アンドロゲン不応症(Androgen insensitivity syndrome;AIS)

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2024年パリオリンピックの女子ボクシングで、女子66キロ級のイマネ・ヘリフ選手(アルジェリア)と女子57キロ級のリン・ユーチン選手(台湾)が金メダルを獲得しましたが、この2人の性染色体がXY(男性の染色体)だったことと、試合内容があまりにも一方的だったために物議をかもしました。

自分も最初誤解したのですが、世間でも大きな誤解があり、もともと男性だった人がトランスジェンダーとして女性としてエントリーしたのではないかと考えた人も多かったようです。しかし、それは完全な誤解で、両選手はトランスジェンダーではなく、アンドロゲン不応症と呼ばれるものです。

性染色体がXYであり、Y染色体をもつことから、Y染色体上にあるSRY遺伝子の働きにより性腺は精巣に分化します。つまり、内部生殖器は男性、すなわち精巣というわけです。ところが、アンドロゲン受容体に異常があるために、男性ホルモンであるアンドロゲンに対する反応が無く、外部生殖器がデフォルトである女性型になります。つまり、陰茎や睾丸が形成されず、デフォルトである膣が形成されるわけです。思春期には乳房も発育します。つまり、外形は女性になるわけです。

外性器も本来は陰嚢となる場所だったものが大陰唇に、亀頭部となるはずだったものがクリトリスと女性型になってしまう https://medical-tribune.co.jp/rensai/articles/?blogid=11&entryid=564331

AISの女性と通常の(XX染色体の)女性との外見の違い

AISの女性(XY)は性染色体がXXの女性と外見において異なる部分もあります。

身長と体重が平均的な女性よりも大きくなります。また、腋毛axillary hairや陰毛 public hair は、乏しいか無毛になります。これは体毛の発育がアンドロゲン受容体に依存するためです。また、膣の長さは通常より短く、盲端(blind)になっています。

  • A shortened blind-ending vagina is observed in almost all patients and the vaginal measurement varied from 2.5 to 8 cm in CAIS and 1.5 – 4 cm in PAIS.
  • Pubic and axillary hair are sparse or absent (1,14).
  • Final height in CAIS is above normal mean female height, probably due to the action of the growth-controlling gene (GCY) located at the Y chromosome (15).
  • newborns with CAIS have the same size of male newborns
  • the final height of CAIS individuals (165.7 ± 8.9 cm) was taller than described for Brazilian females, but lower than expected for Brazilian males (15).
Androgen insensitivity syndrome: a review
Androgenic insensitivity syndrome is the most common cause of disorders of sexual differentiation in 46,XY individuals. It results from alterations in the andro...

参考

  1. Lecturio動画 Androgen Insensitivity Syndrome: Complete and Partial AIS
  2. http://grj.umin.jp/grj/androgen.htm  CAIS ウォルフ管由来器官の欠如や低形成 精巣上体・精管は存在することもしないこともある 停留睾丸 短い盲端の膣 恥毛,腋毛が薄いか欠如

AISの原因遺伝子

AISの原因遺伝子はアンドロゲン受容体遺伝子です。アンドロゲン受容体遺伝子はX染色体上にあります。AISの女性の性染色体はXYなので、そのX染色体は母親由来ということになります。しかしcomplete AISの人の40%において、アンドロゲン受容体遺伝子の変異はde novoすなわち母親には変異がないのだそうです(参照:Lecturio動画 Androgen Insensitivity Syndrome: Complete and Partial AIS)。

AISに気付くタイミング

CAISの場合

  • 思春期にアンドロゲンからアロマターゼを介して産生されたエストロゲンの作用により、乳房の発育は通常
  • 外性器は完全に女性型
  • 出生後から女性として生活
  • 原発性無月経を主訴に産婦人科にて診断されることが多い
403 Forbidden
  1. amenorrhea 無月経

AISの脳の性(性自認)

以下は、Consensus.appの回答です。

アンドロゲン不応症候群(AIS)は、アンドロゲン受容体の遺伝子変異によって引き起こされ、46,XY個体において様々な表現型を示します。完全型アンドロゲン不応症候群(CAIS)の女性は、外見上は女性であり、通常は女性として育てられます。本研究では、CAIS女性の脳の性別と自己認識についての研究結果をまとめます。

  • 女性としての性別認識:
    • CAIS女性は、一般的に女性としての性別認識を持ち、女性としての性役割行動を示します。
    • CAIS女性は、通常、男性パートナーを選び、性同一性障害を経験しないことが多いです。
  • 性別再割り当ての稀少性:
    • CAIS女性が自発的に性別再割り当てを行うケースは非常に稀です。
    • 性別再割り当てを行ったCAIS女性のケースは、非常に少数であり、特異な事例として報告されています。
  • 男性としての性別認識の例外:
    • 一部のCAIS女性は、幼少期から男性としての性別認識を持ち、最終的に性別再割り当てを行うことがあります。
    • これらのケースでは、幼少期からのクロスジェンダー行動が観察され、心理療法やホルモン治療を経て男性としての性別認識が確認されました。

CAIS女性は、一般的に女性としての性別認識を持ち、女性としての性役割行動を示します。性別再割り当てを行うケースは非常に稀であり、特異な事例として報告されています。したがって、CAIS女性は通常、自分自身を女性として認識しますが、例外的に男性としての性別認識を持つケースも存在します。

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