多変量解析に関する入門書 お勧め、定番、超初心者向けなど

医学研究を進めるうえで医療統計学の知識、特に多変量解析の知識が欠かせません。SPSSなどのソフトにただデータを入れれば、何かしらの結果は出ますが、それだと結果の解釈の段階で途方にくれてしまいます。やはり多変量解析の原理的な部分を抑えておく必要があるでしょう。どれだけ数学的なバックグラウンドがあるか、数学的な原理から理解したいという動機があるかによって、お勧めの教科書は変わってきます。

一口に多変量解析の教科書といっても、対象とする読者は数学的な原理はともかく使えればいい人、定理の厳密な証明はいいけど数学的な基礎はある程度理解しておきたい人、仕事ですぐに使いたい人、統計学を勉強中の理系大学生・大学院生、勉強する時間があまり取れない実務に携わる多忙な社会人など様々なので、自分が想定された読者なのかどうかを判断する必要があります。

線形代数がメインの書籍はまた別記事にします。

→ 多変量解析を理解するための線形代数の教科書

Rによる多変量解析入門

川端 一光, 岩間 徳兼, 鈴木 雅之『Rによる多変量解析入門 データ分析の実践と理論』オーム社  July 19, 2018

手元にデータがあってすぐに分析をしたい人にピッタリの本。理論的な説明はないかわりに、結果の解釈の際の注意事項の説明が詳細。説明の順番は、データの解析、結果、解釈や数学的な理屈の順になっています。Rそのものに関しては紙面をあまり割いていないので、pythonで勉強したい人にとっても紙面が無駄になっておらず、ためになります。数学的な理屈に関してはおいおい勉強するとして、とりあえず仕事ですぐに多変量解析をやらなきゃいけない人にとってはベストの教科書ではないでしょうか。

出版社の書籍紹介によれば、

多くの多変量解析についての学習書は、理論的な説明に終始し、実務場面でどのように利用されているかについて、殆ど配慮がないのが現状です。そこで本書は、多変量解析手法の理論と実践をバランスよく解説することで、統計が得意ではない大学生や実務者にも利用しやすい構成とし、本書1冊で多変量解析手法を実務に応用できるまで習得できる内容となっています。

とのことですが、看板に偽りなしです。目次は、以下の通り。

第Ⅰ部 多変量解析の基礎
第1章 多変量解析の基礎を学びたい―R による多変量データの基本的な統計処理
第2章 R によるデータハンドリングを学びたい ―アンケートデータと ID-POS データのハンドリング
第Ⅱ部 量的変数の説明・予測
第3章 現象を説明・予測する統計モデルを作りたい (1) ―重回帰分析
第4章 現象を説明・予測する統計モデルを作りたい (2) ―階層的重回帰分析
第5章 さまざまな集団から得られたデータを分析したい―マルチレベルモデル
第6章 複雑な仮説を統計モデルとして表したい (1)―パス解析
第Ⅲ部 心理尺度の分析
第7章 心理尺度を開発したい (1) ―探索的因子分析
第8章 心理尺度を開発したい (2) ―確認的因子分析
第9章 複雑な仮説を統計モデルとして表したい (2) ―潜在変数を伴うパス解析
第Ⅳ部 質的変数の説明・予測
第10章 クロス集計表をもっとていねいに分析したい―対数線形モデル
第11章 カテゴリに所属する確率を説明・予測したい―ロジスティック回帰分析
第Ⅴ部 個体と変数の分類
第12章 似たもの同士にグループ分けしたい―クラスター分析
第13章 質的変数間の連関を視覚化したい―コレスポンデンス分析
第Ⅵ部 多変量解析を使いこなす
第14章 データが持つ情報を視覚化したい―パッケージggplot2による描画
第15章 多変量解析を実践で生かしたい―手法の組み合わせ

 

多変量解析入門

小西 貞則『多変量解析入門――線形から非線形へ』January 27, 2010 岩波書店

目次

  1. 1 はじめに 1.1 現象のモデル化 1.2 識別・判別 1.3 次元圧縮 1.4 分類
  2. 2 線形回帰モデル 2.1 2変数間の関係を捉える 2.2 多変数間の関係を捉える
  3. 3 非線形回帰モデル 3.1 現象のモデル化 3.2 基底関数に基づくモデル 3.3 基底展開法 3.4 正則化法
  4. 4 ロジスティック回帰モデル 4.1 リスク予測モデル 4.2 複合リスク予測モデル 4.3 非線形ロジスティック回帰モデル
  5. 5 モデル評価基準 5.1 予測誤差に基づく評価基準 5.2 情報量基準 5.3 ベイズ型モデル評価基準
  6. 6 判別分析 6.1 フィッシャーの線形判別 6.2 マハラノビス距離に基づく判別法 6.3 多群判別 6.4 変数選択 6.5 正準判別
  7. 7 ベイズ判別 7.1 ベイズの定理 7.2 ベイズ判別法 7.3 ロジスティック判別
  8. 8 サポートベクターマシーン 8.1 分離超平面の構成 8.2 線形分離可能でない場合のテクニック 8.3 線形から非線形へ
  9. 9 主成分分析 9.1 主成分の構成 9.2 カーネル主成分分析
  10. 10 クラスター分析 10.1 階層的分類法 10.2 非階層的分類法 10.3 混合分布モデル
  11. 付録A ブートストラップ法 付録B ラグランジュの未定乗数法 付録C EMアルゴリズム

著者の略歴は、広島大学理学部数学科卒、文部省統計数理研究所を経て九州大学大学院数理学研究院教授。専門は,非線形多変量解析,情報量統計学(岩波書店)。

アマゾンのレビューを読むと、データから数理モデルを組み立てるというアプローチとして多変量解析が解説されている、モデルを線形から非線形に拡張するように丁寧な議論となっていて、特にSVMの解説は分かりやすい、数式は多いが、出てくる数式や式展開は、パターン化していてしかも数学的な説明が丁寧なので、読みやすく大変理解しやすいとのこと。

 

多変量解析法入門

永田 靖, 棟近 雅彦『多変量解析法入門』 (ライブラリ新数学大系) サイエンス社 April 1, 2001

アマゾンのレビューを読む限り、数学が苦手な人でも追えるような丁寧さで、数式によって説明を進めているそう。目次は、

  1. 1 多変量解析法とは 1.1 多変量データ 1.2 重回帰分析とは 1.3 数量化1類とは 1.4 判別分析とは 1.5 数量化2類とは 1.6 主成分分析とは 1.7 数量化3類とは 1.8 多次元尺度構成法とは 1.9 クラスター分析とは
  2. 2 統計的方法の基礎知識 2.1 データのまとめ方 2.2 確率分布 2.3 検定と推定 練習問題
  3. 3 線形代数のまとめ 3.1 行列とベクトル 3.2 固有値と固有ベクトル 3.3 ベクトルによる微分 3.4 変数ベクトルによる期待値と分散・共分散 練習問題
  4. 4 単回帰分析 4.1 適用例と解析ストーリー 4.2 解析方法 4.3 行列とベクトルによる表現 練習問題
  5. 5 重回帰分析 5.1 適用例と解析ストーリー 5.2 説明変数が2個の場合の解析方法 5.3 説明変数がp個の場合の解析方法 5.4 行列とベクトルによる表現 練習問題
  6. 6 数量化1類 6.1 適用例と解析ストーリー 6.2 説明変数が1個の場合の解析方法 6.3 説明変数が2個以上の場合の解析方法 6.4 説明変数に量的変数と質的変数が混在する場合 練習問題
  7. 7 判別分析 7.1 適用例と解析ストーリー 7.2 変数が1個の場合の解析方法 7.3 変数が2個以上の場合の解析方法 7.4 行列とベクトルによる表現 練習問題
  8. 8 数量化2類 8.1 適用例と解析ストーリー 8.2 説明変数が1個の場合の解析方法 8.3 説明変数が2個以上の場合の解析方法 8.4 説明変数に量的変数と質的変数が混在する場合
  9. 9 主成分分析 9.1 適用例と解析ストーリー 9.2 説明変数が2個の場合の解析方法 9.3 説明変数がp個の場合の解析方法 9.4 行列とベクトルによる表現
  10. 10 数量化3類 10.1 適用例と解析ストーリー 10.2 数量化3類の基本的な考え方と解析方法 練習問題
  11. 11 多次元尺度構成法 11.1 適用例と解析ストーリー 11.2 非計量MDSの解析方法 11.3 計量MDSの考え方 練習問題
  12. 12 クラスター分析 12.1 適用例と解析ストーリー 12.2 変数が2個の場合のクラスター分析 12.3 変数がp個の場合のクラスター分析 12.4 クラスター間の距離 12.5 ウォード法 練習問題
  13. 13 その他の方法 13.1 パス解析 13.2 グラフィカルモデリング 13.3 因子分析 13.4 正準相関分析 13.5 多段層別分析 練習問題

 

多変量データ解析

杉山 高一 (著), 小椋 透 (著), 藤越 康祝『多変量データ解析』 (シリーズ“多変量データの統計科学”)  朝倉書店  November 25, 2014

出版社の説明によれば、

シグマ記号さえ使わずに平易に多変量解析を解説する」という方針で書かれた’83年刊のロングセラー入門書に,因子分析正準相関分析の2章および数理的補足を加えて全面的に改訂。主成分分析,判別分析,重回帰分析を含め基礎を確立。

とのこと。数学恐怖症の人向けのようです。

もくじ

  1. 1 相関係数 1.1 成績データの相関係数 1.2 手のデータの相関係数 1.3 相関係数の安定性 1.4 分散と共分散 1.5 数理的補足–相関係数
  2. 2 主成分分析 2.1 主成分分析とは 2.2 共分散行列による主成分分析–手のデータ 2.3 相関行列による主成分分析(1) –成績のデータ 2.4 相関行列による主成分分析(2)–被服のデータ 2.5 因子負荷量–漢字テストの分析 2.6 歯の咬耗度に基づく主成分分析 2.7 主成分スコア低次元空間表現 2.8 主成分軸の回転 2.9 固有値の信頼区間 2.10 固有ベクトルの信頼性 2.11 数理的補足–主成分分析
  3. 3 判別分析 3.1 判別分析とは 3.2 マハラノビスの距離 3.3 判別分析の考え方 3.4 2変量の判別分析 3.5 線形判別関数 3.6 多変量の判別分析–筆跡鑑定のデータ 3.7 変数選択による判別分析–逐次法(1) 3.8 変数選択による判別分析–逐次法(2) 3.9 変数選択による判別分析–AIC 規準・誤判別確率 3.10 線形判別分析の頑健性 3.11 逐次法における規準値とAIC 規準 3.12 数理的補足–判別分析
  4. 4 重回帰分析 4.1 重回帰式とは 4.2 1変数の場合の回帰式 4.3 2変数の回帰分析 4.4 残差分散, 重相関係数 4.5 回帰係数の信頼区間 4.6 多重共線性 4.7 説明変数の選択–逐次法 4.8 説明変数の選択–AIC とCp 4.9 逐次法における規準値とAIC 規準 4.10 主成分回帰 4.11 偏相関係数 4.12 数理的補足–重回帰分析
  5. 5 因子分析 5.1 因子分析とは 5.2 因子分析モデルと回転 5.3 推測法 5.4 白人の手のデータ 5.5 数理的補足–因子分析
  6. 6 正準相関分析 6.1 正準相関とは 6.2 正準相関–成績のデータ 6.3 寄与率と次元 6.4 正準相関分析–歯の咬耗度データ 6.5 正準相関の安定性 6.6 数理的補足–正準相関
  7. A 行列・固有値 A.1 行列 A.2 多変量データと基礎統計量の行列表示 A.3 行列式と逆行列 A.4 固有値・固有ベクトル
  8. B 多変量分布 B.1 身長の分布と正規分布 B.2 2次元正規分布 B.3 数理的補足–多変量正規分布