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組織内の代謝物の局在を調べる方法:組織切片+質量分析

質量分析は試料中の物質を同定する方法ですが、生体の組織や細胞のどこにその物質があるかということに関しては、高分解能の情報は得られないものと思っていました。しかし切片から直接部分的にビームを当てて、イオン化して試料分析に逐次かけていくという技術が開発されていたようです。

Mass Spectrometry for Metabolomics Chemical & Engineering News チャンネル登録者数 2.72万人

Gooogle AIによる概要

In beam mass spectrometry for biological tissue section localization, a focused beam of energy or particles is directed at a tissue sample to desorb and ionize molecules. A mass spectrometer then analyzes these ions, with the location of each analysis point recorded to reconstruct a “molecular map” showing the spatial distribution of hundreds of different compounds in the tissue. This technique is broadly known as mass spectrometry imaging (MSI). 

Key beam-based MSI techniques for tissue analysis include:

Laser-based techniques

Matrix-assisted laser desorption/ionization (MALDI) MSI

  • Method: A thin tissue section is first coated with a crystalline matrix compound. A pulsed laser beam is then rastered across the surface, with the matrix absorbing the laser energy, which co-desorbs and ionizes the tissue’s molecules.
  • Resolution: Spatial resolution is determined by the size of the laser spot, typically 10 to 100 micrometers. Recent advancements using laser beam scanning have achieved resolutions as fine as 10 μm.
  • Applications: Used to map the distribution of a wide range of biomolecules, including lipids, peptides, and proteins. MALDI is often combined with high-resolution mass analyzers, such as Fourier transform ion cyclotron resonance (FT-ICR) MS, for exceptional mass accuracy. 

Laser ablation inductively coupled plasma mass spectrometry (LA-ICP-MS)

  • Method: A laser beam ablates—or vaporizes—a minute amount of tissue, which is then transported to an inductively coupled plasma (ICP). The plasma’s high temperature atomizes and ionizes the material, and a mass spectrometer quantifies the elemental isotopes present.
  • Resolution: Capable of producing high-resolution elemental maps, down to the micrometer or sub-micrometer level.
  • Applications: Used for imaging metals, metalloids, and other trace elements within tissues. It is particularly valuable for toxicology, and for studying metal-related diseases like neurodegenerative disorders. 

Ion beam-based techniques

Secondary ion mass spectrometry (SIMS)

  • Method: A focused beam of high-energy ions (the primary beam) bombards the tissue surface, causing secondary ions to be ejected. These secondary ions are collected and analyzed by a mass spectrometer.
  • Resolution: Known for its exceptional spatial resolution, with specialized NanoSIMS instruments achieving sub-100 nm resolution.
  • Applications: Used for high-resolution imaging of small molecules, such as lipids and metabolites, and for determining isotopic ratios. Its high vacuum requirement and surface sensitivity make it well-suited for single-cell analysis. 

Ambient ionization beam techniques

Desorption electrospray ionization (DESI)

  • Method: A charged spray of solvent microdroplets is directed at the tissue at ambient pressure. As the droplets hit the surface, they extract and ionize molecules, which are then analyzed by a mass spectrometer.
  • Resolution: Generally provides lower spatial resolution (typically 50–200 μm) compared to high-vacuum methods, but offers the advantage of minimal sample preparation.
  • Applications: Useful for rapid, real-time molecular profiling during surgical procedures (mass spectrometry-guided surgery) and for mapping drugs and metabolites. 

Nanospray desorption electrospray ionization (nano-DESI)

  • Method: Uses a liquid microjunction formed by two capillaries to continuously extract and analyze analytes from the tissue surface.
  • Resolution: An ambient technique that achieves high spatial resolution, with some reports demonstrating resolutions better than 10 μm.
  • Applications: Offers a high-sensitivity method for imaging proteoforms and other biomolecules, with the ability to perform high-resolution protein mapping. 

Workflow and applications

The general workflow for beam mass spectrometry on tissue sections involves several steps:

  1. Sample preparation: Freezing fresh tissue in liquid nitrogen followed by cutting thin sections (typically 10–20 μm) with a cryostat.
  2. Beam scanning: The tissue is placed on a conductive plate or slide and a beam is rastered across its surface.
  3. Spectral acquisition: A mass spectrum is generated for each pixel (location) analyzed by the beam.
  4. Data processing: Software converts the raw spectral data into visual, color-coded molecular maps showing the spatial distribution of specific molecules.
  5. Data integration: The resulting molecular images can be overlaid with traditional stained histology images to correlate molecular data with tissue pathology and microstructures. 

These techniques are widely used in biomedical research to identify biomarkers, investigate disease pathology (e.g., tumor margins), and study the biodistribution of drugs and metabolites. 

 

メッケル憩室とは?卵黄嚢茎の名残

プロンプト:ヒトの胎児の発生で、卵黄嚢茎は、何になりますか?消失する?それとも、盲腸の近くにある虫垂になる??

Gemini :

ヒトの胎児の発生において、卵黄嚢茎(らんおうのうけい、別名:卵黄管または臍腸管)は、通常は消失します

虫垂にはなりません


卵黄嚢茎のゆくえ

卵黄嚢茎は、発生のごく初期に、胎児の中腸(将来の小腸など)と卵黄嚢(栄養が入った袋)をつないでいる管です。

胎児が成長し、胎盤からの栄養供給が確立すると、卵黄嚢とこの管は不要になります。そのため、卵黄嚢茎は通常、妊娠の早い段階(妊娠5〜9週ごろ)で自然に閉じて、完全に退縮し、消失します


虫垂とは?

虫垂(ちゅうすい)は、卵黄嚢茎とは全く別のものです。

虫垂は、盲腸(もうちょう:大腸の始まりの部分)の先端から突き出すように発生する、指のような形をした小さな管状の組織です。発生する場所も役割も、卵黄嚢茎とは異なります。


もし消失しなかったら?

まれに、卵黄嚢茎が完全に消失せずに一部が残ってしまうことがあります。

この残ってしまったものを「メッケル憩室(けいしつ)」と呼びます。これは小腸(回腸)の壁にできる小さな袋状の突起で、最も頻度の高い消化管の先天異常です。

したがって、卵黄嚢茎は「消失する」のが正解であり、もし残ったとしても「メッケル憩室」になるもので、虫垂になることはありません。

 

プロンプト:メッケル憩室とは?

**メッケル憩室(けいしつ)とは、一言でいうと「小腸にできる、生まれつきの小さな袋状の突起」**のことです。

消化管の先天的な異常(生まれつきの形態異常)の中では最も頻度が高いもので、全人口の約2%程度の人にあるとされています。

前の質問にあった**「卵黄嚢茎」と深く関係しています**。


1. なぜできるのか?(原因)

  • 胎児の発生のとても早い時期、お母さんのお腹の中にいる赤ちゃん(胎児)は、「卵黄嚢(らんおうのう)」という袋から栄養をもらっています。
  • この卵黄嚢と胎児の腸(中腸)は、「卵黄嚢茎(らんおうのうけい)」(または卵黄管)という管でつながっています。
  • 胎児が成長し、胎盤が完成すると卵黄嚢は不要になるため、この卵黄嚢茎は通常、妊娠5~9週ごろまでに自然に退縮して完全に消失します
  • しかし、この卵黄嚢茎がうまく消失せずに、一部が腸側に残ってしまったものが「メッケル憩室」です。

つまり、メッケル憩室は「卵黄嚢茎のなごり」であり、本来なくなるべきものが残った状態です。

2. どんな特徴があるのか?

  • 場所: 小腸の終わりの方(回腸)にできます。
  • 異所性組織(いしょせいそしき): メッケル憩室の最大の特徴は、その袋の中に、小腸とは関係のない別の組織が迷い込んでいることがある点です。
    • 最も多いのは「胃の粘膜」で、次に「膵臓の組織」などが見られます。

3. 症状は?

  • ほとんど(95%以上)の人は無症状です。
    • メッケル憩室を持っていても、一生何も症状が出ず、本人も気づかないまま生涯を終えることがほとんどです。
  • 症状が出る場合(全保有者のうち約4%):
    • 多くは乳幼児期(特に2歳以下)に症状が出ます。
    • 症状の主な原因は、憩室内に迷い込んだ「胃の粘膜」です。

主な症状(合併症)

  1. 出血・下血(血便):
    • 憩室内の胃粘膜が胃酸を分泌します。
    • 小腸の壁は胃酸に耐えられないため、憩室の周辺が潰瘍になり、そこから出血します。
    • 痛みはなく、突然、レンガ色やイチゴゼリー状の血便が出ることが特徴です。
  2. 憩室炎:
    • 憩室が炎症を起こします。
    • 虫垂炎(盲腸)と似たような腹痛(おへその周りや右下腹部の痛み)や発熱が起こります。
  3. 腸閉塞(イレウス):
    • 憩室が原因で腸がねじれたり(軸捻転)、腸が重なってしまったり(腸重積)、憩室から伸びたヒモ状の組織に腸が絡まったりして、腸が詰まる状態です。
    • 激しい腹痛、嘔吐、便が出ないなどの症状が出ます。

4. 治療は?

  • 無症状の場合:
    • 他の検査(CTなど)や手術で偶然発見された場合は、基本的に治療はせず、そのまま経過観察となります。
  • 症状がある場合(出血や憩室炎、腸閉塞など):
    • 外科手術でメッケル憩室を切除します。

まとめ

  • メッケル憩室は、胎児期に消失するはずの「卵黄嚢茎」が残ったもの
  • 虫垂とは全く別物
  • ほとんどの人は無症状
  • まれに、憩室内の異所性胃粘膜が原因で出血したり、炎症を起こしたりすることがある。

前腸 foregut、中腸 midgut、後腸 hind gutは将来何になるか?栄養する動脈は?

消化管の発生、その中でも特にダイナミックで、臨床(特に小児外科)に直結する超重要なイベントについてお話しします。

テーマは「消化管の形成と固定」、そして「生理的臍帯ヘルニア」です。

なぜこれが重要か。皆さんが将来、臨床の現場で「胆汁を吐いている赤ちゃん」に出会った時、真っ先に「腸回転異常症」や「中腸軸捻転」を疑わなければなりません。なぜそんなことが起きるのか? それは、今日お話しする「正常な発生プロセス」が、どこかでうまくいかなかった結果だからです。

  1. 第51回 子宮外への適応-消化管疾患- https://koukyou.or.jp/ba-ba/vol51/

正常を知らずして、異常は理解できません。しっかりついてきてください。


消化管の基本プラン:3つの領域と担当動脈

まず、すべての基本から。

受精後4週ごろ、胚がこう、筒状に折りたたまれると、お腹の中に1本の単純なチューブができます。これが「原始腸管」ですね。

Embryology, GI tract Angelo Sotto チャンネル登録者数 181人

この長いチューブは、栄養をもらっている動脈(腹部大動脈の枝)に基づいて、明確に3つのエリアに分けられます。これはもう、解剖学、そして国家試験の必須知識です。

  1. 前腸 (Foregut)
  2. 中腸 (Midgut)
  3. 後腸 (Hindgut)

そして、これらに血液を送る動脈。3兄弟がそれぞれを担当します。

  • 前腸 を栄養するのは?→ そう、「腹腔動脈 (Celiac trunk)」 です。
  • 中腸 を栄養するのは?→ 「上腸間膜動脈 (Superior mesenteric artery: SMA)」
  • 後腸 を栄養するのは?→ 「下腸間膜動脈 (Inferior mesenteric artery: IMA)」

この「領域」と「担当動脈」の対応関係は、発生が終わった成体になっても、そのまま引き継がれます。これが理解の土台になります。


各領域の「持ち場」(将来何になる?)

では、それぞれの領域が、将来どの臓器になるのかを見ていきましょう。

(スライドに各領域の分化先リストを表示)

① 前腸 (Foregut)

前腸は、消化管の上部と、そこから派生する重要な「付属器」を作ります。

  • 消化管本体:
    • 食道
    • 十二指腸(※肝臓や膵臓の出口=大十二指腸乳頭よりもの部分)
  • 付属器(前腸から芽が出るように発生):
    • 肝臓胆嚢
    • 膵臓
    • (実は気管や肺も、前腸から分岐してできます)

これら全部、腹腔動脈の支配領域ですね。

② 中腸 (Midgut)

ここが今日一番の主役です。最もダイナミックに動くエリア。

  • 十二指腸(大十二指腸乳頭よりもの部分)
  • 空腸
  • 回腸(つまり小腸の大部分)
  • 盲腸虫垂
  • 上行結腸
  • 横行結腸(の、右側2/3

すごい広い範囲を担当しますよね。全部、SMAが栄養します。

③ 後腸 (Hindgut)

後腸は残りの部分です。

  • 横行結腸(の、左側1/3
  • 下行結腸
  • S状結腸
  • 直腸
  • 肛門管の上部

これらは全部、IMAの支配領域です。

(スライドに横行結腸の支配動脈の図を表示)

ここで「おや?」と思いますよね。横行結腸が、中腸と後腸の2つの領域にまたがっている。

その通りなんです。横行結腸は、発生過程で中腸由来のパーツと後腸由来のパーツが「合体」してできた臓器です。だから成体でも、SMAとIMAの両方から栄養をもらっている(辺縁動脈で吻合している)わけです。まさに発生の名残ですね。


消化管の固定:「腸間膜」の話

さて、この原始腸管チューブ、お腹の中でブラブラ浮いているわけじゃありません。

ちゃんと「腸間膜(ちょうかんまく)」という膜で、体壁に固定されています。

(スライドに胚の断面図を表示)

発生初期、チューブは「背中側」と「お腹側」の両方から固定されています。

  • 背側腸間膜 (Dorsal mesentery):背中側に固定する膜。
  • 腹側腸間膜 (Ventral mesentery):お腹側に固定する膜。

ここでの超重要ポイントは、**「腹側腸間膜は、ほとんど消える」**ということです。

なぜ消えるのか?

第一に、このあと説明する「中腸の回転」のように、腸がダイナミックに動くのに、お腹側で固定されていたら邪魔ですよね。

第二に、発生初期は左右に分かれていた腹腔が、この膜が消えることで合体し、一つの大きな「腹膜腔」になるためです。

腹側腸間膜の「生き残り」

「ほとんど消える」と言いましたが、例外があります。

唯一残るのが、前腸の末端部、つまり胃と十二指腸上部の周りだけです。

(スライドに肝臓と小網の発生図を表示)

この「唯一残った腹側腸間膜」の中に、なんと肝臓が発生して、ドーンと割り込んできます。

その結果、この膜は肝臓を境にして2つの部分に分けられます。

  1. 肝臓とお腹の壁(前腹壁) をつなぐ部分→ これが成体での**「肝鎌状間膜 (Falciform ligament)」**です。
  2. 肝臓と胃・十二指腸をつなぐ部分→ これが**「小網 (Lesser omentum)」**(肝胃間膜と肝十二指腸間膜のこと)です。

皆さんが解剖実習で見た「小網」や「肝鎌状間膜」は、あの広大な腹腔の中で、唯一生き残った「腹側腸間膜のなごり」というわけです。非常にエレガントですよね。


生理的臍帯ヘルニアと中腸の回転

Embryological Development of Gastro-Intestinal Tract – ACLAND Rahel Rashid チャンネル登録者数 1.72万人

 

中腸の発生は、非常に劇的です。キーワードは**「生理的臍帯ヘルニア」**。

これは病気じゃありません。「生理的」とつくとおり、我々全員が胎児の時に経験する、正常な発生プロセスです。

いつ起きる?(タイミング)

  • カーネギーステージ (CS):
    • CS 14〜16 ごろ(受精後 約6週)に、腸管が腹腔の外へ飛び出し始めます。
    • CS 17〜23 ごろ(受精後 8〜9週)に、ヘルニアが最大になります。
  • 解消(還納):
    • 受精後 10〜12週 ごろにかけて、飛び出していた腸管がお腹の中に戻ってきます。この「戻ること」を**還納(かんのう)**と言います。

なぜ起きる?(理由・メカニズム)

理由はシンプルで、**「腹腔のスペース不足」**です。

この時期、胎児のお腹の中は、ある臓器が不釣り合いなほどデカくなって、パンパンなんです。

(スライドに胎児の腹腔断面図を表示)

犯人は、肝臓です。

胎生期の造血(血液を作る)は、骨髄じゃなくて主に肝臓が担っています。だから、肝臓がものすごく巨大化している。

そこへもってきて、中腸(小腸)が栄養吸収面積を稼ぐために、ものすごい勢いで長く伸び始めます。

小さな腹腔は、「巨大な肝臓」と「急成長する腸」を同時に収容できません。

行き場を失った中腸ループは、一番抵抗の少ない場所、つまり「へその緒(臍帯)」の付け根(体外腔)へと、一時的に「避難」するわけです。これが生理的臍帯ヘルニアです。

意義と目的: 腸管の「回転」

ただ避難するだけじゃありません。

この腹腔外にいる期間を利用して、中腸は最終的な「正しい配置」になるための、非常に重要な**「回転」**を行います。

(スライドに中腸回転のシェーマを表示)

  • 軸: 回転の軸になるのは、中腸を栄養する**「上腸間膜動脈 (SMA)」**です。
  • 方向: 前から見て**「反時計回り」**
  • 角度: 合計 270度

この回転は2段階で起こります。

  1. 第1回転(90度): 6週ごろ、お腹の外に飛び出す(ヘルニアになる)時に、90度回転します。
  2. 第2回転(180度): 10週ごろ、お腹の中に戻る(還納する)時に、さらに180度回転します。

回転のゴールは?

この複雑な270度の回転によって、初めて腸は成体と同じ、あの正しい配置に収まるんです。

  • 十二指腸はSMAの後ろを通ってC字型に固定されます。
  • 盲腸や上行結腸は、お腹の左上からぐるーっと回って、最終的に右下腹部の正しい位置に収まります。
  • 小腸間膜の付け根(腸間膜根)が、左上から右下へ斜めに広く固定されます。

もし、うまくいかなかったら?(臨床的意義)

この精巧なプロセスが、どこかで失敗すると、重篤な先天異常(=外科疾患)になります。

ケース1:腸が戻らない → 「臍帯(さいたい)ヘルニア (Omphalocele)」

受精後12週を過ぎても中腸が腹腔内に還納せず、へその緒の付け根に飛び出したまま生まれてくる状態です。

これは「生理的」ではなく「病的」なヘルニアです。飛び出した腸管が、羊膜などの膜に覆われているのが特徴です。

ケース2:回転がうまくいかない → 「腸回転異常症 (Intestinal Malrotation)」

これが非常に怖い。

腸はお腹の中に戻ったんだけど、あの「270度の反時計回り回転」が不完全だったパターンです。

(スライドに腸回転異常症と中腸軸捻転の図を表示)

何がマズイかというと、正常な回転が起きないと、腸間膜根(小腸を固定する根元)が、左上から右下まで広く固定されず、点のように「短く」なってしまいます。

根元が短いとどうなるか?

そう、不安定なんです。腸全体がブラブラの状態になる。

ブラブラな腸は、何かの拍子に、その短い根元を軸にして**「ねじれ」やすい。

これが「中腸軸捻転(ちょうねんてん) (Volvulus)」**です。

ねじれると何が起きますか?

軸になっていた上腸間膜動脈 (SMA) が、一緒に絞扼(こうやく)されます。

SMAが締まったら? 中腸領域、つまり小腸ほぼ全部と大腸の右半分への血流が、全部ストップします。

これはもう時間との勝負です。数時間で、広範囲の腸が壊死してしまう。新生児外科における最緊急疾患の一つです。

だから、「胆汁性の嘔吐」をする新生児を見たら、この腸回転異常症からの軸捻転を真っ先に疑う、というのが臨床の鉄則になるわけです。


(スライド:まとめ)

はい、今日のまとめです。

  1. 消化管は「前腸・中腸・後腸」に分かれ、それぞれ「腹腔・SMA・IMA」が担当する。
  2. 腹側腸間膜はほとんど消えるが、「小網」と「肝鎌状間膜」として残る。
  3. 中腸は6週~10週にかけて、スペース不足(巨大な肝臓)で「生理的臍帯ヘルニア」を起こす。
  4. この時、SMAを軸に「270度反時計回り」に回転し、正しい位置に収まる。
  5. このプロセスが失敗すると、「臍帯ヘルニア」や、超緊急疾患である「腸回転異常症(からの軸捻転)」を引き起こす。

消化管の発生は、単なる暗記じゃなくて、一つのダイナミックな「物語」として理解することが重要です。この流れが頭に入っていれば、解剖も臨床も、ずっと理解しやすくなるはずです。

(Gemini 2.5 Pro)