特許法
(損害計算のための鑑定) 第百五条の二の十二 特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟において、当事者の申立てにより、裁判所が当該侵害の行為による損害の計算をするため必要な事項について鑑定を命じたときは、当事者は、鑑定人に対し、当該鑑定をするため必要な事項について説明しなければならない。
プロンプト:この条文で、「当時者の申立てにより」が、「裁判所が職権により」って書き換えられて、丸かバツか、という問題が出てたんだけど、何がどう違うの?
Chat GPT 5.2:この○×問題、「民事訴訟における裁判所の権限の立ち位置」を分かっているかを聞いています。
条文の骨格を分解すると
第105条の2の12は、構造としてこうなっています。
- 誰がきっかけを出すか
👉 当事者の申立てにより - 誰が判断・実行するか
👉 裁判所が鑑定を命じる - 鑑定が命じられた場合の義務
👉 当事者は鑑定人に説明義務を負う
つまりこの条文は、
「当事者が求めた場合に限って、裁判所は鑑定を命じることができ、その結果として当事者に協力義務が生じる」
という条件付き発動型の規定です。
「当事者の申立てにより」と「裁判所が職権により」の決定的な違い
① 当事者の申立てにより(原文)
- 裁判所は 勝手には動けない
- 当事者の意思表示(申立て)が 発動条件
- 民事訴訟の原則である
**「当事者主義」**に忠実
👉 当事者が「鑑定してほしい」と言わなければ、
👉 裁判所は鑑定を命じない
② 裁判所が職権により(書き換え後)
- 当事者の申立てがなくても
- 裁判所の判断だけで
- 鑑定を命じられる
👉 これは 職権主義 的な構造になります。
なぜ「×」になるのか(試験的に重要)
理由①:民事訴訟の大原則に反する
損害額の立証・主張は、
- 原則:当事者の責任
- 裁判所は「補助役」
特許侵害訴訟であっても、
損害計算を裁判所が勝手に始めることはできない。
理由②:条文の趣旨が変わってしまう
「当事者の申立てにより」を
「裁判所が職権により」に変えると、
- 当事者が鑑定を望んでいなくても
- 強制的に説明義務が発生する
ことになります。
👉 当事者の訴訟追行の自由を侵害します。
まとめ(○×問題の正体)
「当事者の申立てにより」を
「裁判所が職権により」に書き換えるのは
✕(誤り)
理由は一言で言うと:
民事訴訟は当事者主義が原則であり、
本条はその例外を定めた規定ではないから