インクレチン(incretin)とは?GIPとGLP-1の2つのホルモンのこと
インクレチン
2種のインクレチン(GIPおよびGLP-1)に作用するGIP/GLP-1受容体作動薬tirzepatideは新規糖尿病治療薬として開発が進められている週1回皮下注製剤である。(デュアル・インクレチンの作用を臨床で証明 横浜市立大学大学院分子内分泌・糖尿病内科学教授 寺内康夫 2021年07月06日 15:50 MedicalTribune)
インクレチンとは何でしょうか?
インクレチンとは? インクレチンの定義
インクレチン(incretin)は、「膵臓のランゲルハンス島β細胞を刺激して、血糖値依存的にインスリン分泌を促進する消化管ホルモン」として定義され、具体的にはグルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(glucose-dependent insulinotropic polypeptide:GIP)とグルカゴン様ペプチド-1 (glucagon-like peptide-1:GLP-1)の2つを指す。GIP は上部消化管に存在する腸内分泌細胞 (enteroendocrine cells)の一種である K 細胞が含有し、GLP-1 は下部消化管の腸内分泌細胞である L 細胞が含有する。(用語集 腸内細菌学会)
上部消化管と下部消化管
消化菅(腸)といえば、小腸(十二指腸、空腸、回腸)と大腸(盲腸、虫垂、結腸、直腸)という分け方が自分は馴染みですが、上部消化菅(食道、胃、十二指腸)と下部消化菅(空腸、回腸、大腸)という分け方もあるようです。
- <連載> 腸のことを理解しよう 大腸と小腸の働きは違う?腸のメカニズムを知ろう 腸のことを理解しよう(2)Reライフ.net 朝日新聞
- 健康用語の基礎知識 ヤクルト中央研究所 上部消化管とは、口から肛門まで一本につながっている消化管の中で、口から十二指腸までの部分を指します。
消化器の解剖学用語(英語)
上部消化管 upper gastrointestinal tract
食道 esophagus
胃 stomach
十二指腸 duodenum
下部消化管 lower gastrointestinal tract
回腸 ileum
空腸 jejunum
大腸 large intestine
盲腸 cecum
結腸 colon
直腸 rectum
肛門管 anal canal
小腸small intestine
Incretin-Related Therapies: Glycemic Control and Beyond 2013/10/23 ClevelandClinicCME
川崎病を最初に報告した1967年の症例報告論文
川崎病は発見者の名前にちなんでつけられた病名ですが、その最初の症例報告は1967年に日本語で書かれました。後に英語に翻訳されています。
川崎病の症例報告に対する賞賛
It is truly a masterpiece of descriptive clinical writing from the past century. In his exhaustive detailing of every observable aspect of the disease, Kawasaki was part Sherlock Holmes and part Charles Dickens with his sense of mystery and his vivid descriptions of the clinical features of these patients. (Commentary: Translation of Dr. Tomisaku Kawasaki’s original report of fifty patients in 1967. BURNS, JANE C. MD. The Pediatric Infectious Disease Journal: November 2002 – Volume 21 – Issue 11 – p 993-995)
川崎病の症例報告(1967年)の英語翻訳版
- Tomisaku Kawasaki. Pediatric acute febrile mucocutaneous lymph node syndrome with characteristic desquamation of fingers and toes: my clinical observation of fifty cases. (PDF link)
川崎病の症例報告(日本語)
1967年の症例報告の本文は日本語ですが、タイトルと要旨は英語でも書かれています。
- T Kawasaki. Acute febrile mucocutaneous syndrome with lymphoid involvement with specific desquamation of the fingers and toes in children. Arerugi . 1967 Mar;16(3):178-222.
参考
- Kawasaki Disease: A Brief History. Jane C. Burns, Howard I. Kushner, John F. Bastian, Hiroko Shike, Chisato Shimizu, Tomoyo Matsubara and Christena L. Turner. Pediatrics August 2000, 106 (2) e27; DOI: https://doi.org/10.1542/peds.106.2.e27
- The first reported case of Kawasaki disease? Stanford T. Shulman, MD. The Journal of Pediatrics VOLUME 135, ISSUE 4, P532, OCTOBER 01, 1999. DOI:https://doi.org/10.1016/S0022-3476(99)70187-3.
- Kawasaki, Tomisaku (1925–) (Springer Link)
脚気(かっけ)とは
脚気の症状
ビタミンB1が欠乏すると、まずはイライラ、倦怠感、食欲の低下などの症状が表れます。また末梢神経や中枢神経に異常が生じ、手や足の先に痛みやしびれが出るようになります。さらに進行すると筋力が衰え、感覚障害が出て歩行が不自由になります。また膝下をたたくと足が跳ね上がる膝蓋腱反射がなくなり、反応しなくなります。重症化すると同時に心臓機能が低下し、心拍数の増加、手足のむくみ、胸水がたまるなどの症状が表れます。急に心筋虚脱を生じる脚気衝心(かっけしょうしん)が出ることもあり、最悪の場合は心不全により死に至ります。(Doctors File 2020/08/03 監修医師 聖マリアンナ医科大学 東横病院 生活習慣病センター長 太田 明雄 先生)
ビタミン不足が原因で中枢神経が侵されて足元がふらついたり倦怠感や心不全、いらいらなど様々な脚気症状を招いてしまった。
脚気は、いったん患うと数日で亡くなることも珍しくなかった。
(「白米好きの日本人」を襲ったヤバい病気の正体 大正期には1年で「約3万人」もの命が奪われた 新 晴正 2021/03/07 6:30 東洋経済ONLINE)
脚気を患った有名人・脚気による死亡者
日本史上、「脚気」が原因で亡くなったと思われる有名人は少なくない。徳川将軍家などは3代家光、5代綱吉、13代家定、14代家茂とまさにオンパレードである。
豊臣秀吉も脚気で亡くなったとする説が有力視されている。晩年の秀吉が悩まされていた、下痢や失禁、精神錯乱などはまさにビタミン不足によるものだという。
明治から大正時代にかけては江戸時代よりもはるかに多くの患者を出し続けたとみられており、肺結核と並んで二大国民病とも言われた。
日清戦争(明治27年)では約20万の兵を動員したが、その2割までが脚気患者だった。
日露戦争でもはっきり表れた。戦病死者3万7200余人のうち、脚気による死者は実に約75パーセントに当たる2万7800人を数えた(『医海時報』明治41年10月)。
(2021/03/07 6:30 東洋経済ONLINE)
ビタミンの発見
明治43年になり、農芸化学の鈴木梅太郎博士が、ぬかの中からビタミンを抽出することに成功する。しかし、鈴木博士は医学者ではなかったため医学界からは何年も黙殺された。これも脚気患者を増やす一因となった。(2021/03/07 6:30 東洋経済ONLINE)
bolus insulinとは
論文を読んでいてbolus insulinという語句に遭遇しました。bolus insulinとは何のことでしょうか。
What is bolus insulin?
A bolus dose is insulin that is specifically taken at meal times to keep blood glucose levels under control following a meal. (diabetes.co.uk)
糖尿病の治療でインシュリンの注射を1日に複数回行うときに、食事を取ったときの血糖値の上昇を抑えるためのインシュリン注射が、bolus insulinで、食間の血糖値を維持するためのインシュリン注射が、basal insulinあるいはbackground insulinと呼ばれるようです。
basal insulinとbolus insulinは目的や期待する作用が異なるため、注射する際には異なる種類のインシュリンが選ばれます。
bolusという言葉は、異なる分野では異なる意味で使われるようです。上記は、糖尿病の場合。ウィキペディアにも同様の説明がありました。
Diabetics and health care professionals use bolus to refer to a dosage of fast-acting insulin with a meal (as opposed to basal rate, which is a dose of slow-acting insulin or the continuous pumping of a small quantity of fast-acting insulin to cover the glucose output of the liver). (Bolus Wikipedia)
糖尿病が恐ろしい理由:三大合併症による失明、足の切断、腎臓透析になる恐れ
糖尿病が恐ろしいのは、自覚症状がないまま病気が進行すること。進行すると取り返しがつかないこと(失明、足の切断、腎臓透析)になることだそうです。これらの合併症もまた自覚症状が出にくいため、うっかりすると本当に恐ろしい結末になってしまいます。
糖尿病性網膜症
糖尿病の恐ろしさの一つが、合併症により失明する恐れがあること。実際に英国では毎週30人のペースで、糖尿病により失明しているのだそうです(dm-net.co.jp)。
糖尿病性網膜症の自覚症状
落下星氏のブログから、症状の記載を引用します。最初の兆候。
時々目の前を小さな虫が飛んでいるように思えたのです。でも、それが何を意味するのかわからなかったのです。白い壁などに向かって、片目で、なにげなく壁を見つめていると、小さい蠅のようなものが1~2匹飛んでいるように見えました。これは眼底に出血した血が固まって黒い点にみえるものだそうです。ただ、片目にしかみえませんから、注意してチェックしないと自覚しないことが多いのだそうです。
もう少し程度がひどいときの症状。
少し出血が多いときには、コップの中に黒いインクを1滴たらしたあとのように、小さな黒い点からインクが流れだしたように見えました。いづれの場合も、目球を動かすと、像も動くように見えますし、焦点を変えるとピンボケで見えなくなりました。普通に両目でみていたのでは気付きませんので、片目で無地の壁をみるようにすると、わかりやすいのです。
以下は、失明に至ったときの症状。
なにかかおかしい。物が見難い。ふと蛍光灯を見上げると、なんとなく赤っぽい。訳がわからず、とりあえず手のひらで片目づつおおってみると、あらら、左目は正常なのに右目だけにするとまっかに染まった室内。2~3回確認してからドクターの言葉を思い出したのです。「そうか・・・。これが眼底出血かぁ・・・。」
(引用元:落下星の部屋)
糖尿病性神経障害・壊疽・足の切断
糖尿病の合併症の一つに神経障害があり、足が壊疽(えそ)して最後は切断を余儀なくされるそうです。実際にイギリスでは1時間につき一本の足が(手術で)切断されているそう(dm-net.co.jp)。
参考
- 落下星の部屋
- 50代に糖尿病で亡くなった男が残す痛切な筆録 「落下星の部屋」が20年以上も続いている理由 (古田 雄介 2021/02/27 13:00 東洋経済ONLINE)
- 【糖尿病】 何より怖い合併症(全国健康保険協会)
- 私の糖尿病50年 糖尿病医療の歩み 後藤 由夫(東北大学名誉教授、東北厚生年金病院名誉院長)
尿酸降下薬の種類
尿酸降下薬は、その働き方により、尿酸産生抑制薬と尿酸排泄促進薬の2種類に分けられます。
尿酸産生抑制薬
アロプリノール(商品名ザイロリック、アロシト-ルなど)
フェブキソスタット(商品名フェブリク)
尿酸排泄促進薬
ベンズブロマロン(商品名ユリノ-ムなど)
プロベネシド(商品名ベネシット錠など)
参考
- 痛風の治療尿酸を下げる薬にはどんなものがあるか? 痛風・尿酸財団