特許法 第百七十二条 審判の請求人及び被請求人が共謀して第三者の権利又は利益を害する目的をもつて審決をさせたときは、その第三者は、その確定審決に対し再審を請求することができる。
2 前項の再審は、その請求人及び被請求人を共同被請求人として請求しなければならない。
プロンプト:なぜ、こんなにこの条文は、具体的で生々しいの?ちょっと各論すぎない?こんなこと、しょっちゅう起きるの?
Gemini 3:確かに、この172条だけ急に**「サスペンスドラマの悪巧み」**のような生々しい書き方ですよね。「共謀して」「害する目的で」なんて、他の淡々とした条文とは空気が違います。なぜこんなに具体的で生々しいのか、その理由を解き明かしましょう。
1. なぜこんな「各論」的な条文があるの?
この条文は、法律用語で**「詐害審判(さがいしんぱん)」**を防ぐためのものです。
通常、審判は「Aさん vs Bさん」の戦いです。しかし、もしこの2人が裏で手を組んで(共謀)、わざと「Cさん(第三者)」が困るような結論を審判官に出させたとしたらどうでしょう?
具体的な悪巧みの例:
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登場人物: 特許権者A、ライバル企業B、そして邪魔なC社。
- 悪巧み: 1. AとBがわざと「特許を有効とする」という審決を勝ち取るために、手ぬるい証拠だけで審判を形だけ行う。2. 審判官は「Bの反論が弱いな」と思い、Aの特許を強力に認める審決を出す。
3. その審決を使って、AとBが結託してC社に「ほら、国が認めた特許だぞ。お前の商売はやめろ!」と圧力をかける。
C社からすれば、**「自分たちが知らないところで、勝手に自分たちを攻撃するための武器を作られた」**ことになります。これをひっくり返すための専用ルートが172条なのです。
2. こんなこと、しょっちゅう起きるの?
結論から言うと、滅多に起きません。 宝くじに当たるより珍しいレベルです。
では、なぜわざわざ条文があるのかというと、以下の理由があります。
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「民事訴訟法」のルールを真似した: もともと裁判の世界には「詐害判決」という似たようなルールがあります。特許の審判は「行政処分」ですが、裁判に近い性質を持つため、同じような不正が起きないよう「念のため」設置されています。
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「一度決まったら絶対」の破壊力: 審決が確定すると、その効果は非常に強力です。だからこそ、たった1%でも「悪用される可能性」があるなら、それを防ぐ逃げ道を作っておかないと、法律としての正義が保てないのです。
3. 第2項の「共同被請求人」ってなに?
第2項には「2人をセットで訴えなさい」と書いてあります。
「前項の再審は、その請求人及び被請求人を共同被請求人として請求しなければならない。」
これは、**「悪巧みをした2人を、まとめて被告席に座らせなさい」**という意味です。
C社が再審を請求するときに、Aだけ、あるいはBだけを相手にするのではなく、セットで責任を取らせて審決をやり直させます。片方だけだと、また裏で何をするか分かりませんからね。
まとめ
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なぜ具体的?: 第三者をハメるための「形だけの審判」という、特定の悪質なパターンを封じ込めるため。
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しょっちゅう起きる?: 全く起きません。でも、起きた時にC社が「詰んで」しまわないための最強の防御策として存在しています。
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172条の正体: 悪党2人がタッグを組んで一般人を陥れた時に発動する、**「正義のヒーローの割り込みボタン」**のような条文です。
特許法は、このように「普通にやっていれば起きないようなズル」に対しても、先回りしてルールを決めているところが面白い(そして少しマニアックな)点です。
172条の「悪巧み(詐害審判)」による再審。この期限の数え方には、被害者である第三者を守るための**「優しい配慮」と、一方でビジネスを停滞させないための「シビアな線引き」**が混ざっています。
普通の再審と何が違うのか、ポイントを絞って説明しますね。
1. 「いつから」カウントを始めるか?(30日のルール)
普通の再審(例えば、書類の偽造が見つかったなど)の場合、その事実を**「知った日」**から30日以内に請求しなければなりません。
172条の悪巧みの場合、ここが少し特殊です。
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普通の理由: その理由(偽造など)を知った日から30日。
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172条(悪巧み): **「その審決が共謀によって出されたものであることを知った日」**から30日。
なぜこれが特殊なの?
第三者(Cさん)は、そもそも「AとBが審判をしていること」すら知らない場合があります。後から「えっ、AとBがこんな変な決定を勝ち取ってる!」と気づき、さらに調査して**「あいつらグルだったのか!」と確信した瞬間**に、初めてストップウォッチが回る仕組みになっています。
2. 「いつまで」受け付けるか?(3年のルール)
ここが一番シビアなところです。
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原則: 審決が確定した日から**「3年」**を過ぎると、たとえ後から悪巧みを知っても、もう再審を請求することはできません(特許法173条4項)。
「悪巧みをされたのに3年で終わりなの?短くない?」と感じるかもしれませんが、これには特許ならではの理由があります。
3年で打ち切る理由:
特許権は、世の中の多くの人が「この特許は有効だ」と信じてビジネスをするための基盤です。10年も20年も経ってから「実はあの時の審判は悪巧みでした」と言って特許が消えたり変わったりすると、それを信じて投資した他の会社が大混乱してしまいます。そのため、**「正義」よりも「社会の安定(キリをつけること)」**を優先して、3年という期限が設けられています。
3. 普通の再審との比較まとめ
| 項目 | 普通の再審(171条1項) | 悪巧みの再審(172条) |
| 誰が請求する? | 審判の当事者(AかB) | 仲間外れにされた第三者(C) |
| 30日の起算点 | 理由を知った日 | 「共謀(悪巧み)」を知った日 |
| 絶対的な期限 | 確定から3年(※一部例外あり) | 確定から3年 |
4. 【重要】たった1つだけ「期限がない」ケース
実は、再審には172条よりもさらに強力な、**「期限(3年)の壁をぶち破る」**ケースが1つだけあります。
それは、**「前の確定審決と、後の確定審決が矛盾している場合」**です。
(例:同じ特許なのに、ある審判では「有効」、別の審判では「無効」と確定してしまった場合など)
この場合は、社会が混乱したまま放置できないので、3年を過ぎても再審が認められます。でも、172条の「悪巧み」については、残念ながら3年の壁が存在します。
まとめ
172条の再審期限は、
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スタート: 「二人がグルだ!」と知った日から30日(第三者に配慮)。
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ゴール: 審決から3年経ったら、もう何があっても文句は言えない(社会の安定を優先)。
「正義」と「ビジネスの安定」のバランスをギリギリで取っているのが、この期限の数え方なんです。