特160 審査官を拘束する

Gemini 3:

特許法において、審査官が法律上「拘束」される(その判断に従わなければならない)場面は、主に「拒絶査定不服審判」で拒絶査定が取り消され、審査に差し戻されたときです。以下に、根拠条文とその内容を整理して解説します。


1. 審査官が拘束される直接の規定(第160条第2項)

最も代表的な例は、拒絶査定不服審判において、審判官が「拒絶査定を取り消して、さらに審査に付すべき」という審決(差し戻し審決)を下した場合です。

項目 内容
根拠条文 特許法 第160条第2項
条文の要約 前項の規定により査定が取り消されたときは、さらに審査に付すべき旨の審決は、その事件について審査官を拘束する。
具体的状況 審査官の「拒絶査定」に対し、審判で「この拒絶理由は不当である」と判断され、審査に戻された場合、審査官は同じ理由で再び拒絶することはできません。

なぜ「拘束」が必要なのか?

もし審査官が審判官の判断を無視して、同じ理由で再び拒絶査定を出せてしまうと、出願人はいつまでも特許を取得できず、審判制度の意味がなくなってしまうからです(蒸し返しの防止)。


2. 関連する「拘束」の概念(第181条第2項)

審査官自身ではなく、その上のステージである**「審判官」**が拘束される規定もあります。これは審査官にも間接的に影響します。

  • 根拠条文:第181条第2項

  • 内容: 審決取消訴訟において、裁判所(知財高裁)が「審決」を取り消す判決を確定させた場合、その判決は審判官を拘束します。

  • 流れ: 裁判所 →(拘束)→ 審判官 →(実質的に影響)→ 審査官

裁判所が「この発明に進歩性はある」と判決を下した場合、審判官はその判断に反する審決を書くことはできません。その結果、審査に差し戻された場合も、審査官はその判断を尊重することになります。


3. 実務上の「事実上の拘束」

法律上の「拘束」とは異なりますが、審査官が従わなければならない指針として以下があります。

① 審査基準

審査官は、特許庁が作成した**「審査基準」**に沿って判断を下すよう義務付けられています。これは行政内部のルール(訓示規定的な側面)ですが、審査の公平性を保つために事実上の強い拘束力を持っています。

② 先行する審決・判決(例:進歩性など)

同じ出願、あるいは極めて類似した事件について過去に示された裁判所の判断などは、審査官が判断を下す際の強力な指針となります。


まとめ

特許法で「審査官を拘束する」と明記されているのは、第160条第2項です。

第160条(審査への差戻し)

  1. 拒絶査定不服審判において、査定を取り消すときは、さらに審査に付すべき旨の審決をすることができる。

  2. 前項の規定により査定が取り消されたときは、さらに審査に付すべき旨の審決は、その事件について審査官を拘束する

この条文は、論文試験や短答試験でも「審判官の判断がどの範囲で審査官を縛るか」という文脈でよく問われる重要ポイントです。