研究支援に関する科研費研究課題

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研究課題名 研究課題/領域番号 研究期間 (年度) 研究代表者 審査区分 研究種目 研究開始時の研究の概要 研究概要 研究概要 (英文) 研究成果の概要 研究実績の概要

    1. 研究推進支援機能の最大化に資する人材パフォーマンスとその要因の解明 23K25678 2023-04-01 – 2027-03-31 高橋 真木子 金沢工業大学, イノベーションマネジメント研究科, 教授 (70376680) 小区分09050:高等教育学関連 基盤研究(B) 大学の研究力強化を担う研究推進支援機能の必要性は広く認知され、その機能を最大化する組織・人材の重要性が指摘されている。しかし、大学の研究系、事務系職員と比し、その機能を担う組織のあり方、人材についてはまだ検討の途上にある。
      そこで本研究は、組織の属性・構造を踏まえ、その実働を担う個人レベルでのパフォーマンスと、それを実現する要因(スキル、モチベーション、職場環境等)に着目し「大学研究マネジメントを担うURAなどの新たな研究推進支援専門人材のパフォーマンスは、どのような環境下で向上するのか、新しい職種のアイデンティティーはどう確立されていくのか。」という問いに応えることを目的とする。
    2. 日本のリサーチ・アドミニストレーターにはどのようなキャリアの展望が描けるのか 21K20276 2021-08-30 – 2024-03-31 鈴木 紀子 京都産業大学, 研究機構, 嘱託職員 (80374106) 0109:教育学およびその関連分野 研究活動スタート支援 研究者の研究活動活性化の支援を目的として日本にURA制度が導入されて10年が経過し、現在、国内の研究機関に約1,500人のURAが配置されている。これまでURAのキャリアについては、着任前の職種に主眼を置いた大規模な調査研究が行われてきた。しかし有期雇用が半数以上を占めるURAのキャリアパスの実態を知るには、前職の調査研究だけではなく、後職、すなわちURAが別の研究機関・職種へと異動・転職する過程にも着目する必要がある。そこで本研究では、URA経験者にインタビュー調査を行い、着任前後を通してキャリアを分析することで、URAの定着性、研究機関間の流動性、キャリアパスの多様性を明らかにする。 研究者の研究活動活性化の支援を目的として日本にURA制度が導入されて10年以上が経過し、現在、国内の研究機関に約1,500人のURAが配置されている。これまでURAのキャリアについては、着任前の職種に主眼を置いた大規模な調査研究が行われてきた。しかし有期雇用が半数以上を占めるURAのキャリアパスの実態を知るには、前職の調査研究だけではなく、後職、すなわちURAが別の研究機関・職種へと異動・転職する過程にも着目する必要がある。そこで本研究では、URA経験者にインタビュー調査を行い、着任前後を通してキャリアを分析することで、URAの定着性、研究機関間の流動性、キャリアパスの多様性を明らかにすることを目的とする。
      URAのキャリアの変遷を辿る手段として、URA経験者に対面およびオンラインでのインタビュー調査を行っている。インタビューを通して定量的な項目(URAへの着任・離任年や各時点での年齢層等)、定性的な項目(URAを含む職歴、URA在職時の研究機関、URA着任および離任の理由等)を聞き取っているところである。
      2年目は20名規模でインタビュー調査を実施する予定であったが、健康上の理由により数名程度しか実施できなかった。またキャリアの変遷の全てを聞き取り終わっていない研究協力者もおられるため、その方々には次年度に再度インタビューを依頼する。今年度も引き続き、URAのコミュニティに参加し、インタビュー依頼のための人脈を形成を行った
    3. 国際産学連携の人材:キャリアと環境 21K01729 2021-04-01 – 2025-03-31 村上 由紀子 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (80222339) 小区分07080:経営学関連 基盤研究(C) 研究開発における国際産学連携には高い成果が期待されているが、人材不足のために日本の国際産学連携は進んでいない。国際産学連携を担う主な人材は、それをコーディネートする専門スタッフと研究者であり、本研究では彼らの長期的なキャリアと国際産学連携の環境を分析することにより、国境と産学間の壁を超えた知識の普及と創出を促進する要因を人材の観点から解明する。すなわち、日独と日米の国際産学連携を対象にして、それらを担う研究者とコーディネーターの長期的キャリアの特徴と環境を、ヒアリング調査や書誌情報の解析等により分析し、人材の面で国際産学連携活動を促進する要因や制度と政策を考察する。 研究開発における国際産学連携には高い成果が期待されているが、日本ではそれを担う人的資源に課題があるために、日本を含む国際産学連携は少ない。そこで、本研究は国際産学連携を担う中心的な人材である研究者と大学のリサーチアドミニストレーター(URA)について、長期的なキャリアと国際産学連携の環境を日独米で比較分析し、国際産学連携活動の成果に影響を与える要因と、国際産学連携を支える制度・政策を、人材の観点から考察することを目的としている。2023年度は第一に、研究者を対象とするアンケート調査を実施するための準備を行った。日独、日米、日独米の研究者の組合せを含む国際産学連携チームで、2017年と2018年に論文を発表した約1500のチームを見出し、それらのチームの研究者に対するアンケート調査票を作成した。先行研究や過去のインタビュー調査の結果をもとに、重要であると特定された内容は、研究者のキャリア、チーム形成の動機・経緯やメンバー構成、国際産学連携のチームマネジメント、所属組織や国などからのサポートであることがわかり、それらに関するアンケート調査の質問項目と選択肢を特定した。第二に、昨年のURAに関するインタビュー調査は国立大学に限られていたが、2023年度は私立大学、URA個人、リサーチ・アドミニストレーション協議会に対してもインタビューを行った。二年間にわたるインタビューの結果、URAのキャリアに関して、組織内キャリア形成職業内移動によるキャリア形成知識労働者の他職種からの参入によるキャリア形成の三パターンがあることが明らかとなり、それぞれの問題や課題を見出した。第三に、特許情報の整理を行い、チーム構成等が研究パフォーマンスに与える影響を分析することで効果的な国際産学連携チームの組成や連携のあり方を明らかにするための準備を整えた。
    4. 論文生産能向上のための研究力分析システム構築による研究論文分析 21H03897 2021-04-01 – 2022-03-31 渡邉 優香 九州大学, 学術研究・産学官連携本部, 研究推進専門員 1170:教育学・教育社会学関連 奨励研究 近年、日本全体として論文生産能は諸外国と比較して下降していると言われている。大学の研究力強化のためにも、論文生産能を上げることは喫緊の課題である。論文生産能向上のために何が必要かを分析するため、研究力分析システムを構築し、そのシステムを用いて詳細な論文分析を行い、論文生産能を向上させるために、何が有用かを提示することを目指す。 大学において論文生産能向上のために何が必要なのかを明らかにすることを目的にした。出版されている論文の詳細分析を行う為、研究力分析システムを構築し詳細な論文分析を行った。その結果、キーとなる研究が核となり、分野によりネットワークが構築されて行き、それに伴い国際共著論文数も増加傾向にあることが示唆された。また、核となる研究にはトレンドがあり、主流の他に、突如脚光を浴びる研究も存在し、社会情勢に影響を受けていることも示唆された。さらに高被引用国際共著論文を多数出版している研究者へのインタビューから、これらの事例に発展する基になる補助金やURAの果たす役割も明らかになってきた。
    5. リサーチ・アドミニストレーター配置による研究推進力強化の実効性の検証 20K03260 2020-04-01 – 2024-03-31 武藤 彩 東邦大学, 医学部, 講師 (00525991) 小区分09080:科学教育関連 基盤研究(C) URAという職種は、大学の研究力強化を目指し、研究者を支援する職として誕生した。URAが導入されて数年が経ったが、実際にURAの導入が研究力の強化にどれくらい貢献しているのか、その実効性を検証した研究はほとんどない。そこで、本研究では、URAに期待されるメジャーな職務として外部資金獲得においてどれほどの効果を上げているのかを検証する。また、支援効果の大小を規定する要因として、URAの職歴や資質、URAの大学内での位置づけなどに注目し、実効性のある研究支援フレームワークを提案する。 近年、大学教員においては、教育,研究,大学運営などの負担が増大しているため、大学による研究支援活動の重要性が高まっている。このような背景から,専門的な研究支援職であるリサーチ・アドミニストレーター(Universityresearchadministrator;URA)が平成23年より国立の研究大学を中心に国主導で順次導入され,現在では私立大学を含む多くの大学へと広がってきた.しかしながら,研究支援体制の強化が実際に研究力強化につながっているかを検証した報告は少ない.研究力を測る指標としては論文数が最も直接的であるが,研究支援の効果が現れるまでには時間がかかる.それに対して,外部研究費の獲得は申請書の質によるところが大きいため支援効果が比較的現れやすい.特に,文部科学省科学研究費補助金事業(科研費)の若手研究者を対象とする研究種目は,論文業績の差がまだ少ないので,支援で申請書の質が上がれば採択の可能性が高まる).そこで,若手研究者向けの研究種目の採択件数を指標として研究支援効果を検証した.研究分野や大学・学部の規模による差異を少なくするため,分析対象を私立大学医学部に絞り,過去20年余のこれら若手研究者向け研究種目を分析した.大学の科研費の採択実績に変化が生じたのであれば,必ずその裏にはその変化をもたらした介入(施策の実施)が存在すると予想される.そこで,各大学の若手研究者向け科研費研究種目採択件数が増加に転ずる年度を採択件数データから同定し,その変化開始付近の年度に実施された施策を大学の事業報告等に基づいて調べた.その結果,該当する時期には研究支援組織の強化及び具体的な新規施策の実施が認められ,変化と介入との間の関連性が明らかとなった.
    6. 日本の大学等研究機関における有効なリサーチ・アドミニストレーターモデルの構築 20K02932 2020-04-01 – 2024-03-31 高橋 亮 東北大学, 理学研究科, 特任准教授 (40548228) 小区分09050:高等教育学関連 基盤研究(C) 大学への運営費交付金が年々減少していく中、日本の大学は限られた人的資源を最大限に活用し、教育・研究を推進していくため、研究マネジメント人材としてのURAを活用することが求められている。今後、日本の大学等の研究機関において、このURAという新しい職を定着させ、URAが各組織において有効な役割を果たしていくためには、現在のURAが従事している業務内容を正確に把握し、その有効性を定量的に検証する必要がある。したがって、本研究では日本の大学等研究機関に従事するURAの業務内容を精査し、その有効性の定量的な評価を行う。そして、現在の日本の大学等研究機関の特性・規模に応じた有効なURAモデルを提示する。 昨年度、一昨年度にデータを取得した「大学等における産学連携等実施状況」調査の令和3年度版が公開されたため、令和元年度、令和2年度と状況比較を行い、分析した。令和3年度調査機関数は1055機関であり、令和元年度の790機関、令和2年度の834機関といったように年々増加している。一方、各機関にURAとして配置しているものがいると回答した機関の割合は、令和元年度から令和3年度でそれぞれ21%、22%、19%であり、大きな変化はないものの令和3年度は最も割合が低かった。今年度は特に大学等教育研究機関の設置区分ごとに上記のURA配置状況とその経年変化を分析した。設置区分は、国立、私立、公立の3区分である。全調査機関数に対する国立の機関の割合は、令和元年度から令和3年度でそれぞれ18%、17%、14%であり、減少している。公立の機関の割合も令和元年度から令和3年度にかけて減少していることから、同データの調査対象機関として、私立の機関の割合が増えていることが明らかになった。各設置区分でのURAの配置状況の割合を見ると、国立の機関が令和元年度から令和3年度の期間で60%程度であるのに対し、私立と公立の機関ではそれぞれ、10%、25%程度で推移していた。研究動向調査・情報収集としては、RA協議会第8回年次大会に参加し、「研究力強化に向けて異なるせみたー間連携から共創につなげるURA機能とスキルとは」をはじめとした関連セッションに参加し、情報収集を行った。
    7. 大学研究マネジメントにおける多様な専門職の連携・協業に関するマルチレベル分析 20K01907 2020-04-01 – 2024-03-31 伊藤 伸 東京大学, 未来ビジョン研究センター, 特任准教授 (90520883) 小区分07080:経営学関連 基盤研究(C) 大学で研究の推進支援に従事する研究マネジメント専門職は、専門能力や担当業務が多様なため業務遂行に連携と協働が必要だが、連携・協働の作用メカニズムや促進・阻害要因についての実証分析はほとんどされていない。さらに専門職と組織との関係は文化や社会構造等を反映し、国によって異なる。本研究では大学における研究マネジメント専門職について、専門職の連携・連携が実現する要因と個人・組織の業績に与える影響を明らかにし、新たな理論的枠組を構築する。インタビュー調査や国際的な調査データを活用して連携・協働のモデルを構築し、質問票調査と組織階層に考慮したマルチレベル分析によってモデルを検証する。 本研究は、大学における研究マネジメントについて「専門職連携モデル」を構築し、検証することで、専門職の連携・協働行動が実現する要因とその行動が個人と組織の業績に与える影響を明らかにすることを目的にしている。
      3年目である2022年度は文献調査や内外動向調査に加え、インターネットによる質問票調査、文部科学省データを活用した大学における実践的支援活動と大学発ベンチャー創出の分析、国際調査データを利用した大学研究マネジメント専門職の業務経験年数についての分析を中心に実施した。
      質問票調査はインターネット調査専門会社に依頼し、同社の登録モニターに対して実施した。業務として研究の支援活動に従事する個人を対象とし、500人を超える回答を得た。質問票は、組織市民行動や知識共有行動といった協調・連携行動の程度を把握する項目や職務特性を把握する項目で構成した。
      大学の支援活動と大学発ベンチャー創出の分析では、文科省データを活用し、過去5年間の大学発ベンチャー創出数を目的変数、起業を目指す研究者や学生への支援活動や学内支援体制・戦略に関する質問項目を説明変数として回帰分析を実施した。その結果、相談窓口の設置とインキュベーション施設の保有について正の有意な関係が確認された。大学発ベンチャーの創出や支援を意識した知的財産の活用を含む戦略も有意に関係した。結果は2022年の日本知財学会第20回年次学術研究発表会で発表した。
      さらに大学の研究マネジメント専門職に対する国際調査のデータ(RAAAP2)を利用し、業務経験年数と、業務に関する個人の認知やスキル向上、専門資格に対する評価という要因との関係を検証した。国際調査データを用いることで国や地域の差異を織り込んだ分析になった。
    8. 学術論文の意味的解析を活用した研究マネジメント支援システムの開発 20H01163 2020-04-01 – 西田 泰士 大阪府立大学, 研究推進課, リサーチ・アドミニストレーター 4110:情報科学、情報工学、人間情報学、応用情報学およびその関連分野 奨励研究 本研究は、学術論文データ等における研究相互間の意味的関連性を明らかにし、萌芽的研究領域や異分野・複合領域の可視化による有望な研究領域の知識発見を行い、システマティックに効率的な研究マネジメント支援を行う基盤を構築するものである。従来の評価指標として一般的に用いられている「インパクトファクター」や「h-index」のような論文同士の引用関係のみならず、研究相互問の意味的関連性を導入することで、研究トレンド予測や複合研究領域予測を目指す研究である。 本研究では,共クラスタリングとマルチビュー分析を適用することにより,技術的単語間の意味的な関連性を見出すことを目指した.
      文書データの分析の際には,各文書での基底単語の出現頻度を用いるBag-of-Words(BoW)の概念がしばしば用いられるが,多次元のBoWベクトルを構築する際には,非常に疎(スパース)な特徴ベクトルとなることも多く,文書間の類似性がうまく把握できない.そこで本研究では,単語間の類似性を考慮したファジィ重み写像を導入するファジィBoW行列の活用を検討した.その結果,従来の手法では見出されなかった知見の発見を実現した.
    9. 国際比較から抽出する研究支援人材のキャリアプラン形成に資する能力評価指標 20H00695 2020-04-01 – 杉原 忠 沖縄科学技術大学院大学, 外部研究資金セクション, 研究支援業務職 1150:法学、政治学、経済学、経営学およびその関連分野 奨励研究 今後も議論が継続するURA(リサーチ・アドミニストレーター)評価の指標について、日本、米国、欧州を主な対象として調査、比較する。経験豊富なURA組織長、副学長・理事クラスへのインタビューを通して、特に優れていると認める人材の特徴を具体的に挙げてもらう。またアンケートも実施し、求められるURA人材像を抽出する。このような活動を通じて、人事評価データ以外に注目すべきURA人材評価指標策定が進むことを目標とする。 URAに求められる役割の詳細は機関によって異なるため、一般的にURAに求められるものを抽出した。情報源として、中央大学のコンピテンシー定義を利用した(https://bit.ly/3LXZvlB)。コンピテンシーの7キーワードのうち、「コミュニケーション力」「問題解決力」「組織的行動力」の3つを選び、それぞれの評価軸の中でスキル習熟度を変化させ、仮想的なURA候補者をペルソナとして設定した。ペルソナの能力はストーリー仕立てで表現した。被験者はストーリーからレベルの違いを抽出することを求められたが、被験者が認識するレベル差は実験者の予想に合致しないことが明らかになった。
    10. 大学の第三の職種としての専門職を取り巻く課題の実証的研究 19K02860 2019-04-01 – 2024-03-31 稲垣 美幸 金沢大学, 先端科学・社会共創推進機構, 准教授 (20464034) 小区分09050:高等教育学関連 基盤研究(C) 近年,大学には教員でも職員でもない位置付けとして「専門職」と呼ばれる様々な職種の導入が進んでいる。この各職の業務内容や組織に関する実証研究は進んでいるが,その一方で,当事者やその周囲では課題の声が聞かれる。しかし,こうした課題は現場レベルの感覚的なものとして聞かれるのみで,客観的に明らかにされてはいない。で,本研究は,専門職として報告されている新たな職種全体を対象に,専門職が抱える課題を客観的かつ実証的に明らかにし,専門職を取り巻く共通課題と職種による特色を見出す。 本研究は,近年,大学に配置が進んでいる「専門職」と呼ばれるさまざまな職種について,専門職が抱える課題を客観的かつ実証的に明らかにすることを目的としている。ここでは,専門職としてURA,IRer,産学官連携コーディネーター,アドミッション・オフィサー,カリキュラムコーディネーターを主な対象とする。本年度は専門職のうち,URAを対象に政策として進められているURAスキル認定制度について調査し,その有効性や効果を検証した。専門職を対象とした質保証を目的とした制度はこのURAを対象としたものが初めてであり,専門職を客観的に評価するという意味で制度について研究することは意義がある。したがって,URAという実務者の状況に加えて,URAスキル認定制度という新たな枠組みも含めて専門職を捉え,その課題の抽出に活用することを検討する。また,URAの配置を進めている大学等の執行部との人脈形成を進め,アンケート及びインタビュー調査を実施するための基盤を構築した。また,IRer,産学官連携コーディネーターについてもインタビュー調査の対象となる候補者との人脈を構築し,実際の調査に向けた体制を整備した。
      現在の進展状況を踏まえ,専門職のうち研究支援系の専門職であるURA,IRer,産学官連携コーディネーターに関わる事項を優先に研究を進める。
      今後は,絞り込んだ対象者にアンケート及びインタビュー調査を行い,専門職を取り巻く実態と課題について明らか雨にしていく。
    11. 研究推進支援機能の実践基盤確立に向けた権限配分と組織アクセプタンス形成手段の解明 19H01692 2019-04-01 – 2024-03-31 高橋 真木子 金沢工業大学, イノベーションマネジメント研究科, 教授 (70376680) 小区分09050:高等教育学関連 基盤研究(B) 大学の教育研究機能への期待が高まり、優れた研究環境の重要性が改めて指摘されている。この研究環境とは、研究資金や施設というハード面の資源と、的確な研究推進支援機能を提供する専門人材によって実現するソフト面により構成される。
      本研究の目的は、大学の研究推進支援機能に焦点を当て、大学の組織構造や意思決定システム、マネジメント層の役割を対象とし、優れた研究環境を実現するソフト面の要因を明らかにすることにある。具体的には、経営学の経営組織論の枠組みに立脚し、国際比較可能な大規模アンケート調査、有識者との組織類型化の検討、代表的な事例大学への滞在型詳細調査により研究を遂行する。 R3までの研究により、個々の大学において求められる研究推進支援機能は、研究推進支援機能の業務モデルを分析の枠組みと、1)研究資金の財源構成とその割合、とりわけ公的研究資金への依存度合い、2)組織形態もしくは組織運営方針、の2点を共通指標として比較することが有益であることが明らかとなってきた。このことはまた、個々の大学の相違以上に、各地域・国毎の大学セクターの設立経緯、企業や政府との関係性などの外部環境の相違(多様性)の影響が強く、簡単な比較ができないというこれまでの指摘に、一つの示唆を与えるものでもある。特にアジア地域においては、国の経済力、科学技術力の差異もあり、これまで研究推進支援機能およびその専門人材(実務者)の役割に力点を当てた調査分析はなされていなかった。これに対し、R3までの研究により得られた比較指標に基づき、各国の研究推進支援の団体のリーダー、団体自体が存在しない国においては活動が活発な大学や研究者を対象に、詳細なヒアリング調査を実施した。具体的には、インド、マレーシアでは国内団体の責任者や創設者、現在はまだ団体が存在しないシンガポールにおいては最も活発に活動を行っている大学の責任者、実務者のグループは存在するが適切な窓口が無い中国、ベトナムの2カ国については、それらの活動を研究対象としている社会科学系の研究者を対象に調査を実施した。これにより、アジアにおけるアカデミアの研究推進支援機能の俯瞰的理解と、各国の実情把握が可能となった。アジア地域は欧州、北米と比し、共通の国際的競争資金のプログラムが少なく、国内の研究資金への依存度が高いことから、一般に、国毎の独自性が高いとされる。本研究の知見は当該地域における研究推進支援機能の理解に有益な一助となる。この成果については、R5年にその他地域と合わせて、学術書籍として発行する準備を進めている。


    1. 知のオープン化時代の大学・科学相関システムの再構築 19H00621 2019-04-01 – 2022-03-31 小林 信一 広島大学, 高等教育研究開発センター, 特任教授 (90186742) 中区分9:教育学およびその関連分野 基盤研究(A) 今日の科学は「科学の危機」に直面し、大学政策は何かにつけて大学がダメだという議論に陥りがちである。しかし、大学問題の根本には脆弱な根拠に基づく大学改革・大学政策、大学と噛み合わない科学振興がある。そこで、(1)大学政策に関して政策立案と政策運営の妥当性を反省的に検証し、(2)政策立案に学問知がいかに関わってきたか、適時的確なデータや研究成果を提供してきたか、方法は適切であったかをレビューし、(3)科学の現実を踏まえた大学論、科学の揺籃たる大学を取り込んだ科学論を構想する。これらを踏まえ、(4)大学論、科学論、政策論の協働により、新しい大学像・科学像、大学・科学相関システムをリデザインする。 本研究の目的は、1)大学・科学インフラの変容、2)大学環境の変化、3)科学の変容を分析し、4)大学の政策立案・政策運営の妥当性を反省すること、5)大学・科学の相互関係を分析し、最後に6)オープンナレッジ時代の大学・科学・大学・科学相関システムの新しいイメージを再構築することである。
      オープンナレッジの構築とは、知的活動のオープン化、映像データなどによる知識の社会への開放を想定している。そのためのシステムを開発し、トライアルを実施した。コロナ禍を契機にインターネット会議が普及したが、これに迅速に対応するだけでなく、その背景にある大学や科学の変化の理論的根拠を検討した。
    2. 大学の研究資源獲得と研究成果創出・社会還元に関する決定要因の分析 18H01029 2018-04-01 – 2022-03-31 隅藏 康一 政策研究大学院大学, 政策研究科, 教授 (80302793) 小区分09050:高等教育学関連 基盤研究(B) 大学が研究資源を獲得し、それにより研究活動を活性化し、学術的インパクトを創出するとともに、研究成果を産学連携により社会還元することで経済的・社会的インパクトを創出するためには、大学においてどのような体制整備を進めればよいのか。これは学術上興味深いものであると同時に、実務上の要請も大きい問いである。この問いに答えるには、適切なデータセットを構築することが必要である。研究代表者の隅藏は、文部科学省の「産学連携調査」の結果に注目し、平成15年度から直近年度までのデータを組み合わせて本研究のデータセットの核として用いることを考えた。その上で、本研究の目的を達成するために、総務省の科学技術研究調査、大学の財務データ、論文データ、特許データ等と接続し、分析に用いるという研究計画を立案した。分析を実施するために必要となる基本的なデータセットの構築を行い、産学連携調査の全調査項目のパネル化を行うとともに、大学財務データ、ならびに総務省が提供する科学技術研究調査のデータ(研究者、研究補助者、技能者、研究事務その他の関係者、などの数に関するデータが含まれている)とも接合した。2020年度は、経済的ショックが生じた状況下で産学連携、特に大学と企業との間の共同研究にどのような影響がもたらされるのかにフォーカスし、分析を進めた。その結果、リーマン・ショックが共同研究受入額にもたらした影響は、私立大学よりも国立大学において、比較的大きいものであったことが分かった。また、経済的ショックによる共同研究受入額への影響は、研究活動に関してトップ層の大学にとってはさほど大きくないが、その次の層の研究規模の大学に最も深刻な影響を及ぼす可能性が示唆された。
    3. 若手研究者の自己成長を促す「対話」手法の開発にむけた質的研究 18H00046 2018 山口 陽子 京都大学, 次世代研究創成ユニット, 特定専門業務職員 1170:教育学・教育社会学関連 奨励研究 次世代のアカデミアを牽引する若手研究者の研究力強化を図り、研究者としての自己成長を促進する「対話」の手法を確立することを目的とした。本取組みは、アカデミア第三の専門職種として研究者支援に関わるリサーチアドミニストレーター(URA)が、研究者と利害関係のないその客観的立場を活かし、カタリスト(刺激する触媒役)となって、研究者の自己成長に必要な自己内省を引き出すべく介入するものである。本研究では、ポスドク研究員・助教・准教授からなる11名の研究者を対象に、どのような対話を介入させることで、研究者の専門性に対する自己内省・気づき・行動意欲を誘導できるのかを検証した。まず、対話開始時においては、ラポールの有無がその後の対話の質に大きく影響した。ラポールにより相互信頼と心理的安全性が確保されると、研究者のストーリーテリングは一気に溢れる。次に、混沌とするストーリーを明瞭化するために、発話の内容を板書することで内容を「見える化」をする。「見える化」は「書かれたこと=自分が言ったこと」であるため、効果的に自分の思考への内省・気づきをもたらす効果があった。特に俯瞰的な思考を誘導する手法として、聞き手が内容について絵図を描いて示し、内容の抽象度を高めておくことが有効であった。そして、最後に対話のまとめを「問題提起」「解決法」「発展性」の視点から振り返っておくと、認識と意欲が強化される。日本のアカデミアでは、研究や研究者自身のことは、研究者個人あるいは研究現場の裁量に任せられる文化が根強いことに加え、多忙であることを理由に互いの干渉が弱まりつつある。成人の発達成長にとって、客観的な視点を持つ他者との関わりと、自己内省の積み重ねが重要である。本研究で確立した対話手法の導入により、URAがアカデミアに足りないカタリスト機能を補完し、若手研究者の成長に必要な自己内省を誘導することが実証できた。
    4. URA等高度専門人材と事務職員の協働事例調査による「日本型研究支援モデル」の開発 18H00031 2018 花岡 宏亮 国立大学法人大阪大学, 共創推進部社学共創課, 係長 1150:法学、政治学、経済学、経営学およびその関連分野 奨励研究 本研究では、研究支援業務の質向上に向けた、URA等高度専門人材(以下「URA」という。)と事務職員の連携モデルの検討を踏まえ、全国規模でURAと事務職員の協働事例を中心に協働事例を収集し、「日本型の研究支援モデル」を提示するなどして、教職協働の深化やURA等の第3の職の地位確立に寄与することを目的とした。具体的な取組みは以下のとおりである。1. モデルの調査・分析経営学(特に、組織間関係論)、大学の設立経緯等の関連文献の調査を行い、これまで検討してきた、研究支援モデルの再検討を進め、「業務分担型」、「協働型」の2類型での分析を進めた。また、URA組織と事務組織をつなぐ人材としての対境担当者のスキル分析や、URAと事務職員の協働を実現する上での情報共有の方法等について、学術的視点からモデルの分析を行った。2. ヒアリング調査による実態解明 RA協議会組織会員の大学、文部科学省調査対象大学を中心に候補を洗い出を行い、計12の大学・研究機関のURA組織・事務組織にヒアリング調査を行った。調査の結果、URA組織から事務組織へのアプローチは、URAの人事制度、URA組織の設置目的・規模に応じて異なること、また、事務組織からURA組織については、URAの活動に対応する形態ではあるが、URAと事務職員の協働が活発な大学では、担当部課長、URAを兼務する事務職員、事務職員出身のURAなど連携の鍵となる事務職員が存在することが確認された。3. 協働事例、モデルの発信 2018年9月のRA協議会第4回年次大会-リサーチ・アドミニストレーター協議会において、中間的な報告として、ヒアリング調査に基づいた「業務分担型」、「協働型」の研究支援モデルを発表し、全国のURAと情報交換を行った。得られた研究実績は、事務職員向けの人材育成プログラム等を通じて発信していく。
    5. 大学の研究マネジメントの比較分析 17H04557 2017-04-01 – 2020-03-31 玄場 公規 法政大学, イノベーション・マネジメント研究科, 教授 (80313039) 基盤研究(B) 本研究は、海外と日本の大学における研究マネジメントの比較分析を行った。分析の結果、欧米の研究大学においては、研究支援体制が積極的に整備されており、研究支援者(URA)の専門性やモチベーションを高めるための取り組みも行われている。 特に欧州では、専門家としてのキャリアを支援し、社会的認知を広めるため協会が設立され、情報交換や専門知識の向上に取り組んでいることが確認された。 一方、日本でもURAの採用など大学の研究支援が行なわれているが、日本の大学の研究支援体制は海外の大学に比べて十分に整備されておらず、研究マネジメントは今後の課題であることが確認された。
    6. 博士課程出身の大学非正規職員に関する探索的研究:高学歴ワーキングプアか新専門職か 16K13554 2016-04-01 – 2019-03-31 大森 不二雄 東北大学, 高度教養教育・学生支援機構, 教授 (10363540) 挑戦的萌芽研究 博士課程出身の大学非正規教職員の実態を探索するため、博士課程出身の非正規労働者に関するインターネット調査を行った結果、職の不安定性、正規雇用との比較における給与・賃金の低さ、将来への不安、自らの学位・学歴が正当に評価されないことや、専門性が生かせないことに対する不満、テニュアの教員ポストに就けた者との待遇格差等、博士課程出身の非正規労働者(大学非正規教職員等)の置かれている厳しい状況が浮き彫りになる知見を得た。他方、海外調査の結果として、英国の大学で、近年、伝統的な大学教員職や事務職員とは異なる専門職が勃興・増加し、博士号取得者の進路の一部となっている状況について知見が得られた。
    7. 研究成果の評価指標開発:ソーシャルメディアにおけるインパクト実証研究 16K12770 2016-04-01 – 2019-03-31 山田 礼子 同志社大学, 社会学部, 教授 (90288986) 挑戦的萌芽研究 研究IRが着目されるようになっている。そこで、研究IRにかかわる大学のURAとURAを管轄する部署の責任者への質問紙調査を通じて、研究IRが日本でどのように位置づけられているかの分析を行うことを企図した。3回の研究会と大学URAおよび研究担当副学長等への質問紙調査を実施した2017年から2018年2月にかけて実施した。大規模大学だけでなく、研究IRは1件あたりの科研採択金額の小さい大学に改善効果を与えたことが知見として、得られた。研究IRが、主に大規模研究大学のものとしてのみ発展してきているわけではなく、1件あたりの科研採択金額の小さい大学ほど改善効果があるという特徴がみられた。
    8. 高等教育新興プロフェッションの養成メカニズムに関する実証的研究 16K04619 2016-04-01 – 2020-03-31 二宮 祐 群馬大学, 大学教育・学生支援機構, 准教授 (20511968) 基盤研究(C) 「新しい専門職」は大学改革が推進されるなかで、主として米国の高等教育機関における新興専門職が参考とするべきモデルとされたうえで、日本への導入が図られた。
      ファカルティ・ディベロッパー、キャリア支援・教育担当者、インスティテューショナル・リサーチ担当者、リサーチ・アドミニストレーション担当者、産官学連携コーディネート担当者を対象とした聞き取り調査、質問紙調査の結果から、必ずしも十分には目標を達成することができず、職能形成にも課題があることが判明した。
    9. 研究大学の産学共同研究履歴を用いた成果実用化の要因分析:計画性と柔軟性の効果 16K03907 2016-04-01 – 2020-03-31 高橋 真木子 金沢工業大学, イノベーションマネジメント研究科, 教授 (70376680) 基盤研究(C) 産と学の連携は、知識基盤社会におけるイノベーション創出の重要な活動の一つとされ、企業にとっては、不足する経営資源を効率的に獲得でき新製品創出に大きな効果をもたらす。大学にも研究資金の増加、設備の充実などのメリットを与える。しかし、どのような連携形態が成果創出に最も効果があるかは明らかになっていない。
      本研究では、産学連携の主たる活動である共同研究、とりわけ相互に価値があるとされる長期的な連携に着目し、その効果を明らかにする。結果、大学研究者と企業の共同研究契約の詳細分析から、長期的な連携は研究費の増加という利点をもたらすこと、明示的な技術能力の向上につながる成果があることが明らかになった。
    10. 産学連携が企業及び大学の研究生産性に与える影響の実証研究 16K03692 2016-04-01 – 2020-03-31 枝村 一磨 神奈川大学, 経済学部, 助教 (20599930) 基盤研究(C) 本研究では、論文データと特許データを用いて、研究者の研究履歴や人的ネットワーク等の特性を考慮しつつ、産学連携による共同研究が企業及び大学の研究生産性に与える影響を計量経済学的に分析します。産学連携が企業の特許出願活動や企業パフォーマンスに与える影響をパネルデータ分析した結果、産学連携は企業の特許出願を促進しており、売上高や粗付加価値を増加させることが示唆されました。また、産学連携の決定要因を大学の視点から分析した結果、大学のリサーチ・アドミニストレーターや産学官連携コーディネーターの存在が産学連携の実施を促していることも示唆されました。
    11. 研究支援専門人材組織のマネジメントにおけるプロジェクト型組織モデルの有効性検証 16H00086 2016 米田 洋恵 金沢大学, 先端科学・イノベーション推進機構, 専門員 奨励研究 リサーチ・アドミニストレーター(RA)と産学官連携コーディネーター(CD)が連携して研究支援にあたることは、研究の推進に大きく寄与する。そのため、両者の連携を重視した柔軟で効果的な研究支援を実現する組織体制・組織マネジメント方法として「プロジェクト型組織モデル(以下「本モデル」)」を提案し、その有効性を検討した。本モデルでは、RAとCDが職掌ごとに別々の組織に所属するのではなく、両者が同一組織に所属し、プロジェクト単位で混合チームを設置する。本研究では、一部に本モデルを導入した金沢大学のRA・CD組織、先端科学・イノベーション推進機構(FSI機構)を調査対象とし、平成28年4月から1年間活動状況を記録した。その結果、新たに融合研究を行う研究チームの立ち上げにおいて、本モデルが著しい成果を上げたことがわかった。また、本モデルにおけるマネジメントの困難さ、具体的には、業務内容およびマネジメント担当者の資質が、本モデルを導入した組織のマネジメントの成否に非常に大きく影響する可能性があることがわかった。同時に行った、他研究機関における組織体制調査においては、RA・CDの連携の重要性は認識しているものの、実際に取り組みを進めている組織はごく限られることがわかった。また、取り組みを進めている組織のなかで最も成果をあげている組織が本モデルを導入していることがわかった。比較検討した結果、本モデルは、RA・CD組織において、業務内容とマネジメント担当者の資質によっては大きな成功を収め得るため, 導入にあたっては、この二点の検証を経る必要性が高いことがわかった。なお、本研究の実施期間内では、他のより効果的な組織体制・運営方法については十分な検討を進めることができなかった。RAとCDが一貫した研究戦略に基づいて活動し、研究推進に大きく寄与しうる組織体制およびマネジメント方法を明らかにするためには、さらなる調査を行う必要がある。
    12. ガバナンス改革時代の大学経営人材養成に関する研究 15K04313 2015-04-01 – 2019-03-31 山本 眞一 桜美林大学, 心理・教育学系, 教授 (10220469) 基盤研究(C) 知識基盤社会・グローバル化および18歳人口の減少の中で、大学経営人材の養成および能力開発は喫緊であることに鑑み、本研究は実施された。その結果、これからの大学では、(1)新たな次元での教職協働(役員・教員・職員の活動目的の共有)が必要で、これまで議論の主流であった教員と職員との役割葛藤を克服して、大学経営のため必要な人材を確保する必要があること、(2)米国などとの比較に基づき、職員の役割を、教員の活動の支援のためと限定することなく、大学経営のための管理職や専門職にも広げる必要があること、(3)能力ある職員を、役員・管理職・専門職に引き上げる方策をさらに検討する必要があることを明らかにした。
    13. 大学における研究支援体制の機能強化に資するURAの能力向上及び最適配置について 15H00084 2015 – 2016 池見 直俊 九州大学, 理学部等事務部, 大学職員 奨励研究 大学教員の研究力を高めるため、URAに必要な能力やURAの最適配置について、URAや米国のリサーチ・アドミニストレーター(RA)の事例を参考にしつつ調査研究を行った。URA調査では、リサーチ・アドミニストレーター協議会年次大会に出席し、参加大学のURAと意見交換を行った。また、東京大学、金沢大学、京都大学、関西大学、広島大学の5大学を訪問し、各大学のURA等と意見交換を行った。URAの能力における特記事項として、関西大学では広告業界やウェブデザイン業界等ノンアカデミック出身のURAが研究広報をサポートしていること、奈良先端科学技術大学院大学では同大学で博士号を取得後に外資系企業で海外事務所の設置等に従事したURAが大学の海外事務所開設に深く関与していたことが挙げられた。配置における特記事項として、東京大学は部局URAを重視していること、東京大学、金沢大学、関西大学、広島大学は事務職員と同じオフィス内にURAを配置し事務職員との交流を意識していることが挙げられた。アメリカのRA調査では、スタンフォード大学のRAと意見交換を行った。また、アメリカのRA向けの研修会”Basics of Research Administration meeting”に参加し、RAのキャリアパスやバックグラウンドについて参加者と意見交換を行った。RAは日本の大学における研究担当事務職員もしくは研究室秘書のような位置づけであり、日本のURAのような業務は外部コンサルタントやリサーチ・アソシエイト(いわゆるポスドク)が担っているとのことであった。日米での調査結果を踏まえた上で、研究代表者が日常業務でかかわっている九州大学の理学系教員及び数理学系教員125人へ支援を受けたい内容についての質問票調査を行ったところ、その結果から今後は支援内容についての因子分析を行っていく必要があることが明らかとなった。
    14. 日本版URAに最適なロールモデル及びキャリアパスの構築について 26907030 2014-04-01 – 2015-03-31 池見 直俊 九州大学, 国際部, 主任 奨励研究 本研究では、日本の大学において必要性が高まっているリサーチ・アドミニストレーター(URA)にとって最適なロールモデル及びキャリアパスを構築するため、日本及び米国のURAやURA相当職へ質問調査を行った。
      日本では5機関10人のURAやURA相当職へ対面式のインタビュー調査を行った。全国の大学においてURAが雇用され始め、その数は比較的に増大したが、各大学におけるURAの認知度は執行部以外では未だに低いということであった。また、各大学のURA組織は教員組織や事務組織と物理的に離れた場所に配置されており、インフォーマルな場での知識共有を阻害する1つの要因と考えられる。加えて、URAを多数雇用している大学は、本部担当URAの他に部局担当のURAも配置しているが、URA組織設立当初から雇用されているURAと、組織が成熟した後に加入したURAとが価値観を共有することが難しいとのことであった。
      米国ではスタンフォード大学の研究者から紹介を受けたハワイ在住の外部資金獲得コンサルタントにメールによる質問調査を行った。日本の大半の大学ではURAの採用条件に博士号が入っているが、当人によれば、何かの研究に精通しているとういことはこの業種で必須ではなく、むしろどのような研究においても人にわかりやすくストーリー仕立てで伝えることができる能力や、複数の複雑な研究内容を申請書の中でうまく統合していくという能力が求められるということであった。
      以上の調査から、URAにとって最適なロールモデルおよびキャリアパスを構築するためには、組織配置の改善による知識共有URAの認知度向上URA間での価値観の共有URAに必須のスキルについて更に掘り下げていく必要があり、これまでのインタビュー結果から抽出した要素を含めた大規模な質問票調査を行う必要があることが明らかとなった。
    15. 大学研究力強化のための分析指標および研究戦略プロセスモデルの提案 26870226 2014-04-01 – 2017-03-31 鳥谷 真佐子 金沢大学, 先端科学・イノベーション推進機構, 助教 (90420819) 若手研究(B) 本研究の目的は、1.研究力向上を導く戦略策定のための研究力分析指標提案、2.研究戦略策定・実施プロセスモデル提示を試み、大学における研究戦略策定・実施方法を体系化することにある。研究力分析に関わる組織、研究力分析を研究戦略に活かすプロセス、研究戦略実施に関する調査を行った。参考としてイギリスの研究評価制度の調査を行ったが、イギリスでは指標を用いた評価はピアレビューを行う際の参考としてのみ用いられていることが明らかになった。指標による評価は、被評価側の偏った行動を誘起しやすいため、自機関の分析のための指標利用と、研究機関への資金配分のための指標利用は、厳密に区別する必要がある。
    16. 大学研究推進支援人材の組織内における知識移転とスキル構成についての分析 26590208 2014-04-01 – 2017-03-31 伊藤 伸 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90520883) 挑戦的萌芽研究 大学や公的研究機関で研究者を支援し、多様な専門的業務を担う研究推進支援人材を対象に質問票調査を実施した。国内の研究推進支援人材から401の有効回答を得た。スキル(実務能力)を測る「URAスキル標準」を活用し、研究推進支援人材の全体的なスキル分布を把握した。因子分析とクラスター分析の結果、保有するスキル特性を反映した5つの集団が得られた。さらに重回帰分析により、研究推進支援人材の個人と職場の両方の業績と、スキルや組織設計に関する項目との関係を明らかにした。
    17. 日米大学のURAの役割・機能の比較分析 26301026 2014-04-01 – 2017-03-31 玄場 公規 法政大学, 大学院イノベーション・マネジメント研究科, 教授 (80313039) 基盤研究(B) 本研究の目的は日本及び海外の研究大学のURA(大学のリサーチ・アドミニストレーター)の機能、モチベーション、役割の比較分析を行う。調査の結果、以下の点が明らかとなった。海外の研究大学のURA人材は法律、経理・財務、知的財産などの高い専門性を有しており、研究者に高度な研究支援サービスを提供していた。また、仕事に対するモチベーションも高く、職務への満足度も高い。さらにキャリアパスも多様であり、研究者としてのキャリアを有している人材も数多くいるが、一方で人材の流動性は決して高くないことが確認された。日本のURAも政策支援により採用されているが、専門性とモチベーションを高める努力が必要である。
    18. 大学職員業務の改善による強い職員組織の形成とスタッフ・ディベロプメントの再構築 25922015 2013-04-01 – 2014-03-31 山本 淳司 京都大学, 総長室, 大学事務職員 奨励研究 SDに係る議論は、FDと同様に具体論の展開が求められるが、一般論としてのアドミニストレーター論が中心で、現場の職員が業務の改善を実感できる道筋を提示しきれていない。これらを解決するため、(1)定型的な実務を含む現場の職員業務を階層化した上で分析し、OJT (On-the-Job Training)への組入れを念頭に置き、業務改善の具体化を検討すること、(2)業務改善案をシミュレートし強い職員組織を提案すること、を研究の目的として設定し、この目的を遂行するために以下のような段階で進めた。
      1) 対象となる職員業務と職員層の特定…教学関係のマネージャークラスを主対象
      2) 業務の適切性を判断し業務を分析…業務プロセス等を整理
      3) 実務分析に基づく業務内容の見直し…業務内容が明示できるかを確認
      4) 業務に必要な資質や能力等の検討…予め提示の場合も検討(事務分掌規程等を参考)
      5) 実務に基づくSD分析のOJTへの組入れ…人事制度と連動している先行事例を参照
      6) 強い職員組織の提案を行うべく検討…フィージビリティを考慮
      研究を進めるに当たっては、代表者が関与している他の研究課題における意識調査等の一部も参考に、先行研究にも意識しながら進めた。比較検討においては、業務改善を前提として業務フロー等を確認すると、組織論的にみてプレイングマネージャーがミドルアップダウンの機能を果たすか否かに関わらず、職務説明書が予め明示され、求められた業務遂行能力等を持った職員が大学のミッションやコンプライアンスを意識し、意欲を持って業務を誠実に遂行していれば、業務はスムーズに行われていることが分かった。また、業務の対象を限定してフロー等を確認すると、業務改善に資することもあるが、大括りのjob間の重複業務等の調整には至らないため、業務全体の組換えを前提として業務に適合した組織を構築する方が望ましい等の課題が見えてきた。個々の職員を見た場合の背景として、我が国の労働慣行ともいえる無限定な業務へのスタンス等を求めることは必ずしもプラス効果を発揮していないことが考えられる。強い職員組織の提案は、その裏付けとして単純な想定しかできなかったが、今後、実務に直結した面談調査も踏まえて、更なる成果を挙げ人事制度と連動したプログラムの試行に繋げて行く計画である。
    19. 研究プロデュース能力養成のためのゲーム型教育教材の開発 25910019 2013-04-01 – 2014-03-31 山本 祐輔 京都大学, 学術研究支援室, 特定専門業務職員 奨励研究 【研究目的】本研究では、初心者リサーチ・アドミニストレータ(以下URA)やURA志望の職員・若手研究者が、研究プロデュース業務(URA業務)を象徴するケースに触れることで「URA業務の全体像や個々のケースを乗り切るための考え方」を獲得するためのゲーム教材を開発した。【研究方法】以下の手順で研究を行った。①URAおよびURA類似職員に対するヒアリングを通じたURA業務事例の収集、②URA業務の分類・モデル化、③URA業務を象徴するケースの抽出、④ゲーミフィケーションを用いたURA体験ゲームプロトタイプの開発、⑤プロトタイプテスト。【研究成果】研究開始当初、ボードゲーム形式でURA業務を体験・議論することを計画していたが、ゲーム参加者が議論したいURA業務事例を自ら積極的に選び、他の参加者と活発な議論ができるよう、ゲーム形式の再検討を行った。その結果、かるた形式のゲームを開発した。かるたには、URA業務で象徴的な場面に加え、その場面を乗り切るための考え方・方法を記した選択肢が2つ書かれている。ゲームの参加者は50種類のかるたから、自分が議論したいかるたを選択する。選択したかるたを元に、ゲーム参加者はかるたに書かれた場面をどう乗り切るかについて、自分の意見をぶつけながら議論する。最終的に一番盛り上がったかるたを多く持っていた参加者が勝者となる。プロトタイプテストを通じて、本かるたゲームはURA初心者にもURA経験者にも、URA業務に対する考え方を深めるために効果があることが示された。ゲーミフィケーションを用いることで、URA研究会などでは質問・議論しづらいことを遠慮無く他の参加者にぶつけることが可能になった。また、体験したことがないURA業務に対する考え方を、他の参加者から吸収する機会を創出することができた。一方で、ゲームを終了するのに時間がかかるなどの問題も明らかになった。今後はゲームバランスを調整し、URA研究会などでゲーム体験会を実施したい。
    20. 大学人文社会系組織のリサーチ・アドミニストレーター固有の役割に関する研究 25907042 2013-04-01 – 2014-03-31 村上 壽枝 東京大学, 政策ビジョン研究センター, 特任専門職員 奨励研究 本研究は、リサーチ・アドミニストレーター(以下、URAとする)の役割が大学等の理系研究組織を基に考えられており、大学人文社会系組織におけるURA固有の役割については例が少ない事を問題意識と捉え、事例研究を通じてURAの活動促進に繋げることを目的としている。
      本研究の開始後に役割分類で参考となるURAスキル標準が、2013年度末の公開という情報を得たため、先ず人文社会系の研究支援事例のシンポジウム参加者ヘアンケートを行い、研究支援業務を行っていないとされる8名を含む45名の回答(回収率60%)を得てスキル標準の公開後に分析した。
      アンケートでは、支援業務を行っている者に限定した質問の結果、文系組織支援者はスキル標準の③「ポストアワード」支援が多く、理系組織の支援者はスキル標準の一部を除く、①「研究戦略推進支援」、②「プレアワード」、③「ポストアワード」、④「関連専門業務」の支援全般に携わっている傾向があることが分かった。
      また、バックグラウンドと支援の関連の詳細を調べるため、バックグラウンドがa)文理両方で1名と文系10名(内、理系支援と文系支援各1名以外は全学支援者)と、b)理系3名(理系支援者)のURAにインタビューした。
      その結果、a)では、スキル標準の①から④のそれぞれに支援該当者がおり、特に④の産学連携とアウトリーチに関する支援が多い傾向が見られた。
      また、一部のa)のURAからは、支援上、文理関係無いとした見解を得たが、b)のURAからは同様に文理関係無いとした見解を得た一方、実験や医療等専門分野の知識がなければ進められない業務情報も得た。
      このことから、URAのバックグラウンドと支援組織は文理関係なく支援は行えるとしても、レイヤーによって支援組織や分野の専門知識が必要な場合もあるとした示唆を導くことができた。
      日本のURAは、今はまだ黎明期であり、今後より多くの事例が見出されることが予想される。
    21. 実践的な日本型リサーチアドミニストレータ組織の管理・運営モデルの構築 25780509 2013-04-01 – 2017-03-31 寺本 時靖 神戸大学, 学術・産業イノベーション創造本部, 特命准教授 (80466482) 若手研究(B) 日本におけるURA組織は黎明期から定着期にある中でURA組織自体のマネジメントは非常に重要な位置付けである。URA組織の管理・運営モデルの構築を目指し、現在の管理・運営に関して分析を行った。
      個人のモチベーションと業務、組織における価値提供のアンケートの分析を行ったところ、約半数近くがモチベーションと業務、組織のギャップを感じており、仕事に対しての満足度が低かった。組織マネジメントにおいては、業務管理システムは定着してきているが、個人評価において評価の難しさと資源配分における難しさがあることを抽出した。米国の成熟組織の分析からは、継続的な組織学習が次の課題になることが明らかになった
    22. 日本の大学経営におけるデータに裏付けされた意思決定支援の適応可能性に関する研究 25590223 2013-04-01 – 2016-03-31 浅野 茂 山形大学, 企画部, 教授 (50432563) 挑戦的萌芽研究 IR先進国とされる米国においても、IR部署及びアセスメント部署が提供するデータを実際の意思決定につなげるのは一筋縄ではいかない。その理由を「ゴミ箱モデル」や「コンティンジェンシー理論」の枠組みに沿って考察したところ、大学の執行部はデータを絶対視するのではなく、意思決定に向けた合意を形成するための参考情報として活用し、ある共通認識の醸成へ向けて、各種情報を活用するという地道な努力の積み重ねが重要であることを明らかになった。データ利用者がデータ提供者であるIR部署等のデータをどのように活用しているかの先行研究は乏しいなか、本研究を通じて仮説的にではあるが一定の知見を示すことができた。
    23. 大学職員による外部資金獲得サポート業務の実態調査及びサポート手段の比較検討 24912006 2012 野口 悟 高知大学, 学生課, 主任/事務職員 奨励研究 国公私立525大学を対象に外部資金獲得に対しての研究支援事務サポートの実態調査をアンケート形式で実施し、252大学から回答を得た(回収率48%)。本調査では、修士以上の学位を持つ職員の研究支援部門への配置状況、URA(ユニバーシティ・リサーチ・アドミニストレーター)の配置、事務部門の一元化、特徴的な取組事例等についても研究支援事務サポートの新たな展開に繋げることを目的として行うた。当初、私が最も期待していた修士以上の学位を有する職員の積極的な採用や異動を行って事務サポートを強化している大学は、ほとんどなく(私学1大学/252大学)、現状では通常の事務職員の人事異動の一環で異動が行われており、専門的なスキルや知識の継承に支障をきたしていた。この現状を打破する施策として、平成23年度以降URA職(教職中間職の専門職)が注目されており、URA職の設置状況についても調査した。URA類似職も含めた設置割合は12%(30大学/250大学)であったが、設置していない220大学に対してURA職の必要性について尋ねると約半数の98大学が必要と答えた。今後、我が国での研究支援の在り方がURAの活躍によって変化してくることが推察される。また、各大学の特徴的な取り組みとしては、「ブラッシュアップ制度」「インセンティブ制度」が最も多く、その他には「若手への研究費の配分」「独自の研究業績DB開発」、経費のかからない対策としては「職員による各研究室訪問による情報収集」や「ワンストップサービスの実現」といった取組があった。なお、この調査結果は報告書としてまとめており、希望があれば配布することとし、全国の大学における外部資金獲得サポート業務の新たな展開の一助になると考えている。(jm-snoguchi@kochi-u.ac.jpへ連絡していただければ配布します)(調査協力大学へは別途配布)
    24. 実践的な日本型リサーチアドミニストレータ組織のモデル構築 23730736 2011 – 2012 寺本 時靖 金沢大学, 先端科学・イノベーション推進機構, 特任助教 (80466482) 若手研究(B) 日本で導入が始まった研究支援部門であるリサーチアドミニストレーション組織(RA組織)のモデル構築を試みるために、導入定着が進んでいる米国の大学と日本の大学の組織の調査を行った。米国ではRA 組織の機能としては、主に「Pre-award 業務」「Post-award業務」「Compliance業 務 」「Data Management業務」があり、それぞれに対応する組織が設置されている。また、研究力が高い大学ほど、RAの人数が充実していることが明らかになった。また日本型では研究戦略を中心とした組織形態が多くみられ、アメリカではResearch Development部門と類似の機能を持っていることが明らかになった。
    25. メディカル・リサーチ・アドミニストレータ人材の教育・育成法の確立 23700954 2011 – 2013 杉原 伸宏 信州大学, 産学官連携推進本部, 准教授 (10324245) 若手研究(B) 本研究では、治験等の領域特有の法律やルール、競争的資金の獲得、知財戦略構築等の知識を併せ持ち、実際に医学系の研究開発をマネジメントできるメディカル・リサーチ・アドミニストレーター(MRA)を育成するための手法を開発した。信州大学での医学領域の研究開発マネジメント事例を参考に、MRA人材育成に関する課題として、医療現場からの開発ニーズ発掘、医療現場からの開発ニーズと企業の技術シーズのマッチング、医療関係者と企業との共同開発、臨床研究、治験・薬事申請、認可・販売、について、成功例と失敗例での調査・解析を行い、手法としてまとめた。これらの成果は、各種会議や研究会で発表し、本学で実践されている。
    26. 株式会社立大学における大学経営組織の実証的分析 21906039 2009 村上 孝弘 龍谷大学, 図書館事務部, 大学職員 奨励研究 本研究は「株式会社立大学の大学経営組織」について、特に大学内における「大学アドミニストレーターの役割」に主眼を置いた実証的検討を行うことを目的とした。具体的には、それぞれの意思決定の形成過程、そこにおける職員への役割期待、大学アドミニストレーター養成の実態を調査した上で、国立・公立・私立の大学との比較検証を行い、伝統的大学の管理運営への示唆を得ることを企図していた。ヒヤリング対象を現行の株式会社立の3大学・5専門職大学院とし、うち前者では2校、後者では4校を訪問調査した。また特区認定を行った自治体を始め、認証評価機関も含め各種大学関係団体等への調査も実施した。調査の結果、株式会社立大学の大学経営組織は、特に日常的な事務組織については、文科省のアフターケア等の影響もあり、既存の大学のそれと近似しつつあるということが改めて認識できた。さらにその結果、意思決定や執行システム面においても、営利企業のビジネスモデルが株式会社立大学において必ずしも貫徹できているとは思われない状況も見て取れた。株式会社において最も重要な意思決定機関である株主総会と株式会社立大学の運営との関係についても、設置会社と株式会社立大学との財政等を明確に分離した運営がなされている場合が少ないこともあり、効果的・機能的な運営がなされているか否かの結論を導くまでには至っていない。株式会社立大学が株式会社という経営形態のメリットを活かした大学運営を展開し、硬直的で固定的とされている伝統的大学のガバナンスを現代化するためのビジネスモデルを提供できるかどうかについて、今後とも継続的に検証を続けて行きたい。
    27. 大学リサーチアドミニストレーター開発のための実践的研究 21730668 2009 – 2010 鳥谷 真佐子 金沢大学, フロンティアサイエンス機構, 博士研究員 (90420819) 若手研究(B) 本研究は、競争的研究資金が拡充していく環境のなかで研究者の負担を減らし、効果的・効率的な研究実施を支えていくための、日本の大学が取りうる研究支援(リサーチアドミニストレーション)体制モデルを提示すること、またそのために組織を横断した情報交換を促進することを目的としている。そのために、まず日本のリサーチアドミニストレーションに関わる専門人材の配置状況調査を行い、その職務内容や雇用形態等を明らかにした。また、アメリカのリサーチアドミニストレーションの調査を行い、日本の状況との比較を行った。さらにリサーチアドミニストレーション研究会を発足させ、リサーチアドミニストレーション人材のネットワーク作りにも貢献した。
    28. 第三者評価における専門分野別評価の在り方と職員の能力開発 19906075 2007 山本 淳司 京都大学, 京都大学, 事務職員 奨励研究 この研究テーマは、JABEE認定プログラムをはじめとする教育プログラム評価が、今後認証評価における専門分野別評価の中心となることを職員の立場から検証し、専門化・高度化が求められている次世代型職員(アドミニストレータ)の能力開発や今後の役割等について、専門職化へのアプローチに繋がる具体的な政策提言にまで繋がることを目的として、当該研究活動で得られた成果を大学の現場に敷衍することを視野に入れたものである。理工学系の大学や高等専門学校を中心に、これまでから第三者機関による評価の一環として、JABEE(日本技術者教育認定機構)により、教育プログラムを審査し認定するJABEE認定プログラム評価が実施されており、専門分野別評価の好事例として評価されている。ここでは、JABEE評価の内容を分析・整理し、機関別評価や法人評価の関連事項と比較検討すること等によって、専門分野別評価は、1)機関別評価を補完するものであること、2)教育プログラム評価を実施する上で有効であること、3)JABEE認定プログラムのように国際的な認定プロセスが必要であること、4)大学によって有効なツールとして活用することが可能なこと、さらに、5)評価活動の実質的な評価者として、アドミニストレーターが今後重要な役割を担うようになることなどを検証した。また、アドミニストレーターについては、スペシャリスト的素養を備えたアカデミック・アドミニストレーター(教育研究専門職)とジェネラリスト的素養を備えたジェネラル・アドミニストレーター(大学経営専門職)に分類し、スペシャリスト及びジェネラリストの専門性を分析した上で、双方の専門性を兼ね備えたハイブリッドな素養を持つプロフェッショナルとしてのアドミニストレーターの必要性を導いた。ただし、アドミニストレーター個人のキャリア形成における視点に加えて、組織の視点から分析・整理が必要であり、それらを課題とした実践的取組を念頭に置いている。
    29. 新たな第三者評価制度の実態とアドミニストレータとしての大学職員の関わり 17906062 2005 山本 淳司 国立大学法人京都大学, 事務職員 奨励研究
    30. 大学の戦略的経営のための職員の活用及び職能開発に関する研究 14510292 2002 – 2004 大場 淳 広島大学, 高等教育研究開発センター, 助教授 (50335692) 基盤研究(C) 本研究は、18歳人口の減少、国際化、情報化など、大学が置かれている環境が大きく変化し、大学の管理運営・経営の抜本的な改革が求められる中で、大学の教員外職員(大学職員)の在り方に関しての研究が不可欠であるとの認識で着手したものである。すなわち、今日、多くの大学で経営は専門性を欠いており、経営の専門家たるべき職員の関与の度合いも低く、他方大学職員には必ずしもそれに必要な能力開発の機会も担保されていない。そのような体制の下では、現在必要とされている戦略的な大学経営の実現は極めて困難であり、環境変化に対応することも不可能であろうと考えたからである。
      本研究は、大学の教員及び大学職員が管理運営・経営に関して、どのような組織に属し、いかなる役割を果たし、どのように大学の意思決定に関わっているかを解明し、大学が戦略的に経営を行っていく上での問題点を明らかにし、大学の管理運営・経営に従事する人材の育成方策、具体的には大学職員の職能開発の在り方等についての研究を、国外事例との比較をしながら行うこととしたものである。
      調査は、先行研究に基づく文献の読解、インターネットによる資料収集、アンケート調査、国内外の大学や専門職団体等を訪問しての聞き取り調査等によって行った。それに基づき、成果報告書においては、関連する概念の整理や大学職員の置かれた状況、大学職員についての研究動向、教職員の専門職化の動きについて整理し、その上で、大学職員のキャリアやその専門職化の方向について考察し、大学が戦略的経営を行うための職員活用・能力開発についてに検討を行ったところである。また、国内私立大学での職員専門職化に関する調査、国内外大学や専門職団体、職員養成学校等の調査訪問の記録も含まれている。
    31. 大学経営人材養成のための大学院修士課程プログラム開発に関する実践的研究 12610238 2000 – 2001 山本 眞一 筑波大学, 教育学系・大学研究センター, 教授 (10220469) 基盤研究(C) 2001年2月、全国の国公私立大学の事務局長(相当職を含む)および30〜40歳台の中堅職員約1,300人に対してアンケート調査を行った(回収率68.2%)。その結果、大多数の職員が何らかの能力向上方策を必要と考え、とりわけ、経営戦略等の企画能力の向上に関心があることが分かった。
      国公私立大学間で大きな違いがあるのは、当該大学における勤務年数である。つまり私立に比べて、国公立の事務局長はその年数が極端に短い。その上、公立では中堅職員についても短い。国立大学では、有能な事務局長の長期安定的確保を考えるのは当然であろう。さらに公立では、大学職員そのものの専門性育成が課題ではあるまいか。職員の学歴構成の違いは、隠れた人気職種としての私立大学職員を裏付けている。
      能力向上方策については、修士課程プログラムの有効性を支持する意見は、事務局長44.0%、中堅職員47.7%であり、既存の研修制度の方がよいとする意見(それぞれ42.4%、40.5%)より多かった。受講内容としては、経営戦略等の企画能力の向上、知的財産権の処理など最近注目されている新しいタイプの専門知識に関心が高く、日常的事務処理能力の向上については低かった。
      さて、以上のような能力向上策を実際に生かすには、優秀な職員が大学の中でもっと積極的に活躍できるような場も必要である。これからの新しい大学経営にあっては、職員の立場をより積極的に考えるとともに、教員・職員の区分を超えた第三のカテゴリーつまりは「大学アドミニストレータ」とでも呼ぶべき新たな経営人材を積極的に.養成・登用し、大学として一体的に活動していくことが必要であろう。

 

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