい? 2019/10/30 womenshealthmag.com

外部要因・他人から影響を受けやすい

自分が何をやりたいのかが明確でないため、他人の言動や情報、外部環境による影響を受けやすい。しかし、長続きはしない。

 

境界性人格障害、アダルトチルドレン、毒親、機能不全家族

 

毒になる親、精神的に未成熟な親

関連書籍

  1. 親といるとなぜか苦しい: 「親という呪い」から自由になる方法 リンジー・C・ギブソン 2023/5/24 「共感できることがありすぎて、すべてのページにマーカーを引きたい」「未熟な親のもとで育ち、自分を大切にする方法を知らなかった私のために書かれた本」「これほど人生が変わる本はなかった!」見た目は大人だが、精神年齢は子どものままの親が子どもを苦しめる。愛したいのに愛せない親を持つ人が「心の重荷」を降ろす方法
  2. 重すぎる母、無関心な父  信田 さよ子 2011/1/6 親の愛に支配され「いい子」を演じてきた子どもは成人後も「生きづらさ」に苦しむ。
  3. 機能不全家族(アダルトチルドレン)  星野 仁彦 2007/11/20

アダルトチルドレン

  1. アダルト・チルドレンの子どもたち:もう一つの共依存世代 アン・W. スミス Ann W. Smith 2005/7/30
  2. なぜいつも、あなたの恋愛はうまくいかないのか―アダルト・チルドレンの恋愛と結婚の神話 ジャネット・G. ウォイティツ Janet Geringer Woititz 1999/5/1
  3. アダルトチルドレン・シンドローム―自己発見と回復のためのステップ ウェイン クリッツバーグ 1998/5/1 私の生きづらさをズバリ解説 一般的なACに関する説明に終わる書ではなく、ACの方に対する治療法まで
  4. アダルト・チルドレン―アルコール問題家族で育った子供たち ジャネット・G. ウォイティッツ Janet Geringer Woititz 1997/10/1 アマゾンレビュー:見ていたのか?と言う程の理解力! アダルトチルドレンの13の繰り返してしまう思考や行動の特徴とその13の繰り返しを断つ方法が具体的に書かれ この本が一番役に立ちました。
  5. アダルト・チルドレンからの出発(たびだち)―アルコール依存症の家族と生きて  スザニー ソマーズ Suzanne Somers 1997/3/1
  6. The Adult Children of Alcoholics Syndrome W.クリッツバーグ 1985年(邦訳:アダルトチルドレン・シンドローム―自己発見と回復のためのステップ)
  7. Adult Children of Alcoholics ジャネット・G. ウォイティッツ Janet Geringer Woititz 1982年 (邦訳:アダルト・チルドレン―アルコール問題家族で育った子供たち) この本がベストセラーになりアダルトチルドレンという言葉が定着したそう。
  8. It Will Never Happen to Me! Children of Alcoholics: As Youngsters – Adolescents – Adults クラウディア・ブラック 1981 (邦訳:私は親のようにならない―アルコホリックの子供たち)

資料

  1. R. Margaret CorkThe Forgotten Children: A Study of Children with Alcoholic Parents(忘れられた子供:アルコール依存症の両親の子供に関する調査)』1969年

 

参考

  1. 「生きたい」も「死にたい」も、私にとって大切な感情なんです。気持ちの変化が激しい境界性パーソナリティ障害とともに生きる咲セリさん 2018年07月10日
  2. 「生きるのがつらい…」境界性パーソナリティ障害とは?  2018年09月14日 NHK ハートネット
  3. 秋葉原無差別殺傷事件, 加害者Kの育ちと犯罪過程の考察 日本福祉大学子ども発達学論集 第 6 号 2014年1月 境界性パーソナリティー障害診断基準とKの行動傾向 判決書では精神疾患には罹患していなかったとされているが, パーソナリティー障害の診断基準が,Kの行動傾向と合致していることが注目される.
  4. Hypnosis with a Borderline Patient. Instability. Self-image. Interpersonal relationships, Mood. Emptiness. Overidealization. Over-devaluation. Depression. Irritability. Anger. Anxiety.
  5. 境界性人格障害(BPD)の妻と離婚する際の4原則

ネイチャーマスタークラス(Nature Masterclasses)の説得力のある研究助成申請書作成(Persuasive Grant Writing)

ネイチャーマスタークラス(Nature Masterclasses)は、研究支援ビジネスで、その中のコースに説得力のある研究助成申請書作成(Persuasive Grant Writing)というものがあるようです。ウェブサイトはこちらhttps://masterclasses.nature.com/grant-writing/18994906

残念ながらNature Masterclassesは大学が購入するもので、個人ではどうしようもない価格です。せめて、コースの概要でも眺めてみたいと思います。すぐに気づくことは、ストーリーを語りなさい、ナラティブが大事ということを強調していること。

  1. use narrative tools to create grant applications that resonate with the audience
  2. use your storytelling techniques consistently

ナラティブ(narrative)というのは日本語に訳しにくい英単語ですが、物語、語り口、口調といった意味だと思います。

narativeというのは、個人的な物語という意味あいであって、むしろ論理的な文章と対比されるのが通常のようです。例えば、Narrative vs Persuasive Essays Jeanie Tseng, English Specialist Mar 7, 2018 のウェブ記事を見ると、

  1. Narrative essays are written from a set point of view with sensory information, using intense adjectives and exact verbs. These essays can be anecdotal, experiential(経験に基づいた) and personal.
  2. Narrative essays are initiated by selecting an incident that occurred in real life.
  3. The narrative essay’s purpose is to tell a story, the persuasive essay aims to convince readers about an argument.

という説明があり、この記事の作者は、相対立するものとしてとらえています。しかし、ネイチャーマスタークラスの考え方はちょっと違っていて、ストーリーを語ることによって、相手を説得させることができるという戦略を取りましょうということのようです。人間は議論で納得するのではなくて、感情で納得するのです。それは科学者や研究者であっても同じこと。

ややこしいのは、「proposal narrative」、「grant narrative」という言葉があって、ここでのnarativeは物語という意味ではなく単に記述、記載、文書、本文といった程度の意味しかないようです。

  1. Tips for Writing Your First Draft of a Grant Narrative by Meredith Noble September 30th
  2. Notes on Writing your Proposal Narrative
  3. The Proposal Narrative or Project Description Budget narrative: Explain items in each budget category. May be in table format.
  4. Narrative Section of a Successful Application
  5. How to Write a Successful Budget and Budget Narrative of a Grant Proposal
  6. How to Write the Personnel Narrative on Your Grant Application By Beverly A. Browning

personnel narrativeというのは上のリンクの説明から察すると、研究助成の申請書の人員体制、研究体制に関するセクションのことのようです。personal narrative(個人の体験談)という言葉と似ていますが、全く別もの。

さて話を戻して、研究助成の申請書をいかに物語に仕立てるかについて。

物語の文章術(Narrative Writing)

narrative writing とは

Narrative writing can be broadly defined as story writing – a piece of writing characterized by a main character in a setting who encounters a problem or engages in an interesting, significant or entertaining activity or experience. https://blog.empoweringwriters.com/toolbox/what-is-narrative-writing

  1. What Is Narrative Writing? Narrative writing is, essentially, story writing.
  2. narrative writing guide 

 

参考

  1. How to Write a Grant: Become a Grant Writing Unicorn June 1, 2021 by Meredith Noble
  2. 4-6 Narrative Writing Tools(YOUTUBE)
  3. Me-Search and Re-Search: A Guide for Writing Scholarly Personal Narrative Manuscripts March 1, 2011 by Robert Nash
  4. How to write copy that sells by Ray Edwards

 

研究のやり方が学べる書籍 リサーチクエスチョン生成から研究の実践、そして論文出版まで

研究全般に関する実践書

臨床研究の道標(みちしるべ)

福原俊一『臨床研究の道標』第2版上巻・下巻 認定法人健康医療評価研究機構2017年

ウェブサイト http://www.i-hope.jp/others/index.html

正誤表:http://www.i-hope.jp/activities/publication/pdf/michishirube_vol.2_seigohyou_ver.1.pdf

18ページの研究デザインの「型」の説明(フローチャート)がわかりやすい。中に書いてあるとおり、この本は、研究のデザインをするところまでの解説書なので、データ収集や統計解析、論文作成に関するノウハウまではカバーしていません。しかし研究するうえで非常に大事なのは、研究を実際に始めるまえの「研究のデザイン」および「研究計画」であることは明らかです。その部分を非常に丁寧に説明されている本で、文章も明解で内容が頭に入りやすいと思います。本の後半は「ワークブック」になっていて、とにかく実際に研究を始める人のための極めて実践的な構成になっています。研究の7ステップと銘打っているだけあって、本書を読みながら、実際に段階的に研究構想を練り上げていくことができます。ちなみに7つのステップは、

  • ステップ1:漠然としたクリニカルクエスチョンを、PECO/PICOの型に当てはめて解決可能な形に構造化する。
  • ステップ2:文献検索により何がこれまでにわかっていて、何がまだわかっていないのかを明確にする。
  • ステップ3:研究に必要な要素の関係性を図にまとめて、疑問をモデル化する。
  • ステップ4:研究に必要な要素を何によってどう測定するのかを決める。すなわち、測定をデザインする。
  • ステップ5:自分のリサーチクエスチョンに答えるのに適した、研究の「型」を選ぶ。
  • ステップ6:比較の質を高めるために、研究デザインと解析方法を検討する。
  • ステップ7:倫理的配慮をする。

となっています。研究の実践書は多数出版されていますが、その中にあって、この本は実践マニュアル的な趣が強いと思います。誤解しそうな点など注意事項に関する説明もとてもスッキリとしていて、切れ味の鋭い本だと思いました。ただし、研究をこれからはじめるOliveさんと、指導者である臨Q氏との日常会話がちょこちょこ差し込まれていて、これはリラックスして読める空気作りに役立っているとみるか、ウザイと感じるかは人それぞれかと。自分は特に気になりませんが、この会話がそれほど効果的だとも思いませんでした。ただ、ハードルが高そうで尻込みする人に対して、ハードルを下げてあげようとする著者のやさしさが感じられます。

臨床研究と論文作成のコツ

松原茂樹 編著『臨床研究と論文作成のコツ 読む・研究する・書く』 東京医学社2020年

 

文献検索方法

データ解析

論文執筆

論文投稿

 

χ2乗分布、χ2乗検定とは? χ2乗(カイにじょう)の一番わかりやすい説明

χ2乗とは何でしょうか?χ2乗分布、χ2乗検定とは? χ2乗(カイにじょう)に関して一番わかりやすく解説。

χ2乗検定とは、χ2乗分布に従う検定統計量に関するいくつかの検定方法の総称です。まずはχ2乗分布とは何かから押さえておく必要があります。

χ2乗分布とは

χ2乗分布の定義(数式)は別の解説に譲るとして、一番馴染みやすい言い方をすれば、χ2乗分布(chi-square distribution)とは、標準正規分布N(0,1)から標本をいくつか取り出したときに、それらの標本の各々の値のの2乗を足し合わせた合計値が従う分布になります(これは、定義から導かれる定理)。

少し堅い言い方で言い直せば、標準正規分布N(0,1)に従う独立な確率変数Z1,Z2,…, Znがあったときに、それら確率変数の2乗和

S^2=Z1^2 + Z2^2 + … + Zn^2

が従う分布のことです。この分布を自由度nのχ(かい)2乗分布と呼び、χ2nと書きます。

  1. Step1. 基礎編22. 母分散の区間推定 22-1. カイ二乗分布  BellCurve 統計WEB
  2. 稲垣宣生 数理統計学 1990年11月20日 裳華房 106ページ 6.3 正規分布から誘導される分布

χ(かい)2乗分布は、標準正規分布から数学的に導かれます。様々な分布は互いに関連しているので、どの分布からどの分布が導かれるのかを押さえておくと、数学的な理解の見通しが良くなると思います。

ベルヌーイ分布B(1,p) → 二項分布B(n、p) → 正規分布N(μ、σ^2) → 標準正規分布N(0,1) → χ2乗分布χ2(n) →F分布 F(n1, n2)

また、

二項分布B(n、p) → ポワソン分布P(m)

二項分布B(n、p) ←→ 超幾何分布H(n,p,N)

ポワソン分布P(m)→ 正規分布N(μ、σ^2)

正規分布N(0,1) および χ2乗分布χ2(n) → t分布t(n)

F分布 F(n1, n2) ←→  t分布t(n)

t分布t(n) → 標準正規分布N(0,1)

  1. 宮川公男 基本統計学 第5版 2022年4月1日 有斐閣 212ページ 図7.15 いろいろな確率分布と標本分布の間の関係

χ2乗検定とは

χ2乗分布に従う統計量の検定が、χ2乗検定と呼ばれ、いくつかの種類があります。

9.4 分散の検定ーーーχ2分布の応用 269ページ~

9.5 適合度の検定ーーーχ2分布の応用 270ページ~

9.6 分割表の検定ーーーχ2分布の応用 272ページ~

宮川公男『基本統計学 第5版』有斐閣

χ2乗検定を用いた独立性の検定

単にχ2乗検定というと、「χ2乗検定を用いた独立性の検定」(分割表クロス集計表ともいう)の検定)を指すことが多いようです。その場合は、検定したい内容は「フィッシャーの正確確率検定」と全く同じです。

関連記事:フィッシャーの正確検定(Fisher’s exact test)とは

χ2乗検定とフィッシャーの正確確率検定との使い分けですが、得られたデータの数値の期待度数(下記参照)が5以下のものが含まれている場合にはχ2乗検定では正確ではないため、フィッシャーの正確確率検定が使われます。

さて、カイ二乗検定による独立性の検定(分割表の検定)の説明で、一番わかりやすいと自分が思ったのは『基礎医学統計学』(加納、高橋 共著 南江堂)(改訂第6版 69ページ~)です。

この教科書の説明に則ってカイ二乗検定をわかりやすく説明すると以下のようになります。

2x2の分割表があったときに、それぞれのセルの「期待度数」を考えます。行と列が独立であれば、単純な掛け算になります。

Σ (セルの値ーそのセルの期待度数)^2 / そのセルの期待度数  という統計量が、カイ2乗分布に従うことから、この統計量がどれくらい生じやすいかを調べることにより、行と列が独立(これが帰無仮説)だったかどうかを判断しようというわけです。これがカイ二乗検定の考え方になります。自由度は、列の数だけあるセルの合計したものを固定して考えるので、列の数ー1、行に関し得も同様に、行の数ー1の自由度があります。そのため、R行xC列の場合は、その組み合わせで(R-1)x(C-1)が自由度になります。

  1. 25-5. 独立性の検定 統計WEB
  2. カイ二乗検定とは?検定手法を解説 2023年08月10日 GMOリサーチ t検定は平均値の差に意味があるのかを検定するもので、カイ二乗検定は割合の差に意味があるのかを検定するもの

適合度の検定

例えば100回何かを観測したときに、その観測値がある既知の分布(正規分布など)に従うかどうかを検定します。観測値から標本平均と標本標準偏差(不偏標準偏差とも呼ばれる。nでなくn-1で割ったほう)を求めて、

(標本平均-標本標準偏差)未満

(標本平均-標本標準偏差)から標本平均の間

標本平均から(標本平均+標本標準偏差)までの間

(標本平均+標本標準偏差)より上

の4つの区間を考えますと、それぞれの区間に標本が観察される確率は、16%、34%、34%、16%になります。100回分の観測値のそれぞれの区間での数(度数と呼ぶ)が15個、30個、38個、17個だったとします。ここで

Σ(観測された度数-期待される度数)^2 / 期待される度数

という統計量(この式により値が一つ定まる)がχ2と呼ばれるもので、文字通りχ2分布に従います。

  1. 尾畑伸明 数理統計学の基礎 230ページ 定理8.19 証明は省略する。
  2. 日本統計学会編 統計検定1級対応  統計学 269ページ ピアソンはクロス表のデータに関して(O-E)法という方法を編み出した。
  3. Chapter 56 – Karl Pearson, paper on the chi square goodness of fit test (1900). M.E. Magnello Landmark Writings in Western Mathematics 1640-1940 2005, Pages 724-731 This technique is “chi-square contingency coefficient” to test differences between observed cell frequencies and theoretically expected cell frequencies.

今の場合自由度3(区間の数-1)のχ2乗分布に従います。よってχ2乗分布の表を参照すると、それがどれくらい起こりやすいのか起こりにくいのかの確率がわかります。

区間をどうわけるかは自由ですが、度数が少なすぎる(5未満)にならないようにします。また区間の数は4以上にします。つまり、5x4=20で、最低でも20回以上の観察をした場合でないと、そもそもカイ2乗検定はできません。

今の例は正規分布でしたが、実際には既知の分布であれば何でも構いません。その観測で得られる値がどんな分布に従いそうかが分かっていることが大事です。

  1. J. R. Taylor 計測における誤差解析入門 2000年3月16日 東京化学同人 264ページ  12.分布に対するカイ二乗検定
  2. 統計WEB BellCurve Step1. 基礎編25. さまざまな検定 25-4. 適合度の検定
  3. 調査・統計用語集 カイ二乗検定 日経リサーチ
  4. 適合度検定とは?カイ二乗検定を使う理由や独立性の検定との違いを解説! いちばんやさしい、医療統計 適合度検定とカイ二乗検定(独立性の検定)の計算方法はほとんど同じです。唯一違うのは、理論値の定め方だけです。適合度検定の理論値→事前に決めた値 独立性の検定の理論値→2群の差がないと仮定した時の値

χ2乗検定における95%信頼区間の求め方

95%信頼区間の求め方は、検定の種類によらず同じ考え方でできます。ある検定統計量(検定するためにつくった統計量)とその検定統計量が従う確率分布(t分布やχ2乗分布、正規分布など)があったときに、95%を含む区間(両端で2.5%を含む区間)の境界の値(a, b)をまず知る必要があります(t分布や分布が左右対称だったのに対して、χ2乗分布は左右対称ではないという違いがありますが、本質的ではありません)。そうすれば、

a≦検定統計量≦b という式が立ち、検定統計量の式の中に自分が知りたい値が未知数として一つだけ存在しているので、それについてこの不等式を解けば

下限値≦未知の数≦上限値

として求まります。

カイ二乗検定に関する参考サイト

  1. 独立性の検定―最もポピュラーなカイ二乗検定 2017/08/13 統計WEB BellCurve
  2. 25-5. 独立性の検定 統計WEB BellCurve
  3. カイ二乗検定 日経リサーチ

ウェブ統計計算ツール

  1. js-STAR XR release 1.1.6j 

 

その他参考

  1. Pearson, K. (1900) On the Criterion That a Given System of Deviations from the Probable in the Case of a Correlated System of Variables Is Such That It Can Be Reasonably Supposed to Have Arisen from Random Sampling. Philosophical Magazine Series, 5, 157-175. https://doi.org/10.1080/14786440009463897 https://zenodo.org/records/1430618/files/article.pdf
  2. KARL PEARSON’S CHI-SQUARED GOODNESS-OF-FIT TEST Book Author(s):Prakash Gorroochurn First published: 17 March 2016 Classic Topics on the History of Modern Mathematical Statistics: From Laplace to More Recent Times Chapter 3 https://doi.org/10.1002/9781119127963.ch3
  3. PROFESSOR KARL PEARSON AND T H E METHOD O F MOMENTS BY R. A. FISHER, Sc.D., F.R.S. https://onlinelibrary.wiley.com/doi/pdf/10.1111/j.1469-1809.1937.tb02149.x
  4. Karl Pearson and the Chi-Squared Test R. L. Plackett International Statistical Review / Revue Internationale de Statistique Vol. 51, No. 1 (Apr., 1983), pp. 59-72 (14 pages) https://www.jstor.org/stable/1402731 https://www.floppybunny.org/robin/web/virtualclassroom/stats/basics/articles/chi_square/chi_square_review_plackett_1983.pdf
  5. A Note on Karl Pearson’s 1900 Chi-Squared Test: Two Derivations of the Asymptotic Distribution, and Uses in Goodness of Fit and Contingency Tests of Independence, and a Comparison with the Exact Sample Variance Chi-Square Result 8 Dec 2018 Timothy Falcon Crack https://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=3284255

フィッシャーの正確検定(Fisher’s exact test)とは

フィッシャーの正確検定(Fisher’s exact test)は、フィッシャーの直接確率法とも呼ばれるもので、2x2の分割表が得られたときに有意差があるかないかを調べるときに使われます。χ2乗検定も同じ目的で使われますが、違いはデータの個数が少ないかどうかです。データの数値が5以下のものがあるときにはχ2乗検定ではなく、フィッシャーの正確検定が用いられます。データが多いと、フィッシャーの正確検定は計算に時間がかかること、データが多いと、χ2乗検定の正確さが増すことから、このようにデータの数によって使い分けます。

ウェブリオのフィッシャーの正確確率検定(直接確率)は、具体的に全部を示していてわかりやすい。そのほか、フィッシャーの正確検定のわかりやすい説明は、ウィキペディアにもあります。

フィッシャーは、そのためには小計が観測値と同じになるような場合だけを考慮すればよいことを示した。(フィッシャーの正確検定 ウィキペディア

Fisherの正確検定(oku.edu.mie-u.ac.jp)のウェブページも、わかりやすい説明の仕方でお勧め。

  1. フィッシャーの直接確率検定 データ科学便覧

実際に自分で計算してみたほうが、理解しやすいと思ってpythonで計算してみます。答え合わせが出来たほうがいいので、準1級対応統計学実践ワークブック264ページ例1の数字を使います。

コードは、

from scipy.special import comb

n_row1=7#新薬Aを処方した実験群 7人
n_row2=7#既存薬Bを処方した対照群 7人
n_col1=9#病気が治癒した人 9人
n_col2=5#病気が治らなかった人 5人
n_total=n_row1+n_row2#総数14人

def probability(a):

#変数は一つaしか自由に動かせない。aが決まると他の値b,c,dは一意に決まる。
b=n_row1-a
c=n_col1-a
d=n_row2-(n_col1-a)

data = [[a,b,n_row1], [c,d,n_row2], [n_col1,n_col2,n_total]]
p=comb(n_row1,a)*comb(n_row2,c)/comb(n_total,n_col1)

return data, p

P=0#初期値
for x in range(0,n_row1+1):#0からn_row1まで、全てについて起こる確率を調べて、極端な例(x>=a)が起こる確率を足し合わせる。
df,p = probability(x)
print(“p=”,round(p,4), df)
if x>=a:#片側検定
P=P+p
print(“P=”,round(P,3))#

#データの値がマイナスになるのはありえない。小計の小さいほうの値より大きな値は取れない。

実行した結果は、

[[0, 7, 7], [9, -2, 7], [9, 5, 14]]
[[1, 6, 7], [8, -1, 7], [9, 5, 14]]
[[2, 5, 7], [7, 0, 7], [9, 5, 14]]
[[3, 4, 7], [6, 1, 7], [9, 5, 14]]
[[4, 3, 7], [5, 2, 7], [9, 5, 14]]
[[5, 2, 7], [4, 3, 7], [9, 5, 14]]
[[6, 1, 7], [3, 4, 7], [9, 5, 14]]
[[7, 0, 7], [2, 5, 7], [9, 5, 14]]
P= 0.13286713286713286

となりました。人数がマイナスになるのはあり得ないので、そこは外して考えます。 [[6, 1, 7], [3, 4, 7], [9, 5, 14]]の分割表になる確率はそもそも0.05を超えていました。この確率0.1224よりも稀にしか起こらない確率を足し合わせると0.05を超えますので、有意差はないという結論になりました。つまり新薬Aが既存薬Bよりも優れているとは言えないということです。

pythonだと、コードを書かなくてもフィッシャーの正確検定を行う関数が用意されています。

from scipy.stats import fisher_exact

table=[[6,1],[3,4]]
oddsr, p = fisher_exact(table, alternative=’greater’)
p

出力結果は、

0.132867132867133

となり、コードで計算したものと一致しました。用意されている関数を使えば簡単なのですが、引数や返り値の意味がわからないことがあります。自分でコードを書いて、中身を理解するように努めると、そのような疑問が解けることが多いです。

 

キーワード:フィッシャー 正確検定 エクセル フィッシャー 正確検定 フィッシャーの正確検定 多重比較 フィッシャーの正確検定 計算 フィッシャーの正確検定 意味 フィッシャーの正確検定 式 フィッシャーの正確検定 両側 フィッシャーの正確検定 エクセル フィッシャーの正確検定 カイ二乗検定 フィッシャーの正確検定 r フィッシャーの正確検定 直接確率計算 フィッシャー フィッシャー 直接確率法 フィッシャー 直接確率 フィッシャー 直接確率検定

門脈(portal vein)とは

門脈とは

生化学の教科書を読むと、小腸で吸収された栄養物(グルコースなど)が門脈に入ると解説されています。そんなわけで、門脈は、名前は聞いたことがあるけど、体のどこにある何なのかはわからないという状態でした。

門脈は、肝門脈と呼ばれることもありますが、消化管を流れてきた血液が肝臓に入る部分の血管で静脈です。消化管の静脈からつながっています。

門脈は、栄養源を吸収する消化管とそれを代謝する肝臓を連絡する血管(
間膜静脈)と、脾臓の血液を肝臓に運ぶ血管(脾静脈)が合流した大きな静脈の通り道です。(門脈圧亢進症 日本小児外科学会)

 

  1. 門脈 看護roo!用語辞典

https://www.pinterest.jp/pin/647040671440873894/

食事をしたときに、食べたものが消化され、小腸から吸収されるとき小腸にはりめぐされた血管に栄養(グルコースやアミノ酸、短鎖脂肪酸)が入り、その血管は門脈へと合流します。

  1. Figure 1: Components of the small intestine: (1) Muscle layers, (2) villi, (3) blood vessels, (4) lumen, (5) lymphatic vessel, (6) absorptive enterocyte cells, (7) capillary, (8) artery, (9) vein, (10) microvilli Small intestine 小腸の外側に血管があってVilliに毛細血管が入り込んでいる様子がよくわかる図。よく見る断面図だけだとピンとこないですが、こういう外側から見た立体的な図があるとわかりやすい。
  2. Exercise 20: Accessory Glands of the Digestive Tract https://www.doctorc.net/Labs/Lab20/LAB20.HTM 門脈という名前の示す通り、小腸からの血管が門脈に合流して肝臓に至る様子がよくわかる図。
  3. 小腸は消化と吸収のどちらを行っているの? 看護roo! わかりやすい図あり
  4. The function of this portal system is to carry nutrients from the digestive tract to the liver after a meal to store and metabolize. https://socratic.org/questions/what-is-a-portal-system-what-is-the-purpose-of-the-hepatic-portal

ちなみに脂肪(長鎖脂肪酸)はキロミクロンとして、血管ではなくリンパ管にはいり胸管へと向かいます。

  1. # 56 Absorption, small intestine and significance of villi このウェブページは、ネット上の図を集めたサイトのようですが、わかりやすい図ばかりが紹介されています。

肝臓の血管

肝臓(liver)は2本の血管から血液の供給を受けている。1本は栄養血管としての役割を担う、腹部大動脈から分岐する腹腔動脈(celiac artery)の枝である総肝動脈の末梢にあたる肝動脈(正確には固有肝動脈:hepatic artery)、もう1本は機能血管としての役割を持つ、腸管などで吸収された物質を運ぶ門脈(portal vein)である。門脈は、左側の結腸などからの血液を受ける下腸間膜静脈と胃などからの血液を受ける脾静脈、さらに右側結腸や空・回腸からの血流を受ける上腸間膜静脈が合流して門脈本幹を形成している。肝臓内の類洞を経て、肝細胞で解毒・合成された物質を含む血液は、右・中・左の3本の肝静脈(hepatic vein)を通って下大静脈(inferior vena cava)に注ぐ。(肝(肝内胆管を含む) (C22)

肝臓に流れ入る血流は肝動脈系と門脈系に分類され、これらの血液は肝臓を通過される際に肝細胞によって代謝や解毒などの作用を受け、肝静脈、下大静脈を経由して心臓に循環していく。(門脈 看護roo!)

上腸間膜静脈

下腸間膜静脈

  1. https://ganjoho.jp/med_pro/cancer_control/can_reg/hospital/pdf/liver2021.pdf

門脈系の特徴

  1. https://ganjoho.jp/med_pro/cancer_control/can_reg/hospital/pdf/liver2021.pdf 解説が詳しい

門脈血栓症

門脈に血栓できて、肝臓への血液の流れが悪くなった状態のことを「門脈血栓症」といいます。

  1. 門脈血栓症(日本血液製剤協会)
  2. 進行肝細胞癌に伴う下大静脈腫瘍栓,門脈腫瘍栓に対する放射線治療の有効性肝臓53巻8号486―493(2012)門脈腫瘍栓(portal vein tumor thrombus; PVTT)
  3. 肝細胞癌における門脈腫瘍塞栓の診断とその病態に関する研究 日消誌 83 (10) 2151-2160, 1986 肝細胞癌において, 門脈腫瘍塞栓の存在とその部位は, 治療の選択や予後に大きな影響を与える

門脈は静脈ですが、動脈も腸管を取り囲んでいます。ついでに動脈もみておきます。

  1. 上腸間膜動脈(superior mesenteric artery; SMA)ウィキペディア 十二指腸の下部から横行結腸の3分の2までの腸と膵臓を栄養している。
  2. 下腸間膜動脈(inferior mesenteric artery IMA)ウィキペディア 腹大動脈の3番目の主要な分枝である。腰椎3(L3)から生じ、遠位横行結腸から肛門管の上部まで大腸に供給する。IMAが供給する領域は、下行結腸、S状結腸および直腸の一部である。

自殺者数に関する科研費研究採択課題57件

KAKENデータベースで「自殺者数」で検索した結果です。概要の文章中の太字や下線は自分が自分の勉強のために付したものです。

  1. 生きづらさを抱える自殺企図者への多職種協働支援~好事例集積と支援プログラム構築~ 2021-04-01 – 2025-03-31 寺岡 征太郎 和洋女子大学, 看護学部, 准教授 (30626015) 小区分58060:臨床看護学関連 基盤研究(C) 研究開始時の概要:自殺者数自体は減少傾向にあるが、新型コロナウイルス感染症の流行によって「生きづらさ」を感じている人が増え、自殺者数が再び増加することが危惧されている。特に、自殺未遂者が再企図によって自殺完遂に至るケースが多いことからも、「生きづらさ」を感じている自殺企図者に対する多職種連携・協働を軸とした手厚い支援が不可欠といえる。
    そこで本研究では、①自殺企図者の「生きづらさ」に対応する多職種協働を基盤とした支援の実態調査(good practice事例の集積)、②再企図抑止を目的とした多職種協働支援プログラムの作成と試行に取り組む。 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  2. 市町村別自殺のパネルデータ解析:経済的不況に特に脆弱であるのはどのような地域か? 2021-04-01 – 2024-03-31 吉岡 英治 旭川医科大学, 医学部, 准教授 (70435957) 小区分58030:衛生学および公衆衛生学分野関連:実験系を含まない 基盤研究(C) 研究開始時の概要:本研究は以下の2つの目的で実施する。
    1)まず失業率とその他の社会経済的要因との自殺リスクに対する交互作用を検討することである。この研究では、日本における1999年から2016年までの市町村別の自殺者数と失業率、その他の社会経済的変数などのデータからパネルデータを構築して実施する。
    2)次に最近の日本における失業率が自殺率へ及ぼす影響が、性年齢階級によってどのような違いがあるのかということを明らかにする。本研究では、2009年から2021年までの市町村別の自殺者数(年齢階級別)を使用する。 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  3. アジア高地在住高齢者におけるうつ病とソーシャルキャピタルの関連性-医療人類学検討 2021-04-01 – 2024-03-31 石川 元直 東京女子医科大学, 医学部, 非常勤講師 (20529929) 小区分52010:内科学一般関連 基盤研究(C) 研究開始時の概要:わが国の自殺者数に占める高齢者の割合は高く高齢者のうつ病対策は重大な課題である。近年、標高と自殺率には正の相関があるとの報告が相次いでいるが、申請者はヒマラヤやアンデスの高地に住む高齢者にはうつ病が少ないということを報告してきた。その理由として社会の絆や結束といった良好なソーシャルキャピタルや宗教観がうつ病の発症に抑止的に働いている可能性がある。本研究では標高や文化の影響を検討するために、他地域の高地住民や低地住民と比較することで、うつ病の発症に抑止的に働く因子を解明する。さらに医療人類学の観点から日本の高齢者に応用すべくどんな方法で支援をしたらいいかを考え、ヘルスケアデザインの策定を行う。 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  4. メディアと自殺:メディア上の自殺に関する情報の実態とその自殺者数への影響の解明 2020-04-01 – 2024-03-31 上田 路子 早稲田大学, 政治経済学術院, 准教授 (50791357) 小区分08010:社会学関連 基盤研究(B) 研究開始時の概要:日本をはじめ、世界中の多くの国において自殺は最も深刻な社会問題の一つである。自殺についてのメディア情報をきっかけに自殺の連鎖が起きることは各国で報告されているが、現代日本社会では自殺に関する情報が様々なメディアに溢れている。国際的に推奨されていない内容を含む報道が新聞やテレビで日常的に行われているのはもちろん、若者が触れる機会の多いソーシャルメディア上では悪影響を与える可能性のある内容が頻繁にやり取りされている。本研究は本研究は伝統的なメディア及びソーシャルメディア上における自殺に関する報道・情報の実態をデータを用いて明らかにし、メディア上の情報が人々に与える影響を解明することを目的とする。 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  5. 日本人労働者における食事・運動要因と抑うつ症状発症との関連:前向きコホート研究 2019-08-30 – 2021-03-31 三木 貴子 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, その他部局等, 臨床研究センター疫学・予防研究部 特任研究員 (20849070) 0908:社会医学、看護学およびその関連分野 研究活動スタート支援 研究開始時の概要:日本の自殺死亡率が高く、自殺者数のうち過半数がうつ病の兆候を示していることから、その予防要因を科学的に明らかにすることは急務である。近年、食事・運動要因等は身体疾患だけでなく精神健康に関しても重要な要因であることが指摘されてきている。しかしながら、食事・運動要因等の生活習慣と精神健康の関連を検証した前向きコホート研究は世界的にも少なく、日本における報告はほとんどない。本研究では、日本人を対象とした前向き職域栄養疫学研究により生活習慣(食事・運動要因等)と抑うつ症状との関連をデータ検証、及び総説する。 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:今年度は、うつ病の予防対策として生活習慣(食事・運動要因等)と精神健康の関連を明らかにすることを目的とし、以下の研究を実施した。
    まず、前述した目的を達成するために、日本人を対象とした前向き職域栄養疫学研究のデータベースの構築に取り組んだ。これまでに関東地方の企業の従業員(約2800名)を対象として定期健康診断時に栄養、抑うつ症状、運動などに関する自記式調査、採血(研究のための針刺しは実施せず)を2012-13年(ベースライン調査)、2015-16年(3年後調査)、2018年(6年後調査)に実施していた。2019年4-5月に上記と同様の調査を6年後調査として実施した。データクリーニングを行い、ベースライン調査と追跡調査のデータを連結し、6年間にわたる前向き職域栄養疫学研究のデータベースを構築した。
    次に上記のデータベースにて、食事の抗酸化能と抑うつ症状発症との縦断的な関連を分析した。この結果は「Prospective study on the association between dietary non-enzymatic antioxidant capacity and depressive symptoms」として国際英文雑誌Clinical Nutrition ESPENに掲載された。本研究は食事の抗酸化能と抑うつ症状との関連を検証した初めての縦断研究である。本研究結果は第30回日本疫学会にて発表した。
  6. 若年者の自殺予防チェックリスト開発と対策モデルの構築 2019-04-01 – 2023-03-31 青石 恵子 名古屋大学, 医学系研究科(保健), 准教授 (00454372) 小区分58060:臨床看護学関連 若手研究 研究開始時の概要:若年層の自殺死亡率が低下しない現状から「子ども・若者の自殺対策を更に推進する」ことが重点施策として挙げられており、若者への支援の充実が求められている。研究者は宮崎市在住の中学生を対象として自殺親和状態と自殺の要因とされる生活習慣や行動との関連を調査した。ここで明らかになった危険因子を中学生の自殺予防対策としてのスクリーニングのために活用することを目指し、①自殺関連行動・状態についての具体的な手掛かりを得る自殺危険因子の精選、②自殺予防対策に資する中学生の生活チェックリストの作成、③地域に密着した生活習慣・行動と自殺の要因となる危険因子との関連をもとにした中学生自殺対策モデルの構築を目的とする。 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:【研究背景】若年層の自殺死亡率が低下しない現状から「子ども・若者の自殺対策を更に推進する」ことが重点施策として挙げられており、若者への支援の充実が求められている。【研究目的】危険因子を中学生の自殺予防対策としてのスクリーニングのために活用することを目指し、①自殺関連行動・状態についての具体的な手掛かりを得る自殺危険因子の精選、②自殺予防対策に資する中学生の生活チェックリストの作成、③地域に密着した生活習慣・行動と自殺の要因となる危険因子との関連をもとにした中学生自殺対策モデルの構築を本研究の目的とする。
    【2019年度の実施内容】学校関係者に提示するための資料作成を中心に作業を進めた。文献の検討をする中で2018年度は児童・生徒の自殺者数が10万人あたり2.5人に急激な増加となり、若年者の自殺対策が急務な状況となった。研究計画書や倫理申請に時間がかかってしまったことで、研究の開始が遅れ、対象者のリクルート中であり、対象とする中学校教諭の確保が不十分な状況である。今回初めてテキストマイニングで分析するため、分析の事前準備は整えることは出来ている。
  7. 生物心理社会モデルに基づく日本人青年の自殺機序の解明と予防的介入方法の開発 2019-04-01 – 2023-03-31 石井 僚 奈良教育大学, 学校教育講座, 特任准教授 (50804572) 小区分10020:教育心理学関連 若手研究 研究開始時の概要:日本人青年の自殺者数は、他先進国では類を見ない程の高水準である一方、青年の自殺メカニズムに関するエビデンスは十分に蓄積されていない。本研究では、リスク要因として指摘され続けている社会経済的地位の低さが、青年にどのような心理状態をもたらして自殺へ結びつくのかを解明し、メカニズムに基づく予防的介入方法を開発する。 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:2019年度は主に2つの方向で研究を遂行した。
    1つは、日本人青年の自殺の問題について、青年期の発達課題であるアイデンティティや死生観といった心理的要因に着目した質問紙調査の分析を行った。大学生189名を対象に質問紙調査を行い、媒介分析を行った結果、古くから自殺との関連が指摘されてきたアイデンティティの混乱(稲村, 1977)と、自殺のリスク指標との関連は、死を苦しみ等からの解放と捉える死生観によって、部分的に媒介されていることが示された。他先進国では類を見ない程の高水準である日本人青年の自殺の心理的機序の一部が明らかとなった。なお、本結果については国内学会において発表された。
    もう1つは、自殺のリスク要因として指摘され続けている社会経済的地位についてである。社会経済的地位の低下を招く不適切な金融行動を起こしてしまうメカニズムを検討するため、予備実験を行った。大学生276名を対象に質問紙を用いた実験を行った結果、不適切な金融行動の経験を持つ個人は、そうした経験を持たない個人よりも、不適切な金融行動によって金銭を獲得することでポジティブな感情を持つことが示された。そして、不適切な金融行動による金銭の獲得に対してポジティブな感情を持つこととと、金融を扱う能力の高さの間には、全般的な認知能力をコントロールした上でも関連がみられた。この結果を基に、指標を精査した上で実験室実験を行っていくこととなった。
  8. 自殺率の高い離島の市における自殺の現状分析と自殺防止に関する研究 2019-04-01 – 2023-03-31 波名城 翔 長崎ウエスレヤン大学, 現代社会学部, 講師 (70768811) 小区分08020:社会福祉学関連 若手研究 研究開始時の概要:自殺者の増加を背景に自殺対策に向けた取り組みが行われており、自殺者は年々減少傾向にある。離島の町村では自殺率が低い一方で離島の市の自殺率は全国平均より高い状況にある。以上を背景に本研究では、全国の離島の自殺の分析、自殺率の低い離島の町村への調査、離島の市の調査を実施することで、離島における自殺の現状分析と対策を検討し、離島の市における自殺率の減少に寄与することを目的に実施する。 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:離島の市町村の現状について明らかにしていくために、橋等で本土とつながっていない離島63市町村(8市31町24村)を対象に厚生労働省が公表している「地域における自殺の基礎資料」の2010年から2018年までの資料から統計データを作成した。更に、沖縄県伊江村において自殺予防に向けた取り組みのインタビューを行った。
    63市町村の自殺者の推移は、2010年179人、2011年195人と増加していたが2012年以降は130人から140人の間で推移し2018年には102人まで減少していた。対象期間において、自殺者が0人の島は10村で東京都1村、鹿児島県2村、沖縄県7村であった。
    2018年に自殺者が存在した市町村は、28市町村であり、8市7町では毎年自殺者が存在していた。また、2017年との比較では6市4町は自殺者が横ばいあるいは前年度より増加していた2018年の人口10万対自殺率は、5市4町が全国より高かった。自殺者数が前年度より増加し且つ自殺率が高いのは、香川県1町、長崎県3市、鹿児島県1市1町であった。
    離島の統計データの全国との比較では、自殺者の70歳以上の割合(34%)「同居人有」の割合(73%)、自殺手段の「首つり」の割合(80%)が全国と比較して高く、また、自殺場所は、「自宅等」は56%と全国(63%)より低いことが明らかになった。
    伊江村においては、専門の精神科医療機関がない中で、保健師が中心となって支援や連携体制を構築することで、自殺予防対策を行っていた。
    2017年に自殺対策大綱が閣議設定され、自殺総合対策における当面の重点施策として12の施策が示された。精神保健医療福祉サービスや民間団体などの社会資源が乏しい離島においては行政を中心とした支援体制の構築が求められることが示唆された。
  9. 地域における自殺対策の政策学的研究 2019-04-01 – 2022-03-31 森山 花鈴 南山大学, 社会倫理研究所, 准教授 (40635702) 小区分06010:政治学関連 若手研究 研究開始時の概要:日本における自殺者数は、2011年まで自殺者数が3万人以上となる事態が続いていた(警察庁統計)。この状況から、日本では国をあげて自殺実態の分析や多数の自殺予防・自死遺族支援に係る政策が実施されてきた。その結果、2012年から自殺者数は3万人を切り、現在まで減少が続いている。しかし、未だ市町村レベルでは自殺の現状は明らかになっていないばかりか、どのような自殺対策が実施されて自殺が減ったのか、この自殺者数減少の要因は明らかになっていない。そのため、本研究では、地域(市町村)における自殺の現状および自殺対策に焦点をあて、市町村において必要とされる自殺対策の政策モデルを提示することを目的とする。 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:本研究は、地域(市町村)における自殺の現状および自殺対策に焦点をあて、市町村において必要とされる自殺対策の政策モデルを提示することを目的としている。そのため、2019年度(初年度)は、市町村における自殺対策の現状把握と、実態分析のための自殺者数・自殺対策に関する資料収集を実施した。また、実際に展開されてきた地域の自殺対策がどれだけ若者世代に認知されているのかを確かめるため、大学生に対して地域資源に関する基礎調査も実施した。
    研究実績として挙げられるのは、まず、2019年5月に新潟大学で開催された日本行政学会2019年度総会・研究会での発表である。そして、9月に南山大学で開催された第43回日本自殺予防学会総会(大会長)での発表である。また、論文としては『アカデミア社会科学編』第17号(南山大学)へ投稿を行った。
    海外調査としては、2020年3月にフィンランドへ赴き、国の機関である国立健康福祉センターと地域での対策を実施しているエスポ―市の福祉サービス施設を訪問した。ここでは、行政担当者や行政の精神科医からヒアリングを実施した。さらに、自死遺族支援に関する調査のために、フィンランドにおいて精神障害者支援や自死遺族支援を行う民間団体からもヒアリングを実施した。
    なお、国内では、自殺対策には自殺予防の観点と自死遺族支援の観点があるため、必要とされる自死遺族支援については自死遺族団体の関係者からヒアリングを実施した。さらに、毎月自殺対策に関する研究会を実施した。
  10. 緊縮政策と自殺・死亡―1930年代と50年代の地方財政緊縮の社会的影響の因果分析 2019-04-01 – 2022-03-31 古市 将人 帝京大学, 経済学部, 准教授 (50611521) 小区分07050:公共経済および労働経済関連 基盤研究(C) 研究開始時の概要:公的医療サービスや失業者の生活支援など、政府支出は人々の生活を支えている。そのような政府支出の削減が人々の健康を悪化させる可能性が、先行研究では指摘されてきた。本研究は、戦前・戦後の日本で実施された政策に注目して、政府支出の削減や財政再建が経済活動や人々の健康に与えた影響を明らかにする。本研究は、以上の分析を行うために、各種の統計の収集と整理を行う。次に、日本で行われた財政再建や歳出削減の歴史的背景を検討した上で、財政再建と歳出削減が経済や社会に与えた効果を推定する。歳出削減や財政再建という現代的論点に対して、歴史的定量的な知見を提供することを本研究は試みる。 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:研究一年目は、既存統計の利用可能性の検討と、戦前の分析に必要な死亡・自殺統計の道府県パネルデータの構築作業を中心に行った。『内務省統計報告』、『日本帝国人口動態統計』、『死因統計』、『警察統計』などの基礎統計書を精査し、パネルデータ構築の準備作業を行った。また、戦前の分析に必要な財政統計の収集と整理も行った。その際、戦前の自殺統計や死亡統計に関する先行研究や当時の研究を収集し、統計の利用可能性の確認を行った。
    以上の作業の結果、1884年から1941年までの警察統計による府県別自殺統計の整備はほぼ終了することができた。2年目に外注する予定のデータについても、対象となるデータの選定と収集を現在進めている。一部の変数については、統計の収集と整理を終え、データ入力を行う段階になっている。
    次に、本研究と関係する先行研究や資料を整理した。各種の研究書・論文のみならず、戦前と戦後の緊縮政策を理解する上で必要な資料や報告書を収集した。また、先行研究では、本研究で着目したデータを用いた研究が十分に行われていない点を確認した。
    本研究のメインテーマは、日本における緊縮政策が社会や経済に与えた効果の歴史的検証である。戦前期については、基礎的な分析が可能になったため、予備的な分析に着手している。また、戦前期の自殺者数に関する記述統計分析は、学術的な貢献になると考えられるため、メインテーマの研究と並行して、論文執筆の準備を始めた。
  11. 内科診療所受診者を対象に初診時に実施するうつ状態のリスク評価の有効性 2018-04-01 – 2022-03-31 藤枝 恵 久留米大学, 医学部, 助教 (80420735) 小区分58010:医療管理学および医療系社会学関連 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:我が国の自殺者数は約2万人であり、交通事故死亡者数の5倍以上である。自殺者の8割以上がうつ状態であったという報告もある。このようなうつ状態の患者の割合は、内科診療所受診者の5.5~64%に上るが、内科ではうつ状態が見逃されることが多く、内科診療所の医師は自殺のリスクの高いうつ状態の患者を日常的に見ていることをほとんど意識していない。
    そこで、申請者らがこれまでに明らかにしたうつ状態の関連因子を用いて、初診時に半年後の「うつ状態のリスク評価」を行う。そして、無作為化比較試験(randomized controlled trial(RCT))により、①うつ状態の発症、②希死念慮(死にたいという気持ち)を伴ううつ状態の発症、③うつ状態の慢性化に対する「うつ状態のリスク評価」の効果を算出する。研究対象は、内科診療所の初診患者、または過去半年以上受診していない患者で、35歳から64歳の者とする。慢性疾患などで常に通院している人を除くため対象者を限定する。該当者に順に調査に関する説明を行い、同意が得られれば対象者として登録し、登録時調査を実施する。
    登録時調査では、対象者から、性別、年齢、身長、体重、教育歴、飲酒、喫煙などの生活習慣、婚姻状況、職業、既往歴、入院歴、治療中の病気、うつ状態の程度、希死念慮等についての情報を収集し、医療機関からは、主訴、診断、処方などについての情報を得る予定である。
    当該年度は、産前産後の休暇および育児休業により、研究を中断したため、研究を実施していない。
  12. 感覚処理感受性に着目した抑うつ低減モデルの構築―将来的な自殺予防に向けて― 2018-04-01 – 2021-03-31 大石 和男 立教大学, コミュニティ福祉学部, 教授 (60168854) 小区分10020:教育心理学関連 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:本研究課題では,(1)従来の研究で指摘されてきた,感覚処理感受性(Sensory Processing Sensitivity;以下,SPSと略記)と抑うつ傾向との正の関連における機序について,詳細な知見を得ること,および(2)既存の心理尺度に関する問題点が指摘されるSPSの測定方法の再検討といった2点を目的としている。令和元年度は,(1)の目的に沿う2件,および(2)の目的に沿う1件の研究を行った。
    第一に,大学生430名を対象として,SPSと抑うつ傾向との関連に対する首尾一貫感覚(Sense of Coherence;以下,SOCと略記)の調整効果を検討した。SOCとは,自分の生きている世界は首尾一貫しているという感覚のことであり,強いSOCを持つ個人ほど抑うつ傾向の低いことが明らかにされている。分析の結果,SOCが強い場合はSPSと抑うつ傾向との間に有意な関連が示されなかった。この結果から,SPSが高い個人のSOCを強化することで,彼らの抑うつ傾向を低減できることが示唆された。第二の研究では,SOCの強化に寄与することが示唆されているライフスキルに注目して,SPSと抑うつ傾向の関連に対する調整効果の検討を行うため,大学生868名を対象に質問紙調査を実施した。分析の結果,SPSが高い場合には,情動対処スキルと対人関係スキルが抑うつ傾向の低減に寄与する可能性が示された。
    最後に,既存のSPS測定尺度における因子構造や各項目の特性について検討するため,日本人成人1,626名に質問紙調査を実施した。分析の結果,各項目は個々人のSPSの程度を識別できる性質を有していた一方で,因子構造については一部で先行研究と異なる結果が示されるなど,いくつかの課題も指摘できる。
  13. 長期成人虐待の法医病理学的診断法の確立ー帯状回に着目した慢性ストレス暴露の証明ー 2017-04-01 – 2020-03-31 山下 裕美 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 助教 (50706174) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:近年、高齢者虐待や中高年層の自殺者の増加、ドメスティック・バイオレンス等の「長期ストレス」が新たな社会問題となっており、法医解剖でも遭遇する。この「長期ストレス」に曝露されたか否かの診断の指標として、児童虐待のような子どもでは、「胸腺の萎縮」が用いられる。しかし、成人は加齢変化により胸腺が脂肪織化するため用いることができず診断に苦慮している。そこで、これまでの研究で「長期ストレス」への関与が疑われた帯状回に着目し遺伝子解析を行った。ストレス特異的反応遺伝子のキー遺伝子を同定するために、現在、解析の途中である。研究実績の概要:
  14. 手段制限による自殺予防の政策導入のためのfeasibility研究 2017-04-01 – 2021-03-31 反町 吉秀 青森県立保健大学, 健康科学部, 教授 (80253144) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:本研究は、自殺手段の法的規制や入手可能性の低減の自治体による施策化や国レベルでの自殺対策政策への導入に対して政策提言を行うことを目的としている。
    平成31年度は、継続的に検討してきた「日本における1950-60年代の催眠剤による自殺とアクセス制限の関連」について、催眠剤の生産量に注目し市中での入手可能性(availability)および生産減少に影響を与えた要因について、薬事工業生産動態統計、東京都監察医務院の公表データ等を用いた解析の結果、我が国の過去(1950年代~60年代おける)における睡眠薬による自殺の減少は、市販薬の生産量減少や販売規制などによる入手可能性の低下が寄与しているを示唆する結果を、論文として発表した。
    他方、B県ホットスポットにおけるパトロール活動とゲートキーパー活動による自殺念慮を持つ訪問者のアクセス制限による自殺予防活動について、活動を担った保健師等を研究協力とし、活動の実態及び自殺者数に関わるデータを入手し、その効果について疫学的分析を行った。ホットスポット訪問者による自殺者数は、当該地域において、活動が開始された2009年から2018年にかけて、隣接自治体では自殺者数に変化が見られなかったが、当該地域を含む自治体では、自殺者数に約70%の減少が見られたこと、パトロール職員からの警察への年間通報件数と訪問者による自殺者数の間には、負の相関がみられることなどを明らかにし、パトロール活動とゲートキーパー養成を中心とする予防事業が有効であることが示唆する結果を得た。
  15. 自殺の社会経済的要因と自殺対策の実証分析:エビデンスに基づいた政策評価と提言 2017-04-01 – 2020-03-31 上田 路子 早稲田大学, 政治経済学術院, 准教授 (50791357) 基盤研究(B) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:社会経済的要因と自殺リスクの因果関係やそのメカニズムについては部分的な解明しか進んでいない。本研究課題では、自殺の社会経済的要因に注目した4つのプロジェクトを実施した。主な研究成果として、著名人の自殺についての100万件近くのツイッター上の投稿を分析し、著名人の自殺の報道後に自殺者数が大幅に上昇するのは、その死がツイッターで大きく話題になったときのみであることを示した。また、著名人の自殺をどのような感情を持って受け止めているかを探るため、ツイッターの投稿に含まれる感情を機械学習の手法を用いて分類し、報道後の自殺者数は人々が著名人の自殺に「驚き」を感じたときに最も上昇することを明らかにした。研究実績の概要:
  16. 日本における自殺対策の政策学的研究 2016-04-01 – 2019-03-31 森山 花鈴 南山大学, 法学部, 准教授 (40635702) 若手研究(B) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:日本における自殺死亡率(人口10万人あたりの自殺者数)は、G7の中で第1位と、世界的に見ても高い水準にある。本研究では、インタビュー調査等を踏まえ、「個人の私的領域分野の問題として扱われてきた自殺の問題が、なぜ国家が介入するべき問題として政府に認識され、全国で推進される政策となったのか」を政策学的に分析した。さらに、自殺者数の減少をもたらした政策上の要因を探究した上で、効果的な自殺対策を推進するための国家・地域モデルを検討した。研究実績の概要:
  17. 致死性の低い手段による自殺未遂者の予後に関する研究 2016-04-01 – 2020-03-31 竹内 崇 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 講師 (70345289) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:致死性の低い故意の自傷も、自殺の危険因子であることが明らかにされており、身体的に重症度の軽い自殺未遂も軽視すべきではない。本研究結果より、手段が意図的な過量服薬で、精神科治療上の転帰を自宅退院とした「低致死リスク群」の特徴は、女性、双極性障害、自殺企図の既往が少ない、精神科への受診歴あり、受診中断が少ない、という傾向があることがわかった。また、この「低致死リスク群」の前方視研究により、自殺関連行動の反復の予測因子として、女性、既婚でない(未婚もしくは離婚)の可能性があることがわかった。今後さらに詳細な解析を行っていく予定である。研究実績の概要:
  18. 現代日本の自殺動向による社会学的自殺理論の再構成 2016-04-01 – 2020-03-31 江頭 大蔵 広島大学, 社会科学研究科, 教授 (90193987) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:デュルケームの『自殺論』における自殺類型論について、4つの自殺類型の分類原理である「社会的統合」と「社会的規制」が反対方向の作用であることを示すことにより、その配置を再構成した。この図式に基づいて、ソーシャルキャピタル指数と男女の自殺率の相関関係が逆であること、また、自殺率の著しい地域格差が、二極分化した労働環境によるものであることを、統計データを用いて示した。また、文献資料を用いて、社会集団への過剰な統合が集団本位主義とアノミーが結びついた過労自殺の温床となっていることを示した。研究実績の概要:
  19. 宇宙・地球環境要因を用いた重要疾患の増悪予測モデルの構築 2015-04-01 – 2018-03-31 西村 勉 公益財団法人先端医療振興財団, その他部局等, 研究員 (10447980) 若手研究(B) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:過去40年分の日毎、都道府県別、疾患別の死亡データを厚労省から入手した。過去40年分の日毎の宇宙・気象等の環境要因を入手した。1972年から2013年のデータを用いて、各疾患による日毎の死亡者数と宇宙・地球に関連する環境要因との関連性を検証した。多くの環境要因と多くの疾患による死亡者数との間に相関がみられた。研究代表者が台湾の中国医薬大学との共同研究において、地磁気の擾乱と自殺者数との相関について日本の結果の再現性を台湾のデータで確認した。さらに他の疾患についても環境要因との関連性を検証し、重要疾患の増悪予測モデルを構築した。研究実績の概要:
  20. 児童思春期の学校における自殺関連要因の前方視的研究 2015-04-01 – 2018-03-31 齊藤 卓弥 北海道大学, 医学研究院, 特任教授 (20246961) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:本研究では対象は、6歳から18歳の札幌市の小中学高校生に対してに対して本人および保護者から得た上で、1年目の希死念慮が2年目にどのように変化したかを2年連続して回答した小中高校生118名を対象に評価した。同時に、希死念慮と、抑うつ尺度、BCL(子ども行動チェックリスト)、Birleson:自己記入式抑うつ評価尺度(DSRS-C)、FTTを実施し、児童思春期における自殺行動に関連する、心理、コミュニケーション能力、発達障害の影響について探索的研究を行った。に自殺念慮の変化ならびにそれに関する要因を解析した。研究実績の概要:
  21. 微量なリチウムの抗自殺作用:自殺企図患者の血中リチウム濃度を指標とした研究 2015-04-01 – 2019-03-31 塩月 一平 大分大学, 医学部, 講師 (00444886) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:大分大学医学部救命救急センターに入院し、医薬品としてのリチウム治療を受けていない患者230名を対象に血中リチウム濃度を測定して、「男性の自殺企図者は男性の非企図者と比較して、有意にリチウム濃度が低いが、女性ではそのような傾向はみられない」という仮説を検討したが、支持されなかった。むしろ、精神疾患があると、微量なリチウムでも自殺予防効果を発揮する可能性が示唆された研究実績の概要:
  22. 内科診療所受診者における自殺予防に関する疫学研究 2015-04-01 – 2020-03-31 藤枝 恵 久留米大学, 医学部, 助教 (80420735) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:内科診療所の初診、または6か月以上受診していない、35歳以上65歳未満の患者を研究対象とした。診察前に自記式調査票を使用して、性別、年齢、体重、生活習慣、基礎疾患、睡眠状況等についての情報を収集した。登録時と半年後にうつ状態および希死念慮についての評価を行った。多変量解析の手法により、多要因の影響を補正し解析したところ、睡眠障害を有する者では、希死念慮を伴ううつ状態の発症リスクが上昇することが示唆された。研究実績の概要:
  23. 危険な自殺手段制限のための基礎的研究 2015-04-01 – 2018-03-31 吉岡 英治 旭川医科大学, 医学部, 准教授 (70435957) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:本研究では、以下の3点に関する検討を行った。1)2003から2013年の日本で急増した練炭自殺の地理的影響を解析した。2)1950から1975年の自殺率の変動におけるそれぞれの自殺手段の占める割合を解析した。3)1968から1994年のガス自殺の推移を解析した。解析結果は、以下のようであった。1)僻地部で練炭自殺の増加が著しく、男性では練炭自殺の急増により自殺率の地域差が拡大していた。2)若い世代では服毒自殺が最も多かった。3)家庭用ガスに含まれる一酸化炭素が70年代に減少したが、これに伴いガス自殺が減少した。研究実績の概要:
  24. 住民参加型自殺予防対策の効果に関する実証的検証研究 2015-04-01 – 2019-03-31 佐々木 久長 秋田大学, 医学系研究科, 准教授 (70205855) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:ゲートキーパー養成のための資料を作成して実施した養成講座受講者を対象とした調査で、住民は身近に心配な人がいることを認識しており、機会があれば支援したいという気持ちを持っていることが確認できた。地域で自殺対策に取り組んでいるボランティアを対象に調査を行った。この結果、居場所づくりを通して、希死念慮や抑うつ状態にある人との接点を持っていることが確認された。また保健師を対象にしたインタビュー調査で、保健師がボランティアを支援することと、ボランティアが地域の情報を提供し見守りをすることで、より効果的な自殺対策を展開する可能性が示唆された。研究実績の概要:
  25. 政治経済学的アプローチによる自殺原因と対策の研究 2014-04-01 – 2017-03-31 松林 哲也 大阪大学, 国際公共政策研究科, 准教授 (40721949) 若手研究(B) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:本研究では(1)自殺報道が一般の人々の自殺に与える影響、(2)これまでの自殺対策の効果の検証、(3)人々を取り巻く制度環境が自殺に与える影響、の3課題についての研究を推進してきた。統計分析の結果、著名人の自殺報道に対しツイート上で大きな反応があった場合にのみ自殺者数が増えること、経済状況の好転が自殺率の低下につながっている可能性があること、鉄道駅のホームドアには強い自殺防止効果があること、早生まれの若者の自殺率が高いこと、学年暦と若者の自殺数には強い相関があること、誕生日前後には自殺が増えることなどが明らかになった。研究実績の概要:
  26. 職種別自殺リスクの実証分析 2014-04-01 – 2016-03-31 池田 真介 政策研究大学院大学, 政策研究科, 助教授 (90598567) 若手研究(B) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:第一に、市区町村レベルの自殺率と社会経済変数の関係を明らかにした。具体的には、統計モデルの一致推定には動学パネル回帰分析の手法が有益であること、また男性では貯蓄率が、女性では生命保険支払額と女性失業者数と女性総労働力人口が、各性別自殺率と負相関することを示した。
    第二に、都道府県レベルの職種・年齢・性別の就労人口数・自殺者数を記述統計・グラフ分析した。具体的には、職種別粗自殺率の複雑な年齢効果が自殺者数と労働力人口の年齢効果の違いから来ること、1998年以降の自殺率の急上昇は一部の職種が主たる要因であること、および地域ごとの傾向や異質性が強いことを明らかにした。研究実績の概要:
  27. 地域の自殺予防に資するレジリエンス社会の構成要因の探索 2014-04-01 – 2018-03-31 金子 善博 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所 自殺総合対策推進センター, 室長 (70344752) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:我が国の自殺率の変化には社会経済的要因の影響が大きい。本研究ではその影響を小さくできるようなレジリエンス社会の構成要因を探索的に検討した。基礎自治体を対象としたマクロレベル研究では自殺率の変動を小さくするような一貫性のある社会経済要因は確認できなかった。一方、住民調査研究からは、表現することが忌避されてきた「死にたい」といえる状況が自殺予防に資することが示唆された。研究実績の概要:
  28. 思春期のいじめ被害者における援助希求行動を促進/妨害する要因の検討 2014-04-25 – 2017-03-31 特別研究員奨励費 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:研究課題1)「どのような若者が援助希求行動をしないのか」を解決するため日本の中高生約2万人を対象とした精神保健調査の解析を行った結果、いじめの被害を受けている生徒で希死念慮が深刻になるほど、つまり自殺リスクの高い生徒ほど援助希求行動が行われない傾向があることが示された(Kitagawa et al., 2014, PLOS ONE)。この結果を受けて、希死念慮や自傷行為といった自殺リスクの高い生徒を特定するため、本人が回答しやすく、周囲も問いやすい質問に着目した。具体的には食欲の低下、不眠に着目し、これら身体的不調が希死念慮や自傷行為と関連するかについて調べた。その結果、食欲がないという訴えをもつ者、不眠を訴える者はそれぞれの訴えのない者に比して、希死念慮、自傷行為のオッズ比が3-5倍となることが明らかとなった。これらの関連は自殺と関わりの強い不安・抑うつ症状を考慮にいれた解析を行っても、引き続き同様の傾向が見られた。この研究は、国際学術雑誌に掲載された(Kitagawa et al.,2016, Appetite)。さらに、食欲不振、不眠以外の身体愁訴と自殺リスクの関連について検討を進め、国際学術雑誌への投稿を進めている。
    上記の研究結果を踏まえ、タブレット端末を活用した自殺リスクを含む精神不調スクリーニングツールの開発を進めている。ツールに搭載したアルゴリズムは、国際的に標準化された尺度による評価に加え、先行研究の知見をもとにスクリーニングを行うものである。また生徒が抵抗感少なく回答できるよう構造の工夫を行った。約10校に導入済みである。
    研究課題2)では、いじめ対策プログラム冊子を作成済みであり、多数のメディアに取り上げられた。小中高等学校、教育委員会等からの問い合わせを受け、現在までに約5000冊を配布した。第2版の作成、効果検証を進めていることろである。
  29. 自殺企図後のうつ病者を「生への意欲」につなげる看護アプローチ 2013-04-01 – 2017-03-31 長田 恭子 金沢大学, 保健学系, 助教 (60345634) 挑戦的萌芽研究 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:自殺企図を行ったうつ病あるいは双極性障害をもつ者の希死念慮を緩和していく過程における語りの変化と研究者の関わりを明らかにすることを目的として、ナラティヴ・アプローチの原則に基づいた非構造化面接を行った。その結果、【死への執着】【自殺前と変わらない孤独感】【先がみえない不安】【現実に直面することによる自信喪失】【生きることに気もちが向く】【生への意欲の芽生え】の6つのカテゴリーが抽出された。
    参加者は生と死の間を揺れ動きながらも前に進んでいること、一度は自ら死を選ぶほどの絶望の淵に立たされた人であっても、わずかながらの希望をもち将来に向かって歩き始めていることが明らかになった。研究実績の概要:
  30. 大学生における精神科治療と学業転帰―自殺予防の観点から― 2013-04-01 – 2016-03-31 石井 映美 筑波大学, 医学医療系, 助教 (30593008) 挑戦的萌芽研究 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:本学保健管理センター精神科受診学生でH16-25年度に学業転帰が決定した学群学生208名を卒業群、退学群に分け、それぞれの診療録を調査した。そして診療録から抽出した要因のうち、何が転帰決定に有意に関与したかを統計学的手法を用いて検討した。
    いくつかの要因のうち、引きこもり期間と留年・休学(過年在籍)の有無・期間が、有意に転帰に関与することがわかった。また、退学群の方が有意に初診時重症度が高く、初診時学年が低いことがわかった。担当教官と治療者の面談回数も多かった。学生の修学を支援するためには、治療はもとより、引きこもりを防ぐための学内の取り組みや、教育組織との連携が重要であると思われた。研究実績の概要:
  31. 地域の総合的自殺対策の科学的政策評価と新たなベンチマーク評価指標の開発 2013-04-01 – 2017-03-31 本橋 豊 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所 自殺総合対策推進センター, センター長 (10174351) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:地域の総合的自殺対策の評価に関する研究、地域の自殺実態を明らかにするプロファイリングのベンチマーク指標の開発を行うことにより研究を行った。 地域の総合的自殺対策推進のための自殺実態プロファイルを開発し、地域自殺実態の一目瞭然化を行った。官庁統計を主体に全ての市区町村で共通のフォーマットによる自殺実態プロファイルを新たなベンチマーク評価指標とした。今後、新たなベンチマークとなりうる地域自殺実態プロファイルに基づき、地域の総合的な自殺対策の推進と、PDCAサイクルに基づく科学的評価が行われることが必要である。研究実績の概要:
  32. 安心安全な社会構築のための時間政策的な研究 2012-04-01 – 2015-03-31 辻 正二 保健医療経営大学, 保健医療学部, 教授 (10123936) 挑戦的萌芽研究 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:本研究、安全な社会を構築するための時間政策的な研究である。今回の研究では、時鐘を聞くことのできる地域に住む人は、住んでいない人や過去に住んでいた人に比べて、地域への愛着度が高くなり、永住意識に関しても高くなることが分かった。三つの時鐘の機能の比較では、寺と教会の時鐘は、コミュニティ意識形成に関しては似た傾向を示し、カラクリ時計の時鐘機能がコミュニティ意識の形成に一番影響力を強いことがわかった。研究実績の概要:
  33. 小地域を単位としたうつ病予防介入と自殺対策 2012-04-01 – 2015-03-31 坂下 智恵 青森県立保健大学, 健康科学部, 講師 (70404829) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:壮年期一般住民を対象としたうつ病スクリーニングとフォローアップ及び健康教育を用いた多層的予防介入を、①小地域に在住する全壮年者群への配布(局所的配布)と②自治体全域の特定年齢者群(広域的配布)の二つの配布方法によって実施した。両者のスクリーニング効率を比較したところ、参加率、把握されたうつ病エピソード有症率及び陽性反応的中度に差はなかった。一部の区域で自殺率の変化を比較したところ、自殺率の減少は局所的配布よりも広域的配布の方が大きいことが示唆された。局所的配布によりプログラムの受入れが良好となったことにより、広域的配布の成功につながったことが示唆される。今後は両者間の自殺率への影響を検討する。研究実績の概要:
  34. 日本型自助組織「断酒会」による社会啓発活動の変遷―薬物乱用対策から自殺予防へ 2012-04-01 – 2015-03-31 眞崎 睦子 北海道大学, メディア・コミュニケーション研究院, 准教授 (40374631) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:自助組織(自助グループ、self help group)とは、共通の問題を抱える個人及びその家族が自らの意思で参加し、「言いっ放し・聞きっ放し」という特徴的なコミュニケーションにより問題の解決あるいは緩和をはかる団体である。1930年代にアメリカのアルコール依存症者の間で始まり、欧米を中心に様々な問題を抱える当事者たちの間で形成されるようになった。本研究では、日本型の自助組織として発展をとげてきた「断酒会」の社会啓発活動のあり方及びその変遷を探る。研究実績の概要:
  35. 自殺の定量的分析 -経済状況と自殺の関係について- 2012-04-01 – 2015-03-31 特別研究員奨励費 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:これまで自殺と社会・経済状況の関係や、日本の自殺の実態に関する研究を行ってきた。自殺問題の研究を行う中で、自殺に至る直前に多くの人がうつ病にかかることが分かった。しかし、うつ病に至るまでに、職場環境の悪化や失業、病気、家族の不和など様々な問題が潜んでいる。そこで、私は自殺問題の研究から得られた知見をさらにメンタルヘルスや主観的幸福度の研究へと発展させ、ライフステージで起こりうる様々なショックに対して人々がどう対応しているのか、という研究を行った。特に、2011年に起こった東日本大震災が、高齢者のメンタルヘルスや主観的幸福度に与えた影響について研究を行った。分析に用いたデータは、中高齢者を対象としたパネルデータ「くらしと健康の調査(以下、JSTAR)」である。JSTARは都市ごとにデータの収集を行っており、第三回の調査は震災の6ヶ月後に行われ、被災地である仙台市が第一回から継続して調査となっている。震災の前と後の両方で、被災地である仙台市と直接の影響は受けなかった他の都市のパネルデータを用いて、差と差の検定を行った。結果、震災後に仙台市の高齢者の中でも60代の女性の主観的幸福度が下がっていること、睡眠の問題などいくつかの精神状態の悪化が見られることが分かった。この研究結果は、国内の学会のみならず国際学会でも発表を重ねており、英文査読雑誌にも投稿済みである。
    採用第3年度は、アメリカ・南カリフォルニア大学経済学部にて、在外研究を行った。そこでは、日本経済の専門家や幸福の経済学の先駆的研究者、高齢者の研究を行う経済学者らを中心に、日本のみならず海外の自殺問題の研究をも議論し、ヒントを数多く得た。その中で、医療や年金といった社会保障制度が日本の高齢者の自殺を防ぎ、高齢者の主観的幸福度にも寄与しているのではないか、と考えるようになり、今後の研究の中心テーマを築くことができた。
  36. 地域高齢者に対する自殺予防の視点を備えた傾聴ボランティアの養成に関する研究 2011 – 2012 竹内 美樹 兵庫大学, 健康科学部, 講師 (60611770) 研究活動スタート支援 研究開始時の概要: 研究概要:自殺予防の視点を備えた「傾聴ボランティア」活動で、負担とやりがいを調査した。結果、負担なのは(1)うつ病等の知識が少ない、(2)活動中に起こったグループ内の問題等であった。やりがいは(1)感謝されてプライドが満足できる、(2)ボランティアに参加するとポジティブ思考になる、であった。考察として、傾聴ボランティア養成講座の中で、うつ病等の病気の知識の時間数を増やし、対応法を習得してから実践に出ることが、不安軽減と活動継続につながることが示唆された。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  37. 社会医学・行政が連携した大規模調査に基づく具体的自殺予防対策プログラムの構築 2011 – 2013 井上 顕 島根大学, 医学部, 准教授 (40469036) 若手研究(B) 研究開始時の概要: 研究概要:日本の自殺死亡率は世界でも上位である。日本における自殺者数は1998年に30,000人以上と急増して未だ急増前の推移にまで戻っていない。本研究においては(1)「各都道府県別自殺予防対策と動向の比較」、(2)「自殺の詳細な実態調査」、(3)「海外調査」を行い、これらをまとめた上で、(4)「有効な自殺予防対策を立案」するという流れであった。(1)から(3)をまとめ、(4)において年齢層ももちろん考慮した上で、「精神疾患」、「失業・借金苦」、「病苦」に殊に焦点をあてた自殺予防対策を立案することが大切な1項である。医学・行政・対策に関連する分野等の側面から全観点も含め、対策を検討する必要もある。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  38. 東アジアの高齢者自殺問題とその社会文化的要因に関する研究 2011 – 2013 朴 光駿 佛教大学, 社会福祉学部, 教授 (30351307) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:本研究は、東アジア地域全体が著しく高い自殺率を示していることに着目し、高齢者自殺を死に関わる東アジアの社会文化問題としてとらえ、子女に対する過度の出費、自立しない成人子女の問題などは高齢者の自殺リスクを高める要因であることを証明するための研究である。また、高齢者自殺に対する仏教の態度を、仏教経典の内容分析を通じて明らかにし、仏教は自殺を禁止していない、という見解を批判的に検討し、仏教本来の教えに基づいた自殺観を提示し、それを現代的に解釈した
    研究成果は日本・韓国・中国の学術論文集に発表され、韓国(2013年)と日本(2012年)で単行本として発刊されている。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  39. 学生の自殺予防におけるコミュニティ・モデルの有用性に関する研究 2010-04-01 – 2014-03-31 杉岡 正典 香川大学, 学内共同利用施設等, 講師 (70523314) 若手研究(B) 研究開始時の概要: 研究概要:本研究は,近年増加している大学生の自殺問題に対する予防策を構築するために,学生相談体制におけるコミュニティ・モデルの有用性と課題について検討した。その結果,①自殺願望や自傷行為のある学生が一定数いること,②学生間で自殺や死にたい気持ちについて話題になり相談が行われることはまれではないこと,にもかかわらず,自殺予防に関する教育を受ける機会は乏しかったこと,③教職員へのコンサルテーションや教職員への研修(FD/PD)のニーズが高いこと,④心理教育には一定の有用性が確認されたが,自殺問題を抱える学生とかかわることの戸惑いと心的負担があること,が示唆された。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  40. 南九州における高齢者うつ病の疫学的研究 2010 – 2012 藤瀬 昇 熊本大学, 医学部附属病院, 講師 (20305014) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:熊本県内の農山村部と都市部において高齢者うつ状態の実態調査を行った。北日本を中心としたわが国の従来の報告とは異なり、独居とうつ状態とが有意に関連していた。さらに独居であっても社会的サポートを充実させることでうつ状態への進展を防ぐことが出来る可能性が示唆された。また、社会的サポートの乏しさは山間部に、睡眠障害は都市部に特有のリスク因子であった。今後、高齢者のうつ予防介入を行うにあたっては地域特性を考慮した取組みが効果的であると考えられた。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  41. 科学的政策決定のための統計数理基盤整備とその有効性実証 2010-04-01 – 2015-03-31 北川 源四郎 大学共同利用機関法人情報・システム研究機構(新領域融合研究センター及びライフサイ, 新領域融合研究センター, センター長 (20000218) 基盤研究(A) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:本研究では,科学的情報収集に基づく社会価値選択,価値を決定する構造モデル導出,価値のモデル上での最適化,最適化された価値の社会への還元からなる情報循環設計を科学的政策決定の統計数理科学的枠組みと位置づけ,政策の科学的決定に資する統計数理体系構築を目的とした.
    本研究を通じて,公的ミクロ情報分析統計基盤の確立,情報循環加速ツールの開発,時空間可視化ツールの開発を達成し,同成果を自殺予防対策研究,観光政策研究,産業環境政策研究に応用し,それぞれの政策立案に資する新たな知見を得るとともに,データに基づく政策を提言した.研究実績の概要:
  42. 住宅用火災警報器等の普及による住宅における火災規模及び死者数の比較に関する研究 2010 – 2012 特別研究員奨励費 研究開始時の概要: 研究概要:本年度は最終年度であるので、主に本論の作成をした。それとともに、統計学を利用した延焼拡大防止の評価について時間を費やした。
    この評価においては、その前段階の評価手法の確立が困難であった。手法として、統計学を利用し延焼拡大防止の評価をしようとしたが、本論作成の時間とのバランスの問題で評価手法を確立できずに終わるに至る。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  43. 社会保障制度の政治的決定メカニズムについて 2010 – 2011 特別研究員奨励費 研究開始時の概要: 研究概要:平成23年度は主に、1、自殺の経済学的分析と2、高齢化社会における社会保障の政治的決定の研究を行った。
    1.1990年代後半以降、日本において自殺問題は最も深刻な社会問題の一つとなっている。自殺者は1997年~1998年にかけてのいわゆる金融危機の時期に35%もの急増を見せ、1998年以降は毎年3万人以上の自殺者がいる。そこで、所得の減少や流動性制約が人々を自殺に追い込むのではないかという仮説のもと、自殺研究に経済学的な視点をもたらすことが急務であると判断し研究を行なった。具体的には、1997年から1998年にかけての金融危機と自殺者急増の関係と、1998年以降の自殺者数の高止まりの原因を寄与度分解と回帰分析を使って明らかにした。結果、1998年の自殺者の急増は主に中高年の男性によるところが大きく、なかでも自営業者の自殺がこの時期に急増していることが大きく影響していた。そして、失業率と自己破産件数が自殺率に有意な影響を与えていた。これは金融危機時の「貸し剥がし・貸し渋り」によって、多くの自営業者が倒産し、多くの雇用者も失業したことから、彼らが自殺においこまれたということができる。そして1998年以降の高止まりは20代,30代の若年層の自殺の増加が寄与していることを明らかにした。そこで、なぜ若年層の自殺が増加しているのかという問題に対して、雇用状態に注目した研究も行った。その研究により、若年層の非正規雇用の増加と同年齢層の自殺率の増加は強い正の相関があり、40, 50代の中年層の無業率と同年齢層の自殺率に相関があることを明らかにした。また、研究を遂行するにあたっては、自死遺族の方々から、自殺した方が持っていたであろう悩みや職業等の状況、遺族支援の実情の聞き取りも行った。
    2.高齢化が税率と政府支出に占める社会保障費の割合に与える影響について投票行動を含んだ理論モデルを完成させた。現在、国際学術雑誌へ投稿準備中である。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  44. 自殺未遂経験のあるうつ病入院患者に精神科看護師が行う看護行為の理論化 2009 – 2010 三瓶 舞紀子 順天堂大学, 医療看護学部, 助教 (70550820) 研究活動スタート支援 研究開始時の概要: 研究概要:精神科看護師が行っている自殺未遂経験のあるうつ病入院患者への看護行為を明らかにすることを目的とし、精神科病棟看護師30名へのインタビュー内容をGrounded Theory(strauss et al.,2007)を用いて分析した。その結果、中核カテゴリ【再度の自殺を防止する】と関連する5つのカテゴリ【患者の気分の変動を最小限にする】【再度の自殺の徴候を察知する】【患者の馴染みになる】【一進一退の患者につきあう】【患者自身で解決する力をつける】が抽出された。本研究により当該患者への看護行為が明らかになった。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  45. 自殺と地磁気擾乱との関連性を検証するための研究 2009-04-01 – 2013-03-31 多田 春江 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (10432379) 若手研究(B) 研究開始時の概要: 研究概要:日本全体の月毎の自殺者数と月毎のK指数平均値との関連性を、他の要因を調整した上で、重回帰分析を用いて男女別に解析したところ、男性では、統計学的に有意な相関がみられたが、女性ではみられなかった。
    地磁磁気の擾乱が自殺に影響を与えるのであれば、地磁気の強い場所ほど、地磁気の変動も大きいため、自殺者数が増える可能性が考えられる。そこで、都道府県別の月毎の自殺による標準化死亡比と各都道府県の地磁気の強さとの関連性を、他の要因を調整した上で、重回帰分析を用いて男女別に解析したところ、男性では、統計学的に有意な相関がみられたが、女性ではみられなかった。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  46. 空間データの構造解析とその集積性の研究 2009 – 2011 石岡 文生 岡山大学, 大学院・法務研究科, 助教 (20510770) 若手研究(B) 研究開始時の概要: 研究概要:ある郡における病気の発生率等の様な領域毎に得られる各種の空間データに対して、有意に高い領域群(集積性、クラスター)を検出する新たな手法を確立した。具体的には、空間データが本来もつ階層構造の上位に位置する領域から優先的にホットスポット領域を探索していく。これにより、大量の領域からなる空間データや、多次元空間データ、時空間データなど、先行研究では困難であった各種の空間データに対するホットスポット検出を可能にした。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  47. 気候変動と自殺遂行の関連についての検討 2008 – 2010 井上 顕 藤田保健衛生大学, 医学部, 講師 (40469036) 若手研究(B) 研究開始時の概要: 研究概要:日本の自殺者数は1998年に急増し、近年においてもその推移であることから分かるように、自殺減少のための確立した対策が早急に必要である。本研究では気候要因の側面に着目し、各気候項目が自殺遂行への影響について日本の自殺死亡率の高・低都道府県を複数対象とした他、いくつかの事項に関して統計学的検討を行い、また、季節の点からも検討した上で、考察した。そして、日本全体としての観点とともに各地域からも考察し、様々な要因の検討とともに注意を払うべき気候変動を考えることが重要である。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  48. 中山間地域高齢者の抑うつ状態に対する栄養介入の効果 2008 – 2010 山下 一也 島根県立大学, 短期大学部・看護学科, 教授 (30210412) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:魚摂取を増やす介入(魚料理教室)がうつ状態に与える影響について検討した。対象者は高齢者22名で、月1回の料理教室の開催を1年半行った。75歳以下の群ではツング自己評価式抑うつ尺度37.4±6.1点(前)から31.7±7.7点(後)へと減少傾向がみられた(0.05<p<0.1)。75歳以上の群では変化は認められなかった。魚摂取は前期高齢者では、うつ状態の改善効果が期待できることが示唆された。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  49. うつ病患者-家族支援:eラーニングの教育効果と活用の可能性についての研究 2007 – 2008 北川 明 福岡県立大学, 看護学部, 講師 (20382377) 若手研究(B) 研究開始時の概要: 研究概要:社会問題であるうつ病および自殺者数増加の防止、低減を目指し、その中で現代社会において最も急速に発展を遂げてきているインターネットを利用してのヘルスケア教育の在り方や今後の課題についての知見を得ることを目的とし、うつ病患者に対しアンケート調査を行った。その結果、「不安(70%)」、「落ち込む(70%)」、「不眠(70%)」といったことに悩んでいた。また、うつ病の情報収集にインターネットを利用したいと考えているものは70%であった。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  50. Age-Period-Cohort分析による都道府県別自殺動向の世代特徴の解明 2007 – 2009 小田切 陽一 山梨県立大学, 看護学部, 教授 (20152506) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:自殺は公衆衛生学上の重要課題であり、効果的な対策を講ずる上で高リスク集団の把握が必要である。1985~2004年の15-79歳の自殺死亡について、ベイズ型年齢-時代-コホート分析をおこない、性別、都道府県別の結果について、クラスター分析により、年齢・時代・コホート効果の変動パターンを類型化した。50歳代男性を中心とした年齢効果、1998年以降の時代効果および特徴的な世代(男性:1926年生まれ以降1844,61,81年ピーク、女性:1956年以降)効果として高リスク集団が把握された。またクラスター分析の結果からは、男女ともに大都市圏を含む都道府県に類似性を認めた。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  51. 初発統合失調症者の25年長期転帰に関わる社会心理学的・生物学的要因の影響 2006 – 2007 中根 秀之 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 准教授 (90274795) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:【目的】長崎大学精神神経科学教室では1978年からWHOの共同研究の一つとして、初発統合失調症患者における転帰研究を行っている。今回我々はその継続的研究として、昨年度より超長期経過と転帰について調査を行った。
    【方法】対象は、1979年から2年間に発病した統合失調症事例(107例)である。発病率調査のために設定された長崎市内及び近郊の30の病院、医院、保健所などの施設(Case Finding Network)を中心に、協力依頼施設にて追跡を行った。各主治医に研究の趣旨や方法を説明し、承諾が得られた場合対象者に接触した。対象者・家族に研究の趣旨を説明し同意が得られた事例について、調査を行った。評価項目としてPANSS、SANS、Mini-ICF-Rating for Mental Disorders(Mini-ICF-P)、DAS、LCS、KAS、WHOQOL-26、バウムテスト、GAF、GAS、CGI等を用いた。Mini-ICF-PはWHOが発表したICFをもとにしてLinden M(2005)によって開発された新しい評価尺度である。この調査はヘルシンキ宣言の主旨に沿った倫理的配慮の下、十分なインフォームド・コンセントを得た上で、プライバシーに関する守秘義務の遵守と匿名性の保持に十分な配慮をして行った。本研究は長崎大学医学部倫理委員会で承認されている。
    【結果】現在、調査は進行中であるが、17例(男性6例、女性11例)の面接調査を行った。9例の死亡が確認された。そのうち6例が自殺であった。その他生存確認例が3例であった。
    【結論】DUPの長短が超長期の症候学的転帰に影響を及ぼすことが確認された。またMini-ICF-PとDASの間に有意な正の相関が認められた。今後、社会適応度評価の新たなアセスメントツールとしてini-ICF-Pの有用性が示唆された。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  52. 自殺予防活動をメンタルヘルスの視点から評価する指標の開発 2006 – 2007 佐々木 久長 秋田大学, 医学部, 准教授 (70205855) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:自殺予防活動を自殺者数(自殺率)で評価するのは簡単なことではない。また実際に展開される心の健康づくりなどの自殺予防活動は、一次予防的な側面も持っている。そこで、メンタルヘルスの視点から、活動を評価する指標を開発することを試みた。
    本研究は、自殺予防活動に積極的に取り組んで来た地域と、隣接する地域の住民を対象にした横断的調査を実施し、自殺予防活動が住民に与えた影響を調べた。調査内容は基本的属性の他、社会的支援、抑うつ度(SDS)、希死念慮や自殺・自殺予防に対する態度、ストレス・ストレス対処行動である。なお、調査直前に対象地域で児童連続殺害事件が発生したためPTSDに関する項目も加えた。
    両地域の比較分析の結果、自殺予防活動を展開した地域では、近隣からの道具的支援、自治体相談窓口の認知、そして相談相手の存在という点で肯定的な反応が多かった。PTSDについては17%の住民に該当する可能性が示唆された。
    さらに地理的に離れた地域でも同様の調査を実施した所、自殺予防活動に取り組んできた地域は、ストレス対処行動において「否認」が少なく「相談」が多かったのに対し、取り組んでいない地域は「否認」が多く「欲求を満足する」が多かった。
    以上の結果から、自殺予防活動は社会的支援とストレス対処行動を指標にすることで、その取り組みの成果を評価することが出来るということがわかった。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  53. 地域づくり型自殺予防対策の有効性に関する研究-ソーシャルキャピタルモデルの構築- 2006 – 2008 本橋 豊 秋田大学, 医学部, 教授 (10174351) 基盤研究(B) 研究開始時の概要: 研究概要:秋田県で行われてきた住民参加型の自殺対策モデルにより、秋田県の自殺者数は毎年約24人減少することが明らかになった。秋田県の自殺対策モデルはソーシャル・キャピタルモデルとして解釈できることから、地域の自殺対策の推進におけるソーシャル・キャピタルモデルの有用性が本研究で検証されたと考える。総合的な地域づくり型自殺予防対策が有効性を示したことは、何よりも自殺対策におけるソーシャル・キャピタルの重要性を根拠づけるものと考えられる。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  54. うつ病の病態解明を目指した発現プロテオミクス 2005 – 2006 河合 香里 徳島大, 研究員 (80398007) 若手研究(B) 研究開始時の概要: 研究概要:現代社会においては自殺者数の増加が大きな問題になっているが、自殺者の約7割がうつ状態であるといわれており、ストレスに起因するうつ病発症のメカニズムを解明することは急務である。我々は、末梢血白血球を用いたストレスの客観的かつ簡便な評価システムであるDNAチップを(株)日立製作所と共同開発し、うつ病特異的に変動する遺伝子群を同定した。
    本研究ではDNAチップの結果に基づき、うつ病特異的に変動する遺伝子群の機能解析を行い、うつ病発症に関連するストレス応答のバイオマーカーを探索することを目的として、以下の検討を行った。
    1)末梢血白血球mRNAを用いたリアルタイムPCRによるDNAチップの結果の検証
    うつ病患者および健常者より採取された末梢血白血球よりRNAを抽出し、リアルタイムPCRによって、DNAチップで同定された約100個の遺伝子についての発現変動を検討した。なおサンプル採取にあたっては、本研究の目的・情報管理などについて説明を行うとともに、書面での合意を取得している。
    2)ストレス負荷モデルマウスを用いた脳内遺伝子発現変化の検討
    うつ病患者の末梢血白血球での遺伝子発現変化と脳内での変化の相関について明らかにしたいが、倫理上患者の脳サンプルで行うことは困難である。そのため、ストレス負荷時の脳内遺伝子発現変動についてはマウスを用いて検討した。C57BL/6マウスに1時間および6時間の拘束ストレスを3週間にわたり負荷し、血液・脳を採取した。ストレス負荷により血中コルチコステロンレベルの上昇が認められた。脳内の遺伝子発現変動については、リアルタイムPCRで検討するとともに、それらの発現部位を同定する目的で、in situ hybridizationおよび免疫組織学的検討を現在進めているところである。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  55. 高齢者のうつ病早期治療と自殺予防を目的とする都市型地域介入プログラムの開発 2005 – 2006 粟田 主一 東北大学, 大学院医学系研究科, 非常勤講師 (90232082) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:1.日本語版WHO-5の有用性を地域在住高齢者の自殺念慮検出という文脈で評価した.70歳以上高齢者696人に一連のアンケート調査を実施Chronbach α係数は0.87,Loevinger係数は0.64.WHO-5合計点は,同居家族数,身体疾患数,身体機能,手段的ADL,抑うつ症状と有意に相関.自殺念慮をもつ高齢者ではWHO-5合計点が有意に低い.ROC曲線分析は自殺念慮のある高齢者を有意に識別.主観的ソーシャルサポート(PSS)欠如と組み合わせ,WHO-5合計点12点以下またはいずれかの項目で0点または1点であることをカットオフにすると,より適切に自殺念慮を識別できた(感度87%,特異度75%,陰性的中度99%,陽性的中度10%).日本語版WHO-5はPSSとの組み合わせで地域在住高齢者の自殺念慮を効果的に検出できる.
    2.高齢者のうつ病早期治療と自殺予防を日的とする都市型地域介入プログラムを開発するために、ポピュレーション戦略とハイリスク戦略を組み合わせた総合的地域介入プログラムの効果を,自殺念慮と精神的健康度を転帰の指標として調査した.普及啓発,保健相談,地域活動強化,スクリーニング型介入は地域住民のソーシャルサポートを高め,保健専門職による訪問・ケースマネジメント型介入がうつ病高齢者の精神的健康度を高め,自殺念慮を軽減した.また、2002年にスタートした本研究および2004以降に仙台市でモデル事業化されている総合的地域介入事業が高齢者の自殺率に及ぼす効果を検証するために、仙台市における高齢者の自殺死亡数の推移を調査したところ、1990年〜2001年までは80歳以降の後期高齢期に自殺率のピークが認められていたが,2002-2005年の4年間で後期高齢期の自殺率ピークが消失した.後期高齢期の自殺率ピークの消失は,男女いずれの群にも認められた.高齢者の自殺率減少が最も目立つ区は,モデル事業として介入事業をスタートさせた宮城野区であった.うつ病高齢者を対象とする総合的地域介入事業は,高齢者の自殺予防に有効である可能性が高い. 研究成果の概要:研究実績の概要:
  56. 家族を自殺で亡くした人へのSpiritual Careに関する研究 2002 – 2004 吉野 淳一 札幌医科大学, 保健医療学部, 助教授 (80305242) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:家族を自殺で亡くした人へのSpiritual Careとして3つのアプローチを行った。
    一つは、自死遺族の思いを語る集い(癒しの会)というグループアプローチである。もう一つは、シャーマンへのインタビューにより、この世とあの世をつなぐ役割を負って来た者の認識を知り、自死をどのように捉えているかを知ることである。最後は、自死遺族の夢の中での自死者との対話に焦点を当て、コミュニケーションが死後も続けられていることを遺族とともに確認していくことである。
    これらの3つのアプローチは、トランスパーソナル心理学/精神医学会、日本家族研究・家族療法学会等で発表してきた。
    家族を自殺で亡くした人へのSpiritual Careの中核を構成するであろう””癒し””は、生きること死ぬことの本態とその関連を知りつつ自らが納得できるストーリーと出会っていく旅の中にそのヒントが隠されているのではないかと思われる。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  57. 豪雪・過疎地における老人自殺予防に関する研究 2000 – 2003 細木 俊宏(2002-2003) 新潟大学, 医歯学総合病院, 助手 (00313544)
    高橋 邦明(2000-2001) 新潟大学, 医学部・附属病院, 助手 (00303149) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:高齢化社会のモデルとして豪雪・過疎地である中郷村を選び、松之山町で成功した自殺予防介入方法を異なる地域で用いることによって、有効な自殺予防介入を検証した。平成13年(平成12年度)から3回にわたって、対象者である60歳以上の中郷村村民全員(1684〜1688人)に新潟大学方式自己記入式うつ病尺度(SDS)を配布し、SDSを回収した。回収されたSDS点数をもとに、うつ状態や自殺の危険性を評価するためにDCRによる診断面接を行なった。2年目からは積極的な介入を行なうため、自責感、焦躁感、希死念慮の有無が自殺の危険性と関連している質問項目として5つを選び、診察対象者を絞り込んだ。対象者を精神科医師が診断面接し、うつ状態や自殺の危険性を評価し、自殺予防介入方法としてその妥当性を検討した。また啓蒙活動としてうつ病について講演をおこなった。平成12年度〜14年度の3年間で8名が自殺したが、7名のSDS点数は60点未満であり、診断対象から外れていた。また1名は絞込み項目で点数が低いことから診察対象から除外された。そのためSDSの総得点、絞り込むための項日は自殺既遂者を特徴づけるものとはいえなかった。しかし自殺既遂者によるアンケート結果から、自分が社会や家族にとって必要とされるか、仕事を気楽にできるか、充実した人生であるか、頭はすっきりしているか、息苦しいか、動悸がないか、などへの回答が自殺既遂者と非既遂者で異なる傾向があった。
    現時点まで介入前後における中郷村の自殺率の変化は認められない。啓蒙活動の継続や地元スタッフ参加協力による共同活動を通して、地域における自殺予防介入の重要性とその必要性についてある程度の理解が得られた。しかしうつ病の早期発見、早期治療から自殺を予防していくためには今回用いた手法の限界、絞込みや訪問診察などの介入方法、評価方法に改善すべき点があると考えられた。 研究成果の概要:研究実績の概要:

ニューロフィードバックに関する科研費研究183採択課題

バイオフィードバックは自分の身体の状態(発汗、心拍数など)を計測・可視化しリアルタイムで自覚することにより、よりよい身体の状態になるようにするトレーニングです。脳波も身体の状態を表しますが、望ましい脳波の状態を得るためのトレーニングが、ニューロフィードバックです。

  1. ハイパーニューロフィードバックによる個人間脳同調の制御手法の開発 21K19787 2021-07-09 – 2024-03-31 野澤 孝之 東京工業大学, その他部局等, 准教授 (60370110) 中区分61:人間情報学およびその関連分野 研究開始時の概要:挑戦的研究(萌芽) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  2. 脳内サウンド刺激による新奇ニューロフィードバック手法が挑む自己想起型BCI創生 21K18304 2021-07-09 – 2025-03-31 和田 安弘 長岡技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70293248) 中区分61:人間情報学およびその関連分野 研究開始時の概要:挑戦的研究(開拓) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  3. 妬みのサブタイプを制御する脳内処理メカニズムの同定 21K13758 2021-04-01 – 2024-03-31 土元 翔平 生理学研究所, システム脳科学研究領域, 特別研究員 (80849315) 小区分10040:実験心理学関連 研究開始時の概要:若手研究 研究概要:私たちは他者が自分よりも優れていたり、多くの報酬をもらっている状況を見たときに羨んだり妬んだりする。自分よりも優れている他者の中には、他者を目標として自分も頑張ろうと励みになる他者がいる一方で、その他者に不幸が起きれば良いのにと妬みの対象になる他者が存在することが知られている。虐待やいじめの原因の根底にあるネガティブな妬み感情のコントロールは解決すべき社会問題である。そこで本研究では、相手の報酬に対する帰属先に着目して、妬みのサブタイプに対応する脳活動パターンを同定する。そして同定した脳活動パターンをニューロフィードバック法にて制御することで、妬みの感情と行動の因果関係を明らかにする。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  4. ニューロフィードバックを用いた認知行動療法の補強効果 21K13727 2021-04-01 – 2024-03-31 横山 仁史 広島大学, 医系科学研究科(医), 助教 (40727814) 小区分10030:臨床心理学関連 研究開始時の概要:若手研究 研究概要:本研究は、うつ病の治療成績を向上させるための認知行動療法とニューロフィードバックのハイブリッド治療戦略の提案を通して、脳科学に基づく治療開発に向けた実用的・学術的な知見の拡大を目指す。うつ病に対する認知行動療法(CBT)への期待はますます高まっているが、ここ20年の治療効果量は大きく変化してない。CBTが引き起こす脳の機能的変化から、CBTがうまく作用しない脳作用経路が明らかになってきている。ニューロフィードバックはCBTが直接作用しない脳回路に働きかけることが可能であるため、CBTの作用を補強するニューロフィードバックを開発し、それがCBTの治療効果を向上させるかについて検証を行う。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  5. 発達性協調運動障害に対する前頭-頭頂ニューロフィードバックトレーニングの効果検証 21K11258 2021-04-01 – 2024-03-31 信迫 悟志 畿央大学, 健康科学部, 准教授 (50749794) 小区分59010:リハビリテーション科学関連 研究開始時の概要:基盤研究(C) 研究概要:発達性協調運動障害(Developmental Coordination Disorder:DCD)は,運動の不器用さを主症状とする神経発達障害の一類型である.この運動の不器用さの原因として,運動学習や運動制御を担う脳機能に問題が生じていることが分かってきている.本研究では,脳波測定によって,DCDにおける脳機能の問題を詳細に明らかにすると共に,問題が生じている脳機能を直接的に活性化させるニューロフィードバック・トレーニングを実施することによって,DCDを有する児の運動の不器用さが改善するか否かを検証するものである. 研究成果の概要:研究実績の概要:
  6. 脳状態依存刺激を活用した手指分離運動の神経基盤解明とリハビリへの応用 21K11174 2021-04-01 – 2025-03-31 緒方 勝也 国際医療福祉大学, 福岡保健医療学部, 教授 (50380613) 小区分59010:リハビリテーション科学関連 研究開始時の概要:基盤研究(C) 研究概要:本研究計画ではこれまで明らかにしてきた運動誘発電位(MEP)の時間的揺らぎに対して、MEPの標的筋と周囲筋の応答の差異(空間的揺らぎ)に着目する。MEPを多チャンネル(ch)で同時記録し、MEPの空間的揺らぎと脳波の関連(脳波-多chMEP連関)のシステムを構築、分離運動時の脳波律動を解析する。続いて脳波律動に合わせ磁気刺激を行う脳状態依存刺激で分離運動の誘発を行い、脳波-多ch MEP連関を検証する。これらの研究を基に、脳波律動を被験者に視覚提示するニューロフィードバックに応用する。
    一連の研究を通じて手指分離運動の神経基盤の理解を深め、新たなニューロリハビリテーション方法の開発を目指す。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  7. 個人の脳活動制御能を予測する脳指標の特定とメカニズム解明 21K07521 2021-04-01 – 2024-03-31 高村 真広 島根大学, 学術研究院医学・看護学系, 助教 (50720653) 小区分52030:精神神経科学関連 研究開始時の概要:基盤研究(C) 研究概要:うつ病等の精神疾患に対する新規治療法の候補としてニューロフィードバック治療(NF治療)の研究が進められている。NF治療とは、患者の脳活動状態をリアルタイムでフィードバックし、患者自身が脳活動の制御法を学習することで、疾患によって変化した脳機能を回復させる治療である。これまでNF治療の有効性を示唆する報告がある一方で、脳活動の制御そのものが得意か不得意かという個人差が治療効果を左右してしまう問題が認識され、実用化にむけた課題となっている。本研究はこの問題の解決にむけて、この個人差を事前に予測する脳画像指標や個人差が生まれるメカニズムを検討し、より効果的なNF治療の開発に資する基礎研究を展開する。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  8. 神経振動異常と言語性幻聴の因果関係:聴覚訓練とニューロフィードバックによる検討 21J40073 2021-04-28 – 2024-03-31 小区分10040:実験心理学関連 研究開始時の概要:特別研究員奨励費 研究概要:統合失調症の新たな病態基盤として大脳皮質における興奮性と抑制性の神経伝達バランスの障害が注目されている。このような障害を反映する神経生理学的な指標として30 Hz以上の頻度で起こる神経活動であるγオシレーションの異常が知られておりその異常の度合いが統合失調症者の約8割に見られるとされる「言語性幻聴」の症状の強さと相関することが知られている。本研究では言語性幻聴の症状と関連が深いと考えられる統合失調症者の聴覚皮質におけるγ及びθオシレーションの異常に注目し、その異常と言語性幻聴の症状を改善するための、聴覚訓練課題とその訓練効果を促進させるニューロフィードバック課題を開発することを最終目的とする。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  9. 感覚運動ネットワークの再編成を誘導する標的定位型ニューロフィードバック法の開発 21J20955 2021-04-28 – 2024-03-31 小区分59010:リハビリテーション科学関連 研究開始時の概要:特別研究員奨励費 研究概要:ヒトは与えられた環境に対して感覚情報をもとに動的に適応する。しかしながら、感覚運動適応を実現する脳と行動変化の対応関係は未だ十分に明らかにされていない。そこで本研究では、運動関連脳領域の活動パタンから同定される感覚運動ネットワークを標的とした神経機能修飾技術を確立し、運動技能への影響を検討することを目的とする。上肢運動の遂行に関連する感覚運動ネットワークの機能変化を誘導するニューロフィードバック法を開発し、訓練前後での行動学的評価から神経活動パタンと運動機能の関係を因果的に検証する。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  10. 観察学習を促進する脳波フィードバック訓練の検討 21J00886 2021-04-28 – 2024-03-31 小区分90030:認知科学関連 研究開始時の概要:特別研究員奨励費 研究概要:本研究では、動作の観察時のニューロフィードバックがミラーシステム(動作観察時に賦活する脳の運動関連領野)の状態にどのように影響するか、活動脳領域の変化を調べる。また、ニューロフィードバックを用いた運動の観察学習を行い、運動学習が促進されるか検討する。実験では、fMRI(機能的磁気共鳴画像法)と脳波の同時計測システムを使用し、動作観察中の活動脳領域について調査する。また、動作の観察と実行を1 セットとし、それを繰り返す訓練(観察学習訓練)を行う。訓練中の動作観察時にニューロフィードバックを行い、運動学習や運動機能の変化について調べる。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  11. スマート端末を用いた脳状態計測技術の開発とビッグデータ解析 21H04909 2021-04-05 – 2025-03-31 天野 薫 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 教授 (70509976) 中区分61:人間情報学およびその関連分野 研究開始時の概要:基盤研究(A) 研究概要:知覚,認知,運動など多くの機能を司る脳の状態を知ることは心身の健康維持にとって不可欠であるにもかかわらず,脳の状態を測る機会は極めて限定的である.そこで本研究では,脳波計やMRIなどの脳計測装置を使わずに,スマート端末だけを使っていつでもどこでも気軽に脳の状態を計測する技術を開発し,日常的な脳の健康管理による健康寿命の延伸を実現することを目的とする.この目的を達成するため,①スマート端末だけを使っていつでもどこでも気軽に脳の状態を計測するための技術開発,②その技術に基づく,脳状態と活動量や認知機能の関係に関するビッグデータ収集と分析,③脳状態の変調による機能向上,の3つのステップで実現する. 研究成果の概要:研究実績の概要:
  12. TMSニューロフィードバック学習によるヒト脳活動制御と神経疾患への応用 20K21770 2020-07-30 – 2023-03-31 小金丸 聡子 獨協医科大学, 医学部, 准教授 (40579059) 中区分59:スポーツ科学、体育、健康科学およびその関連分野 研究開始時の概要:挑戦的研究(萌芽) 研究概要:経頭蓋磁気刺激(TMS)により、一次運動野(M1)を刺激すると、筋電図上、運動誘発電位(MEP)が生じる。MEPの振幅を被験者にフィードバックし、被験者が内因性にMEP振幅の大きさを変化させることを学習する『TMSニューロフィードバック学習システム』を用いることで、TMSニューロフィードバック学習により脳内神経活動を内因性に変化させることを学習させ、脳内神経活動の制御を目指す。健常者においては、新たな学習法の確立をめざす。また患者においては異常な神経活動を内因性に修復することを学習させることにより、新たな治療法の確率をめざす。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  13. ミラーシステムの活動強化による観察学習促進効果の検討 20K15887 2020-04-01 – 2023-03-31 池田 悠稀 九州大学, 芸術工学研究院, 学術研究員 (60868800) 小区分45060:応用人類学関連 研究開始時の概要:若手研究 研究概要:観察学習を行うときに、脳ではミラーシステム(動作観察と動作実行の両方で活動する脳の運動関連領域)が賦活する。ミラーシステムは模倣や動作の習得に重要な神経機構であるが、ミラーシステムの活動と動作習熟の関係は不明瞭な点が多い。また、ミラーシステムの活動を向上させることで動作の習得が促進されるかは明らかでない。本研究では、観察学習を行う際にミラーシステムの活動を向上させる訓練を行い、通常の観察学習や観察を行わない運動学習をした群と比較することで、ミラーシステムと動作習熟の関係について明らかにする。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  14. 神経生理学的「あがり」指標の開発とニューロフィードバックトレーニングへの応用 20K11367 2020-04-01 – 2023-03-31 佐藤 大樹 芝浦工業大学, システム理工学部, 教授 (90416933) 小区分59020:スポーツ科学関連 研究開始時の概要:基盤研究(C) 研究概要:精神的重圧がかかるスポーツ競技や人前での発表において、緊張に伴いパフォーマンスが低下する現象を「あがり」と呼ぶ。その発生メカニズムの解明は未だ不十分であるが、近年では神経生理学的研究も進みつつあり、「『あがり』は脳で生じた現象である」ということが分かってきた。本研究では、脳血流信号や脳波、心拍、呼吸を含む複数生体信号群の同時計測、および機械学習を用いた解析を用いて、「あがり」と「良い緊張」を切り分ける総合的な神経生理指標(「あがり」指標)を確立することを目的とする。また、その「あがり」指標を用いたニューロフィードバックトレーニング法を開発し、その有効性の評価を試みる。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  15. ニューロフィードバックによる事象関連電位調節手法の開発 20K11176 2020-04-01 – 2023-03-31 高野 弘二 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所 脳機能系障害研究部, 研究員 (00510588) 小区分59010:リハビリテーション科学関連 研究開始時の概要:基盤研究(C) 研究概要:ニューロフィードバックは対象者に自身の脳活動を評価し、視覚・聴覚などの何らかの形で対象者に提示することで、脳活動を自発的に制御し、目的に合わせた脳内ネットワークの構造に誘導する技術である。
    発達障害や高次脳機能障害などでは、特定の認知機能の強弱により、日常に困難が生じることがあり、その解決手法が求められている。
    本研究では、特定の認知課題に対する脳活動を判別する手法を開発、その脳活動の強化・抑制を可能とするニューロフィードバック手法の開発を行う。これによって従来手法では困難であった脳活動を選択的に強化ないし抑制することが可能とし、それにより認知リハビリテーション技術の向上に当てるものである。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  16. 脳卒中片麻痺上肢に対するテーラーメイド型ニューロフィードバック法の開発と効果検証 20K11173 2020-04-01 – 2023-03-31 中野 英樹 京都橘大学, 健康科学部, 准教授 (60605559) 小区分59010:リハビリテーション科学関連 研究開始時の概要:基盤研究(C) 研究概要:高齢者医療費・要介護認定要因の第一位である脳卒中患者の運動機能回復を促進させることは喫緊の学術的・社会的課題である.しかし,脳卒中患者の上肢機能を改善させるエビデンスの高い治療法は未だ確立されていない.本研究は,脳卒中患者の脳機能個人差を考慮したテーラーメイド型ニューロフィードバックトレーニングを開発し,それが脳卒中患者の上肢機能に及ぼす効果を運動機能と脳機能の観点から明らかにすることを目的とする.本研究により,個々の脳の特性に基づいたテーラーメイド型ニューロフィードバックトレーニングが開発されれば,脳卒中患者の運動機能回復を最大限に引き出すことが可能になると考える. 研究成果の概要:研究実績の概要:
  17. ニューロフィードバック技術を応用した前庭リハビリテーション法の創成 20K09752 2020-04-01 – 2023-03-31 高倉 大匡 富山大学, 学術研究部医学系, 講師 (50345576) 小区分56050:耳鼻咽喉科学関連 研究開始時の概要:基盤研究(C) 研究概要:慢性めまい・体平衡障害患者の治療には前庭リハビリテーション(前庭リハ)が行われているが、十分回復しない難治性症例も存在し、従来の治療法に代わる新たな治療アプローチが求められている。我々は、同患者群への前庭リハとして、従来の手法とは異なった、めまいの認知に関与している大脳皮質機能を直接調節する、ニューロフィードバック(NF)療法の応用を試みる。正常被験者および慢性めまい患者に対して、めまいに対する慣れと代償を促進する従来の前庭リハに対して、NF療法を単独もしくは付加して行い、その臨床効果を検証するとともに、至適な治療条件を決定し、NF療法を応用した前庭リハの実用化を目指す。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  18. 認知機能障害と情動調整障害を同時に回復するうつ病のニューロフィードバック法の開発 20K07920 2020-04-01 – 2023-03-31 松原 敏郎 山口大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (60526896) 小区分52030:精神神経科学関連 研究開始時の概要:基盤研究(C) 研究概要:われわれは、情動・認知相関の知見をもとに、陽性情動刺激課題を用いた前頭部ニューロフィードバック(NF)を用いて、うつ病患者の認知機能回復も目指した情動調整法とその脳病態を明らかにする。具体的には、うつ病患者をRCTにて、NF介入群と非介入群に分け、光トポグラフィー装置を用いて、NFを介入群、sham-NFを非介入群に、週1回6ヶ月間行い、0ヶ月、3ヶ月、6ヶ月後の情動・認知機能検査および0ヶ月、6ヶ月後のDTIを測定する。またNF終了6ヶ月後に、情動認知機能が維持されていることを確認する目的で、もう一度情動・認知機能検査を行う。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  19. 多チャンネル脳波を用いた身体所有感の脳基盤の同定と介入法の開発 20K07714 2020-04-01 – 2023-03-31 大木 紫 杏林大学, 医学部, 教授 (40223755) 小区分51010:基盤脳科学関連 研究開始時の概要:基盤研究(C) 研究概要:身体所有感は「自分の身体が自分に所属している」という感覚で、健常者では当然の身体意識である。しかし、例えば脳卒中の片麻痺患者では麻痺肢に対する身体所有感が低下し、不使用につながることが知られている。本研究では身体所有感をモニターし改善することを目的に、多チャンネル脳波を用いて身体所有感の脳活動マーカーの同定を行う。更に、マーカー部位に対し、経頭蓋磁気刺激、直流電気刺激、neurofeedbackで介入し、マーカーと身体意識の因果関係を明らかにすると同時に、介入法を確立する。本研究では、脳波によるマーカーの同定から介入まで統一的に行うことで、そのまま臨床応用できる方法の開発を目指す。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  20. ADHD動物研究によるニューロフィードバ ック・薬物療法・応用行動分析の相乗化 20K03029 2020-04-01 – 2023-03-31 麦島 剛 福岡県立大学, 人間社会学部, 准教授 (40308143) 小区分09060:特別支援教育関連 研究開始時の概要:基盤研究(C) 研究概要:この研究では、注意欠如・多動症(ADHD)モデル動物を用いて、ニューロフィードバック(NFB)療法の有効性を検討し、NFB療法と薬物療法の相乗効果の解明し、音への事象関連電位を指標とした前注意過程(注意が生じる前の認知過程)の不全に対する治療薬効果を検討し、オペラント行動に基づく確率割引を指標とした衝動性との関係の解明する。これらによって、ADHDの不注意と衝動性を神経と行動の両面で解明し、NFB療法・行動療法・薬物療法の3者をクロスさせてADHDの療育の相乗化と理論統一をめざす。また、生理心理学領域の基礎研究そのものの進展と、発達障害の臨床応用への将来的な架け橋の一端を築く。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  21. 身体意識の拡張を伴う身体部位拡張の実現 20J12569 2020-04-24 – 2022-03-31 小区分61020:ヒューマンインタフェースおよびインタラクション関連 研究開始時の概要:特別研究員奨励費 研究概要:義手を代表とする補綴や新たな身体を獲得する身体拡張技術は身体の制約を超えて人の活動および機能を支援することができる.日常生活だけでなく遠隔手術ロボットにみられるように医療など幅広い場において多くの波及効果を生む重要な技術である.人の身体図式は不変のものではなく,四肢の追加や増強といった試みは多くあるものの,身体認識を拡張する明確な方法論は語られていない.
    そこで本研究では,身体認識の変容を順応学習であると捉えなおし,ニューロフィードバックにより身体認識の変容を促進することを試みる.これにより本来の身体と等価な身体認識を身体拡張部位に獲得することができる身体認識の拡張を伴った身体拡張を実現する. 研究成果の概要:研究実績の概要:
  22. ニューロフィードバックで思考習慣を変える: fMRIと脳波による認知活動の可視化 20J01375 2020-04-24 – 2023-03-31 小区分10030:臨床心理学関連 研究開始時の概要:特別研究員奨励費 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  23. 聞こえているのに聞こえない:高齢リハビリ患者の聴覚異常の可視化と新規治療法の開発 20J00552 2020-04-24 – 2023-03-31 小区分59010:リハビリテーション科学関連 研究開始時の概要:特別研究員奨励費 研究概要:多くの高齢者は、「聞こえているのに理解できない」と訴え、この症状は中枢性聴覚処理(CAP)異常に基づくと考えられる。CAP異常と海馬異常とには密接な関連があることが示唆されているが、隠れたCAP異常を検出する技術は確立されていない。CAP異常とリハビリとの関係性を明らかにするため、本研究では、(実験1; 海外研究施設にて)高齢者てんかんに対して、脳磁図と非侵襲的聴覚刺激を用いたニューロフィードバック治療法を開発することにより、CAPをモデュレートすることができるかどうかを検討する。また(実験2)高齢リハビリ非効率患者に対して、脳磁図を用いて、隠れたCAP異常を検出することを目的とする。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  24. 心脳限界認識の哲学と心脳限界突破の倫理学 20H05717 2020-10-02 – 2023-03-31 中澤 栄輔 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 講師 (90554428) 学術変革領域研究区分(Ⅰ) 研究開始時の概要:学術変革領域研究(B) 研究概要:本研究は心脳限界の認識と突破に関する科学哲学・倫理学である。領域に特有の倫理的・法的・社会的課題を人文学的に掘り下げ、限界認識・突破の概念を彫琢することで、心脳限界突破という新たな融合学問領域に社会的・学問論的位置づけを与える。
    本研究は心脳限界認識の哲学と心脳限界突破の倫理学に二分される。哲学的考察においては心の哲学、現象学、社会哲学の知見を援用しながら人間の認識、知識、能力の限界を規定する人間の自己反省的な認識のあり方、その限界を突破する人間の欲求を検討する。
    倫理学的考察においては、理論的方法、経験的方法双方を混合させ、心脳限界突破の倫理的妥当性を人間的および社会的側面から検討する。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  25. テイラーメード神経活動修飾法による注意機能改善がもたらす高齢者の運動学習促進 20H05485 2020-04-01 – 2022-03-31 櫻田 武 立命館大学, 理工学部, 助教 (40588802) 複合領域 研究開始時の概要:新学術領域研究(研究領域提案型) 研究概要:本研究では、認知機能個人差を考慮したテイラーメードニューロフィードバック訓練環境・プロトコル確立とそれを用いた運動学習効果促進を目指す。これを検証するため、まず個々の脳機能特性を脳活動から定量化したうえで、ニューロフィードバック訓練において賦活させる神経回路(ゴール) を適切に切り替える。最終的には、このような個人差を考慮するプロトコルを適用することで、高齢者の認知機能(注意制御能力)・運動機能(適応能力・運動学習能力) の保持・再獲得が促進することを示す。さらに、その訓練効果を予測するモデルの提案を目指す。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  26. 検出不可能なドーピング技術に関する生命・スポーツ倫理学的研究 20H04084 2020-04-01 – 2023-03-31 近藤 良享 名古屋学院大学, スポーツ健康学部, 教授 (00153734) 小区分59020:スポーツ科学関連 研究開始時の概要:基盤研究(B) 研究概要:2003年に「遺伝子治療を応用する方法」がドーピングとして禁止されて以来、今まさに新しい局面を迎えようとしている。その1つが遺伝子編集技術、CRISPR-Cas9の開発(2012年)である。もう1つが脳科学のニューロフィードバック技術である。これらの方法はドーピングとして検出困難もしくは不可能な方法になりうる技術である。よって、本研究は、これらの検出困難もしくは不可能とも言えるドーピング方法がどのような影響をスポーツ界に招来させるかを生命倫理やスポーツ倫理の視点から考察する。遺伝子ドーピングや脳ドーピングのスポーツ界への影響を論じる中で、私たちの未来社会のあり方も問うことになる。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  27. パーキンソン病の歩行障害に対するNIRS-ニューロフィードバックシステムの応用 20H04044 2020-04-01 – 2023-03-31 三原 雅史 川崎医科大学, 医学部, 教授 (80513150) 小区分59010:リハビリテーション科学関連 研究開始時の概要:基盤研究(B) 研究概要:本研究では、パーキンソン病の歩行障害に対して、歩行運動の想像中の脳活動を患者に提示し、その活動を大きくする、”ニューロフィードバック”と呼ばれる介入が、通常のリハビリテーション以上の介入効果をもたらすかどうか、およびその効果がどの程度持続するかを多施設共同研究、並行群間デザインによる臨床研究によって明らかにし、併せて脳機能画像を用いた評価で、介入前後の脳内の機能的ネットワークの変化を検討することで、パーキンソン病の歩行障害改善効果をもたらす神経基盤についても検討を行う。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  28. 主体的多感覚統合による知覚・認知過程の新しい枠組みの構築 20K20423 2019-06-28 – 2022-03-31 乾 敏郎 追手門学院大学, 心理学部, 教授 (30107015) 中区分10:心理学およびその関連分野 研究開始時の概要:挑戦的研究(開拓) 研究概要:本研究プロジェクトでは、外受容感覚、自己受容感覚、内受容感覚(内臓感覚で自己の内部状態の情報)、全ての感覚の統合を扱う新しい理論的枠組みの構築を目指す。さらに内受容感覚に着目し、以下の2つの処理過程のメカニズムを実験的に解明し、Karl Fristonの「自由エネルギー原理」を基礎とした新しい枠組みの構築を目指す。
    ①外受容・自己受容・内受容感覚の統合過程
    ②外受容感覚と内受容感覚の統合過程
    最終年度は前年度までの実験データに基づき、自由エネルギー原理に基づく、より一般的な多感覚統合過程の原理を構築する。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  29. アスリートを対象とした簡便なあがり防止法の開発: 脳活動の偏側性を利用した試み 19K19956 2019-04-01 – 2023-03-31 平尾 貴大 早稲田大学, スポーツ科学学術院, 助教 (70824572) 小区分59020:スポーツ科学関連 研究開始時の概要:若手研究 研究概要:本研究では,脳活動の偏側性(右半球優勢)に着目し,アスリートを対象とした効果の高いあがり防止法の確立を目指す.左手でボールを把握すること(以下,反復把握法と呼ぶ)が,アスリートのあがり対策として有効視されている.本研究では,反復把握法がなぜあがり防止に有効であるのか脳機能の観点から解明した上で,反復把握法とニューロフィードバック訓練(右半球活動の増強)の相乗効果を検証する.相乗効果の検証については,大学生アスリートおよびトップレベルアスリートを対象とすることで,本研究で確立するあがり防止法が競技レベルによらず効果的なものであるか確かめる. 研究成果の概要:研究実績の概要:
  30. 脳卒中患者の認知機能個人差に根ざしたニューロフィードバック訓練と運動機能への影響 19K19917 2019-04-01 – 2021-03-31 手塚 正幸 自治医科大学, 医学部, 助教 (40721311) 小区分59010:リハビリテーション科学関連 研究開始時の概要:若手研究 研究概要:認知機能個人差により運動学習効果も変化する。このような認知機能個人差は背外側前頭前野の神経活動に反映する。この個人差神経基盤の知見に基づき、これまで急性期脳卒中患者を対象として近赤外分光法を用いたニューロフィードバックを適応し、体性感覚認知機能が高い患者ほど背外側前頭前野活動量が向上する結果を得てきた。しかし、このようなニューロフィードバック訓練で得られた脳活動が運動機能改善に及ぼす影響は明らかではない。そこで本研究は、急性期脳卒中患者におけるニューロフィードバック訓練効果差と訓練後の運動機能改善との関連性を解明することを目指す。最終的には患者の早期社会復帰に貢献する訓練手法を提案する。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  31. 難治性ADHDの新規治療・『ニューロフィードバック経頭蓋直流電気刺激法』の開発 19K17016 2019-04-01 – 2022-03-31 門田 行史 自治医科大学, 医学部, 准教授 (80382951) 小区分52020:神経内科学関連 研究開始時の概要:若手研究 研究概要:小児神経発達症の代表疾患である注意欠如多動症(ADHD)の既存治療に難治な症例の症状を改善させる全く新しい治療法の開発を目的とする。そのために、磁気刺激を用いた介入治療を行う。脳機能のリアルタイムに観察できるfNIRS(光トポグラフィー)を用いてtDCS刺激中に変化する脳機能を可視化する。正常な脳機能変化が生ずるために必要なtDCS刺激をfNIRS計測を行いながら検証する。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  32. 認知機能のリアルタイム個人差判別によるテイラーメード脳卒中リハビリ環境の確立 19K11400 2019-04-01 – 2022-03-31 櫻田 武 立命館大学, 理工学部, 助教 (40588802) 小区分59010:リハビリテーション科学関連 研究開始時の概要:基盤研究(C) 研究概要:運動機能障害を持つ患者が行うリハビリテーションでは、できる限り短い期間において最大限の訓練効果を得ることが重要となる。この際、患者の脳機能特性を事前に明らかとすることで、その人に適した訓練内容や指示を決めることができる。このような個人差を脳活動に基づき客観的かつ短時間で評価し、より多くの患者が最大限の訓練効果を得られるシステムの提案を目指す。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  33. 月経随伴症状を有する若年女性への聴覚ニューロフィードバックトレーニングの基礎研究 19K11103 2019-04-01 – 2022-03-31 松尾 奈々 京都橘大学, 健康科学部, 専任講師 (50633351) 小区分58070:生涯発達看護学関連 研究開始時の概要:基盤研究(C) 研究概要:女性は身体的・精神的に多岐にわたる月経随伴症状を経験することが多く、症状をセルフケアできずに不快な情動体験が情動痛症状に変質して身体的・精神的症状に現れると考えられる。このような症状は、ストレス要因と連動して脳内神経回路の可塑的変化を引き起こすとされている。よって、月経随伴症状有訴者には脳機能状態を正常化へ向けたマネジメントが有用であると考える。
    本研究では月経随伴症状を有する若年女性に対して脳波周波数のフィードバックとして聴覚ニューロフィードバックトレーニングを実施し、月経随伴症状への効果検証を行い、身体的・精神的な月経随伴症状に対する新たな改善プログラム創出のための基礎研究とする。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  34. マルチスケール侵襲型BMIによる発声のニューロフィードバック 19K09452 2019-04-01 – 2022-03-31 國井 尚人 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (80713940) 小区分56010:脳神経外科学関連 研究開始時の概要:基盤研究(C) 研究概要:発声障害をターゲットとしたブレインマシンインターフェース(BMI)の研究は端緒についたばかりである。我々は、先行研究において、ひとつひとつの神経細胞の活動と沢山の神経活動の総和としての脳波を同時に計測できる電極を開発して特許を取得した。これにより、発声した母音を脳信号から予測することが可能となった。本研究では、予測した内容を被検者に提示する訓練を行うことで、予測精度を向上する技術の開発を目指す。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  35. ニューロフィードバック制御型の神経結合動態計測による認知過誤リスク推定の研究 19H04025 2019-04-01 – 2022-03-31 中井 敏晴 大阪大学, 歯学研究科, 招へい教授 (30344170) 小区分59030:体育および身体教育学関連 研究開始時の概要:基盤研究(B) 研究概要:加齢により認知機能の予備能力(CR)が減少すると普段は明確な支障が無くても強い認知負荷が加わると急に認知過誤が発生して適切な対応ができず、予期せぬ事故や問題を引き起こしうる。本研究では高齢者に対する神経リハビリを最適化するために、神経回路の可塑的変化を非侵襲脳機能計測と行動データに基づいて定量化する手法を開発する。運動・認知機能の個人差が大きい高齢者のCRを推定する方法として神経フィードバック制御型の神経結合動態計測法を開発する。加速度計を使った日常動作記録や神経心理検査との相関を機械学習(AI分析)により明らかにし、指標の連続的拡張性を確保する。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  36. ニューロモジュレーションによる周辺視野機能の拡張 19H03992 2019-04-01 – 2022-03-31 中村 仁洋 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所 脳機能系障害研究部, 主任研究官 (40359633) 小区分59010:リハビリテーション科学関連 研究開始時の概要:基盤研究(B) 研究概要:ヒトの視覚機能には、視野中心部の対象を高速かつ正確に分析する「中心視」と、その外側のより広い範囲の視野情報の処理を担当する「周辺視」がある。周辺視は、日常生活の様々な局面に関わるほか、視覚障害や読み書き障害との関連も注目されており、周辺視機能の向上のために様々な訓練プログラムが考案されてきた。最近の神経科学研究から、周辺視には大脳皮質レベルにおける機能的制約のため、中心視のように精密な視覚分析は難しいことが示されている。本研究計画では、周辺視と脳機能との関係に着目し、経頭蓋脳刺激法とニューロフィードバックを組み合わせて、周辺視の機能増幅のための安全で新しい介入手法の開発を目指す。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  37. 重度手指麻痺患者の機能回復を促すマルチモーダル・ニューロリハビリテーションの創生 19H03985 2019-04-01 – 2023-03-31 小野 弓絵 明治大学, 理工学部, 専任教授 (10360207) 小区分59010:リハビリテーション科学関連 研究開始時の概要:基盤研究(B) 研究概要:脳血管障害患者の手の運動意図に同期した「マルチモーダル感覚フィードバック」を付与するブレイン・マシン・インターフェース(BMI)を構築し,重度の手指麻痺を回復へ導くニューロリハビリテーション技術の確立を目指す。残存する視覚・運動感覚・触圧覚刺激による手の運動経路の再構築を促す介入を行い,回復期患者に対する臨床効果を検討する。機能回復指標による評価に加え,運動関連脳活動の機能的結合性解析ならびに電気生理学的検査による脳-脊髄興奮性変化を評価し,中枢から末梢に至る手指機能回復の神経機構を明らかにする。通所・在宅訓練にも適用可能な、慢性期患者を対象とした低コスト・自立型システムの開発と検証も行う。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  38. 身体意識の拡張技術 19H01121 2019-04-01 – 2024-03-31 前田 太郎 大阪大学, 情報科学研究科, 教授 (00260521) 中区分61:人間情報学およびその関連分野 研究開始時の概要:基盤研究(A) 研究概要:人の身体図式は生得的な特徴を備えているとはいえ,不変のものでは無く,発達や受傷の過程などを経て変容することが知られている.身体の機能拡張技術においては知覚能力や効果器としての四肢の追加・増強の試みは多くあるが,これらの追加要素を新たな身体として認識し行動を決定する「身体意識」そのものを高いリアリティを伴って拡張する明確な方法論については未だ語られていない.本研究では身体拡張技術の観点からこの「身体意識」の変容を狙う.感覚伝送と身体応答計測,ニューロフィードバック技術を駆使して,身体拡張に伴う身体意識の拡張の可能性について解明し,身体意識の再構築を実現する誘導・制御技術について開発を行う. 研究成果の概要:研究実績の概要:
  39. 興奮抑制バランス操作による脳の可塑性メカニズムの理解 19H01041 2019-04-01 – 2023-03-31 柴田 和久 国立研究開発法人理化学研究所, 脳神経科学研究センター, チームリーダー (20505979) 中区分51:ブレインサイエンスおよびその関連分野 研究開始時の概要:基盤研究(A) 研究概要:ピアノ演奏や宝石鑑定といったスキルの学習には、訓練に応じて脳を変化させる可塑性と、無用な脳の変化を防ぐ安定性が不可欠である。本研究では、この可塑性と安定性を制御する仕組みとして、脳の興奮性・抑制性神経修飾物質の変化に焦点をあてる。第一に、研究代表者が開発した脳の状態を操作する技術を援用し、特定脳部位の興奮抑制バランスを操作するための技術を開発する。第二に、この技術を用い、興奮抑制バランスがスキル学習における可塑性・安定性を決めることを実証する。本研究の成果は、興奮抑制バランスの変調に起因する脳機能不全の治療法開発にも貢献し、科学・社会の両面で強い波及効果をもたらす。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  40. fMRIニューロフィードバック法による慢性疼痛の神経科学的修復機構の解明 18K07561 2020-03-01 – 2022-03-31 吉野 敦雄 広島大学, 病院(医), 講師 (90633727) 小区分52030:精神神経科学関連 研究開始時の概要:基盤研究(C) 研究概要:研究の説明・同意が得られた上で、健常者においてfMRIニューロフィードバック法を行い、制御可能性および安全性の確認を行う。また行動指標としての認知・注意課題の成績変化や、反芻に関する変化、脳内ネットワークの活動変化などのデータ解析を行ったうえでfMRIニューロフィードバック法を確立し、慢性疼痛患者に対する施行を目指す。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  41. 複数モダリティ脳イメージングに基づく集中時脳状態の解読技術とその応用 18KK0284 2018-10-09 – 2021-03-31 川鍋 一晃 株式会社国際電気通信基礎技術研究所, 脳情報通信総合研究所, 研究室長 (30272389) 中区分61:人間情報学およびその関連分野 研究開始時の概要:国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B)) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  42. 極度の忘我状態が引き起こす脳状態の変容-対人相互作用時のフローとチョーキング 18KK0280 2018-10-09 – 2024-03-31 中内 茂樹 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00252320) 中区分61:人間情報学およびその関連分野 研究開始時の概要:国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B)) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  43. ニューロフィードバックを用いた言語的直観の神経基盤と可塑性の研究 18K18512 2018-06-29 – 2020-03-31 時本 真吾 目白大学, 外国語学部, 教授 (00291849) 中区分2:文学、言語学およびその関連分野 研究開始時の概要:挑戦的研究(萌芽) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:ある文に対する適格性判断は、それぞれの話者について不変だと考えられている。しかし、Carroll, et al. (1981, Language)は、英語文に対する適格性判断を母語話者に求める際に、鏡を眼前に置いて自身の姿を見せると、適格性判断が体系的に変化することを示した。本研究では彼らの知見を日本語文において検証すると共に、文呈示に伴う脳波計測によって文の適格性判断の神経基盤を考察した。実験の結果、鏡を眼前に置いた場合、文が非適格として多く排除される傾向があり、また、脳波のシータ帯域ならびにベータ帯域の信号強度が増大した。また適格性判断と話者の対人傾向とは有意な相関を示した。
  44. ブレイン・マシン・インタフェースを使ったベットサイド脳卒中リハビリシステムの開発 18K17707 2018-04-01 – 2021-03-31 橋本 泰成 北見工業大学, 工学部, 准教授 (80610253) 小区分59010:リハビリテーション科学関連 研究開始時の概要:若手研究 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  45. 脳波を用いたニューロフィードバックによりエラー行動を予防する手法の開発 18K15338 2018-04-01 – 2021-03-31 大良 宏樹 東京工業大学, 情報理工学院, 助教 (80612069) 小区分51010:基盤脳科学関連 研究開始時の概要:若手研究 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  46. ASDの安静時脳機能結合評価と介入法の検討:より良い治療効果を得るために 18K13352 2018-04-01 – 2021-03-31 土屋垣内 晶 千葉大学, 子どものこころの発達教育研究センター, 特任助教 (30778452) 小区分10030:臨床心理学関連 研究開始時の概要:若手研究 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  47. 脳波と人工知能を用いた条件づけによるマインドワンダリングへのメタ的気づき能力上昇 18K13332 2018-04-01 – 2021-03-31 川島 一朔 株式会社国際電気通信基礎技術研究所, 脳情報通信総合研究所, 研究員 (90773292) 小区分10030:臨床心理学関連 研究開始時の概要:若手研究 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  48. テーラーメイドニューロリハビリテーション実現に向けた多感覚刺激治療装置の開発 18K10798 2018-04-01 – 2021-03-31 兒玉 隆之 京都橘大学, 健康科学部, 教授 (80708371) 小区分59010:リハビリテーション科学関連 研究開始時の概要:基盤研究(C) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  49. 非侵襲脳活動計測を用いた一次運動野刺激の疼痛認知抑制機構の解明 18K08993 2018-04-01 – 2021-03-31 細見 晃一 大阪大学, 医学系研究科, 特任講師(常勤) (70533800) 小区分56010:脳神経外科学関連 研究開始時の概要:基盤研究(C) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  50. ニューロフィードバックによる社交不安傾向が高い中学生のポジティブ思考教育法の開発 18J12527 2018-04-25 – 2020-03-31 研究開始時の概要:特別研究員奨励費 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  51. 脳活動の偏側性を利用したアスリートのあがり防止法の確立 18H06421 2018-08-24 – 2020-03-31 平尾 貴大 早稲田大学, スポーツ科学学術院, 助教 (70824572) 0909:スポーツ科学、体育、健康科学およびその関連分野 研究開始時の概要:研究活動スタート支援 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  52. 時の流れの神経基盤 18H05522 2018-06-29 – 2023-03-31 北澤 茂 大阪大学, 生命機能研究科, 教授 (00251231) 複合領域 研究開始時の概要:新学術領域研究(研究領域提案型) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  53. 個体間脳波オシレーションのニューロフィードバックコントロール 18H04954 2018-04-01 – 2020-03-31 大須 理英子 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (60374112) 研究開始時の概要:新学術領域研究(研究領域提案型) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  54. 脊髄損傷後の機能回復を促進する脳活動の解明と制御 18H04085 2018-04-01 – 2023-03-31 貴島 晴彦 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (10332743) 中区分59:スポーツ科学、体育、健康科学およびその関連分野 研究開始時の概要:基盤研究(A) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  55. 薬理遺伝学的手法を用いた前頭前野ー頭頂葉経路と前頭前野ー線条体経路の機能分離 18H03662 2018-04-01 – 2021-03-31 坂上 雅道 玉川大学, 脳科学研究所, 教授 (10225782) 中区分10:心理学およびその関連分野 研究開始時の概要:基盤研究(A) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  56. 重度の上肢麻痺に対するニューロフィードバックを併用した複合的CI療法の開発 18H03136 2018-04-01 – 2023-03-31 道免 和久 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (50207685) 小区分59010:リハビリテーション科学関連 研究開始時の概要:基盤研究(B) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  57. 記憶・想起の脳機能ネットワークの解明と認知症早期治療システムの構築 18H01411 2018-04-01 – 2022-03-31 呉 景龍 岡山大学, ヘルスシステム統合科学学域, 教授 (30294648) 小区分20020:ロボティクスおよび知能機械システム関連 研究開始時の概要:基盤研究(B) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  58. 予測誤差と運動主体感をつなぐ神経機構の解明 18H01098 2018-04-01 – 2021-03-31 今水 寛 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (30395123) 小区分10040:実験心理学関連 研究開始時の概要:基盤研究(B) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  59. オラリティを核とする共在や共感の質の定量評価と介入応用 17KT0056 2017-07-18 – 2021-03-31 川島 隆太 東北大学, 加齢医学研究所, 教授 (90250828) 研究開始時の概要:基盤研究(B) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  60. 脳血管疾患患者へのニューロフィードバックを用いた摂食嚥下リハビリテーションの確立 17K17386 2017-04-01 – 2020-03-31 元開 早絵 日本歯科大学, 生命歯学部, 助教 (60792877) 研究開始時の概要:若手研究(B) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:要介護高齢者が増加する日本では、介護負担を軽減するため有効な機能回復手法の開発が重要である。申請者は運動課題時の脳血流量の増加に注目し、他者の運動映像を視聴することによっても十分な脳機能活性が得られるのではないかと考えた。測定時、他者の運動映像を視聴することにより脳血流増加は認められたが、課題を施行した時ほどの効果は見られなかった。そのため、他者の運動映像を視聴しながら運動課題を施行する場合の検討を行った。結果、運動課題を施行するのみの場合より脳機能が活性化されることが考えられた。
  61. ニューロフィードバックトレーニングを応用した新しい口腔機能訓練法の開発とその評価 17K17374 2017-04-01 – 2019-03-31 後藤 崇晴 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学域), 助教 (00581381) 研究開始時の概要:若手研究(B) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:本研究では、ニューロフィードバックトレーニングを用いた口腔機能訓練法の開発として、咬合力と前頭前野の活動に着目し、健常歯列を有する若年者と高齢者、およびインプラントを用いた固定性補綴装置を装着している高齢者を対象にその関連を検討した。本研究により、高齢者同士で比較した場合、インプラントは、天然歯と同等の咬合力調節が可能であり、感覚統合における前頭前野の脳血流量の増加は、天然歯に劣ることはなく、若干増加傾向にあると考えるが、発現する咬合力はやや高くなる傾向で、高齢による調整能力低下には注意を要することが示唆された。
  62. 徳倫理学における「道徳的な性格」という考え方の意義と可能性についての研究 17K13318 2017-04-01 – 2020-03-31 立花 幸司 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部(文), 准教授 (30707336) 研究開始時の概要:若手研究(B) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:道徳を探究する現代の学問分野群にとって、アリストテレスを始祖とする徳倫理学のもつ可能性が注目されて久しい。本研究課題では、アリストテレス的徳倫理学のもつ優れたアイデアの一つである「倫理的な反応が求められている状況において、道徳原則に頼ることなく適切な反応を可能とする〈道徳的な性格〉」に焦点をあて、(1)現代の倫理学研究における「道徳的な性格」という考え方のもつ哲学的な意義を検討し、そして(2)この考え方が狭義の哲学倫理学のみならず、道徳性を研究する今日の経験科学に対してもつ可能性を明らかにした。
  63. 脳卒中患者のニューロフィードバックを用いた運動リハビリテーションの効果 17K13096 2017-04-01 – 2019-03-31 手塚 正幸 自治医科大学, 医学部, 助教 (40721311) 研究開始時の概要:若手研究(B) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:機能的近赤外分光法(fNIRS)を用いた神経活動を修飾する系を構築した。健常者と脳卒中患者を対象とし、視覚条件と振動条件の探索課題を行った結果、振動条件にのみ個人差を認めた。fNIRSを用いて課題中の前頭前野活動も測定しており、その個人差が反映する脳基盤が背外側前頭前野であることを示した。この背外側前頭前野の機能に介入する新たな手法としてfNIRSを使ったニューロフィードバック系を構築し、片側麻痺を持つ急性期脳卒中患者に実施した結果、脳機能が高い個人ほど背外側前頭前野活動が上昇する傾向が得られている(n=20、群間差 p=0.072)。
  64. 違和感の少ない舌動作推定手法を利用した嚥下リハビリテーションシステムの構築 17K13089 2017-04-01 – 2021-03-31 中谷 真太朗 鳥取大学, 工学研究科, 講師 (10781700) 研究開始時の概要:若手研究(B) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  65. 脳卒中患者の麻痺側上肢の運動機能回復を促進させるニューロフィードバック法の開発 17K13078 2017-04-01 – 2020-03-31 中野 英樹 京都橘大学, 健康科学部, 准教授 (60605559) 研究開始時の概要:若手研究(B) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:本研究の目的は,聴覚ニューロフィードバックトレーニングを用いた運動イメージトレーニングが脳卒中患者の麻痺側上肢機能と運動イメージ能力に及ぼす効果を検証することである.対象者は通常のリハビリテーションに加え,運動イメージを用いた聴覚ニューロフィードバックトレーニングを実施した.その結果,麻痺側上肢機能と運動イメージ能力のスコアはトレーニング後に改善を示した.本研究により,運動イメージを用いた聴覚ニューロフィードバックトレーニングは,脳卒中患者の麻痺側上肢機能と運動イメージ能力の改善に貢献することが示唆された.
  66. 舌痛症に対する抗うつ薬と認知行動療法による治療効果の脳機能画像的評価 17K11908 2017-04-01 – 2021-03-31 土井 充 広島大学, 医系科学研究科(歯), 助教 (30412620) 研究開始時の概要:基盤研究(C) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  67. ニューロフィードバックを用いた革新的前庭リハビリテーションシステムの開発 17K11321 2017-04-01 – 2020-03-31 高倉 大匡 富山大学, 学術研究部医学系, 講師 (50345576) 研究開始時の概要:基盤研究(C) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:本研究では、めまい時の大脳活動の変化を解明し、脳神経科学を応用した前庭リハビリテーションシステムを開発すること目標とした。主な成果は以下の通りである。
    1) 前庭覚・視覚・体性感覚の不一致によって、縁上回、頭頂側頭接合部などの自己運動認知に関連した大脳皮質が活動することを解明した。2)一側前庭障害後の慢性めまい患者の大脳活動の違いから、患者毎に正常感覚入力(視覚・体性感覚)への依存度が異なる可能性を明らかとした。3)主観的めまい感覚の強さが背側縁上回の活動性と負の相関をもつ事を解明した。4)大脳血流リアルタイムフィードバック装置を導入し、同装置により背側縁上回付近の血流が増加する事を確認した。
  68. 霊長類視床痛モデルにおける中枢性疼痛メカニズムの解明 17K10893 2017-04-01 – 2020-03-31 齋藤 洋一 大阪大学, 医学系研究科, 特任教授(常勤) (20252661) 研究開始時の概要:基盤研究(C) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:肥後博士の協力で、マカクサルの片側視床(VPL核)に微小な破壊を行いアロジニアを示す個体を作成した。その2頭のマカクサルの行動データ(温度刺激、触覚刺激)を検討。片側VPL核破壊後、数週間後からアロジニアが反対側に現れ数か月かけて減少していく傾向が見られた。VPL核破壊後の経時的な構造画像では1ヶ月ほどで破壊巣は小さくなった。拡散テンソル画像ではVPL核と一次感覚野を結ぶ神経束の密度が減少した。
    経時的なrs-fMRIデータを解析したところ、アロジニアが発生後は、破壊と同側の視床(MD/Pf核)と扁桃体間の機能結合が上昇していた。rTMSを施行すると、MD/Pf核と扁桃体間の機能結合が低下した。
  69. ニューロフィードバックの倫理―医工連携の研究倫理と社会的受容性 17K08905 2017-04-01 – 2020-03-31 中澤 栄輔 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 講師 (90554428) 研究開始時の概要:基盤研究(C) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:本研究は、近年、脚光を浴びつつあるニューロフィードバックに焦点を絞り、その倫理的問題について検討し、社会的受容性を評価することを目的とした。ニューロフィードバック技術は近年、急速に進歩している一方で、倫理的視点による分析はいまだ萌芽的段階にとどまっているものの、その倫理的要点は社会受容性、インフォームド・コンセント、リスク・ベネフィット評価である。とりわけ、ニューロフィードバック技術の不可逆性に関するリスク評価と社会的受容性は本技術の倫理的な要点になることが分かった。
  70. 長期間にわたって繰り返し利用可能なブレイン・マシン・インタフェースの開発 17K01992 2017-04-01 – 2020-03-31 森重 健一 富山県立大学, 工学部, 講師 (30433197) 研究開始時の概要:基盤研究(C) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:異なる日に同じ人の脳波を記録する際、毎日まったく同じ位置にヘッドキャップを被ることはできないため、脳波電極の位置ずれを避けることは困難である。そのため、これまでのBMIでは、脳波電極を頭に取り付けるたびに、脳活動とノイズを分離し直したり、解読器を用意し直したりすることで、脳波データから脳情報を解読していた。これらの計算には長い時間を要するため、日常生活の中でインタフェースとして毎日使い続けるには大きな障害であった。本研究課題では、電極の位置ずれがある脳波データであっても、アーチファクトを分離して、短時間で精度よく脳電流を推定でき、その時系列データを長期間にわたって繰り返し再構成できた。
  71. 脳活動の変調に伴う運動記憶の獲得 17K01618 2017-04-01 – 2020-03-31 門田 宏 高知工科大学, 情報学群, 准教授 (00415366) 研究開始時の概要:基盤研究(C) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:我々が日常生活を営むうえで運動は欠かせないものであり、その多くは学習によって獲得されたものである。本研究では、実験参加者の脳の活動状態と運動学習との関係を明らかにしていくことを目的とした。実験参加者は視覚的に提示される脳活動情報に基づいて、自己の脳活動状態を変化するようトレーニングを行った。また、トレーニング後に2種類の相対する環境を学習する課題を行った。その結果、トレーニングによって自己の脳活動を変調させることができるようになること、しかし異なる運動記憶を獲得するには今回の脳活動の変調では不十分であることが示唆された。
  72. 機能回復を促進する意識と工学的デバイスとの相互作用解明 17K01503 2017-04-01 – 2020-03-31 浦川 将 広島大学, 医系科学研究科(保), 教授 (30445811) 研究開始時の概要:基盤研究(C) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:リハビリテーション領域で活用される工学的手法を用いる際の、利用者の脳活動と意識に着目して研究を行った。自らの脳活動をフィードバックしながら運動想像を行う研究では、前頭極の脳活動をフィードバックしながら制御することで、効果的なパフォーマンス向上が得られることが明らかとなった。ロボットHALを装着して、意識的に運動を制御する場合には、前頭葉-頭頂葉の運動関連領域の活動上昇が得られ、パフォーマンス制御に関わっていることが示唆された。
  73. ニューロフィードバックが高齢者の認知機能に及ぼす効果の解明 17K01474 2017-04-01 – 2021-03-31 山口 哲生 東邦大学, 医学部, 講師 (70464592) 研究開始時の概要:基盤研究(C) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  74. 歩行律動同期型脳・末梢神経筋ハイブリッド刺激による神経可塑性誘導と歩行機能回復 17K01453 2017-04-01 – 2020-03-31 小金丸 聡子 獨協医科大学, 医学部, 准教授 (40579059) 研究開始時の概要:基盤研究(C) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:これまで手術を必要としない非侵襲的な脳刺激法が広く、脳神経損傷患者において使用されており、多くの機能回復の報告が出ています。しかしながら、脳刺激法により歩行機能を再建するには、まだまだ報告が少なく、効果的な刺激法がわかっていません。そこでこの研究では、電流強度が一定のリズムで変化する脳刺激を用いて、これがヒトの歩行を変化させることができるか、まず健康な成人で検討しました。その結果、歩行リズムが脳刺激のリズムに同期していくことが分かりました。そこで、歩行に同期した脳刺激を行い、歩行障害のある脳卒中患者で検討しました。その結果、脳卒中患者にて歩行機能を回復させることが分かりました。
  75. チックの抑制のための神経認知行動療法:バイオフィードバックの新たな応用可能性 17J40054 2017-04-26 – 2021-03-31 研究開始時の概要:特別研究員奨励費 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  76. 行動設計時の海馬発火シークエンスの意義の解明 17J10777 2017-04-26 – 2020-03-31 研究開始時の概要:特別研究員奨励費 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  77. うつ病の再発防止のためのマインドフルネスのニューロフィードバック介入法の開発 17J10680 2017-04-26 – 2020-03-31 研究開始時の概要:特別研究員奨励費 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  78. 脳卒中片麻痺の皮質ー視床ループの異常興奮を抑制するニューロフィードバック法の開発 17J04792 2017-04-26 – 2019-03-31 研究開始時の概要:特別研究員奨励費 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  79. ミラーシステムの活動向上は他者感情知覚時の反応を変化させるか? 17J02763 2017-04-26 – 2019-03-31 研究開始時の概要:特別研究員奨励費 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  80. 適応的記憶忘却メカニズムの解明―行動およびfMRIデータモデリングの活用― 17J01808 2017-04-26 – 2020-03-31 研究開始時の概要:特別研究員奨励費 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  81. 双方向ニューロフィードバックによる神経刺激型再運動学習パラダイムの開発 17H06504 2017-08-25 – 2019-03-31 林部 充宏 東北大学, 工学研究科, 教授 (40338934) 研究開始時の概要:研究活動スタート支援 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  82. 皮質脳波ビッグデータによる革新的人工知能の開発 17H06032 2017-04-01 – 2019-03-31 柳澤 琢史 大阪大学, 高等共創研究院, 教授 (90533802) 複合領域 研究開始時の概要:新学術領域研究(研究領域提案型) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  83. ヒト前頭・頭頂葉内の脳内身体表現:皮質脳波解読と刺激・病変研究による包括的研究 17H05907 2017-04-01 – 2019-03-31 松本 理器 神戸大学, 医学研究科, 教授 (00378754) 複合領域 研究開始時の概要:新学術領域研究(研究領域提案型) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  84. 柔軟な学習の調整を可能にする脳メカニズムの解明 17H04789 2017-04-01 – 2020-03-31 柴田 和久 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所 脳機能イメージング研究部, 主幹研究員(任常) (20505979) 研究開始時の概要:若手研究(A) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:学習内容を長期的に保持すること、必要に応じてこれを強化することは、学習全般に普遍的に求められる重要な機能である。一見相反するこれらの機能が脳でどう実現されるかを調べるために、本研究では、視覚における見分けの課題訓練と核磁気共鳴分光法を組み合わせた実験的検証を行い、以下の成果を得た。第一に、視覚課題訓練後の学習内容の固定化、脱固定化、再固定化に伴い、脳の低次視覚野における興奮・抑制バランス(グルタミン酸・GABA比)が変化することを突き止めた。第二に、脳の興奮・抑制バランスを操作するためのニューロフィードバック技術の開発に着手した。この開発は、発展的な形で次の基盤研究Aに引き継がれる。
  85. 運動学習に対する安静時脳活動の影響とニューロフィードバックによる促進 17H04683 2017-04-01 – 2020-03-31 小川 健二 北海道大学, 文学研究院, 准教授 (50586021) 研究開始時の概要:若手研究(A) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:本研究は、安静時脳活動が運動学習に果たす役割を機能的核磁気共鳴画像法(fMRI)で検討した。運動学習課題としてMRI内で視覚追随運動を用いた。まず、感覚運動野の脳活動パターンから運動学習試行とコントロール試行との識別を行い、次にその識別器を学習前後の安静時脳活動パターンに対して適用した。その結果、学習後の安静時において運動学習時と同じ脳活動パターンが再現されることが明らかとなった。次に安静時脳活動を計測し、ニューロフィードバックとして学習時の脳活動との類似度を、被験者に視覚的にリアルタイムに提示した。その結果、ニューロフィードバックにより運動時と類似した活動に誘導可能である点が示された。
  86. 注意の逆説的投資効果とニューロフィードバック 17H02648 2017-04-01 – 2020-03-31 河原 純一郎 北海道大学, 文学研究院, 教授 (30322241) 研究開始時の概要:基盤研究(B) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:本研究はトップダウンの認知制御が3つの注意の下位成分を変調しうるかを調べた。注意ネットワーク課題を用いて,認知エフォートをすべて投入する場合と,自分がもつ半分の認知エフォートのみを投入する場合を設けた。行動成績は当初の通り,予定した効果を概ね再現することができたため,この手法は妥当であるといえる。一方で,前年までに実施した脳機能計測実験の結果を再分析したが,予測した部位での神経活動と,認知資源の意図的配置との関連は得られなかった。しかし,意図的な注意制御に関して,視覚探索中の抑制テンプレートを調べたプロジェクトが派生し,その生起要因を特定することに成功した。
  87. 身体的表象から自他分離表象にいたる発達プロセスの解明 17H01016 2017-04-01 – 2021-03-31 明和 政子 京都大学, 教育学研究科, 教授 (00372839) 研究開始時の概要:基盤研究(A) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  88. 難治性疼痛患者の脳波周波数解明と聴覚ニューロフィードバックトレーニングの基礎研究 16K21475 2016-04-01 – 2018-03-31 松尾 奈々 京都橘大学, 健康科学部, 専任講師 (50633351) 研究開始時の概要:若手研究(B) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:本研究は、難治性疼痛患者の脳波周波数パターンの解明および聴覚刺激をフィードバック情報とするニューロフィードバックトレーニングを実施し、難治性疼痛症状の効果を検証した。その結果、聴覚ニューロフィードバックトレーニングを実施することで身体知覚異常の改善および痛みの破局的思考に改善がみられ、トレーニング終了後3週においてもその効果を認めることができた。このことから、聴覚刺激を用いたニューロフィードバックトレーニングの実施は、脳波周波数をコントロールすることができ、痛みの破局的思考および身体知覚異常などの難治性疼痛症状の改善に有効である可能性が示唆された。
  89. 脳の使い方を学ぶ精神活動・運動トレーニング法の提案 16K16649 2016-04-01 – 2020-03-31 廣瀬 智士 国立研究開発法人情報通信研究機構, 脳情報通信融合研究センター脳情報通信融合研究室, 研究員 (70590058) 研究開始時の概要:若手研究(B) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:課題中の脳活動が空間解像度高く計測できる機能的磁気共鳴装置(以下fMRI)で撮像した脳機能画像から機械学習を用いて課題の成績と関連する脳活動のパターンを取り出し、成績が高い人の活動パターンを真似ることで、脳の使い方を模倣し、学習を促進することを目指した。しかし、本研究期間内では、学習に使用するのに十分な精度で課題の成績と関連する脳活動のパターンを同定することができず、学習促進を達成するには至らなかった。目的を達成するにはよりfMRI信号内のノイズに頑強な機械学習法、画像処理法の開発を進めるとともに、より多人数を対象とした実験が必要であると考える。
  90. 脳卒中後の認知機能障害に対するニューロフィードバック介入の試み 16K16451 2016-04-01 – 2019-03-31 大杉 紘徳 城西国際大学, 福祉総合学部, 助教 (00708159) 研究開始時の概要:若手研究(B) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  91. 小型ヒューマノイドを使った自己動作モニタリングによる運動訓練支援システムの開発 16K13063 2016-04-01 – 2019-03-31 中井 敏晴 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 神経情報画像開発研究室, 室長 (30344170) 研究開始時の概要:挑戦的萌芽研究 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:本研究ではリアルタイムfMRIにより抽出された脳活動を小型ヒューマノイド(SHR)の動作に反映させ、其の映像をニューロフィードバック(NF)情報として利用する運動学習法を開発した。訓練学習の進行に伴う逐次的な二重判別分析法を考案し、身体座標系を直感的に反映するMI学習方法としてBrain Machine Interfaceに応用する見通しを得た。加齢による脳活動領域の非特異的拡大は必ずしも判別分析に不利ではなく、高齢者でも本法による運動学習が有効である事を見出した。実際のロボットの動作による印象評価実験では、高齢者でも自己動作表象を使った視覚的NFはモチベーションを促進する事が判明した。
  92. 階層化ニューロフィードバックによる認知制御機能の改善 16K12443 2016-04-01 – 2018-03-31 齋木 潤 京都大学, 人間・環境学研究科, 教授 (60283470) 研究開始時の概要:挑戦的萌芽研究 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:本研究は、理論指向と応用指向のニューロフィードバック研究を架橋し、複雑な注意機能を改善するために、認知制御課題を題材として、課題間転移が可能なニューロフィードバック技術の確立を目指した。頑健な干渉効果が知られている多資源干渉課題に着目し、行動フィードバックによる干渉効果の減少を試み、有効に干渉を減少させることができる方法を発見した。並行して、多資源干渉課題遂行時の脳活動を計測し、干渉効果の個人差と相関する脳活動、特に干渉の小さな協力者で賦活する領域、大きな協力者で賦活する領域を同定した。これらの知見を基に、今後、ニューロフィードバック信号の設計を行い、その有効性を検証する。
  93. 脳内身体マップに基づく手指運動能力の個人差の解明および介入法の開発 16K12440 2016-04-01 – 2018-03-31 小川 健二 北海道大学, 文学研究科, 准教授 (50586021) 研究開始時の概要:挑戦的萌芽研究 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:本研究は手指運動能力に関する神経基盤の検討を行った。健常成人を対象にし、示指、中指、環指、小指を使ったタッピングを実行してもらい、脳活動を機能的磁気共鳴画像法(fMRI)で計測した。空間的なボクセル活動パターンを解析した結果、一次運動野の活動を使ってそれぞれの指パターンを識別できた。さらに参加者のピアノ練習経験の有無に応じ、タッピング運動中の指の神経表現が異なっていることが示された。またニューロフィードバックを使って一次運動野の活動レベルを視覚提示するシステムを開発し、運動イメージ化を用いて一次運動野の活動を上げることにより、手指運動のパフォーマンスが促進される可能性を示した。
  94. 再発予防を目的としたneurofeedbackと情動調整によるうつ病治療法の開発 16K10215 2016-04-01 – 2021-03-31 松原 敏郎 山口大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (60526896) 研究開始時の概要:基盤研究(C) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  95. セロトニン神経系が司る辛抱強さの神経機構の解明 16K07008 2016-04-01 – 2019-03-31 宮崎 勝彦 沖縄科学技術大学院大学, 神経計算ユニット, 研究員 (10426570) 研究開始時の概要:基盤研究(C) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:申請者はこれまでの研究から、背側縫線核のセロトニン神経活動と将来報酬を辛抱強く待つことの因果関係を明らかにしてきた。本研究では、将来の報酬のための辛抱強い振る舞いで「待つ」場合だけでなく「行動する」場合も背側縫線核セロトニンは関与してるかを光遺伝学行動実験により調べた。その結果、辛抱強く待つ場合と行動する場合で、背側縫線核セロトニン神経は異なった関与をしていることが明らかになった。
  96. バイオフィードバックによる心拍変動の増大が圧受容体反射に及ぼす影響 16K04395 2016-04-01 – 2019-03-31 榊原 雅人 愛知学院大学, 心身科学部, 教授 (10221996) 研究開始時の概要:基盤研究(C) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:バイオフィードバックを通じて心拍変動を増大させると、自律神経障害やストレスに関わるさまざまな症状(特に抑うつや不安)が緩和することが報告されている。この臨床的効果の背景には圧受容体反射機能の活性化が仮定されているが実際的な検討は少ない。本研究は心拍変動の増大によって圧受容体反射の感度が増加するかどうか、さらに認知機能に関わる皮質活動の指標として脳波の随伴性陰性変動が変化するかどうかを検討した。実験によって得られた結果から、バイオフィードバックによって引き起こされた心拍変動の増大は自律神経系ホメオスタシス機能を向上させるとともに、認知/注意過程に関わる皮質活動に影響を与えていることが示唆された。
  97. 重度手指麻痺患者の手の機能回復を目指す「脳波+ロボット」リハビリテーションの創生 16K01520 2016-04-01 – 2019-03-31 小野 弓絵 明治大学, 理工学部, 専任教授 (10360207) 研究開始時の概要:基盤研究(C) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:脳血管障害患者の手の運動意図に同期した感覚フィードバックを付与するロボットシステムの構築を通じて,重度の手指麻痺を回復へ導く自立的なリハビリテーションシステムを作成した。これまで運動機能リハの対象から外れてきた最重度の麻痺症例に対しても咀嚼刺激や視覚,運動感覚刺激による運動経路への介入を行い,週・日単位の運動機能変化を感度良く追跡する手指機能評価装置を開発・適用して機能回復の可能性を探索した。従来廃用手とせざるをえなかった随意運動がみられない患者においても随意運動が回復した症例を経験し,患側運動野における事象関連脱同期(ERD)信号強度の回復が,手指機能回復に寄与していることを明らかにした。
  98. 運動習慣がパーキンソン病に与える影響:マルチモーダルイメージングを用いた解析 16K01453 2016-04-01 – 2020-03-31 三原 雅史 川崎医科大学, 医学部, 教授 (80513150) 研究開始時の概要:基盤研究(C) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:我々は、パーキンソン病における日常生活活動が、ドーパミン変性と密接に関連していることを明らかにし、また、併せてパーキンソン病の運動機能特に立位バランス機能については大脳皮質活動の機能低下も関連していることを明らかにした。大脳皮質活動と歩行バランス機能との関連においては、前頭前野における認知処理リソースが重要な役割を果たしていることを健常者での検討によって明らかにし、パーキンソン病においても大脳皮質の賦活が立位歩行能力の向上につながる可能性を示唆する知見を得た。
  99. 発話・上肢・下肢の運動制御の個人差に着目した吃音の神経メカニズムの探求 16K00366 2016-04-01 – 2020-03-31 豊村 暁 群馬大学, 大学院保健学研究科, 准教授 (90421990) 研究開始時の概要:基盤研究(C) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:疑似対面発話時の脳活動を計測したところ,吃音の頻度と扁桃体の活動が有意に相関していた。下肢運動時の脳活動を計測するために,非磁性の円筒型トレッドミルを作成し,評価した。8週間のマインドフルネス瞑想法の練習が聴覚フィードバックを介した発話の知覚・生成過程に影響を及ぼした。3歳児の吃音の割合は1.41%,回復率は82.8%であり,1歳半における言語発達の程度によって回復率が有意に異なっていた。口唇運動の模倣時の運動野の働きには左右差があり,親密度によって異なっていた。
  100. スポーツスキル向上を目指した神経科学的研究 16J01324 2016-04-22 – 2019-03-31 研究開始時の概要:特別研究員奨励費 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  101. 前頭前野における情報の抽象化と演繹的情報創生の神経メカニズムの研究 16H06571 2016-06-30 – 2021-03-31 坂上 雅道 玉川大学, 脳科学研究所, 教授 (10225782) 複合領域 研究開始時の概要:新学術領域研究(研究領域提案型) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  102. 「コグニティブライフシステム」の創出を目指して 16H03250 2016-04-01 – 2020-03-31 野田 隆政 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 病院, 医長 (50446572) 研究開始時の概要:基盤研究(B) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:衝動性の神経基盤に関する検討を行い、事象関連電位において課題提示から300ms以降に生じる脳活動(P300)が衝動性のコントロールに関連している可能性を確認した。安静時の脳活動を利用していた従来のニューロフィードバック(Neurofeedback: NF)手法を改良し、課題中にフィードバックするタスク型NFを開発した。効果検証試験においてもタスク型NFは脳活動の良好な変化を認めた。また、タスク型NFトレーニングは従来法よりも短い期間で効果が発揮されることも分かった。また、NFと併用することで増強効果が期待できる知覚感度に関する自律神経系フィードバックを考案した。
  103. 動物モデルを用いた中枢性脳卒中後疼痛の病態および神経刺激療法の除痛機序の解明 15K21142 2015-04-01 – 2018-03-31 細見 晃一 大阪大学, 医学系研究科, 特任講師(常勤) (70533800) 研究開始時の概要:若手研究(B) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:霊長類中枢性脳卒中後疼痛(CPSP)モデルを作成し、行動評価および高磁場MRIを用いた脳機能評価を行った。疼痛発症後には、痛み関連領域内における領域間の機能的結合が増加していた。その疼痛モデルザルに一次運動野に対する反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)を実施したところ、感覚過敏が改善すると共に、痛み関連領域内における領域間の機能的結合が減弱していた。CPSPの発症機序やrTMSの除痛機序に痛み関連領域内の領域間機能的結合が関与していることが示唆された。
  104. 情動制御を実現する脳内ネットワークの解明 15K17318 2015-04-01 – 2019-03-31 村上 裕樹 大分大学, 福祉健康科学部, 准教授 (40600325) 研究開始時の概要:若手研究(B) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:マインドフルネス傾向の高い参加者に対して,実験的なストレス場面として,不快な画像を呈示した際の脳活動を測定した。その結果,右前部島皮質においてより高い活動が見られた。前部島皮質は情動の自覚に関する脳領域とされていることから,マインドフルネス傾向の高い人では,身体の情動反応における気づきが高いことを表している。また,前部島皮質と右扁桃体の機能的結合が,マインドフルネス傾向の高い人で低下していることが確認された。
  105. 脳可塑性への働きかけに基づく言語障害リハビリテーション 15K16386 2015-04-01 – 2018-03-31 岩渕 俊樹 浜松医科大学, 子どものこころの発達研究センター, 特任助教 (20711518) 研究開始時の概要:若手研究(B) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:ニューロフィードバックに代表されるような脳の可塑性を利用する手法を用いて、言語の神経メカニズムの解明および言語リハビリテーション法への応用可能性の探索を目的として研究を行った。機能的MRIによる2つの研究(研究1、研究2)を行い、文処理の神経メカニズムを検討した。研究1により、文処理の負荷が統語処理とワーキングメモリに分離され、前者に左下前頭回弁蓋部が、後者に左前頭弁蓋(op9)が関与することが示された。研究2は、背側言語経路が統語処理に、腹側言語経路が意味的統合に関わることを示した。これらの研究に基づきfMRIニューロフィードバックによる統語障害リハビリテーションの確立を目指す。
  106. 感性的好意度評価の変動と脳内可塑的変化との因果性の解明 15K16080 2015-04-01 – 2019-03-31 緒方 洋輔 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 特任助教 (60641355) 研究開始時の概要:若手研究(B) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:本研究では脳領域の活動をフィードバックし脳活動を変化させる際にタイミングを個人ごとに変化させることで効果の確度が増す傾向は見られ、同時にEEGを用いた計測により機械学習アルゴリズムを用いて好意度を200msから400msの事象関連電位成分から読み取ることに成功した。
    以上の結果から、好意度変化に関与する可能性のある脳活動情報は刺激呈示より比較的短時間の成分であり、精度の高いニューロフィードバックを行うためには、時間解像度に優れるEEGなどに由来する時間成分情報抽出やミリ秒単位でのfMRI高速撮像法による活動量の抽出が必要になることが示唆された。
  107. 米国での調査を踏まえて長期間ニューロフィードバック訓練の効果検討 15K13136 2015-04-01 – 2019-03-31 山口 浩 岩手大学, 人文社会科学部, 教授 (20174625) 研究開始時の概要:挑戦的萌芽研究 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:本研究は抑うつ傾向に対して効果の考えられる脳波neurofeedback(NF)法で特に前頭部脳波非対称性(左前頭部賦活>右前頭部賦活を訓練)のNF訓練を長期間(20日間)実施し効果を検討した。
    実験は、統制群(8名;BDI-2平均23.1,SD=6.6)とNF実験群(8名;同23.5,SD=5.1)を設け、実験群に毎回25分間のNF訓練を実施。訓練未終了の被験者がいるため途中結果報告だが、抑うつ傾向に関し実験群でのみ得点が有意に低下。学習法について集中学習法の有利を予測したがそうとも言えなかった。更に訓練効果を上げるためには今回収集した内省報告をもとに修得方法や訓練時間配分の検討が必要である。
  108. fMRIニューロフィードバックを用いた吃音の発話流暢性改善手法の開発 15K12594 2015-04-01 – 2018-03-31 錦戸 信和 株式会社国際電気通信基礎技術研究所, 脳情報通信総合研究所, 研究員 (60610409) 研究開始時の概要:挑戦的萌芽研究 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:発話の流暢性が損なわれる発話障害である吃音のある成人に対して,fMRIニューロフィードバックを用いた流暢性改善手法を検討する前に,発話の流暢性に関する神経基盤を調べるために,発話時および発話のイメージ時の脳活動と生体信号を同時に計測した.
    また,吃音のある成人と無い成人の脳形態の比較および,心理的特性や吃症状との関係を調べた.その結果、吃音のある成人は無い成人に比べ,左の楔部および,紡錘状回の体積が有意に小さいことが示された.また,楔部に関しては心理的特性と負の相関があることも示された.これらの結果は,心理的特性が脳形態に影響する可能性を示唆する.
  109. 脳血流BFトレーニングシステムの開発と評価 15K12040 2015-04-01 – 2017-03-31 川島 隆太 東北大学, 加齢医学研究所, 教授 (90250828) 研究開始時の概要:挑戦的萌芽研究 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:機能的MRIを用いた個人脳活動解析によって、食欲の制御に関わる脳領域を同定し、それらの領域内に超小型NIRS装置を用いたバイオフィードバック訓練のターゲット領域が含まれることを確認した。しかし、実生活環境でシステムを稼働させると、ベースラインシフトへの対応、脳活動をフィードバック信号に変換する係数の設定が非常に困難であることが判明し、プログラムの修正を行ったが、目的とする実証実験を行うことができなかった。
  110. 運動想起型相互適応BCIにおけるフィードバック訓練のための信号取得法 15K01852 2015-04-01 – 2018-03-31 加納 慎一郎 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (00282103) 研究開始時の概要:基盤研究(C) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:ユーザが身体動作を想起した際の脳波を検出する運動想起型BCIの正答率向上のため,脳活動信号をユーザにリアルタイムで提示しながら課題の遂行を求めるニューロフィードバック(NF)訓練を行う際,被験者に提示するフィードバック情報を統計的手法により取得する方法を検討した.本研究の結果,多チャネル脳波に適用する空間フィルタによってNF訓練の効果が向上することがわかった,また,脳波から脳内信号源の電気活動を推定してNFに供することでNFの効果が向上する可能性が示された.
  111. 運動錯覚と運動イメージを同期させたニューロリハビリテーションデバイスの開発 15K01439 2015-04-01 – 2018-03-31 兒玉 隆之 京都橘大学, 健康科学部, 准教授 (80708371) 研究開始時の概要:基盤研究(C) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:本研究の目的は、運動錯覚生成メカニズムに及ぼす運動イメージ能力の影響を解明し、ニューロリハビリテーション介入時に運動イメージ能力を高めながら、感覚運動機能を改善させる効果的な脳内神経機能再編成システムを構築することであった。振動刺激時の脳内神経活動についてMicrostate法解析を行った結果、錯覚誘起には運動イメージ能力が影響を及ぼすことが明らかとなった。また、脳卒中片麻痺患者に対して、我々が開発した脳波周波数パターン認識型システムを用いた介入を実施した結果、感覚運動関連脳領域の神経活動性に向上を認め運動主体感も改善を認めた。以上より、本システムの介入手法としての有用性が示唆された。
  112. リアルタイムfMRIによるニューロフィードバックを用いた慢性不眠症治療法の開発 15J12161 2015-04-24 – 2018-03-31 研究開始時の概要:特別研究員奨励費 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  113. NIRSと機械学習を用いたアレキシサイミアに対するニューロフィードバックの開発 15J07284 2015-04-24 – 2017-03-31 研究開始時の概要:特別研究員奨励費 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  114. 精神疾患の次世代治療法に繋がるfMRIニューロフィードバックトレーニングの開発 15J06788 2015-04-24 – 2017-03-31 研究開始時の概要:特別研究員奨励費 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  115. 発振操作による動的ネットワークの再組織化 15H05880 2015-06-29 – 2020-03-31 美馬 達哉 立命館大学, 先端総合学術研究科, 教授 (20324618) 複合領域 研究開始時の概要:新学術領域研究(研究領域提案型) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:本研究では、精神神経疾患の発症とそこからの機能的回復には、発振現象を基盤とした動的ネットワークの変化(再組織化)が関わっているという「ネットワーク病態」仮説を元にして新しい着想での研究を展開した。実験研究班として、Aグループ、Cグループ、公募班と共同研究を行い、健常人および神経精神疾患患者での新規の発振現象を探索し、脳卒中やパーキンソン病など運動障害のバイオマーカを開発するとともに、発振制御によるヒト脳可塑性誘導手法を開発することを達成し、リハビリテーション効果を実証した。
  116. ネットワーク自己再組織化の数理的基盤の創成 15H05878 2015-06-29 – 2020-03-31 津田 一郎 中部大学, 創発学術院, 教授 (10207384) 複合領域 研究開始時の概要:新学術領域研究(研究領域提案型) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:脳の病態を非線形振動子ネットワークの異常ととらえ、特にてんかん患者の脳波の異常発振とレビー小体型認知症の複合型視覚性幻覚に対するバイオマーカーを提案することを目標にした。拘束条件付き自己組織化理論を構築し、ミクロとマクロのニューロフィードバックを実現する計測システムをネコなどの動物で構築した。これらの理論的基盤、実験的基盤に基づき、てんかん患者の脳波データを複雑系解析し、少数自由度力学系の出現、パワースペクトル揺らぎの減少をバイオマーカーとして提案した。また、視覚性幻覚に関する数理モデルを構築しネットワークの自己再組織化過程においてネットワーク病としてのシナプス学習異常を発見した。
  117. 心的イメージの神経基盤の解明 15H05710 2015-05-29 – 2020-03-31 神谷 之康 京都大学, 情報学研究科, 教授 (50418513) 研究開始時の概要:基盤研究(S) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:イメージはわれわれの心の状態を構成するもっとも重要な要素の一つである。本課題では、脳情報デコーディングを活用して知覚、想起、および、夢に共通する神経情報処理とその相違を明らかにすることを目標とした。イメージの種類による脳情報表現の類似性・相違を、画像特徴の階層性と脳部位の両面から解析する方法を確立し、世界で初めて想起イメージを脳から画像として可視化することに成功するなど、分野を超えたインパクトをもたらす成果が得られた。
  118. 過剰訓練が引き起こす脳神経疾患の神経リハビリテーション法の開発 15H05358 2015-04-01 – 2018-03-31 古屋 晋一 上智大学, 音楽医科学研究センター, 特任准教授 (20509690) 研究開始時の概要:若手研究(A) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:本研究は,経頭蓋直流電気刺激(tDCS)を両側の大脳皮質運動野に印可しながら両手指鏡像動作を行う介入(ニューロリハビリテーション)を実施し,その前後に神経生理学評価(経頭蓋磁気刺激:TMS)と巧緻運動機能評価(データグローブ,MIDI)を行うことで,当該介入効果の神経生理学的機序を明らかにした.さらにTMSと動作分析により,大脳皮質運動野の興奮性異常と巧緻運動機能低下の間にある詳細な関連を,機械学習手法を用いて明らかにした.加えて,経日介入を行うことで,当該介入効果の漸増が認められた.
  119. 運動機能再建を目的としたreal-timefMRIニューロフィードバックの構築 15H05357 2015-04-01 – 2019-03-31 北 佳保里 千葉大学, フロンティア医工学センター, 助教 (60550548) 研究開始時の概要:若手研究(A) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  120. 共鳴の輪の中で:音楽の場とその形成について 15H03175 2015-04-01 – 2018-03-31 古川 聖 東京藝術大学, 美術学部, 教授 (40323761) 研究開始時の概要:基盤研究(B) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:3人~5人の参加者の脳波計測データの実時間分析しそのデータを音や映像に変換し芸術表現を行った、さらにこのシステムを双方向化、つまり、参加者がその音や映像を再び体験し、その結果を脳波が変化し音や映像も変化するという、フィードバックループする状況をインスタレーションとして発表した。多数の人が簡単に装着できる脳波計を開発し、10人以上の人が同時に脳波計測できるシステムの準備をおこなっており、次のフェーズで実施公開する。
  121. 運動処方への初期応答による高齢者の分類法の確立 15H03104 2015-04-01 – 2019-03-31 中井 敏晴 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 神経情報画像開発研究室, 室長 (30344170) 研究開始時の概要:基盤研究(B) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:fMRIを用いて高齢者に対する介入開始4週間後に運動処方の効果予測を行ない、運動処方の長期的効果を反映する脳活動指標を探索した。何れも前部帯状回の安静時脳活動が有力な指標候補と考えられた。認知負荷への応答特性を高精度で抽出するためのNeurofeedback fMRIを開発し年齢群間比較を行なったところ、若年者では後部帯状回と視覚野群の活動が脱賦活化されるが高齢者ではこの傾向は見られず、認知処理の予備能力減少を反映すると考えられた。対人認知機能の評定実験では高齢者は第一印象と一致しない情報処理への動機付けが弱いと考えられた。
  122. 超多点BMI環境におけるニューロフィードバックによる神経系の可塑的変化の研究 15H03049 2015-04-01 – 2018-03-31 鈴木 隆文 国立研究開発法人情報通信研究機構, 脳情報通信融合研究センター脳情報通信融合研究室, 室長 (50302659) 研究開始時の概要:基盤研究(B) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:BMI接続による神経系の変化が注目されている。本研究は申請者が開発中の超多点BMIシステム等の技術を統合させた実験システムを構築して、神経系の可塑的変化の特性や限界を解明し、その制御・誘導を図ることを目的として行った。なお本研究における動物実験は、大阪大学生命科学研究科の承認のもと、大阪大学にて実施された。まず、(1)実験用統合システムの構築と評価として高密度柔軟電極を試作し、BMIデコーディングなどの用途における高密度電極の設計指針を得た。次に(2)多点柔軟神経電極を利用した可塑特性解明実験を動物モデルにより行い、BMI接続によりハイガンマ帯域の信号などに変化がみられることが観察された。
  123. 音声の病態分析を用いた治療効果のフォローアップ技術の開発 15H03002 2015-04-01 – 2018-03-31 徳野 慎一 東京大学, 医学部附属病院, 特任准教授 (40508339) 研究開始時の概要:基盤研究(B) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:診療上で医師の主観的評価や自記式質問紙による患者本人の主観的判断に頼らざるを得ない疾患が少なからずある。我々は患者の音声を解析して客観的な指標を示すことで、そうした疾病のスクリーニングやモニタリングを可能とする技術を開発した。うつ病においては、十分な感度と特異度を持った指標が完成した。また、その指標が医師の評価と相関が取れることも確認した。さらにこの指標を用いてスマートフォンアプリケーションを作成し一般に公開した、また、この指標を用いたクラウドシステムが商品化された。パーキンソン病についても同様の指標を開発したが、更なる検証が必要である。双極性障害や認知症の指標については現在なお開発中である。
  124. 多利用者・多状況に共通する特性の抽出による情報転移BMI 15H02759 2015-04-01 – 2018-03-31 川鍋 一晃 株式会社国際電気通信基礎技術研究所, 脳情報通信総合研究所, 研究室長 (30272389) 研究開始時の概要:基盤研究(B) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:脳活動パターンは、同一の認知課題であっても利用者間で異なる上、同一利用者でも状況により揺れが存在する。このような脳計測データの不均質性を把握する解析手法を開発し、fMRIや脳波の実データに適用した。また、利用者や計測状況に共通した特徴を発見するために、変動の軽減に役立つノイズ除去法の評価、およびロバストな特徴抽出法の構築を行った。さらに、利用者への負担が軽いブレインマシンインタフェース(BMI)をめざして、辞書学習法や多変量自己回帰モデルなどに基づく転移学習法の枠組みを提案し、30日間分の筋電データを用いて転移学習法の有効性を検証した。
  125. うつ病の神経回路病態の解明とそのリモデリングに関わる基盤研究 15H02552 2015-04-01 – 2018-03-31 山脇 成人 広島大学, 医歯薬保健学研究科, 特任教授 (40230601) 研究開始時の概要:基盤研究(A) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:本研究の目的はうつ病の病態を局所の神経活動の異常および関連する神経回路の機能異常として理解し、神経回路のリモデリングによる治療法を解明することである。本研究の成果として、① 前頭前野と前帯状皮質を含めたうつ病患者の特異的な機能的結合の同定、②ラットの前頭前野の神経活動変化による行動変化の同定、③ラットの行動変化と前頭前野における電気生理学的変化との関連、④ ①から③の基礎検討を元にうつ病患者に対してNeurofeedbackを実践し、前頭前野と前帯状皮質の機能的結合の改善、を明らかにすることができた。社会実装の観点から今後さらなる症例の蓄積や方法論において修正を重ねていく必要がある。
  126. 身心変容技法と霊的暴力ー宗教経験における負の感情の浄化のワザに関する総合的研究 15H01866 2015-04-01 – 2019-03-31 鎌田 東二 上智大学, グリーフケア研究所, 教授 (00233924) 研究開始時の概要:基盤研究(A) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:「身心変容技法」がもたらす負の側面の考察を主軸に考察した。例えば、気功修行で言う「入魔」、禅の修行で問題とされる「魔境」、諸宗教で信仰されてきた「悪魔・悪霊」などの観念や経験を含む「霊的暴力」という観点から総合的に研究を進め、研究成果を『身心変容技法シリーズ第1巻 身心変容の科学~瞑想の科学』『同2巻 身心変容のワザ』(ともにサンガ、2017年9月、2018年2月)として出版した。また、2018年9月9日に日本宗教学会で分担研究者5名と共に成果をパネル発表し、同学会誌『宗教研究』に掲載した。本科研の全活動と全成果は研究年報『身心変容技法研究』に掲載し、HP上でPDF全頁公開し社会還元している。
  127. 認知モデルを利用した自伝的記憶のミラーリングエージェント 15H01615 2015-04-01 – 2017-03-31 森田 純哉 静岡大学, 情報学部, 准教授 (40397443) 複合領域 研究開始時の概要:新学術領域研究(研究領域提案型) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  128. 統合失調症・気分障害における「寛解」と「回復」の脳機能基盤に関する縦断的研究 26860914 2014-04-01 – 2016-03-31 滝沢 龍 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (30420243) 研究開始時の概要:若手研究(B) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:精神症状のみの軽減を目指した「寛解」だけでなく、社会的機能や幸福感の改善も含めた「回復」の脳機能基盤の背景を明らかにすることを目的とした。うつ状態の診断の補助に資する指標として、NIRSによる脳機能計測法が2013年に保険適応となったが、いまだ状態把握や予後予測に資する客観的・生物学的な指標は確立されていないため、縦断的研究により個人内の継時的変動を明らかにすることを目指した。
    脳部位によって、特性依存的と状態依存的なNIRS信号がそれぞれ存在する可能性を示した。臨床応用には、さらなる検討が必要であるが、NIRSにより計測された局所脳機能が状態依存性に変動し、予後を予測する可能性が示唆された。
  129. 発達性ディスレクシアのリスク児における病態解明と早期支援システムの導入 26780524 2014-04-01 – 2018-03-31 北 洋輔 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所 知的障害研究部, 室長 (90627978) 研究開始時の概要:若手研究(B) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:文字の読み書きに著しいつまずきのある発達性ディスレクシアは、小学校入学後に初めて診断を受けるものの、既に著しい学習困難に陥っていることが少なくない。そのために、就学前の段階で早期に発見し、適切な支援を行うことが効果的とされる。この研究では、ディスレクシアの可能性のある子どもを年長の段階で発見し支援につなげるための方法を、心理学・教育学・認知神経科学の観点から開発した。そして、年長の時点から行うことが可能な支援の方法を、神経生物学的エビデンスに基づいて提案することを達成した。
  130. 脳波による難治性疼痛症例の運動療法の治療効果の予測 26750207 2014-04-01 – 2017-03-31 西上 智彦 甲南女子大学, 看護リハビリテーション学部, 准教授 (60515691) 研究開始時の概要:若手研究(B) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:慢性痛の多くは器質的な問題だけでなく心理的・社会的な要因、さらには、中枢神経系の変調が関与しあっている。本研究の目的は,慢性痛患者の初期評価時の脳活動が運動療法の治療効果を予測できるか検証することである。対象は慢性痛患者(男性12名,女性23名)であった.初診時及び3ヶ月後に疼痛強度,疼痛生活障害尺度、不安、抑うつの評価指標、痛みの破局的思考、生活の質の指標及び脳活動を評価した。結果、20%以上疼痛が改善した患者は14名で,20以内であった患者は21名であった.初期評価時に両群間に有意な差を認めたものは、EQ-5Dのみであり、各周波数解析の結果に両群に有意な差を認めなかった。
  131. 脳波による指運動情報の予測 -脳波バーチャルキーボードに向けて- 26560303 2014-04-01 – 2017-03-31 南部 功夫 長岡技術科学大学, 工学研究科, 助教 (40553235) 研究開始時の概要:挑戦的萌芽研究 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:本研究では、直感的で操作が容易な脳情報バーチャルキーボード構築に向けた基礎検討を行った。最初に、脳波(EEG)を用いて、運動実行時および想起時の個々の指運動(想起)を予測できる可能性を明らかにした。次に、機能的核磁気共鳴画像法(fMRI)により、運動準備時には対側の運動前野や補足運動野に高精度な指運動情報(系列)が含まれることがわかった。最後に、機能的近赤外分光計測(fNIRS)を用いた運動情報の抽出を目指し、fNIRS信号に混在する頭皮血流アーチファクトを除去し、脳活動の推定精度を向上させる手法を開発した.以上の結果は、脳情報を利用したバーチャルキーボード構築に貢献すると期待される。
  132. 動作主体感を生み出す脳内機構の操作的検証 26540059 2014-04-01 – 2016-03-31 小川 健二 北海道大学, 大学院文学研究科, 准教授 (50586021) 研究開始時の概要:挑戦的萌芽研究 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:本研究は、fMRIニューロフィードバックを利用し、脳の感覚運動学習に関わる神経表象、および学習に付随する運動主体感の操作を試みた。まず研究代表者の所属機関に新規導入されたMRI装置に対して、新たにfMRIのリアルタイム処理系およびフィードバック・システムを構築した。そのシステムを使って実験参加者は感覚運動学習時の感覚運動領域の脳活動パターンを変化させた。本研究からニューロフィードバックにより感覚運動領域における脳活動パターンの操作が可能である点が示された。
  133. Learning to control brain activity pattern using real-time functional MRI: A feasibility study 26350993 2014-04-01 – 2017-03-31 BAGARINAO E. 名古屋大学, 脳とこころの研究センター, 特任准教授 (00443218) 研究開始時の概要:基盤研究(C) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:本研究では、即時に脳機能状態を識別して可視化する、リアルタイム機能的MRIによる脳機能識別システムを独自に開発し、被験者が自分の脳の状態を観察しながら、目的とするパターンに制御する、つまり、ニューロフィードバック制御、の可能性について検証した。結果では、開発したシステムは、全体の処理を、画像取得時間(2秒)よりも速く行う事が出来た。3つのタスク(指を鳴らす行為を想像、語想起、引き算)について、リアルタイム機能的MRIを撮像しながら、被検者に識別、再現させるフィードバック実験では、サポートベクターマシンを用いる事により、一貫して80%以上の平均識別精度で、目的とする脳状態を再現する事ができた。
  134. 内的思考への注意揺らぎ神経基盤の解明と集中持続支援への応用 26330171 2014-04-01 – 2017-03-31 野澤 孝之 東北大学, 加齢医学研究所, 助教 (60370110) 研究開始時の概要:基盤研究(C) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:本課題の目的は,思考の諸次元における揺らぎの神経基盤を解明し,その知見をもとに日常的思考活動を支援する脳計測応用の基盤を確立することである.一連の研究を通じて以下のような成果を得た:(1)自発的に生じる内的思考への注意・意識状態の揺らぎの神経基盤を同定した; (2)ポジティヴ/ネガティブな思考の持続や移り変わりの背後にある脳活動ダイナミクスを同定した; (3) 思考の多様性を支える,時空間的に非一様な高次元機能的結合ダイナミクスの存在を明らかにした; (4) コミュニケーションを介した集団的思考の評価における多人数同時脳計測と脳活動同調分析の有効性を明らかにした.
  135. 脳内身体表現のスローダイナミクスモデル 26120005 2014-07-10 – 2019-03-31 淺間 一 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (50184156) 複合領域 研究開始時の概要:新学術領域研究(研究領域提案型) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:運動主体感や身体保持感などの身体意識は,脳内身体表現に基づき実時間で創出される(Fast dynamics).一方,脳内身体表現は知覚運動経験を通してゆっくりと生成・更新され,変容する(Slow dynamics).研究項目B01では,この身体意識に関する脳内身体表現の生成・更新のダイナミクスのモデル化を行った.具体的に、身体意識の創出と脳内身体表現の変容の数理モデル化,認知身体マッピング器モデルの検証,およびモデルベーストリハビリテーションへの応用の検討を行った.
  136. 脳内身体表現の変容を促す神経機構 26120002 2014-07-10 – 2019-03-31 今水 寛 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (30395123) 複合領域 研究開始時の概要:新学術領域研究(研究領域提案型) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:人間が適切に身体を動かしているときには“自身が運動している”という運動主体感や“これが自身の身体である”という身体所有感などの身体意識を得られる.本研究は,身体意識の神経基盤が,主に右半球の下頭頂小葉と前頭回を結ぶ神経回路網に存在することを,健常者における行動実験・脳活動計測・非侵襲脳刺激,身体意識に変容のある統合失調症患者における脳内ネットワーク解析で明らかにした.また,身体意識の基礎となる感覚抑制のメカニズムを,サルの神経活動記録により,ニューロンレベルで明らかにした.
  137. 運動学習の獲得と実現に関わる神経回路の構造基盤と機能変化 26112006 2014-07-10 – 2019-03-31 藤山 文乃 同志社大学, 脳科学研究科, 教授 (20244022) 生物系 研究開始時の概要:新学術領域研究(研究領域提案型) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:最近この運動学習の過程には、線条体の異なる領域間での機能シフトが関与するという報告がある。しかし大脳皮質―基底核―視床ループは、点対点の、あるいは部位ごとの整然とした中継によって構成されているわけではなく、獲得期から熟練期への機能シフトを担う“真の機能領域”がこのループにおいて何に規定されているのかはほとんどわかっていない。そこで本計画研究では、まず形態学、電気生理学、光遺伝学を系統的に組みあわせて解析し、線条体コンパートメントと大脳皮質―基底核―視床ループにおける機能的な結合様式を同定した。さらに皮質入力と視床入力の差異を調べることで、各々のシナプス特性の違いを解明した。
  138. ニューロフィードバックを用いた患側手の自発的使用の意思決定介入 14J11742 2014-04-25 – 2016-03-31 研究開始時の概要:特別研究員奨励費 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  139. ニューロフィードバックを用いた位相同期ダイナミクスの制御と脳機能解明 14J08352 2014 – 2015 研究開始時の概要:特別研究員奨励費 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  140. 高機能自閉症スペクトラム障害における共感の神経基盤の解明と育成に関する研究 14J04621 2014-04-25 – 2016-03-31 研究開始時の概要:特別研究員奨励費 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  141. オプトジェネティクスを応用した特異的セロトニン神経刺激による強迫性障害の病態解明 25893204 2013-08-30 – 2015-03-31 酒井 雄希 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任講師 (60714475) 研究開始時の概要:研究活動スタート支援 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:麻酔下マウスで海馬を対象としたオプトジェネティクス特異的刺激を行うことで、マウス機能的MRIで光刺激による変化を全脳評価できることが確認できた(Takata 2015)。無麻酔でマウス用MR画像を撮像する実験系を確立し、オプトジェネティクスを用いた刺激を行っても、体動アーチファクトがほとんど起きないことを確認した。麻酔下と覚醒下や、セロトニン作動性抗うつ薬投与前後での検討では有意な差を検出し、高い精度で測定できていることが確認できた。
    ヒトOCD患者の安静時機能的MRIデータ収集を行い、脳ネットワークを対象とした判別解析にて、線条体・前頭葉ネットワークと関連した仮説を裏付ける結果が得られた。
  142. 数学認知と神経基盤を共有する高次認知機能の学習効果 25871252 2013-04-01 – 2016-03-31 丸山 雅紀 大阪大学, 免疫学フロンティア研究センター, 特任助教 (70443033) 研究開始時の概要:若手研究(B) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:数学能力と神経基盤を共有する認知機能を示すために、日常で得られる経験学習の差異で生じる個人差に着目し、数感覚と、痛覚などの認知課題を20名の健常成人に遂行させ、収集した行動データの相関を調べた。簡易的な解析を行った結果、数感覚と有意に正の相関を示す認知課題は得られなかった。今後、高度な解析の導入や被験者数の追加などにより統計解析の精度を高め、更に検証を進める。
    学習課題を遂行させて計算式の文法認知を強化または弱化させ、その効果の言語機能への汎化も調べた。16名の健常成人が実験に参加し、課題成績の上昇が確認された。今後、学習課題の前後に収集した言語機能のデータを比較し、学習効果の汎化を検証する。
  143. NIRSを用いたrealtimeneurofeedbackによるうつ病治療の開発 25861011 2013-04-01 – 2017-03-31 松原 敏郎 山口大学, 大学教育機構, 准教授 (60526896) 研究開始時の概要:若手研究(B) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:ニューロフィードバック(Neurofeedback:NF)とは,被験者が脳機能測定中に自身の脳活動をモニターでリアルタイムに見ながら,脳活動コントロールを学ぶことである。 うつ病患者で情動刺激に対する前頭葉の機能異常が報告されており、その機能異常をNFを用いて改善できれば,有用な治療法となる可能性がある。われわれは脳機能測定装置として、被験者に副作用のない光トポグラフィーを用いた。研究成果としては、1)うつ病患者に脳の情動調整障害があることを明らかにした、2)健常人を対象に前頭部NFを行い、NFは1)気分を改善する効果があり,2)陰性情動刺激に対して,前頭部血流を上昇させることを明らかにした。
  144. 吃音者・児の発話における運動前野の役割-近赤外分光法による検証- 25770169 2013-04-01 – 2017-03-31 青木 淳 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所 疾病研究第三部, 流動研究員 (00633174) 研究開始時の概要:若手研究(B) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:発話時の左前頭皮質における脳血液応答について近赤外分光法(NIRS)を用いて測定し、吃音者・非吃音者間で差異があるか検討した。その結果、被験者群と単語種類(高親密度単語、低親密度単語、無意味単語)の間で、ブロードマンエリア(BA)46における脳血液応答に有意な相互作用がみられた。一方でブローカ野では差がみられなかった。本研究より、左BA46が単語親密度と関連し、発話において吃音者・非吃音者間で応答が異なることが示唆された。本研究では発話に関わる神経応答を定量する新しい方法を示し、吃音の発達問題をより理解するために吃音児へ適用できる可能性がある。
  145. 動作に対する好ましさの感性とその感性脳機能学的情報処理モデルの検討 25730172 2013-04-01 – 2015-03-31 緒方 洋輔 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, 脳病態統合イメージングセンター, 流動研究員 (60641355) 研究開始時の概要:若手研究(B) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:本研究の目的は、運動・動作を美しく、または好ましく感じる際にどのような神経基盤によって表象されているかを明らかにすることであった。研究の結果、反復模倣・観察を行った動作に対して好意度評価の増加が認められた。関連して、反復模倣・観察を行った動作刺激に対する好意度の評価時には、報酬価値の表象に関与する腹側線条体を含む部位の活動増加が認められた。加えて、動作を反復している際に下頭頂小葉の活動が減少し、その減少量と好意度の増加量の相関が認められた、これらの結果から、動作の反復模倣・観察が、刺激に対する価値表象の変化を誘発し、選好に影響を与えている可能性が示唆された。
  146. ニューロフィードバックを利用した直接伝送型脳波コミュニケーションの実現 25560430 2013-04-01 – 2015-03-31 飯塚 博幸 北海道大学, 情報科学研究科, 准教授 (30396832) 研究開始時の概要:挑戦的萌芽研究 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:通常,ニューロフィードバックは自分の脳波を観察することによって行われるが,本研究では,計測された脳波を直接伝送し,2者の間においてニューロフィードバックを行う実験を行った.フィードバックする脳波はα波帯域のパワーを視覚刺激で表示する方法を用いた.結果として,この相互の脳波を伝え合うコミュニケーション状態を利用し,双方のα波を高める訓練が成功した.2者間でのコミュニケーション型ニューロフィードバックで訓練をした場合には,その後,1者でニューロフィードバックを行ってもその効果が継続していることがわかった.
  147. ニューロフィードバックを用いた知的障害者のための言語学習支援システム 25560287 2013-04-01 – 2016-03-31 伊良皆 啓治 九州大学, システム情報科学研究科(研究院, 教授 (20211758) 研究開始時の概要:挑戦的萌芽研究 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:発達障害児や知的障害児の学習をサポートするため、脳情報を計測しフィードバックする学習支援システムを開発することを目ざしたが、脳波や脳血流の情報を非拘束状態で計測するシステム開発、特に脳波の動きによるノイズ除去法の提案、フラクタルディメンジョンを用いた脳波、NIRS解析法の構築、また、重度心身障害児に対する脳波応答の特徴抽出により、シータ波の事象関連位相解析が言語の応答に対して有効であるという研究成果を得た。
  148. こころの時間長・同期・クロックを作り出す認知メカニズムの解明 25119003 2013-06-28 – 2018-03-31 村上 郁也 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (60396166) 複合領域 研究開始時の概要:新学術領域研究(研究領域提案型) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:主観的現在の時間スケールにおいて私たちが感じる時間長や時間差などをつかさどる脳内メカニズムが、視覚運動・位置知覚・注意・多感覚統合などの処理プロセスと階層的に相互作用している計算枠組みが、心理物理学と機能的脳計測の手法で解明された。心的時間に関わる神経表現が感覚モダリティごとに特有の同期周波数をもつことが示唆され、また感覚証拠が乏しい際に事前確率が重視されるなどの最適推定が行われることがわかった。
  149. 感性特性に着目した自閉性障害者の視覚的短期記憶機構の解明と感性知能検査の開発 13J09521 2013 研究開始時の概要:特別研究員奨励費 研究概要: 研究成果の概要:本研究の目的は, ①「自閉症者を対象としたパターン認知と視覚的短期記憶における感性特性の影響に関する心理物理的検討, および個人差の検討」, ②「心理物理データ蓄よび個人差に関する生理学的基盤の証明」, ③「感性知能検査の開発」から構成されている。
    研究時間およびエフォートの多くは, 研究所における研究課題と日常業務に充てられた。研究所の研究課題としては, 本年度は脳波に着目したニューロフィードバック訓練の導入を試みた。ニューロフィードバック訓練は, 注意などの高次視覚機能の改善を目的とする訓練法である。海外では導入が検討され始めているものの, 日本では学術的検討がなされてこなかった。このため, 注意欠陥多動性障害(ADHD)のある児童に対してニューロフィードバック訓練を実施することは, これらの児童の高次認知機能を検討するために有益であると考えられる。本年度も結果から, ニューロフィードバック訓練に関する一定の効県が認められた。この結果は, neuroReport誌に掲載された。
    日本学術振興会特別研究員としての研究課題に関しては, 満足な研究時間とエフォートを充てることはできなかった。したがって, これまで行なってきた研究内容を論文化することに尽力した。これらは研究課題で対象としている自閉症スペクトラムに関する研究であり, 「Journal of Autism and Developmental Disorders誌」を始めとして5本が掲載された。また, 自閉症スペクトラムの早期診断と関連があるとされている低出生体重児の研究についても1本が掲載された。学会発表も積極的に行ない, 発達障害や低出生体重児に関する内容を7つの国際・国内学会で発表した。研究実績の概要:
  150. ヒトの知覚における確率共振現象の生理学的メカニズムの解明 24700617 2012-04-01 – 2015-03-31 相原 孝次 株式会社国際電気通信基礎技術研究所, 脳情報通信総合研究所, 専任研究員 (10600918) 研究開始時の概要:若手研究(B) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:脳内で確率共振が起きる証拠を示すために、脳波から逆問題を解いて脳内ノイズレベルを推定することを試みたが、計算機シミュレーションの結果から正確な推定は困難であることが明らかになった。次に、経頭蓋ランダムノイズ刺激により脳内ノイズレベルを操作できる証拠を得るために、心理物理実験により脳内ノイズレベルを推定した。操作できることが示唆されたが、さらなる実験的裏付けが必要である。最後に、安静状態ネットワークのノードに経頭蓋磁気刺激を行い、誘発反応を脳波で計測した。脳波からアーチファクトを除去する方法を検討し、安静状態ネットワークに固有の神経振動周波数が存在するかどうかを調べた。
  151. ニューロフィードバックを利用した複数運動課題の同時学習 24700615 2012-04-01 – 2014-03-31 池上 剛 独立行政法人情報通信研究機構, 脳情報通信融合研究センター脳情報通信融合研究室, 研究員 (20588660) 研究開始時の概要:若手研究(B) 研究概要: 研究成果の概要:申請者は,ある一定方向(運動方向に対して左向き)に外乱が生じる新奇な力場課題を用いた腕到達運動学習実験を行なっている際に,獲得される運動記憶が,運動計画と運動実行に対応する階層的な2つの学習プロセスによって構成され,それらの相互作用によって形成されることを示唆する興味深い結果を得た.
    力場環境下において、多くの被験者が,6~7試行に一回程の頻度で,力場の影響を“過補償”し,それまでとは逆方向の右向きの弧を描くように大きく軌道を修正することが分かった.この軌道修正は,直前の試行で課題を失敗した場合に観察された.この結果は,課題が成功していた際に活性化していたプロセスだけでなく,課題が失敗した場合に活性化する別の学習プロセスが存在する可能性を示唆している.そこで、意図的に課題の失敗を誘起させるため,運動終点で外乱が最大になる力場を開発した.実験の結果,課題が失敗した直後の試行で,力場を過補償する程大きな軌道の修正が観察された.さらに驚くべき現象が,力場学習後の脱学習過程(力場なし環境)において観察された.力場環境から力場なし環境に移行する際,力場学習の後効果によってターゲットに到達できず課題を失敗するため,次の試行では軌道が大きく修正される.さらに課題を継続すると,運動はある曲線軌道に収束した.この軌道は,力場学習前に力場なし環境下で観察される直線軌道とは明らかに異なっていた.その曲線軌道は20分以上も保持されたことから,単なる力場学習の後効果の持続では説明できない.むしろ,課題の失敗を誘起する力場学習前後において,異なる運動計画によって異なる運動が実行されたことを示唆している.
    本研究によって得られた知見は,運動学習過程において,運動計画と運動指令の学習プロセスがどのように相互作用し,どのように潜在的な運動記憶を形成するかという神経メカニズムに示唆を与える.研究実績の概要:
  152. 異なる変形性膝関節症モデル動物に対する歩行エクササイズの効果 24700569 2012-04-01 – 2014-03-31 西上 智彦 甲南女子大学, 看護リハビリテーション学部, 准教授 (60515691) 研究開始時の概要:若手研究(B) 研究概要: 研究成果の概要:歩行エクササイズが関節炎モデル,関節不安定性モデルの痛みを抑制するか検討した。結果,関節炎モデルラットにおいて,トレッドミル歩行群はトレッドミル開始2週間後のみ通常飼育群より,疼痛閾値が改善していた。一方,関節不安定モデルではトレッドミル歩行群はトレッドミル開始4週間後より通常飼育群と比較して疼痛閾値が改善していた。脊髄後根神経節においてCGRPやASIC3といった疼痛関連分子に歩行エクササイズ群と通常飼育群に有意な差は認めなかった。関節炎モデルと関節不安定性モデルではトレッドミル歩行による疼痛抑制効果の減少には時間的な差があることが示唆されが,疼痛抑制メカニズムは明らかにできなかった。研究実績の概要:
  153. 脳磁計による神経義手の開発と上肢運動機能再建による大脳皮質再構築の検討 24700419 2012-04-01 – 2014-03-31 柳澤 琢史 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90533802) 研究開始時の概要:若手研究(B) 研究概要: 研究成果の概要:本研究では臨床用脳磁計からオンラインで脳磁場信号を取得し、リアルタイムで脳情報抽出処理を行い、その結果に基づいて、患者が思った通りに動作する神経義手を開発した。また、これを腕神経叢引き抜き損傷や脳卒中、筋萎縮性側索硬化症、脳性麻痺等により重度の運動麻痺がある患者に適用した。麻痺で動かない上肢を動かす想起時の脳信号から運動情報を抽出し、麻痺患者でも脳信号で義手操作が出来る事を示した。また、この操作に習熟することで、脳活動自体も変化する事が示され、リハビリテーションなどへの応用が示唆された。本研究により非侵襲的BMIの新たな可能性が示された。研究実績の概要:
  154. リアルタイムfMRIを用いたバイオフィードバックによる社会認知機能改善プログラム 24659546 2012-04-01 – 2014-03-31 松田 哲也 玉川大学, 脳科学研究所, 准教授 (30384720) 研究開始時の概要:挑戦的萌芽研究 研究概要: 研究成果の概要:本研究では、リアルタイムfMRIによるバイオフィードバック法を用いて、局所脳活動を改善させることで高機能自閉症・アスペルガーの社会的認知機能を改善させることを目指し、感情機能や社会認知機能の改善・回復への有用性を調べ、臨床応用の可能性について検討することを目的とした。
    その結果、アスペルガー症候群もニューロフィードバックによるトレーニングにより扁桃体の活動を制御することが可能であることが確認され、トレーニング後に扁桃体の活動がトレーニング前と比較し活性化されていた。これらのことから、今後このようなトレーニング法は精神科のリハビリテーションにも十分応用できる可能性があることが示唆された。研究実績の概要:
  155. 痛みと共感―“痛みの社会性”の認知・生理・神経的基盤に関する萌芽的検討 24653160 2012-04-01 – 2014-03-31 亀田 達也 北海道大学, 文学研究科, 教授 (20214554) 研究開始時の概要:挑戦的萌芽研究 研究概要: 研究成果の概要:「他者の不遇や痛みをどのように共有できるか」という問いは、社会科学の根本的な問いであると共に、災害・格差を含む今日的問題の中核を形成する。本研究は“痛みの社会性”を領域交叉的な形で検討するための有効な概念的フレームを構築することを目的とした。本研究は多領域にまたがる経験的知見を整理し、“痛みの社会性”に関わる複数の鍵次元を概念的に析出した上で、そのフレームがどの程度有効かを見極めるため、「他者の痛みに対する共感」を出発点に、行動・認知・生理・脳機能画像計測を組み合わせた一連の実験を実行した。この結果、他者の苦痛に対して、その身体状況に応じた共感反応が生理レベルで起きることが明らかになった。研究実績の概要:
  156. 随意性の低い効果器の訓練及び非侵襲脳刺激法による随意性向上と神経基盤の変化 24300210 2012-04-01 – 2016-03-31 荒牧 勇 中京大学, スポーツ科学部, 教授 (40414023) 研究開始時の概要:基盤研究(B) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:本研究は、非利き手や足など随意性の低い効果器を対象として、その随意性を向上させ、その随意性向上に伴う神経基盤の変化を明らかにする研究を行った。足によるボールリフティングや非利き手による投球訓練により、運動制御・学習に重要な役割を果たす小脳の灰白質量が増加することが明らかとなり、成人でも脳構造が発達する証拠を示した。また、一次体性感覚・運動野への非侵襲的な経頭蓋直流電気刺激により、足関節の関節可動域を変調することに成功し、ヒト運動システムに対する神経モジュレーションの可能性を示した。
  157. 多様な記憶情報の活用を担う機能的神経回路の解析 24243069 2012-04-01 – 2016-03-31 櫻井 芳雄 同志社大学, 脳科学研究科, 教授 (60153962) 研究開始時の概要:基盤研究(A) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:本研究は、多様な記憶情報の活用を担う機能的神経回路、すなわちセル・アセンブリの活動を神経科学的に実証することを目的とした。様々な記憶課題を考案し、それらを遂行中のラットからマルチニューロン活動を記録し解析した。その結果、時間弁別課題、報酬確率予測課題、順序弁別課題など多様な記憶課題の遂行中に、海馬、扁桃体、前頭前野などでニューロン活動が変化することがわかり、さらにそれらの部位間で同期的に活動するニューロン集団、つまりマクロなセル・アセンブリの活動を検出することができた。
  158. 思春期および小児期・青年期における精神疾患の治療と予防に関わる脳神経倫理学 24118502 2012-04-01 – 2014-03-31 石原 孝二 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (30291991) 複合領域 研究開始時の概要:新学術領域研究(研究領域提案型) 研究概要: 研究成果の概要:本年度は昨年度に引き続き、自閉症に対するオキシトシンの治療適用に関する倫理的問題の検討を中心に研究を進めた。オキシトシンは向社会性を高める効果があるものとされ、自閉症への適用が期待されてきたが、近年オキシトシンの向社会性の効果に関する文脈依存性を示唆する結果や効果に関する矛盾する結果が報告されるようになっている。本研究では、オキシトシン効果の向社会性に関する文脈依存性が倫理的問題に対してもつ意義の明確化を試みるとともに、オキシトシンと自閉症の関係を扱った論文における「社会性の障害」の捉え方を検証し、倫理的問題を分析するための基盤について検討した。また、2013年に発表されたDSM-5における診断基準の変更が自閉症(自閉症スペクトラム)の診断や教育などに対して与える影響についても検討を行った。
    自閉症の治療に関する倫理的問題に関しては、ハイデルベルク大学において討論会(Extended Colloquium: New Ethical Issues on Autism)を開催し、ハイデルベルク大学の研究者などと自閉症の診断や治療に関わる倫理的問題に関する討論を行った。また、東京大学においてワークショップを開催し、オキシトシンに関する臨床試験を行っている研究者、当事者、東京都自閉症協会の関係者をスピーカーとして招き、オキシトシンの治療適用に伴う倫理的問題などについて討論を行った。
    自閉症の治療に関する問題以外では、薬物療法が精神病理学に与えた影響についての論文を執筆したほか、投薬に依らない精神病早期介入のアプローチとして注目されつつあるOpen Dialogueに関する調査などを行った。研究実績の概要:
  159. ハイパースキャン手法による協調的動作の解明:個人差と注意量の観点から 12F02747 2012 – 2014-03-31 研究開始時の概要:特別研究員奨励費 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  160. ニューロフィードバックを応用した新たなリハビリ手法の開発 23700500 2011 – 2012 三原 雅史 大阪大学, 大学院・医学系研究科, 特任助教 (80513150) 研究開始時の概要:若手研究(B) 研究概要: 研究成果の概要:本研究では、多チャンネル近赤外分光法(NIRS)を用いたリアルタイム解析システムを構築し、そのシステムを用いて脳卒中後片麻痺患者を対象に、リハビリテーションと組み合わせた際の NIRS を用いたニューロフィードバックの効果を検討する目的で、プラセボ群を用いたランダム化試験を行い、対象脳領域の賦活効果と、麻痺側手指機能回復促進効果を確認し、ニューロフィードバックが安全で侵襲性の低いリハビリテーション手法として有効であることを証明した。研究実績の概要:
  161. 神経経済学の手法を用いた「幸福度指標」の確立 23683005 2011-04-01 – 2015-03-31 田中 沙織 株式会社国際電気通信基礎技術研究所, 脳情報通信総合研究所, 主任研究員 (00505985) 研究開始時の概要:若手研究(A) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:満足度・幸福度が生物学的指標で記述できるかを検証した。経済的な満足度を測定する実験課題の作成および脳活動データ、経済学・社会・生物学的属性データを収集し、経済学・社会・生物学的属性と満足度に関連する脳活動との関係を明らかにした。頭頂皮質と線条体が主観的効用の表現にかかわり、また島皮質と背外側前頭前野が社会的効用にかかわりかつ性別という個人属性によってその活動が異なることを明らかにした。これらの幸福度に関わる脳部位の具体的な機能の検証を行うためにfMRIによるニューロフィードバック実験を検討し、主観的効用に関わる線条体の活動の変化とそれに伴う意思決定行動の変化を示唆する予備的な結果を得た。
  162. 二者同時計測によるインタラクティブなニューロフィードバックシステムの提案 23653196 2011 – 2012 大村 一史 山形大学, 地域教育文化学部, 准教授 (90431634) 研究開始時の概要:挑戦的萌芽研究 研究概要: 研究成果の概要:本研究では、セルフコントロールの効果的なトレーニングを促進するために、モバイル計測に適した携帯型脳波計を用いた二者同時計測によるニューロフィードバックシステムの提案を目的とした。従来の単独型とは異なる対戦型というインタラクティブなトレーニングスタイルを導入することによって、より短時間にトレーニング効果を引き出しうるニューロフィードバックシステムを構築し、そのシステムの信頼性・妥当性を検証した。研究実績の概要:
  163. ポータブルNIRS計測装置を用いた実利用型ブレイン・マシン・インタフェースの構築 23560286 2011 – 2013 伊藤 友孝 静岡大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00283341) 研究開始時の概要:基盤研究(C) 研究概要: 研究成果の概要:本研究は,脳機能計測装置を用いて人の脳活動を計測し,その情報を各種機器の操作やコミュニケーションに用いる「ブレイン・マシン・インタフェース(BMI)」の構築を目的とした.本研究では,ポータブルNIRS計測装置を用いて,脳血流変化から人の思考や感情を識別するための手法を考案し,有効性を確認した.また,日常生活で利用可能なBMIの構築を目指し,使用状況の変化に対応すべく識別精度を向上させるための方法を検討した.さらに,将来の双方向BMIの実現を目指して,外部刺激が脳血流に与える影響についても実験的に検討を行った.今回の研究によりBMIの応用可能性を高める上での重要な指針が得られた.研究実績の概要:
  164. 脳卒中片麻痺上肢に対するニューロフィードバック療法の開発とその効果検証 23500630 2011 – 2013 森岡 周 畿央大学, 健康科学部, 教授 (20388903) 研究開始時の概要:基盤研究(C) 研究概要: 研究成果の概要:本研究は、まず健常者の道具操作および観察・イメージ時の運動関連領域の脳活動をNIRS-EEGシステムを用いて検出し、それから得た脳活動を基に閾値を設定し、その閾値を超えると視覚フィードバックを与えるニューロフィードバック装置を開発した。なお全ての対象者において左運動前野の活動が明確であったため、その領域の活動に焦点を置いた。この装置を用いて、脳卒中後に上肢運動障害を呈した10名の患者に対して2週間の介入を行った。結果、道具操作観察・イメージ時に左運動前野の閾値を超える活動を認めた6名は、介入によって有意な機能改善を認めた。一方、閾値を超えなかった4名は介入によって著明な効果が見られなかった。研究実績の概要:
  165. 運動想起型BCIへのユーザ適応を促すニューロフィードバック手法の開発 23500483 2011 – 2013 加納 慎一郎 東北工業大学, 工学部, 准教授 (00282103) 研究開始時の概要:基盤研究(C) 研究概要: 研究成果の概要:ヒトの感覚運動野の脳活動から運動の想起の有無やその種類を検出するBCI(brain-computer interface)における適用性や検出成績を向上させるために,脳波やNIRS(近赤外分光法による脳血流計測)によって得られたヒトの運動想起に伴う脳活動信号から生成された情報をユーザにフィードバックするニューロフィードバック(NF)を用いるための方法論について検討を行った.本実験の結果,計測信号からの情報抽出法,NF実験の実施方法などの知見が得られた.研究実績の概要:
  166. アレキシサイミアにおける、自己意識・メタ認知に関する統合的脳機能画像研究 23390192 2011-04-01 – 2016-03-31 守口 善也 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所 精神生理研究部, 客員研究員 (40392477) 研究開始時の概要:基盤研究(B) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:アレキシサイミアとは自己情動の同定や表現困難を主徴とする心身症での重要な病態生理である。今回は,自己の身体―情動状態の変化とその認知の脳内基盤に関する知見を,fMRIを用いて得ることが目的である。’自伝的記憶に立脚した自己継続感’について日常の出来事を記録するwebシステムにより,ポジティブな記憶の方が保持され,海馬の活動の関与を明らかにした。情動刺激の際の脳活動と心拍変動との同時測定では,心拍変動の副交感成分と島皮質・腹側前帯状回の活動・機能的結合が関連していた。さらに、内受容感覚の認知の鋭敏さが不安を増大させ,内受容感覚への気づきに重要な島皮質の活動が,アレキシサイミア群で低下していた。
  167. 発達性「読み」障害に関する臨床的、計算論的、脳機能研究 23330201 2011-04-01 – 2016-03-31 宇野 彰 筑波大学, 人間系, 教授 (10270688) 研究開始時の概要:基盤研究(B) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:本研究の結果、ひらがなの習得には、過去に報告されていた音韻認識能力だけでなく、記号や意味から素早く音韻に変換する自動化能力が重要であることが分かった。そして、良好な認知能力を活用することにより、3条件を満たす場合には、かなをほぼ完璧に習得できる方法を開発できた。このような発達性読み書き障害のある方の多くが習得困難である漢字の脳内処理部位に関して、非言語的図形から漢字という言語的図形に変化するにつれて、処理する部位が連続的に移動することが分かった。そして、トライアングルモデルにて、子ども達の仮名の習得や、習得困難さが計算論的研究によりシミュレイションされた。
  168. 運動療法によるストレス緩和作用の神経基盤に関する生涯発達研究 23300247 2011-04-01 – 2014-03-31 酒谷 薫 日本大学, 工学部, 教授 (90244350) 研究開始時の概要:基盤研究(B) 研究概要: 研究成果の概要:現代社会に蔓延するストレスは、様々な疾患の主要原因の一つである。本研究では、近赤外分光法(NIRS)を用いて、前頭前野の神経活動を計測し、自律神経系・内分泌系機能及び心理状態とともに、ストレスを客観的に評価する方法を開発した。さらに本法を用いて、中高齢者における運動療法のストレス緩和効果について検討し、軽い運動でもストレス緩和効果があることを明らかにした。さらに高齢者に軽い運動を負荷することにより、前頭前野のワーキングメモリー課題に対する反応性が上昇し、パフォーマンスが向上することが示唆された。本ストレス評価法と運動療法を組み合わせることにより、ストレス性疾患を予防できる可能性がある。研究実績の概要:
  169. 知的エージェント介在型運動機能再建手法の開発 23300216 2011-04-01 – 2015-03-31 近藤 敏之 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60323820) 研究開始時の概要:基盤研究(B) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:本研究は運動関連領野の損傷による下肢運動麻痺患者に対するBCIリハビリシステムの開発を目的とした.本研究の成果は以下の3つである.第1に,運動想起型BCIの特徴量である事象関連脱同期/同期(ERD/ERS)の発現には,運動想像に加え,運動計画が重要であることを実験的に検証した.第2に,健常者の運動学習をモデルとして用いて,麻痺患者の運動機能再建過程における自発的な運動企図と運動機能向上の関係を調査した.第3に,上記BCI型リハビリシステムによって随意的な下肢筋活動に回復が見られた患者等に対し,自発的な筋活動を入力として実世界の自由な移動を実現する下肢筋活動駆動型電動車椅子システムを開発した.
  170. 自己と外界の関係を表現する脳内機構 23300151 2011-04-01 – 2015-03-31 神作 憲司 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所 脳機能系障害研究部, 室長 (60399318) 研究開始時の概要:基盤研究(B) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:本研究では、脳で自己と外界の関係がどのように表現されているかを解明するための研究を行った。まず、腕を交差した状態で左右の手を触覚刺激すると時間順序判断の逆転が生じる現象に着目して研究を進め、神経画像にて交差逆転現象に左後部頭頂皮質が関与していることを示し、さらに自閉症児では腕交差時に生じる時間順序判断の逆転が定型発達児に比べて少ないことを見出した。また、マウスが自己と外界の関係をどのように処理しているかについて評価するための新しい行動実験系を開発し、これによりマウスにも自己身体表象が存在する可能性を示唆する結果を得た。これらの研究を続けることでこうした脳内表現が明らかとなることが期待される。
  171. 熟慮的判断のための神経基盤の研究 23243077 2011-04-01 – 2014-03-31 坂上 雅道 玉川大学, 脳科学研究所, 教授 (10225782) 研究開始時の概要:基盤研究(A) 研究概要: 研究成果の概要:思考の基礎過程を調べるために、独自開発の推論課題(Pan et al., 2008)を使い、サルの脳の推論機能について調べた。その結果、①単一ニューロン活動記録から、前頭前野外側部のニューロンは推移的推論機能を反映した活動を見せたが、大脳基底核線条体にはそのような活動が見られなかった(Pan et al., 2014)。②前頭前野外側部の推移的推論機能は、カテゴリカルな処理と密接な関係があることが示された(Pan & Sakagami, 2012)。さらに③多電極同時記録による局所場電位解析から、前頭前野外側部から線条体への情報伝達が、正しい課題遂行に重要な役割を果たしていることが示唆された。研究実績の概要:
  172. 分子から社会までの統合的アプローチによる自己制御の形成・修復支援 23118004 2011-04-01 – 2016-03-31 笠井 清登 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (80322056) 複合領域 研究開始時の概要:新学術領域研究(研究領域提案型) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:人間の精神機能は、自分自身を知り(自己意識・自我・メタ認知[=自分自身の認知・行動を対象化し、自己像として認識すること])、社会環境適応的な自己制御性を持つという、他の動物にない特長を持つ。ヒトの自己制御をその神経基盤も含めて包括的に解明し、それにもとづいて自己制御の形成・修復の支援方法を開発することは、精神疾患が急増していることを鑑みれば喫緊の課題である。本領域では、5年間の研究を通して、自己制御の障害を呈する思春期精神病理における神経基盤を明らかにし、自己制御の支援方法を具体的に提案することに成功した。
  173. メタ認知と社会行動の発達にもとづく自己制御 23118003 2011-04-01 – 2016-03-31 藤井 直敬 国立研究開発法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, チームリーダー (20392095) 複合領域 研究開始時の概要:新学術領域研究(研究領域提案型) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:本課題では動物とヒトを対象とした比較認知科学的アプローチを用いて、内的・外的過程であるメタ認知・社会行動にもとづく自己制御とその思春期発達の神経基盤を明らかにすることを目的とした。その結果、社会性の行動基盤としての脳内ネットワークの解明、メタ認知の動物実験プラットフォームの構築、 言語的アプローチによる自己認知メカニズム、因果推論や対人コミュニケーションの神経メカニズム等を明らかにすることが出来た。
  174. 神経科学的アプローチによる倫理的行動モデルの研究 23011005 2011 – 2012 松田 哲也 玉川大学, 脳科学研究所, 准教授 (30384720) 人文・社会系 研究開始時の概要:特定領域研究 研究概要: 研究成果の概要:これまでの脳科学研究によって、社会規範を犯した人に対する制裁の欲求など道徳や倫理のメカニズムが脳内に存在することが示されてきた。その一方で、私たちは、そのような人の不遇な境遇や事情を知ることで、その人を哀れみ、同情することがある。その際に、同情と犯罪者への責任追及との関係性が問題となるが、脳内でどのようなメカニズムが働いているかについては未解明のままであった。そこで今回の研究では情状酌量に着目し、同情と量刑判断に関連する脳機能を探索した。被験者は、模擬裁判の裁判員として、被告人が犯罪行為に至った背景を基に量刑を決定するとともに、被告人に対してどの程度同情できるかを評定した。被告人が犯罪に至った背景に関する説明書を被験者に読んでもらい、そのときの被験者の脳活動をfMRIにより解析した。その結果、被告人への同情と量刑判断は、他者理解や道徳的葛藤に関わる内側前頭前皮質と襖前部という共通した脳領域の働きによるものであることが判明した。一方で、情状酌量傾向には個人差があり、その個人差は、主観的体験に関わる右島皮質の活動と関連しており、同情により刑を軽くしやすい人ほど島皮質の活動が高いことが明らかとなった。2009年に裁判員制度が我が国において導入され、法律に基づき人を裁くことは、とても身近な話となった。今回の研究の成果は、法律的判断の訓練を必ずしも十分には受けていない一般人の、裁判審理における情状酌量に関連する脳機能メカニズムを調べた世界で最初の研究成果である。研究実績の概要:
  175. 社会的評価ストレス下における運動パフォーマンスとその神経基盤 11J09607 2011 – 2013 研究開始時の概要:特別研究員奨励費 研究概要: 研究成果の概要:日常的に, 他者から評価される状況で行動する際, 他者の反応によって知覚や行動そのものに影響が生じることがある。本研究では, 社会的評価を受けている際の運動知覚や運動制御の特徴を明らかにし, 身体教育等の実践に役立てることを目指した。
    最終年度である本年度は, 「研究実施計画」に記載の通り, 主に昨年度までに得たデータの分析及び論文の執筆を行った。まず, 英国University College LondonのPatrick Haggard教授と共同で行った心理物理学実験のデータを分析した。本実験では, 自分の行為が外界に結果を生み出したという感覚である「行為主体感」を客観的に測定するため, 自発的な運動(ボタン押し)とその結果として生じる感覚(音)の主観的時間間隔が狭まるという時間知覚のイリュージョン(intentional binding)を用いた。すると, ボタン押しの際に, 他者が快反応を示した条件に比べて, 不快反応を示した条件では, intentional bindingが小さくなり, 行為主体感が弱まったことが示された。すなわち, 他者から不快反応が生じると, 「自分のせいではない」と感じる知覚的バイアスが存在することが示唆された。本研究成果は, Current Biology誌より出版され, 海外のメディアにも報道された。また, データの分析と並行して, イタリア・ミラノのサンパウロ病院と共同で, 気分障害の患者様を対象に実験を行った。本実験により, 行為者の気分によって, 他者からの感情的反応が行為主体感に与える影響が変化するかが明らかになると見込まれる。年度中, 2編の原著論文が出版された他, 2013年度包括脳ネットワーク夏のワークショップや第7回Motor Control研究会など, 6件の研究発表を行い, 包括脳ネットワークより若手優秀発表賞を受賞することができた。研究実績の概要:
  176. ニューロフィードバックによる行動制御の発達支援に関する実証的研究 22530765 2010 – 2012 篠田 晴男 立正大学, 心理学部, 教授 (90235549) 研究開始時の概要:基盤研究(C) 研究概要: 研究成果の概要:近年、ニューロフィードバックは、発達障害に適応され、非薬物療法として、自己制御能力を高め、問題を軽減することが報告されている。本研究では、健常者および発達障害事例を対象に、その効果を多面的に検討し、臨床適用上の手がかりを探索した。トレーニングにより、主観的自己制御感が変容するとともに、前頭部におけるN2事象関連脳電位、右前頭前野における脳血流の亢進が生じることを見出し、制御的注意の活性化が示唆された。研究実績の概要:
  177. 社会性の個人差を決める脳メカニズムの解明とその利用 22300139 2010-04-01 – 2014-03-31 春野 雅彦 独立行政法人情報通信研究機構, 脳情報通信融合研究センター 脳情報通信融合研究室, 主任研究員 (40395124) 研究開始時の概要:基盤研究(B) 研究概要: 研究成果の概要:本研究では社会性の個人差における前頭葉皮質と皮質下の領域の役割を調べることが目的であった。 向社会的な被験者と個人的な被験者に公平性に基づき意思決定を行うゲームをfMRI計測時に行ってもらった。この課題には、ゲームと同時に乱数を記憶させ背外側前頭前野を使用、そのような要求がない2条件がある。背外側前頭前野を乱数記憶に使用すると、向社会的な人はより向社会的、個人的な人はより個人的な行動を示した。この時のfMRIデータを解析した結果、両者の差は扁桃体と側坐核の活動に現れることが明らかとなった。 さらにこの扁桃体と側坐核の脳活動に機械学習技術を適用することで被験者の行動を予測できる可能性を示した。研究実績の概要:
  178. 機能的近赤外分光装置を用いた高次脳機能の計測とその評価に関する研究 10J01118 2010 – 2012 研究開始時の概要:特別研究員奨励費 研究概要: 研究成果の概要:近年,非侵襲式の脳活動計測方法の発展に伴い,ブレイン・コンピューター・インターフェース(BCI)が注目されている.BCIとは,脳活動から使用者の意図を検出し,様々な機器を操作する技術であり,医療・福祉・エンターテインメントなど幅広い分野への応用が期待されている.BCIにおげる非侵襲式の脳活動計測方法としては,脳波(EEG),近赤外分光法(NIRS)が挙げられる.特に,NIRSは空間分解能が高く,環境ノイズに強いという特徴を持つことから,新しいBCIの脳活動計測方法として注目されているしかし,NIRSを用いたBCI(NIRS-BCI)においては,BCIを目的とした信号処理方法が確立されていないため,BCIを開発する上での大きな障害となっていた.
    本研究では,小型で汎用性が高いBCIシステムの開発のために,まずNIRS-BCIのための信号処理方法の検討を行い,次に検討した信号処理方法をもとに運動野を対象としたBCIと前頭連合野を対象としたBCIシステムの開発を行った.その結果,運動野を対象としたBCIの開発では,NIRSを用いて運動意図を識別し,筋刺激装置やロボットアームを操作できることを確認した.これにより,片マヒ患者などのリハビリテーションにBCIを応用できる可能性を示した.
    前頭連合野を対象としたBCIでは,BCI使用者の訓練とニューラルネットワークによる識別を組み合わせることで,計測できる情報が少ない小型BCIでも,約80%の正答率を実現できることを確認した.この結果から,NIRSを用いた小型で汎用性が高いBCIシステムを実現した.また,前頭連合野を対象とすることで,NIRS-BCIの新しい応用としてメンタルヘルスケアへの応用の可能性を確認した.研究実績の概要:
  179. ブレイン・コンタクトによる予測協調制御に向けた適応型BMIの展開 21240013 2009 – 2011 和田 安弘 長岡技術科学大学, 工学部, 教授 (70293248) 研究開始時の概要:基盤研究(A) 研究概要: 研究成果の概要:非侵襲の脳活動計測(近赤外分光法: fNIRS)によって,ヒトが外部装置を思い浮かべるだけで制御できるようにするための基礎研究を実施した。ヒトが前後左右4方向への等尺性収縮運動を行った際のfNIRS信号を測定し、得られた信号から腕の力方向の時間的・空間的な特徴量選択を行い,方向推定を行い, 80-90%程度の推定精度が得られた。結果,運動情報の空間的、時間的局在が示された。研究実績の概要:
  180. 「身体で覚える」ニューロフィードバックを用いた自己コントロールプログラムの開発 20653047 2008 – 2009 大村 一史 山形大学, 地域教育文化学部, 准教授 (90431634) 研究開始時の概要:挑戦的萌芽研究 研究概要: 研究成果の概要:昨年度に引き続き、前半は据置型の脳波計を利用した脳波・皮膚電位・脈波を用いたニューロフィードバックシステムの構築をメインに行っていたが、より簡便で広範囲かつ効率的な利用を目指すために、後半からはモバイル型の生体アンプを利用したシステムへと移行した。移行に際し、自律神経系の指標としては脈波から導出される心拍および心拍変動を、中枢神経系の指標としてはθ/βパワーを選出し、ターゲットとする指標を絞り込んだシステムを確立するようにした。大学生3名を対象とした予備実験を継続的に実施し、試行錯誤を繰り返しながら、システムの基本形を完成させた。このシステムの妥当性を検討するために、数名の参加者を対象に、1セッション(10分×3セット)からなるトレーニングを長期間縦断的に試用し、トレーニングを通じての認知・情動的変化の観察を継続中である。
    さらに、このフィードバックを用いたセルフコントロールプログラムを適用した場合に、どのようにセルフコントロールが改善されたのかを評価検討するために、プログラム適用前と適用後に実施する心理生理実験の検討を行った。前年度の行動実験に加え、今年度は多チャンネル脳波計を利用した事象関連電位(P300)を指標として導入し、連続遂行課題(Continuous Performance Task : CPT)と時間評価課題を中心に、心理・生理の両面からトレーニング効果を評価できる方法を検討した。
    前年度同様に、研究分担者を中心にプログラム適用前の衝動性傾向を広く検討するための質問紙調査を行った。大学生の基本的生活習慣がセルフコントロールに及ぼす影響を検討し、規則正しいリズムがより高いセルフコントロールにつながることが示され、その成果は学会で発表された。今後はこの知見をニューロフィードバックプログラムの総合的な事前事後指導に導入する。研究実績の概要:
  181. 神経行動科学的アプローチによる芸術的パフォーマンスの向上を目指して 08J11133 2008 – 2010 研究開始時の概要:特別研究員奨励費 研究概要: 研究成果の概要:公での音楽演奏場面で演奏者に引き起こされる演奏不安は,多くの演奏家を悩ませる深刻な問題であり,その適切な対処法を探ることは急務である。本研究では,運動生理学・心理学・神経科学を組み合わせた学際的アプローチを用い,不安喚起がピアノ演奏のパフォーマンスに及ぼす影響について包括的に検討し,教育場面で役立つ実践的知見を得るとともに,情動が身体運動に影響を及ぼす機構の解明に寄与することを目指した。本年度は,「研究実施計画」に記載の通り,社会的評価ストレスがピアノ奏者の脳波に及ぼす影響に関する実験を東京大学駒場キャンパスにて実施した。昨年度実施した質問紙調査に基づき,低不安群8名,高不安群9名の計17名の熟練ピアノ奏者に参加してもらった。分析の結果,ストレス下での自律神経系反応(心拍数の増加)には群間で差がなかったが,高不安群においてのみ,唾液中ストレスホルモン(コルチゾール)濃度や筋活動強度が上昇するとともに,前腕の屈筋・伸筋が同時に収縮する傾向が強まったことが明らかとなった。さらに,こうした反応の違いの背景には,脳の感覚運動関連領域由来の律動波であるμ波の変化があることが示された。本研究成果より,演奏不安の悪影響を緩和するために,脳波ニューロフィードバックを利用できる可能性が示唆された。また,脳波の実験の分析と並行して,英国サセックス大学のHugo D.Critchley教授の研究室にて,健常被験者を対象として,機能的磁気共鳴画像法(fMRI)と脳波,心電図,筋電図を同時計測する実験を行った。空間解像度の優れた本実験データの詳細な分析により,不安による運動パフォーマンス低下を媒介する脳部位を特定することができると考えられる。研究実績の概要:
  182. 脳波を用いたユーザ適応型ヒューマンインターフェース(BCI)のシステム化 19560414 2007 – 2009 加納 慎一郎 東北大学, 大学院・工学研究科, 助教 (00282103) 研究開始時の概要:基盤研究(C) 研究概要: 研究成果の概要:従来の非侵襲計測によるBCI(brain-computer interface)で問題になっていたユーザへの適応性を改善する方法論を提案し,ユーザ適応性の高いBCI を実現するための手法を検討した.運動のイメージによって生じる脳活動を検出するBCI のための特徴抽出,パターン分類,ユーザ訓練の手法を脳波,近赤外分光法(NIRS),機能的磁気共鳴画像法(fMRI)により検討した,また,事象関連電位を用いたBCI を開発し,そのユーザへの適用性の向上のための検討を行った.研究実績の概要:
  183. プライミング効果に対応したMEG応答を用いた多義的仮現運動における知覚交代の予測 07J03670 2007 – 2008 研究開始時の概要:特別研究員奨励費 研究概要: 研究成果の概要:我々は,先年度,武田研究室が有する440ch全頭型MEGを用いて,(1)多義図形の一種での知覚交替を予測する事,(2)その知覚が意図によりコントロール可能な事などを明らかとしてきました.成果(1)は本年度,生体磁気学会にて若手奨励賞を受賞しました.さらに,同学会の査読付き学会誌にて出版されました.さらに,日本機械学会から招待論文のご依頼を頂き,出版される事となりました.成果(2)は,英文雑誌への出版を直前に迎えている段階にあります.
    また,その解析技術を土台として,ATR(国際電気通信基礎技術研究所)との共同研究を行いました.ここでは,画像情報をオブジェクトカテゴリー情報に変更した上で,オフラインで高精度のクラシフィケーションに成功いたしました.この成果は,国際学会(Biomag2008)において,Young Investigator Award(U35)を受賞いたしました.
    さらに,先年度から開発を進めておりました脳信号をリアルタイムで画像もしくは音声刺激に反映させるニューロフィードバックシステムの改良(高速化など)を進めました.ニューロフィードバックの効果を調査する中で本年度の終了を迎える事となりましたが,近い将来にそのシステムを用いた波及的な成果が得られる事が期待されます.研究実績の概要:

rTMS療法を用いたうつ病治療に関する科研費研究

  1. 培養神経細胞を用いた反復経頭蓋磁気刺激法の効果機序の解析 2021-04-01 – 2024-03-31 池田 哲朗 青森大学, 薬学部, 准教授 (10360489) 小区分59010:リハビリテーション科学関連 基盤研究(C) 研究開始時の概要:反復経頭蓋磁気刺激法(rTMS)は非侵襲的に脳内に電流を発生させ、うつ病、統合失調症、神経変性疾患や脳血管障害等による高次脳機能障害に効果があると考えられている。しかし、rTMSの作用機序は不明な点が多く、その解明は急務である。申請者は、rTMSがマウス脳内で抗うつ薬の作用するノルエピネフリントランスポーター(NET)を変動することを報告した。より詳細に神経様細胞PC12でrTMSの効果を調べたところ、NETとそのドミナントネガティブ型NETbを変動していた。そこで、NETとNETb遺伝子を神経細胞に共発現し、未知のシグナルカスケードが変動するのかどうかを調べる。 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  2. うつ病へのrTMS治療の機序を解明し効果予測指標を確立する包括的神経生理学的研究 2021-04-01 – 2024-03-31 高橋 隼 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (10508021) 小区分52030:精神神経科学関連 基盤研究(C) 研究開始時の概要:治療抵抗性うつ病に対するrTMS治療が2019年6月に保険収載されたことは精神科臨床において画期的なことであるが、臨床効果の個人差および邦人での治療エビデンスの不足という問題が指摘されている。本研究では、多施設で臨床データを共有して豊富な症例数のもとrTMSの治療効果を予測する臨床指標を探索し、さらに生物学的指標として神経炎症マーカ―、脳画像(構造・機能)、脳波を測定し、物質レベルの異常と脳構造的・機能的結合障害を評価してrTMS治療の生物学的基盤を明らかにし、治療反応の予測指標を確立する。 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  3. 反復経頭蓋磁気刺激による脳の長期的な可塑性誘導を支える神経生理学的基盤の解明 2021-04-01 – 2024-03-31 中村 晋也 東北大学, 生命科学研究科, 助教 (20570055) 小区分51010:基盤脳科学関連 基盤研究(C) 研究開始時の概要:反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)は、近年本邦においてもうつ病治療の保険適用になるなど、精神・神経疾患に対する有用な治療法として注目されている。rTMS治療においては通常数週間に及ぶ施術によりその治療効果が現れることが多く、これは長期にわたる脳の可塑的変化によるものと推定されているが、その作用機序については不明な点が多い。そこで本研究では、サルをモデル動物とした基礎実験により、rTMSが脳の長期的な可塑的変化をもたらす神経生理学的基盤について直接的な科学的根拠を提供することを目指す。 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  4. アセチルコリン/GABA機能に着目した老年期うつ病へのrTMS治療の有効性の検討 2020-04-01 – 2023-03-31 喜多 彬 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (20735914) 小区分52030:精神神経科学関連 若手研究 研究開始時の概要:本研究は2019年6月に保険収載された治療抵抗性うつ病に対する反復性経頭蓋磁気刺激(rTMS)治療の有効性について、臨床的検討が不足している老年期うつ病への有効性を明らかにすることを目標としている。なかでも老年期うつ病に併存しやすい認知機能障害の病態を神経生理学的に客観的に評価することを目標にppTMSとSAIを用いてGABA機能、アセチルコリン機能を測定する点で独自性が高い研究であり、rTMS治療の生物学的基盤の解明につながる可能性がある。 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  5. 反復性経頭蓋磁気刺激による治療抵抗性うつ病の治療メカニズムの探索 2020-04-01 – 2023-03-31 立石 洋 佐賀大学, 医学部, 助教 (50457470) 小区分52030:精神神経科学関連 基盤研究(C) 研究開始時の概要:薬剤治療抵抗性うつ病患者に対する反復性経頭蓋磁気刺激(repetitive transcranial magnetic stimulation: rTMS)による治療の前後に、脳脊髄液・血液・唾液中のバイオマーカー、頭部MRI検査及び前頭葉機能検査を行い、それらの結果から認知機能障害を含むrTMSの治療効果のメカニズムを探索することを目的とした研究である。さらに、うつ病における神経炎症、特にミクログリアのうつ病における関与に着目し、得られた血液サンプルから作成できるミクログリア様細胞(induced microglia-like cells; iMG)のうつ病への関与について探索する。 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  6. 神経炎症・酸化ストレスに着目したうつ病へのrTMSの治療機作と反応予測指標の探索 2020-04-01 – 2023-03-31 鵜飼 聡 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (80324763) 小区分52030:精神神経科学関連 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  7. rTMSの脳卒中後うつ改善効果と神経可塑性関連物質との関係性の調査 2021-03-01 – 2023-03-31 新見 昌央 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (30760970) 若手研究(B) 研究開始時の概要:反経頭蓋磁気刺激治療(rTMS)はうつ病に有効であることがわかっており、薬物治療とは異なる治療方法として、うつ病だけではなく、さまざまな神経疾患の新しい治療法として期待されている。しかしながら、rTMSによる治療効果がどのようなメカニズムによって生じているのかは不明な点が多い。そこで本研究では脳卒中後うつ患者においてrTMSの治療前後で生体内のバイオマーカーを測定することでrTMSが生体にもたらす影響を調査する。 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:運動療法によるリハビリテーション施行のために我々の施設に入院した30歳から90歳の慢性期脳卒中患者を対象とした。対象患者のうち、62名に対しては14日間のリハビリテーション治療と反復経頭蓋磁気刺激治療(rTMS)の併用療法を行った。対象患者のうち、33名に対しては14日間のリハビリテーション治療のみ行った。治療前後のうつ状態の評価をBeck depression inventoryにて行い、治療前後の血液検体を採取した。採取した血液検体を用いて、NMDA受容体関連物質である、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、L-セリン、D-セリンの血中濃度測定を行った。その結果、Beck depression inventoryによるうつ状態の評価において、いずれの治療群でも治療前後で有意にうつ状態は改善していた。NMDA受容体関連物質の治療前後の血中濃度変化については、リハビリテーション治療とrTMSの併用治療を行った群では、リハビリテーション治療のみを行った群に比して、血中のD-セリンが有意に減少していた。リハビリテーション治療とrTMSの併用治療を行った群ではグルタミン、グルタミン酸、グリシンが減少傾向にあり、リハビリテーション治療のみを行った群では増加していた。リハビリテーション治療とrTMSの併用治療を行った群では血中のL-セリンは増加し、リハビリテーション治療のみを行った群では減少していた。
  8. マインドフルネスへの経頭蓋直流刺激tDCSによるオーギュメンテーション法の確立 2018-04-01 – 2020-03-31 西田 圭一郎 関西医科大学, 医学部, 講師 (40567567) 小区分52030:精神神経科学関連 若手研究 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:「不安」や「恐怖」は危険な時に起こる感情で、状況を解決するために動き出す動機になるなど、生きていく上で必要かつ重要である。しかし、最近は社会の変化に伴い、人前で話す、といった今までと種類の異なる「不安」を感じる状況が増加している。
    過度の「不安」は健康的で充実した毎日を送る、という人として基本的な生活を送ることが難しくなることがある。また、苦手な状況を避け続けることで社会生活に問題を抱えると、不安障害やうつ病といった、色々な精神の病気を引き起こすことがある。つまり、健康な状態でも「不安」の調節はメンタルヘルス上重要となる。このような背景のなか、「マインドフルネス」というリラックス法が近年注目されており、専門書のみではなく、一般書でも取り上げられている。
    一方脳刺激法は臨床での応用を目指して様々な試みが行われており、経頭蓋直流電気刺激法(transcranial direct current stimulation: 以下tDCS)といった手法が注目されている。tDCSは装置自体がシンプルであり、比較的小さく、安い、といった大きな利点がある。2000年代になりtDCSによって脳の神経細胞の興奮を抑えたり、上げたりできることが明らかになって以降、世界的に論文数が増えており、様々な効果報告が増えてきている。
    この研究の最終的な目的は「マインドフルネス」に「tDCS」を組み合わせ、相乗効果を生み出す手法の開発である。そのため、脳の神経ネットワークの変化に注目し、マインドフルネスと同時にtDCSを施行した時の神経活動や気分・感情の変化などを調べることを目的とする。
  9. T1w/T2w比画像と領域間時間ずれを考慮したネットワーク解析によるうつ病の研究 2018-04-01 – 2021-03-31 石田 卓也 和歌山県立医科大学, 医学部, 博士研究員 (10549728) 小区分52030:精神神経科学関連 若手研究 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:今年度は、昨年T1w/T2w比画像を作成するために確立したMRI撮像プロトコルに基づいて、うつ病患者を含めたMRIの被験者の撮像を行なっている。また、T1w/T2w比画像を用いたうつ病の皮質ミエリン異常を示す脳領域間の因果関係を考慮に入れた機能的結合の評価法(Dynamic Causal Modelling)はこれまではstochastic modelという手法が用いられていたが、近年はより計算的に効率的でかつ正確なspectral modelの手法が開発されてきた。そこで、昨年度施行したHuman Connectome Project (HCP)から健常者100人の安静時機能的MRI画像を用いて3つのうつ病関連ネットワークである側坐核ネットワーク、扁桃体ネットワーク、腹内側前頭前野ネットワークとうつ病への治療として使用される反復経頭蓋磁気刺激法(rTMS)の刺激箇所である左右背外側前頭前野(DLPFC)におけるDCM解析に新たにspectral DCMを行い、stochastic modelよりも安定した結果を得た。そこでは、うつ病関連ネットワークとDLPFCとの機能的結合は主にうつ病関連ネットワークからDLPFCへの方向性を持った情報の流れから説明されることがわかった。さらに、もう一つの因果関係を考慮に入れた機能的結合の評価法であるGranger causal modellingの解析法を組み合わせることで、これまでの相関をとるだけの機能的結合だけではわからなかった、うつ病関連ネットワークとDLPFCとの結びつきの左右差や、DLPFCがどのうつ病関連ネットワークにより結合しているかなどを見ることができることを示した。これは、うつ病患者のrTMS治療においてどの刺激箇所が最も効果が高いかを個人のうつ病患者ごとに予測できる可能性を示している。
  10. 経頭蓋磁気刺激誘発脳波を応用した薬物治療抵抗性うつ病の神経生理学的病態の解明 2018-04-01 – 2022-03-31 野田 賀大 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 特任講師 (20807226) 小区分51030:病態神経科学関連 若手研究 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:2019年度は前年度以上にTMS-EEG実験の遂行が円滑となり、リクルートも順調に進んだ。2019年3月時点で、治療抵抗性うつ病患者の組み入れは、既に目標人数の30名に到達し、対照健常被験者は16名まで組み入れと実験を終えている。本研究では、TMS-EEG実験と同時期にマルチモーダルMRI撮像、研究採血、包括的臨床評価・認知機能検査も実施している。TMS-EEG実験では、左背外側前頭前野におけるコリン作動性神経生理機能(SAI)・GABAA作動性神経生理機能(SICI)・グルタミン酸作動性神経生理機能(ICF)・神経可塑性神経生理機能(PAS)パラダイムを実施しているが、これらの生物指標・臨床認知尺度も網羅的・包括的に測定している。現時点でのプレリミナリー解析結果では、治療抵抗性うつ病患者では、健常群と比べ、ICF指標におけるグルタミン酸作動性興奮機能が相対的に上昇している可能性が示唆された。また、PAS指標による神経可塑性機能に関しては、治療抵抗性うつ病患者では、健常群と比べ、神経可塑性の誘導発現が低下している可能性が示唆された。この結果は、我々の先行研究結果(Noda et al., Depress Anxiety. 2018)を再現するものとなった。
  11. 多発性硬化症の認知機能障害に対する、経頭蓋磁気刺激療法(rTMS)の開発 2018-04-01 – 2021-03-31 中辻 裕司 富山大学, 学術研究部医学系, 教授 (20332744) 小区分59010:リハビリテーション科学関連 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:多発性硬化症(MS)患者に対して疾患修飾薬(DMD)の早期使用により、ある程度の脳萎縮進行予防効果が期待されるが、高次脳機能障害を改善できるエビデンスレベルの高い報告は無い。また視神経脊髄炎(NMOSD)も病初期から認知機能障害を呈し、有効な治療法が無い。経頭蓋磁気刺激療法(rTMS)や、経頭蓋直流電気刺激療法(tDCS)はワーキングメモリー機能、脳活性化、脳の機能的接続性を高めるという報告があり、本研究ではMS、NMOSDの高次脳機能障害に対してrTMSを用いる予定であった。しかし、より非侵襲的かつ簡便であり、将来の汎用性が高いと考えられ、さらに当院での使用経験が豊富なtDCSを用いてその有効性を検証することを目的とし、以下の方法で本研究を遂行するものである。
    富山大学附属病院脳神経内科外来に通院あるいは入院されているMSおよびNMOSDの患者で本臨床研究への参加に書面で同意をいただいた患者を対象とし、2週間の経頭蓋直流電気刺激(tDCS)を施行し、療法の前後で高次脳機能を評価し、その効果を検証する。ベースラインの評価としてtDCS療法前に認知機能評価をRao’s Brief Repeatable Battery of Neuropsychological Tests (BRBN)、疲労度を簡易倦怠感調査票 (BFI)、うつをベックうつ病調査表 (BDI)、重症度を重症度分類総合障害度(EDSS)で評価する。また認知機能に関連した異なる脳領域の機能的接続性の評価はresting stateでfunctional MRI (fMRI) を用いて行う。BRBN、BDI、BFI、EDSSはtDCS療法終了直後(2週)、4週、および12週に再評価し、MRI/fMRIは4週に再検する。
  12. ナビゲーションシステムを用いた小児期発症てんかんに対する反復経頭蓋磁気刺激療法 2018-04-01 – 2021-03-31 下野 九理子 大阪大学, 連合小児発達学研究科, 准教授 (60403185) 小区分52050:胎児医学および小児成育学関連 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:小児期発症の難治てんかんの治療としての反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)の可能性について検討する研究である。 rTMSは刺激頻度を低頻度刺激にすることにより神経活動を抑制的導き、一方高頻度刺激をすることにより神経活動を興奮性にも誘導することができる。成人領域においてはうつの治療として保険適応があり、重篤な副作用もなく安全性も検証されている。また脳卒中後のリハビリテーションにおいて神経疎通性の向上のためにリハビリと組み合わせてTMSを行うなど様々な疾患に対象を広げている。一方、小児におけるTMS治療の経験は我が国ではほとんどなく、またてんかんの治療として使う場合にはてんかん原性領域あるいはてんかん活動の広がりを見据えた領域を対象として刺激を行う必要があるため、ナビゲーションシステムを用いてターゲットを絞って刺激することが望ましい。従って、小児期発症のてんかん治療に用いる場合にはこれらの技術的な点において課題は多い。当院ではrTMSシステムを導入し、成人においてrTMSをナビゲーション下で行うことはできるようになった。思春期以上の小児においても有害事象なく行えることを確認した。ただし刺激閾値を設定するためのMEPにはばらつきが大きく安定しないことがわかった。患者の状態および施術者の技術的な要因が考えられる。治療前後には脳波の比較により治療効果を判定する必要があることからてんかん患者の他の様々な治療の前後における脳波の解析を行い、spike rate、周波数解析を含めた指標の変化について検討を行っている。
  13. rTMSによる顕著性回路を介したアンヘドニアの治療メカニズムの解明 2018-04-01 – 2021-03-31 小高 文聰 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (10349582) 小区分52030:精神神経科学関連 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:本研究計画は反復経頭蓋磁気刺激療法による「アンヘドニア」の治療メカニズムを探索することを目的としている。その評価に安静時機能的MRIを用いたlarage scale networkの評価と、行動指標として「アンヘドニア」にかかわる精神症状の評価と「handgrip force task」と名付けた持続握力計を用いた行動モデリングを行う予定であった。
    2019年度は治療抵抗性うつ病に対して、反復経頭蓋磁気刺激療法の治療前後の安静時機能的MRIの測定を開始した。
    神経画像の撮像に関しては、事前に撮像データのノイズ低減のための撮像パラメータ調整を行った。その結果、撮像時間を短縮しつつ位相によるノイズを大幅に減することが可能となった。被験者のエントリーは堅調に推移しており、2020年度に20例前後のデータセットが集まり次第、予備解析を行いsalience network内の脳領域の機能的結合解析を行う予定である。ドパミンあるいはノルアドレナリン神経系の機能的結合抽出のために、神経メラニンの撮像も行っている。
    行動指標に関しては、気分障害を対象として抑うつ症候とドパミン神経系にかかわる行動、特にアンヘドニアを反映する精神尺度である「SHAPS」との関係を調べるための予備評価を行った。結果は現在解析中である。「SHAPS」を用いた症状尺度に加え、アンヘドニアを測定するためのhandgrip force task(HFT)を用いる予定であった。HFTは健常者への予備実験の段階で、握力計の把持について患者負担が大きいことが予測されたため、被験者への導入は一時見送る形とし、質問紙によるeffort discounting課題に切り替えを行う予定である。
  14. うつ病重症度や自殺願望を予測する新たな臨床検査法の確立 2018-04-01 – 2021-03-31 瀬戸山 大樹 九州大学, 大学病院, 助教 (30550850) 小区分52010:内科学一般関連 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:メンタルヘルス分野に対する客観的な臨床検査法の開発が世界規模で望まれている。我々は、質量分析装置を駆使し、臨床検体を用いた新たな検査技術の開発およびそれに基づくバイオマーカーの探索に取り組み、これまでに、未服薬のうつ病患者の検体から重症度に関連する代謝物バイオマーカーを発見するとともに、血しょうの「遊離型代謝物」に着目した新たなバイオマーカーの実証研究を進めている。検体は引き続き九州大学病院精神科との共同研究によって収集された未服薬の大うつ病患者および健常者からの血しょうを用いている。今年度は、遊離型代謝物の結合タンパク質探索を進める一方で、個々人の性格(パーソナリティ)情報を用いた層別化がうつ病の血液バイオマーカーの性能を高めるという新たな発見に遭遇し、当初想定していた以上の研究成果を得ることができた。
  15. 治療抵抗性統合失調症における興奮抑制バランスの破綻:TMS-EEG/MRS研究 2018-04-01 – 2022-03-31 中島 振一郎 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (60383866) 小区分52030:精神神経科学関連 基盤研究(B) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:慶應義塾大学病院だけでなく関連病院の協力を得て、順調に被験者のリクルートを進めている。現時点で本研究に関する有害事象、実施計画書からの逸脱は認められていない。また脱落例も認められていなく、本研究における研究全体の基本的な手順は遵守されていると判断する。TMS誘発脳波研究の実験系を確立し、その後、TMS誘発脳波の解析パイプラインを確立し、GABA(A)受容体介在性神経生理機能(short-interval intracortical inhibition: SICI)検査およびグルタミン酸NMDA受容体介在性神経生理機能(intracortical facilitation: ICF)検査の指標を定量化することが可能となった。
  16. うつ病に対する反復経頭蓋磁気刺激の有効性と効果予測に関する研究 2017-04-01 – 2021-03-31 大久保 裕章 金沢医科大学, 医学部, 助教 (50792115) 若手研究(B) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:本研究は、反復経頭蓋磁気刺激(repetitive Transcranial Magnetic Stimulation; rTMS)のうつ病への治療効果を包括的に検証することを目的とする。近赤外線スペクトロスコピー(near-infrared spectroscopy; NIRS)VBM(Voxel Based Morphometry)を用いて、rTMSの有効性判定におけるNIRSの有用性および脳形態との関連を明らかにするものである。本研究により、うつ病に対するrTMSの有効性を予測することが可能となれば、rTMSを新たな治療の選択肢として患者に提供できるようになることが期待できる。
    これまでに得られた結果の一部について検討し、平成29年6月に開催された第113回日本精神神経学会学術総会にて「うつ病に対する反復経頭蓋磁気刺激法の効果の検討」を発表し、優秀演題賞を受賞したことについては前年度の同報告で述べた通りである。現在、うつ病症例をさらに多数収集し、結果を論文化することを目標としている。
  17. 経頭蓋磁気刺激の精緻化と個別化によるうつ病に対する有効性向上に向けた探索的研究 2017-04-01 – 2019-03-31 柴崎 千代 広島大学, 医歯薬保健学研究科(医), 助教 (10790561) 若手研究(B) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:近年、脳活動をより選択的に操作する方法として経頭蓋磁気刺激法(Transcranial Magnetic Stimulation:TMS)に大きな注目が集まっているが、反復TMS(rTMS)治療による反応率は30%程度に留まる。本研究は、薬物治療抵抗性のうつ病患者に対して事前の脳活動の評価と単発TMS刺激(sTMS)による脳活動予測マップで想定される変化に基づき(個別化)、脳MRI画像検査とナビゲーションシステムを用いてrTMSを適切な刺激部位と刺激方向にかけるをすることで(精緻化)、予想された脳活動上の変化およびうつ症状の改善がえられるかを探索的に検証する。うつ病患者に対してrTMSの精緻化と個別化により、脳活動上予想された変化が確認でき、うつ症状の改善率の向上が図れれば、rTMSの治療効果の改善だけでなく、うつ病の神経生理学的な理解につながる基礎的知見を得ることができ、学際的な貢献も極めて高い。
    平成29年度は健常者に対して、研究用3T MRI(SIEMENS社)を用いて刺激部位の特定用の脳構造画像(sMRI)、TMS前の脳活動評価として全脳の安静時機能画像(rs-fMRI)および白質の繊維走行を評価するために拡張テンソル画像の撮像を行い、個人のrs-fMRIの結果に基づき刺激部位を設定した。MRI室内で使用可能なコイルを使用しMRI室内でsTMSを施行し、sTMS刺激中の刺激部位(左前頭前野)と脳深部(線条体)との脳活動の同期性を確認した。
    平成30年度は、前年度の結果を応用し、うつ病患者に対して、個人のrs-fMRIの結果に基づき刺激部位を設定した。ナビゲーションシステムを用いて設定した部位を正確に特定し、rTMSを計20回行い、症状評価とrTMS前後での脳活動の変化を確認した。また、有害事象評価表を用いて有害事象の発生状況を確認し、有害事象の発生は認めなかった。
  18. ヒト前頭前野の可塑的変化に基づく脳刺激の最適化と個別化 2017-04-01 – 2021-03-31 中村 元昭 昭和大学, 大学共同利用機関等の部局等, 准教授 (50464532) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:令和元年度は、RCTの解析を実施して、研究計画を一部変更して発達障害者を対象としたデータも取得した。うつ病患者計25名が反復性経頭蓋磁気刺激法(rTMS)のRCTにエントリーして、7名はエントリー基準に合致せず、18名が3群にランダマイズされた。rTMS介入の前後において、頭部MRI、DTI、脳波のデータを縦断的に取得した。rTMSの総セッション数は、347セッションで、安全性に関しては一過性の頭皮痛(刺激痛)が24.2%認められ、脱落者は1名であった。安全性情報に関しては、脳プロ・DecNef安全性検討委員会に定期報告を行い、外部委員の判断も含めて、安全性に問題のないことを確認することができた。刺激プロトコールとしては、iTBS(間歇性シータバースト刺激)やQPS(反復単相性4連発磁気刺激法)といった新規性の高い刺激プロトコールを安全に実施することができた。有効性に関しては、3群共に有効性が示されたが、QPSによる有効性が最も優れていた。認知機能については、ウィスコンシンカードソーティングテスト(WCST)、言語流暢性課題、対連合記憶課題、作動記憶において有意な改善が認められ前頭葉機能との関連性が示唆されたが、刺激プロトコールによる違いは認められなかった。また、発達障害当事者13名と定型発達者16名に対し、iTBS・cTBS・シャム刺激のrTMSを行い、その前後で実行機能、注意機能を評価した。rTMSの総セッション数は、87セッションで、安全性に関しては一過性の頭皮痛(刺激痛)が19.2%認められ、脱落者は0名であった。
  19. 反復性経頭蓋磁気刺激による大うつ病の治療メカニズム及び治療反応性予測因子の探索 2017-04-01 – 2020-03-31 立石 洋 佐賀大学, 医学部, 助教 (50457470) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:2013年8月より治療抵抗性うつ病患者に対しrTMSを開始し、2020年3月までで、32症例に対しrTMSを実施した。これまでの検討から、rTMS治療により一部の前頭葉機能の改善及び異方分画性(fractional anisotropy: FA)の増加を認めたものの、前頭葉機能の改善とFAの増加との間には相関を認めなかった。また、rTMS治療によって、rTMS治療前後で炎症性サイトカイン単独(IL-1β, IL-6, TNF-α)では有意な変化を認めなかったが、一部の認知機能の変化量とIL-1βの変化量とが有意な相関を認めた。研究実績の概要:
  20. 認知症治療薬はミクログリアを含む脳神経血管機構にどう作用するのか 2017-04-01 – 2020-03-31 溝口 義人 佐賀大学, 医学部, 准教授 (60467892) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:アルツハイマー型認知症(AD)の治療で最も用いられている認知症治療薬ドネペジルには病態そのものを改善する働きはなく、進行するもの忘れに対して対症療法的にしか働かないものと報告されている。しかし、それらの報告は脳内のグリア環境を想定せず、ニューロンにのみ着目した知見による。本研究により、ドネペジルは脳内の免疫担当細胞であるミクログリアに直接働き、ADを発症させる引き金となるアミロイドβの貪食能(除去する能力)を増強する働きも持ち合わせている可能性が高いことを初めて報告した(Haraguchi, Mizoguchiら,J Neuroinflammation 2017他)。研究実績の概要:
  21. 非侵襲脳刺激法の統合失調症治療にむけた臨床症状及び客観的指標での検証 2016-04-01 – 2019-03-31 池田 俊一郎 関西医科大学, 医学部, 助教 (40772231) 若手研究(B) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:近年、経頭蓋直流電気刺激法(tDCS)が注目されているが、本研究では統合失調症の認知機能障害、精神病症状に対するtDCSの有効性、安全性を検証し、臨床応用にむけたエビデンスを構築することを目的とした。うつ病患者への研究も行い国内外の学会で発表した。また、Clinical EEG and NeuroscienceとClinical Neurophysiologyなどを中心に筆頭著者として3本、その他、共著者として論文化した。結果としては、tDCSの統合失調症への効果は限定的であり、また、実験的な段階であることがわかり今後もさらに症例・経験を積むことが必要である。研究実績の概要:
  22. うつ病を伴う強迫性障害に対する経頭蓋磁気刺激法の神経画像研究 2016-04-01 – 2019-03-31 中前 貴 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (50542891) 若手研究(B) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:本研究では強迫性障害(OCD)に対する反復経頭蓋磁気刺激法(rTMS)の有効性について文献的考察を行った。刺激部位の候補として、背外側前頭前皮質、眼窩前頭皮質、補足運動野が考えられたが、現時点ではどの刺激部位が最適かを結論付けることができず、さらなる知見の蓄積が必要と考えられた。
    また、OCD病態生理を解明するために、OCD群と健常群の拡散強調画像について、脳内の主要な白質線維を自動的に描出する解析手法を用いて比較したところ、OCD群における大鉗子と帯状束の異常が見出された。OCDの病態には皮質-線条体-視床回路以外の後頭葉や側頭葉領域も関与している可能性が示唆された。研究実績の概要:
  23. 「コグニティブライフシステム」の創出を目指して 2016-04-01 – 2020-03-31 野田 隆政 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 病院, 医長 (50446572) 基盤研究(B) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:衝動性の神経基盤に関する検討を行い、事象関連電位において課題提示から300ms以降に生じる脳活動(P300)が衝動性のコントロールに関連している可能性を確認した。安静時の脳活動を利用していた従来のニューロフィードバック(Neurofeedback: NF)手法を改良し、課題中にフィードバックするタスク型NFを開発した。効果検証試験においてもタスク型NFは脳活動の良好な変化を認めた。また、タスク型NFトレーニングは従来法よりも短い期間で効果が発揮されることも分かった。また、NFと併用することで増強効果が期待できる知覚感度に関する自律神経系フィードバックを考案した。研究実績の概要:
  24. 神経ネットワークに着目した治療抵抗性うつ病へのECTとrTMSの治療機作の解明 2015-04-01 – 2018-03-31 山田 信一 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (70549716) 若手研究(B) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:双極性障害(BD)群、うつ病(MDD)群においては、HC群と比較し、脳梁を含む広範な脳領域でFA値の低下が認められた。双極性障害(BD)群において平均FA値の低下と言語性記憶課題の低成績との有意な相関が認められ、うつ病(MDD)群において平均FA値の低下と数字順列課題・トークン運動課題・符号課題の低成績との有意な相関が認められた。本研究の結果は、気分障害では白質神経線維の微細構造という解剖学的なレベルの異常が共通して存在し、それぞれにおいて特異的な認知領域と関連していることを示唆する。研究実績の概要:
  25. 口顎ジストニアへの経頭蓋磁気刺激による治療戦略 2015-04-01 – 2019-03-31 成田 紀之 日本大学, 松戸歯学部, 客員教授 (10155997) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:本研究では、口顎ジストニアのQOLならびに皮質活動性に対する一次運動野への経頭蓋磁気刺激の効果を検討した。口顎ジストニアは、健常者と比較して、Symptom Checklist-90-R(SCL-90R)による抑うつと身体化、ならびに口腔QOLと身体QOLに有意な変調を示した。口顎ジストニアへの経頭蓋磁気刺激は、術前と比較して、SCL-90Rによる抑うつと身体化、口腔QOL、さらには皮質活動性(運動前野と補足運動野、一次感覚運動野)に有意な改善を示した。以上のことから、口顎ジストニア患者への経頭蓋磁気刺激は、精神心理、口腔QOL、一次感覚運動野口顎領域の皮質活動性に有意な改善を示唆した。研究実績の概要:
  26. 治療抵抗性うつ病のGABA機能評価によるrTMSの治療機作と反応性予測指標の解明 2015-04-01 – 2019-03-31 鵜飼 聡 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (80324763) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:研究開始当初の目的は、治療抵抗性うつ病におけるGABA機能の障害を示し、GABA機能の障害とrTMSへの反応性の関連を明らかにすることであったが、脳の機能障害の評価には新しい脳構造・機能画像解析を用いて脳内神経ネットワーク障害でも評価することとした。うつ病に対するrTMSが治療機器の国内承認が遅れたために延期となり、脳構造・機能画像解析によるrTMSの作用機作と治療反応性の予測指標の解明を優先した。これにより、精神疾患に対する種々の脳構造・機能画像解析法を開発するとともに、それらの手法によって精神疾患の病態研究について多くの研究の成果を得ることができた。研究実績の概要:
  27. うつ病患者の自伝的記憶の概括化に対する治療法の検討 2015-04-24 – 2018-03-31 特別研究員奨励費 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:研究は順調に進捗し,成果をあげることができた。本年度は最終年度にあたるため,前年度から引き続き収集されたデータを統合的に解析しまとめた。具体的には,うつ症状を有する者および健常被験者を対象に,これまでの申請者の検討で治療の有効性が示唆された行動活性化プログラムを適用し,その前後で記憶の概括化の評価とfMRIによる脳機能測定を実施した。当該プログラムではその個人にとって快感情が随伴するような行動を特定し,それを増やす計画を作成・実施しながら行動を活性化することを目的として作成された心理療法プログラムである。よりうつ症状の高い症例については,将来の目標を設定しそれに沿った行動を増やすことで回避行動を減らすプログラムも加えられた。これらのプログラムはうつ病の治療に効果があることが示されているが,同時に行動を増やすことで記憶情報が増え概括化が減少する可能性が考えられたため本課題に適用した。解析の結果,プログラム前後で記憶の概括化が減少した症例が一定数みられ,その改善度とfMRIによる安静時脳機能結合性評価の得点が関連することが明らかになった。これらの検討内容は現在,関連学術領域に公表すべく準備中である。近年,うつ病患者の再発要因としての記憶の概括化に対する介入の必要性が指摘される中,効果的な治療法の開発には至っていなかった。申請者の試みはいまだ先行例がなく行動変容による記憶の概括化の変化およびその神経基盤までも明らかにしようとしたものであり,再発が多いうつ病治療への新規介入提案が実現でき大いに有益である。
  28. うつ病の神経回路病態の解明とそのリモデリングに関わる基盤研究 2015-04-01 – 2018-03-31 山脇 成人 広島大学, 医歯薬保健学研究科, 特任教授 (40230601) 基盤研究(A) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:本研究の目的はうつ病の病態を局所の神経活動の異常および関連する神経回路の機能異常として理解し、神経回路のリモデリングによる治療法を解明することである。本研究の成果として、① 前頭前野と前帯状皮質を含めたうつ病患者の特異的な機能的結合の同定、②ラットの前頭前野の神経活動変化による行動変化の同定、③ラットの行動変化と前頭前野における電気生理学的変化との関連、④ ①から③の基礎検討を元にうつ病患者に対してNeurofeedbackを実践し、前頭前野と前帯状皮質の機能的結合の改善、を明らかにすることができた。社会実装の観点から今後さらなる症例の蓄積や方法論において修正を重ねていく必要がある。研究実績の概要:
  29. 統合失調症におけるアセチルコリン、GABA/グルタミン酸機能と認知機能障害の関連 2014-04-01 – 2017-03-31 高橋 隼 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (10508021) 若手研究(B) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:本研究の目的は、経頭蓋磁気刺激を用い、統合失調症のアセチルコリン機能、GABA/グルタミン酸機能と認知機能障害の関連を検討することである。2連発経頭蓋磁気刺激(ppTMS)を用いたGABA/グルタミン酸機能の評価では、統合失調症における皮質興奮性の増強と認知機能障害、皮質興奮性の増強と罹病期間の関連が明らかになった。アセチルコリン機能の評価については、経頭蓋磁気刺激と正中神経の電気刺激を組み合わせ、アセチルコリン機能を反映するとされるShort latency afferent inhibition(SAI)の簡便な測定法の開発に取り組み、健常者を対象にデータを収集した。研究実績の概要:
  30. 経頭蓋磁気刺激による気分変調に伴う脳活動の変化のPET測定-霊長類モデル研究 2014-04-01 – 2017-03-31 筒井 健一郎 東北大学, 生命科学研究科, 教授 (90396466) 挑戦的萌芽研究 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:アカゲザルを対象として、内側前頭前皮質の腹側部(vmPFC)に対する低頻度反復経頭蓋磁気刺激(lf-rTMS)を行い、それが抑うつ状態を誘発することを見出した。一方で、前帯状回後部(pACC)や、その他の領域にに対する lf-rTMS では、そのような症状が誘発されることはなかった。これら3頭のサルについて、内側前頭皮質腹側部刺激、前帯状回後部刺激、および、内側前頭皮質腹側部へのシャム刺激を行った後の、安静時脳活動を fMRI にて計測した。このデータの解析によって、正常時と抑うつ状態で、どのような脳活動の違いがあるのかが明らかになることが期待される。研究実績の概要:
  31. 慢性疼痛に対する反復経頭蓋磁気刺激のメカニズム解明 ラットモデルのfMRI解析 2014-04-01 – 2017-03-31 齋藤 洋一 大阪大学, 医学系研究科, 特任教授(常勤) (20252661) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:難治性神経障害性疼痛に対して反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)の需要が高まっている。本研究は11.7Tという高磁場のMRIを用いて、坐骨神経を結紮する慢性疼痛モデルラットの詳細な画像解析をして、その病態を究明し、rTMSの最適な刺激条件を同定することを目的とした。ラットにrTMSを施行するための麻酔や磁気刺激装置、筋電図の準備を整えた。7Tの先行研究に基づいた麻酔や撮像パラメータに準じて、11.7TのMRIでの撮像を行い、解剖的MRI撮影に成功した。しかし今回の11.7TのMRIは動物を縦入れするタイプのもので、持続した麻酔した状態のラットの安静時機能的MRI撮影を安定して行うことはできなかった。研究実績の概要:
  32. 脳部位間結合性の包括的な神経生理学的検討による統合失調症と気分障害の病態解明 2014-04-01 – 2018-03-31 篠崎 和弘 和歌山県立医科大学, 医学部, 博士研究員 (40215984) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:統合失調症、大うつ病、双極性障害などの白質異常をMRIで検討した。MRI拡散テンソル画像/異方性係数FA、安静時機能MRI/機能結合解析、T1/T2比ミエリン強調画像を用いた。統合失調症ではミエリン障害が広範な領域で確認され、血中ω-3脂肪酸と認知機能が相関した。双極性障害と大うつ病では共に前頭葉を結ぶ脳梁でFA値低下が解析を変えても確認された。大うつ病ではFA値と実行機能、注意機能が相関した。双極性障害では左右半球・体制感覚運動ネットワークの機能的結合が躁病スケール値と相関した。次の課題はrTMS、ω3脂肪酸による神経ネットワークの改善と治療効果の確認である。研究実績の概要:
  33. 気分障害・適応障害における反復経頭蓋磁気刺激法を応用した鑑別診断法の検討 2014-04-01 – 2017-03-31 青山 義之 群馬大学, 医学部附属病院, 助教 (60568351) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:本研究は、反復経頭蓋磁気刺激法(rTMS)に際する脳の反応性パターンに違いに基づき、気分障害(大うつ病性障害、双極性障害)、および適応障害の脳機能の特徴を明らかにし、鑑別診断への応用可能性を検討するものである。大うつ病性障害では、明らかな刺激中の反応を認めず、双極性障害では健常者と同様の変化を示し、適応障害でも健常者と同様の変化を示し、刺激時間として60秒間、120秒間の2設定の検討でも同様の反応を認めた。反復経頭蓋磁気刺激中の対側脳機能反応性は疾患特異的な反応を示していると考えられ,鑑別診断に利用できる可能性への示唆が得られた。研究実績の概要:
  34. 急性期脳卒中の内側皮質に対する深部rTMS 2014-04-01 – 2017-03-31 佐々木 信幸 国際医療福祉大学, 大学病院, 教授 (60328325) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:急性期脳卒中の下肢麻痺およびアパシーに対する反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)の報告はない。21人の急性期脳卒中患者を無作為に高頻度rTMS群と偽刺激群に割り付け5日間連続介入を行った結果、下肢麻痺の改善はrTMS群で有意であった。次に13人の慢性期脳卒中患者を無作為にrTMS群と偽刺激群に割り付け、背側前部帯状回(dACC)~内側前頭前野(mPFC)へ高頻度rTMSもしくは偽刺激を5日間施行したところ、アパシーはrTMS群で有意に改善した。なお、この介入は急性期脳卒中患者のアパシーに対しても安全かつ有用であった。rTMSは急性期脳卒中に対する新たな有用なリハビリテーション介入と考えられる。研究実績の概要:
  35. 情動・注意の制御に関わる大脳皮質間神経回路の適応動態 2014-07-10 – 2019-03-31 筒井 健一郎 東北大学, 生命科学研究科, 教授 (90396466) 生物系 新学術領域研究(研究領域提案型) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:注意や情動にかかわる大脳皮質間神経回路の動態をしらべるため、経頭蓋磁気刺激による局所神経活動の操作、および、広域的な電気生理学的計測を行った。注意に関しては、前頭連合野背外側部と運動前野背側部がそれぞれ、注意や作業記憶の視空間的および運動的な側面を担っていることが明らかになった。一方で、情動や気分の制御には、内則前頭皮質の腹側部がとりわけ重要な役割を果たしており、その機能の破綻が、うつ病などの気分障害につながることが示唆された。また、特に注意や作業記憶の機能の発揮には、前頭皮質から後部皮質へのトップダウン的な情報の流れが重要な役割を果たしていることも明らかになった。研究実績の概要:
  36. 広汎性発達障害における高次連合野の刺激応答特性と神経可塑性 2013-04-01 – 2016-03-31 中村 元昭 横浜市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 客員研究員 (50464532) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:TMS(経頭蓋磁気刺激法)と脳波を組み合わせた実験の方法論を確立し、定型発達者29名、自閉症スペクトラム障害者20名のデータを取得した。前頭前野へのシータバースト刺激(TBS)前後で経時的にTMS誘発電位と認知機能を測定した。定型発達者において、TBS群はシャム刺激群と比較して、TBS実施後10分~50分においてN45成分の振幅が増幅効果を示し、20分~40分において作動記憶の一時的な増強効果を示すことが確認された。その一方で、発達障害者においては、N45成分や作動記憶の増強効果を認めなかった。前頭前野の神経可塑性様変化において、定型発達者と発達障害者の間で顕著な違いを見出すことができた。研究実績の概要:
  37. うつ病及び摂食障害の認知柔軟性を高める経頭蓋的脳刺激法に関する研究 2013-04-01 – 2017-03-31 中里 道子 千葉大学, 大学院医学研究院, 特任教授 (10334195) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:本研究は、神経性過食症患者を対象として,経頭蓋磁気刺激療法(rTMS)の効果を、過食衝動の頻度低下、食への渇望(craving)を用いた主観評価主観評価に加え、客観的な至適治療パラメータの検討を目的に、近赤外光スペクトロスコピー(NIRS)を用いて評価した。rTMSの刺激部位は、左前頭前野とし、10Hzの磁気刺激を、1セッション、合計1000パルスで実施した。rTMS実施2時間後に、食物画像を用いた課題に対する過食衝動等を0-10点で点数化し評価した。全症例に安全に施行され脱落例はなく、介入後に過食衝動が減少し、不安尺度の軽減、左前頭前野で課題遂行中のoxyHbの減少が認められた。研究実績の概要:
  38. 医療従事者の睡眠状態と脳高次機能についての生理学的研究 2013-04-01 – 2016-03-31 西多 昌規 自治医科大学, 医学部, 講師 (10424029) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:医療従事者の疲労・睡眠不足は、医療事故の温床である。本研究では研修医を対象に、当直前後での採血手技中の脳血液量変化を比較検討した。当直前後において、採血練習用の模擬血管を協力者に装着し、被験者に採血手技を行わせた。被験者にはウェアラブル光トポグラフィを装着し、関心領域を前額部付近として採血手技中の脳血液量変化を記録し解析を行った。当直後における2回の採血手技で比較したところ、2回目は1回目に比較して、右前頭前皮質領域の有意な血流量変化の減少が認められた。ヒヤリ・ハットに通じるイージーミスを発生しやすい神経学的証拠であると考えられた。研究実績の概要:
  39. 脳卒中後疼痛に対する脊髄刺激によるニューロモデユレーション 2012-04-01 – 2015-03-31 山本 隆充 日本大学, 医学部, 教授 (50158284) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:脳卒中後疼痛症例に対して、Dual-lead SCSを施行し、半身に刺激感覚を誘発することができた。また、モルヒネ、ケタミン、ラボナールを用いたドラッグチャレンジテストでは、ケタミンが有効な症例に脊髄刺激の有効例が多いことから、患者選択に有用であった。脳卒中後疼痛27例に対してDual-lead SCSを用いたテスト刺激を行い、21例(77.7%)に慢性植え込みを行った。慢性刺激開始後12カ月の結果では、excellent(60%以上VASが減少)4例、good(30-60% VASが減少)11例、fair (VASの減少が30%以下)6例で、15例(71.1%)で満足できる効果が得られた。研究実績の概要:
  40. 統合失調症の認知機能障害に対するrTMSの治療機作のGABA機能評価による検討 2012-04-01 – 2016-03-31 鵜飼 聡 和歌山県立医科大学, 医学部, 准教授 (80324763) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:うつ病の新しい治療法である反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)が、統合失調症の認知機能障害の治療にも応用されつつある。一方で、大脳皮質のGABA機能の障害が統合失調症の認知機能障害に関与する可能性が指摘されている。そこで、rTMSの治療機作やエビデンスを、ヒトの大脳皮質のGABA機能を評価できる2連発経頭蓋磁気刺激を中心に、rTMS刺激中の皮質の血流反応性、脳機能・構造画像などを相補的に用いて検討することを本研究の目標とした。時間的制約から、rTMS治療と各種の評価を並行実施する最終段階には至らなかったが、これらの手法を用いて統合失調症をはじめとする神経・精神疾患の病態等の研究に多くの成果を得た。研究実績の概要:
  41. 情動的ストレスによる心血管系の応答に対する圧受容体機能の役割 2012 – 2016 上山 敬司 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (50264875) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:圧受容体反射経路と情動的ストレスの回路で、共通する箇所を神経解剖学的手法で探索することを探索することを目標とした。圧受容体反射弓除神経群とSham群で、不動化(情動的)ストレスで変化する領域として不確体や淡蒼球縫線核が抽出された。そこでより上位の自律神経から影響され、また圧受容体反射経路からは上位にあたると考えられる分界条床核(BST)に注目し、その求心路を逆行性トレーサーChlera toxin b subunit(CTb)をBSTに注入し、ストレス負荷を加え、CTbと神経興奮マーカーであるc-Fosとの二重染色を行い、mappingを行った。CTbをLSDの一部と中隔海馬采や三角中隔核に注入し、側脳室に漏れた。CTb陽性細胞としては、辺縁系として知られるD1・島皮質(GI)、帯状回(Cg)、下辺縁皮質(IL)、前辺縁皮質(PrL)、背側脚皮質(DP)やそれ以外の大脳皮質としも運動野(M1、M2)、感覚野(S1, S2)の場所に見られた。また、視床下部として腹側内側核(VMH)、視索前野(LPO, MPA)、ブローカの体格帯(HDB, VDB)が見られ、小脳皮質巣小葉(Sim)、中脳の淡蒼縫線核(RPa)の場所でも観察することができた。次にCTbとcFos二重陽性は中脳の青斑核(LC)、延髄の尾側オリーブ周囲核(CPO)、視床下部室傍核(PaLM)、視床下部外側核(LH)の場所で見られた。
  42. ヒト高次連合野の成熟前後における神経回路特性と神経可塑性の検証 2012-04-01 – 2014-03-31 中村 元昭 横浜市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 客員研究員 (50464532) 複合領域 新学術領域研究(研究領域提案型) 研究開始時の概要: 研究概要:平成25年4月以降は、経頭蓋磁気刺激法(TMS)と脳波を組み合わせたTMS-EEG実験(研究目的1および3)を中心に実施した(n=10)。TBSの前後でTMS誘発電位を測定したところ、N100、P180などの成分の振幅の経時的変化をとらえることができた。この予備的結果はTMS誘発電位が前頭連合野の興奮特性や可塑性を反映するバイオマーカーとしての可能性を示唆した。平成25年9月以降は、被験者負担が少なくTMS-EEG実験に特化した実験環境を追求した。新しい実験システムと研究プロトコールによって、TMSアーティファクトの混入が劇的に低減され、TMS誘発電位の超早期成分(N45など)の解析が可能となった。新規プロトコールを用いて、健常成人被験者計13名のデータを取得して、予備的解析を行い、平成26年3月の領域会議にて次の2点を報告した。1)TBS前後でTMS誘発電位を経時的に測定したところ、TBS群はベースラインとの郡内比較でも、シャム群との群間比較においても、N45成分の振幅においてTBSによる増幅効果が40分程度確認された。2)TBS前後で認知機能課題を経時的に測定したところ、TBS群はベースラインとの郡内比較でも、シャム群との群間比較においても、TBSによる作動記憶課題の増強効果が40分程度確認された。
    本課題で検証されたTMS誘発電位を用いることで、前頭連合野の成熟前後で刺激応答特性や可塑性を比較することが可能となる。さらには、成熟への途上にある前頭連合野と共に過ごす思春期において、必要となる支援の方向性を提言できる可能性に期待している。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  43. rTMS・tDCSの定量的評価および治療応用システムの開発 2012 – 2013 特別研究員奨励費 研究開始時の概要: 研究概要:反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)や経頭蓋直流電気刺激(tDCS)は脳の興奮性を変化させることができることから, うつ病, パーキンソン痛, 脳卒中の後遺症, 慢性疼痛, ジストニアなどの治療に応用されている. しかしながら, rTMSやtDCSの臨床応用に関する報告では, 疾患に対する効果や有効性は確認されているものの, 刺激を行う際の刺激条件が客観的に定められていないとう問題がある. そこで, 本研究ではrTMS・tDCSの刺激効果を定量的に評価し, 疾患を入力することで, rTMS・tDCSの最適な刺激条件が出力されるシステムの開発を行う.
    まず, 運動野において, μ波とrTMS・tDCSの刺激効果の関係性について調べた. その結果, μ波のERDは促進性の刺激であるAnodal tDCSにより, 有意的に増加し, 抑制性の刺激である1Hz110%RMT rTMSとCathdal tDCSにより有意的に減少した.
    次に, rTMSの刺激条件と刺激効果の関係性を調べるために, 抑制効果を誘発すると言われている1HzのrTMSを左半球の第一次運動野に与え, 運動誘発電位(MEP)を計測することで, 大脳皮質興奮特性の変化を評価した. 更に, その実験結果を用い, 重回帰分析によりrTMSの刺激効果予測モデルを作成した. 実験により, 刺激強度が強いほど, パルス数が多いほど, 抑制効果が強く生じることが分かり, MEPの振幅変化と刺激強度, パルス数の関係が非線形である可能性があることが分かった. また, 樹木モデルを計測データにあてはめ, 独立変数間の交互作用を調べた. その結果, 刺激強度とパルス数の間に交互作用がある可能性が示唆された. これらの結果から, 初期のモデルに, 刺激強度の二乗, パルス数の二乗, 刺激強度とパルス数の積を含むモデルを用い, 重回帰分析を行うことでrTMSの刺激効果予測モデルを作成した. 刺激の効果が被験者により異なることがある為, クラスター分析により被験者を分類し, モデルを分けて作成することで, モデルの精度向上を行った。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  44. 経頭蓋磁気刺激法の気分障害に対する治療プロトコールの最適化と神経可塑性変化の検討 2011 – 2012 中村 元昭 横浜市立大学, 医学研究科, 客員研究員 (50464532) 若手研究(B) 研究開始時の概要: 研究概要:薬物治療抵抗性のうつ病の患者群を対象として、反復性経頭蓋磁気刺激法(rTMS)の有効性を厳密に調べるランダム化比較試験(RCT)のデザインを開発した。精度の高いシャム刺激を対照群として、複数の治療プロトコールの直接比較や、再発予防効果の検証が可能となる臨床試験である。現時点で RCT の被験者数は目標数に達していないため、rTMS前後の生物学的変化も含めた本研究の最終的な解析は RCT終了時点にて行なう。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  45. 脳卒中後歩行障害に対する機能回復型ブレイン・マシンインターフェイス開発 2011 – 2013 竹内 直行 東北大学, 大学病院, 助教 (10374498) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:脳卒中患者の運動野に陽極経頭蓋直流電気刺激、麻痺側下肢の腓骨神経に機能的電気刺激を同時に行ったが歩行機能改善効果は認めず、ブレイン・マシンインターフェイス(BMI)を歩行障害の治療に応用するため経頭蓋直流電気刺激にて運動野の興奮性を変化させ、BMIに用いる下肢の感覚運動リズムを調節できるか検討を行った。経頭蓋直流電気刺激後の足運動イメージ時のβ帯域感覚運動リズム変化は健常者と下肢切断患者では異なり、BMIを歩行障害に応用するためには、興奮性・抑制性刺激を使い分ける必要があり、BMI情報の変動に対し経頭蓋直流電気刺激が有益である可能性が示唆された。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  46. 運動療法によるストレス緩和作用の神経基盤に関する生涯発達研究 2011-04-01 – 2014-03-31 酒谷 薫 日本大学, 工学部, 教授 (90244350) 基盤研究(B) 研究開始時の概要: 研究概要:現代社会に蔓延するストレスは、様々な疾患の主要原因の一つである。本研究では、近赤外分光法(NIRS)を用いて、前頭前野の神経活動を計測し、自律神経系・内分泌系機能及び心理状態とともに、ストレスを客観的に評価する方法を開発した。さらに本法を用いて、中高齢者における運動療法のストレス緩和効果について検討し、軽い運動でもストレス緩和効果があることを明らかにした。さらに高齢者に軽い運動を負荷することにより、前頭前野のワーキングメモリー課題に対する反応性が上昇し、パフォーマンスが向上することが示唆された。本ストレス評価法と運動療法を組み合わせることにより、ストレス性疾患を予防できる可能性がある。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  47. 分子から社会までの統合的アプローチによる自己制御の形成・修復支援 2011-04-01 – 2016-03-31 笠井 清登 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (80322056) 複合領域 新学術領域研究(研究領域提案型) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:人間の精神機能は、自分自身を知り(自己意識・自我・メタ認知[=自分自身の認知・行動を対象化し、自己像として認識すること])、社会環境適応的な自己制御性を持つという、他の動物にない特長を持つ。ヒトの自己制御をその神経基盤も含めて包括的に解明し、それにもとづいて自己制御の形成・修復の支援方法を開発することは、精神疾患が急増していることを鑑みれば喫緊の課題である。本領域では、5年間の研究を通して、自己制御の障害を呈する思春期精神病理における神経基盤を明らかにし、自己制御の支援方法を具体的に提案することに成功した。研究実績の概要:
  48. アットリスク精神状態の介入指標の確立と病態解明を目指す縦断的TMS-NIRS研究課題名 2010 – 2012 辻 富基美 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (10347586) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:幻聴や思考障害の基盤とされる上側頭回(STG)と前頭葉の結合性を検討するため、反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)中に刺激遠隔部で起こる血流変化をNIRSで測定した。対象は健常男性12名。左STG 後部をrTMS 中の左前頭部、右前頭部の血流変化をNIRS で測定した。左STG へのrTMS では、左前頭部、右前頭部において、シャム刺激中と比較し、実刺激中に有意に血流が低下した。本研究の結果から、TMS-NIRS がSTG -前頭葉の機能的結合性の指標となる可能性が示唆された。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  49. 気分障害・適応障害の反復経頭蓋磁気刺激法に際する脳機能反応性の検討 2010 – 2012 青山 義之 群馬大学, 医学部, 助教 (60568351) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:反復経頭蓋磁気刺激法(rTMS)を行った際の脳血液量変化を近赤外線スペクトロスコピィ(NIRS)を用いて測定することにより、気分障害(大うつ病性障害、双極I型障害、双極II型障害)、および適応障害における脳機能の特徴の検討,および適正な刺激条件の設定を目的とした。rTMS中の対側脳機能反応性は疾患群によって異なる反応を示し,その反応は状態像による相違を認めなかった. 研究成果の概要:研究実績の概要:
  50. 経頭蓋直流刺激のうつ病治療の可能性についての研究 2009 – 2011 本橋 伸高 山梨大学, 大学院・医学工学総合研究部, 教授 (30166342) 挑戦的萌芽研究 研究開始時の概要: 研究概要:電気けいれん療法(ECT)に代わる治療法として期待されている左背外側前頭前野に対する反復陽性経頭蓋直流刺激(tDCS)の気分と認知機能に与える影響を検討した。健常男性に対し偽刺激を対照とするクロスオーバー法試験を実施したところ、視覚性再認記憶課題の正答率のみが時間とともに上昇しており、実刺激で開始した群で変化が顕著であった。これらの所見より、tDCSは特に有害な作用を示すことなく、視覚性再認学習機能を高める可能性が示唆され、うつ病の新たな治療法として検討を進める価値があると考えられた。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  51. アットリスク精神状態の前向き追跡による神経生理学的介入指標の確立と発症機序の解明 2009 – 2011 鵜飼 聡 和歌山県立医科大学, 医学部, 准教授 (80324763) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:統合失調症の病態仮説と関連するGABA系、NMDA系の機能を評価できる2つの神経生理学的検査を用いて統合失調症の発症早期群、超ハイリスク群を横断的に検討した。発症早期群において皮質のGABA機能の低下を認め、さらにワーキングメモリーの障害と相関することから、認知機能障害の軽減にGABA系の機能回復を目指す治療的介入が役立つ可能性が示唆された。超ハイリスク群では発症群と同様に皮質のNMDA系の機能低下が認められ、顕在発病前からの脳灰白質の体積の減少にNMDA系の機能低下が関与するとの仮説を支持した。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  52. 統合失調症と漢方-認知機能障害の治療と客観的神経生理指標の確立 2008 – 2009 正山 勝 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (70364081) 若手研究(B) 研究開始時の概要: 研究概要:本研究の目的は統合失調症の認知機能障害の治療を漢方製剤と生物学指標によって行うことである。最初に経頭蓋磁気刺激手法を応用したshort latency afferent inhibition(SAI)を統合失調症患者群と健常対照群で測定した。SAIは患者群で有意な低下を認めた。次に漢方製剤の抑肝散により、精神症状や認知機能の改善を認めた統合失調症、妄想性障害、皮質下認知症での症例を検討した。統合失調症の認知機能障害の治療において、漢方製剤や中枢性のコリン系伝達の評価が有用であることを示唆するものと考えられた。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  53. 統合失調症の神経回路網の機能障害に対する連続経頭蓋磁気刺激の効果の検討 2008 – 2009 奥村 匡敏 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (00464678) 若手研究(B) 研究開始時の概要: 研究概要:very late onset schizophrenia like psychosisの基準を満たす薬物治療抵抗性幻聴をもち、低頻度rTMS治療を行った62歳女性についてSPECTで評価した。同時に、我々はPANSSや幻聴スケールで精神症状とBACSで認知機能を評価した。rTMS前後の血流変化は3DSRTを用いて評価した。rCBFは側頭皮質で減少し、基底核で増加していた。認知機能では言語性記憶と運動機能が改善した。側頭皮質の血流減少は既報と一致しているが、基底核での増加はvery late onset schizophrenia like psychosisの病態に起因しているのではないかと考えた。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  54. ナビゲーションガイド下経頭蓋磁気刺激の気分障害への治療応用と治療反応性の予測因子 2008 – 2010 中村 元昭 横浜市立大学, 医学研究科, 客員研究員 (50464532) 若手研究(B) 研究開始時の概要: 研究概要:目的:薬物治療抵抗性の気分障害に対する反復性経頭蓋磁気刺激法(rTMS)の安全性、有効性と治療反応性を検討する。神経画像を用いてrTMS前後での脳形態の変化を調べる。
    方法:単極性及び双極性のうつ病を対象としてrTMSを計10セッション施行。刺激頻度は20Hz又は1Hzで、刺激強度は安静時運動閾値の90-100%、週の総パルス数は5000とした。頭部MRIと超音波によるナビゲーションを用いて前頭前野背外側面(DLPFC)を刺激した。
    結果:被験者51名(平均年齢:48.2歳、男36名、女15名)の中でrTMS開始前のハミルトンうつ病評価尺度(HAM-D)は12.9±4.6点で、rTMS終了後は8.0±5.1点であり、有意な改善を認めた(Z=5.88,p<0.0001)。治療前後で50%以上の改善を認めた群は41.2%で、25%以上50%未満の部分改善群は29.4%で、25%未満の非改善群は29.4%であった。前頭葉機能の改善も認められた(言語流暢性:Z=2.62,n=40,p=0.009)。重篤な有害事象は認められなかったが、33.3%において一過性に軽度~中等度の頭皮痛を認めた。治療反応性の予測因子としては年齢や運動閾値に加えて臨床像との関連が推測された。rTMS前後の脳形態変化は刺激部位である左DLPFC(t37=5.53,p<0.0001)を中心として前帯状回などにおいても灰白質体積の増加が認められた。さらには刺激部位を中心として両側DLPFCにおいて拡散係数の低下を認めた(t20=8.12,p<0.0001)。改善群と非改善群を比較した場合に、改善群において左DLPFCの体積増加と拡散係数低下が認められた。
    結論:非盲検デザインではあるが、ナビゲーションガイド下rTMSの安全性と有効性が示唆された。rTMS後の灰白質の体積増加や拡散係数低下はrTMSによる神経可塑性変化を示唆する所見であり、抗うつ効果発現との関連が示唆された。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  55. 反復経頭蓋磁気刺激と脳画像によるうつ病の治療反応性の解明 2008 – 2010 篠崎 和弘 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (40215984) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:【実験1】ラットでのrTMS施行群ではControl 群と比較し、BrdU-positive cellsが有意に増加した。rTMSの抗うつ効果発現に海馬神経細胞新生が関与する可能性がある。
    【実験2】脳血流に関して難治性うつ病でのrTMS治療のレスポンダーでは治療前のCg25野の血流が上昇し治療後には低下した。rTMSによりCg25野が調節される可能性がある。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  56. 近赤外分光法による脳血流同時測定を用いた精神疾患の経頭蓋磁気刺激治療法の開発研究 2008 – 2011 岩瀬 真生 大阪大学, 医学系・研究科, 助教 (60362711) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:統合失調症を初めとする精神疾患に対して経頭蓋磁気刺激治療を行い、近赤外分光法を用いて治療中の血流同時測定を行ったところ、治療中に血流変化がみられることが観察されたが、何人かの被験者では磁気刺激による刺激のアーチファクトが測定に混入することが判明した。近赤外分光法により課題施行中の血流変化により、健常者と疾患群の判別解析が可能なことが明らかになり、磁気刺激治療への反応性予測に応用できる可能性がある。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  57. 統合失調症と気分障害における意欲症状の脳基盤の解明と改善のためのNIRS研究 2008 – 2010 福田 正人 群馬大学, 大学院・医学系研究科, 准教授 (20221533) 基盤研究(B) 研究開始時の概要: 研究概要:統合失調症や気分障害における意欲症状の脳基盤を解明するために、MRI・NIRS・MEGを用いた検討を行なった。健常者においては眠気・疲労感・幼小児期の養育・協調性が前頭前野の体積や賦活反応性と関連すること、統合失調症の前頭極部機能が機能の全体的レベル(GAF)やσ1受容体・COMT遺伝子多型と関連すること、摂食障害の前側頭部機能が臨床症状と関連すること、双極性障害ではMMNm成分の潜時延長が認められることを明らかにし、前頭葉の体積や賦活反応性が健常者や精神疾患における意欲と密接に関連することを示した。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  58. こころの健康増進のための脳機能自己モニタリング・システムの確立 2007 – 2008 福田 正人 群馬大学, 大学院・医学系研究科, 准教授 (20221533) 萌芽研究 研究開始時の概要: 研究概要:脳機能の自己モニタリングを可能にするために、健常者を対象として頭部用の多チャンネル近赤外線スペクトロスコピィ(NIRS)装置を用いて大脳皮質の賦活反応性を検討し、さまざまな精神状態との関連を検討した。(1)頭皮上のNIRS測定チャンネル位置と標準脳における脳回との対応を確立し、fMRIやPETにおいてアーチファクトのために測定の信頼性が低いとされる前頭極部frontal pole(Brodmann 10野)についてNIRSの測定が可能であるという利点を明らかにした。(2)時間分解能が高いというNIRSの特徴を生かし、運動課題における大脳皮質の賦活反応性について、運動野については「課題区間における持続的な賦活」、体性感覚野については「課題開始時の-過性の賦活」、前頭葉については「課題区間における累積漸増的な賦活」、という時間経過の特徴があることを明ならかにした(Neurosci Res 58:297,2007)。(3)言語流暢性課題において、自覚的な軽度の眠気が前頭葉背外側面の内側部における賦活反応性と負の相関をすることを示し、高次脳機能の軽度の変化がNIRSデータに反映されることを明らかにした(Neurosci Res 60:319,2008)。(4)同じ言語流暢性課題において、自覚的な疲労感は前頭葉腹外側面の賦活反応性と負の相関を、検査前夜の睡眠時間が前頭葉背外側面の賦活反応性と負の相関を示し、眠気と疲労感の自覚はそれぞれ前頭葉背外側と腹外側によって担われることを明らかにした(Brain Res1252:152,2009)。(5)以上の結果から、「自然な状態における検査が可能」という特徴をもつNIRSは、健常者の精神状態の自覚の脳基盤を明らかにするうえで有用であり、脳機能の自己モニタリング装置として適切であることが示唆された。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  59. 脳磁図による機能画像を用いた統合失調症の磁気刺激療法の作用機作と有効性予測の検討 2006 – 2008 鵜飼 聡 和歌山県立医科大学, 医学部, 准教授 (80324763) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:統合失調症の治療には通常薬物療法が選択されるが、今後期待されるその他の治療法のひとつに反復的経頭蓋磁気刺激療法がある。この治療法は幻聴や陰性症状の改善に有効である可能性が指摘されているが、その作用機作は不明であり、個々の症例での有効性の予測の指標も確立されていない。本研究では脳磁図を用いた時間分解能の高い脳機能画像を得る手法を確立するとともに、それを用いて本治療法の作用機作や有効性予測の指標を確立することを最終目標として基礎的な研究をおこない、いくつかの重要な成果を得た。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  60. 低頻度反復的経頭蓋磁気刺激の抗うつ作用と認知機能に及ぼす影響に関する検討 2005 – 2006 松本 直起 和歌山県立医科大学, 医学部, 助手 (60326361) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:難治性うつ病に対する反復的経頭蓋磁気刺激(repetitive transcranial magnetic stimulation、rTMS)の有効性と認知機能へ影響の検討を行った。rTMSのパラメータは直近の報告(Savitha E. Am J Psy 2007など)でも総パルス数が10000発以上が推奨されているため、本研究でも当初の予定より多くした。すなわち、左背外側前頭前野に対して、刺激強度は運動閾値の110%、刺激頻度10Hz、刺激時間5秒間、1日刺激総数1000発、刺激日数15日間、総刺激数15000発とした。症例の取り込みのためにマスメディアなどを通じて啓発活動を行った。最終的に応募者の中から除外基準に抵触しない数名の難治性うつ病患者を抽出し本研究を行った。結果は、約半数の患者においてうつ状態評価尺度であるHAM-Dスコアの軽度から中等度の改善(開始時スコアの50%以上の低下)を認めた。またその改善は、刺激期間終了後も2ヶ月にわたって持続した。Frontal Assessment Battery (FAB)、Wisconsin Card Sorting Test (WCST)による評価で認知機能に悪影響は認めなかった。また臨床上も問題となる副作用はなかったが、刺激部位の不快感ゆえ脱落する症例があった。
    既報でも難治性うつ病患者に対するrTMSの有効性は着実に追試されてきており、薬剤抵抗性の症例や高齢者において有効な選択枝となりつつある。今後も症例を重ねて有効性と安全性に関するエビデンスを集積していく予定である。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  61. 経頭蓋磁気刺激による統合失調症患者の大脳皮質の抑制・興奮性の検討 2005 – 2006 篠崎 和弘 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (40215984) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:統合失調症の生理学的指標の開発を目指して、2連発刺激による抑制効果を統合失調症患者で検討した。2連発経頭蓋磁気刺激pp-TMSで大脳運動野のGABA神経機能を、また2連発聴覚性驚愕反応(prepulse inhibition : PPI)でNMDA受容体機能を検討した。
    pp-TMSでは2,3,4msの短間隔刺激による抑制効果(SICI)と10,15msの長間隔刺激による側通効果(LICF)を検討した。刺激強度は1発目80%MT、2発目130%MTとした。統合失調症患者群は健常群と異なりSICIで障害を認めた。SICI障害は定型抗精神病薬服用群、症状重症群、認知・社会機能低下群で強く、病形では解体型で強く妄想型で軽症となる傾向があった。一部の患者ではstate markerとなる可能性が見られた。
    PPIは刺激間隔60,120,480,2000ms、一発目20ms、82dB、2発目40ms、112dB、背景雑音70dBとした。統合失調症群はISI60ms,480msにおいて有意な障害を認めた.患者背景(発症年齢、罹病期間、薬物クロールプロマジン換算量、ニコチン量)、精神症状(PANSS,GAF)、認知機能(MMSE,FAB,ATMT)との有意な関連は見出せなかったことよりtrait marker候補と考えられた.他方、olanzapine単独服用群は定型薬服用群よりPPI障害が有意に小さかったが、統制研究ではないため薬理作用によるものと結論するには至らなかった。
    この研究によりpp-TMS,PPIはそれぞれstate marker, trait markerの候補となる可能性が得ら眼球追跡運動なども含め、早期統合失調症の早期介入、初発統合失調症の最適治療管理など臨床への応用開発を目指す予定である。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  62. 反復経頭蓋磁気刺激法による発現変動遺伝子の解析 2004 – 2005 池田 哲朗 理研, 研究員 (10360489) 若手研究(B) 研究開始時の概要: 研究概要:精神科領域では長年電気痙攣療法(ECT)が行われてきたが、最近ではより安全で非侵襲的代替療法として、磁場を応用した反復経頭蓋磁気刺激療法(rTMS : repetitive Transcranial Magnetic Stimulation)の有用性が、多くの臨床的研究で示されている。特に、難治性うつ病、気分障害、統合失調症(精神分裂症)、アルツハイマー病、パーキンソン病等の患者で、磁場刺激による症状改善報告が示されている。磁場刺激後の変動遺伝子の解析をGeneChipで現在解析した。その結果、モノアミン神経系に関与するモノアミントランスポーターに変化があった。モノアミン神経系は上記疾患と深く関わることが知られており、rTMS刺激後のモノアミントランスポーターの機能解析を行った。モノアミントランスポーターは、セロトニントランスポーター(SERT)、ドーパミントランスポーター(DAT)、ノルエピネフリントランスポータ(NET)からなり、シナプス前膜部から放出されたモノアミン神経伝達物質を再取込みし、シナプス伝達を終結させる重要な細胞膜蛋白である。20日磁気刺激後、マウス脳においてSERT mRNA,[3H]Serotonin uptake, [3H]Citalopram bindingはいずれも増加した。一方、DAT, NET mRNA, [3H]Dopamine, [3H]Norepinephrine uptake,3H]Nisoxetine binding(not [3H]GBR12935 binding)は増加した。これらのことは20日磁気刺激がモノアミントランスポーターを変化させることを示しており、モノアミン神経系が関与していると考えられている上記疾患へのrTMSの分子メカニズムを提供するものと考えられる。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  63. Restless Legs syndromeに対する高頻度磁気刺激の治療応用 2004 – 2005 佐久間 研司 鳥取大学, 医学部附属病院, 助手 (70311199) 若手研究(B) 研究開始時の概要: 研究概要:経頭蓋磁気刺激(TMS)は非侵襲に中枢神経を刺激して錐体路機能評価の他に,うつ病をはじめとする精神疾患やパーキンソン病,脊髄小脳変性症,神経リハビリテーションなどの治療目的で臨床応用が期待されている.体性感覚誘発高周波応答(high frequency oscillation ; HFO)は体性感覚誘発電位(somatosensory evoked potential ; SEP)のN20の主にascebding slopeに重畳する500-800Hzの電位である.前半部は視床,視床皮質路由来であり,後半部はBA 3bの第4層にあるGABA抑制性ニューロン,又は第3層にあるChattering錐体細胞などが起源であると推定されている.
    Theta burst stimulation(TBS)は動物実験ではシナプスの可塑性に影響を与えることが知られ,ヒトの運動野に対するTBSでは数十秒から数分の刺激によって運動神経シナプスの可塑性に影響を与えることを証明し,効果が数十分から一時間程度持続することがわかっている.非常に短時間の刺激で脳の可塑性に変化をきたす方法の治療応用への可能性を検討するべく本年度においてはTBS前後における体性感覚誘発電位の変化について検討を行った.18人の健常成人を対象とし,TBS前後での両側正中神経刺激にてSEPを測定した.SEP測定の方法については平成16年度のものを踏襲した.TBSは200msec間に50Hzの刺激を3回行うことをひとつの単位とし,それを2秒間刺激して8秒間休むを繰り返し合計600回刺激するまで継続する方法をiTBSとし,連続的に600回刺激する方法をcTBSとした.刺激部位はM1とし,刺激強度は80%AMTとした.
    Motor evoked potential(MEP), Short-latency intracortical inhibition(SICI)はiTBSでは増大傾向,cTBSでは減少傾向を認めた.HFOについてはiTBSにて刺激側で有意に振幅増大を認めたが,cTBSについては有意に減少した.
    TBSではMEPとSICI,HFOの動きが相関していた.SICIにはGABA抑制性ニューロンが関与しているとされており,HFO, SICIの両者に同方向め変化をきたしたことはTBSによりGABA抑制性ニューロンへの変化をきたすと考えられた.HFOの変化についてはiTBSによる促通効果は前半部に強く,cTBSによる抑制効果は後半部に強く見られた.HFOの前半部は視床,視床皮質路など皮質下由来であり,後半部は皮質領域由来と考えられ,TBSではまず表層に近い皮質神経細胞の可塑性に変化を与えて,二次的に深部である皮質下領域に影響が伝播する可能性があると考えられた.
    平成16年度の結果と合わせ,TMSにはSensorimotor integrationをmodifyする作用が確認できた.Restless legs syndrome(RLS)において磁気刺激治療を行った.運動閾値,MEP振幅,SICIについては健常人と差がなかった.M1への10Hz,1500発の治療を行った.
    足が勝手に動く症状,RLSの自覚症状,QOL, CGI(Clinical Global Impressions)について問診により変化をたずねた.結果としては明らかな前後での変動は認めなかったが副作用も認めていない. 研究成果の概要:研究実績の概要:
  64. 脳磁図と反復的経頭蓋磁気刺激による統合失調症の幻聴発生機構の解明と治療法の開発 2004 – 2005 石井 良平 大阪大学, 医学系研究科, 助手 (40372619) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:rTMSを用いて、視床痛などの求心路遮断痛患者7症例について、患側の第1次運動野や前頭前野に与えたrTMS(1Hzまたは10Hz)の治療前後でのMEG、EEG、SPECTの変化と治療効果との比較検討では、MEG、EEGの改善は疼痛症状の改善と関連なくほとんどの症例で認めるのに対し、SPECTの改善は疼痛の改善を伴う症例に多く認める傾向がみられた。このことは、MEG、EEGなどの神経生理学的な測定法が血流変化を測定するSPECTよりもより鋭敏にrTMSによる脳活動の変化を捉えている可能性を示唆している。今後、rTMSの種々の刺激条件と、MEG、EEGなどの神経生理学的な測定法による脳活動の変化の相関を詳細に検討していくことが必要であると考えられた。
    MEGの空間フィルタ解析を用いて、Stroop課題の刺激提示から回答までの短時間の神経ネットワークの振る舞いを時間窓200msの高い時間分解能で機能画像化し、健常群、統合失調症の幻聴群、非幻聴群の3群での振る舞いの差異について検討した結果、DLPFCでの活動が、健常群では左優位に両側性に、幻聴群では右優位、非幻聴群では左優位となった。このことから、統合失調症患者において、左のDLPFCの機能不全と幻聴の発生の関連性が示唆されるとともに、統合失調症群においても入力-組織制御-出力という脳内神経ネットワーク上の基本的な情報処理過程の流れは保たれていることが示された。今後は、統合失調症患者の左DLPFCの機能不全をrTMSによって活性化させることで、幻聴症状にどのような治療効果がもたらされるのかをMEG、EEGなどの神経生理学的な測定法による脳活動の変化との相関も会わせて、詳細に検討していくことが必要であると考えられた。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  65. 脳磁図による脳機能画像法を用いたアスペルガー症候群の社会機能障害の神経基盤の研究 2004 – 2005 廣常 秀人 大阪大学, 医学系研究科, 助手 (70346203) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:アスペルガー症候群は、自閉症スペクトラムの一角をなす発達障害の一群である。最近、複数の重大犯罪に本症候群の患者がかかわったと判断されて社会問題となる一方、本症候群の病態が誤解される恐れが指摘されるなど、本症候群の病態を科学的に解明し、治療・介入・教育方法を確立することが急務となっている。本研究では、アスペルガー症候群の中心症状である社会性の障害の神経基盤を、脳内の複数の領域が関わる神経ネットワークの障害として捉え、本症候群の病態メカニズムを明らかにするために、本症候群に特徴的な高次機能障害に関連するMirror Neuron課題(模倣、感情の伝達や共有などの情動・認知能力に関連する課題)を用いて、我々が独自に開発してきた脳磁図の空間フィルタ解析による脳機能画像法により、脳内の各領域の健常群との神経活動の差異とともに、脳内神経ネットワーク全体の障害を時間・空間的に検討することかできた。MEGのSAMを用いたpost-movement ERS研究によって、成人Asperger disorder患者におけるMirror neuron systemの障害を捉えられる可能性が示唆された。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  66. 反復性経頭蓋磁気刺激のうつ病治療に対する有用性と作用機序についての研究 2004 – 2005 本橋 伸高 山梨大学, 大学院・医学工学総合研究部, 教授 (30166342) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:うつ病に対する反復性経頭蓋磁気刺激法repetitive transcranial magnetic stimulation(rTMS)の有用性と脳内^<11>C-raclopride結合に与える影響を検討した。薬物療法に反応を示さなかったうつ病の患者9名(男性4名、女性5名;平均年齢36.4±6.1歳)を対象とした。刺激部位は左背外側前頭前野とし、1回のセッションにつきmotor thresholdの100%の強度で10Hzの刺激を計1000発、合計10セッションを2週間で行った。症状評価には、Hamilton Rating Scale for Depression(HRSD)とBeck Depression Inventory(BDI)を用い、治療前後の認知機能の評価として、Mini Mental State Examination、Wechsler Memory Scale-Revised中の視覚再生と言語性対連合、Trail Making Test、生活健忘チェックリストを使用した。また、治療前後で尾状核と被殻の^<11>C-raclopride結合をPETにより測定した。rTMSにより、HRSDは17.4±2.6点から10.4±6.0点に、BDIは20.7±6.6点から13.6±7.7点にそれぞれ減少した。5人の患者が軽度の頭痛を訴えたがまもなく改善し、他の副作用は認めなかった。また、治療前後で認知機能の悪化は認めず、言語性対連合の無関係言語の即時、遅延再生、生活健忘チェックリストの得点が有意に改善した。以上より、rTMSは軽度から中等度のうつ病の治療に有効であり、重篤な副作用のない安全な治療法と考えられた。さらに、言語性記憶機能の一部を改善する可能性が示された。しかし、脳内ドーパミン系には影響を与えないことが示唆された。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  67. 随意運動遂行障害に対する連続経頭蓋磁気刺激を用いた臨床応用 2004 – 2005 中馬 孝容 北海道大学, 病院, 助手 (70281805) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:連続経頭蓋磁気刺激(rTMS)は、中枢性神経疾患やうつ病などの難治性疾患に対する臨床応用の検討が数多くの検討がなされている。今回、パーキンソン病を対象としてrTMS投与部位による影響について検討した。
    平成16年度では、13名のパーキンソン病を対象(男性3名、女性10名、平均年齢69.2±6.2歳)とし、8の字コイルを用いて低頻度rTMSを行った。rTMS投与部位は(1)前頭前野背外側部、(2)補足運動野、(3)運動前野、(4)第一次運動野の4箇所で、各々0.3Hz、50回のrTMSを投与した。rTMS前後において、短母指外転近(APB)のcortical mappingを測定し、APBのMEPの振幅の総和について比較した。結果は、(1)へのrTMS投与後においてのみ、APBのMEPの振幅は高くなり、MEPのareaは拡大する傾向がみられた。パーキンソン病に関しては、前頭前野背外側部への低頻度rTMSは大脳皮質の興奮性が増強する可能性が推測された。
    平成17年度では、9名のパーキンソン病患者を対象とし、高頻度rTMSの投与部位による影響を測定した。rTMSは10Hzの刺激頻度で総計1000回施行し、投与部位は左第一次運動野、左前頭前野背外側部の2種類とシャム刺激の3パターンについて検討した。rTMS投与前後において、運動機能(歩行・握力等)および前頭葉機能(stroop test)への影響について検討した。前頭前野背外側部刺激では、stroop test II-I時間の短縮傾向がみられた。左前頭前野背外側部への高頻度rTMSは、前頭葉機能に影響を与える可能性がある。高頻度rTMSの投与部位や刺激条件を検討する必要はあるが、前頭葉機能に対する臨床応用の可能性が推測された。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  68. 神経生理学的脳機能画像による反復的経頭蓋磁気刺激治療の刺激条件の確立 2003 – 2005 鵜飼 聡 大阪大学, 医学系研究科, 講師 (80324763) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:本研究では、反復的経頭蓋磁気刺激(rTMS)治療に用いる具体的な最適刺激条件を、神経生理学的脳機能画像、脳機能測定・解析法から検討するとともに、当該治療法の作用機作を解明することを目標とした。3年間の主な研究実績は下記のとおりである。
    1.HFOsの増強効果からみたrTMSの作用機作の検討
    体性感覚誘発電位(SEP)の高周波振動(HFOs)の変化を指標として、健常者の体性感覚野に与えた低頻度rTMS(0.5Hz、50回、運動誘発閾値の80%強度)が、皮質興奮性に与える影響について検討したところ、SEPには変化を認めない一方、HFOsには有意な増強を認めた。HFOsは皮質内GABA系抑制性介在ニューロンの活動を反映すると考えられているので、低頻度rTMSによる皮質興奮性の抑制は、抑制性介在ニューロンの作用の増大を介して行われている可能性が示唆された。また、HFOsがrTMSの最適刺激条件を検討する際の客観的な指標になりえることが示された。
    2.StrooP課題遂行時における統合失調症患者の脳内情報処理のMEGによる脳機能画像化
    脳磁図の空間フィルタ解析を用いて、Stroop課題の刺激提示から回答までの短時間の神経ネットワークの振る舞いを時間窓200msの高い時間分解能で脳機能画像化する方法を開発するとともに、健常群、統合失調症の幻聴群、非幻聴群の3群での振る舞いの差異について検討した。前頭前野背外側部(DLPFC)での活動が、健常群では左優位に両側性に、幻聴群では右優位、非幻聴群では左優位となることから、左のDLPFCの機能不全と幻聴の発生の関連性が示唆されるとともに、統合失調症の臨床特性やrTMS前後で異なると想定される神経ネットワークのダイナミクスの差異を、われわれが開発したMEGの脳機能画像法が捉えうる可能性が示された。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  69. 連続磁気刺激(rTMS),脳深部刺激(DBS)の作用機序に関する研究 2002 – 2003 宇川 義一 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (50168671) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:連続磁気刺激(rTMS)に関する研究
    rTMSの臨床効果については以下の研究を2年間で行った。パーキンソンにしては日本全国規模の効果判定を行い、シャム刺激と比較して有意な効果が得られない事を報告した(文献2)。排尿障害、急性の痛みのに関しては治療効果を認める報告をした(文献1、4)。さらに、rTMSの効果を考える時には、刺激コイル直下の大脳皮質部位だけでなく、その部位と密接な連絡を持つ離れた部位への刺激が及ぼす効果も考慮すべきであることを報告した(文献3)。さらに猿にrTMSを行い、そのときの脳の代謝の変化などを検討した。まず、猿用のコイルを作成した(図書)。このコイルにより、猿の脳でも効果的に限局した部位のみに、電流を誘発できることを証明した。このコイルにより猿の運動野を連続刺激したときの、大脳基底核でのドーパミン代謝の変化を分析した(文献5)。運動野の連続磁気刺激により、腹側線条体での内因性ドーパミンの放出が上昇した。このドーパミン代謝の上昇が、本刺激の鬱病などの治疲機序を一部説明していると考えた。今後は、マイクロダイアリシスによりドーパミンの放出を確認するサルでの実験を計画している。さらに、rTMSの今後の臨床応用が期待されるため、いくつかの神経疾患に刺激パラメータを変えて、治療を試みる予定である。
    脳深部刺激(DBS)に関する研究
    視床下核のDBSで治療を行っているパーキンソン病患者に関して、刺激オンをオフでFDG PETを行い、両者を比較した。刺激オンの時はオフの時と比べて、刺激側の前運動野と前帯状回で糖代謝の亢進が観られた。DBSがパーキンソンなど運動障害に効果を示す機序の一つとして、前運動野の機能亢進が関連していると結論した。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  70. PETによる気分障害患の病態と治療法の作用機序に関する研究 2002 – 2005 須原 哲也 独立行政法人放射線医学総合研究所, 脳機能イメージング研究開発推進室, 研究員 (90216490) 基盤研究(B) 研究開始時の概要: 研究概要:無けいれん性電気けいれん療法(mECT)は難治性うつ病等に非常に有効な治療であり臨床的に確立した治療法であるが、その機序は不明な点が多い上研究も遅れている。本研究ではmECTの適応となったうつ病患者9名を対象にmECT治療前後でのセロトニン1A受容体の変化を[^<11>C]WAY100635を用いて検討した。mECT開始前日、1クール終了1日後にPET検査および精神症状評価を行った。mECT後に9名全例で精神症状の改善を認めた。ECT前後での海馬の結合能(BP)は一部上昇傾向は認めたが統計学的には有意な変化とは認められなかった。今後は海馬5HTIA受容体以外の受容体変化を検討していく必要があると考えられた。
    抗うつ薬などの向精神薬は脳内の受容体やトランスポーターなどに結合し、その薬理作用を発揮している。そのような結合部位での動態を生体内で検討することは薬物の作用機序の解明や用量用法を決定する際に重要である。本研究では健常男性6名を対象とし、SSR1の一つ、フルボキサミンによるセロトニントランスポーター(5HTT)占有率の経時的変化を[^<11>C]DASBを用い、PET測定を行った。また、5HTT占有率の経時的変化を5HTT親和性特性(ED50値;占有率が50%を呈する値)と血中濃度の経時変化をパラメーターとしてシミュレーションし、実測値との相関を検討した。フルボキサミンによる5HTTの平均占有率は5時間後で約73%、26時間後で約50%、53時間後で約25%であった。また、シミュレーション結果は実測値と良く相関した。抗うつ薬の用量用法の決定の際には血中濃度のみならず、脳内セロトニントランスポーター占有率の経時的変化の検討が重要な指標を与えると考えられた。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  71. 経頭蓋磁気刺激法(TMS)によるうつ病および強迫性障害の治療 2001 – 2002 太田 龍朗 名古屋大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (00109323) 萌芽研究 研究開始時の概要: 研究概要:経頭蓋磁気刺激法の臨床応用は、平成13年度に当大学の倫理委員会に受理された。治療は安全性を考慮して外来では行わず、入院治療で行う事として受理されたものである。平成13年度に血液中のテトラヒドロビオブテリン測定系は完成し、いつでも運転可能となった。本年度も当院精神科および関連医療機関で、上記倫理委員会で受理された基準に基づき同治療法の適応患者を募集した。8月に1例慢性うつ病患者に実施すべく、患者および家族に治療について説明し同意を得たので、入院し、治療チームを編成したが、入院後、経頭蓋磁気刺激法の実施予定日までの間に症状が軽快し、ハミルトンスコア(うつ病重症度スコア)が10点以下にまで軽快したため協議の末実施に至らなかった。その他にも数例紹介された候補患者はあったが、いずれも治療に導入する基準(特に診断名と合併症)を満たさず、実施出来なかった。実施0例に至った事態について、その理由としてまず適応の基準が厳しかったことが挙げられる。安全な方法とはいえ、同治療法を将来定着させるためにも事故を防ぎ、きちんとした理論的根拠をもって適用し効果判定を行うにはやむを得ない事と考えている。次に、同治療法の利点である速効性、簡便性と安全性が、厳密に入院治療で実施することにしたことで、患者側のメリットが減少し、わざわざ入院するくらいなら外来での薬物療法の工夫で何とかしてほしいと思わせてしまった事がある。うつ病は生活の質を低下させるが直ちに生命を侵す疾患でないだけに、患者には、確実に治癒するのでなければわざわざ入院して、難解な説明や検査や採血を受ける必然性が無くなる。今後改善すべきことは、同治療法の利点をより明確に患者および精神科医に宣伝すること、国内では外来治療で実施している施設もあるので外来で実施可能な根拠について情報収集し、外来で実施できるよう倫理委員会に再申請することをまず行いたい。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  72. 高頻度磁気刺激による不安モデル動物作成とその機能の解明 2001 – 2002 龝吉 條太郎 大分医科大学, 医学部, 助教授 (00159344) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:高頻度磁気刺激(rTMS)が、ラットにおいて不安を形成するか否かを調べる研究を計画した。不安をしらべる方法として恐怖条件付け試験、高架十時迷路、明暗箱を用いた。また選択的セロトニン再取り込み阻害薬(Selective Serotonin Reuptake Inhibitor : SSRI)や抗不安薬であるdiazepam, alplazolam and buspironeがrTMSによる不安を抑制するか否かも調べた10日間のrTMS慢性照射は、Elevated plus maze, Black & white boxテスト,Conditioned fear stressテストによってラットに対して不安を惹起することが明らかとなった。この不安は、paroxetineの慢性投与やdiazepam, alplazolam, buspironeの急性投与で抑制されたがparoxetineの急性投与では抑制さえなかった。rTMSは従来うつ病や神経症の治療に使用されてきたので、我々は最初rTMSが不安を抑制するものと予想していた。しかし結果は逆であった。rTMSは、正常ラットではむしろ不安を惹起した。rTMSは、正常ラットではむしろ不安を惹起した。このrTMSによる不安は、paroxetineの慢性投与やdiazepam, alplazolam, buspironeの急性投与で抑制された。このことはrTMSによる不安は、セロトニンやGABA-ベンゾジアゼピン系の神経伝達が関与している可能性が考えられる。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  73. 反復的経頭蓋磁気刺激によるneurogenesisの誘導 2001 – 2002 鵜飼 聡 大阪大学, 医学系研究科, 助手 (80324763) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:rTMS(反復的経頭蓋磁気刺激)の作用機作についてneurogenesisの促進効果、および神経生理学的側面から検討した。
    1.neurogenesisの誘導の実証とその最適パラメータの決定のための基礎的データの取得を目指した。健常ラットを2群に分け、一方の群には磁気刺激装置でラットの前頭部を局所刺激して運動誘発閾値を決定し、その120%強度で、頻度10Hz、刺激時間5秒、1日3回刺激した。他方の群には同様の条件でシャム刺激を与えた。両群のマウスにneurogenesisのマーカーとなるBromodeoxyuridine(BrdU)を12時間おきに腹腔内に注入、本操作を14日間連続施行の後、灌流固定した。neurogenesisの指標となるanti-BrdU抗体、ニューロンの指標となるanti-NeuN polyclonal抗体で蛍光色素を変えた二重免疫染色をし、共焦点レーザー顕微鏡を用いて、neurogenesis促進効果を、側脳室近傍、海馬、刺激直下の新皮質で定量し検討した。
    2.健常被験者での磁気刺激前後の誘発電位変化を体性感覚誘発電位高周波振動HFOs(high frequency oscillations)を用いて検討した。健常被験者7名に0.5Hz、50回の低頻度rTMSを実施し、刺激前後でのHFOsの変化を測定した。被験者全員にHFOsを認め、7名中6名にはHFOsのパワー値の有意な増大を認めたが、シャム刺激によるコントロール実験では変化を認めなかった。rTMSが直接皮質内GABA系介在神経細胞の活動を増大させ、介在神経細胞を通して抑制性入力を増強し、皮質興奮性を抑制するメカニズムが推測された。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  74. パーキンソン病への経頭蓋連続磁気刺激の効果に関する運動学的解析 2000 – 2001 中馬 孝容 北海道大学, 大学院・医学研究科, 助手 (70281805) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:経頭蓋連続磁気刺激(rTMS)は、種々の中枢性変性疾患やうつ病に試みられている。8の字コイルを用いて前頭前野を局所的に刺激し、第1次運動野への影響について検討した。
    平成12年度は、パーキンソン症候群7名(男性1名、女性6名、平均年齢56.4±8.1歳)を対象とし、インフォームドコンセントを行った上で施行した。方法は8の字コイルを用いて、APBでの120%motor thresholdの刺激強度で、対側の前頭前野に0.3Hz、30回のrTMSを投与した。rTMSの前後にて、APBにおけるmotor threshold、silent period、cortical mappingを測定した。また、rTMS施行中は、ビデオ、APBの表面筋電図、脳波によるモニターを施行し、rTMSの安全性の確認も検討した。結果は、全例において,rTMS後の第1次運動野におけるAPBにおいてMEPの振幅の増大がみられた。APBのmotor threshold、silent periodの著変はなかった。以上より、前頭前野への局所的なrTMSは運動系への効果が推測された。また、全例において安全性の確認ができた。
    平成13年度は、19名のパーキンソン病(男性10名、女性9名、平均年齢62.8±11.0歳)を対象とした。方法は同様で、APBにおけるrTMS前後のcortical mappingを行った。結果では、19例中13例において、rTMS後のMEPの振幅は増大し、その中にmappingのareaが拡大していた例があった。MEPの振幅の総和におけるrTMS前後での差において、振幅の低下がみられたものは6症例あり、その中の3症例は、rTMS後のmotor thresholdが低下していた。前頭前野における局所的なrTMSは、第1次運動野への促通効果あるいは興奮性の上昇傾向があると推測された。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  75. 強性水泳ラットにおける継頭蓋的磁気刺激法の効果 2000 – 2001 堤 隆 大分医大, 医学部, 助手 (60284791) 奨励研究(A) 研究開始時の概要: 研究概要:(1)、18時から6時を明期とする明暗条件下で飼育したウイスター系成熟雄性ラットを用いた。ラットは恒温(23±0.5℃)、恒湿(50±5%)で、照明時間は午後6時から午前6時までの動物舎で飼育した。水および固形資料は自由に与えた。ラットは少なくとも3週間以上飼育した後実験に用いた。(2)、ラットは2群(rTMS群、sham rTMS群)に分け実験を行った。rTMS群にはコイル径5cmの8の字コイルを用い、刺激頻度は運動閾値上で52パルス、刺激頻度15Hz、刺激時間3.5秒の磁気刺激で17-18時の間に施行した。1日または10日間連続してラットにrTMSを施行した。(3)、rTMSの第10回施行終了24時間後にラットを赤色光のもとで強制水泳を15分間行い赤外線センサー及びビデオカメラにて行動を観察・測定した。翌日再び強制水泳を5分間行い赤外線センサー及びビデオカメラにて行動を観察・測定した。sham rTMS群も同様に行った。(4)、急性実験として第1回強制水泳施行終了24時間後にラットを赤色光のもとで強制水泳を15分間行い赤外線センサー及びビデオカメラにて行動を観察、測定した。翌日再び強制水泳を5分間行い赤外線センサー及びビデオカメラにて行動を観察・測定した。sham rTMS群も同様におこなう。(5)、記録したビデオからラットの行動を静止状態、水泳状態、登坂状態に分けてカウントした。(6)、10日間の連続施行においてrTMS群はsham rTMS群に比べ有意に静止状態が少なかった。単回施行においてrTMS群はsham rTMS群に比べ特に行動面では有意な変化は認めなかった。この結果よりrTMSの連続施行はラットのうつ病モデルである強制水泳において有意な抗うつ作用効果が示された。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  76. 連続磁気刺激によるヒト中枢神経系の長期的興奮性変化の機序に関する研究 2000 – 2001 宇川 義一 東京大学, 医学部・附属病院, 講師 (50168671) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:連続磁気刺激(rTMS)がうつ病などの精神疾患、パーキンソン病などの神経疾患の治療に使用されている。この作用機序として、何らかの長期的効果が生じているはずである。この機序を解明する目的で以下の2点についてこの2年間で研究した。
    1.rTMSは直接の刺激点以外に効果を示すか。
    中枢神経は、線維を介して離れた部位が連絡し合って、その機能を発揮している。そこでrTMSの効果も、この連絡を介して発生していると考えれる。運動野を刺激した時の効果を対側運動野へのTMS(文献3,4)、同側感覚野のSEP(文献5)、SPECT、PETなどを用いて検討した。運動野のrTMSにより、同側の感覚運動野のみならず、対側の感覚運動野、同側の視床、対側の小脳などの離れた部位に機能変化が生ずることが証明された。以上より、rTMSにより刺激部位と離れた部位にも機能変化が生ずると考えた。
    2.rTMSは、刺激終了後にも持続する効果を誘発するか。
    rTMSが治療効果を発現するためには、rTMS終了後も持続する効果(after effect)を誘発しなければならない。この点を検討するために、SEP(文献5)、ABR, VEPなどを用いて、運動野へのrTMS後に持続する効果を誘発できるかを研究した。1HZ,200発のrTMSにより、2時間位続く効果を誘発できた。さらに、PET、SPECTなども用いてafter effectについて検討している。以上により、rTMSは刺激終了後も時間単位で持続する効果を誘発できると結論した。
    以上の結果から、パーキンソン病にrTMSが効果を出す機序として、rTMS後に視床に持続する変化を誘発した(functional thalamotomy)可能性を考えた。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  77. 反復経頭蓋磁気刺激法の臨床応用への安全性の検討 1999 眞野 行生 北海道大学, 医学部, 教授 (20145882) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:経頭蓋磁気刺激を与えると、神経系の機能に変化を与えることが観察されるようになり、反復経頭蓋磁気刺激法(rTMS)が中枢神経疾患の治療に用いられようとしている。そこで、rTMSの安全でかつ有効な投与法の検討が、求められている。これまで副作用として痙攣や機能異常、脳波上の異常波の誘発などの指摘がある。これらの研究は世界的規模で行われており、国内、国外の治験の集積により、より有効でかつ安全な施行方法を追求する、反復経頭蓋磁気刺激法(rTMS)の臨床応用を検討する国際会議を開催した。
    本シンポジウムの目的はrTMSのヒトへの応用での安全性と効果であり、またそのメカニズムの解明である。シンポジウムでの結果をまとめると、rTMSでは大脳皮質の興奮と抑制をひきおこしている。rTMSで大脳の局所を刺激した時に、その反応は局所にとどまらず、経シナプス的に他部位に強い影響を及ぼす。また脳の再構築にはその闘値などの関与がある。最近低頻度rTMSが使われ始めているが、高頻度rTMSとその作用機構に質の差があることが示唆された。さらに、ヒトへの治療の応用にあたって、安全域の設定には慎重である必要があり、危険をよく知り、動物実験などの結果も重視する必要があると思われた。うつ病への応用にあたって、電気痙攣療法(ECT)を受けている患者さんにとっては、意識消失、痙攣、記憶障害などのETCの副作用を本法はさけれるため、rTMSの方がより安全であると思われる。刺激最適部位といわれる前前頭野の左右にbalance theoryが存在し大脳の左右への刺激の効果には差があると議論された。
    パーキンソン病(PD)へのrTMSの応用では、PDではうつ症状がよくなればQOLはかなり改善するといわれており、rTMSの抗うつ作用が改善に一定の役割をしていると考えられる。PDでの治療では刺激部位が運動野と前前頭野での差はあるのか、あるいは大脳への刺激が経シナプス的に基底核に影響を及ぼしているのかがさらに解明されれば、rTMSはさらに発展すると思われた。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  78. 経頭蓋的高頻度磁気刺激の安全性と作用機序に関する基礎的研究 1999 – 2001 滝川 守国 鹿児島大学, 医学部, 教授 (70041423) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:精神科領域における磁気刺激療法は臨床応用が先行し、基礎的研究とその安全性、特に高頻度磁気刺激(rTMS)に関しては試行錯誤の段階が現状である。精神科に置ける電気ショック療法の歴史がその治療機序が解明されないまま、ただ臨床に効果的であるとの理由で実施されてきた。このような理論に裏付けのないrTMS療法とならないよう本研究では以下のように実施した。
    (1)動物実験に本法を適用し脳にrTMSがいかなる影響を及ぼすかを検討した。
    (2)次に臨床に置いて健常コントロール群にrTMSが及ぼす作用をこの3年間において検討し、その結果は国際誌に掲載された。
    まず、rTMSの反復刺激によりラット脳におけるc-Fos発現を分子生物学的に検討した。その結果は、神経活動変化を反映するc-Fosは、脳内の広範囲の部位に出現するが電気ショックと比べて線条体に有意に多くc-Fosが出現するという興味ある結果を得た。
    次にrTMSの脳機能に与える光誘発電位法(VEP)で経時的に調べた。
    その結果、家兎対側後頭葉のYEPは潜時(N_2,P_2成分)は短縮しその振幅は有意に増大した。このことは、rTMSの反復刺激は脳に新しい神経回路網すなわち脳の可塑性が形成されることが判明した。また、反復rTMSはヒト脳波を指標として調べた。その結果、健常コントロール群の刺激部位の周辺の脳波周波数が1Hz以上早い周波数に刺激後の2分間位ではみられた。
    このことはヒトにrTMSで治療する場合、刺激後数分間は脳機能を活性化するので、その間は異常脳波の出現に注意すべきであることが示唆された。
    上記の結果は、rTMSが脳に新しい可塑性を生じることを意味し、また、rTMS後、短時間で脳を活性化することからrTMSの精神科領域への新しい治療法となることが示唆された。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  79. 反復経頭蓋磁気刺激法のリハビリテーション医学への応用 1998 – 1999 真野 行生 北海道大学, 医学部, 教授 (20145882) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:平成10年度には、経頭蓋磁気刺激法(rTMS)法の安全性を検討する目的で、行動学的に分析した。32匹の正常マウスと31匹のcytosine arabinosideを注射した運動失調マウスを対象とした。週5回3週間、運動皮質閾値の130%の強度でrTMSを施行した。A群(正常11匹、失調マウス10匹)では、10Hz刺激を10秒間与えた。B群(正常11匹、失調マウス10匹)では、3Hzを60秒間与えた。C群(正常10匹、失調マウス11匹)には磁気刺激を与えなかった。オープンフィールド法で、運動回数と転倒率を測定した。失調群は対照群に比べ有意に運動回数が低下した(p<0.05)。rTMSは対照群でも失調群でもこの運動回数に影響しなかった。転倒率は、失調A群(10Hz×10秒)では平均36%の転倒率で、磁気刺激をしない失調C群(59%)に比べ有意の低下を示した(p<0.05)。長期効果は認めなかった。また、B群(3Hz×60秒)は、非刺激C群との差違を認めなかった。以上、失調マウスに対する反復経頭蓋磁気刺激の治療効果を確認した。
    平成11年度には、大学の倫理委員会の承認を得て、rTMSを、薬物療法、運動療法、心理療法などで充分な効果がなく、意欲が下十分であった6名のパーキンソニズム、不随意運動を呈する患者に試みた。rTMSのパラメーターは低頻度(0.3Hz)、30回を1日2回、刺激強度は運動閾値の110〜120%、一週間に5日間で2週間、平円形コイルを用いて行った。1例の脳波モニターで一側大脳にrTMS時に3Hzのslow waveが出現し、長くrTMSを続けるとそれは延長する傾向があった。日をかえて同様なslow waveを認めたため、以後この症例へのrTMSは中止した。臨床症状の改善は除外した1例を除く5例中4例にみられた。改善内容ではうつスケールは3例に、パーキンソン病スコア(UPDRS)は2例で改善、痴呆を呈した1例では長谷川式痴呆スケールでの著明な改善があった。UPDRSでの改善では抑うつ、意欲などの改善は著明であり、運動機能評価も軽度〜中等度の改善を認めた。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  80. 運動失調症に対するリハビリテーションの研究(磁気刺激を用いた研究) 1998 – 1999 中馬 孝容 北海道大学, 医学部, 助手 (70281805) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:平成10年度は、うつ症状に効果があるといわれている経頭蓋反復磁気刺激(rTMS)の安全性について正常マウスを用いて検討し、臨床応用への可能性について検討した。rTMSを10Hz、100回投与群と3Hz、180回投与群とrTMS非投与群の3群に分け、各群に刺激閾値の130%、90%の2種類の刺激強度で磁気刺激を行い、学習・記憶能への影響について検討した。学習.記憶能の検討には、Morris水迷路試験を用いた。結果は、rTMS投与した群では、一過性に影響がみられるものの、記憶の保持には影響はみられなかった。また、実験中にけいれんがみられたマウスはいなかった。rTMSは、磁気刺激の強度、頻度、回数、一連の反復刺激を繰り返す回数を検討することにより、安全に臨床応用が行なうことができると考えられた。
    平成11年度は、健常者に反復磁気刺激を行ない、臨床応用について検討した。上腕二頭筋を磁気刺激し、筋収縮パターンを記録し、収縮時間、弛緩半減時間を測定した。次に、50Hz、0.5秒間の反復磁気刺激を行ない、強縮性収縮を起こさせ、その前後にて単収縮を行なった時の筋収縮パターンにおける張力の変化について検討した。結果は、男性では出力50%の時に張力比は最大に達し、女性では出力70%の時に最大に達した。収縮時間では男女差はみられなかったが、弛緩半減時間では女性の方が有位に長く、これは、slow twitsh unitとfast twitch unitの比率が男女間で差が見られるためと考えられた。強縮性収縮前後での単収縮の張力比は、男女ともに反復磁気刺激後において単収縮の張力は増大していたが、これは男性においてより増大傾向であった。この現象は、Post-tetanic potentiationを示していると考えられた。連続磁気刺激は、ヒトの近位筋の生理学的解析に有用な方法であり、臨床応用に発展させることができると考えられた。 研究成果の概要:研究実績の概要:

ニューロモジュレーション、反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)などについて

ニューロモジュレーションとは

  • 電気・磁気刺激や薬剤を用いて神経活動を改善させる治療法
  • 反復経頭蓋磁気刺激療法(repetitive transcranial magnetic stimulation:rTMS)
  • ディープ経頭蓋磁気刺激療法(deep TMS)(H-coilを用いる)
  • 磁気けいれん療法(magnetic seizure therapy:MST)
  1. 治療抵抗性うつ病に対するニューロモデュレーションの可能性 野田 賀大 慶應義塾大学医学部精神・神経科学教室精神病態生理学研究室  特集 定型的な薬物療法に行き詰まったときの新たな治療戦略―難治性精神症状への挑戦― 精神神経学雑誌 122: 456-462, 2020

rTMS療法とは

脳の背外側前頭前野(記憶、認知、意欲、判断などに関連する部分)を磁気によって刺激する治療法。日本では2019年に、治療抵抗性うつ病に対する治療法として薬事承認。双極性障害など他の精神疾患に対する有効性および安全性の検討もなされている。

  1. rTMS療法で禁煙継続率高まる 2021年10月19日 17:38 MedicalTribune