多くの精神疾患でミトコンドリア機能障害の関与が示唆(MedicalTribune)というニュース記事が出ていました。
ミトコンドリアの二大機能として、細胞のエネルギー源であるアデノシン三リン酸(ATP)の産生とカルシウムイオンの取り込みがあり、いずれもミトコンドリア呼吸鎖の活動によって生じるミトコンドリア膜電位により駆動されることから、精神疾患との関連を検討するには、ミトコンドリア呼吸鎖の活性をin vivoで測定することが重要となる。(MedicalTribune)
ミトコンドリア膜電位ってどうやって作られていて、どれくらいの大きさなのでしょうか。
ミトコンドリアは自らを充電すると同時に,蓄えたエネルギーを使って仕事をする.この充電のメカニズムは化学結合のエネルギーを電位差という形に変換するもの
燃焼の際に得られるエネルギーは,ミトコンドリアでまずNADHという分子の中に高エネルギー電子の形で閉じ込められる.
ATPを盛んに合成することは電位差を小さくする方向に働くので,もしATPをあまり合成しないまま水素イオンを内側から外側へ移動させ続けると電位差は大きくなり続け,やがて電子伝達から得られるエネルギーでは膜電位に逆らって水素イオンを移動させることができなくなる.(単一ミトコンドリアの膜電位計測)
ミトコンドリアにおけるATP産生のメカニズムの発見
1950年代から60年代にかけて,多くの生化学者が酸化と燐酸化とを結び付ける高エネルギー中間産物を水溶液中に探し求める努力を続けたが,見るべき成果を挙げることは出来なかった.(「生理学ものがたり」第2回電子伝達系とミトコンドリアの膜電位)
酸化と燐酸化とを結び付ける高エネルギー中間産物があるはずという仮説が間違っていたので、研究がドツボにはまったという、正しい仮説に基づいて研究しないといけないという好例だと思います。