ジェインウェイの名は教科書の名前で知りましたが、自然免疫学の父と称される人だそうです。免疫学の教科書を見ると「病原体関連分子パターン」とか「パターン認識受容体」などという奇妙な言葉に遭遇して、なんだろうこれ?とモヤモヤしていたのですが、この言葉を提唱した人こそがジェインウェイさんでした。1989年の「免疫学における進化と革命、近づく漸近線?」(Approaching the asymptote? Evolution and revolution in immunology)という学会発表の中で提唱したのだそうです。
ジェインウェイさんのパターン認識受容体仮説によれば、人間には「病原体が持つ特有の構造に対する免疫反応があるはず」というものです。この仮説が提唱された時代は、ランダムな組換えによって無数の構造のバリエーションが作り出されて、たまたまそれが認識できるものを認識することで免疫応答が生じるというものでした。利根川進が「多様な抗体を生成する遺伝的原理の解明」によりノーベル生理学・医学賞を受賞したのが1987年ですから、当時はランダムに作られた多様性が微生物を認識するということが常識だったのでしょう。微生物の構造をもともと認識することができるというのは、それに反する考え方でした。しかし結果的に、ジェインウェイさんの仮説を支持するエビデンスが1996年になって初めて報告されたのでした。
参考
- 自然免疫学の父 (熊本大学大学院生命科学研究部大学院医学教育部医学部医学科免疫学講座)
- Of Flies and Men—The Discovery of TLRs Cells 2022, 11(19), 3127;
- Pattern Recognition Receptors and the Host Cell Death Molecular Machinery Front. Immunol., 16 October 2018
- Pattern Recognition Theory and the Launch of Modern Innate Immunity NOVEMBER 01 2013
- Charles A. Janeway, Jr. 1943-2003 Published: 01 June 2003 Nature Immunology チャールズ・A・ジェインウェイ・ジュニア 1943年~2003年 ルスラン・メジトフ 公開:2003 年 6 月 1 日
- Obituary Charles A. Janeway Jr (1943–2003) Nature 15 May 2003
- Lemaitre, B.; Nicolas, E.; Michaut, L.; Reichhart, J.-M.; Hoffmann, J.A. The Dorsoventral Regulatory Gene Cassette spätzle/Toll/cactus Controls the Potent Antifungal Response in Drosophila Adults. Cell 1996, 86, 973–983. Tl-deficient insects were dramatically affected by the fungus.
- Chapter 2: Innate Immunity Stuart E. Turvey, MB BS, DPhil1 and David H. Broide, MB ChB J Allergy Clin Immunol. 2010 Feb; 125(2 Suppl 2): S24–S32. Published online 2009 Nov 24. doi: 10.1016/j.jaci.2009.07.016
- Approaching the asymptote? Evolution and revolution in immunology. JANEWAY C A JR Cold Spring Harbor Symposia on Quantitative Biology (Cold Spring Harbor Symposia on Quantitative Biology) 巻: 54 号: Pt 1 ページ: 1-13 発行年: 1989年