エネルギー貯蔵(脂肪酸合成など)の化学反応にエネルギーを使って(NADPHなど)、エネルギーを取り出すときにちゃんとそれ以上のエネルギーが取り出せるのかについて、ChatGPTに訊いてみました。
質問:グルコースが過剰だと解糖系でピルビン酸にしてアセチルCoAにして、NADPHなどを使って脂肪酸をつくっていくが、そのときエネルギーを使う。だとしたら、最後、中性脂肪までしたときに使ったエネルギーと、将来、中性脂肪を利用する際に分解してエネルギーを取り出すときのエネルギーとで、取り出せるエネルギーの方が大きいのか?
ChatGPTの回答:
中性脂肪(トリアシルグリセロール)を合成するときに使うエネルギー量より、その脂肪を分解してβ-酸化/TCA回路でATPに換えたときに得られるエネルギー量のほうが大きくなります。これは「脂肪は高効率なエネルギー貯蔵分子」であるゆえんです。以下に大まかな流れとエネルギー収支の理由を示します。
1. 脂肪合成に要するエネルギー(例:パルミチン酸 C₁₆ の場合)
- グルコース→ピルビン酸→アセチルCoA
- 解糖系でグルコース1分子あたり 2ATP(実質)+2NADH(≒5ATP分相当)を得るが、これをすべて脂肪酸前駆体に使うと考えると実質的にATPは中和される。
- アセチルCoA→マロニルCoA
- ACC(アセチルCoAカルボキシラーゼ)反応で ATP 1分子を消費
- 脂肪酸合成反応(脂肪酸シンターゼ)
- 2炭素伸長ごとに NADPH を 2 分子消費
- パルミチン酸(C₁₆)合成にはアセチルCoA 1+マロニルCoA 7 → 合計 7 回の延長 → NADPH 14 分子消費
- NADPH の供給コスト
- 主にペントースリン酸回路で作る場合、グルコース6-P 1分子あたり NADPH 2 分子を生成。NADPH 14 を作るにはグルコース6-P およそ 7 分子分を割り当て → 解糖系由来ATPが減少。
――これらをまとめると、パルミチン酸1分子合成には
- ATP:7(ACC)+ペントース回路の機序で実質数ATP相当のロス
- NADPH:14分子分(≒14×2.5ATP相当=約35ATP相当)
…という大きなエネルギー投資が必要です。
2. 脂肪酸の分解(β-酸化+TCA回路)で得られるエネルギー
パルミチン酸(C₁₆)1分子あたりの標準的な収支は:
- β-酸化
- 7サイクルで:FADH₂ 7、NADH 7 を生成
- TCA回路
- 8アセチルCoA → 各1サイクルで:GTP(ATP相当)8、NADH 24、FADH₂ 8
- 電子伝達系換算
- NADH 1 → 約 2.5 ATP、FADH₂ 1 → 約 1.5 ATP
――合計するとパルミチン酸1分子あたり約106 ATP が得られます。
3. なぜ “取り出せるエネルギー” のほうが大きいのか?
- 高度に還元された炭素鎖
- 脂肪酸は炭素が水素で満たされた「飽和・長鎖構造」で、酸化還元反応によって大量のNADH/FADH₂を生み出せる。
- 貯蔵時の投資 vs. 取り出し時の回収効率
- 合成時にはNADPH(電子供与体)を使うが、分解時にはNADH/FADH₂(より高い還元電位)を生成する。NADPH生成コスト(ペントース回路)のATP換算より、NADH/FADH₂からのATP合成量のほうが大きいため、純粋に「回収量>投資量」となる。
- 生理学的意義
- 生体は余剰エネルギーを最も高効率で貯蔵し、必要時に大きなエネルギーを一気に取り出せるようにこの仕組みを発達させてきたのです。
まとめ:脂肪合成には大量のATP&NADPHを“前払い”しますが、分解時にはそれを遥かに上回るATPを“回収”できるため、脂肪は極めて効率的なエネルギー貯蔵形態となります。
質問:出発点であるアセチルCoAの段階での比較をした場合はどうなる?
ChatGPTの答え:
脂肪酸合成に要するエネルギー vs. β-酸化で得られるエネルギー(Acetyl-CoA まで)
ここでは代表としてパルミチン酸(C₁₆)を例に、合成側と分解側の「Acetyl-CoA まで」のΔG を比較します。
(A)パルミチン酸合成のエネルギー投資
- NADPH 使用量:14 mol NADPH × ΔG₁ =
ΔG₁ ≒ −n·F·E = −2 e⁻×96.5 kJ/V·mol×(−0.370 V) ≈ +71.4 kJ/mol
→ 14×71.4 ≈ +1 000 kJ - ATP 使用量:7 mol ATP × 約+30 kJ/mol = +210 kJ
合計投資 ΔG ≒ +1 210 kJ
(B)β-酸化(Acetyl-CoA まで)で得られる還元当量
- NADH 生成:7 mol × (−2 e⁻×96.5 kJ/V·mol×(−0.280 V)) ≈ −7×54 = −378 kJ
- FADH₂ 生成:7 mol × 約−43 kJ/mol = −301 kJ
- ATP 投資(アシルCoA合成で AMP + PPi = 2 ATP 相当の消費)= +60 kJ
合計回収 ΔG ≒ (−378) + (−301) + (+60) = −619 kJ
結論
- 合成投資 (+1 210 kJ) > 分解回収 (−619 kJ)
- 「Acetyl-CoA まで」の段階では、エネルギー投資のほうが大きく、トントンにはなりません。
- β-酸化で生成した NADH/FADH₂ を電子伝達系で酸化しATPに換える(さらに Acetyl-CoA をTCA回路で完全酸化する) ことで、初めて 全体として正味の大きなエネルギー回収(約+2 000 kJ)が実現します。
――以上より、「中性脂肪を分解して Acetyl-CoA にするまで」の段階では投資>回収ですが、その先のTCA回路+電子伝達系を通じて得られるエネルギーこそが、脂肪を高効率なエネルギー貯蔵形態にしている、というわけです。
- 脂肪合成までの投資(パルミチン酸 C₁₆ 合成を例に)
- ATP:7 mol × 約 +30 kJ/mol = +210 kJ
- NADPH:14 mol × 約 +71 kJ/mol = +1 000 kJ
- 合計投資 ≒ +1 210 kJ
- β-酸化で Acetyl-CoA まで回収できるエネルギー
- NADH:7 mol × (−54 kJ/mol) = −378 kJ
- FADH₂:7 mol × (−43 kJ/mol) = −301 kJ
- ATP 投資(活性化コスト):+60 kJ
- 合計回収 ≒ −619 kJ
→ Acetyl-CoA まででは投資 (+1 210 kJ) > 回収 (619 kJ)
この段階ではまだ赤字です。
- 完全酸化(TCA 回路+電子伝達系)での最終回収
- 上記 Acetyl-CoA 8 mol × TCA+ETC による ATP 収量を足すと
約 −2 000 kJ(ネットのプラス)となり、 - ここで初めて「回収量 > 投資量」の高効率が実現します。
- 上記 Acetyl-CoA 8 mol × TCA+ETC による ATP 収量を足すと
ですので「Acetyl-CoA までの段階ではトントンではなく赤字」「TCA+ETC を含めることでネットで大きなプラスになる」
補足
1. NADP⁺/NADPH と NAD⁺/NADH の標準(生理学的)還元電位
カップル | E′°(pH 7, V) | 注記 |
---|---|---|
NADP⁺ + H⁺ + 2 e⁻ ⇄ NADPH | −0.370 | 生理学的条件下の見かけの値(NADPH/NADP⁺ 比 ≒ 50:1) (Wikipedia) |
NAD⁺ + H⁺ + 2 e⁻ ⇄ NADH | −0.280 | 生理学的条件下の見かけの値(NADH/NAD⁺ 比 ≒ 30:1) (Wikipedia) |
- ΔE = E(e⁻ 受容) − E(e⁻ 放出) の観点で、NADPH のほうがより負の電位をもち、より強い還元剤(電子供与体)です。