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特80 中用権と特176 後用権利との比較

特80 中用権と特176 後用権利

通称 条文番号 正式な名前(長いですが…)
中用権 特許法 第80条 無効審判の請求登録前の実施による通常実施権
後用権 特許法 第176条 再審により回復した特許権等の効力の制限

第112条の3は、「特許権の回復後の通常実施権」と呼ばれます

1. 中用権(第80条)

~「無効になった元・特許権者」を救う権利~

これが本来の「中用権」です。かなり特殊なケースです。

  • どんな時?

    1. Aさんが特許を持っていたが、間違い(冒認出願など)があって無効になった。

    2. 代わりに、正当な権利者Bさんに特許が認められた。

    3. Aさんは、自分の特許が無効になるとは知らずに(善意)、ビジネスをしていた。

  • どうなる?

    • Aさんは、Bさんの新しい特許権を使わせてもらう権利(中用権)を得ます。

    • 重要: この場合、AさんはBさんに**「相当の対価」を払う必要があります**。

    • (理由:Bさんには何の落ち度もなく、Aさんは無権利だった期間に利益を得ていたからです)

2. 後用権(第176条)

~「再審でひっくり返された第三者」を救う権利~

これは前回解説した通りです。

  • どんな時?

    • 特許が無効等の確定審決を受けた後に、再審で復活した場合。

  • どうなる?

    • 無効だと思ってビジネスを始めた第三者に権利が与えられます。

    • 重要: これも「相当の対価」を払う必要があります。


【試験・実務用】4つの権利の整理表

ここが一番の落とし穴になりやすいので、表にまとめました。

特に「お金(対価)がいるか、いらないか」の違いが試験でよく出ます!

権利の名前 条文 状況(キーワード) 対価の支払い
先使用権 79条 出願前からやってた 不要 (タダ)
中用権 80条 無効になった元権利者の救済 必要 (有料)
(回復後の権利) 112条の3 特許料の払い忘れからの回復 不要 (タダ)
後用権 176条 再審で復活した時の救済 必要 (有料)

覚え方のコツ:

  • 「先使用権」と「払い忘れ(112条の3)」は、特許権者側がまだ権利を持っていないか、ミスをしているので、使う側はタダでOK。

  • 「中用権(80条)」と「後用権(176条)」は、相手(正当権利者・復活した権利者)も保護する必要があるため、バランスを取って有料(対価が必要)

「中用権=80条=有料」「後用権=176条=有料」のセットで暗記してしまうのが一番安全です!

無効審判の請求登録

「訴え(文句)が出された事実」に過ぎません。まだ「無効(特許が死んだ)」とは決まっていない段階です。なぜ「決着」ではなく「文句が出た段階」を基準にするのか?

1. 「無効審判の請求登録」の正体

これは、特許庁にある「特許原簿(とっきょげんぼ)」という「特許の戸籍」のようなものに、一行メモが書き込まれることを指します。

  • 書き込まれる内容: 「この特許に対して、無効にしてくれという審判が請求されました(戦いが始まりました)」

  • 意味: 「この特許は、将来死ぬかもしれませんよ!みんな気をつけてね!」という世間への警告(イエローカード)です。

まだ特許は有効(生きています)ですが、「係争中」という札が立った状態です。

2. なぜ、ここが「運命の分かれ道」になるの?

中用権(80条)の条文では、この「警告(請求登録)」が出る「前」から事業をしていた人だけを救う、と書いてあります。なぜ「無効が確定した時」まで待ってくれないのでしょうか?それは、「知っていたか(悪意)、知らなかったか(善意)」を区別するためです。

A. 警告(請求登録)の「前」からやっていた人

  • 状況: 特許は平和そのもの。「この特許は大丈夫だ」と信じて工場を建てた。

  • 評価: 純粋な被害者。救ってあげるべき(中用権ゲット)。

B. 警告(請求登録)の「後」に始めた人

  • 状況: 戸籍を見れば「この特許、無効審判で揉めてるな(死ぬかもな)」とわかったはず。

  • 心理: 「今は特許があるけど、どうせ無効になって消えるだろ。見切り発車で工場建てちゃえ!」

  • 評価: リスクを承知で博打を打った人。救う必要なし(中用権なし)。

つまり、法律はこう言いたいのです。

『無効にしてくれ』という看板(請求登録)が出た後に、のこのことビジネスを始めたヤツまで守る義理はないよ。看板が出てたんだから、リスクがあるのはわかってたでしょ?」

3. 時系列で見る「安全地帯」

図解イメージで見ると一発です。

 

【安全地帯】        【危険地帯】
(救われる)        (救われない)
    ↓                   ↓
----|-------------------|-------------------|------> 時間
  特許権            ★ここが境界線★        審決確定
  発生             「無効審判の         「はい、無効!」
                    請求登録」          (特許死亡)
                  (イエローカード)     (レッドカード)

 

真ん中の★は「まだ訴えの事実に過ぎない」段階です。しかし、法律上は「ここから先は自己責任ゾーン」という入り口の意味を持つのです。

まとめ

  • 「無効審判の請求登録」の意味: 「この特許、怪しいですよ!今から喧嘩しますよ!」という警告の看板が立ったこと

  • なぜそこが基準?: 看板を見た後にビジネスを始めた人は、「特許が消えることに賭けたギャンブラー」だから、保護する必要がない(と法律が判断している)からです。

「判決の確定」ではなく「揉め事のスタート」を基準にすることで、「ちゃっかり便乗しようとした人」を排除している、と考えると分かりやすいですよ!

特80 中用権と 112条の3 との比較

中用権(80条):

    • 正式:無効審判の請求登録前の実施による通常実施権

    • 通称:中用権

  • 112条の3:

    • 正式:特許権の回復後の通常実施権

    • 通称:(特になし。「回復後の実施権」などと呼ぶ)

2. 最大の違いは「お金(対価)」

ここが実務でも試験でも一番大事な区別です。

  • 中用権(80条)(対価が必要)

  • 112条の3 → 無料(対価は不要)

覚え方のイメージ

  • 中用権(80条): 本来の権利者同士の争い(無効審判)に巻き込まれた話なので、ビジネスとして「使用料」は払うべき。

  • 112条の3: 元の権利者がウッカリ特許料を払い忘れた(権利者の自爆)のが原因。そんなダメな権利者のために、第三者がお金を払う必要はない(ペナルティ的な意味合い)。

3. なぜ混同しやすいのか?

多くのテキストや予備校の講義では、これらを「法定通常実施権」という大きなグループの中で一緒に教えます。どちらも「権利が一度死んで、生き返ったときの空白期間(ブランク)を埋めるための救済措置」という構造(仕組み)がそっくりだからです。

中用権の解説:ドラマ仕立てで

中用権(特許法80条)をします。中用権とは、一言で言うと「自分の特許がダメになったけど、お店を続けられる権利」です。ドラマ仕立てで解説します。

【ストーリー】ある日、特許が消えた!

登場人物は2人です。

  • Aさん(あなた): 「素晴らしい掃除機」を発明して、特許を取った人。

  • Bさん(ライバル): 実は同じ発明について、正当な権利を持っていた人。

第1幕:Aさんの勘違いと成功

あなたは「すごい掃除機」の特許を取りました。「よし、これで安泰だ!」と信じて、借金をして工場を建て、掃除機を製造・販売し始めました。ビジネスは順調です。

第2幕:悪夢の通知

ある日、ライバルのBさんが現れてこう言いました。

「その特許、実は間違いで登録されたものだよね? 本当の権利者は僕なんだ。君の特許を無効にする審判を請求したよ!」

第3幕:敗北

特許庁で審理が行われた結果、なんとBさんの言い分が認められました。

  • あなたの特許は「無効(最初からなかったこと)」になりました。

  • 代わりに、Bさんの特許が確定しました(あるいはBさんの特許権が残りました)。

第4幕:絶体絶命

Bさんは言います。

「はい、君の特許は消えたね。今、この掃除機の特許を持ってるのは僕だ。君が工場で掃除機を作ってるのは、僕の特許権の侵害だ。今すぐ工場を壊して、店をたため!」

ここで登場するのが「中用権(80条)」

この状況、あなた(Aさん)があまりに可哀想ですよね?「特許庁が一度はOK出したから、それを信じて工場まで作ったのに!」そこで法律は、あなたに救いの手を差し伸べます。これが中用権です。

法律の声:

「Aさんは、自分の特許を信じて真面目にビジネスをしていたんだ。Bさんの権利も大事だけど、Aさんの工場を今すぐ潰すのは社会的な損失だ。

だからAさん、そのまま工場を動かしていいよ。」

これが中用権の正体です。

ただし、タダではない(重要!)

ここで法律は、勝者であるBさんの顔も立てないといけません。あなたは「他人の権利(Bさんのもの)」を使って商売をすることになるからです。

法律の声:

「Aさん、店を続けていいと言ったけど、今はBさんが本当の持ち主だ。

だから、Bさんにはちゃんと『家賃(ライセンス料)』を払いなさい。」

これが「相当の対価」の支払いです。


まとめ:中用権が成立する条件

この権利をもらうためには、以下の3つの条件をクリアしている必要があります。

  1. 「無効審判の請求登録」より前からやっていること

    • Bさんが「文句(審判)」を特許庁に登録する前から、あなたがビジネス(または準備)を始めていること。

    • 「文句」が出た後に慌てて工場を作ったなら、それは「ヤバいとわかっててやった」ので救われません。

  2. 自分の特許が無効理由を含んでいると「知らなかった」こと

    • 「実はこの特許、ダメっぽいな…」と知りながらやっていたなら、保護されません(善意であること)。

  3. 対価(お金)を払うこと

    • タダ乗りは許されません。

最終確認図

シンプルにこれだけ覚えてください。

あなた(Aさん)の状況 中用権(80条)の結論
自分の特許を信じて工場を作った → 工場は続けられる!(中用権あり)
でも特許は無効になった →  お金(対価)は払え!

これが、中用権のすべてです。この「自分の権利が消えて、相手にひっくり返されたけど、お金を払って使い続ける」という図式だけを頭に入れてください。

特112の3(回復した特許権の効力の制限) 後用権との比較

「一度死んだはずの特許が生き返ったときに、その間にビジネスを始めた人を救うための権利」です。法律初学者の方にもイメージしやすいように、「ゾンビ特許」という例えを使って解説します。

1. 全体のイメージ:なぜこの権利が必要なのか?

通常、特許権が消滅(特許料の不納などで)したり、無効になったりすれば、誰でもその技術を自由に使えるようになります。

しかし、特許法には「敗者復活戦」のような制度があり、一度消えた特許が、特定の手続きによって復活することがあります。

ここで問題が起きます。

「特許が消えている間に、安心してその技術を使い始めた人はどうなるの?」

後から「特許が復活したから、お前は特許権侵害だ!賠償金を払え!」と言われたら、あまりに不条理ですよね。

そこで、その「空白期間(特許が死んでいた期間)」に善意で事業を始めた人を守るために認められる制度があります。これらは「法定通常実施権」という、「タダ(または対価を払って)で使い続けていいよ」という権利の一種です。

2. 「特112の3(回復した特許権の効力の制限)」とは?

(特許料追納による特許権の回復)

これは、「特許料を払い忘れて特許が切れたけど、あとで復活した場合」の話です。

  • 条文: 特許法 第112条の3

  • シチュエーション:

    1. 特許権者Aさんが、特許料を払い忘れた。

    2. 期限が過ぎ、特許権が消滅した。

    3. Bさんは「お、特許が切れたぞ」と確認して、その技術を使った製品の製造工場を作った。

    4. その後、Aさんが「正当な理由」などを主張して追納し、特許権が復活した。

この場合、BさんはAさんの特許権侵害になってしまうのでしょうか?

答えはNOです。Bさんには通常実施権が与えられ、その事業の範囲内で使い続けることができます。

ポイント:

  • 特許が「死んでいた期間(効力がなかった期間)」に事業を始めた(または準備した)ことが条件です。

  • 原則、ライセンス料(対価)は不要です。

3. 後用権(こうようけん)とは?

(再審により回復した特許権等の効力の制限)

こちらは、「裁判や審判で一度『無効』などが確定したのに、やり直し(再審)でひっくり返った場合」の話です。かなりレアケースです。

  • 条文: 特許法 第176条

  • シチュエーション:

    1. 特許が無効審判で「無効」と確定した。

    2. Cさんは「無効になったから大丈夫」と信じて、その技術を使ったビジネスを始めた。

    3. その後、審判の手続きに重大な欠陥があったとして「再審(やり直し)」が行われ、「やっぱり特許は有効でした」と判決がひっくり返った。

この場合、Cさんを特許権侵害にするのは酷です。そのため、Cさんには「後用権」が与えられます。

ポイント:

  • 無効等の審決が確定した後、再審請求の登録前に、善意(特許が復活することを知らない)で事業を始めたことが条件です。

  • こちらは、「相当の対価」を払う必要があります。(特112の3の制度との大きな違いです!)

4. まとめと違いの比較表

どちらも「特許が復活した時の、第三者保護」ですが、原因と対価に違いがあります。

項目 回復した特許権の効力の制限 (112条の3) 後用権 (176条)
原因 特許料の払い忘れからの回復 再審による判決の逆転(無効→有効)
発生タイミング 期間徒過後 ~ 追納登録まで 無効確定後 ~ 再審請求登録まで
保護される人 特許が切れている間に事業を始めた人 無効になったと信じて事業を始めた人
主観要件 特になし(善意・悪意を問わないことが多い※) 善意であること(復活を知らなかった)
お金(対価) 不要(無償) 必要(相当の対価)

112条の3の場合、条文上「善意」は要求されていませんが、制度の趣旨として「消滅したことを信頼した人」を守るものです。

5. 法律初学者が陥りやすい「先使用権」との違い

最後に一つだけ注意点です。これらと似たものに「先使用権(せんしようけん)」(79条)があります。

  • 先使用権: 特許出願前から独自に発明してビジネスをしていた人の権利。

  • 112条の3」や後用権 (176条): 特許権が一度消えた後にビジネスを始めた人の権利。

「いつ始めたか」が全く違うので、混同しないようにしましょう!

疑問:後用権の場合は、対価を払えっていうのも酷だと思うんだけど?無効審判を見届けてからアクションを起こしたんだから、何も落ち度はないよね?

Gemini:「無効審判で勝った(あるいは無効だと確定した)のを見て参入したのに、後でお金払えっておかしくない?」という感覚、とても真っ当です。しかし、特許法には明確な「バランス(衡平:こうへい)の論理」が存在します。結論から言うと、この違いは「特許権者に落ち度(ミス)があったかどうか」で決まっています。その「調和のロジック」を紐解いていきましょう。

1. 根本的な違い:「誰が悪かったのか?」

ここが一番のポイントです。特許権が一時的に消滅した「原因」を比べてみましょう。

A. 「112条の3」(特許料払い忘れ)の場合

  • 原因: 特許権者が期限管理をミスった(ズボラだった)。

  • 評価: 「自分のミスで権利を失効させたんだから、その間に参入した人に対して『金払え』なんて言う資格ないよね?」

  • 結果: 対価不要(無償)。特許権者への一種のペナルティでもあります。

B. 後用権(再審)の場合

  • 原因: 裁判や審判の手続きに重大な欠陥(嘘の証拠が使われた、代理権がなかった等)があった。

  • 評価: 特許権者は悪くない。 むしろ、間違った判断で権利を奪われた「被害者」です。

  • 結果: 対価必要

ここに「後用権でお金を払う理由」があります。特許権者は何も悪くないのに、「特許権の独占」も奪われ、さらに「ライセンス料」まで貰えないとなると、特許権者があまりにも可哀想(保護が薄すぎる)ということになるのです。

2. 「対価」は「損害賠償」ではない

「お金を払う」というと、悪いことをした罰金のように感じるかもしれませんが、ここの「対価」の性質は違います。

  • × 損害賠償: 悪いことをしたから払うお金。

  • 実施料(ライセンス料): 他人の技術を使わせてもらうレンタル料。

法律の考え方はこうです:

法律の神様の声:

「第三者(あなた)には同情する。無効だと思って工場を建てたんだよね。だから、特許が復活したからといって**『工場を壊せ(差止請求)』とは言わせない**。事業を続ける権利(後用権)はあげよう。

でも、特許権者も被害者なんだ。本来なら独占できたはずの技術を、あなたに使われることになる。だからせめて、『もし最初から正規に契約していたら払っていたはずのレンタル料』くらいは払ってあげてくれないか? それで手打ちにしよう」

つまり、「事業の継続(第三者の利益)」「経済的補償(特許権者の利益)」を天秤にかけて、ギリギリの妥協点を探った結果が「使用は認めるけど、タダ乗りはダメ」という落としどころなのです。

3. もし「無償」にしてしまったら?(逆の不公平)

もし、後用権も「無償(タダ)」にしてしまうと、どうなるでしょうか。

悪意のある競合他社が、こんなことを考えるかもしれません。

  1. 嘘の証拠をでっち上げて、無理やり特許を無効にする。

  2. 無効になった瞬間に、一気に市場に参入してタダで技術を使いまくる。

  3. あとで嘘がバレて再審で特許が復活しても、「後用権があるからずっとタダで使えるもんね!」と開き直る。

これでは「正直者が馬鹿を見る」ことになります。

復活した特許は、最初からずっと有効だったものとして扱う」というのが再審の基本ルールなので、その技術を使っている以上、公平性の観点から「対価」は払うべき、という考え方が採用されています。

まとめ

あなたの言う通り、第三者には落ち度はありません。しかし、特許権者にも落ち度はありません。

「お互いに悪くないもの同士」が衝突した時の交通整理として:

  1. 第三者には: 「ビジネスを潰されない権利(差止請求されない)」を与える。

  2. 特許権者には: 「本来得られたはずの利益(実施料相当額)」を与える。

これで「痛み分け」をしている、と理解するとスッキリするのではないでしょうか。

これに対して112条の3」は、「特許権者がミスった」という明確な理由があるので、第三者が圧倒的に有利(タダでOK)な扱いになっているのです。

質問:対価として、特許権者が高いライセンス料を吹っ掛けてくるんじゃないの?

Gemini:その懸念、ごもっともです!「足元を見られて、ボッタクリ価格をふっかけられるんじゃないか?」というのは、ビジネスパーソンとして当然の心配です。でも、安心してください。法律はそのあたりもちゃんとガードしています。なぜ「法外な値段」にはならないのか、その「安全装置(セーフティネット)」について解説します。

1. 「言い値」ではない!魔法の言葉「相当の対価」

条文には、単に「お金を払え」と書いてあるのではなく、「相当の対価(そうとうのたいか)」を支払う義務があると書かれています(特許法176条)。

この「相当」というのがキーワードです。

これは、特許権者が「1億円払え!」と言えば1億円になるわけではなく、**「客観的に見て、業界の相場ならこのくらいだよね」**という金額に限定されるという意味です。

具体的には?

通常、以下の基準で計算されます。

  • 業界の平均的なライセンス料率(例:売上の3%〜5%など)

  • その技術が製品にどれだけ貢献しているか

つまり、「もし最初から普通に契約していたら、このくらいの金額で握手していたはずだよね」という、「世間相場(マーケットプライス)」が上限になります。

2. もめるなら裁判所が「適正価格」を決める

もし特許権者が「いや、俺の特許はすごいから相場の10倍払え!」とゴネて、話し合いが決裂したらどうなるか?その場合は、裁判所が決定します。裁判官は、過去の判例や業界のデータを元に、ドライに「適正価格」を算出します。そこに特許権者の「感情」や「吹っかけ」が入る余地はありません。この「最終的には裁判所が適正価格を決めてくれる」という事実があるため、特許権者も無茶な金額を要求しにくくなるのです(どうせ裁判で負けるので)。

3. 一番の強みは「工場を止められない」こと

ここが一番重要です。ビジネスにおいて、相手が法外な値段をふっかけてくる最大の理由は、「嫌なら出ていけ(工場を止めろ)」という脅しが使えるからです(これを「差止請求権」と言います)。

「明日から製品を作れなくなったら倒産する…! 足元見られて悔しいけど、高い金でも払うしかない…」

これが通常の特許侵害の怖いところです。しかし、後用権を持っているあなたには、この脅しが通用しません。

  • 特許権者: 「高い金を払わないなら、生産を止めさせるぞ!」

  • あなた: 「どうぞご自由に。私には後用権(事業を継続する権利)があるので、あなたは私の工場を止める権利を持っていませんよ。金額に不満なら裁判所で相場を決めましょう」

と言い返せるのです。「ビジネスを人質に取られていない」というのは、交渉において最強のカードです。だからこそ、対価は「適正な相場」に落ち着くのです。

まとめ

後用権における「対価」の支払いは、「ボッタクリバーの請求」ではなく、「適正な家賃の支払い」に近いイメージです。

  • 特許権者: 吹っかける権利はない(裁判所が許さない)。

  • あなた: ビジネスを止められる心配はない(後用権がある)。

この2つの要素によって、結果的に「お互いが納得できる常識的な金額」に落ち着くように制度設計されているんですよ。よくできていますよね。

質問:対価の支払いが滞ったら、工場を止められちゃうんじゃないの?

Gemini:の支払いが遅れても、直ちに工場を止められる(差止請求される)ことはありません。ここが、普通の契約とは違う「法定通常実施権(法律が無理やり与えた権利)」の強みです。なぜそうなるのか、「借金」「泥棒」の違いで解説します。

1. 「特許侵害」と「借金不払い」は別次元の話

法律の世界では、以下の2つを明確に区別します。

  • A. 特許権侵害(泥棒): 権利がないのに勝手に使うこと。

    • → 罰:「やめろ!」と言える(差止請求)。

  • B. 対価の不払い(借金): 権利はあるけど、払うべきお金を払っていないこと。

    • → 罰:「金払え!」としか言えない(金銭請求)。

後用権(法定通常実施権)を持っているあなたは、法律によって強力に「使う権利」を与えられています。ですので、対価を滞納したとしても、あなたは「B(借金がある人)」であって、「A(泥棒)」には戻らないのです。

2. 特許権者は何ができるのか?

では、特許権者は泣き寝入りするしかないのか?というと、そうではありません。彼らは民法のルールを使って、徹底的にお金を取り立てに来ます。

  • できること:

    • 裁判所にお願いして、あなたの会社の銀行口座を差し押さえる

    • 売掛金を差し押さえる。

    • (最悪の場合)会社を倒産させて、そこから回収する。

  • できないこと:

    • 特許権に基づいて「工場の機械を止めろ」と命じること。

    • 特許権侵害として刑事告訴すること。

つまり、「お財布は攻撃されるけど、工場の稼働そのものを止める権利(特許権)は行使されない」ということです。

3. 普通のライセンス契約との違い

ここが混乱しやすいポイントです。企業同士が話し合って決める「普通のライセンス契約(許諾による実施権)」であれば、あなたの懸念通りになります。

  • 普通の契約: 「ライセンス料を〇ヶ月滞納したら、この契約は解除します」という条項が入ります。

    • → 滞納する → 契約解除される → 権利がなくなる → 特許権侵害(工場停止)!

  • 後用権(法定通常実施権): 法律が与えた権利なので、「契約解除」という概念がありません。

    • → 滞納する → 権利は消えない → 単なる借金トラブル(工場は動いてOK)

まとめ

後用権は、一度ハシゴを外された(無効だと思ったのに復活した)人を救うための最強クラスのセーフティネットです。多少支払いが遅れたくらいで「はい、やっぱり工場止めてね」と言われてしまっては、救済の意味がなくなってしまいます。だから法律は、「お金の問題(対価)」と「事業の継続(実施権)」を切り離して考えているのです。もちろん、お金を払わないと差し押さえで会社が潰れる可能性はありますが、「特許権侵害だ!」と言われて即日操業停止に追い込まれるリスクはない、と覚えておけばOKです。

112条の3の説明:ストーリー仕立てで

特許法第112条の3(正式名称:特許権の回復後の通常実施権)について、中用権(80条)との対比を明確にしながら、解説を行います。これは、一言で言うと「特許権者がズボラで招いたトラブルから、第三者を守るための権利」です。

1. 112条の3 の具体的ストーリー

~「うっかり失効」と「ぬか喜び」の悲劇~

【登場人物】

  • Aさん(特許権者): うっかり屋さん。特許料の管理がズサン。

  • Bさん(第三者): 新規参入を狙うメーカー。

【第1幕:特許の「死」】

Aさんは特許を持っていましたが、毎年払うべき「特許料」の支払い期限を忘れ、さらに半年間の猶予期間(追納期間)も過ぎてしまいました。この瞬間、法律上、Aさんの特許権は「消滅」します。特許原簿(戸籍)にも「未納により消滅」と書かれます。

【第2幕:Bさんの参入】

Bさんは特許原簿を見て確認します。「お、Aさんの特許が消滅している!これでこの技術は誰でも使えるフリー素材だ!」Bさんは安心して、その技術を使った製品の製造工場を作り、販売を開始しました。

【第3幕:まさかの「復活(ゾンビ化)」】

その後、Aさんが慌てて特許庁に泣きつきます。「すいません!意図的に払わなかったわけじゃないんです!うっかりミスなんです!」一定の条件(回復要件)が認められ、Aさんが特許料と割増金を払うことで、なんと特許権が復活しました。

※法律上、「最初から消滅しなかったこと」になります。

【第4幕:対立】

復活したAさんがBさんに言います。「特許が復活したから、お前は特許権侵害だ!金払え!工場止めろ!」

2. ここで発動するのが「112条の3」

Bさんからすれば、「ふざけるな」ですよね。「消滅しているのを確認して始めたのに、後出しジャンケンで侵害だなんて納得できない!」そこで、112条の3はBさんを守ります。

法律の結論:

  1. 事業継続OK: Bさんはそのまま工場を動かしてOK。

  2. 対価(お金)は不要!: BさんはAさんに、一円も払う必要はありません。

3. なぜ「対価不要(タダ)」なのか?(80条との決定的違い)

ここが中用権(80条)との最大の分岐点です。なぜこちらはタダでいいのでしょうか?

理由はシンプルで、「悪いのは100%特許権者(Aさん)だから」です。

  • Aさん(特許権者): 期限を守らなかった自分が悪い。復活させてもらっただけありがたいと思え。

  • Bさん(第三者): 公的な記録(特許原簿)を信じて行動しただけで、何の落ち度もない。

法律は、「自分のミスで権利を一度腐らせたAさんが、その期間にビジネスを始めたBさんから金を取るなんて、厚かましいにも程がある」と考えます。だから、無償(タダ)なのです。

4. 80条(中用権)との比較まとめ

これで違いがハッキリ見えるはずです。

比較項目 112条の3 (今回の解説) 80条 (本来の中用権)
通称 回復後の通常実施権 中用権
原因 特許料の払い忘れ (期間徒過) 無効審判 でのひっくり返し
誰のせい? 特許権者のミス (ズボラ) 誰のミスでもない (法的な判断の変更)
特許権者への感情 「自業自得でしょ」 「ちょっと可哀想だね」
結論(対価) 無償 (タダ) 有償 (相当の対価が必要)
発生する期間 特許が切れていた期間 無効審判の請求登録前

5. よくある疑問・注意点

Q. Bさんが「復活するかも」と知っていたら?(悪意)

112条の3の場合、Bさんが「どうせAさんは後で金を払って復活させるだろうな」と予期していたとしても(悪意)、条文上は保護されます(対価不要です)。なぜなら、「特許権者が期限を守らなかった事実」の方が重いからです。特許権者の管理ミスを棚に上げて、他人の内心(善意・悪意)を問う資格はない、という運用です。

Q. 復活した「後」に始めた人は?

Aさんが特許を復活させたに、Bさんがビジネスを始めた場合は、112条の3は適用されません。単なる特許権侵害になります。「復活した」という事実も特許原簿に載るので、それを見落としたBさんが悪いことになります。

まとめ

  • 112条の3は、「特許権者がミスって特許を死なせた間に、ビジネスを始めた人を守る権利」

  • 特許権者が全面的に悪いので、「お金(対価)は一円も払わなくていい(タダ)」

この「特許権者のミスの有無」=「お金がいるかいらないか」のセットで覚えましょう。

質問:特112の3にニックネームはある?

Gemini:たった一言でビシッと決まる、業界共通の「〇用権」というカッコいい名前はありません。これ、勉強していると不便ですよね。「名前つけてくれよ!」と私も思います。ただ、実務家や受験生が呼んでいる「通称(略称)」はありますので、それを紹介します。

1. 正式名称と、よく使われる「通称」

条文の見出しそのままですが、これが最も一般的です。

  • 正式名称:特許権の回復後の通常実施権(とっきょけんの かいふくごの つうじょうじっしけん)
  • 実務やゼミでの呼び方(通称):

    • 「回復後の実施権」(これが一番メジャーです)

    • 「112条の3の実施権」

    • 「追納回復後の実施権」

2. なぜこれには名前がないの?(余談)

中用権」「後用権」という名前は、明治時代の古い特許法や、お手本にしたドイツ法などの歴史的背景から定着した、伝統ある「あだ名」です。一方、112条の3(特許料の追納による回復)という制度自体が、国際的な条約(PLTなど)に合わせて比較的最近になって整備された新しい制度なんです。(昔は、期限を過ぎたら問答無用で特許は死んでいました。復活なんてありえなかったのです)新入りの制度なので、歴史ある「〇用権」というあだ名をもらえていない、というイメージですね。

まとめ

  • 80条のような「〇用権」という定まった名前はない。

  • 人前で言うときは「回復後の実施権」と言うのが正解。

  • 脳内では「払い忘れの時のアレ(タダのやつ)」と覚えておく。

特30(新規性喪失の例外) 第1項と第2項の違い

質問:特許法第30条(発明の新規性の喪失の例外)第1項は、本人に非がない形で誰かに発表されちゃった場合、第2項は自分で発表しちゃった場合、どっちにしても1年以内に出願すればいいよって内容だけど、なぜわざわざ二通りに分けて書いているの?合わせたら全ての場合になるんなら、場合分けいらないのでは?

Gemini:その理由は、大きく分けて「手続きの有無」と「救済の性質」の違いにあります。ここが試験や実務でも非常によく問われるポイントです!

1. 最大の理由は「手続き」が違うから

条文が分かれている最大の理由は、適用を受けるための条件(手続き)が全く異なるからです。

項目 第1項(意に反して) 第2項(行為に起因して)
状況 詐欺、脅迫、産業スパイ、守秘義務違反などで勝手に公開された場合。 学会発表、博覧会、刊行物への掲載、ウェブ公開など、自分で公開した場合。
出願時の手続き

不要

 

(出願時に「適用を受けます」と言う必要はない)

必要

 

出願時に「適用を受けます」という書面を出し30日以内に証明書を出す必要がある)

なぜ? 被害者は、自分が公開されたことを知らないまま出願する可能性があるため、事前の手続きを強制できない。 自分でやったことなので、知っているはず。「例外規定を使います」と自己申告させる義務がある。

ここが一番のポイントです。もし条文を一つにまとめてしまうと、「意に反して公開された被害者」に対しても、「出願時に証明書を出せ(出さないと救済しない)」と強いることになり、酷ですよね。だから分けているのです。

2. 対象となる「公開」の範囲の微妙な違い

ご提示いただいた条文の第2項の括弧書きにご注目ください。

(発明、実用新案、意匠又は商標に関する公報に掲載されたことにより同項各号のいずれかに該当するに至つたものを除く。)

第2項(自分の行為)には、この「公報掲載は除く」という除外規定があります。これは、「自分で一旦出願して公報に載ってしまった(公開された)後、それを取り下げて、もう一回『新規性喪失の例外』を使って出し直す」といった制度の悪用を防ぐためです。一方、第1項(意に反して)にはこの括弧書きがありません。極端な話、他人が勝手に冒認出願(盗んだ発明を出願)して公報に載ってしまったような場合は、第1項の対象になり得ます。

3. 「全ての場合」になるわけではない(要注意!)

質問の中に「合わせたら全ての場合になるんなら」とありましたが、ここだけ少し注意が必要です。第1項と第2項を合わせても、世の中の全ての公開に対して救済されるわけではありません。

  • 第30条のカバー範囲: 「特許を受ける権利を有する者」に由来する公開(自分がやった、または自分から漏れた)。

  • カバーされない範囲: 全く無関係の第三者が、独自に同じ発明をして先に公開してしまった場合。

もし第三者が独自に発明してブログに書いていたら、たとえ1年以内に出願しても、新規性は喪失したまま(特許は取れない)です。あくまで「自分の発明情報のコントロール」に関する例外とお考えください。

まとめ

条文が分かれている理由は、以下の3点です。

  1. 手続きの厳格さが違う(第2項は自己申告が必要、第1項は不要)。

  2. 被害者保護の観点(第1項は知らずに出願する人を守る必要がある)。

  3. 公報掲載の取り扱い(第2項は自分の出願公開による再出願を許さない)。

この第30条は、論文試験や実務でも「手続きの要否」でひっかけ問題が出やすいところです。

 

第2項の『証明書』を出す手続きを忘れたらどうなるか(回復規定はあるか?)」

そこ、すごく気になりますよね!実務でも「やばい、証明書出し忘れた!」という冷や汗案件は実際にあります。結論から言うと、「救済規定(回復規定)はあります!」ただし、無条件ではありません。詳しく解説しますね。

1. 救済されるための条件:キーワードは「故意ではない」

以前は「正当な理由(地震で郵便局が潰れた等)」がないと救済されず、単なる「うっかりミス」はアウトでした。

しかし、法改正(令和3年改正など)により要件が緩和され、現在は以下の条件で救済されます。

  • 条件: 手続きを忘れたことが「故意によるものでない(わざとじゃない)」こと。

  • 内容: 「うっかり忘れていた」「勘違いしていた」という理由でも、救済の対象になります。

以前よりもかなり広範囲に救済されるようになりました。これを「権利の回復」と言ったりします。

2. どうやって救済を受けるの?(手続きと期限)

証明書を出し忘れたことに気づいたら、以下の対応が必要です。

  1. 手続き:

    • 本来出すべきだった「証明書」を提出する。

    • 同時に、「回復理由書(なぜ遅れたかの説明)」を提出する。

    • 回復手数料(212,100円+α)を払う。 ← ※ここ重要!結構高いです!

  2. 期限:

    • 「出し忘れた!」と気づいた日(手続をすることができるようになった日)から2ヶ月以内

    • かつ、本来の期限(出願から30日)から1年以内

つまり、「お金はかかるし書類も増えるけど、特許が取れなくなるよりはマシ」という救済措置です。

3. 注意!「出願時の記載」を忘れた場合は?

ここが少しややこしいのですが、第2項の手続きは「①出願時に『例外適用受けます』と書く」「②30日以内に証明書を出す」の2ステップでしたよね。

  • ②の証明書を忘れた場合: 上記の通り、救済規定(第30条第4項)があります。

  • ①の出願時の記載を忘れた場合:

    • 実は、これも近年の法改正で救済されるようになりました。

    • 「故意でなく」記載を忘れた場合、所定の期間内であれば、例外の適用を申請することができます。


試験対策上のポイント

この「回復規定」について、試験や勉強で押さえておくべきポイントは以下の2点です。

  1. 「正当な理由」から「故意ではない」へ昔のテキストだと「正当な理由が必要」と書かれているかもしれませんが、今は「故意でなければOK」に変わっています。ここがアップデートされているかチェックしましょう。
  2. あくまで「例外の例外」救済規定があるからといって、最初から遅れていいわけではありません。「高い手数料」と「煩雑な手続き」というペナルティがあることを理解しておきましょう。

まとめ

  • 証明書を出し忘れても、まだ助かる!(回復規定あり)

  • 条件は「わざとじゃない(故意でない)」こと。

  • ただし、高い手数料がかかるし、期間制限(気づいて2ヶ月、MAX1年)もある。

 

関連する判例

「意に反する公開(第1項)」、奥が深いですよね。「泥棒に盗まれた!」みたいな分かりやすい話ならいいんですが、「自分のミスはどうなの?」とか「信じてたのに裏切られた!」みたいなケースで揉めます。実は、「意に反する公開」が争われた超有名な判決(実務家が震え上がった事件)や、勉強になる事例がありますので、ご紹介しますね。

1. 【ここが境界線】自分の「うっかりミス」はダメ!

「PCT国際出願の手続ミス事件」(知財高裁 令和3年2月9日判決)

これが近年で一番有名で、実務家にとっては「怖い話」です。

  • どんな事件?ある企業が国際出願(PCT出願)をしたのですが、なんと明細書の一部を添付し忘れるという大ミスをしてしまいました。慌てて補充しましたが、手続上のルールで「出願日」が繰り下がって(遅くなって)しまいました。悪いことに、そのズレた期間の間に、発明の内容が論文として世に出てしまっていたのです(自分たちの研究成果としての発表など)。企業側は主張しました。「手続ミスで出願日がズレたのは、予期せぬ事故だ! 本来の出願日なら間に合っていたはずだから、この公知は『意に反する』ものとして救ってくれ!」
  • 裁判所の判断: 「No(救済なし)」裁判所は、「手続をミスったのはあなた達の過失でしょ? それによって発生した結果は『意に反する』とは言えません」とバッサリ切り捨てました。
  • 教訓:「意に反する」というのは、「詐欺・脅迫・盗難・守秘義務違反」など、他人のせいで公開された場合が基本です。自分の不注意や手続ミスで招いた結果は「意に反する」には入りません。

2. 【認められた例】「早すぎる公開」は許せない!

「学術誌のオンライン先行公開事件」(よくある事例)

これは特定の判決というより、認められる典型的で重要なパターンです。

  • どんな状況?研究者が学会誌に論文を投稿しました。「紙の雑誌が出るのは半年後だから、それまでに特許出願すればいいや」と思っていました。ところが、出版社が気を利かせて(?)、紙の雑誌が出る数ヶ月前に、ウェブサイトでPDFを先行公開してしまったのです。研究者は「えっ!? まだ出願してないのに公開されちゃった! 話が違う!」となりました。
  • どうなる?これは「意に反する公開」として認められる可能性が高いです。投稿規程などで「公開日は〇月〇日」と決まっていた、あるいは「紙面発行をもって公開とする」という慣習があったのに、出版社側がそれを破って勝手に(意に反して)ネットに載せた場合などが該当します。

3. 【認められた例】会社のハンコ、勝手に押されたら?

「日本建築センター事件」(古いですが有名な事例)

  • どんな事件?ある会社が、新しい建築技術の審査を役所に申し込む際、担当者が誤って申請書の「資料を公開してよいですか?」という欄の**「可(公開OK)」に丸をつけて提出**してしまいました。社長は公開するつもりなんて全くなかったのに、担当者が勝手に(あるいは不注意で)OKしちゃったせいで、資料が一般公開されてしまいました。
  • 裁判所の判断: 「意に反する公開と認める」「会社の代表としての真意(本当の意思)は公開ダメだったのに、担当者が勝手にやったことだから、会社(特許を受ける権利を有する者)の意に反している」として救われました。※ただし、これはケースバイケースで、「お前の会社の管理不足だろ」と言われるリスクもあるので、今でも通用するかは慎重な判断が必要です。

まとめ:どこまでが「意に反する」か?

判例の傾向をざっくりまとめると、以下のようになります。

  1. 他人の裏切り(守秘義務違反・盗用): ○ ほぼ認められる(これが本命)。

  2. 他人のミス(出版社のフライング掲載): ○ 認められやすい。

  3. 自分のミス(手続ミス・勘違い): × 基本的に認められない(PCT事件の教訓)。

  4. 内部の連携ミス(部下の暴走): △ 認められることもあるが、管理責任を問われるリスクあり。

試験・実務でのポイント

試験では「守秘義務契約(NDA)を結んでいた取引先が、勝手にブログに書いた」というパターンが最も典型的で、「これは第1項(意に反する)だから、証明書の手続きは不要!」と即答できるのがゴールです。

 

特許法の条文の番号と内容のリスト

 

特29(特許の要件)https://laws.e-gov.go.jp/law/334AC0000000121#Mp-Ch_2-At_29-Pr_1

特29第1項「新規性」

第29第2項「進歩性」

特30(新規性喪失の例外)第1項 本人以外の行為による場合 第2項 本人の行為による場合(学会発表、論文発表など) 記事:特30(新規性喪失の例外) 第1項と第2項の違い

特80 「中用権」

特112の3(回復した特許権の効力の制限)

特176 「後用権」

公的研究費からのPI人件費の支出の可否について

  1. 競争的研究費の直接経費から研究代表者(PI)の人件費の支出について令和2年10月9日競争的研究費に関する関係府省連絡会申し合わせ https://www8.cao.go.jp/cstp/compefund/pi_jinkenhi.pdf 「統合イノベーション戦略 2019」(令和元年6月 21日)においては、競争的研究費の直接経費から研究代表者(以下「PI
    (Principal Investigator)」という。)本人の人件費の支出を可能にし、研究機関の裁量により、研究者支援に活用可能な経費を拡大することが提言され、実現に向けて、関係府省間で協議を進めてきた。

モノづくり都市:大田区、東大阪市、その他の地域

  1. WEBサイト「ものづくり中小企業技術シーズ」は、医療機器を開発するうえで発生するニーズ部品・部材の調達・加工、製造委託、主要な構成ユニットの開発・製造、ソフトウェアの開発委託・共同開発等)に対し、最適なシーズをもつパートナーを探すことができます。医療機器開発において必要となる、医療機器製造販売業、医療機器製造業、ISO13485等の許認可の有無からも、ものづくり企業を検索することができます。
  2. ケーディークロート株式会社 (KD-CLOUT Co.,Ltd.)http://www.kd-9610.jp/ Image Analyzer mkⅡシリ-ズに培養機能が付きました。 40枚までのプレートを培養から測定まで自動的に行います。
  3. 大田区研究開発型企業ガイド https://www.mirai-ota.net/company/?c=22
    1. 高電工業株式会社 医療機器、遺伝子関連機器等の理化学機器の開発と製造を得意としています。 医療機器製造業 2014年取得 第三種 医療機器製造販売業 2005年取得 高度管理医療機器等販売・賃貸業
    2. 株式会社 アクティーパワー(滋賀県栗東市) https://www.mirai-ota.net/company/detail/208 大田区事業所
  4. 大響機工 金属加工、主にフライス加工、旋盤加工、製缶、溶接加工、鈑金加工 学校・教育機関で使われる研究試験治具や、自動車製造ライン治具、医療機器等を製作 第三種医療機器製造販売業医療機器製造業登録を取得し、医療関係者及び販売メーカーと協力し、主に整形外科手術で使用される医療機器等の受注製造
  5. ナッちゃん たなかじゅん 漫画作品 『スーパージャンプ』(集英社)1998年~2006年連載 https://piccoma.com/web/product/17394?etype=episode

(手続の補正) 第十七条 の長ったらしい文をルールに従い読み解く

法律の勉強を始めて、いざ条文を読んでみたときに、そのあまりの読みにくさに、自分は心が折れました。心が折られた条文の一例はこんな感じ:

(手続の補正)
第十七条 手続をした者は、事件が特許庁に係属している場合に限り、その補正をすることができる。ただし、次条から第十七条の五までの規定により補正をすることができる場合を除き、願書に添付した明細書、特許請求の範囲、図面若しくは要約書、第四十一条第四項若しくは第四十三条第一項(第四十三条の二第二項(第四十三条の三第三項において準用する場合を含む。)及び第四十三条の三第三項において準用する場合を含む。)に規定する書面又は第百二十条の五第二項若しくは第百三十四条の二第一項の訂正若しくは訂正審判の請求書に添付した訂正した明細書、特許請求の範囲若しくは図面について補正をすることができない。https://laws.e-gov.go.jp/law/334AC0000000121#Mp-Ch_1-At_17

特許法第17条第1項の文章です。2文しかありませんが、2文めが異様に長い!どの言葉がどの言葉につながるのか、どの言葉がどの言葉にかかるのか、一読しただけでは、いや、何回読んでもさっぱりわかりませんでした。

ただし、次条から第十七条の五までの規定により補正をすることができる場合を除き、願書に添付した明細書、特許請求の範囲、図面若しくは要約書第四十一条第四項若しくは第四十三条第一項(第四十三条の二第二項(第四十三条の三第三項において準用する場合を含む。)及び第四十三条の三第三項において準用する場合を含む。)に規定する書面又は第百二十条の五第二項若しくは第百三十四条の二第一項の訂正若しくは訂正審判の請求書に添付した訂正した明細書、特許請求の範囲若しくは図面について補正をすることができない。

こういった条文が読めるようになるためには、ANDやORおよびその優先順位を知る必要があります。ANDを意味するのが「及び」です。ORを意味するのが「若しくは」。

自力で読解するために、主要な骨格以外をそぎ落としてみます。まず()は不要ですね。今の場合、なんと(())と二重になっています。()を取り除いてみます。

ただし、次条から第十七条の五までの規定により補正をすることができる場合を除き、願書に添付した明細書、特許請求の範囲、図面若しくは要約書、第四十一条第四項若しくは第四十三条第一項に規定する書面又は第百二十条の五第二項若しくは第百三十四条の二第一項の訂正若しくは訂正審判の請求書に添付した訂正した明細書、特許請求の範囲若しくは図面について補正をすることができない。

まだまだ複雑です。ここで知っておくべきルールは、英語でいう「A, B, C or D」というやつです。AまたはBまたはCまたはDという意味になります。法律の条文だとこれが「A、B、C若しくはD」と書かれます。

もう一つ知って置くべきは、おなじORを意味する言葉として「又は」と「若しくは」の2つがあり、「若しくは」の方が結合が強い、つまり局所的なつながりを示すというルールです。「A若しくはB又はC若しくはD」という条文があれば、その意味の塊は、「(A若しくはB)又は(C若しくはD)」となります。AxB+CxDという算術記号の結合の強さのルールに似ています。

  1. 人事担当者のための法律読みこなし術 – 第19回 「又は・若しくは」「及び・並びに」 吉田利宏  よしだとしひろ 元衆議院法制局参事 2013年11月18日掲載  「エビ、イカ若しくはトロ又は玉子 何に致しやしょう!」

さらに知っておくべきことは、このような列挙において、列挙されるものは同じカテゴリーに属するものということです。今の場合カテゴリーとして、「文書」と「条文の条や号の番号」という2つの概念があり、これらの区別が、この長ったらしい分を読み解くカギになります。

もう一つ、重要な知識として、特許出願のための願書は、明細書、特許請求の範囲、図面、要約書という4つの書類から構成されているという内容です。この知識によりこれらはひとまとまりであることは、あたりまえのことになります。

ここまでの知識で意味のまとまりのある部分を下線部でマークしてみると以下のようになります。

ただし、次条から第十七条の五までの規定により補正をすることができる場合を除き、願書に添付した明細書、特許請求の範囲、図面若しくは要約書第四十一条第四項若しくは第四十三条第一項に規定する書面又は第百二十条の五第二項若しくは第百三十四条の二第一項の訂正若しくは訂正審判の請求書に添付した訂正した明細書、特許請求の範囲若しくは図面について補正をすることができない。

ここで、英語の「A, B, C or D」は、「A、B、C若しくはD」あるいは「A、B、C又はD」と書かれることを思い出しましょう。「若しくは」よりも「又は」のほうが大きなまとまりを結び付けるのでした(言葉を変えると、「若しくは」のほうが局所的なつながりをつくるもの)。すると、上の文の中の「又は」がどのような使われ方をしているのかが見えてきます。つまり、「書類A、書類B又は書類C」と書かれていることが見て取れるでしょう。

書類A:願書に添付した明細書、特許請求の範囲、図面若しくは要約書

書類B:第四十一条第四項若しくは第四十三条第一項に規定する書面

書類C:第百二十条の五第二項若しくは第百三十四条の二第一項の訂正若しくは訂正審判の請求書に添付した訂正した明細書、特許請求の範囲若しくは図面

ということになります。書類Cの内容は、まだこれでもかなり複雑でさらに読み解く必要がありそうです。この部分を読み解くためには、第百二十条の五第二項や第百三十四条の二第一項の内容をしていたほうがよいでしょう。

(意見書の提出等)
第百二十条の五 審判長は、取消決定をしようとするときは、特許権者及び参加人に対し、特許の取消しの理由を通知し、相当の期間を指定して、意見書を提出する機会を与えなければならない。
2 特許権者は、前項の規定により指定された期間内に限り、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の訂正を請求することができる。ただし、その訂正は、次に掲げる事項を目的とするものに限る。
一 特許請求の範囲の減縮
二 誤記又は誤訳の訂正
三 明瞭でない記載の釈明
四 他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること。

(特許無効審判における訂正の請求)
第百三十四条の二 特許無効審判の被請求人は、前条第一項若しくは第二項、次条、第百五十三条第二項又は第百六十四条の二第二項の規定により指定された期間内に限り、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の訂正を請求することができる。ただし、その訂正は、次に掲げる事項を目的とするものに限る。
一 特許請求の範囲の減縮
二 誤記又は誤訳の訂正
三 明瞭でない記載の釈明
四 他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること。

ひとつは「特許異議申し立て」における「訂正」、もう一つが、「無効審判」における「訂正」です。これらはどちらも「訂正」に関する内容で訂正のための請求書を提出できますので、その先の請求書という言葉に係ることがわかります。意味のまとまりとしては、[訂正もしくは訂正審判]の請求書 ということになります。訂正審判に関しては条文の番号は示されていませんが、(訂正審判)第百二十六条 は条文にハッキリと書かれた言葉ですので、条文が第何条かを示す必要性がないので示さなかったというわけです。

(訂正審判)
第百二十六条 特許権者は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の訂正をすることについて訂正審判請求することができる。ただし、その訂正は、次に掲げる事項を目的とするものに限る。
一 特許請求の範囲の減縮
二 誤記又は誤訳の訂正
三 明瞭でない記載の釈明
四 他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること。

書類C:[[第百二十条の五第二項若しくは第百三十四条の二第一項の訂正]若しくは[訂正審判]]請求書に添付した[訂正した明細書、特許請求の範囲若しくは図面]

となっていることがわかります。以上を踏まえて、最初の文を、意味のまとまりを色分けして示すと

(手続の補正)
第十七条 手続をした者は、事件が特許庁に係属している場合に限り、その補正をすることができる。ただし、次条から第十七条の五までの規定により補正をすることができる場合を除き、願書に添付した明細書、特許請求の範囲、図面若しくは要約書第四十一条第四項若しくは第四十三条第一項(第四十三条の二第二項(第四十三条の三第三項において準用する場合を含む。)及び第四十三条の三第三項において準用する場合を含む。)に規定する書面又は第百二十条の五第二項若しくは第百三十四条の二第一項の訂正若しくは訂正審判請求書に添付した訂正した明細書、特許請求の範囲若しくは図面について補正をすることができない。https://laws.e-gov.go.jp/law/334AC0000000121#Mp-Ch_1-At_17

以上をまとめると、

「A、B又はCについて補正をすることができない。」というのが文の基本構造でした。ただし、

A 願書に添付した明細書、特許請求の範囲、図面若しくは要約書

B 第四十一条第四項若しくは第四十三条第一項(第四十三条の二第二項(第四十三条の三第三項において準用する場合を含む。)及び第四十三条の三第三項において準用する場合を含む。)に規定する書面

C 第百二十条の五第二項若しくは第百三十四条の二第一項の訂正若しくは訂正審判請求書に添付した訂正した明細書、特許請求の範囲若しくは図面

このなかでCが少し複雑ですが、「若しくは」は局所的に強く結合する機能があるので、「A若しくはBのC」という条文は、「(AもしくはB)のC」と解されることに注意して読めば読めるでしょう。

 

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論文発表済みの遺伝子破壊マウスで見つかった新しい表現型で特許化は可能か?

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Gemini:「マウスそのもの(物質としてのマウス)」の特許化は不可能ですが、「そのマウスを使ったスクリーニング方法(使用方法)」としての特許化は十分に可能です。知財の用語では、これを「用途発明(あるいは属性による発明)」の考え方で捉えます。しかし、医薬品の用途発明とは少し勝手が違うため、注意が必要です。以下に、なぜそうなるのか、どのような戦略(クレーム)で権利化を目指すべきかを整理しました。

1. なぜ「マウスそのもの」は特許にならないのか?

【壁:新規性の喪失】

すでに論文発表済みで、その遺伝子破壊マウスの作製方法や存在が世の中に知られている場合、そのマウスは「公知(みんなが知っている)」の状態にあります。

  • 物質特許(物の発明): 「遺伝子Aを欠損したマウス」という請求項(クレーム)を立てても、「そのマウスなら、数年前の〇〇先生の論文に載っているよね(新規性なし)」と審査官に拒絶されます。

  • たとえ発見したのが「全く新しい表現型(病気)」であっても、マウスの遺伝子構成や物質としての実体が変わったわけではないため、物質としての特許は取れません。

2. では、何を特許にするのか?

【解:スクリーニング方法の発明】

マウス自体は公知でも、「そのマウスを〇〇病のモデルとして使うこと(新たな用途)」は誰も知りませんでした。この「新しい使い方」に特許性を見出します。具体的には、以下のような「方法のクレーム」を立てるのが定石です。

【特許請求の範囲のイメージ】

  • 請求項1(方法): 被験物質を、遺伝子A機能欠損マウスに投与する工程、前記マウスにおける〇〇病の症状(またはマーカー)の変化を測定する工程、を含む、〇〇病治療薬のスクリーニング方法。

この戦略のポイント:

  • 新規性: 「このマウスを使って〇〇病の薬を探す」という手法は、過去の論文には書かれていないため、新規性が認められます。

  • 進歩性: もし遺伝子Aの機能から「その病気になること」が容易に予測できなかった場合(意外な発見だった場合)、進歩性(特許の高さ)も認められやすくなります。

3. 「疾患モデルマウス」という物のクレームは取れないか?

医薬品であれば、「成分Xを含有する〇〇病治療剤」という形で、成分が公知でも「医薬用途」として物の特許が取れます。しかし、動物の場合は少し事情が異なります。

  • 日本の審査実務:「〇〇病モデルとしての遺伝子A欠損マウス」というクレームを立てた場合、審査官によっては「用途(〇〇病モデル)が書いてあるけれど、結局は『遺伝子A欠損マウス』という物を指しているよね? それなら公知だからダメ」と判断されるリスクが高いです(物の特定に用途限定が効きにくい)。
  • 安全策:したがって、無理に「モデル動物」という物の権利を狙うより、前述のスクリーニング方法で権利化し、製薬会社などがそのマウスを使って薬の開発(スクリーニング)を行う際にライセンス料を求めるビジネスモデルが一般的です。

4. 権利化のための重要な条件

この特許を通すためには、以下のデータを明細書(特許出願書類)に記載する必要があります。

  1. 表現型の実証: そのマウスが本当にその疾患(または類似の症状)を発症していることを示すデータ(病理画像、生化学データなど)。

  2. 相関関係の証明: その遺伝子破壊と疾患発症の因果関係。

  3. 有用性の証明(できれば): 既存の薬を投与したら症状が改善した、あるいはターゲットとなるメカニズムがヒトの疾患と類似しているなどの「モデルとして使える根拠」。

まとめ

クレームの種類 権利化の可能性 理由
物質(マウスそのもの) × 不可 論文発表済みのため「新規性」がない。
用途限定の物(〇〇病モデルマウス) △ 厳しい 日本では「物」そのものとみなされ、新規性欠如とされるリスク大。
方法(スクリーニング方法) ◎ 可能 「そのマウスを使って薬を探す」という行為は新しい知見であるため。

このケースは、大学や研究所でよくある「宝の持ち腐れ復活パターン」です!古いマウスでも、新しい「創薬ターゲット」としての価値が見つかれば、スクリーニング方法の特許として非常に強力な権利になり得ます。特に、その病気の良いモデル動物が他に存在しない場合、製薬企業からのライセンス需要は高くなります。

 

イノベーションとは?「馬車をいくら改造しても自動車にはならない」

「馬車をいくら改造しても、自動車にはならない」という言葉は、オーストリアの経済学者、ヨーゼフ・シュンペーター(Joseph Alois Schumpeter, 1883-1950)の言葉、あるいは彼の提唱した「イノベーション(新結合)」の概念を象徴するフレーズとして広く知られています。この言葉が持つ意味、時代背景、そして現代ビジネスへの強烈なインパクトについて、包括的に解説します。

1. 誰の言葉か?

ヨーゼフ・シュンペーター(経済学者)に帰せられます。

ただし、彼が著書の中で一字一句この通りに書いたというよりは、彼が提唱した「経済発展の理論」における**「イノベーション(新結合)」と「単なる経済成長(静学的適応)」の違いを説明するために、後世の解説者や彼自身が講義などで用いた比喩**として定着しています。

2. 言葉の意味:連続と非連続

この言葉の本質は、「改善(カイゼン)」と「革新(イノベーション)」の決定的な違いを指摘している点にあります。

  • 馬車の改造(連続的変化):

    馬を増やしたり、車輪を滑らかにしたりすれば、馬車は速くなります。これは既存の延長線上にある**「改善」**です。しかし、どれだけ頑張っても、それは「速い馬車」にしかなりません。

  • 自動車の出現(非連続的変化):

    内燃機関という全く異なる技術を持ち込み、馬を切り離すこと。これが「イノベーション」です。そこには、過去(馬車)との連続性はありません。

シュンペーターは、経済が発展するのは、前者のような緩やかな成長ではなく、後者のような「非連続な変化」が起きた時だけだと説きました。

3. 時代背景と事情

シュンペーターが主著『経済発展の理論』を出版したのは1912年です。この時代背景が、彼の思想に色濃く反映されています。

  • 第二次産業革命の真っ只中:

    19世紀末から20世紀初頭にかけて、電気、化学、そして自動車産業が急速に勃興していました。

  • 自動車の普及:

    1908年にアメリカでT型フォードが発売され、馬車社会から自動車社会へと劇的な転換が起きていた時期です。まさに目の前で「馬車が駆逐され、自動車に置き換わる」様子を見ていた世代です。

  • 鉄道の限界:

    それまでの輸送の主役だった「鉄道」網(郵便馬車からの進化形としての公共輸送)に対し、個人の移動を自由にする「自動車」という全く新しい概念が、社会構造を変えつつありました。

彼は、郵便馬車をどれだけ増やしても鉄道にはならないし、馬車を改良しても自動車にはならない、という事実を目の当たりにし、「既存の要素を新しい組み合わせで結合すること(新結合)」こそが、不況を打破し経済を動かす原動力だと確信しました。

4. 関連する重要概念:創造的破壊

このセリフとセットで語られるのが、「創造的破壊(Creative Destruction)」です。

  • 自動車産業が生まれることで、馬車産業、蹄鉄屋、馬の飼育業者は職を失い、衰退します。

  • しかし、シュンペーターはこれを「悲劇」ではなく、資本主義が発展するための「必要悪」であり「本質」だとしました。

  • 古いものが壊される(破壊)ことなしに、新しいものは定着(創造)しないのです。

5. 現代へのインパクトと教訓

この言葉は、現代の日本企業やビジネスパーソンにとって、耳の痛い警句として頻繁に引用されます。

  • 「カイゼン」の限界:

    日本企業は、既存製品の品質を上げる「カイゼン(馬車の改造)」が得意です。しかし、この言葉は「カイゼンの先にはイノベーションはない」という残酷な事実を突きつけます。

  • イノベーションのジレンマ:

    ガラケー(馬車)をどれだけ高機能にしても、スマートフォン(自動車)には勝てませんでした。既存事業を磨き上げることに夢中になっている間に、全く違うルールの競合に市場を奪われる現象を的確に言い表しています。

  • DX(デジタルトランスフォーメーション)の本質:

    現在、行政や企業で進むDXにおいて、「紙の書類をPDFにするだけ」なのは「馬車の改造」です。「デジタル技術を使って業務プロセスやビジネスモデル自体を根底から変える」ことこそが「自動車の発明」であり、DXの本来の目的です。

結論

「馬車をいくら改造しても、自動車にはならない」は、努力の方向性を問う言葉です。

「あなたは今、一生懸命に馬車を磨いているのか? それとも自動車を作ろうとしているのか?」

シュンペーターのこの問いかけは、100年以上経った今も、AIや脱炭素などの激変期において、最も鋭い問いとして機能しています。

(Gemini)

大学発ベンチャー企業のビジネスモデル事例研究:東大発ベンチャーWASSHA

質問:?WASSHAという会社(https://wassha.com/)は、誰に何を売って、どうやって利益を上げているのでしょうか。

Gemini:株式会社WASSHA(ワッシャ)は、「アフリカの未電化地域(オフグリッド)」をターゲットにした、非常にユニークかつ合理的でしたたかなビジネスモデルを展開している日本のベンチャー企業です。彼らのビジネス、「誰に・何を・どうやって」売っているのかについて解説します。

1. 誰に、何を売っているのか?(ビジネスモデルの図解)

WASSHAは単に「ソーラーパネルを売る会社」ではありません。「電気(電力)というサービス」を小売する会社(EaaS: Energy as a Service)です。彼らの商流は 「B to B to C」 モデルです。

登場人物と役割

  1. WASSHA(本社):機材とシステムの提供者。

  2. キオスク(村の個人商店):WASSHAの「代理店」パートナー。

  3. エンドユーザー(村人):電気を使いたい未電化地域の住民。

お金の流れと商品の流れ

  • STEP 1(機材貸与): WASSHAは、提携するキオスクにソーラーパネル、バッテリー、LEDランタン等の機材を「無料(または非常に安価)」で貸し出します。
    • ポイント: キオスク側に高額な初期投資をさせないことで、爆発的に加盟店を増やしています。

  • STEP 2(仕入れ): キオスクのオーナーは、モバイルマネー(スマホ決済)を使って、WASSHAから「電力を使う権利」を購入(先払い)します。
    • ここが売上: これがWASSHAの直接的な収益源です。

  • STEP 3(小売): キオスクは、村人に対して以下のサービスを提供し、現金を受け取ります。
    • スマホの充電サービス

    • LEDランタンのレンタル

    • ラジオや家電への給電

    • キオスクの利益: WASSHAへの支払額と、村人からの受取額の「差額」がオーナーの利益になります。

2. どうやって利益を上げているのか?(儲けのカラクリ)

ただのレンタル事業に見えますが、利益を確保し、損失を防ぐための「テクノロジーによる遠隔制御」が肝です。

  • 「払わないと電気が止まる」仕組み(IoT制御)貸し出している機材には通信機能(IoT)が付いています。キオスクオーナーがモバイルマネーでWASSHAにお金を送金した分だけ、機材のロックが外れて電気が使える仕組みです。これにより、「集金コストゼロ」かつ「未回収リスクゼロ」を実現しています。
  • 継続課金(サブスクリプションに近い)村人は毎日スマホを充電したり、夜間の明かりを求めたりします。ソーラーパネル一度設置すれば、太陽がある限り電気を生み出し続けるため、WASSHAにとっては「限界費用ほぼゼロで、チャリンチャリンと収益が上がり続ける」モデルです。
  • 新たな収益源:データの活用とファイナンスこれが現在の最大の狙いです。「誰が、いつ、どれくらい電気にお金を払ったか」というデータが蓄積されます。これをもとに与信(クレジットスコア)を生成し、冷蔵庫やテレビなどの家電製品をローン(割賦販売)で提供したり、小口融資を行ったりする事業へ拡大しています。

3. いくら儲かっているのか?(収益規模)

WASSHAは未上場企業(プライベートカンパニー)であるため、決算書や正確な利益額は公開されていません。しかし、以下の指標から規模感を推測することは可能です。

  • 市場規模(ステークホルダー):

    • 展開国:タンザニア、ウガンダ、モザンビーク、DRコンゴなど。

    • 提携キオスク数:数千店舗〜1万店舗規模で拡大中。

    • 利用者数:数十万人〜百万人単位。

    • 推測: 1店舗あたりの売上は小さくても(数千円〜数万円/月)、店舗数が万単位になれば、年間売上は数十億円規模に達するポテンシャルがあります。

  • 資金調達(成長フェーズ):

    • 2019年に丸紅から10億円規模の出資。

    • 2020年以降も、東京電力PG、ダイキン工業、JICAなどから大型の資金調達や業務提携を行っています。

    • 見解: 巨額の資金調達をしているということは、現在は「利益を溜め込む」フェーズではなく、調達した資金を使って「エリア拡大・設備投資(先行投資)」を行い、赤字を掘ってでもシェアを取りに行っているフェーズである可能性が高いです。

まとめ

WASSHAの凄さは、「BOPビジネス(貧困層向けビジネス)は儲からない」という常識を、「デジタル技術(IoT×モバイルマネー)」で覆した点にあります。

  1. 誰に売る?: 支払い能力はあるがインフラがない「オフグリッド地域の住民」。

  2. 何を売る?: 初期投資不要の「電気の量り売り」。

  3. 利益の源泉: IoTによる遠隔管理で「取りっぱぐれ」を防ぎつつ、蓄積したデータで「金融業」へ展開する拡張性。

単なる慈善事業ではなく、J-Startup(経産省支援)にも選ばれるなど、日本発の「SDGsと経済合理性を両立させたモデルケース」として非常に注目されています。

質問:電気を売るっていっても、家で電気を使うためには、電線、電線の家への引き込み、家でのコンセントなどが必要にならない?それらの工事も請け負っているの?

Gemini:WASSHAの主力ビジネスモデルにおいては、各家庭への電線工事やコンセントの設置工事は「一切行っていません」日本の電力会社(東京電力や関西電力など)のイメージとは全く異なる、「電気のテイクアウト(持ち運び)」という方式をとっているからです。どういうことか、具体的に解説します。

1. 「電気を配る」のではなく「電気を詰めて渡す」

日本の家には電線がつながっていますが、WASSHAが展開するアフリカの未電化地域では、家々が点在しており、それぞれの家に電線を引くのはコストがかかりすぎて不可能です。

そこでWASSHAは、「電気そのもの」ではなく、「電気が詰まった容器(バッテリー)」を貸し出すという方法をとっています。

  • 日本モデル(グリッド): 水道管が家に引かれていて、蛇口をひねれば水が出る。

  • WASSHAモデル(オフグリッド): 井戸までバケツを持って水を汲みに行き、家に持って帰って使う。

この「バケツ」にあたるのが、WASSHAが開発した「LEDランタン(兼バッテリー)」です。

2. ユーザーの使い方は「灯油」を買うのと同じ

現地の村人がどのように電気を使っているかを見ると、工事が不要な理由がわかります。

  1. 店に行く: 村人は、WASSHAの提携キオスク(村のよろず屋)に行きます。ここには屋根にソーラーパネルがあり、大量のランタンが充電されています。
  2. 借りる(テイクアウト): お金を払い、充電済みの「LEDランタン」を借ります。
  3. 家で使う: 家にランタンを持ち帰ります。
    • 照明として: 夜、天井から吊るしたり机に置いて明かりにします(電球の代わり)。

    • コンセントとして: ランタンにはUSBポートがついています。ここにスマホのケーブルを挿せば、充電ができます(モバイルバッテリーの代わり)。

  4. 返す: 電気がなくなったら、店に返しに行き、また新しい充電済みのものと交換します。

つまり、「家自体を電化する」のではなく、「電気の入った道具を家の中に置く」だけなので、壁に穴を開けたり配線工事をしたりする必要が全くないのです。

3. 家に設置するタイプはないの?(SHS)

ただし、最近ではWASSHAも事業を拡大しており、「SHS(ソーラー・ホーム・システム)」という、家の屋根に小さなパネルを置くタイプも扱っています。「じゃあ工事が必要では?」と思われるかもしれませんが、これも日本の電気工事とはレベルが違います。

  • DIYレベルの簡易キット: パネルと、バッテリーと、いくつかの電球がセットになったキットです。
  • プラグ&プレイ: ケーブルを特定の穴に差し込むだけで使える設計になっており、専門の電気工事士(Electrician)がいなくても、村人が自分で設置したり、キオスクのオーナーが手伝うだけで設置できるレベルのものです。

結論:なぜ利益が出るか

質問者様が懸念された「電線や工事のコスト」が一切かからない(あるいは極小である)ことこそが、このビジネスが低価格で利益を出せる最大の理由です。

  • インフラ投資不要: 大規模な発電所も送電線もいらない。

  • メンテナンス不要: 壊れたら店に持ってきてもらえばいい(巡回スタッフが交換する)。

「電気=インフラ設備」ではなく、「電気=お弁当や灯油のような消費財」として扱っている点が、このビジネスの発明と言えます。

質問:このビジネスは、ビジネスモデルで特許を取ってる?

Gemini:WASSHAは特許を取得しています。

いわゆる「ビジネスモデル特許(ビジネスに関連する発明)」の範疇に入る、ITとハードウェアを組み合わせた仕組み部分で権利化を行っています。単に「電気を売るアイデア」は特許になりませんが、彼らはそれを実現する「技術的な仕組み(システム)」を特許として押さえています。彼らが「どこを」特許で守っているのか、その戦略を解説します。

1. 何を特許にしているのか?(権利の核心)

彼らが特許化しているのは、主に「支払いと機器制御の連動システム」です。J-PlatPat(特許情報プラットフォーム)などで確認できる彼らの特許(または出願内容)の傾向を見ると、以下のような技術的ポイントを押さえています。

  • 決済連動型の給電制御」 ユーザーがモバイルマネーでお金を払った情報を受信し、「払った分だけ自動的に電気が流れるようにスイッチをONにする(またはトークンを発行してロックを解除する)」という、サーバーとデバイスの一連の動きです。
  • フライン認証技術」 アフリカの未電化地域は通信環境が悪いです。そのため、常にネットに繋がっていなくても、スマホアプリとデバイスがBluetooth等でやり取りをして、正しく決済情報を認証し、電気を使えるようにする仕組みなども重要な技術要素です。

要するに:誰かが「アフリカで電気を売ろう」と真似することは自由ですが、「モバイルマネーで払ったら、自動でカギが開いて電気が使えるようになる、効率的なシステム」を作ろうとすると、WASSHAの特許に引っかかるような網を張っているわけです。

2. なぜ特許を取るのか?(ベンチャーの知財戦略)

WASSHAのようなスタートアップにとって、ビジネスモデル特許は「攻め」と「守り」の両面で生命線になります。

① 大手企業や模倣犯への「防波堤」(守り)

電気ビジネスは、資金力のある大手商社や現地の通信会社が「うちもやろう」と思えば参入できてしまいます。しかし、特許があれば、大手が全く同じ効率的なシステム(自動化システム)を使うことを阻止できます。「手動でやるならどうぞ(でもコスト合わないですよね?)」と言える状態を作ることで、参入障壁を築いています。

② 企業の「値打ち」を上げる(攻め)

前述のように、WASSHAは丸紅や東大系VCなどから巨額の出資を受けています。投資家は、「この会社にお金を出す価値があるか?」を見るとき、「このビジネスモデルは他社にすぐ真似されないか(独占できるか)?」を厳しくチェックします。「特許でガチガチに守られているので、他社は簡単には真似できません」という事実は、企業価値(バリュエーション)を吊り上げるための最強のカードになります。

3. 大学発ベンチャーとしての強み

WASSHAは、もともと東京大学の研究室(阿部力也先生のデジタルグリッド構想など)周辺から生まれてきたバックグラウンドを持っています。大学発ベンチャーは、「技術を権利化(知財化)する」という意識が非常に高い傾向にあります。単なる「人助けのアイデア」で終わらせず、それを「再現性のある技術(アルゴリズムや装置)」に落とし込み、しっかりと「特許庁に登録する」。この「アカデミア仕込みの知財戦略泥臭い現地のオペレーション」の両輪が回っていることが、WASSHAが単なるNPOやボランティア団体と一線を画し、利益を上げる株式会社として成立している大きな理由です。

質問:WASSHAの鍵となるテクノロジーは何?要するに「充電池」?何が従来のものと違うの?

Gemini: WASSHAの鍵となるテクノロジーは「充電池(バッテリー)」そのものではありません。中身の電池は、極端に言えばどこにでもある普通のものです。彼らのコア技術(競争力の源泉)は、そのバッテリーに取り付けられた「IoTコントローラー(電子基板)」と、それを運用する「ソフトウェア(アプリ)」にあります。要するに、ただの「電池」を、お金を払わないと電気が流れない自動販売機」に変える装置が、彼らの発明であり、従来のものとの決定的な違いです。具体的に何が違うのか、3つのポイントで解説します。

1. 「遠隔ロック機能」がついてる(PAYG技術)

従来の充電池やソーラーシステムは「売り切り」です。一度渡してしまえば、相手がお金を払わなくても電気は使い放題ですし、回収するには現地まで取り立てに行く必要がありました。

  • 従来の電池: ただの「電気の箱」。渡したら最後、制御不能。

  • WASSHAの電池: 「デジタルの鍵」がかかった箱。

WASSHAの機材には、特殊なチップ(IoTコントローラー)が埋め込まれています。キオスクのオーナーがモバイルマネーで送金すると、その金額分だけ「カギが開く(通電する)」仕組みになっています。期間が過ぎたり、支払いが滞ると、機材は手元にあってもただの箱(鉄屑)になり、電気が一切出なくなります。これにより、泥臭い集金業務をゼロにし、未回収リスクをなくしています。

2. 「ネットがなくても動く」通信技術(オフライン認証)

ここがWASSHAの技術的に最も渋い(すごい)ところです。「IoT(モノのインターネット)」と言うと、通常は常にインターネットに繋がっている必要があります。しかし、アフリカの奥地では電波が不安定で、常時接続など不可能です。

  • 従来のIoT: ネットが切れると制御不能になる。

  • WASSHAの技術: Bluetooth等を活用し、オフラインでも鍵が開く。

  1. キオスクオーナーのスマホ(ここだけ一瞬電波が入ればOK)に、解除コード(トークン)が届く。

  2. スマホとWASSHAの機材をBluetoothなどで近づける。

  3. 機材自体はネットに繋がっていなくても、「正しいコードだ」と認識してロックが解除される。

この「劣悪な通信環境でも確実に動作するプロトコル(手順)」こそが、大手電機メーカーが簡単に参入できない技術的な参入障壁になっています。

3. 「信用」をデータ化する機能(ログ収集)

従来の電池は、誰がいつ使ったか分かりません。WASSHAのコントローラーは、「稼働データ(いつ、いくら分発電し、消費されたか)」を記録し、通信できるタイミングでサーバーに送ります。

  • 従来の電池: 壊れるまで黙って働く。

  • WASSHAの電池: 「この店のオーナーは、毎月ちゃんと稼いで、遅れずに払っています」と喋る。

このデータが蓄積されることで、「この人は信用できるから、次は冷蔵庫をローンで貸してあげよう」という金融ビジネスが可能になります。ただの電池が、「動く信用調査書」になっている点が革新的です。

まとめ:何が違うのか?

分かりやすく例えるなら、以下のようになります。

  • 従来のもの:「水筒」を売っている。(水筒を渡したら、相手が水をどう飲もうが関知できない)
  • WASSHAの技術:「コイン投入口がついた、絶対に壊れないハイテク水筒」を貸している。(お金を入れないと蓋が開かないし、誰がいつ飲んだか全部記録されている)

電池の性能(容量や寿命)で勝負しているのではなく、「電気を確実に換金する仕組み(コントローラー)」で勝負している点が、彼らの強みです。

(Gemini)

参考

  1. 産学官連携による共同研究強化のためのガイドライン【追補版】産学官連携を通じた価値創造に向けて 令和2年6月30日文部科学省経済産業省 https://www.mext.go.jp/content/20230329-mxt_sanchi02-000020147_01-2.pdf
  2. 【東京大学×ダイキン工業株式会社】東京大学のみならず、東大発ベン ーを含むエコシステムとダイキンが大規模な連携体制を構築するこ とで、多様なフェーズのプロジェクトを創出。これらの 組みを通じて、ダイキン工業が直接ベンチャーにコンタクトし、東京大学発ベンチャーであるWASSHA 株式会社とのアフリカでの空調サブスクリプションビジネス等、多様なフェーズの連携プロジェクトが開始している。