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消化菅の発生 講義

消化菅の発生 講義動画

  1. Development of the Abdominal Organs > Early Gastrointestinal Development https://app.lecturio.com/#/article/3869 Lecturioのビデオです。

内胚葉と臓側中胚葉(側板中胚葉の内臓側の部分)との相互作用による消化器官の発生

消化管の粘膜上皮細胞は内胚葉由来ですが、それより下側の層は中胚葉に由来しており、消化菅は内胚葉と中胚葉との相互作用によって発生・分化します。その際、発生において重要な中胚葉は、側板中胚葉です。それも、側板中胚葉の臓側板(臓側中胚葉、splanchnic mesoderm)が主に関与します。 内胚葉は、消化管そのものの内壁、つまり上皮組織を形成しますが、胃や腸などの腺組織(例: 肝臓や膵臓)も内胚葉由来です(もちろん腺の周囲の部分は中胚葉が貢献)。 中胚葉(側板中胚葉)は、消化管を取り囲む結合組織、平滑筋、血管、リンパ管などを形成します。 臓側中胚葉は細胞間のシグナル伝達(例: FGF、BMP、SHH など)を通じて内胚葉の分化を促進します。

胆嚢の働き

肝臓で作られた胆汁は胆管に分泌されます(外分泌)。胆汁の成分は、ビリルビン、コレステロール、胆汁酸塩などで、およそ90パーセントは水分ですが、胆のうに溜められている間に水分が吸いとられ、5〜10倍に濃縮されるそうです。(参考:胆のう 中外製薬

科研費はどのように審査されているのか

科研費がどのように審査されるのかは、審査委員にしかわからないということはありません。ある程度は情報が公開されています。

応募者のこれまでの実績だけで判断するのではなく、応募者が研究計画調書に記載した内容に基づいて、学術的独自性、創造性、実行可能性、研究目的の明確さ等を評価する。https://www.jsps.go.jp/file/storage/kaken_g_1860/r6_siryou2.pdf

上の文書では、わざわざ「実績だけで判断するのではなく、」とくぎを刺していますが、自分が知り合いに訊いて回った限り、年配の審査委員経験者は「業績が無いと‥」という人もいますが、年齢が若い研究者ほど「業績はあまり気にしない」と言っているような気がします。

評定要素以外の要素(審査区分、所属機関、年齢など)で採否を判断してはいけない。https://www.jsps.go.jp/file/storage/kaken_g_1860/r6_siryou2.pdf

ネットの匿名掲示板などで、東大、京大を始めとする有力大学のラボの方が科研費は通りやすいといった悲観的な地方大学・私立大学の研究者の書き込みを見たことがありますが、「所属機関で採否を判断してはいけない」と注意書きがありますので、それはないと思います。有力ラボが科研費に採択されやすい理由は、彼らは先輩研究者らがみな科研費の採択経験が豊富なので、研究計画調書の書き方に関するノウハウが蓄積されていてそれが新人の研究者にも伝わっているからなんじゃないかと勝手に想像しています。もしくは、優秀な人たちしか入れないラボだからということかもしれません。

審査委員は研究計画調書を読んでそれぞれに、「総合評価」として4,3,2,1点のいずれかを付けます。その際、絶対評価ではなく相対評価でつけることになっています。自分が割り当てられた小調書の数の10%が4,20%が3,40%が2,30%が1となるように割り振らないといけません。4が最高点、1が最低点です。(下のnote.comの記事参照)

  1. 審査する側で科研費申請を考える 2024年8月3日 19:44  note.com

課題の意義の大きさ、研究計画の具体性、申請者の遂行能力と環境といった評点の項目ごとにも点数がつけられますが、こちらは絶対評価で4点満点です。面白いのは、それぞれの項目につけた点数と総合評価は必ずしも連動してなくていいという点です。

審査にあたり、高い総合評点を付す研究課題は、必ずしも、全ての個別要素において高
い評価を得た研究課題である必要はありません。

研究分野の特性など、学術研究の多様性に配慮しつつ、幅広く重要な研究を見いだし、学
術研究が進展するよう、適切な評価を行ってください。https://www.jsps.go.jp/file/storage/grants/j-grantsinaid/01_seido/03_shinsa/data/h30/h30hyoutei03_ja_general.pdf

JSPSが定めた個別要素が必ずしもあらゆる研究分野にぴったりマッチするものでもないでしょうから、個別要素での評点と総合点はズレてもいいんですよということのようです。「研究分野の特性など、学術研究の多様性」があるので、臨機応変にお願いということなのでしょう。実際、自分は知り合いの研究者で不採択だった人で、各評点は採択者の平均を全て上回っていたのになぜか落ちたとぼやいていた例を知っています。そんなこともあるんだとビックリでした。まあかなり稀な例なのでしょうが。採択された人には審査結果は開示されないので、採択されたときの評点の分布というのは誰にも知り得ないことです。

基盤研究などは「二段階審査」方式がとられています。1次審査のときに申請書に対してコメントを記入する場所があり、2次審査では他人のコメントが読めます。

科研費の審査は「書面審査を行った審査委員」が、他の審査委員の審査意見等を参照し、自身の審査内容を再検討できる審査システムとなっています。https://www.jsps.go.jp/file/storage/kaken_g_1860/r6_siryou2.pdf

【1段階目の審査における審査意見の記入】
1段階目の審査においては、全ての研究課題の「審査意見」欄に、当該研究課題の長所と短所を中心とした審査意見を必ず記入してください。なお、2段階目の審査では審査意見を付す必要はありません。この審査意見は、2段階目の審査において新たな総合評点を付す際に、各審査委員が研究課題への理解をより深めるために、他の審査委員に提示します。https://www.jsps.go.jp/file/storage/kaken_01_03_shinsahyoutei_2024-1/r6hyoutei03_ja_wakate.pdf

聞いたところによれば、2次審査に回るのは1次審査の調書全部ではなく、一部だそうです。おそらくですが、ボーダーライン上のものや、審査委員によって意見が大きく割れたものなどが2次審査に回るのではないかと思います。その際、審査委員は他人のコメントが読めるので、考え直す機会があるということのようです。(下の公開資料参照)

〔2段階目の審査における総合評点〕
1段階目の書面審査の結果に基づき2段階目の審査対象となった各研究課題の採択について、上記(1)~(3)の評定要素に着目しつつ、同じ研究課題の審査をしている全ての審査委員が付した審査意見等も確認し、総合的な判断の上、下表右欄に基づき別途示される評点分布に従って4段階評価を行い、総合評点を付してください。
なお、2段階目の審査対象とする研究課題を設定するにあたっては、1段階目の書面審査の結果における順位が採択予定件数付近にある研究課題のほか、一部の審査委員が極端に低い評点を付した研究課題についても考慮しています。https://www.jsps.go.jp/file/storage/kaken_01_03_shinsahyoutei_2024-1/r6hyoutei03_ja_wakate.pdf

審査委員にはコメントを書く手間があるというのは結構重要なポイントだと自分は思っています。何回読み返しても何が書かれていたのかが理解しにくい研究計画調書は、コメントが書きにくいわけで、印象を大きく下げることでしょう。研究目的、長所、短所が書きやすい申請書に仕上げるという意識も大事だと思います。研究目的や研究方法が一言で完結に表現できるほうが、コメントは書きやすいはず。審査委員がコメントを書くのに困って考えこむような申請書では採択はおぼつかないでしょう。

ちなみにコメントは200字程度(300字が上限)らしいです。

研究課題の長所や短所など) をシステム上の『審査意見欄に200字程度で記入してください(システム上の. 『審査意見』欄は、最大300字まで入力が可能です)。

令 和 4 ( 2 0 2 2 ) 年 度 科 学 研 究 費 助 成 事 業 基盤研究( … (グーグル検索結果)

研究医への道:研究医を養成する制度・大学入試に受験制度がある大学

研究医養成に関しては、過去に国を挙げての助成事業もあったようです。

  1. 基礎研究医養成活性化プログラム(令和3年度選定)文部科学省 申請件数:6件、選定件数:2件
    1. 金沢大学 秋田大学、金沢医科大学 医歯工法連携による次代の法医学者およ び地域関連人材の養成
    2. 滋賀医科大学 京都府立医科大学,大阪医 科薬科大学 地域で活躍するForensic Generalist, Specialistの育成
  2. 基礎研究医養成活性化プログラム(平成29年度選定)文部科学省 申請件数:20件 選定件数5件【国立4件、公立1件】
    1. 筑波大学 自治医科大学、獨協医科大学 病理専門医資格を担保した基礎研究医育成
    2. 千葉大学 群馬大学、山梨大学 病理・法医学教育イノベーションハブの構築
    3. 東京大学 福島県立医科大学、順天堂大学 福島関東病理法医連携プログラム「つなぐ」
    4. 名古屋大学 名古屋市立大学、岐阜大学、三重大学、浜松医 科大学、愛知医科大学 人体を統合的に理解できる基礎研究医の養成
    5. 横浜市立大学 琉球大学、北里大学、龍谷大学 実践力と研究力を備えた法医学者育成事業

 

国からの助成はともかくとして、研究医養成コースを用意している大学がいくつか目につきますが、なかでも神戸大学の学部を一度休学して大学院に入るというシステムにはぶったまげました。苦心の策というか、こんなことやっていいのか?とう驚きもあります。

神戸大学医学部 基礎・臨床融合による基礎医学研究医の養成プログラム

MD-PhD コース 4年次か5年次で医学部医学科を一旦休学して、飛び入学で大学院博士課程へ進み、若い時期での学位取得を可能にします。 早期に研究を開始し、医学医療の急速な進歩や社会的要請に対応できる医学研究者を育成することを目的としたコースです。

基礎・臨床融合による基礎医学研究医の養成プログラム 真のクリニシャン・サイエンティストを目指せ! https://www.med.kobe-u.ac.jp/kiso/index.html

  1. 基礎・臨床融合による基礎医学研究医の養成プログラム 真のクリニシャン・サイエンティストを目指せ! 55ページPDF
  2. 2023年 神戸大学リトリート~基礎・臨床融合による基礎医学研究医の養成プログラム研修会~
  3. 「基礎・臨床を両輪とした医学教育改革によるグローバルな医師養成」事業結果報告書 (PDF) 仮説を立て論理的に実証する科学的思考法を修得させる研究教育を取り入れている

順天堂大学 医学部 研究医特別選抜

2025年入試 定員2名(増員予定)

募集要項 https://www.juntendo.ac.jp/assets/2025_JuntendoMed_NyugakuShikenYoukou_Ippan.pdf

慶應義塾大学 医学部 研究医養成プログラム(MD-PhDコース)

医学部医学科6年+大学院医学研究科博士課程3年の合計9年間のプログラムになっています。医学部医学科第3学年より、学部の講義・実習に加え、大学院医学研究科博士課程講義を受講し、第3学年9月から第4学年7月にかけて研究室に配属され、研究をおこないます。医学部卒業と同時に、大学院に入学し、3年間で学位取得します。https://www.med.keio.ac.jp/education/md-phd/index.html

研究医の必要性・研究医に進む医師の割合

東大医学部の場合、研究者の道に進む医師の割合は、近年では1986年がピークで、約100人の卒業生のうち約2割という状況。ところが、その後は減少し、私が医学部長に就任した2007年度前後には年に1、2人にとどまっていました。

研究医不足は10年後、20年後の日本の医療にとって危機

米国には、MSTP(Medical Scientist Training Program)という、NIHと各大学が半分ずつ資金を出し合い、協力して研究医を育成するプログラムがあります。

教員は医学生にとって一番近い存在。「研究は面白い」という姿を見せ、いい成果を出す。研究の魅力を伝えることが大切です。

研究医がいなくなれば、大学の基礎医学教育が崩壊するだけでなく、医薬品や医療機器の産業にも影響が及ぶことは目に見えています。

https://www.m3.com/news/open/iryoishin/663312

研究医という生き方と医学部の学生の心理

  • 医学部に入学した学生のほとんどが臨床医を志して入学
  • 基礎医学の重要性を聞いてはいても、その実態は知らず、自分とは縁遠いものと捉えている。
  • 研究志向の学生であっても基礎研究者の道を選べば、比較的早い段階で実質的に臨床医の道が閉ざされてしまうと考え、将来に不安を感じるため取り敢えず臨床医の道を選び、そして研究もしようと考える
  • 神戸大学では多くの研究志向の学生は臨床に進み研究を行っている。
  • 本医学研究科の基礎系教員の中には、一度は臨床医の道に進み、研究も続けているうちに研究への魅力を感じ、基礎研究者への道に進路変更した人も少なからずいる。

国立大学医学部長会議 全国の医学部における研究医養成の取り組み *第19回*  (H25.9.19UP) 神戸大学における基礎医学研究医養成の取組み 文責:神戸大学医学部医学部医学科長  https://www.chnmsj.jp/kenkyuui_torikumi19.html

フィジシャンサイエンティスト(研究医)という生き方について

豊原 臨床と基礎研究の両方に携わっていると,近年は基礎研究の知見が迅速に臨床応用されていることを実感できます。臨床と基礎研究それぞれの経験を他方に生かせれば,双方がより興味深く感じられモチベーションが高まります。ベッドサイドとベンチサイドの双方をつなげることがフィジシャンサイエンティストの理想の姿です。

豊原 関係が見えなかった点と点がいつの間にかつながって,異なる臓器や異なる分野,そして予想だにしない全く別の発見につながることも基礎研究の大きな魅力です。また,フィジシャんサイエンティストとしての人生も「万事塞翁が馬」です。その時々それぞれの場所で,幅広い視野を持ちながら興味のあることに一生懸命取り組んでいるとひらけてくる世界があると思います。

https://www.igaku-shoin.co.jp/paper/archive/y2021/3435_01

臨床研修の必修化が医学部での基礎研究与えた影響について

  • 臨床研修の必修化によって、基礎医学に進む人材が激減している。
  • 1クラス100名の卒業生の中で、卒後すぐに研究をめざす者は多くて1?2名で、0名という医学部も少なくないのではないか。
  • 大学の講座の約半数は基礎医学なのに、これほど少ない人材でどのように研究を賄ってきたかというと、それは臨床医学からの供給に頼っていた
  • 多くの研修医は症例の豊富な大学外の市中病院での研修を希望し、大学からは若手が姿を消して、臨床講座ですら深刻な労働力不足に陥り、そのツケは末端である基礎講座に押し寄せ、基礎講座には大学院生は来なくなった
  • 毎年数名の新入生のうち、おおよそ半数は医学部出身者だったのが、研修必修化が始まってから2年間はひとりも医学部から大学院生が来ない

https://nakayama-lab.org/message/message3/m02/

臨床研修の必修化が医学部教育に与える影響について

(医学部教育で身につくもの)

医学部で受ける教育というのは並大抵のものではない。まず解剖学(=正常構造)や生理学(=正常機能)を習い、その異常としての病理学(=異常構造)や臨床医学(=異常機能)を習う。つまり人間というひとつの生物に関して、構造・機能についての正常・異常をありとあらゆる角度から6年間にわたって徹底的に叩き込まれる。その結果、人間という生物に対して「個体レベルでの理解」が感覚的に芽生えてくる。これは他学部の人には絶対にない感覚で、それを独学で学ぶことはまず不可能であるし、私は医学部を出ていないのにこの感覚を身につけている人に出会ったことがない。それは医学部6年間で得る知識の量が膨大なだけでなく、実際に解剖を行ったり、患者を診察したりしなければわかならないことばかりだからである。

  • このまま現在の状況がつづけば、基礎医学研究の世界から医学部出身者は払底する。当然、非医学部出身者が医学部の基礎講座の教官ポストを埋めることになるだろう。つまり医学教育を受けたことのない人たちによって医学教育が行われるようになる。
  • 医学教育を受けたことのない教官だけが明日の医学を担う若者の教育を行うことに対しては、以下の理由によって反対である。
  • 医学教育は6年かかり、他学部にくらべれば2年のまわり道ではあるが、この「人間個体レベルの理解」は、ライフサイエンスを行っていくうえで絶大な力を発揮する。それは当然医学教育に対しても同様である。

https://nakayama-lab.org/message/message3/m02/

医師の働き方改革が医学部での基礎研究に与える影響について

【豊田氏】総診療負担は変わらないと仮定しまして働き方改革をした場合,私が心配するのは,今,診療を中心にエフォートしている人材と,研究と診療と両方やっている人材があるわけですよね。診療を担っている人材が働き方改革で診療エフォートを縮小した場合にその余分の負担は誰がカバーするかということになるわけですが,研究と診療の両方を一生懸命やっている人たちがカバーしないといけないとなると,研究者の研究エフォートが減っちゃうわけです。私も若い頃は,毎日,午前様でやっていました。昼間は教育と診療をやりまして,夜に研究をやるわけですけど,毎日,午前様でやってきたわけですが,そういう研究と診療の両方をやっている先生方についても,そんなに夜遅くまでいるなということになりますと,さらに研究エフォートが減ると。そうしますと,働き方改革で臨床医学の研究力がかなり減る懸念があるんじゃないかなと,私自身は思っているわけです。これは何とか防がないといけない。

今後の今後の医学教育の在り方に関する検討会(第6回)議事録1.日時令和6年1月24日(水曜日)今後の医学教育の在り方に関する検討会(第6回)議事録1.日時令和6年1月24日(水曜日)16時00分 https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/koutou/124/gijiroku/mext_00003.html

血清療法は今でも使われているの?

論文 「動物におけるジフテリアと破傷風の血清療法について」1890年エミール・フォン・ベーリング(1901年ノーベル生理学医学賞)、北里柴三郎 von Behring E, Kitasato S. Ueber das Zustandekommender Diphtherie-Immunität und der Tetanus-Immunitätbei Thieren. Deutsche Medicininischen ochenschrift1890;49:1113-4.

血清療法とは、人工的に作られたポリクローナル抗体(ヒト、他の動物)を含む血清(抗毒素・抗血清とも呼ばれる)を投与して治療すること

当時、ドイツでは「破傷風菌の純粋培養は不可能である」というのが定説だったのです。北里はちょっとしたことをヒントに、破傷風菌が酸素を嫌う「嫌気性菌」であることを見抜いたのでした。さっそく北里は酸素を排除できる細菌培養装置を自作し、ついに1889年、破傷風菌の純粋培養に成功 https://www.serum-therapy.com/about/

  1. Remembering Emil von Behring: from Tetanus Treatment to Antibody Cooperation with Phagocytes Stefan H E Kaufmann 1, mBio. 2017 Feb 28;8(1):e00117-17. doi: 10.1128/mBio.00117-17 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5347343/
  2. Emil von Behring: translational medicine at the dawn of immunology Stefan H. E. Kaufmann (2017) https://cursos.peledigital.com/wp-content/uploads/2021/01/Emil-von-Behring-translational-medicine-at-the-dawn-of-immunology.pdf Emil von Behring (1854–1917) discovered passive immunization as an effective treatment for diphtheria and tetanus. Moreover, he brought this discovery from bench to bedside, and his serum therapy markedly reduced deaths from diphtheria — the ‘strangling angel of children’ — which at the time was feared as the deadliest disease of infants. Thus, together with Paul Ehrlich (1854–1915) and Elie Metchnikoff (1845–1916), he is considered one of the founders of immunology. With the subsequent introduction of vaccines and antibiotics, serum therapy left the limelight. However, the emergence of new pathogens with pandemic potential and antibiotic resistance has rekindled interest in serum therapy using tailormade monoclonal antibodies.
  3. A centennial review; the 1890 tetanus antitoxin paper of von Behring and Kitasato and the related developments S S Kantha 1 Affiliations  Keio J Med . 1991 Mar;40(1):35-9.  10.2302/kjm.40.35. https://www.jstage.jst.go.jp/article/kjm1952/40/1/40_1_35/_article

 

血清療法は今でも使われているの?

血清療法は現在でも特定の状況で使用されていますが、現代の医療では抗生物質やワクチンの普及により、その使用範囲は大きく制限されています。以下に、血清療法の現代での役割をまとめます。


1. 現在の血清療法の使用例

血清療法は、特定の毒素や病原体に対して即効性のある治療が必要な場合に利用されます。

ジフテリア

  • ジフテリア抗毒素(diphtheria antitoxin)は、現在もジフテリア患者に対して使用されることがあります。抗毒素は、病原体が分泌する毒素(ジフテリア毒素)を中和するために使用されます。
  • ただし、ワクチン(DPTワクチン)の普及により、ジフテリア自体の発生が非常に稀になり、抗毒素の使用は限定的です。

破傷風

  • 破傷風抗毒素(tetanus antitoxin)は、ワクチン未接種者が破傷風に罹患した場合や、予防的に使用されることがあります。

蛇毒や毒素中毒

  • 蛇毒抗毒素(antivenom)は、毒蛇に噛まれた際の治療に使われます。毒素を迅速に中和するため、血清療法が現在でも重要な治療手段です。

ウイルス感染症

  • 一部のウイルス感染症では、回復者血漿療法(recovered plasma therapy)が使用されます。
    • 例: 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)やエボラ出血熱において、一時的に回復者血漿が治療法として試みられました。
    • これは厳密には血清療法ではありませんが、抗体の利用という点で類似しています。

2. 血清療法が減少した理由

血清療法は過去に多くの病気で利用されていましたが、次の理由から使用頻度が減っています。

  1. 抗生物質の普及
    • 細菌感染症の治療には抗生物質がより効果的かつ安全です。
  2. ワクチンの開発
    • ジフテリアや破傷風など、多くの感染症はワクチンで予防可能になりました。
  3. 血清療法のリスク
    • 異種由来(例: 馬由来)の血清を使用する場合、アナフィラキシーや血清病(免疫反応による副作用)のリスクがあります。
    • ヒト由来血清療法では供給の難しさやコストの問題があります。
  4. モノクローナル抗体の台頭
    • 近年ではモノクローナル抗体(遺伝子組換え技術で作られる特異的抗体)が登場し、より安全で効率的な治療が可能になりました。

3. 血清療法の現代医学における位置づけ

血清療法は、次のような状況で依然として重要です:

  • 希少疾患や緊急事態: 毒蛇咬傷やジフテリアなどの緊急治療。
  • 新興感染症: ワクチンや他の治療法が利用できない場合の抗体療法。

血清療法の発展は現代医学の礎を築いたものであり、現在でも補完的な治療法として活用されています。ただし、現代の医療では他の治療法に取って代わられている分野が多いのが実情です。

(ChatGPT)

obeseマウスobとdiabtesマウスdbによるレプチンおよびレプチン受容体の発見の物語

レプチンの発見:仮説と検証

Douglas Coleman is recognized as the researcher who raised the hypothesis and predicted that a circulating satiety factor was lacking in the ob/ob mouse, and predicted that this factor acted at the hypothalamic level to modulate food intake. After three decades, in an attempt to identify the genes that were mutated in the ob/ob mouse, Jeffrey Friedman found that the ob gene encodes a protein hormone that reverses obesity and other abnormalities of this genetic rodent model of obesity.

From the conceptual basis to the discovery of leptin Biochimie Volume 94, Issue 10, October 2012, Pages 2065-2068 Biochimie Mini-review https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0300908412002635

obマウスとdbマウス

In the 1960s, Dad became interested in two strains of obese mice that arose out of The Jackson Laboratory breeding stocks: ob/ob and db/db. While both of these mice strains are always hungry (hyperphagia) and consequently massively obese, the ob and db mutations are located on different chromosomes.

Douglas L. Coleman, 1931–2014 Thomas R Coleman Diabetologia. 2014 Oct 7;57(12):2429–2430. doi: 10.1007/s00125-014-3393-7 

ob/obマウスと健常マウスとの血液を共有をさせた実験

ob/obマウスと健常マウスが血液を共有できるように手術してやると、ob/obマウスは摂食量が正常なレベルまで減少しました。この実験結果は、健常マウスには「もうご飯は十分食べたからこれ以上食べなくていいよ」という「満腹シグナル」が含まれていると考えられました。そしてob/obマウスにはこの「満腹シグナル」が存在していないが、「満腹シグナル」に対して応答することはできると思われます。

  •  One such means to link blood supplies involved surgically joining two mice by skin-to-skin anastomosis—a technique termed parabiosis.
  • pairing ob/ob with normal mice caused the ob/ob mice to reduce their food intake to that observed in the normal–normal pairing [].
  • This result suggested that the normal mice produce a blood-borne ‘satiety factor’ that could control obesity and that the ob/ob mice recognised and responded to this satiety factor.

https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4218972/

  1. Effects of parabiosis of obese with diabetes and normal mice. Coleman DL. Diabetologia. 1973;9:294–298. doi: 10.1007/BF01221857. [DOI] [PubMed] [Google Scholar]

 

db/dbマウスと健常マウスとの血液を共有をさせた実験

ob/obマウスを用いた実験とは全く異なる結果が、db/dbマウスの実験では得られました。db/dbマウスと健常マウスの血液を共有させてやったところ、db/dbマウスの食欲は落ちずに食べ過ぎて肥満のままだったのに対して、なぜか健常マウスのほうが食べるのをやめて餓死してしまったのです。これはどう解釈すればよいのでしょうか。実験したコールマンの解釈はこうでした。db/dbマウスでは「満腹シグナル」すなわちもう食べるのを止めなさいというシグナルは出ているが、それに対して応答することができなくなっている。なので、血液を共有した健常マウスは「もう食べるのを止めなさいという「満腹シグナル」を貰い続ける状態に陥った結果、食べなくなって餓死したというわけです。

When paired with normal mice, the db/db partners continued to gain weight, while the normal mice in each pair consistently died []. At necropsy, the normal mice lacked any food in their stomachs and had no glycogen in their livers: they had starved to death. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4218972/

  1. Effects of parabiosis of normal with genetically diabetic mice. Coleman DL, Hummel KP.  Am J Physiol. 1969;217:1298–1304. doi: 10.1152/ajplegacy.1969.217.5.1298. [DOI] [PubMed] [Google Scholar]

レビュー論文

  1. From the conceptual basis to the discovery of leptin Biochimie Volume 94, Issue 10, October 2012, Pages 2065-2068 Biochimie Mini-review https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0300908412002635
  2. A historical perspective on leptin Douglas L Coleman https://laskerfoundation.org/wp-content/uploads/2021/01/2010_b_coleman.pdf 変異マウスや健常マウスの皮膚を縫い合わせて血流を共有させた実験結果のまとめの図がわかりやすい。
  3. Lasker Lauds Leptin Jeffrey S. Flier1,2 jeffrey_flier@hms.harvard.edu ∙ Eleftheria Maratos-Flier2 emaratos@bidmc.harvard.edu Cell BenchMarksVolume 143, Issue 1p9-12October 01, 2010 https://www.cell.com/fulltext/S0092-8674(10)01069-X

原著論文

  1. Leptin and the regulation of body weight in mammals J M Friedman 1, J L Halaas Affiliations Expand PMID: 9796811 DOI: 10.1038/27376 Nature . 1998 Oct 22;395(6704):763-70. doi: 10.1038/27376.
  2. Identification and expression cloning of a leptin receptor, OB-R. Cell 83, 1263–1271 (1995). Tartaglia, L. A. et al. https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/0092867495901515?via%3Dihub

参考記事など

  1. 2012年ノーベル賞を予想する!~生理学医学賞その1~ 2012年09月16日 日本科学未来館 科学コミュニケーターブログ 糖尿病マウスと普通のマウスの血管を繋ぐ実験をしました。この方法では2匹のマウスの血液がお互いの体を流れるので、血液中に「何か」があれば、どちらかのマウスに何かしらの影響が出ると考えられます。Colemanさんは糖尿病マウスの症状が良くなるかどうかを調べようとしたのですが、予想外なことに普通のマウスは食べるのをやめてしまい、やせ細って死んでしまいました。

胎児を覆う膜、内蔵を覆う膜、神経系を覆う膜、人間の体の膜の発生的な起源のまとめ

人間には膜がたくさんあります。発生途上の胎児もいろいろな膜に包まれています。どの膜がどんな発生学的な起源を持っていたのかをフォローするのは難しいものです。とりあえず「膜」と名がつくものを列挙して、分類して、整理しておきます。発生学的に順を追って、いつどの段階でどこにできた膜に由来するのか、さらにどう小分類に分かれるのかという整理の仕方が一番忘れにくいと思います。

blastocyst cavity (blastocoele)

受精卵が卵割して桑実胚になり「外側』の細胞集団と「内側」の細胞集団の2種類にまずわかれます。外側の細胞は「栄養膜細胞 trophoblast」で、内側は「内部細胞塊」です。膜といえば、まだ着床前はゼリー層であるzona pellucidaにも囲まれています。これは着床前にhatchingでカラから出ることになります。

Human embryo day 5 label.jpg

https://embryology.med.unsw.edu.au/embryology/index.php?title=Blastocyst_Development

内部細胞塊はepiblastとhypoblastの2つの細胞集団に分かれ、epiblastの細胞集団の真ん中に空隙が出現しますが、これが羊膜腔(下の模式図の紫色の細胞の真ん中の濃い紫色の空間)です。

 

子宮内膜 endometrium

胚や胎児の図は全体像を省略していることが多いので、子宮の中における全体像を忘れがちです。

https://s3-us-west-2.amazonaws.com/courses-images-archive-read-only/wp-content/uploads/sites/403/2015/04/21031955/2905_Implantation.jpg

https://courses.lumenlearning.com/suny-ap2/chapter/embryonic-development/

Extraembryonic coelom

image

https://basicmedicalkey.com/placenta-and-extraembryonic-membranes/

羊膜腔 amniotic cavity

最後は胎児を包み込む膜になりますが、最初はまだただの細胞の塊の内部の空隙にすぎません。

human extraembryonic membranes

https://www.evolutionunderthemicroscope.com/homology18.html

羊膜 amnion

絨毛膜 chorion

胎盤で胎児の血液と母体の血液は交じり合いませんが、胎児の血管と母体の血液の間には絨毛膜が存在します。

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https://en.wikipedia.org/wiki/Fetal_membranes#/media/File:2909_Embryo_Week_3-02.jpg

漿膜 しょうまく serosa (発音:せろーさ)

漿膜は、器官の表面を覆う臓側葉と体壁内面を覆う壁側葉とに分類できる。漿液を分泌する。また臓器の位置に応じて、腹膜・胸膜・心膜に分類される。

腹膜 peritoneum(発音:ぺりとーにあむ)

下の動画は非常に丁寧に腹膜の説明をしてくれています。

Peritoneum tutorial The Noted Anatomist チャンネル登録者数 63.6万人

胸膜

心膜

 

髄膜

髄膜は、脳と脊髄を包んでいる結合組織性の膜であり、硬膜くも膜軟膜からなる。

滑膜は関節腔などの内面を覆い、滑液を分泌する

粘膜

外界に連絡している中空性器官(消化管など)の内腔を覆っていて、粘液を分泌する膜が粘膜である(小腸粘膜など)。

結膜

眼瞼の内面を覆う眼瞼結膜と眼球を覆う眼球結膜とがあるが、両者はつながって移行している。

筋膜

ALT (alanine aminotransferase), AST (aspartate aminotransferase)、その他のアミノ酸のアミノ基転移酵素

アミノ酸の主要な代謝は、脱アミノ基によって炭素骨格を利用したり、脱炭酸(脱カルボキシ基)によってアミンやその誘導体を合成したりすることです。

Aminotransferases (ATs) are pyridoxal 5′-phosphate–dependent enzymes that catalyze the transamination reactions between amino acid donor and keto acid acceptor substrates. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9309667/

脱アミノ基をになう酵素はアミノ基転移酵素 aminotransferaseで、特に、ALT (alanine aminotransferase), AST (aspartate aminotransferase)の2つは肝細胞が障害をうけたときに血中に漏れ出る逸脱酵素であり、特異的なマーカーとして肝炎などの診断に利用されています。

アミノ酸は20個あるのでアミノ基転移酵素も20個あるはずなのになぜ、ALTとASTだけが別格の扱いを受けているのでしょうか。EC 2.6.1 Transaminasesの中に20種類あるかざっと見てみました。化合物名が2並ぶ酵素名の意味がよくわかりませんが、(反応物と生成物?)、まあだいたいのアミノ酸を網羅しているようです。

  1. 2.6.1.1 aspartate transaminase
  2. 2.6.1.2 alanine transaminase
  3. 2.6.1.3 cysteine transaminase
  4. 2.6.1.4 glycine transaminase
  5. 2.6.1.5 tyrosine transaminase
  6. 2.6.1.6 leucine transaminase
  7. 2.6.1.14 asparagine—oxo-acid transaminase
  8. 2.6.1.15 glutamine—pyruvate transaminase
  9. 2.6.1.27 tryptophan transaminase
  10. 2.6.1.36 L-lysine 6-transaminase
  11. 2.6.1.38 histidine transaminase
  12. 2.6.1.42 branched-chain-amino-acid transaminase
  13. 2.6.1.45 serineglyoxylate transaminase
  14. 2.6.1.57 aromatic-amino-acid transaminase
  15. 2.6.1.58 phenylalanine(histidine) transaminase
  16. 2.6.1.75 cysteine-conjugate transaminase
  17. 2.6.1.79 glutamate—prephenate aminotransferase
  18. 2.6.1.84 arginine—pyruvate transaminase
  19. 2.6.1.88 methionine transaminase

沈黙の臓器:肝臓

発症する病気

奈良宣言特設サイト-一般の方向け

参考

  1. 「ALT>30」で受診を―奈良宣言2023 日本肝臓学会 2023年6月15日 15:55 MedicalTribune

肝臓の解剖学的な構造と働き、特徴

肝臓は、消化器官のひとつです。消化器官は中が中空で中空性器官と呼ばれる食道、胃、小腸、大腸のグループに対して、中身がつまっている実質性器官と呼ばれる肝臓、胆管、膵臓のグループの2つに大別されます。

  1. 肝臓,膵臓,腸に共通した幹細胞系の解明 古山賢一郎・川口義弥 (京都大学大学院医学研究科 肝胆膵・移植外科学) ライフサイエンス新着論文レビュー https://first.lifesciencedb.jp/archives/1981 肝臓および膵臓外分泌は,枝分かれした樹状の管組織(胆管および膵管)に実際の臓器の機能を担う細胞(肝細胞および膵外分泌細胞)が連結しているという共通した解剖学的な構造をもつ.

消化器官には、消化酵素などを体の外側(=消化管の内腔)へ分泌する外分泌の働きと、ホルモンなどを体の内側(=血液)へ分泌する内分泌の働きとを合わせもつものがあります。例えば、膵臓は消化酵素アミラーゼを外分泌する一方で、インスリンがグルカゴンというホルモンを内分泌します。また、胃は胃酸(壁(へき)細胞)やペプシノゲン(主細胞)を外分泌しますが、ガストリン(G細胞)やグレリン(X/A-like細胞)を内分泌します。

  1. グレリン 薬学用語解説 日本薬学会 グレリンは、胃のX/A-like細胞と呼ばれる分泌細胞で合成される
  2. 胃から発見された摂食亢進ペプチド:グレリン  肥満の科学 1999 年国立循環器病センターの児島,寒川 らは,ラットとヒトの胃からこの受容体を活 性化する内在性ペプチドとして,グレリンを 発見した2) .2)Kojima M, Hosoda H, Date Y, et al : Ghrelin is a novel growth hormone releasing acylated peptide from stomach. Nature 1999 ; 402 : 656―660.
  3. 胃酸分泌,胃内分泌そして胃運動 教科書から一歩進んだ身近な製品の化学
  4. 第110回 看護師国家試験 午前12問 胃から分泌される消化管ホルモンはどれか。 1. ガストリン 2. セクレチン 3. 胃抑制ペプチド 4. コレシストキニン
    1. 看護ROO! ガストリンは胃幽門部にある幽門腺のG細胞から分泌

一つの臓器が外分泌と内分泌の両方を行う場合、多くはそれぞれに特化した細胞が分泌しているわけですが、驚いたことに肝臓の細胞は特別で、同一の細胞が外分泌と内分泌の両方を行っているそうです。

肝臓は、横隔膜直下、右上腹部に存在する人体最大の腺臓器で、重量はヒト成人で1200-1400g、体重の約1/50です。その機能上の特徴は、胆汁を排泄する外分泌機能と、グルコースやアルブミンなどの血清蛋白質を産生し血中に放出する広義の内分泌機能を併せ持つことです。しかも驚くべきことに1個の肝実質細胞 hepatocyte が、内分泌と外分泌の両方を同時に行っています。ほかにも肝臓は、消化管で吸収された栄養の代謝貯蔵、解毒、異物や微生物の貪食、血液循環量の調節など多彩な機能を営んでいます。

収蔵標本解説 ▶第31号(2002年 12月1日発行) 基礎肝臓雑学 標本館運営委員  澤田 典均 札幌医科大学医学部 病理学第二講座教授 https://www.sapmed.ac.jp/medm/7-31-1.html

内分泌といっても上の解説では「講義の内分泌機能」という言い方をしており、血清蛋白質アルブミンやエネルギー源であるグルコースが分泌されるとのことでした。内分泌と聞くとホルモンの分泌かと思いますが、実際のところ肝臓はホルモンをつくっているのでしょうか?最近の論文報告によれば、肝臓もへパトカインと総称されるホルモンを合成し分泌するそうです。

  1. https://en.wikipedia.org/wiki/Hepatokine Hepatokines:proteins produced by liver cells (hepatocytes) that are secreted into the circulation and function as hormones across the organism. Research is mostly focused on hepatokines that play a role in the regulation of metabolic diseases such as diabetes and fatty liver and include: Adropin, ANGPTL4, Fetuin-A, Fetuin-B, FGF-21, Hepassocin, LECT2, RBP4,Selenoprotein P, Sex hormone-binding globulin.
  2. ヘパトカイン https://www.jst.go.jp/pr/announce/20170228-2/index.html 肝臓から分泌されるホルモンで、血液を介して全身でさまざまな作用を発揮するものを総称してヘパトカインと呼びます。研究グループは2010年に、2型糖尿病において増加し、高血糖の原因となる肝臓由来の液性因子としてセレノプロテインPを同定し、このような肝臓由来ホルモンをヘパトカインと総称することを提唱しました。
  3. Ingerslev, B.; Hansen, J.S.; Hoffmann, C.; Clemmesen, J.O.; Secher, N.H.; Scheler, M.; Hrabe de Angelis, M.; Haring, H.U.; Pedersen, B.K.; Weigert, C.; et al. Angiopoietin-like protein 4 is an exercise-induced hepatokine in humans, regulated by glucagon and cAMP. Mol. Metab. 20176, 1286–1295.
  4. Misu, H.; Takayama, H.; Saito, Y.; Mita, Y.; Kikuchi, A.; Ishii, K.A.; Chikamoto, K.; Kanamori, T.; Tajima, N.; Lan, F.; et al. Deficiency of the hepatokine selenoprotein P increases responsiveness to exercise in mice through upregulation of reactive oxygen species and AMP-activated protein kinase in muscle. Nat. Med. 201723, 508–516.
  5. Hepatokines: linking nonalcoholic fatty liver disease and insulin resistance Nature Reviews Endocrinology volume 13, pages509–520 (2017) https://www.nature.com/articles/nrendo.2017.56 The liver produces proteins, some of which it secretes into the circulation. Quantitative analysis revealed that the mouse liver proteome and plasma proteome contain 7,099 and 4,727 proteins, respectively, and that 1,818 proteins are present in both proteomes. This overlap indicates that up to ∼25% of liver proteins are potentially secreted into the circulation. Key proteins secreted from the liver include: the major plasma proteins albumin, C-reactive protein and fibronectin; proteins that regulate haemostasis and fibrinolysis; carriers such as apolipoproteins; and proteins that regulate metabolism.

プロテオーム解析から肝臓は数百~1000以上ものタンパク質を内分泌している可能性がいわれているようです。こうなると内分泌の概念が変わってしまいそうですね。

肝臓の内部に張り巡らされた樹状の管構造

  1. 門脈 Portal vein
  2. 肝静脈 Hepatic vein
  3. 胆管 Bile ducts
  4. 肝動脈 Hepatic artery
  5. 肝内リンパ管 Intrahepatic lymphatic vessel

 

  1. リンパ管造影とリンパ系 IVR https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspr/37/2/37_134/_pdf/-char/ja 胸管は人体最大のリンパ管であり,成人では 40 cm にも及ぶ.主に骨盤,小腸,肝臓からのリンパ 液を静脈に還流する.

figure 3

d The combination of the reconstructed blood vessels, bile ducts, and lymphatic vessels in the liver. Portal vein is marked with cyan. Hepatic vein is marked with yellow. Bile ducts is marked with purple. Hepatic artery is marked with red. Intrahepatic lymphatic vessel is marked with orange. eg Structure of hepatic artery, intrahepatic bile ducts, and intrahepatic lymphatic vessel are shown separately. HA hepatic artery, BD bile duct.  https://www.nature.com/articles/s42003-022-03221-2

 

2.5D visualization of the hepatic vessel systems. Portal vein, hepatic vein, hepatic artery & bile ducts are rendered. Even though the vessels are color coded and the trunks are partially cut off, the whole image is still confusing in this projection. CC BY 4.0 https://www.researchgate.net/figure/25D-visualization-of-the-hepatic-vessel-systems-Portal-vein-hepatic-vein-hepatic_fig12_270289717

消化器系の発生

たった 1 本の管から,咽頭 から肛門管上部に至る消化器官と肝臓,膵臓が形成さ れる.‥ 連続 した管でありながら,各器官の位置や境界はなぜ厳密 に決まっているのであろうか.https://www.nms.ac.jp/sh/jmanms/pdf/011030155.pdf

HIF (hypoxia-inducible factor)の役割

HIF (hypoxia-inducible factor)は転写因子として(も)働き、低酸素状態のときには核内に移行してDNAと結合しVEGFなどのシグナル分子の遺伝子を活性かします。VEGFは細胞外に分泌されて近くの血管に作用し、血管新生を促進します。これによって、低酸素状態に陥った細胞の近くに血管が伸びてきてくれて酸素を供給してくれるというわけです。実にうまくできているものですね。

通常の酸素濃度がある場合にはどうなるかというとHIFは分解されます。つまりHIFは常時作られては分解されているというわけです。低酸素状態という緊急事態になれば、素早く血管新生を誘導して緊急事態に対処するわけです。

通常時にHIFがどのように分解されるのかというのが非常に興味深いと思います。というのも、HIFは無駄に分解されているわけではなくて、HIFの分解の過程で酸素分子が必要とされる、つまり言葉を変えると、HIFの分解過程は酸素分子の利用可能性(すなわち周囲の酸素濃度)を常時見張っているということになります。自然界があまりにも上手くできていて驚きます。

figure

HIF and the Lung Role of Hypoxia-inducible Factors in Pulmonary Development and Disease Larissa A. Shimoda , and Gregg L. Semenza American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine > List of Issues > Volume 183, Issue 2 https://www.atsjournals.org/doi/10.1164/rccm.201009-1393PP

上の図にあるように酸素分子を使って、HIFは水酸化されます。その水酸基が目印となってユビキチン化が起こり、分解経路に向かうことになります。低酸素状態だとこの水酸化の反応化が起きないのでユビキチン化されることもなく、結果として分解を免れて、核内に移行し転写因子として働きます。

解説記事

  1. What is Hypoxia-Inducible Factor? https://www.news-medical.net/life-sciences/What-is-Hypoxia-inducible-factor.aspx

レビュー論文

  1. https://www.sciencedirect.com/topics/immunology-and-microbiology/hypoxia-inducible-factor
  2. Breakthrough science: hypoxia-inducible factors, oxygen sensing, and disorders of hematopoiesis Gregg L. Semenza BLOOD April 21, 2022 https://ashpublications.org/blood/article/139/16/2441/476633/Breakthrough-science-hypoxia-inducible-factors
  3. Protein Hydroxylation by Hypoxia-Inducible Factor (HIF) Hydroxylases: Unique or Ubiquitous? April 2019Cells 8(5):384 DOI:10.3390/cells8050384 LicenseCC BY
  4. Advances in Hypoxia-Inducible Factor Biology Hani Choudhry1 ∙ Adrian L. Harris CELL METABOLISM Volume 27, Issue 2p281-298February 06, 2018 https://www.cell.com/cell-metabolism/fulltext/S1550-4131(17)30617-4
  5. Hypoxia-Inducible Factors in Physiology and Medicine Gregg L Semenza (HIFの発見で2019年生理学医学賞を受賞した3人のうちの一人)Cell. 2012 Feb 3;148(3):399–408. doi: 10.1016/j.cell.2012.01.021
  6. Imaging of the hypoxia-inducible factor pathway: insights into oxygen sensing U. Berchner-Pfannschmidt S. Frede C. Wotzlaw Show More European Respiratory Journal 2008; 32(1): 210-217; DOI: https://doi.org/10.1183/09031936.00013408
  7. The hypoxia‐inducible‐factor hydroxylases bring fresh air into hypoxia signalling Edurne Berra, Amandine Ginouvès, and Jacques Pouysségur pouysseg@unice.frAuthor Information EMBO reports (2006) 7: 41 – 45 1 January 2006 https://doi.org/10.1038/sj.embor.7400598 https://www.embopress.org/doi/full/10.1038/sj.embor.7400598