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五神真 大学の未来図 「知識集約型社会」を創る 2019年2月

五神真 大学の未来図 「知識集約型社会」を創る 2019年2月 を読んだメモ。

日本には全国47都道府県850超の大学・研究機関を超高速な通信速度でつないだ「学術情報ネットワーク SINET」が存在しており、これは世界的にみてもユニーク。(12ページ)

東大の予算は年間2500億円。うち、基盤的な運営費交付金は800億円。(15ぺージ)

日本の問題点は、巷には資金があるのに、それが動かないこと。リスク投資への流れを作りたい。(17ページ)

人口の年代別グラフ(横方向、男女別)は、上が高年齢とすると「壺」の形。すなわち若年齢、子供のほうですぼまっている。ピークが2つある。一つが団塊の世代(第1次ベビーブーム)。もう一つは段階ジュニアの世代(第2次ベビーブーム、200万人)。残念なことに第3次ベビーブーム(団塊ジュニアの子供)はこなかった。それは団塊ジュニアが大卒で就職するじきにバブルが崩壊して、非正規雇用になる人が急増したためかもしれない。(23ページ)

Society 1.0が狩猟社会、Society 2.0が農耕社会、Society 3.0が工業社会、Society 4.0が情報社会、そしてこれからがSociety 5.0。(46ページ)

  1. Society 5.0「サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する人間中心の社会」第5期科学技術基本計画(平成28年1月22日閣議決定)

これまでは大学のラボと企業の研究部門との提携が主で、金額も数百万円程度が多かった。これからは、組織同士、すなわち大学と企業の「産学協創」を目指す。2016年6月日立製作所と日立東大ラボを解説。7月には日本電気(NEC)とパートナーシップ協定を締結。(90ページ)

大学ベンチャーの育成。2004年東京大学エッジキャピタル(UTEC)というベンチャーキャピタル(VC)を設立。目的は、大学関連の将来性あるベンチャー企業に投資を行って事業展開を支え、その企業の上場やM&Aを通じてキャピタルゲインを得ること。(92ページ)

2016年東京大学協創プラットフォーム株式会社UTokyo IPC設立。ベンチャー企業に投資するたけでなく、ベンチャーキャピタルにも投資することでベンチャー企業を間接的に支える。Funds of Fundsという仕組み。(93ページ)

東大生に企業マインドを教えるアントレプレナー道場も開設。(95ページ)

企業に眠る優秀な技術や技術者を掘り起こす仕組みづくり。人材と事業を「カーブアウト」する。切り出し。大手企業の会社員からベンチャー企業の経営者へという転身を支える仕組みづくり。(99ページ)

1980年当時にすでに日本の財政状況は悪化し、国立大学の研究環境は悪くなっていた。施設の老朽化、安全な設備の不足など。ある国立大学で、半導体プロセスの実験中に爆発で学生2人が亡くなった事件があった。(133ページ)

  1. 1991年大阪大学モノシランガス爆発事故 特殊材料ガスの法律ができるきっかけになった事故をご紹介します。1991年10月大阪府にある大阪大学の実験室で、プラズマCVD装置を使って実験していた最中に、シリンダーキャビネット内のモノシランガス10Lボンベが爆発し、学生2名が死亡し5名が負傷しました。 https://klchem.co.jp/blog/2012/10/1991.php
  2. https://klchem.co.jp/blog/2012/10/1991.php
  3. 1991 年(平成 3 年)10 月 2 日,基礎工 学部でモノシランガスの爆発事故 https://ir.library.osaka-u.ac.jp/repo/ouka/all/56995/oep064_2_303.pdf
  4. https://www.bousaihaku.com/wp/wp-content/uploads/2017/03/c020.pdf
  5. https://www.shippai.org/fkd/cf/CA0000614.html

東大では2001年から2013年にかけて段階的に定年を延長。60歳から65歳に。増加した人件費を抑えるために新たな雇用が抑制された。(136ページ)

期限付きプロジェクトの活動資金は得られたが、それに従事する教職員も期限付きになってしまう。40歳以下の研究者の雇用のほとんどが、任期付きの雇用になってしまった。(136ページ)

任期付で雇用された研究者は、業績を残したからといって、必ず任期なしの雇用になれるわけではありません。これでは、多くの若手研究者が将来への不安を抱えながら研究に従事することになります。”(137ページ)

2017年指定国立大学法人制度 より自由度の高い運営を可能にする 東大、京大、東北大の3大学。その後、東工大、名大、阪大をあわせて6大学に。(138ページ)

”いま東大は、年間2600億円規模の事業体です。”(140ページ)

2018年12月東京大学エクステンション株式会社設立。社会人向けのデータサイエンス人材養成講座を2019年4月開設予定。(163ぺージ)

  1. 令和 2 年度 連 結 財 務 諸 表 第17期事業年度 https://www.u-tokyo.ac.jp/content/400144828.pdf

さまざまな工夫によって財源を確保し、全体で数百億円の財源を創出、これを未来にむけて投資するための財源とする。その”一丁目一番地”となるのは”言うまでもなく、若手研究者の雇用の安定化”。(165~166ページ)

運営費交付金以外の財源からでも、任期無し雇用の人件費を払えるように仕組みを変えた。(167ページ)

2017年の規制緩和により、国立大学も株式を寄付として受け入れて長期間保有することが可能になった。LIXLILグループ(潮田洋一郎CEO)が株式寄付をまっさきにしてくれた。(169ページ)

「異見交論」で京大総長と対談。山極「国立大学法人化は失敗」、五神「法人化は必然」 (174ページ)

研究時間の減少、職務時間の46.5%(2002年)から36.5%(2008年)に。文科省調査(185ページ)

参考

  1. Connecting cutting-edge research, driven by the joy of discovery, to the future of humanity: Interview with RIKEN President Makoto Gonokami 2024.03.07 In this interview for the International Brain Circulation series, we spoke with Dr. Makoto Gonokami, President of RIKEN. https://sj.jst.go.jp/interviewsandopinions/2024/c0307-01c.html
  2. How universities can become a platform for social change Jun 27, 2019 https://www.u-tokyo.ac.jp/focus/en/articles/z1311_00035.html https://www.weforum.org/stories/2019/06/universities-platform-social-change-tokyo/

 

研究・実験・論文作成の外部委託・受託サービスの紹介

研究は1から10まで自分でやることはありません。外部に委託することがどんどん増えてきました。自分が学生だった大昔は、ラボの中にオリゴDNA合成機があって自分でPCRプライマーやシーケンシングのためのプライマーを合成していたと思います。しかし今ではオリゴDNAは塩基配列を伝えればサービス業者が合成して何日も待たずに配送してくれます。シーケンシングは、そもそもテクノロジーが大きく進展して、昔の自分のように大きなゲル板を立てて放射性ラベルを用いてシーケンシングしていたのが遠い夢のように感じます。

抗体作成も学生時代に自分は抗原生成からウサギへの免疫、抗血清の調整まで全部自分でやっていました。今では抗体は多くの場合市販品がありますし、特別な抗原に対する抗体が欲しい場合も外注するのが普通でしょう。

遺伝子導入動物も同様で、自分で作らなくても買える時代です。論文はどうでしょうか?論文を代筆してくれる業者があるかどうか知りませんが、論文作成をサポートすると謳っている会社はあります。ほとんど丸投げに近いかもしれません。これって公的研究費で支出できるのか、ちょっと疑問です。もし科研費の申請書で原著論文作成支援費用として数十万円も計上したら、研究能力がない応募者だと思われて不採択になりそう。別の財源を使えばいいのでしょうかね。

原著論文作成支援

  1. EDANZ(エダンズ)https://jp.edanz.com/manuscript-development 研究データに基づき、SCIジャーナルに投稿できる状態の原著論文(3500-4000ワード)を作成。お客様のガイダンスに従いながらアウトラインを作成し、構成・内容をご確認いただいたうえで、全文のドラフト作成を開始します。

大学経営とは?学長のリーダーシップ、大学改革の成功事例などに関する書籍のリスト

大学経営、大学マネジメント、大学改革に関する書籍をまとめておきます。

  1. 大学改革―自律するドイツ、つまずく日本 (中公新書 2832) 新書 – 2024/11/20 竹中 亨 アマゾンレビュー”「国立大学法人化」とその以後の(国立大学の)大学改革の問題点について、ドイツ(大部分は州立大学)の例と比較”
  2. SDのための速解大学教職員の基礎知識 / 「速解大学教職員の基礎知識」委員会, 上杉道世編著 2024年度版. – 東京 : 学校経理研究会 , 2024.5(大図)
  3. 柴田 巌 未来をつくる大学経営戦略 2023/10/31 プレジデント社 ”大胆な改革に取り組んでいる大学の総長、理事長などの経営リーダーの方々と筆者との対談を盛り込む” ”Aoba-BBTが誇る経験と実績、それは「教育×テクノロジー」を組み合わせ、教育における日本初を次々と実現してきた事にあります。その一例として、日本初のオンライン経営大学や大学院の設立、豪州BOND大学との共同オンラインMBAなど”
  4. ルポ 大学崩壊 (ちくま新書 1708) 新書 – 2023/2/9 田中 圭太郎 (著) 教職員に罵声を浴びせて退職強要。寮に住む学生45人を提訴。突然の総長解任。パワハラ捏造。全国の大学で起きた信じ難い事件を取材し、大学崩壊の背景を探る。
  5. 村上雅人 大学をいかに経営するか (ウニベルシタス研究所叢書)  2023/2/1 飛翔舎 前芝浦工業大学学長 アマゾンレビュー”大学経営に参画するすべての立場の方に役立つ” キンドル https://www.amazon.co.jp/dp/B0CXX36FL2/ ★★★★★
  6. 現場の大学論―大学改革を超えて未来を拓くために 2022/7/20 崎山 直樹 (著, 編集), 二宮 祐 (著, 編集), 渡邉 浩一 (著, 編集), 井上 義和 (著), 笠木 雅史 (著), 北村 紗衣 (著), 標葉 靖子 (著), 標葉 隆馬 (著), 嶋内 佐絵 (著), 成瀬 尚志 (著), 羽田 貴史 (著), 光永 悠彦 (著), 吉田 文 (著) アマゾンレビュー”時の政権や文科省・財務省の思惑に翻弄される大学の現状をエビデンスとともに整理し、今後なすべきことを議論” ★★★★★
  7. 危機こそマネジメント改革の好機 (大学改革支援・学位授与機構 大学改革マネジメントシリーズ) 2022/3/5 独立行政法人大学改革支援・学位授与機構 (著)
  8. 日本の私立大学はなぜ生き残るのか-人口減少社会と同族経営:1992-2030 (中公選書)  2021/9/8 ジェレミー・ブレーデン , ロジャー・グッドマン , 石澤 麻子 (翻訳) 2010年代半ば、日本では、大学の「2018年問題」がさまざまに議論されていた。18歳人口の減少によって、日本の弱小私立大学は次々と経営破綻すると予想されたのだ。
  9.  村上 雅人 教職協働による大学改革の軌跡  2021/2/2 仲間である教職員を信頼し、協働して大学改革を進めた学長9年間の記録! 率先して大学の進むべき道を示すリーダーと教職員が一体となった大学改革の成就 芝浦工大村上学長が唱え、実践してきた「教職協働」による大学改革の全貌!
  10. 大学事務組織の始動書 = University administrative organization initiation / 大学行政管理学会大学事務組織研究会編著 東京 : 学校経理研究会 , 2021.1 (大図)
  11. 大学が「知」のリーダーたるための成果重視マネジメント / 大学改革支援・学位授与機構編著 東京 : ぎょうせい , 2020.10. – (大学改革支援・学位授与機構大学改革マネジメントシリーズ) (大図)
  12. 両角 亜希子 日本の大学経営―自律的・協働的改革をめざして 2020/7/20
  13. 篠田 道夫 大学改革の処方箋 東信堂 2020/3/13
  14. 川崎 成一 市場化時代の大学経営分析 2020/3/12  kindle 8085円 日本の大学に「経営感覚」が求められている。しかし、一般の企業とはことなる組織の目標、関係法規、財務体質をもつ大学が、とくに財務においてなすべき経営とはなにか。そのポイントと分析手法を、現代日本の私学を題材に、わかりやすく説明 ★★★★★
  15. 大学マネジメント論〔新訂〕 (放送大学教材)  2020/2/1 小方 直幸 (著) 大学の歴史や制度等の大枠を踏まえた上で、設置者別の組織・人事・財務などの基本事項をおさえ、その上で教育、研究、社会サービスといった個別機能に応じたマネジメントに関わる基本的概念や知識の獲得を目指す
  16. 大学改革の迷走 (ちくま新書) 新書 – 2019/11/6 佐藤 郁哉 (著)
  17. 大学業務の実践方法 / 中井俊樹, 宮林常崇編著 町田 : 玉川大学出版部 , 2019.10. – (大学SD講座 ; 3) (大図)
  18. 大学の組織と運営 / 中井俊樹編著 町田 : 玉川大学出版部 , 2019.8. – (大学SD講座 ; 1) (大図)
  19. 小藤康夫 大学経営の構造と作用 2019/7/31 専修大学出版局
  20. 大学入試改革は高校生の学習行動を変えるか:首都圏10校パネル調査による実証分析 (MINERVA社会学叢書) 単行本 – 2019/6/26 山村 滋 (著), 濱中淳子 (著), 立脇洋介 (著)
  21. 井原徹 大学経営を支える理事・職員の心得―頼りにされるための55ヶ条 2019/4/4 学校経理研究会
  22. 五神真 大学の未来図 「知識集約型社会」を創る 2019年2月 ちくま新書 (区図) 分かりやすい説明、説得力のある議論でした。(⇒読書メモ http://ikagaku.jp/archives/13753
  23. 東京大学 大学経営・政策コース (編) 大学経営・政策入門  2018/9/11 東信堂 日本の大学の歴史的背景、教育政策、経緯
  24. 大学・改革・笑い学: 学長・坂井東洋男の大学活性論 単行本 – 2018/4/26 坂井 東洋男 (編集), 追手門学院大学編纂委員会 (編集)
    1. https://www.otemon.ac.jp/library/guide/pr/ob/pdf/201210/p08.pdf 新学長インタビュー
  25. これからの大学経営-ガバナンス、マネジメント、リーダーシップ-  出版年月 2018年02月 著者名 山崎その/著 宮嶋恒二/著 伊多波良雄/著 出版社 晃洋書房  (区図)
  26. 岩田 雅明 生き残りをかけた大学経営の実践-消えゆく大学にならないために–  2018/1/31 ぎょうせい 新島学園短期大学学長・大学経営コンサルタント 2015年に就任から2年の短大経営、教育の実践をつづった 高校訪問の際の資料作り、アピールポイントをおさえた名刺作りなど、すぐにも実行できるtipsも紹介
  27. 大学大倒産時代-都会で消える大学、地方で伸びる大学(朝日新書 627) 著者 木村 誠/キムラ,マコト 出版社 東京 朝日新聞出版 出版年月 2017年8月
  28. 小日向 允 大学の経営管理──原論の試み 2017/7/30  ‎ 論創社  SD(Staff Development)解説書の決定版 1997年6月学校法人芝浦工業大学常務理事、2003年学校法人武蔵野美術大学理事
  29. 山口 裕之 「大学改革」という病――学問の自由・財政基盤・競争主義から検証する  2017/7/25 (購入済)社会の在り方まで考えたうえでその社会の中における大学の在り方を議論している好著。
  30. 反教養の理論-大学改革の錯誤(叢書・ウニベルシタス 1061) 著者 Liessmann,Konrad Paul/リースマン,コンラート・パウル   斎藤 成夫/サイトウ,シゲオ   齋藤 直樹/サイトウ,ナオキ   出版社 東京 法政大学出版局 出版年月 2017年7月
  31. 石原 俊彦 (監修), 荒木 利雄 (著) 大学経営国際化の基礎 (CIPFA Japan Textbook No. 2)  2017/5/25 関西学院大学出版会 龍谷大学グローバル教育推進センター事務部長 海外との大学経営比較
  32. 篠田 道夫 大学戦略経営の核心 2017/1/6  東信堂
  33. 篠田 道夫 戦略経営111大学事例集 2017/1/6
  34. 新藤 豊久 大学経営とマネジメント 2016/9/1 東信堂
  35. 岩崎 保道 大学の戦略的経営手法 2016/4/26  大学教育出版
  36. 戦略的大学職員養成ハンドブック : 経営参画できる”職員力” / 岩田雅明著 東京 : ぎょうせい , 2016.2 (大図)
  37. 本間政雄 大学のミッション経営 14校の実践事例から学ぶ中長期計画  2016/1/1 エデュース学校経営研究所 ”2015年7月に開催されたキックオフシンポジウム『海図なき大学経営に未来はあるか?』を皮切りに、2015年9月から2016年3月までの7ヵ月間に渡り、14校の大学法人を招いて事例研究を行った内容を書籍化。 2018年問題を前に、全国各地・様々な経営環境の中で、視座の高い経営計画策定とその実行・評価を行った14校の軌跡から学ぶ。経営課題を抱える大学のためのヒント” ★★★★★
  38. 水戸 英則 今、なぜ「大学改革」か? 私立大学の戦略的経営の必要性 (二松學舍ブックス) 単行本 – 2014/9/20  筆者がこれまで推し進めてきた「大学経営・教育改革の経緯」と、その中で触れてきた多くの私立大学に関する文献、同経営・教育改革等の資料を系統的に組み直した大学改革の参考書。アマゾンレビュー”私立大学の日本での立ち位置、社会への貢献社会情勢の変化の中、私立大学が生き残るために、どこに目をつけ、どのように改革を進める必要があるのかが詳細に書かれています” ★★★★★
  39. 篠田 道夫, 教育学術新聞編集部 大学マネジメント改革 改革の現場―ミドルのリーダーシップ  2014/4/11 ぎょうせい アマゾンレビュー”小規模私立大学の改革事例 ある大学は、学長リーダーシップの成功事例として取り上げられていたが、ここの関係者から聞くと、学長の傲慢さ、見当はずれぶりに嫌気がさして、バタバタと教職員が辞職したらしい。まさに一将功成りて万骨枯る 現場を知らないミドルやトップが、思い付きの決定を下し始めると、
    一気に組織は崩壊 強いリーダーシップ(広い権限の設定)が小規模組織では
    属人的なリスクを抱える”
  40. 大学事務組織の強化書 / 大学行政管理学会大学事務組織研究会編著 東京 : 学校経理研究会 , 2014.3 (大図)
  41. 大学マネジメント論 (放送大学教材)  2014/3/20 山本 眞一 (著), 田中 義郎 (著) 大学マネジメントの知識や考え方
  42. なぜ関西のローカル大学「近大」が、志願者数日本一になったのか 著者 山下 柚実/ヤマシタ,ユミ 出版社 東京 光文社 出版年月 2014年11月
  43. 大学のIRQ&A / 中井俊樹, 鳥居朋子, 藤井都百編 町田 : 玉川大学出版部 , 2013.9. – (高等教育シリーズ ; 161) (大図)
  44. 小藤 康夫  米国に学ぶ私立大学の経営システムと資産運用  2013/7/30
  45. 大学改革を問い直す  2013/6/22 天野 郁夫 (著)
  46. 大学経営研究会/編 大学業界大研究 (大研究シリーズ) 2013/6/13
  47. 山上 浩二郎  検証 大学改革 混迷の先を診る 2013/5/30 大学関係者、官僚、学生などさまざまな声を盛り込みながら、明日への展望を拓く。本書は教育問題をめぐり鋭い記事を書き続けた記者の遺稿 ★★★★★ (区図)
  48. 大学とコスト : 誰がどう支えるのか / 上山隆大(代表)著 東京 : 岩波書店 , 2013.5. – (シリーズ大学 / 広田照幸 [ほか] 編 ; 3)(大図)
  49.  岡本 史紀 私学の再生経営: 一私立大学破綻からの再生  2013/4/1アマゾンレビュー”芝浦工大、復活までの苦闘の歴史 経営難の私学関係者必読” ★★★★★
  50. 大学改革を成功に導くキーワード30 : 「大学冬の時代」を生き抜くために / 濱名篤 [ほか] 編著 東京 : 学事出版 , 2013.4 (大図)
  51. 岩田雅明 生き残りをかけた大学経営戦略-大学、常夏の時代から氷河期へ-  2013/1/18 大学職員として、定員割れになった大学を回復させた経験のある著者 アマゾンレビュー”最後の章に「優れた戦略実践校」の事例紹介があり、これは興味深い。”
  52. 大学事務職員のための高等教育システム論 : より良い大学経営専門職となるために / 山本眞一編 新版. – 東京 : 東信堂 , 2012.4 (大図)
  53. IR実践ハンドブック : 大学の意思決定支援 / リチャード D. ハワード編 ; 大学評価・学位授与機構IR研究会訳 町田 : 玉川大学出版部 , 2012.3. – (高等教育シリーズ ; 155) (大図)
  54. 消える大学生き残る大学(朝日新書 290) 著者 木村 誠/キムラ,マコト 出版社 東京 朝日新聞出版 出版年月 2011年4月
  55. 大学職員の力を引き出すスタッフ・ディベロップメント : 大学のアイデンティティを鍛えるプロジェクト創出型SDの記録 / 小田隆治著 京都 : ナカニシヤ出版 , 2010.12 (大図)
  56. 篠田 道夫 大学戦略経営論: 中長期計画の実質化によるマネジメント改革 2010/11/1
  57. 大学経営 起死回生のリーダーシップ  2010/3/12 ジェームズ・M. クーゼス (著), バリー・Z. ポズナー (著), 高木 直二 (翻訳) 大学を変革していくための技法が効果的な事例と共に論じられ、いかにして組織の構成員から力を引き出し、成果に結びつけるかが明瞭な筆致で語られる。★★★★★
  58. 両角 亜希子 私立大学の経営と拡大・再編: 1980年代後半以降の動態 2010/3/1 アマゾンレビュ-”地方の大学、都市部の大学、大学の規模別のさまざまな視点から分析 大学アドミニストレーター必読”
  59. 川本 八郎 大学改革 – 立命館はなぜ成功したか 2009/11/11 中央公論新社
  60. 篠田道夫 大学アドミニストレーター論 ー戦略遂行を担う職員ー  2009/1/1 学法文化センター出版部
  61. 私立大学マネジメント / 日本私立大学連盟編 東京 : 東信堂 , 2009.4 (大図)
  62. 大学教職員の基礎知識 : 速解 / 日本私立学校振興・共済事業団編 平成21年改訂版 – 2019年度改訂版. – 東京 : 学校経理研究会 , 2009.3- (大図)
  63. 医薬品産業日本の競争力 : プロたちが語る「医療ビジネス」 / 東京大学大学院医学系・薬学系協力公開講座「医療経営イニシアティブ」著 東京 : かんき出版 , 2008.9. – (東京大学大学院医学系・薬学系協力公開講座 ; 4) (大図)
  64. 井原 徹 私立大学の経営戦略序論: 戦略的経営プラニングの展開 2008/5/1 日本エディタースクール出版部 https://www.amazon.co.jp/dp/4888889325
  65. 大学のマネジメント / 山本眞一, 田中義郎編著 東京 : 放送大学教育振興会 , 2008.3. – (放送大学大学院教材 ; 8930392-1-0811 . 政策経営プログラム)
  66. 大学改革その先を読む: 立教大学「大学教育開発・支援センター」連続セミナー講演記録 寺崎 昌男 | 2007/11/1 この本は買って読みましたが、偏差値が真ん中に位置する大学の苦悩(不本意に入学した学生をどうするか)が書かれていました。
  67. 大学力-真の大学改革のために 著者 有本 章/アリモト,アキラ   北垣 郁雄/キタガキ,イクオ   出版社 京都 ミネルヴァ書房 出版年月 2006年10月
  68. 競争に勝つ大学-科学技術システムの再構築に向けて(経済政策レビュー 12) 著者 沢 昭裕/サワ,アキヒロ   寺沢 達也/テラザワ,タツヤ   井上 悟志/イノウエ,サトシ   出版社 東京 東洋経済新報社 出版年月 2005年2月
  69. 篠田道夫 大学職員論: 経営革新と戦略遂行を担うSD (高等教育ハンドブック 3) 2004/9/1 地域科学研究会
  70. 大学は学生に何ができるか-「学生を元気にさせる」大学改革とは 著者 増田 晶文/マスダ,マサフミ 出版社 東京 プレジデント社 出版年月 2003年12月
  71. 今、日本の大学をどうするか(虎ノ門DOJOブックス) 著者 日下 公人/クサカ,キミンド 出版社 東京 自由国民社 出版年月 2003年10月
  72. ウィリアム リード (著), William S. Reed (原名), 福原 賢一 (翻訳)  財務からみた大学経営入門 単行本 – 2003/10/1 アマゾンレビュー”いざ改革に取り組もうとするときに参考になるような本はなかなか見あたらない。「理事がわきまえておくべき心得」を説いてくれる。地味だが手元に置いておきたい一冊。” ★★★★★
  73. 大学改革がわかる。(アエラムック 93) 出版社 東京 朝日新聞社 出版年月 2003年10月
  74. 私の大学改革 1999/6/1 野田 一夫 (著) アマゾンレビュー”できる学長とできない学長の違いは何かがわかる。学内のコミュニケーションへの積極的な取り組み” ★★★★★
  75. 米国の大学経営戦略―マーケティング手法に学ぶ 1998/10/1 船戸高樹 (著), 福井有 (著)
  76. 大学経営とリーダーシップ 1992/5/1 ロバート バーンバウム (著), Robert Birnbaum (原名), 高橋 靖直 (翻訳)
  77. 日本の私立大学 改訂新版-私学教育の危機と大学経営の課題- 出版年月 1974年 著者名 大沢勝著 出版社 青木書店 (区図)
  78. 大学問題総資料集 3 日本と外国の諸大学改革案 著者 田畑 茂二郎/タバタ,シゲジロウ 出版社 有信堂 出版年月 1971年

カドヘリン分子の多様性

カドヘリンといえば、E-cadherinとN-cadherinくらいしか耳になじんでいませんが、数十以上もの種類があるようです。ネーミングがどうも統一感がなくて、頭にスッキリと入ってきません。自分がややこしく感じる原因は、カドヘリン(ファミリー)のほかに、プロトカドヘリンという似ているけど別の名前のファミリーが存在するからです。プロトカドヘリンはカドヘリンなの?それともカドヘリンじゃないの?というもわっとした疑問がいつまでも頭の中に残ってしまっていました。

整理すると、プロトカドヘリンは名前の一部にカドヘリンを含むくらいなので、カドヘリンと相同性を持った分子で、プロトカドヘリンファミリーのメンバーを指します。カドヘリンはカドヘリンファミリー(メンバーは、CDH1からCDH28くらいまで)のメンバーを指します。カドヘリンファミリーと、プロトカドヘリンファミリーを併せて、カドヘリンスーパーファミリーと呼びます。

混乱を防ぐポイントは、「ファミリー」と「スーパーファミリー」の階層性の違いの理解です。フーパ―ファミリーとしてまとめたもののなかに、いろいろなファミリーが存在します。

この関係は例えば、TGFβスーパーファミリーを思い浮かべると分かりやすいでしょう。TGFβファミリーは、TGFβスーパーファミリーの中の要素になっています。集合を要素として持つ集合みたいなイメージですね。ファミリーの名前とスーパーファミリーの名前で同じTGFβという語句を使っているため、混乱が生じやすいと思います。

TGF-βスーパーファミリーは、大きく分けて3つの異なるサブファミリーに分類され、それぞれTGF-βファミリーアクチビンファミリー及びBMP(bone morphogenetic protein)ファミリーと呼ばれています。https://www.md.tsukuba.ac.jp/epatho/privacy.html

「サブファミリー」という言葉も使われると混乱に拍車をかけそうですが、スーパーファミリーを考えたときに、その要素であるファミリーのことを特に意識させるためにサブファミリーと呼ぶわけです。なのでここでいうサブファミリーはファミリーと同じものを指すことになります。

いくつかの「ファミリー」が共通に所属するものとしての「スーパーファミリー」

「ファミリー」をいくつかにさらに細かく分けたものとしての「サブファミリー」

うえの2つは、単に包含関係を示すための用語でしかないので、同じことを言っているだけです。

カドヘリン・スーパーファミリー(Cadherin superfamily)は、細胞外領域にカドヘリン様ドメインを有し、カルシウムイオン依存的なホモフィリック結合により細胞接着活性を現す膜タンパク質群の総称である(脳科学辞典

カドヘリンスーパーファミリーは大きく1)古典的カドヘリン,2)デスモソーマルカドヘリン,3)プロトカドヘリン,4)その他,に分類することができる  2007年https://webview.isho.jp/journal/detail/abs/10.11477/mf.2425100119

ファミリーを構成するメンバーは大きく古典的カドヘリンそれ以外のカドヘリン様タンパク質に分類される。 1999年 http://gakui.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/cgi-bin/gazo.cgi?no=114485

カドヘリンの下流のシグナル分子機構

カドヘリンの発見者である竹市先生の下の総説は非常に読み応えがあっておもしろいです。研究がどのように進展するものなのかを教えてくれます。細胞接着に関与していたはずのβ-カテニンが核内に移行して転写制御因子として働くということを総説か教科書か何かを読んで知ったときは、自分は、???と思いました。細胞接着因子が転写因子にもなるの?そんなこと本当にあり得るのか?という気持ちです。ところが、教科書というものはそれをさも当然であるかのようにさらっと書いてしまっているので、そんな凄いことを「ね、凄いでしょ?」とも言わずに書いていることへの違和感がずっと消えないでいたのです。下のこの総説を読んで、当の発見者が戸惑っていたのだと知って、とても安心しました。自分が抱いていた違和感、不思議さは、決して的外れなことではなかったのです。

  • カドヘリンにはβ-カテニンが結合し,これにα-カテニンが結合して,カドヘリン—カテニン複合体を作る(図1B).これが核となって,さまざまな分子が集結し,複雑な細胞間接着制御装置が形成される.
  • 1991年,β-カテニンがクローニングされ,γ-カテニン/プラコグロビンと同類の分子であることが確定9)した.前後して,ショウジョウバエのセグメントポラリティ遺伝子armadilloがクローニングされ10),この遺伝子産物が,なんと,γ-カテニン/プラコグロビン類似分子であることがわかる(後に,アルマジロ・リピートタンパク質としてまとめられる).突然,接着関連タンパク質と発生情報因子が関連づけられた
  • 1993年,β-カテニンが大腸がん抑制遺伝子産物APC(adenomatous polyposis coli)に結合することが報告
  • β-カテニン/Armadilloが転写因子Tcf/Lefと結合し,Wnt/Winglessシグナル系による転写制御のために作用することがわかり

β-カテニンが,細胞接着と遺伝子転写制御というまるで異なる分子現象に関わるという発見には,正直なところ当惑した.何かを見誤っているのではないかという気持が永らく続く個々のタンパク質の役割は単純明快に違いない,という勝手な思い込みのためだが,どうやら,すっきりしないことの方が生命現象の本質のようだ

β-カテニンが接着にも関与していることを無視する傾向が強まった.

https://seikagaku.jbsoc.or.jp/10.14952/SEIKAGAKU.2019.910500/data/index.html

 

カドヘリン1(Eカドヘリン)

  1. CDH1 – E-cadherin (epithelial): E-cadherins are found in epithelial tissue(ウィキペディア)

カドヘリン2(Nカドヘリン)

  1. CDH2 – N-cadherin (neural): N-cadherins are found in neurons(ウィキペディア)

カドヘリン3(Pカドヘリン)

PカドヘリンのPは、Placenta(胎盤)のPでした。

  1. CDH3 – P-cadherin (placental): P-cadherins are found in the placenta.(ウィキペディア)

カドヘリン4(Rカドヘリン)

  1. CDH4 – R-cadherin (retinal)(ウィキペディア)

カドヘリン17

  1. CDH17多型とそれに伴うスプライシング変異による短鎖タンパク質の機能解明 https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20K08308/ カドヘリン17(CDH17)は、腸上皮特異的に発現する細胞接着性の膜タンパク質であり、膵がんや肝がんの発症や進展に関与している。このとき特定のSNPにより、腫瘍部でのみスプライス変異が生じて短鎖タンパク質が生成される。‥ カドヘリン17(CDH17)の短鎖型タンパク質は、肝がんの腫瘍部において特異的発現がみられ、患者の生命予後と関連することが報告されている(Wang, XQ et al., Clin. Cancer Res., 2005 and 2006)。
  2. CDH17(Cadherin 17 or LI-cadherin)とは https://www.funakoshi.co.jp/contents/63252 CDH17(Cadherin 17 or LI-cadherin)は腫瘍の浸潤や転移に関与しており、腸上皮で発現している新規のがん遺伝子です。CDH17は、結腸がんにおいて非常に特異的なマーカーであり(99/99、100%)、CDX2(93/99、94%)やCK20(91/99、92%)よりも高感度です。
  3. HNF1αおよびCDX2転写因子は肝細胞癌においてカドヘリン17(CDH17)遺伝子プロモーターに結合しその発現を調節する HNF1α and CDX2 Transcriptional Factors Bind to Cadherin-17 (CDH17) Gene Promoter and Modulate Its Expression in Hepatocellular Carcinoma https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=201002276625629568 ヒト肝細胞癌に高発現するCDH17のプロモーターと相互作用する転写因子を同定した。
  4. Liver-intestine cadherin: molecular cloning and characterization of a novel Ca(2+)-dependent cell adhesion molecule expressed in liver and intestine D Berndorff 1, R Gessner, B Kreft, N Schnoy, A M Lajous-Petter, N Loch, W Reutter, M Hortsch, R Tauber J Cell Biol . 1994 Jun;125(6):1353-69. doi: 10.1083/jcb.125.6.1353.  https://rupress.org/jcb/article-abstract/125/6/1353/28872/Liver-intestine-cadherin-molecular-cloning-and?redirectedFrom=fulltext A novel member of the cadherin family of cell adhesion molecules has been characterized by cloning from rat liver, sequencing of the corresponding cDNA, and functional analysis after heterologous expression in nonadhesive S2 cells. ラット肝臓からのcDNAクローニングを報告したこの論文が、カドヘリン17の最初の報告のようです。

参考

  1. 大阪大学大学院生命機能研究科 教授 八木 健 「クラスター型カドヘリンの ゲノム構造・機能の解析」 https://www.jst.go.jp/kisoken/crest/report/sh_heisei12/genome/yagi.pdf

このお風呂の水、栓を抜いてから何分で抜けるか答えよ

「このお風呂の水、栓を抜いてから何分で抜けるか答えよ」という問いに対して、
理学部「風呂の容積と水の粘性、栓の径を考えると…5分です」
工学部「実際に同様の装置を作り計測したところ…5分です」
医学部「このように2件の報告があり共に5分と報告されているので5分です」
と、学部によってアプローチが違うことを面白く紹介したツイートがありました。

実際に、どういう計算をすれば5分とわかるのかわからなくて、ChatGPTに訊いてみたら、即座に回答してくれました。

風呂の水が抜ける時間を求めるには、トリチェリの定理(Torricelli’s Law)と連続の式(Equation of Continuity)を使って排水流速を求め、それを積分して水位がゼロになる時間を計算します。


1. 基本の物理法則

(1) トリチェリの定理

排水口を通る水の流速

vv

は、重力加速度

gg

と水面から排水口までの高さ

hh

で決まります:

 

v=2ghv = \sqrt{2gh}

この式は、エネルギー保存則(Bernoulliの定理)から導かれ、粘性や流れの損失を無視した理想流体の近似です。


(2) 連続の式

水の流れは、浴槽の水面積

AbathA_{\text{bath}}

と排水口の面積

AdrainA_{\text{drain}}

の間で質量保存が成り立つので、

 

Abathdhdt=AdrainvA_{\text{bath}} \frac{dh}{dt} = – A_{\text{drain}} v

ここで、

dh/dtdh/dt

は水位の低下速度です。

これにトリチェリの式を代入すると、

 

Abathdhdt=Adrain2ghA_{\text{bath}} \frac{dh}{dt} = – A_{\text{drain}} \sqrt{2gh}

整理すると、

 

dhh=AdrainAbath2gdt\frac{dh}{\sqrt{h}} = – \frac{A_{\text{drain}}}{A_{\text{bath}}} \sqrt{2g} dt

この式を積分すると、時間

tt

を求めることができます。


2. 積分して時間を求める

両辺を積分すると、

 

H0dhh=AdrainAbath2g0Tdt\int_{H}^{0} \frac{dh}{\sqrt{h}} = – \frac{A_{\text{drain}}}{A_{\text{bath}}} \sqrt{2g} \int_{0}^{T} dt

左辺の積分は、

 

dhh=2h\int \frac{dh}{\sqrt{h}} = 2\sqrt{h}

したがって、

 

2H20=AdrainAbath2gT2\sqrt{H} – 2\sqrt{0} = – \frac{A_{\text{drain}}}{A_{\text{bath}}} \sqrt{2g} T

T=2HAbathAdrain2gT = \frac{2 \sqrt{H} A_{\text{bath}}}{A_{\text{drain}} \sqrt{2g}}


3. 数値を入れて計算

仮定

  • 風呂のサイズ:長さ 1.2 m × 幅 0.7 m
  • 初期水深
    H=0.5H = 0.5

     

    m

  • 排水口の直径
    d=4d = 4

     

    cm → 面積

    Adrain=π(0.02)2=1.26×103A_{\text{drain}} = \pi (0.02)^2 = 1.26 \times 10^{-3}

     

  • 浴槽の底面積
    Abath=1.2×0.7=0.84A_{\text{bath}} = 1.2 \times 0.7 = 0.84

     

  • 重力加速度
    g=9.81g = 9.81

     

    m/s²

 

T=2×0.5×0.841.26×103×2×9.81T = \frac{2 \times \sqrt{0.5} \times 0.84}{1.26 \times 10^{-3} \times \sqrt{2 \times 9.81}}

この計算を実行します。

計算の結果、お風呂の水が完全に抜けるのにかかる時間は 約213秒(約3分33秒) となりました。

仮に排水口の流れに対する抵抗(粘性の影響や排水口の形状による流量制限)を考慮すると、もう少し時間がかかる可能性がありますが、理想流体の近似ではこのような結果になります。

5分に近い時間にするには?

  • 排水口が少し小さくなる(例:3.5cm径) → 流速が落ちて時間が延びる
  • 水の粘性や排水口の形状による影響(流れがスムーズでない) → 実際の流量は理論値より小さくなる

もし、5分(= 300秒)で抜けるとすると、排水口の有効面積が実際より少し小さい、または流れの抵抗が効いている可能性が考えられます。 ​

 

水の粘性を考慮すると、Poiseuilleの法則(粘性流体の流れ)やオリフィス流れの流量係数を導入して修正が必要です。


1. 粘性を考慮する必要性

トリチェリの定理は**理想流体(粘性ゼロ)**を前提としていますが、実際の水流には粘性があるため、排水口周囲で流速が落ち、流量が理論値より小さくなります。

この影響を考慮するために、以下の要素を加えます:

  • 流量係数
    CdC_d

    (ディスチャージ係数): 実際の流出速度は理論値の

    CdC_d

    倍となる。

  • Poiseuille流れによる圧力損失: 排水口が長いと流れが減衰する。

一般的に、排水口の**短いオリフィス(単なる穴)**の場合、経験的に

Cd0.6C_d \approx 0.6

とされています。


2. 修正された流速

トリチェリの流速を流量係数で補正すると、

vactual=Cd2ghv_{\text{actual}} = C_d \sqrt{2 g h}

この影響を排水時間の計算に反映させると、

Tviscous=2HAbathCdAdrain2gT_{\text{viscous}} = \frac{2 \sqrt{H} A_{\text{bath}}}{C_d A_{\text{drain}} \sqrt{2g}}

これを計算します。

粘性を考慮した場合、お風呂の水が完全に抜ける時間は 約356秒(約5分56秒) となりました。

まとめ

  • 理想流体(粘性無視): 約3分33秒
  • 粘性を考慮(流量係数
    Cd=0.6C_d = 0.6

    を適用): 約5分56秒

この結果から、実際のお風呂の排水時間が5分前後になるのは、水の粘性や排水口の流れの損失を考慮した影響があるためと考えられます。

もし、排水口の形状や流体の流れにさらに影響を与える要素(例えば排水管の長さ、曲がり、排水口のメッシュなど)が加わると、時間はさらに長くなる可能性があります。 ​

 

水の粘性を考慮するためには、動粘性係数レイノルズ数を用いて流れの種類を分類し、それに応じた修正を加えます。


1. 水の粘性(粘性係数

μ\mu

水の動粘性係数 (

ν\nu

) および動的粘性係数 (

μ\mu

) は以下の値になります(温度 20℃):

  • 動的粘性係数(absolute viscosity)
    μ\mu

    μ=1.002×103 Pa\cdotps\mu = 1.002 \times 10^{-3} \text{ Pa·s}

  • 動粘性係数(kinematic viscosity)
    ν\nu

    ν=μρ=1.002×103 Pa\cdotps1000 kg/m3=1.002×106 m2/s\nu = \frac{\mu}{\rho} = \frac{1.002 \times 10^{-3} \text{ Pa·s}}{1000 \text{ kg/m}^3} = 1.002 \times 10^{-6} \text{ m}^2/\text{s}

ここで、

ρ=1000kg/m3\rho = 1000 \, \text{kg/m}^3

は水の密度です。


2. レイノルズ数

ReRe

排水口の流れが層流か乱流かを判定するため、レイノルズ数

ReRe

を求めます。

Re=ρvdμRe = \frac{\rho v d}{\mu}

ここで、


  • v=2gHv = \sqrt{2gH}

    はトリチェリの式で求めた流速


  • d=0.04d = 0.04

    m(排水口の直径)


  • μ=1.002×103\mu = 1.002 \times 10^{-3}

    Pa·s(水の粘性)

レイノルズ数を計算し、流れの種類を確認します。

計算の結果、レイノルズ数

ReRe

約125,034 となりました。


3. 流れの分類と粘性の影響

レイノルズ数の一般的な分類:


  • Re<2000Re < 2000

    層流


  • 2000<Re<40002000 < Re < 4000

    遷移流


  • Re>4000Re > 4000

    乱流

今回の

ReRe

は 125,034 なので、完全に乱流に分類されます。
この場合、Poiseuilleの法則(層流向けの理論)は適用できません。
代わりに、**エネルギー損失(摩擦損失)**を考慮する必要があります。


4. Darcy-Weisbachの式による粘性の考慮

流れのエネルギー損失はDarcy-Weisbachの式で近似できます。

hf=fLdv22gh_f = f \frac{L}{d} \frac{v^2}{2g}

ここで、


  • hfh_f

    は摩擦による水頭損失(m)


  • ff

    は摩擦係数(Moody diagram より求める)


  • LL

    は排水口の長さ(通常、短いオリフィスなら

    dd

    程度)


  • dd

    は排水口の直径


  • vv

    は流速


  • gg

    は重力加速度

摩擦係数

ff

は、Colebrook-Whiteの式または経験則により、乱流時は次の近似式で求まります:

f0.079Re0.25f \approx \frac{0.079}{Re^{0.25}}

この摩擦損失を考慮して、実際の流速を補正し、排水時間を再計算します。 ​

粘性と摩擦損失を考慮した場合、お風呂の水が完全に抜ける時間は 約302秒(約5分2秒) となりました。


結論

  • 理想流体(粘性無視): 約3分33秒
  • 粘性を考慮(流量係数
    Cd=0.6C_d = 0.6

    : 約5分56秒

  • 粘性 + 摩擦損失考慮(Darcy-Weisbach式適用): 約5分2秒

→ 約5分前後となり、実際の体感と一致する値になりました。

この結果から、粘性と摩擦によるエネルギー損失が、実際の排水時間を数十秒~2分程度増加させることがわかります。 ​

たぬかな「170cm以下の男は人権ない」発言にみるheigtism 身長差別

小児科の教科書にheigtismという言葉が紹介されているくらいなので、高身長のほうが望ましいという認識(偏見)があるようです。男性の方が、身長が高くて困らないという意識が強く、女性に関しては近年はやはり伸長が高いことがいいことという風潮が個人の意識にも影響してきているようです(少なくとも欧米で)。

  • The social acceptability and even desirability of tallness (heightism) makes tall stature an uncommon complaint in chlinical practice.
  • It is exceptoinally unusual for boys and men to seek medical attention regarding excessive height.
  • Girls (or their parents) were historically more likely to approach a physician with concern about tall stature, but even in girls this complaint has become less frequent as tallness has become more acceptable and socially desirable in adult women.

Chapter 560 Hyperpituitarism, Tallstature, an Overgrowth Syndromes, 2649 page, Nelson TEXTBOOK of  PEDIATRICS 20 EDITION Volume 2

身長は高いほうがいいという意識からくるheigtism 身長差別は、日本でも見られます。たぬかなさんの発言が炎上したのが記憶に新しいところ。

  1. 「170cm以下の男は人権ない」発言で炎上したたぬかな、“体型にコンプレックスを持つ人”に持論 1/19(日) 15:55コメント263件 週刊SPA!  15:54https://news.yahoo.co.jp/articles/dbd9b1476711371a4af4542d857cd6d7cefee104 投稿日:2025年01月19日 https://nikkan-spa.jp/2064245
  2. 「170以下は人権ない」で大炎上した彼女の現在プロゲーマー→配信者「たぬかな」の波乱の人生 2023/04/14 11:00 東洋経済 https://toyokeizai.net/articles/-/665651 たぬかなさんは、日本で2人目の女性プロゲーマーであり、eスポーツチーム「CYCLOPS athlete gaming」に長らく所属し『鉄拳シリーズ』で世界規模の格闘ゲーム大会で活躍を続けた。 2022年2月、Mildomのライブ配信にて「170センチない方は『俺って人権ないんだ』って思いながら、生きていってください」 と発言したことが問題視され、ネット上で大炎上した。

一般に、高身長の家系に生まれた子供も高身長になることが多いです。身長を決める遺伝子は一つや少数ということはなくて、最近のNatureに論文が掲載された研究では1万個以上のSNPsが関与すると言われています。

  1. A saturated map of common genetic variants associated with human height Nature volume 610, pages704–712 (2022) https://www.nature.com/articles/s41586-022-05275-y we show that 12,111 independent SNPs that are significantly associated with height

一つの塩基が原因となる疾患により、身長が高くなるという例もまた知られています。

  1. マルファン症候群/ロイス・ディーツ症候群(指定難病167)難病情報センター

DNAによる個人(犯人)の同定方法

  1. https://nij.ojp.gov/nij-hosted-online-training-courses/principles-forensic-dna-officers-court/01-introduction
  2. Sexual Assault Forensic Examiners (SAFE) DNA Evidence Collection https://www.health.ny.gov/professionals/safe/docs/evidence_collection_kit_guidelines.pdf
  3. https://nij.ojp.gov/nij-hosted-online-training-courses/what-every-first-responding-officer-should-know-about-dna/dna-evidence-overview
  4. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK232606/
  5. https://www.sciencedirect.com/topics/biochemistry-genetics-and-molecular-biology/forensic-dna-analysis

論文

  1. Published: 04 October 2024 Identification of semen traces at a crime scene through Raman spectroscopy and machine learning https://www.nature.com/articles/s41598-024-73563-w
  2. Diagnostics (Basel). 2020 Sep 14;10(9):693. doi: 10.3390/diagnostics10090693 Current Methods for Body Fluid Identification Related to Sexual Crime: Focusing on Saliva, Semen, and Vaginal Fluid
  3. August 2, 2018 Differential organic DNA extraction of semen sample contaminated with blood for the identification of a serial sexual offender: A case report https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/0025817218789569?icid=int.sj-full-text.similar-articles.6

ニュース

  1. 10代少女殺人事件、48年後にDNA検査で同窓生を逮捕 米ホノルル 1/27(月) 15:42配信 168 コメント168件 CNN.co.jp https://news.yahoo.co.jp/articles/f047bb8f6bcc9db3f8ae57d7bdc30ce99bf145e7?page=2
  2. Killer breakthrough – the day DNA evidence first nailed a murderer https://www.theguardian.com/uk-news/2016/jun/07/killer-dna-evidence-genetic-profiling-criminal-investigation

クリニカル・クエスチョンからリサーチ・クエスチョンを作る方法、研究デザインの方法論について

クリニカル・クエスチョンからリサーチ・クエスチョンを作る方法を説いた書籍はいくつも刊行されています。

査読者が教える 臨床研究のロジック 臨床センスを生かした統計解析と論文作成 森本 剛(兵庫医科大学) 208頁 写真・図・表:約100点 菊判 並製 定価 3,850 円 (本体3,500 円+税) ISBN 978-4-521-74993-8 発売日 2023/04 中山書店

リサーチ・クエスチョンの作り方 第3版 (臨床家のための臨床研究デザイン塾テキスト) 単行本 – 2015/6/30 福原俊一 (著) 4.1 5つ星のうち4.1 33

 

社会科学系の同様の書籍としては、

面白くて刺激的な論文のためのリサーチ・クエスチョンの作り方と育て方 第2版: 論文刊行ゲームを超えて 単行本 – 2024/11/19 マッツ アルヴェッソン (著), ヨルゲン サンドバーグ (著), 佐藤 郁哉 (翻訳)

原書 Constructing Research Questions: Doing Interesting Research ペーパーバック – 2024/4/30 英語版 Mats Alvesson (著), Jorgen Sandberg (著) Second Edition

というものがあります。

経管栄養の離脱について

 

経管栄養に関する文献的な知識

  1. Chapter 5 Insert Nasogastric and Feeding Tubes https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK594494/
  2. Enteric Feedings Adebayo Adeyinka; Audra S. Rouster; Menogh Valentine. Author Information and Affiliations Last Update: December 26, 2022. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK532876/
  3. A guide to enteral nutrition in intensive care units: 10 expert tips for the daily practice Crit Care. 2021 Dec 14;25:424. doi: 10.1186/s13054-021-03847-4 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8669237/
  4. Gastroenteric tube feeding: Techniques, problems and solutions Irina Blumenstein 1,2,3, Yogesh M Shastri 1,2,3, Jürgen Stein 1,2,3 World J Gastroenterol. 2014 Jul 14;20(26):8505–8524. doi: 10.3748/wjg.v20.i26.8505 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4093701/

経管栄養の離脱に関する論文

  1. The transition from tube feeding to oral feeding algorithm in preterm infants: case-control study BMC Pediatr. 2024 Jul 15;24:453. doi: 10.1186/s12887-024-04909-6  Omnia El-Kassas 1, Ayman Amer 1, Hesham Abdel-Hady 2, Tamer Abou-Elsaad 1,✉ Author information Article notes Copyright and License information
  2. Replacing protein via enteral nutrition in a stepwise approach in critically ill patients: the REPLENISH randomized clinical trial protocol Trials. 2023 Jul 30;24:485. doi: 10.1186/s13063-023-07507-6 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10388494/
  3. Nurse and Nursing Students’ Opinions and Perceptions of Enteral Nutrition by Nasogastric Tube in Palliative Care Nutrients. (MDPI Juornal)2021 Jan 27;13(2):402. doi: 10.3390/nu13020402 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7911468/
  4. Withholding and withdrawal of life-sustaining treatments in intensive care units in Lebanon: a cross-sectional survey of intensivists and interviews of professional societies, legal and religious leaders BMC Med Ethics. 2020 Aug 28;21:80. doi: 10.1186/s12910-020-00525-y https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7456082/
  5. Factors Influencing Oral Intake Improvement and Feeding Tube Dependency in Patients with Poststroke Dysphagia J Stroke Cerebrovasc Dis . 2019 Jun;28(6):1421-1430. doi: 10.1016/j.jstrokecerebrovasdis.2019.03.031. Epub 2019 Apr 5.  https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30962081/
  6. Withdrawing feeds from children on long term enteral feeding: factors associated with success and failure Charlotte M Wright 1, Kathryn H Smith, Jill Morrison Arch Dis Child . 2011 May;96(5):433-9. doi: 10.1136/adc.2009.179861. Epub 2010 Jul 23. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20656729/
  7. Ethics roundtable debate: Withdrawal of tube feeding in a patient with persistent vegetative state where the patients wishes are unclear and there is family dissension 倫理ラウンドテーブル討論: 患者の意思が不明で家族間に意見の対立がある持続的植物状態の患者に対する経管栄養の中止について Crit Care. 2004 Feb 6;8(2):79–84. doi: 10.1186/cc2451 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC420027/

経管栄養に関する論文

  1. Nasogastric Tube Feeding in Older Patients: A Review of Current Practice and Challenges Faced Curr Gerontol Geriatr Res. 2021 Jan 21;2021:6650675. doi: 10.1155/2021/6650675 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8056871/

経管栄養に関する科研費研究

    1. 要介護経管栄養高齢者の経時的な口腔細菌叢変移の解明と適切な口腔ケア間隔の確立 24K19948 2024-04-01 – 2027-03-31 小区分57050:補綴系歯学関連 若手研究
    2. 高齢者終末期ケアにおける鎮静と人工的水分・栄養補給に関する縦断研究 24K13388 2024-04-01 – 2028-03-31 小区分58010:医療管理学および医療系社会学関連 基盤研究(C)
    3. 食品添加物を利用した栄養カテーテルの衛生的管理方法の検討 23K16381 2023-04-01 – 2026-03-31 小区分58050:基礎看護学関連 若手研究
    4. 医療的ケア児を対象とした小児在宅歯科医療推進のためのエビデンス構築 23K16214 2023-04-01 – 2027-03-31 小区分57080:社会系歯学関連 若手研究
    5. 口腔乾燥を有する経管栄養者の口腔内細菌叢の経時的変化 22K21015 2022-08-31 – 2024-03-31 0907:口腔科学およびその関連分野 研究活動スタート支援
    6. 集中治療における早期摂食嚥下リハビリテーションの効果 22K11424 2022-04-01 – 2026-03-31 小区分59010:リハビリテーション科学関連 基盤研究(C)
    7. 看護師によるエコーを用いた経鼻胃管の確認方法の確立とその効果 22K11100 2022-04-01 – 2025-03-31 小区分58080:高齢者看護学および地域看護学関連 基盤研究(C)
    8. 若年胃ろう患者に対する摂食嚥下訓練の有効性および胃ろう食が腸内細菌叢に及ぼす影響 22K10096 2022-04-01 – 2025-03-31 小区分57050:補綴系歯学関連 基盤研究(C)
    9. 術前栄養不良患者における投与栄養剤の違いによる手術部位感染軽減効果 21K17649 2021-04-01 – 2025-03-31 小区分59040:栄養学および健康科学関連 若手研究
    10. 経管栄養患者の栄養状態と味・視・嗅覚刺激の関連の検証-糖代謝に注目して 21K17333 2021-04-01 – 2025-03-31 小区分58050:基礎看護学関連 若手研究
    11. 急性疾患入院患者の摂食嚥下障害による経口摂取困難が改善する予測因子の解明 21K17229 2021-04-01 – 2025-03-31 小区分58010:医療管理学および医療系社会学関連 若手研究
    12. 経腸栄養剤の粘性付加に関する検討 21K11704 2021-04-01 – 2025-03-31 小区分59040:栄養学および健康科学関連 基盤研究(C)
    13. 急性期脳卒中患者に対する栄養療法の有用性に関する研究 20K19651 2020-04-01 – 2024-03-31 小区分59040:栄養学および健康科学関連 若手研究
    14. バイオエンジニアリング分析を用いた胃ろう造設後の経口摂取促進プロトコルの開発 20K19237 2020-04-01 – 2022-03-31 小区分58080:高齢者看護学および地域看護学関連 若手研究
    15. 医療的ケア児の経腸栄養製品の長期使用における免疫機能と腸内有機酸への影響 20K10937 2020-04-01 – 2024-03-31 小区分58070:生涯発達看護学関連 基盤研究(C)
    16. 経管投与における薬物血中濃度の比較検討 19K19612 2019-04-01 – 2023-03-31 小区分58060:臨床看護学関連 若手研究
    17. 在宅胃瘻患者の楽しみのための食事をサポートする遠隔支援の有効性に関する研究 19K19336 2019-04-01 – 2021-03-31 小区分57080:社会系歯学関連 若手研究
    18. 療養病床における経管栄養を受ける高齢者の排便ケアに関する包括的質評価指標の開発 19K11114 2019-04-01 – 2025-03-31 小区分58080:高齢者看護学および地域看護学関連 基盤研究(C)
    19. 重症心身障害児における胃瘻からミキサー食注入導入時の食物アレルギー対応の検討 19K11080 2019-04-01 – 2024-03-31 小区分58070:生涯発達看護学関連 基盤研究(C)
    20. 経口栄養の重要性を腸内細菌叢から再確認する-摂食嚥下障害と全身の健康について- 19K10221 2019-04-01 – 2022-03-31 小区分57050:補綴系歯学関連 基盤研究(C)
    21. 経管栄養患者の下痢症状を改善するためのケアプログラムの開発とその効果 16K20821 2016-04-01 – 2020-03-31 若手研究(B)
    22. 経管栄養法の実践的な技術修得に向けた装着型シミュレーターの開発 16K20728 2016-04-01 – 2018-03-31 若手研究(B)
    23. 内服抗がん剤の経管投与時の曝露に配慮した安全な取り扱い方法に関する研究 15K20716 2015-04-01 – 2018-03-31 若手研究(B)
    24. 経管栄養関連器材における衛生管理方法の調査~ガイドライン作成に向けて~ 15K20688 2015-04-01 – 2019-03-31 若手研究(B)
    25. 経口摂取は胃瘻患者の認知機能および身体機能の改善に寄与できるか? 15K11457 2015-04-01 – 2018-03-31 基盤研究(C)
    26. 経管栄養患者の排便状態を改善するための半固形化栄養剤による援助方法の開発 26861952 2014-04-01 – 2017-03-31 若手研究(B)
    27. 重症心身障がい児の胃食道逆流症の病因としての上部消化管motility異常の解明 26462706 2014-04-01 – 2018-03-31 基盤研究(C)
    28. 胃瘻患者に対する口腔ケア介入効果の検討 24792367 2012-04-01 – 2014-03-31 若手研究(B)
    29. 経皮内視鏡的胃瘻造設(PEG)時に行う簡便な嚥下機能検査法の研究 24590901 2012-04-01 – 2016-03-31 基盤研究(C)
    30. 経管栄養が口腔フローラの攪乱に及ぼす影響の解明 23659986 2011 – 2012 挑戦的萌芽研究
    31. 経口摂取に替わる栄養管理の導入を検討する患者・家族の意思決定支援ガイドの開発 22890189 2010 – 2012 研究活動スタート支援
    32. 胃瘻からの半固形経管栄養法の安全で簡便な看護技術の開発 22592622 2010 – 2012 基盤研究(C)
    33. 終末期医療における経管栄養法開始の決定と患者の判断能力 22592434 2010 – 2012 基盤研究(C)
    34. 胃瘻からの半固形化栄養材注入法の機序と臨床的意義の検討 22591436 2010-04-01 – 2015-03-31 基盤研究(C)
    35. 増粘剤を用いた経腸栄養剤の胃内固形化における増粘効果の実験的検討 21929012 2009 奨励研究
    36. 胃瘻からの半固形短時間摂取法は患者のQOLを改善する 19659325 2007 – 2009 挑戦的萌芽研究
    37. 経管栄養剤の半固形化による高齢者の栄養改善・腸内環境改善効果の検討 19500677 2007 – 2008 基盤研究(C)
    38. 経管栄養利用者に対する望ましい介護保険施設ケア実現のための条件整備に関する研究 18790403 2006 – 2007 若手研究(B)
    39. 高齢患者に対する経管栄養法の長期適用において看護実践家が見出しているエビデンス 18592431 2006 – 2007 基盤研究(C)
    40. 要介護老人の終末期における経管栄養に関する研究 18590659 2006 – 2008 基盤研究(C)
    41. 経管栄養施行下の神経疾患患者における逆流性肺炎に対する治療法開発 17659266 2005 – 2007 萌芽研究
    42. 糖質溶液による口腔洗浄が経鼻管栄養患者の口臭に及ぼす影響 17592188 2005 – 2007 基盤研究(C)
    43. 経管栄養患者に食の感覚と満足を付与する方法の開発 15659520 2003 – 2004 萌芽研究
    44. 経管栄養者に対する口腔ケアが口腔内環境および全身状態に与える影響 11771349 1999 – 2000 奨励研究(A)

医学の英語

経管栄養: Enteral nutrition(経口摂取が困難な場合に、チューブを使用して栄養を補給すること全般を指します)

胃ろう: Gastrostomy または Gastrostomy feeding(胃に直接作られた開口部(胃ろう)を介して行う経管栄養)

例文「患者は胃ろうを通じて経管栄養を受けています」→ The patient is receiving enteral nutrition through a gastrostomy.

経管栄養離脱

  1. https://x.com/fhQIVBBBKn76001/status/1861621330157937080
  2. https://x.com/koba_shota/status/1859065158544617493 向精神薬
  3. https://x.com/towa2405/status/1875822580134977899

経管栄養に関するツイート

  1. https://x.com/akaiyukari/status/1801525175995011108
  2. https://x.com/AkiyamaRiha/status/1858442221487304993
  3. https://x.com/syuniconico/status/1787273875157565572
  4. https://x.com/Yjimu9/status/1807771934605939025
  5. https://x.com/k3FmO5tctzYoDfW/status/1871113677702889911
  6. https://x.com/negaisakura/status/1451630462355402756
  7. https://x.com/negaisakura/status/1502262800663867396
  8. https://x.com/ababmata/status/1843096654154711409
  9. https://x.com/chachan615/status/1856972845706088742
  10. https://x.com/kenmama1120/status/1856975542257684834
  11. https://x.com/490DYuRMnUn2WNx/status/1851527777641812424 飢餓テスト

自然老衰と、胃瘻、経管栄養、中心静脈栄養による延命に関して

  1. https://x.com/cshhonda/status/1721291837816864968
  2. https://x.com/xOOY8DTQOYHcDI5/status/1882602658294534280
  3. https://x.com/norea_break/status/1882613014752592132

非劣性試験とは何か?「”有意に劣性であった”とはいえない」との違い

参考

  1. ICR臨床試験入門 がんを対象とした非劣性試験《講師:若林 将史》 「非劣性」について、優越性試験と非劣性試験の比較をし、非劣性試験のデザイン(非劣性マージンの決め方、ハザード比と生存割合、解説対象集団)について解説。非劣性試験に関する topicの紹介。2023年10月に行われましたJCOG臨床試験セミナー中級編。

 

ChatGPTに訊いてみました。

非劣性試験とは?「劣性であることが有意には示されなかった」という意味ではないことについて

非劣性試験(Non-Inferiority Trial)は、医薬品や治療法の効果を比較する際に、新しい治療法が既存の標準治療よりも劣っていないことを証明するために設計される臨床試験です。

以下で、非劣性試験の概要と、「劣性であることが有意には示されなかった」という意味ではない理由について詳しく説明します。


1. 非劣性試験の目的

  • 目的: 新しい治療法(例: 新薬)が、既存の治療法(例: 標準治療)と比較して、一定の範囲内で効果が同等または非劣性であることを確認する。
    • 例: 新薬が副作用が少ない、投与が簡単であるなど、他の利点がある場合に、効果が十分であることを示すために非劣性試験が行われます。

2. 非劣性の基準(マージン)

  • 非劣性マージン(Non-Inferiority Margin, Δ):
    • 新しい治療法が劣っていると判断される許容範囲を事前に定めます。
    • このマージンは、臨床的に意味があるレベルで設定されます。
    • 例えば、既存治療法が成功率80%で、新治療法が成功率75%以上なら非劣性とみなす場合、マージンは5%です。

3. 非劣性試験の結果の解釈

「劣性であることが有意には示されなかった」という誤解

  • 誤解の背景:
    • 非劣性試験の帰無仮説は、「新しい治療法が非劣性ではない(劣っている)」と設定されます。
    • 結果として、帰無仮説が棄却されなかった場合、それは「新しい治療法が劣性であることが証明された」という意味ではありません。
  • 正しい解釈:
    • 「劣性であることが有意には示されなかった」という表現は、非劣性を証明するための試験では不適切です。
    • 非劣性試験の結果は、次のいずれかで示されます:
      1. 非劣性が証明された(非劣性マージン内に収まった)
      2. 非劣性を証明できなかった(信頼区間がマージンを超えた)

4. 非劣性試験の結果例

例1: 非劣性が証明された

  • 非劣性マージンが5%の場合、新治療法の効果と既存治療法の差の95%信頼区間が [-2%, +3%] の範囲に収まった。
  • 結果:
    • 新治療法の効果は既存治療法と統計的に差がないか、許容範囲内で非劣性である。

例2: 非劣性を証明できなかった

  • 信頼区間が [-6%, +4%] の場合、下限が非劣性マージン(-5%)を超えている。
  • 結果:
    • 非劣性が証明されず、新治療法が劣性である可能性が排除できない。

5. 「劣性が有意ではない」と非劣性試験の違い

  • 「劣性であることが有意ではない」という表現は、効果の差が統計的に有意かどうかを評価しているだけです。
  • 非劣性試験では、統計的有意性だけでなく、信頼区間が非劣性マージン内に収まるかどうかが重要です。

結論

非劣性試験の結果は、単に「劣性でないこと」を示すものではありません。非劣性マージンを基準にして、新治療法が許容可能な劣性範囲内であるかどうかを検証するものです。「劣性であることが有意ではない」というのは非劣性試験の結果を正確に表しているとはいえません。

 

非劣性が言えなかった場合に「有意に劣性である」というわけではないことについて

非劣性試験で「非劣性が証明できなかった」場合でも、それが**「有意に劣性である」**ことを示しているわけではありません。この点が非劣性試験の解釈で重要なポイントです。


非劣性試験の結果の可能性

非劣性試験の結果には、主に以下の3つのシナリオがあります:

1. 非劣性が証明された

  • 結果: 新治療法が非劣性マージン(Δ)の範囲内であり、既存治療法と同等の効果を持つと判断される。
  • 解釈: 非劣性が統計的に示された

2. 非劣性を証明できなかったが、有意に劣性とも言えない

  • 結果: 信頼区間が非劣性マージンを超えたが、既存治療法と新治療法の差が統計的に有意とは言えない。
  • 解釈: 非劣性が証明できなかったが、有意に劣性であるとは限らない
    • この場合、新治療法が標準治療より劣る可能性はあるが、それが統計的に確定していない状態。

3. 有意に劣性である

  • 結果: 信頼区間の範囲が完全に非劣性マージンを超え、効果が明確に劣性である。
  • 解釈: 新治療法が既存治療法より統計的に有意に劣っている

例で理解する

  • 非劣性マージン: -5%
  • 効果の差: 新治療法の成功率 – 標準治療の成功率
  • 信頼区間を基に判断:
効果の差 (95%信頼区間) 結果 解釈
[-3%, +2%] 非劣性が証明された 新治療法は標準治療と同等の効果がある。
[-6%, +3%] 非劣性を証明できなかった 劣性の可能性はあるが、有意に劣性とは言えない。
[-7%, -6%] 有意に劣性である 新治療法は標準治療より効果が劣ることが統計的に示された。

重要なポイント

  • 非劣性試験で「非劣性が証明できない」=「有意に劣性である」ではない:
    • 信頼区間が非劣性マージンを超えた場合、新治療法が標準治療より劣る可能性があることを示すが、それが統計的に確定しているわけではない。
  • 有意に劣性であることを示すには:
    • 信頼区間全体が非劣性マージンを超えて劣性側に偏る必要があります。

まとめ

非劣性試験の結果を正確に解釈するには、信頼区間が非劣性マージン内にあるか、マージンを超えたかを慎重に評価する必要があります。「非劣性が証明できない」と「有意に劣性である」は異なる概念です。

 

「有意に劣性」であれば非劣性マージンをしたまわったっということ

**「有意に劣性である」**とは、非劣性マージンを下回るだけでなく、統計的にその劣性が有意であることが示された場合を指します。具体的には、95%信頼区間全体が非劣性マージンの下限を超えて「劣る側」に位置している場合です。


非劣性試験における「有意に劣性」の意味

  • 非劣性マージン(例: -5%)は、許容される範囲を設定したものです。
  • 有意に劣性とは、効果の差の95%信頼区間全体がこのマージンを下回る場合を指します。
    • つまり、「新治療法は既存治療法より統計的に有意に劣っている」と結論付けられます。

信頼区間による解釈の例

前提条件

  • 非劣性マージン: -5%
  • 効果の差: 新治療法の成功率 – 標準治療の成功率

例1: 有意に劣性でない場合

  • 効果の差: [-6%, +2%]
    • 信頼区間が非劣性マージン(-5%)を少し下回る部分を含むが、全体がマージンを下回るわけではない。
    • 解釈: 非劣性が証明できないが、有意に劣性とは言えない。

例2: 有意に劣性である場合

  • 効果の差: [-7%, -6%]
    • 信頼区間全体が非劣性マージン(-5%)を下回っている。
    • 解釈: 新治療法は既存治療法より有意に劣性である。

非劣性試験における結論のフレームワーク

  1. 非劣性が証明された:
    • 信頼区間が非劣性マージン内に収まる。
    • 新治療法が非劣性と判断される。
  2. 非劣性が証明できなかったが有意に劣性ではない:
    • 信頼区間が一部非劣性マージンを下回るが、全体が下回るわけではない。
    • 新治療法が劣る可能性はあるが、統計的に確定していない。
  3. 有意に劣性である:
    • 信頼区間全体が非劣性マージンを下回る。
    • 新治療法は既存治療法より劣ることが統計的に示される。

まとめ

「有意に劣性」とは、新治療法の効果が統計的に明確に非劣性マージンを下回る場合を意味します。非劣性試験では、この「劣性である」か「非劣性である」かを信頼区間を基に慎重に解釈することが重要です。

 

仮に非劣性マージンを設定しなかったら、「劣性」かどうかの判断はどうなるのかについて

非劣性マージンを設定しない場合、「劣性」かどうかの判断は以下のように通常の優越性試験の枠組みで行われます。つまり、比較する2つの治療法の効果の差が統計的に有意かどうかに焦点が当たります。


1. 非劣性マージンがない場合の試験

  • 非劣性マージン(Δ)がない状態では、治療効果の差を評価する基準がなく、単に「劣性かどうか」を判断するためには、効果の差がゼロを基準に評価されます。

仮定される統計モデル

  1. 帰無仮説: 新治療法は標準治療法より劣るか同等(効果の差 ≤ 0)。
  2. 対立仮説: 新治療法は標準治療法より優れる(効果の差 > 0)。

2. 結果の解釈

  • 信頼区間をゼロ基準で解釈:
    • 95%信頼区間が0を完全に下回る場合:
      • 新治療法が統計的に劣性であると判断されます。
    • 信頼区間が0を含む場合:
      • 新治療法が標準治療法より有意に劣性とは言えない
    • 信頼区間が0を完全に上回る場合:
      • 新治療法が統計的に優れていると判断されます。

3. 非劣性試験と優越性試験の違い

  • 非劣性試験:
    • 非劣性マージンを設定し、標準治療より一定の範囲内で劣っていないことを証明する。
    • 信頼区間の下限が非劣性マージン(Δ)を超えることが非劣性の証明基準。
  • 優越性試験:
    • 効果の差が0を超えるかどうかに注目。
    • 信頼区間全体が0を超えれば、統計的に優れていると判断。

4. 非劣性マージンがない場合のリスク

非劣性試験において非劣性マージンを設定しないと、以下のリスクが生じます:

  1. 曖昧な結論になる:
    • 結果が劣性かどうか判断できない場合が多く、治療法の評価が不十分になります。
  2. 臨床的に意味のある基準を失う:
    • 非劣性試験の目的は、新治療法が許容範囲内で効果があるかを判断することです。
    • 非劣性マージンなしでは、「臨床的に重要な劣性かどうか」を評価できません。

5. 実際の試験設計では…

非劣性試験では、臨床的に意味がある基準を持たないと結論が曖昧になるため、ほぼ必ず非劣性マージンを設定します。そのため、非劣性マージンを設定しない場合、優越性試験として扱う方が合理的です。


まとめ

非劣性マージンを設定しない場合、「劣性」かどうかは、効果の差の信頼区間がゼロ基準で評価されます。しかし、非劣性試験の目的を達成するには非劣性マージンを設定するのが必須であり、設定しない場合は優越性試験として設計し直す方が適切です。

 

非劣性マージンを大きく設定しておけば、じつは有意に劣性だけど、非劣性ではなかったと言い張れるのかについて

理論的には、そのような解釈が可能です。ただし、非劣性試験で非劣性マージンを不適切に大きく設定することは科学的にも倫理的にも問題であり、通常は厳格な基準やガイドラインが適用されるため、簡単に「非劣性ではなかったと言い張る」ことは難しいです。


非劣性マージンの設定とその影響

  1. 非劣性マージンの意味:
    • 非劣性マージンは、新治療法が既存治療法よりどの程度劣っていても「臨床的に許容できる」とみなされる範囲を示します。
    • 大きすぎる非劣性マージンを設定すると、実際には新治療法が有意に劣性であっても、「非劣性ではない」と主張できる結果になりがちです。
  2. 不適切なマージン設定の影響:
    • 非劣性マージンが臨床的な妥当性を欠いた場合、統計的に非劣性が証明されても、その結論は科学的・倫理的に信頼できません。

非劣性マージンの設定基準

非劣性マージンを恣意的に設定することを防ぐために、以下の基準が用いられます:

  1. 臨床的妥当性:
    • マージンは臨床的な観点から、「患者にとって許容できる劣性の範囲」として設定されます。
    • 例えば、治療成功率が既存治療法で90%の場合、非劣性マージンを20%(70%まで許容)とするのは臨床的に許容されません。
  2. 統計的根拠:
    • 過去の臨床試験データやメタアナリシスを基に、標準治療法の効果の変動範囲を考慮して設定します。
  3. 規制当局のガイドライン:
    • FDAやEMA(欧州医薬品庁)は、非劣性試験の設計やマージン設定に関する詳細なガイドラインを定めています。
    • マージンが大きすぎる場合、承認を得ることが困難です。

マージン設定の不正使用のリスク

  • 可能性として:
    • マージンを大きく設定することで、新治療法が有意に劣性である場合でも、「非劣性ではない」と主張する余地が生まれる。
    • ただし、このような設計は倫理的に問題視され、研究結果や論文が批判を受ける可能性が高いです。
  • 現実的な制約:
    • 審査機関や倫理委員会が試験設計の段階で非劣性マージンの妥当性をチェックするため、恣意的な設定は難しい。
    • 読者や臨床医が試験結果を受け入れるかどうかも影響する。

例: 非劣性マージンの影響

シナリオ1: 適切なマージン(-5%)

  • 効果の差: [-6%, -3%]
    • 新治療法は標準治療法より劣性(非劣性マージンを下回る)。
    • 結論: 非劣性ではない。

シナリオ2: 不適切に大きなマージン(-10%)

  • 効果の差: [-6%, -3%]
    • 非劣性マージン内に収まるため、「非劣性」と主張できる。
    • 問題点: 実際には新治療法が標準治療法より劣性であることが隠される。

結論

非劣性マージンを不適切に大きく設定すれば、「有意に劣性」である場合でも「非劣性ではない」と主張する余地が生まれます。しかし、臨床試験におけるマージン設定には厳格な基準があり、恣意的な操作は倫理的にも科学的にも認められません。

非劣性試験導入の歴史

非劣性試験(Non-Inferiority Trials)は、医薬品や治療法の評価において比較的近年になって広く採用されるようになった試験デザインで、その背景には医療技術の進歩や倫理的な配慮、そして規制当局の要件の変化が大きく影響しています。以下にその歴史と普及の背景を説明します。


1. 非劣性試験の起源

  • 起源と初期の試験デザイン:
    • 非劣性試験の考え方は、優越性試験と対照試験の発展に伴って20世紀後半に登場しました。
    • 初期の臨床試験では、新薬や治療法が既存治療より優れていることを示すことが主目的でした。しかし、新たな治療法が必ずしも「既存治療より優れる」必要がないケースも増えてきました。
  • 特定の状況での必要性:
    • 新治療法が、副作用の軽減、簡便性の向上、費用削減といった利点を持つ場合、効果が標準治療と同等であれば臨床的に価値があるとみなされることがあります。
    • このような状況で、「既存治療より劣っていない」ことを証明する非劣性試験が必要になりました。

2. 非劣性試験の普及のきっかけ

  • 20世紀末の変化:
    • 非劣性試験が一般的になったのは、1990年代以降です。この頃、規制当局が新薬承認の基準として非劣性試験を受け入れ始めたことが大きな要因です。
  • 規制当局のガイドライン:
    • 米国食品医薬品局(FDA)や欧州医薬品庁(EMA)は、非劣性試験に関する明確なガイドラインを策定しました。
    • これにより、非劣性試験の設計、非劣性マージンの設定、結果の解釈に関する標準化が進みました。

3. 非劣性試験が広がった理由

  1. 倫理的な配慮:
    • 臨床試験において、プラセボ群を設けることが難しい疾患(例: がんや心血管疾患)では、標準治療を対照群とする非劣性試験が必要でした。
    • 特に致命的な疾患や重篤な疾患では、プラセボを使用することが倫理的に許容されないため、非劣性試験が重要な役割を果たしました。
  2. 治療効果が確立された疾患:
    • 新しい治療法が登場しても、既存治療が非常に効果的である場合、新治療法が既存治療より優れていることを証明するのは難しいケースがあります。
    • このような場合、非劣性試験が選ばれることが増えました。
  3. ジェネリック医薬品の増加:
    • ジェネリック医薬品やバイオシミラー(バイオ医薬品の類似薬)の承認プロセスでは、非劣性試験が広く使われるようになりました。

4. 主な歴史的な出来事

  • 1980年代: 非劣性試験の概念が臨床試験の文献で登場し始める。
  • 1990年代: FDAやEMAが非劣性試験の設計に関するガイドラインを発行。
  • 2000年代以降:
    • 非劣性試験が新薬承認の標準的なデザインとして採用される。
    • 特に、抗菌薬、抗ウイルス薬、抗がん剤の分野で広く利用。

5. 現在の状況

  • 多様な疾患領域で採用:
    • 非劣性試験は現在、感染症、心血管疾患、精神疾患、がん、免疫疾患など幅広い分野で利用されています。
  • 非劣性試験の課題:
    • 非劣性マージンの設定が臨床的に妥当でなければ、試験結果の信頼性が損なわれるリスクがあります。
    • 被験者数が優越性試験より多くなる場合が多いため、コストと時間が増加することがあります。

まとめ

  • 非劣性試験の一般化は、主に1990年代以降
  • 規制当局のガイドラインと倫理的な配慮が、非劣性試験の普及を促しました。
  • 現在では、特定の条件下で新薬や治療法を評価する上で欠かせない試験デザインとなっています。