「手続の却下」と「取り下げたものとみなす(取り下げ擬制)」。どちらも**「手続きが終わってしまう・権利がなくなる」という点では似ていますが、法律上の「理由」と「プロセス」**が全く違います。
試験でも実務でも混同しやすいポイントですので、すっきりと整理しましょう!
1. 結論:一番大きな違い
一言でいうと、以下の違いがあります。
* 却下(Dismissal)
* 「形式的な不備があるから、役所として受け付けません(門前払い)」
* 行政庁(特許庁)からの処分です。
* 取り下げとみなす(Deemed Withdrawal)
* 「あなたが何もしなかったから、自分から諦めた扱いにします(意思の推定)」
* 法律の規定により、自動的にそう扱われる効果です。
2. 第18条の2「手続の却下」とは?
これは、書類の不備など形式的なルール違反が原因です。
* 不備の発生: 手数料を払っていない、様式が間違っている、など(第17条3項)。
* 補正命令: 特許庁長官から「ここを直してください」と命令が来ます。
* 無視: 指定された期間内に直さなかった(補正しなかった)。
* 却下: 「直さないなら、この手続きはなかったことにします(処分)」。
> ポイント:
> いきなり却下されるわけではなく、**必ず「補正命令(直すチャンス)」**があります。それをスルーした結果、無効になるのが「却下」です。
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3. 「取り下げたものとみなす」とは?
これは、手続きの不備ではなく、**期限徒過(やるべきことを期限内にしなかった)**が主な原因です。
* 例: 出願審査請求を3年以内にしなかった(第48条の3第4項)。
* プロセス: 補正命令などは来ません。期限が過ぎた瞬間に、法的に**「出願を取り下げた(諦めた)」**として扱われます。
> ポイント:
> 特許庁からの処分(通知)を待たず、法律の力で自動的に権利が消滅します。
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4. 違いのまとめ(比較表)
| 比較項目 | 手続の却下 (Dismissal) | 取り下げとみなす (Deemed Withdrawal) |
|—|—|—|
| 原因 | 形式的な不備(手数料不足など) | 不作為(期限内にアクションしなかった) |
| 事前の警告 | あり(補正命令が来る) | なし(いきなり効果発生) |
| 性質 | 行政庁による**「処分」** | 法律による**「効果」** |
| イメージ | 「書類がダメだから突き返された」 | 「期限を過ぎたから諦めたと判断された」 |
| 不服申立て | 行政不服審査法による審査請求が可能 | 原則、不服申立てはできない(※救済規定がある場合を除く) |
5. わかりやすい例え(入学願書)
イメージしやすくするために、大学の入学願書で例えてみます。
* 【却下】
* 願書にハンコが押していない、受験料が足りない状態で提出した。
* 大学から「○日までに直して再提出してね」と言われたのに無視した。
* 大学側から**「じゃあ、この願書は受け取り拒否します」**と返された。
* これが「却下」です。
* 【取り下げとみなす】
* 願書は完璧に出せた(あるいは願書を出そうとしていた)。
* でも、二次試験の手続きや入学金納付を期限までにしなかった。
* 大学側は**「あ、この学生は入学する気がないんだな(辞退したんだな)」**と処理した。
* これが「取り下げとみなす」です。
どちらも結果として権利を失うことには変わりありませんが、**「書類の不備(却下)」なのか「期限のアクション忘れ(みなし取り下げ)」**なのかで区別すると覚えやすいですよ。
特に「却下」の前には**「補正命令」**というワンクッションがある、というのが試験対策上の重要ポイントです。
(Gemini)