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血管の病気:大血管症、細小血管症、大血管炎、中血管炎、小血管炎

大血管症、細小血管症とは?

大血管症(だいけっかんしょう)と細小血管症(さいしょうけっかんしょう)は、血管の太さによって分類される血管の病気で、特に糖尿病の合併症としてよく知られています。高血糖の状態が続くことで、全身の血管がダメージを受けることが主な原因です。


## 大血管症 (Macroangiopathy)

大血管症は、心臓や脳、足などにある太い血管が動脈硬化(どうみゃくこうか)を起こし、狭くなったり詰まったりする病気です。動脈硬化は、高血糖に加えて高血圧、脂質異常症(悪玉コレステロールの増加など)、肥満、喫煙などが重なることで進行が加速します。

主な病気

  • 虚血性心疾患(きょけつせいしんしっかん): 心臓に血液を送る冠動脈(かんどうみゃく)が狭くなる**狭心症(きょうしんしょう)や、詰まってしまう心筋梗塞(しんきんこうそく)**が含まれます。胸の痛みや圧迫感が特徴です。
  • 脳血管障害(のうけっかんしょうがい): 脳の血管が詰まる**脳梗塞(のうこうそく)**や、破れる脳出血などがあります。手足の麻痺や言語障害などの症状が現れます。
  • 末梢動脈疾患(まっしょうどうみゃくしっかん): 主に足の血管が動脈硬化を起こし、血流が悪くなる病気です。歩くと足が痛む、足が冷たい、しびれるなどの症状が見られ、進行すると潰瘍や壊疽(えそ)に至ることもあります。

## 細小血管症 (Microangiopathy)

細小血管症は、目や腎臓、神経などにある非常に**細い血管(毛細血管)**が傷ついて、その働きが悪くなる病気です。大血管症と比べて、より糖尿病に特有の合併症と言われています。これらは自覚症状がないまま進行することが多いため、定期的な検査が非常に重要です。

主な病気(糖尿病の三大合併症)

  • 糖尿病網膜症(とうにょうびょうもうまくしょう): 目の奥にある網膜(もうまく)の細い血管が傷つき、視力低下をきたす病気です。進行すると失明に至る可能性があり、成人の中途失明原因の上位を占めています。「めじ」の「」にあたります(視覚の「し」)。
  • 糖尿病腎症(とうにょうびょうじんしょう): 腎臓で血液をろ過する役割を持つ毛細血管の塊(糸球体)が傷つく病気です。初期は無症状ですが、進行すると体内の老廃物を尿として排出できなくなり、人工透析が必要になることがあります。「しじ」の「」ではありませんが、「しめ」の「」にあたります(腎臓の「じ」)。
  • 糖尿病神経障害(とうにょうびょうしんけいしょうがい): 手足の末梢神経や、内臓の働きを調整する自律神経が傷つく病気です。足先のしびれや痛み、感覚が鈍くなるなどの症状が現れます。感覚が鈍ることで怪我に気づきにくくなることもあります。「しめ」の「」と「」以外の「」にあたります(神経の「し」)。

まとめ

大血管症 細小血管症
影響を受ける血管 太い血管(動脈) 細い血管(毛細血管)
主な原因 高血糖、高血圧、脂質異常症などによる動脈硬化 長期間の高血糖
代表的な病気 心筋梗塞、脳梗塞、末梢動脈疾患 糖尿病網膜症、糖尿病腎症、糖尿病神経障害

大血管症と細小血管症は、どちらも生命や生活の質(QOL)に深刻な影響を及ぼす可能性があります。予防や進行を遅らせるためには、血糖値のコントロールを基本として、血圧や脂質の管理、禁煙などの生活習慣の改善が不可欠です。

(Gemini 2.5 Pro)

中血管症という言葉は無いようです。

中血管症ってある?

はい、ご質問ありがとうございます。良い点に気づかれました。

結論から言うと、「大血管症」や「細小血管症」のように一般的に使われる**「中血管症(ちゅうけっかんしょう)」という医学用語は、通常ありません。**

しかし、血管の太さで病気を分類する考え方は存在し、特に**「血管炎(けっかんえん)」**という自己免疫に関連する病気のグループでは、中くらいの太さの血管が侵されるものが明確に分類されています。

「中血管炎」という分類

大血管症」や「細小血管症」が主に糖尿病の合併症として、動脈硬化や高血糖による血管のダメージを指すのに対し、「血管炎」は血管そのものに炎症が起きる病気です。

この血管炎は、炎症が起きる血管の太さによって「大血管炎」「中血管炎」「小血管炎」に分類されます。

中血管炎(Medium-vessel vasculitis)とは

主に、各臓器につながる動脈など、中くらいのサイズの動脈に炎症が起こる病気の総称です。

代表的な病気

  • 結節性多発動脈炎(けっせつせいたはつどうみゃくえん): 全身の中くらいの太さの動脈に炎症が起こり、血管が狭くなったり、瘤(こぶ)ができたりします。発熱、体重減少、関節痛、筋肉痛、皮膚の症状など、多彩な症状が出ます。
  • 川崎病(かわさきびょう): 主に4歳以下の乳幼児に発症する病気で、全身の中くらいの血管、特に心臓に栄養を送る冠動脈(かんどうみゃく)に炎症を起こしやすいことが特徴です。高熱、目の充血、発疹、手足の腫れなどの症状が現れます。

まとめ

  • 「中血管症」という言葉は一般的ではない。
  • 「大血管症」「細小血管症」は主に糖尿病合併症の文脈で使われる。
  • 血管の太さによる分類は存在し、特に**「血管炎」の領域で「中血管炎」**という分類が用いられる。
  • 「中血管炎」には、結節性多発動脈炎や川崎病といった特定の病気が含まれる。

したがって、「中くらいの血管の病気」という概念は確かに存在しますが、それを「中血管症」と呼ぶことは稀(まれ)である、とご理解ください。

(Gemini 2.5 Pro)

大血管炎、中血管炎、小血管炎とは?

血管炎(けっかんえん)とは、血管の壁に炎症が起こる病気の総称です。免疫システムの異常により、自身の血管を攻撃してしまうことで発症すると考えられています。

血管炎は、炎症が起きる血管の「太さ」によって、主に大血管炎中血管炎小血管炎の3つに分類されます。この分類は、現れる症状や影響を受ける臓器を理解する上で非常に重要です。

大血管炎・中血管炎・小血管炎の主な違い

分類 大血管炎 (Large-Vessel Vasculitis) 中血管炎 (Medium-Vessel Vasculitis) 小血管炎 (Small-Vessel Vasculitis)
侵される血管 大動脈とその主要な分枝 (例:心臓から出てすぐの太い動脈、首や腕へ向かう動脈) 各臓器へ血液を送る中くらいの動脈 (例:腎臓、肝臓、腸の動脈、心臓の冠動脈) 臓器の中にある細い動脈、毛細血管、細い静脈
代表的な病気 高安動脈炎(たかやすどうみゃくえん) • 巨細胞性動脈炎(きょさいぼうせいどうみゃくえん) 結節性多発動脈炎(けっせつせいたはつどうみゃくえん) • 川崎病(かわさきびょう) ANCA関連血管炎  - 顕微鏡的多発血管炎  - 多発血管炎性肉芽腫症  - 好酸球性多発血管炎性肉芽腫症 • IgA血管炎
好発年齢層 高安動脈炎: 40歳以下の若い女性 巨細胞性動脈炎: 50歳以上の高齢者 結節性多発動脈炎: 中年 川崎病: 主に4歳以下の乳幼児 中年~高齢者に多い
主な症状・特徴 血管が詰まることによる虚血症状が中心腕や足: 脈が触れにくい、血圧の左右差、手足のだるさ・冷感 • 頭部: めまい、失神、頭痛 • 顎・首: 噛むと顎が疲れる(顎跛行)、首の痛み • 視覚: 一時的な視力低下、失明 全身症状と各臓器の多彩な症状全身: 発熱、体重減少、倦怠感 • 皮膚: 皮下結節、潰瘍、網目状の皮疹 • 神経: 手足のしびれ、麻痺(多発単神経炎) • 消化器: 腹痛、下血 • 腎臓: 高血圧、腎梗塞 • 心臓: (川崎病で)冠動脈瘤 皮膚・腎臓・肺の症状が特徴的皮膚: 点状出血(紫斑)、特に下肢に多い • 腎臓: 血尿、蛋白尿(急速進行性糸球体腎炎) • : 咳、血痰、呼吸困難(肺胞出血) • 鼻・耳: 鼻血、中耳炎、鞍鼻(鼻が低くなる) • 関節: 関節痛

各分類の詳細

1. 大血管炎

体の中心となる太い血管が「水道管の元栓」のように炎症を起こし、その先へ血液が流れにくくなることで症状が出ます。

  • 高安動脈炎: 若い女性に多く、「脈なし病」とも呼ばれます。腕の脈が弱くなったり、血圧に左右差が出たりするのが特徴です。
  • 巨細胞性動脈炎: 高齢者に多く、こめかみを通る側頭動脈の炎症による頭痛や、ものを噛むときの顎の痛みなどが特徴的です。視力障害をきたすことがあるため、早期の治療が重要です。

2. 中血管炎

各臓器に枝分かれする中くらいの動脈が障害されます。そのため、全身の様々な臓器に多彩な症状が現れるのが特徴です。

  • 結節性多発動脈炎: 発熱や体重減少といった全身症状とともに、皮膚の結節や潰瘍、手足のしびれなどがみられます。
  • 川崎病: 乳幼児に多く、高熱や発疹などに加え、心臓の冠動脈に瘤(こぶ)ができることがあるため、注意深い経過観察が必要です。

3. 小血管炎

臓器の中の非常に細い血管が障害されます。特に毛細血管が豊富な腎臓、そして皮膚に症状が出やすいのが特徴です。

  • ANCA関連血管炎: 自己抗体の一種である「ANCA」が関連する血管炎の総称です。腎臓の機能が急激に悪化する「急速進行性糸球体腎炎」や、肺からの出血(肺胞出血)など、重篤な臓器障害を起こしやすい病気です。
  • IgA血管炎: 子供に多く見られ、足の紫斑、腹痛、関節痛が特徴的です。以前はアレルギー性紫斑病やヘノッホ・シェーンライン紫斑病と呼ばれていました。

このように、血管炎は侵される血管の太さによって、原因となる病気や症状が大きく異なります。いずれも専門医による正確な診断と、ステロイドや免疫抑制薬を用いた適切な治療が必要な病気です。

(Gemini 2.5 Pro)

脳症、腎症、神経症などの「~症」の意味? 

医学における「~症」という語尾は、英語でいう -pathy, -osis, syndrome などに相当し、病態や状態を示す接尾辞です。ただし、厳密な定義は一つではなく、語ごとに使い分けがあります。以下に整理します。


1. 基本的な意味

  • **「症」**は、病気・病態・症候群などを指す一般的な接尾辞
  • 「病」や「疾患」よりも幅が広く、「病気として確立したもの」だけでなく「ある病態や症候が続いている状態」を含みます。

2. 主な用法のパターン

(1) 病態・組織障害を意味する場合

  • 脳症(encephalopathy)
    脳の機能障害を広く指す。原因は低酸素、感染、代謝異常、中毒など多様。必ずしも独立した疾患名ではなく、「脳に異常が出ている状態」の総称。
  • 腎症(nephropathy)
    腎臓に起こる病変の総称。糖尿病性腎症、IgA腎症など特定の病因・病態に基づいた分類もある。

(2) 症候群を意味する場合

  • クッシング症候群(Cushing syndrome)
    → 副腎皮質ホルモン過剰による一連の臨床症状群。必ずしも単一の病因ではなく、症候のまとまりを指す。
  • ネフローゼ症候群(nephrotic syndrome)
    → 蛋白尿、低アルブミン血症、浮腫、高脂血症を特徴とする症候群。

(3) 比較的軽度の状態や症状を意味する場合

  • 更年期症(climacteric symptoms)
    → 更年期にみられる自覚症状の総称で、「病」ほど病的確定感はない。
  • かぜ症候群(common cold syndrome)
    → 上気道炎を中心とした症状群の総称。

3. 「病」「疾患」との違い

  • 病(disease)
    → 原因や病理が比較的明確で、医学的に疾患として確立しているもの。例:腎臓病、心臓病。
  • 疾患(disorder, disease)
    → 「病」とほぼ同義だが、広く機能障害まで含めるニュアンス。
  • 症(syndrome, -pathy, -osis)
    → 必ずしも原因が一つに特定されない。病的な状態や症候群を幅広く表す。

まとめ

  • 「~症」は、臓器や組織に病変がある状態(脳症、腎症)や、複数の症候をまとめたもの(症候群)を指す。
  • 「病」や「疾患」よりも概念が広く、必ずしも単一の原因疾患を意味しない。
  • したがって、「脳症」=「脳に異常が出ている状態」、「腎症」=「腎臓に異常が出ている状態」と理解するのが医学的に正確です。

 

~osis の語源

「~症」に対応することの多い英語接尾辞 -osis には語源があります。


1. 語源

  • -osis古代ギリシア語-ωσις (-ōsis) に由来します。
  • 元来は「ある動作・作用の過程」「その結果生じた状態」を意味しました。
  • これがラテン語医学用語に取り込まれ、**「病的な状態・異常な過程」**を表すようになります。

2. 医学用語での意味

医学で -osis は以下のようなニュアンスを持ちます:

  1. 病的状態・異常な過程
    • neurosis(神経症)
    • tuberculosis(結核症)
  2. 増加・過剰(数や量の異常)
    • leukocytosis(白血球増加症)
    • thrombosis(血栓症)
  3. 変性・壊死などの病変
    • necrosis(壊死)
    • fibrosis(線維化)

つまり、「正常から逸脱した、持続的・進行的な状態」を指すのが -osis です。


3. 他の接尾辞との違い

  • -itis(ギリシア語 -ῖτις
    → 炎症を意味。例:hepatitis(肝炎)
  • -oma(ギリシア語 -ωμα
    → 腫瘍・塊を意味。例:carcinoma(癌腫)
  • -pathy(ギリシア語 πάθος pathos = suffering, disease)
    → 病気全般、特に原因不明の病的状態。例:neuropathy(神経障害)

4. 日本語の「~症」との対応

日本語の「~症」は -osis のほか、-pathy, -ism, syndrome などをまとめて訳すことも多いです。
例:

  • sclerosis → 硬化症
  • nephropathy → 腎症
  • Down syndrome → ダウン症

🔑 まとめると:
-osis は古代ギリシア語に由来し、「過程→その結果の状態」を意味した。医学では「病的状態」「増加・異常」「変性」を指す接尾辞で、日本語では広く「~症」と訳される。

 

parabaiosis

parabiosis(パラバイオーシス)という語を分解して説明しますね。


1. 語源の分解

  • para-(παρά)
    • ギリシア語由来の接頭辞
    • 意味:そばに、並んで、隣接して
    • 英語の parallel(平行な), parasite(そばに食らいつくもの)などと同じ語源。
  • -bio-(βίος, bios)
    • ギリシア語で「生命」を意味。
    • biology(生物学), symbiosis(共生)などで使われる。
  • -sis(-σις, -sis / -osis の短縮形)
    • 「状態」「過程」を意味する接尾辞。
    • analysis(分解の過程), necrosis(壊死の状態)などと同じ。

2. 全体の意味

したがって parabiosis は直訳すると:

  • 「並んだ生命の状態」
  • 「二つの生体がそばで一緒に生きている状態」

3. 医学・生物学での用法

  • 実験動物学では、二匹の動物を外科的に連結して血液循環を共有させる手法を指します。
    • 例:マウスの parabiosis 実験 → 老若マウスを連結し、血液因子の影響を研究。
  • 広義には、二つの生体が機能的に結合した状態を意味することもあります。

4. まとめ

parabiosis = para(並んで) + bio(生命) + sis(状態) → 「二つの生体が一緒に存在し、生命活動を共有している状態」
実験動物学では「連合生体」「血行共有モデル」として使われる専門用語です。


「parabiosis」の語尾が -osis なのか -sis なのかは、実はギリシア語由来の接尾辞のバリエーションに関わります。


1. ギリシア語の語尾

  • -σις (-sis)
    • 古典ギリシア語で「行為・過程・状態」を表す基本的な接尾辞。
    • 例:analysis(分析=分ける過程)、synthesis(合成=組み立てる過程)。
  • -ωσις (-osis)
    • -sis の強調形・拡張形で、「その行為の結果として生じた状態」「病的状態」を表すようになる。
    • 医学用語に多く入った形。
    • 例:necrosis(壊死)、fibrosis(線維化)。

2. 「parabiosis」の場合

  • 語尾は -biosis
  • これは bio(生命) + -sis(状態) の組み合わせ。
  • つまり、「生きている状態」や「生命活動の様式」というニュアンス。
  • symbiosis(共生)、endobiosis(内部共生)、epibiosis(外部共生)などと同じ系列です。

👉 したがって parabiosis の語尾は -sis
(医学的に「病的状態」を表す -osis ではなく、もともと「生きる様式」を表す -sis 系です)


3. 整理

  • -sis → 行為や状態(analysis, synthesis, symbiosis, parabiosis)
  • -osis → 特に病的・異常な状態(necrosis, fibrosis, leukocytosis)

🔑 結論
parabiosis の語尾は -sis であり、「生命活動の様式・状態」を意味する。-osis は病態を表す別系列。


 

homeostasis

homeostasis(ホメオスタシス) もギリシア語由来で、分解すると意味がよく見えてきます。


1. 語源の分解

  • homeo- (ὁμοιο-)
    • ギリシア語 homoios = 「同じ」「似た」「均一な」
    • 例:homogeneous(均質の)、homonym(同音異義語)。
  • -stasis (στάσις)
    • ギリシア語 stasis = 「立つこと」「停止」「安定した状態」
    • 例:hemostasis(止血)、metastasis(転移=移って立つ)。

2. 全体の意味

  • homeostasis = homeo(同じ) + stasis(安定状態)
  • 直訳すると「同じ状態を保つこと」。

つまり、外界の変動にかかわらず内部環境を一定に保つ仕組みを指します。


3. 生理学的定義

  • 米国の生理学者 Walter Cannon(1930年代)が広めた概念。
  • 体温、血糖値、血圧、pH などを一定範囲に保つ調節機構。
  • 単なる「静止」ではなく、動的平衡(dynamic equilibrium) という点が重要です。

4. 類似語との比較

  • hemostasis = hemo(血)+ stasis(止まる)→ 止血
  • metastasis = meta(移動)+ stasis(立つ)→ がんの転移

これらと同じ「-stasis(安定・停止)」の系列に属しています。


🔑 結論
homeostasis = 「同じ状態を保つこと」 → 生体が内部環境を一定に維持する動的な調節機構

 

homeostasis の語尾部分 -stasis は、さらに二つの要素に分解できます。


1. 語源の二重構造

  • sta-(στά-)
    • ギリシア語動詞 ἵστημι (histēmi) 「立つ」「立たせる」「止める」に由来する語幹。
    • 英語でも stand, state, stable, static などに残っています。
  • -sis(-σις)
    • ギリシア語の名詞化接尾辞。「〜すること」「〜の状態」。
    • analysis(分解すること)、synthesis(合成すること)と同じ。

2. 合わせると

  • sta- + -sis = stasis
    → 「立っていること」「安定していること」「止まっている状態」。

3. homeo- と結合した意味

  • homeostasis = homeo(同じ) + sta(立つ)+ sis(状態)
  • 直訳すると:
    「同じ状態に立ち止まっていること」
  • 生理学的には:
    「環境が変化しても体内環境を一定に保ち続ける動的平衡」

4. 関連語との比較

  • hemostasis = hemo(血)+ stasis(止まる状態) → 止血
  • metastasis = meta(移動して)+ stasis(立つ状態) → 転移
  • hypostasis = hypo(下に)+ stasis → 沈下、沈殿

🔑 まとめ

  • stasis 自体が sta-(立つ)+ -sis(状態) に分解できる。
  • よって homeostasis = homeo(同じ)+ sta(立つ)+ sis(状態) → 「同じ状態を保ち立っていること」 という語形成になります。

(ChatGPT 5)

 

以上の説明から、-osisに関する説明を一言でまとめると、-sisは、「行為・過程・状態」で、 -sis の強調形・拡張形である-osisは、「その行為の結果として生じた状態」「病的状態」という意味でした。

 

病態生化学の教科書

病態生化学というタイトルの教科書は最近はあまり出版されていないようです。臨床生化学という呼び名の方が好まれるのかもしれません。

 

マークス臨床生化学 横溝 岳彦 | 2020/9/14

ビジュアル パニーニ臨床生化学(原書第2版) ビジュアル パニーニ臨床生化学(原書第2版) 横溝岳彦 | 2023/10/12

病態生化学解明 : 代謝メカニズムから疾患を科学する / 藤森功著 出版者 東京 : 京都廣川書店 出版年 2013.8

臨床研究における被検者の人権保護

1974年 米国連邦議会は「国家研究規制法National Research Act」制定「生物医学・行動科学研究における研究対象者保護のための国家委員会The National Commission for the Protection of Human Subjects of Biomedical and Behavioral Research」設置 ベルモント・レポートThe Belmont Report(正式名称「研究対象者保護のための倫理原則およびガイドラインThe Belmont Report–Ethical Principles and Guidelines for the Protection of Human Subjects of Research」)

1972年、タスキギー事件

1964年 World Medical Association; WMA「ヘルシンキ宣言:ヒトを対象とする医学研究の倫理原則」

1947年 ニュルンベルク綱領Nuremberg Code

20世紀初頭 優生学的思想 断種法 米国では法律に基づいて約10万名に不妊手術。日本でも約16,500人が強制的に不妊手術

1900年代初頭 Walter Reed(1851-1902)黄熱病を発症したことのない患者を対象に、黄熱病患者を吸血した蚊に皮膚を刺させたり、黄熱病患者の血液を注射する実験。ボランティア被験者にはリスクを説明、文書による同意。

1897年 Giuseppe Sanarelli(1864-1940)黄熱病患者血液を患者5名に注射したところ全員黄熱病を発症しうち3名が死亡

1885年 Louis Pasteur(1822-1895)狂犬病ワクチンを9歳児に接種

1874年 Roberts Bartholow(1831-1904)30歳の精神遅延患者の頭蓋骨にがん性潰瘍のため開いていた2インチの穴から電極を入れ脳の異なる部位を電気刺激したときに体にさまざまな反応が生じることを発見。患者は実験ののち昏睡に陥り数日後に死亡。

1796年 Edward Jenner(1749-1823)牛痘の膿疱から得た液体を8歳男児にに接種

1628年 William Harvey(1578-1657)『心臓と血液の運動』

1543年 Andreas Vesalius(1514-1564)『ファブリカ(人体の構造に関する7つの書)』

Tom L. Beauchamp、James F. Childress『生命医学倫理』「研究被験者が新薬の試験に志願するとき、彼らは他者の目的に対する手段として扱われていますが、彼らはその事柄に関する選択の自由を有し、自分の生命に関する支配を保持しています。カントは、同意を与えた人をこのように用いることは禁止していません。」

Immanuel Kant「汝の人格の中にも他のすべての人の人格の中にもある人間性を、汝がいつも同時に目的として用い、決して単に手段としてのみ用いない、というようなふうに行為せよ。」

Hippocrates(460ごろ – 375ごろ BCE)『ヒポクラテスの誓い』「私の能力と判断力の限りを尽くして食養生法を施します。それは患者の福祉のためにするのであり、加害と不正のためにはしないように慎みます。」

研究者にとって論文とは?

研究者同士の会話では、「最近、論文書いてる?」「論文、最近出てないんだよなぁ。」「彼は、論文がないからね。」「論文、出さなきゃ。」などと、論文に関係した言葉が頻繁に口にされます。研究者にとって論文とは、研究者として生きるために必要な「存在意義」みたいなものです。論文を書いていない=研究者として認められない という厳しい見方をされることは珍しくありません。いい論文を出せば、職を得たり、昇進したり、研究費を獲得したりと様々な場面で、良い影響があります。いい論文が出せるかどうかで、研究者としてのキャリアが開けるかどうかが決まるといっても過言ではないでしょう。自分のポストや研究費の獲得に直結するのですから、研究者にとっては論文が出せるかどうか、もっといえば、ファーストオーサーやコレスポんディングオーサーで論文を出せるかどうかは切実な問題になります。キャリアのためには、2番目や3番目に単に名前が挟み込まれていてもあまり意味がないのです。

そうはいっても、論文は数が問われることもあるので、共著者になるべきなのに共著者にしてもらえなかった場合に、もめることはあります。その論文への貢献度がどれくらいかは人によって感じ方が異なるため、この人は謝辞で十分かと思っていても、その人は謝辞じゃなくて共著者じゃないとおかしいと考えるなどの行き違いはありがちなことです。

よく、研究費を獲得しただけの人は著者に加えてはならない、それはギフトオーサーシップだと教科書的には言われますが、これは全く現実的ではありません。研究費を獲得したのであればその人は当然その研究に関わったはずで、著者にならないということはあり得ないのです。その研究費の報告書に、研究費を貰った人の名前がない論文が成果として書かれていたら、それはおかしなことです。ボスが研究費を獲得し、中ボスが研究グループを率いて、コレスポンディングオーサーとして研究を統括していた場合に、ボスがラストオーサーになることはごく普通に見られます。中ボスの人事権はボスが握っているのですから、中ボスがラストになるというようなことも、そうそうありません。

研究に関連する法律や指針

研究は、好き勝手に行ってよいものではありません。種々の規定を順守してはじめて研究の実施が許されるのです。

医科学研究に関連する法律

  1. 人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針(令和3年6月30日施行)
  2. 遺伝子治療等臨床研究に関する指針(平成29年4月7日一部改正)
  3. 再生医療等の安全性の確保等に関する法律(平成26年11月25日施行)

研究インテグリティとは?

何年か前から研究インテグリティという言葉を聞くようになり、研究大学における日常的な単語になりました。某国への研究情報流出などが問題になって国が対応した結果だと理解しています。

研究インテグリティの英語はresearch integrityかと思いきや、そうではないようです。research integrityに対応する日本語は、研究公正であり、研究インテグリティに内容的に対応する言葉はResearch SecurityもしくはNational Securityなのだそう。

研究公正:Research Integrity

研究インテグリティ:~研究セキュリティ(Research Security)

といったところでしょうか。想定されるのは、とある国が日本の研究者に資金提供をして見返に研究成果を持っていく、そして、場合によってはそれを軍事利用するといったことだと思います。

糖尿病の原因についての 1969年当時の状況(仮説)

1969年頃、糖尿病の原因は単一ではなく、特に**若年性(現在の1型)成人型(現在の2型)**で異なるメカニズムが考えられ始めていました。当時の有力な仮説は、ご提示の「膵臓の局所的異常」説と「全身循環因子の異常」説の双方が、それぞれの病型に関連して議論されていました。


## 膵臓の局所的異常説

この説は、膵臓のランゲルハンス島にあるβ細胞が破壊されたり、機能が低下したりすることで、インスリンの分泌が絶対的に不足するという考え方です。

  • 当時の位置づけ: こちらは古くからの伝統的な説であり、特にインスリンが発見された1921年以降、糖尿病の基本的な原因として広く受け入れられていました。
  • 主な対象: 特に、若くして発症し、インスリン注射が必須となる**若年性糖尿病(現在の1型糖尿病)**の主な原因だと考えられていました。剖検などにより、若年性糖尿病患者の膵臓ではβ細胞が著しく減少していることが確認されており、この説の強力な根拠となっていました。

## 全身循環因子の異常説

この説は、インスリンの分泌は保たれている、あるいはむしろ過剰であるにもかかわらず、血液中にインスリンの働きを阻害する何らかの因子(インスリン拮抗物質など)が存在するために高血糖が引き起こされるという考え方です。

  • 当時の位置づけ: 1960年代に入り、インスリン濃度を血液中から直接測定できる「ラジオイムノアッセイ(RIA法)」が開発されたことで、この説が非常に有力となりました。この技術により、肥満を伴う成人型糖尿病患者の多くで、血中インスリン濃度が低下していない、むしろ健常者よりも高い場合があることが発見されたのです。
  • 主な対象: この発見は、インスリンの「量」の問題ではなく「質」や「作用」の問題に研究者の目を向けさせ、**成人型糖尿病(現在の2型糖尿病)**の原因を説明する仮説として注目を集めました。
  • 考えられた因子: 当時、インスリンの働きを妨げる可能性のある因子として、以下のようなものが研究されていました。
    • インスリン抗体: インスリン治療を受けている患者で確認。
    • インスリンを分解する酵素
    • ホルモン: 成長ホルモンやグルココルチコイドなど。
    • 血清中のタンパク質や脂質

## その他の仮説と当時の状況

上記二つが主要な仮説でしたが、関連して「末梢組織でのインスリン抵抗性」という考え方も登場し始めていました。これは、インスリンが作用する筋肉や脂肪細胞といった標的組織の側で、インスリンに対する感受性が鈍くなっている(効きにくくなっている)のではないか、という考え方です。

この「インスリン抵抗性」の概念は、「全身循環因子の異常」説と密接に関連しながら、後の研究で2型糖尿病の核心的な病態として確立されていくことになります。

## 結論

1969年頃は、糖尿病研究における大きな転換期でした。若年性糖尿病(1型)については**「膵臓の局所的異常(インスリン欠乏)」説が確立されていましたが、成人型糖尿病(2型)については、測定技術の進歩によって「全身循環因子の異常」説や、それに続く「インスリン抵抗性」の概念が非常に有力な仮説として浮上してきた時代**と言えます。

(Gemini 2.5 Pro)