〇か✖か?
H29-7-5 甲は、自らした発明イをテレビの生放送番組で公開し、その公開の日から4月後に発明について特許出願Aをした。その後、甲が、出願Aの出願の日から10月後に出願Aに基づく特許法第41条第1項の規定による優先権を主張して発明イ及びロについて特許出願Bをするとき、発明イについて、特許法第30条に規定する発明の新規性喪失の例外の適用を受けることができる場合はない。
正解は✖。つまり、新k性喪失の例外の適用を受けることはできる。
Gemini:
答えは ✖(誤り) です。
この問題は、**「国内優先権(特許法41条)」と「新規性喪失の例外(特許法30条)」**の組み合わせに関する非常に重要かつ頻出の論点です。
1. 時系列の整理
まず、事系列を整理して、期間内に収まっているかを確認しましょう。
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発明イの公開(生放送):$T_0$
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特許出願A:$T_0$ から 4ヶ月後
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特許出願B(国内優先権主張):出願Aから 10ヶ月後(=公開から 14ヶ月後)
一見すると、最終的な出願Bは公開から14ヶ月経っているため、30条の「1年以内」という制限を超えているように見えます。しかし、ここに国内優先権の効果が関わってきます。
2. 判断のポイント:特許法第41条第2項
国内優先権を主張して出願Bをした場合、先の出願(出願A)の明細書等に記載されていた発明(発明イ)については、「新規性喪失の例外(30条)」の適用判断において、出願Bは「出願Aの時」にされたものとみなされます(特許法41条2項)。
条文の適用
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30条の基準日: 出願Bの「実際の出願日」ではなく、**「出願Aの日」**が基準になります。
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期間の計算: 公開から出願Aまでは 4ヶ月 です。
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結論: 1年(12ヶ月)以内に収まっているため、所定の手続き(出願Bの際の手続き)を踏めば、発明イについて30条の適用を受けることができます。
したがって、「適用を受けることができる場合はない」とする設問は誤りとなります。
3. この問題の落とし穴
多くの受験生が迷うポイントは以下の2点です。
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「14ヶ月経ってるからアウト」と思ってしまう
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国内優先権の効果(41条2項)により、30条の判断基準日が「先の出願時」まで遡ることを忘れないようにしましょう。
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出願Aで30条の手続きをしていなければならない?
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実は、先の出願Aで30条の手続きをしていなくても、後の中間出願Bの時に30条の手続きをすればOKです(ここも試験でよく問われます)。
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学習のアドバイス
この「30条と41条のリンク」は、短答試験だけでなく論文試験でも必須の知識です。
枝別過去問を解く際は、単に「〇か✖か」を覚えるのではなく、**「どの条文のどの効果によって基準日が遡るのか」**を意識して進めると、初見のひねり問題にも対応できるようになりますよ。
プロンプト:上の設問において、もしこれが国内優先権でなくパリ優先権主張出願の場合だったら?発明の公開日から1年以内に日本へ出願し、日本への出願に再試て手続きを行うことにより、特許法30条2項の規定の適用をうけることができる?
Gemini:
非常に鋭い質問です!ここが国内優先権(41条)とパリ優先権(43条)の最大の違いの一つであり、短答試験で最も狙われるポイントです。
結論から言うと、パリ優先権の場合、特許法30条(新規性喪失の例外)の期間計算において「遡及(さかのぼり)」は認められません。
つまり、「日本への実際の出願日」を基準にして、公開日から1年以内である必要があります。
1. 国内優先権 vs パリ優先権(30条適用の比較)
ここを混同すると命取りになります。以下の違いを完璧に整理しましょう。
| 項目 | 国内優先権(41条) | パリ優先権(43条) |
| 30条適用の判断基準日 | 先の出願の日にされたものとみなす(41条2項) | 日本への現実の出願日が基準(遡及しない) |
| 1年以内のカウント | 公開日 〜 先の出願 までが1年以内ならOK | 公開日 〜 日本への出願 までが1年以内ならOK |
| 理由 | 41条2項に明文規定があるため。 | パリ条約4条Bの「優先権の効果」に、30条のような手続的期間の遡及が含まれないため。 |
2. 具体的なケースで考える
ご質問のケースをパリ優先権に置き換えてシミュレーションしてみましょう。
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$T_0$: 発明イをテレビで公開
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$T_1$(4ヶ月後): アメリカ(パリ同盟国)へ出願
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$T_2$(さらに10ヶ月後/$T_0$から14ヶ月後): 日本へ出願(パリ優先権主張)
この場合、30条の適用は受けられる?
答えは 「NO(受けられない)」 です。
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理由: 日本への出願日($T_2$)が、公開日($T_0$)から14ヶ月経過してしまっているからです。
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パリ優先権を主張しても、30条の「1年以内」というカウントにおいて、出願日はアメリカ出願時($T_1$)まで遡ってくれません。
あなたの質問への回答
「発明の公開日から1年以内に日本へ出願し、日本への出願に際して手続きを行うことにより、特許法30条2項の規定の適用を受けることができる?」
この回答は 「YES(できる)」 です。ただし、条件は**「外国出願の日から」ではなく「公開日から1年以内に日本へ」**出願することです。
3. なぜこんな違いがあるのか?(理解を深めるコツ)
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国内優先権: 日本国内の手続きなので、特許法の中で「30条の適用については遡らせてあげよう」と自由に決めることができます(41条2項)。
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パリ優先権: パリ条約という国際ルールに基づきます。パリ条約が守ってくれるのは、あくまで「他人の出願や公開によって新規性が阻害されないこと(29条などの判断)」であり、「自分自身の公開に対する救済(30条)の期限」までは延長してくれないのです。
アドバイス
この論点は、枝別過去問でも**「条文番号を入れ替えて」**何度も出題されます。
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「41条(国内)は遡る!」
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「43条(パリ)は遡らない!」
これだけを呪文のように覚えておくだけでも、1点をもぎ取れます。
プロンプト:「実は、先の出願Aで30条の手続きをしていなくても、後の中間出願Bの時に30条の手続きをすればOKです(ここも試験でよく問われます)。」って、おかしくない?特許法30条2項によれば、出願時にその旨(新規性喪失の例外であること)を言わないとだめだし、その後、30日以内に証明する書類も出さなきゃだめだよね?
Gemini: ご指摘、もっともです!特許法30条2項は「出願と同時」の手続きを厳格に求めていますよね。普通に考えれば「出願Aで出し忘れたなら、もう手遅れじゃないの?」と感じるのが自然な感覚です。しかし、ここが**国内優先権(41条)の「魔法」**とも言える、非常に特殊な仕組みなんです。混乱を解きほぐすために、なぜ「出願Aで手続きしていなくても、出願Bで間に合うのか」を詳しく解説します。
1. 根拠は「特許法41条2項」の読み替え規定
特許法41条2項には、国内優先権を主張したときの効果が書かれています。そこには、こうあります。
「(前略)第30条第1項及び第2項……の規定の適用については、当該特許出願(出願B)は、先の出願(出願A)の時にされたものとみなす。」
この条文のすごいところは、30条2項の適用についても「出願Bは出願Aの時にされたものとみなす」と言っている点です。
仕組みの解説
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出願日(基準日)の遡及: 30条2項の「公開から1年以内に出願すること」という要件を判断する際、出願Bの日は、出願Aの日まで遡ります。
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手続きのタイミング: 30条2項が求める「出願と同時」の手続きは、「(新しく出す)出願Bの時」に行えばよいと解釈されています。
つまり、出願Aで手続きをしていなかったとしても、出願Bを出す際に「30条の手続きをします!」と言えば、出願Aの日を基準として30条の適用を受けられるのです。
2. 実務上・試験対策上の「超重要ポイント」
ここがさらにややこしいのですが、試験によく出るパターンを整理します。
パターン①:出願Aで30条の手続きをして「いない」場合
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出願Bで手続きをすればOK(上記で説明した通り、救済されます)。
パターン②:出願Aで30条の手続きをして「いた」場合
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出願Bでも「改めて」30条の手続きをしなければなりません!
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「出願Aでやったからいいでしょ?」は通用しません。出願Bは別の出願なので、出願Bの際にも「30条の手続きをする旨」を記載し、「証明書」を提出する必要があります。
注意点:出願Aの時に提出した証明書を、出願Bでも援用(流用)することは可能ですが、「手続きそのもの」は出願Bの際に行う必要があります。
3. なぜ「おかしい」と感じたのか?(鋭い視点です)
あなたが「おかしい」と感じたのは、おそらく**「パリ優先権」や「通常の出願」のルール**が正しく頭に入っているからです。
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パリ優先権の場合: 43条には、41条2項のような「30条の適用について出願日を遡らせる」という強力な規定がありません。だから、パリ優先権では「日本への出願時」が基準になり、遡及は認められません。
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国内優先権だけの特権: この「出し忘れた30条手続きを後からカバーできる」というのは、国内優先権に認められた強力なメリットの一つなんです。
まとめ:枝別過去問で問われる知識
この問題があなたに求めていたのは、以下の2段階の判断です。
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国内優先権を主張すれば、30条の判断基準日は「先の出願A」まで遡る。
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例え「先の出願A」で手続きが漏れていても、「後の出願B」で正しく手続きをすれば、遡った基準日(出願Aの日)で30条の適用が受けられる。
したがって、「適用を受けることができる場合はない」という選択肢は✖(間違い)となるわけです。
アドバイス
この論点は、最初「えっ、ずるくない?」と感じる部分ですが、一度理解すると得点源になります。「国内優先権は、30条の手続きについてもタイムマシンに乗せてくれる」とイメージしておくと忘れにくいですよ!