特044条 分割 先の出願はどうなる? 取0り下げられる?生き残る?

結論から言うと、分割出願(44条)をした場合、もとの出願(親出願)は「生き残ります」。取り下げられません。
質問者様が「取り下げられるんだっけ?」と疑問に思ったのは、おそらく**「国内優先権主張出願(41条)」と混同されている**可能性があります。
ここを整理するのが試験対策の肝ですので、スッキリ整理しましょう。
1. 分割出願(44条)の基本イメージ
分割出願は、単細胞生物が分裂して2つになるようなイメージです。
* もとの出願(親): そのまま審査係属します(生き残る)。
* 分割した出願(子): 新たな出願として生まれ、出願日は親の日に遡及します。
つまり、出願が2つ並存する状態になります。
> 注意点(39条対策)
> 2つとも生き残りますが、両方の請求項(クレーム)に「同じ発明」が含まれていると、先願規定(39条)または同日出願として、どちらかが拒絶されてしまいます。
> そのため、通常は分割と同時に親出願の補正を行い、親と子で権利範囲を住み分けさせます。
>
2. なぜ「取り下げられる」と思ったのか?(混同しやすい制度)
おそらく、国内優先権主張出願(41条) の記憶と混ざっていると思われます。
| 項目 | 分割出願 (44条) | 国内優先権主張出願 (41条) |
|—|—|—|
| もとの出願の運命 | 生き残る | 取り下げ擬制される (1年3ヶ月後) |
| 目的 | 発明が複数あるので分ける
拒絶理由解消のため分ける | 内容を改良・追加して
新しい出願にまとめる |
| 関係性 | 親と子が並存する | 後の出願が前の出願を吸収・上書きする |
* 41条(国内優先権)の場合: 新しい改良発明を出願した後、もとの基礎出願は役目を終えて**1年3ヶ月後に自動的に取り下げ(みなし取り下げ)**になります。
3. まとめ
* 分割出願(44条): 親も子も生き残る。(だから、中身が被らないように親を補正する必要がある)
* 国内優先権(41条): 先の出願は死ぬ(取り下げられる)。
ここを区別しておくと、論文試験や担当試験のひっかけ問題にも強くなります!

「分割出願ができる時期的要件(いつまで分割できるか)」についても復習しておきましょう。


44条(分割出願)の時期的要件は、条文の書き方が複雑で、しかも例外規定が絡むので、普通に読んでも頭に入ってこないんですよね。ここをスッキリさせるには、**「チャンスは3回ある」**と割り切って覚えるのが一番早道です。


過去問で間違えなくなるように、試験に出るポイントだけに絞って整理しましょう。
分割ができるタイミング「3つのチャンス」
分割出願は、いつでもできるわけではありません。以下の**3つのタイミング(チャンス)**だけです。
チャンス①:補正ができる時(1号)
これが原則です。
* 覚え方: 「親出願の中身をいじれる(補正できる)なら、中身を分ける(分割する)こともできるよね」という理屈です。
* 具体的には:
   * 審査官から何も言ってきていない時(自発補正期間)
   * 拒絶理由通知が来て、それに対する意見書を出せる期間(指定期間内)
チャンス②:特許査定が出た後の「30日以内」(2号)
「おめでとう!特許です」と言われた後のボーナスタイムです。
* 注意点(超重要):
   * 「特許料を払うまで」 です! 払って登録手続きをしちゃったら、もう分割できません。
   * (※以前は特許料納付後もOKでしたが、今の試験対策としては「特許料納付前」と覚えておくのが基本です。ただし条文上は、特許権の設定登録がされる前まで可能です)
チャンス③:最初の拒絶査定が出た後の「3ヶ月以内」(3号)
「ダメでした(拒絶査定)」と言われた時の復活チャンスです。
* ここが試験のツボ:
   * 「拒絶査定不服審判」を請求するかどうかに関わらず、分割だけ単独ですることができます。
   * (昔は審判請求とセットじゃないとダメでしたが、今は分割単独でOKです)
過去問でよく出る「ひっかけ」ポイント
試験で「訳が分からない」となるのは、たいてい以下のパターンではありませんか?
Q. 「特許査定」が出た後、特許料を納付してしまいました。その翌日、分割出願はできますか?
> A. できません。
> チャンス②は「特許権の設定登録がされる前」までです。実務上は特許料納付と同時に登録プロセスが進むので、納付後はアウトになる可能性が高いです。(試験的には「特許権設定登録前」がデッドライン)
>
Q. 「拒絶査定」が出ました。審判は請求しませんが、分割出願だけできますか?
> A. できます。
> これがチャンス③です。親出願は死にますが、最後に子供(分割出願)を残すことができます。
>
Q. 最初の拒絶理由通知が来ました。指定期間(60日)を過ぎてしまいました。分割できますか?
> A. できません。
> チャンス①の「補正ができる期間」を過ぎているからです。
>
整理用テーブル:これだけ覚えればOK
| タイミング | 条文 | ポイント(ここを暗記!) |
|—|—|—|
| 審査中 | 44条1項1号 | 補正ができる時ならいつでもOK |
| 特許査定後 | 44条1項2号 | 査定謄本送達から30日以内
かつ 特許権の設定登録前 |
| 拒絶査定後 | 44条1項3号 | 査定謄本送達から3ヶ月以内
(審判請求しなくてもOK) |
どうでしょう?「3つのチャンス」という枠組みで見ると、少し景色が整理されませんか?

(Gemini)