特許法
(秘密保持命令) 第百五条の四 裁判所は、特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟において、その当事者が保有する営業秘密(不正競争防止法(平成五年法律第四十七号)第二条第六項に規定する営業秘密をいう。以下同じ。)について、次に掲げる事由のいずれにも該当することにつき疎明があつた場合には、当事者の申立てにより、決定で、当事者等、訴訟代理人又は補佐人に対し、当該営業秘密を当該訴訟の追行の目的以外の目的で使用し、又は当該営業秘密に係るこの項の規定による命令を受けた者以外の者に開示してはならない旨を命ずることができる。ただし、その申立ての時までに当事者等、訴訟代理人又は補佐人が第一号に規定する準備書面の閲読又は同号に規定する証拠の取調べ若しくは開示以外の方法により当該営業秘密を取得し、又は保有していた場合は、この限りでない。
一 既に提出され若しくは提出されるべき準備書面に当事者の保有する営業秘密が記載され、又は既に取り調べられ若しくは取り調べられるべき証拠(第百五条第三項の規定により開示された書類、第百五条の二の四第一項の規定により提出された査証報告書の全部若しくは一部又は第百五条の七第四項の規定により開示された書面を含む。)の内容に当事者の保有する営業秘密が含まれること。
二 前号の営業秘密が当該訴訟の追行の目的以外の目的で使用され、又は当該営業秘密が開示されることにより、当該営業秘密に基づく当事者の事業活動に支障を生ずるおそれがあり、これを防止するため当該営業秘密の使用又は開示を制限する必要があること。
2 前項の規定による命令(以下「秘密保持命令」という。)の申立ては、次に掲げる事項を記載した書面でしなければならない。 一 秘密保持命令を受けるべき者 二 秘密保持命令の対象となるべき営業秘密を特定するに足りる事実 三 前項各号に掲げる事由に該当する事実
3 秘密保持命令が発せられた場合には、その決定書を秘密保持命令を受けた者に送達しなければならない。
4 秘密保持命令は、秘密保持命令を受けた者に対する決定書の送達がされた時から、効力を生ずる。
5 秘密保持命令の申立てを却下した裁判に対しては、即時抗告をすることができる。
プロンプト:わかりやすくまとめて。
ChatGPT 5.2:
OK、条文の**「できる」「ただし」「できない」**が混ざっていて混乱しやすいところなので、
結論 → できる場合/できない場合 → 抗告の可否の順で、整理してまとめます。
① まず結論(超要約)
- 秘密保持命令は
👉 原則:申立てがあれば、要件を満たす限り「できる」 - ただし
👉 すでに相手がその営業秘密を正当に知っていた場合は「できない」 - 申立てが却下されたら
👉 即時抗告は「できる」
② 秘密保持命令が「できる」場合(原則)
次の 2つを両方満たす ことについて、**疎明(=一応もっともらしい証明)**があれば、
👉 裁判所は、当事者の申立てにより、秘密保持命令を出すことができる。
【要件①】訴訟資料に営業秘密が含まれている
次のいずれかに当てはまること:
- 準備書面に営業秘密が書かれている/書かれる予定
- 証拠(書類・査証報告書など)に営業秘密が含まれている/含まれる予定
👉 要するに
「この訴訟を進めると、営業秘密が相手の目に触れる状況にある」
【要件②】放置すると事業に支障が出るおそれがある
- 営業秘密が
- 訴訟目的以外に使われたり
- 第三者に漏れたり
すると、
- その秘密を前提とした事業活動に支障が出るおそれがある
- だから
👉 使用・開示を制限する必要がある
📌 この2つがそろえば
裁判所は「秘密保持命令を出せる」
(※自動ではなく、あくまで裁量)
③ ただし:秘密保持命令が「できない」場合(例外)
条文後半の 「ただし書」 がここ。
❌ できないのはどんなとき?
申立ての時点より前に、相手方がすでに:
- 準備書面の閲読
- 証拠の取調べ
- それ以外の方法(例:取引、共同研究など)
によって、
👉 その営業秘密をすでに取得・保有していた場合
🔍 ポイント
- 「すでに知っている人」に対して、後から口止めはできない
- だから
👉 秘密保持命令は出せない
④ まとめると(できる/できないの分岐)
| 状況 | 秘密保持命令 |
|---|---|
| 訴訟資料に営業秘密が含まれ、漏れると事業に支障が出る | ✅ できる |
| その営業秘密を相手が訴訟前から正当に知っていた | ❌ できない |
| 単なる不利益・嫌がらせレベル | ❌ できない |
⑤ 「即時抗告できる/できない」
最後の第5項。
✅ 即時抗告「できる」
- 秘密保持命令の申立てが却下された場合
👉 「命令を出してほしかったのに、裁判所がNOと言った」
👉 すぐに上級審に不服申立てできる
❌ 即時抗告「できない」
- 秘密保持命令が出された側からの不服申立て
(=条文上、抗告の規定がない)
⑥ 全体を一文で言うと
秘密保持命令は、訴訟で営業秘密が扱われ、放置すれば事業に支障が出るおそれがある場合に、申立てにより裁判所が出すことができるが、相手がすでにその秘密を正当に知っていた場合には出せず、申立てが却下されたときは即時抗告ができる。