パリ 同盟国における出願に関してもこれをこの洗顔のことを拡大された先願と呼びますか
結論から申し上げますと、パリ条約による優先権を主張していたとしても、その「優先日(外国での出願日)」は「拡大された先願(29条の2)」の判断基準日にはなりません。非常に重要な(そして実務家でも混同しやすい)ポイントですので、整理して解説します。
1. 結論:拡大された先願(29条の2)の基準日はいつか?
結論は**「日本への実際の出願日(日本出願日)」**です。
パリ条約上の優先権を主張していても、第29条の2(拡大された先願)の地位については、優先日(外国出願日)には遡及しません(さかのぼりません)。
* 外国での出願日: 新規性(29条1項)・進歩性(29条2項)の判断基準日にはなる。
* 日本での実際の出願日: 拡大された先願(29条の2)の地位が発生する日。
つまり、パリ条約の同盟国での出願そのものが日本における「拡大された先願」になるわけではなく、その後日本に出願された時点で初めてその地位を得ます。
2. なぜ優先日は適用されないのか?
この区別は、**「その発明がいつ日本国内で利用可能(あるいは公知)になったか」**という考え方の違いに基づきます。
| 項目 | 適用される条文 | 優先権主張の効果 | 理由 |
|—|—|—|—|
| 新規性・進歩性 | 第29条 | ある(遡及する) | あなたの発明を守るための権利(出願人の利益)なので、最初の外国出願日を基準にする。 |
| 拡大された先願 | 第29条の2 | ない(日本出願日が基準) | 他人の出願を排除するための「準公知」の効果(第三者の不利益)なので、実際に日本の特許庁に明細書が提出された日(=日本出願日)を基準にする必要がある。 |
イメージ解説:
「拡大された先願」とは、「出願されたけどまだ公開されていない、秘密の状態の発明(Secret Prior Art)」のことです。
外国に出願しただけでは、日本の特許庁にはその発明の内容(秘密)は存在していません。日本に出願書類が届いて初めて「日本国内にある秘密の先願」として扱われるため、優先権の効果は及ばないのです。
3. 具体的なタイムラインの例
以下のケースで、他人の出願(第三者出願)を排除できるかを見てみましょう。
* 2023年 1月 1日: Aさんがアメリカで出願(発明イ)
* 2023年 6月 1日: Bさんが日本で出願(発明イ)
* 2023年 12月 1日: Aさんが上記アメリカ出願に基づき優先権を主張して日本に出願
【判定】
Aさんの日本出願(12/1)は、Bさんの日本出願(6/1)にとって「拡大された先願」になるか?
* 答え:なりません。
* 理由: Aさんの「拡大された先願」としての地位は、実際の日本出願日である2023年12月1日から発生するからです。Bさんの出願(6/1)の方が早いため、Aさんの出願によってBさんの出願が29条の2で拒絶されることはありません。
* (注:もしBさんの出願が12月2日だった場合は、Aさんの出願によって拒絶されます。)
4. 注意点:PCT出願の場合
これが少しややこしいのですが、**PCT出願(国際出願)**の場合は扱いが異なります。
* PCT出願の場合: 「国際出願日」が「日本出願日」とみなされます。
もしAさんがパリルート(直接日本に出願)ではなく、PCTルートで出願していた場合、その「国際出願日」が基準となります。ただし、それでも「優先日(基礎となる外国出願日)」までは遡りません。
まとめ
* パリ同盟国での出願そのものは、「拡大された先願」にはなりません。
* 優先権を主張して日本に出願しても、29条の2の効果は「実際の日本出願日」からスタートします(優先日には遡りません)。
* 「新規性・進歩性の判断(優先日基準)」と「拡大先願の判断(日本出願日基準)」は分けて覚える必要があります。
知財の勉強において、ここは非常によく出る「ひっかけポイント」ですので、しっかり区別しておくと得点源になります!