Th17細胞とTreg細胞の関係

Th17細胞とTreg細胞は、全く異なる機能を持つ別の種類の細胞です。

両者はどちらも「ヘルパーT細胞(CD4陽性T細胞)」というリンパ球から分化しますが、その役割は正反対で、免疫システム全体のバランスを保つために非常に重要です。


Treg細胞:免疫の「ブレーキ役」

  • 正式名称: 制御性T細胞 (Regulatory T cell)
  • 主な機能:
    • 過剰な免疫反応を抑制し、正常な細胞を攻撃してしまう「自己免疫」が起こらないように防ぎます。
    • 炎症が必要以上に拡大しないようにコントロールします。
    • 免疫システムが暴走しないように、常に監視し調整する役割を担っています。
  • 関連する病気:
    • 機能が弱すぎる場合: 関節リウマチ、1型糖尿病、多発性硬化症などの自己免疫疾患の原因となることがあります。
    • 機能が強すぎる場合: がん細胞に対する免疫の攻撃を抑制してしまい、がんの増殖を助けてしまうことがあります。

Th17細胞:免疫の「アクセル役」の一つ

  • 正式名称: ヘルパーT17細胞 (T helper 17 cell)
  • 主な機能:
    • 主に細菌や真菌(カビ)などの細胞の外にいる病原体を排除するために働きます。
    • IL-17(インターロイキン-17)という強力な炎症を引き起こすサイトカインを放出し、白血球(特に好中球)などを集めて感染部位で戦わせます。
    • 粘膜などのバリア機能の維持にも関わっています。
  • 関連する病気:
    • 機能が過剰な場合: その強力な炎症作用が、関節リウマチ、多発性硬化症、乾癬などの自己免疫疾患の悪化に深く関与していると考えられています。

分化の不思議な関係

この二つの細胞の興味深い点は、同じ未熟なT細胞から分化するという点です。どちらの細胞になるかは、その場の「サイトカイン」と呼ばれる情報伝達物質の種類によって決まります。

  • Treg細胞になる場合: TGF-βというサイトカインの刺激で分化します。
  • Th17細胞になる場合: TGF-βに加えてIL-6という炎症性サイトカインが同時に存在すると、Treg細胞ではなくTh17細胞へと運命が変わります。

このように、炎症がある状況(IL-6が多い)では免疫を活性化させるTh17細胞が、そうでない状況では免疫を抑制するTreg細胞が誘導されるという、非常に合理的な仕組みになっています。

まとめ

Treg細胞(制御性T細胞) Th17細胞(ヘルパーT17細胞)
役割 免疫のブレーキ役(抑制) 免疫のアクセル役(促進・炎症)
主な働き 自己免疫の防止、炎症の抑制 細菌・真菌の排除、炎症の誘導
関連疾患 機能低下で自己免疫疾患、機能亢進でがんの増悪 機能亢進で自己免疫疾患

Th17細胞とTreg細胞は、免疫というアクセルとブレーキのバランスを保つために協調して働く、正反対の役割を持つ重要なパートナーと言えます。

(Gemini 2.5 Pro)