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前向きコホート研究の例

フラミンガム研究

研究デザインの教科書に必ず紹介されているのが、フラミンガム研究。心血管病の原因(危険因子)を探る目的で実施されたそう。フラミンガム研究によって、喫煙,年齢,高コレステロール,高齢,高血圧などが危険因子として同定された。この研究の「コホート」は何だったかというと、1948年にマサチューセッツ州フラミンガム町で無作為に選ばれ参加に同意した30~62歳の住民5209人。彼らが「前向き」に追跡されて、2年ごとにフォローアップ検診として病歴聴取,身体所見,胸部X線,心電図,各種血液生化学検査が実施された。

  1. フラミンガム心臓研究 コホート研究の開始
  2. 循環器トライアルデータベース Framingham Heart Study

喫煙と肺癌の関連

喫煙と肺癌の関連を最初に疫学的に明らかにしたのは、英国の医師を対象としたコホート研究。

  1. https://scienceshift.jp/epidemiology/#heading3-4

the Rotterdam Study

喫煙が認知症やアルツハイマー病のリスク因子になるかどうかを検証した前向きコホート研究。

  1. Lancet . 1998 Jun 20;351(9119):1840-3. doi: 10.1016/s0140-6736(97)07541-7. Smoking and risk of dementia and Alzheimer’s disease in a population-based cohort study: the Rotterdam Study
  2. 紹介スライド

久山町研究

大規模認知症コホート研究 JPSC-AD

  1. JPSC-AD

JACC Study

JACC Studyと呼ばれるこの研究は、文部科学省(当時文部省)の科学研究費の助成を受け、青木國雄名古屋大学教授(当時)を中心に、多施設が協力して開始されました。このコホート研究は、約12万人の一般の方々の協力を得て、最近の日本人の生活習慣ががんとどのように関連しているかを明らかにすることを目的としています。(JACC Studyとは

多施設ぜん息コホート

目的:多施設ぜん息コホートにおけるバイオマーカーを含めた包括的な患者背景情報を活用し、組み入れ後の増悪情報を収集し、患者背景との関連を検討することで、増悪に関連する因子を同定しようとするもの

コホート:18 歳以上の成人ぜん息患者 654 名

ベースライン臨床情報:

  • 患者背景 (年齢, 性別, BMI, 喫煙歴, 発症経過, 発症年齢, 罹患年数,家族歴, ペット飼育歴, 病型 (アトピー/非アトピー))
  • 併存症 (胃食道逆流症, アレルギー性鼻炎, 副鼻腔炎, COPD, NSAIDs 過敏症, 精神疾患)、
  • 治療内容 (治療ステップ, 吸入/経口ステロイド量, 気管支拡張薬, 抗 IgE 抗体)、
  • コントロール状態 (ぜん息コントロールテスト, 治療下での重症度)、
  • 呼吸機能 (スパイロメトリー, 強制オシレーション法)、
  • 気道炎症 (呼気一酸化窒素濃度, 末梢血好酸球数・比率, 血清ペリオスチン値, 血清 TGF-β 値)、
  • アトピー素因 (血清総IgE 値, ハウスダスト・ヤケヒョウヒダニ・スギ特異的 IgE)

統計学的解析:

  • 2群間比較:増悪の有無で 2 群に分類し、2 群間で上記のベースライン臨床情報を比較し、増悪と関連する因子を抽出する。さらに、入院または救急受診の有無の 2 群間でもベースライン臨床情報を比較する。2 群間の比較は、t検定またはカイ二乗検定で行い、
  • 単変量解析:(2 群間の比較で)有意差を認めた項目については、ロジスティック回帰分析で単変量解析を行う。
  • 多変量解析に単変量解析で有意差を認めた項目から指標を選択し、多変量解析を行う。最終的に、増悪予測式と入院または救急受診予測式を作成する。 

気管支ぜん息の動向等に関する調査研究 ①気管支ぜん息患者の長期経過及び変動要因 バイオマーカーを含めたぜん息増悪因子の同定と層別化指導指針の策定 -多施設ぜん息コホートの検討から研究代表者:長 瀬 洋 之 https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/investigate/pdf/29-3-1-2_01.pdf

揚げものの摂取と冠動脈疾患リスク

  1. 揚げものの摂取と冠動脈疾患リスク Guallar-Castillón P, et al. Consumption of fried foods and risk of coronary heart disease: Spanish cohort of the European Prospective Investigation into Cancer and Nutrition study. BMJ. 2012; 344: e363.
  2. 循環器疫学サイト [疫学レクチャー] 第1回のお題: 疫学研究で「調整のしすぎ」ということはありませんか?

疫学研究で因果関係がいえるのかについて

  1. 因果関係 疫学の「考え方」

交絡の調整

  1. 交 絡 EBMのための臨床疫学入門講座

参考

  1. 出生前コホート研究マニュアル https://www.niph.go.jp/soshiki/07shougai/birthcohort/data/part1.pdf コホート研究全般に関する解説も詳細かつ実にわかりやすい。
  2. 日本の大規模コホート研究(日本疫学会)
  3. EBM実践のための医学文献評価選定マニュアル
  4. 疫学コア 症例対照研究 https://ocw.kyoto-u.ac.jp/wp-content/uploads/2010/04/2010_ekigakukoa.pdf
  5. http://www.imed3.med.osaka-u.ac.jp/c-research/c-research01.html
  6. 第3回日本栄養改善学会「実践栄養学研究集中セミナー」 2008.1.12.名古屋 最終版資料 栄養疫学の基礎① デザインと解析 国立保健医療科学院 技術評価部 横山徹爾 https://www.niph.go.jp/soshiki/gijutsu/staffs/yokoyama/etc/kaizen2008jan.pdf
  7. 勤労者における抑うつ状態と体力との関連の縦断的研究 第58巻第 4 号「厚生の指標」2011年 4 月 https://www.hws-kyokai.or.jp/images/ronbun/all/201104-3.pdf
  8. ーエビデンスを評価するための観察研究の基礎知識と2大テーマ検証への応用ー  コホートをまず決めてから、暴露因子の有無で分けている図を示していて、理解しやすい。
  9. あなたもデータに騙されています 観察研究 日本臨床麻酔学会第35回大会特別企画
  10. 薬剤疫学研究入門 そのデザインと解析 -製薬企業の臨床開発部門で働く生物統計家のために- 平成 22 年 10 月 日本製薬工業協会 医薬品評価委員会 統計・DM 部会

 

 

新たにラボを立ち上げた研究者(研究室主宰者、PI)のための民間財団助成・公的研究費情報

第一三共生命科学研究振興財団 PIセットアップ研究助成

主旨:原則として研究機関間の移動を伴って日本国内で新たに独立した研究ユニットを立ち上げるに当たり、研究ユニットセットアップ支援助成を行う。本助成は隔年に実施する。

年齢制限:②020年4月1日現在で45歳以下の研究者

詳細 2020年度PIセットアップ研究助成応募要領

 

サントリーSunRiSE 生命科学研究者支援プログラム

設立の趣旨:「SunRiSE」は、科学研究費で言えば、基盤研究Aに相当する。当然、若手研究者には、採択が厳しい研究費である。この金額の助成金を、これから研究室を立ち上げようとする、あるいは、立ち上げたばかりの研究者に支援しようとするものである。(佐藤文彦委員 (ご参考)運営委員コメント 公益財団法人 サントリー生命科学財団「サントリーSunRiSE」設立

助成対象:Principal Investigator (PI)**もしくはそれを目指す研究者を想定していますが、生命科学基礎研究者として高い志と能力を有する研究者であれば、職位、任期の有無を問いません。

年齢制限:募集年度期首(2020年4月1日)において満45歳以下の者とします。

助成金額:5年間支給します。年度ごとに10,000千円

助成対象者数:上限10名

募集期間:2020年5月11日~6月10日JST17:00

詳細:サントリーSunRiSE 生命科学研究者支援プログラム募集要領

 

上原記念生命科学財団 研究推進特別奨励金

助成金額 1件400万円
件数 10件

助成対象:医学部または薬学部において独立した研究室を立ち上げた1975年4月1日以降出生※の教授※但し、医学部(大学院医学研究科)の臨床系の教授の場合は1971年4月1日以降出生の者

申請期間:2020年9月3日締切

詳細:2020年度各種助成金の募集

アステラス病態代謝研究会 研究助成金

助成対象:特に応援したい研究者は、「個人型研究を新たに提案する研究者」、「女性研究者」、「教室を立ち上げたばかりの研究者」、「留学から戻られたばかりの研究者」、「ライフイベント(出産、育児、介護)と研究を両立させている研究者」です。

応募要項

 

東京生化学研究会 研究奨励金-Ⅱ

研究奨励金-Ⅱ : 独立して新しい研究室を立ち上げた若い研究者(原則として45歳未満)を対象に公募し、選考委員会で候補者を選考し、最終的に理事会で贈呈者を決定する(財団の目的に沿った研究テーマであれば、特にテーマに制限を設けない)。 1件150万円を計10件以内

詳細 2020年度研究助成金・研究奨励金応募要項

 

武田 報彰医学研究助成

推薦の必要性:本研究助成は財団が取り決めた推薦者による「推薦制」です。推薦者につきましては非公開としております。

助成対象:大学、研究機関で研究室立上げ3年未満で、世界をリードする医学の先端研究(基礎研究、臨床研究)に取り組まれている研究者への助成(推薦制)

詳細:武田 報彰医学研究助成

 

参考

産総額上位10財団(2010年度)(単位:千円)

  1. 上原記念生命科学財団 81,963,681(820億円)
  2. 武田科学振興財団 80,860,599 (809億円)
  3. 笹川平和財団 80,622,170 (806億円)
  4. 稲盛財団 69,767,985 (698億円)
  5. ローム ミュージックファンデーション 48,383,692 (484億円)
  6. トヨタ財団 40,356,898 (404億円)
  7. 旭硝子財団 37,455,347 (375億円)
  8. 微生物化学研究会 34,632,567 (346億円)
  9. 日本教育公務員弘済会 33,890,876 (339億円)
  10. 新技術開発財団 32,935,103 (329億円)

(参考 https://www.osaka-u.info/wp-content/uploads/2012/10/article02_1.pdf

同種移植とは

同種移植は、他人の臓器を貰う場合の用語なんですね。「同」と「他」とで一瞬紛らわしくなりました。

移植治療は大きく分けてご自分の細胞をあらかじめ採取したあとにご自身の体に戻す自家移植と、他人から(ドナーさん)移植細胞をもらう同種移植の2種類があります。(造血幹細胞移植とは~自家移植と同種移植~ 大分大学医学部腫瘍・血液内科学講座)

同種移植があるのなら異種移植もあるのかなと思ったらありました。ブタの臓器を人に移植すると、異種移植ということになります。

ヒト以外の動物の体を用いて移植や再生を行うことを異種移植という.(薬学用語解説

臨床研究法

臨床研究法とは

臨床研究は医師や研究者が勝手に行っていいものではなく、該当する法律を遵守して行うべきものです。「臨床研究法」は比較的新しくできた法律で平成30年(2018年)から施行されています。なぜ新たに「臨床研究法」が制定されたのかといえば、そのきっかけとなった研究不正事件があったからです。一番衝撃的だった事件が、あのディオバンの事案です。ノバルティス社の社員が統計解析に関与していたにも関わらずそのことは伏せられており(利益相反)、しかもデータの不適切な操作がありました(データの改ざん)。その結果として、東京慈恵会医科大学、京都府立医科大学、滋賀医科大学、千葉大学、名古屋大学が関与した複数の臨床研究の論文が全て撤回されるという、とんでもない事態になりました。このディオバン事件、その他同時期に起きていた研究不正に対する反省から生まれたのが、臨床研究法です。

臨床研究の実施の手続、認定臨床研究審査委員会による審査意見業務の適切な実施のための措置、臨床研究に関する資金等の提供に関する情報の公表の制度等を定める「臨床研究法」が平成29年4月14日に公布され、平成30年4月1日に施行されました。(厚生労働省

臨床研究法では、「特定臨床研究」が定義されており、医師がやろうとしている臨床研究が「特定臨床研究」に該当かするかの正しい判断が重要になってきます。特定臨床研究に該当する場合には、研究者が所属する機関における倫理委員会による審査も各段に厳しいものになります。

第二条 この法律において「臨床研究」とは、医薬品等を人に対して用いることにより、当該医薬品等の有効性又は安全性を明らかにする研究(当該研究のうち、当該医薬品等の有効性又は安全性についての試験が、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和三十五年法律第百四十五号。以下この条において「医薬品医療機器等法」という。)第八十条の二第二項に規定する治験に該当するものその他厚生労働省令で定めるものを除く。)をいう。
2 この法律において「特定臨床研究」とは、臨床研究のうち、次のいずれかに該当するものをいう。
一 医薬品等製造販売業者又はその特殊関係者(医薬品等製造販売業者と厚生労働省令で定める特殊の関係のある者をいう。以下同じ。)から研究資金等(臨床研究の実施のための資金(厚生労働省令で定める利益を含む。)をいう。以下同じ。)の提供を受けて実施する臨床研究(当該医薬品等製造販売業者が製造販売(医薬品医療機器等法第二条第十三項に規定する製造販売をいう。以下同じ。)をし、又はしようとする医薬品等を用いるものに限る。)
二 次に掲げる医薬品等を用いる臨床研究(前号に該当するものを除く。)
イ 次項第一号に掲げる医薬品であって、医薬品医療機器等法第十四条第一項又は第十九条の二第一項の承認を受けていないもの
ロ 次項第一号に掲げる医薬品であって、医薬品医療機器等法第十四条第一項又は第十九条の二第一項の承認(医薬品医療機器等法第十四条第十三項(医薬品医療機器等法第十九条の二第五項において準用する場合を含む。)の変更の承認を含む。以下ロにおいて同じ。)を受けているもの(当該承認に係る用法、用量その他の厚生労働省令で定める事項(以下ロにおいて「用法等」という。)と異なる用法等で用いる場合に限る。)
ハ 次項第二号に掲げる医療機器であって、医薬品医療機器等法第二十三条の二の五第一項若しくは第二十三条の二の十七第一項の承認若しくは医薬品医療機器等法第二十三条の二の二十三第一項の認証を受けていないもの又は医薬品医療機器等法第二十三条の二の十二第一項の規定による届出が行われていないもの
ニ 次項第二号に掲げる医療機器であって、医薬品医療機器等法第二十三条の二の五第一項若しくは第二十三条の二の十七第一項の承認(医薬品医療機器等法第二十三条の二の五第十五項(医薬品医療機器等法第二十三条の二の十七第五項において準用する場合を含む。)の変更の承認を含む。以下ニにおいて同じ。)若しくは医薬品医療機器等法第二十三条の二の二十三第一項の認証(同条第七項の変更の認証を含む。以下ニにおいて同じ。)を受けているもの又は医薬品医療機器等法第二十三条の二の十二第一項の規定による届出(同条第二項の規定による変更の届出を含む。以下ニにおいて同じ。)が行われているもの(当該承認、認証又は届出に係る使用方法その他の厚生労働省令で定める事項(以下ニにおいて「使用方法等」という。)と異なる使用方法等で用いる場合に限る。)
ホ 次項第三号に掲げる再生医療等製品であって、医薬品医療機器等法第二十三条の二十五第一項又は第二十三条の三十七第一項の承認を受けていないもの
ヘ 次項第三号に掲げる再生医療等製品であって、医薬品医療機器等法第二十三条の二十五第一項又は第二十三条の三十七第一項の承認(医薬品医療機器等法第二十三条の二十五第九項(医薬品医療機器等法第二十三条の三十七第五項において準用する場合を含む。)の変更の承認を含む。以下ヘにおいて同じ。)を受けているもの(当該承認に係る用法、用量その他の厚生労働省令で定める事項(以下ヘにおいて「用法等」という。)と異なる用法等で用いる場合に限る。)

先行研究を調べる方法

臨床研究を行う際に出発点となるのは「診療上の疑問」、すなわちクリニカル・クエスチョン(Clinical question)を抱くことです。Clinical questionが生じたら、今度は、それが既に誰かによって答えられていないかどうかを調べなければなりません。つまり先行研究の論文があるかどうかです。

クリニカルクエスチョンは、漠然としたものですが、それをもう少し具体的な形に落とし込んで検証可能な形にしたものが、リサーチ・クエスチョンと呼ばれます。リサーチ・クエスチョンは、いわゆるPECO/ PICOの構造を持ちます。

  • P: Patients あるいは Participants 患者 あるいは 研究への参加者
  • E: Exposure 暴露因子
  • I: Intervention 介入
  • C: Control 比較対照
  • O: Outcome イベントなどの結末

簡単に言えば、「E/IによってOがどうなるかをPとCで比較して調べる」というのがリサーチ・クエスチョンの典型です。さて話を先行研究の調べ方に戻しますと、このPECO/PICOのうちのE/IとOにあたる語句をキーワード検索に用いて検索すれば、関連論文が拾ってこれます。

先行研究を調べるためには文献データベースを検索してヒットするかどうかを見ます。また論文がヒットしたらその論文が引用している論文を調べます。最新のレビュー論文を見るのも、手っ取り早く過去の論文を調べる方法です。類似論文をもとに、それが最近のどの論文で引用されたかを検索することもWeb of Scienceを使えば可能です(つまり過去の文献から、現在の方向に向かって検索)。

先行研究をチェック

自分が抱いたクリニカルクエスチョンが既に誰かによって答えられていないかどうかを調べるためには、先行研究をチェックする必要があります。既に論文になっていればまた別のクエスチョンを考えるか、論文化された内容の先をいくクエスチョンを考えなおすことになります。一つもの問題を考えたときに、それに対する答えが得られると、また新たなその先の疑問が生じるものです。突き詰めてものを考えるようにすれば、疑問がすべて解き明かされることはそうそうないのです。

先行研究の検索で難しいのは、先行研究や類似研究が存在しない場合に、本当に存在しないという確証を得ることです。慣れていないと単に検索のやり方がまずかっただけということが十分考えられます。研究開始時には検索しても先行研究がないと思っていたのに、研究を始めて改めて検索したら実はすでに同じ研究が論文になっていたことに気付くということが起きると悲劇です。

自分が思いついた研究は、本当に誰も行ったことがない研究なのかどうか、また、先行研究があったとしても、新しい視点で再検討する価値のある領域なのかどうか、系統的に確認を取っておく必要がある。(138ページ 先行研究の調査 『臨床研究と論文作成のコツ』)東京医学社 2011年)

参考

  1. Evidnce-Based Dentistry入門 世界のエビデンスを日々の診療にいかす 角舘直樹
  2. 臨床研究と論文作成のコツ 東京医学社 2011年 先行研究の調査 138~141ページ
  3.  臨床研究アウトプット術 中外医学社 2020年 6章 研究論文を読む 先行研究サーチ法 311~318ページ

クリニカル・クエスチョン(Clinical Question; 臨床疑問)を見つける方法

臨床医が臨床研究を始めるスタートは、クリニカル・クエスチョンを抱くことです。

クリニカル・クエスチョンをどうやって見つけるか

臨床医が患者を前にして抱いた「診療上の疑問」のことをクリニカル・クエスチョンと呼びます。

目の前の患者に本当に必要な(検査)治療は何なのか、それがクリニカルクエスチョンです。その他にも、通常通り診療をしていて、予想と違う検査結果、意外な治療効果が見られた例行った治療が予想と反し無効だった症例はないでしょうか。どうしてこんな結果が出たのか?どうしてこんな効果が見られたのか、見られなかったのか?それもクリニカルクエスチョンです。診察、検査、などで患者に向き合う時間が多ければ多いほど、また注意深く結果を観察すればするほど、このような状況に出会う機会も増えます。(48ページ 臨床研究アウトプット術 中外医学社 2020年)

研究のネタを見つける一つの方法は、診療ガイドラインを読んで、エビデンスの有無や信頼性の強さを知ることです。

「clinical questions」に対するanswersには、まだevidenceが全然ないもの、evidenceはあるがまだその根拠が弱いもの、なども多い。そして、十分なevidenceがない分野こそ、「臨床研究の課題」となり得る。(119ページ 臨床研究テーマの選び方 臨床研究と論文作成のコツ 東京医学社 2011年)

クリニカルクエスチョンが浮かんだら、次にやるべきはそのクエスチョンに対する答えがすでに世の中にあるかどうかを知ることです。そのため、先行研究を検索することになります。

記事 ⇒ 先行研究を調べる方法

臨床医が臨床疑問を持ってから論文化するまでの一連の流れ

臨床医は患者さんの治療がメインなのでみながみな臨床研究をする必要はないわけです。しかし最近は特に大学においては臨床医も研究を行うことが重要視されてきているように思います。助教、講師、准教授、教授と昇進していくためには論文業績が欠かせません。もちろん臨床研究を行う理由は昇進に必要だからというだけではないのですが。

この記事では全く研究がどういうものかわからない臨床医向けに、どうやって研究テーマを見つけ、研究計画を立てて研究を実施するか、さらにそれを論文化するかという一連の流れを解説したいと思います。まず最初に、臨床研究はどんな順序でどんなステップで進んでいくものなのかを簡単に説明します。

  1. 日常の臨床において、習った通りでない、あるいは習ったことがないことに遭遇し、さまざまな疑問(臨床疑問;クリニカル・クエスチョン;Clinical Question)を抱く。
  2. PubMedなどの文献データベースにあたって、自分の疑問が既に研究報告されていないかどうか、先行研究を調べる
  3. 論文報告がないクリニカル・クエスチョンであれば、それを研究によって答えられるような「リサーチ・クエスチョン(Research Question)」の形にまとめる。
  4. 研究のデザインを考える。
  5. リサーチ・クエスチョンと研究のデザインに基づき、より具体的な研究計画書を作成する。
  6. 所属する機関の倫理委員会に研究計画書を提出して承認を得る。
  7. 必要に応じて患者さんからインフォームド・コンセントを得る。
  8. 実験を実施する。患者さんからのデータの収集、分析を行う。
  9. 論文を作成する。データの分析結果を図表にまとめ、本文を執筆する。
  10. 論文を投稿する。査読者のコメントに従い論文を改訂し、再投稿して、最終的に論文受理(アクセプト)に漕ぎ着ける。

さらに細かいステップに分けようと思えば分けられますが、だいたい上記のようなステップを考えることになります。

なぜ臨床医が研究をするのか 臨床研究の意義

論文の形に仕上げることが臨床研究の基本です。いったん文献の形となると、その表現は時空を超えます。(17ページ 第1章 臨床研究の意義 『臨床研究アウトプット術 中外医学社 2020年』

エビデンスの本質を知るには、どのようにそのエビデンスが作られているのかを知らなければいけません。そのあめに臨床研究を行う必要があるのです。(8ページ 原正彦『臨床研究立ち上げから英語論文発表まで最速最短で行うための極意 金芳堂 2017年』

クリニカル・クエスチョンをどうやって見つけるか

独立した記事に纏めました ⇒ クリニカル・クエスチョン(Clinical Question; 臨床疑問)を見つける方法

先行研究を調べる方法

独立した記事に纏めました ⇒ 先行研究を調べる方法

研究のデザインはどれを選ぶか

記事 ⇒ 臨床研究のデザイン:介入研究、観察研究、横断研究、縦断研究、前向きコホート研究、症例対照研究、ほか

多くの医学研究は観察研究である。(中略)臨床専門の学術雑誌に掲載された論文のうち約10分の9は、観察研究による研究を記したものである。

(観察的疫学研究報告の質改善(STROBE)のための声明:解説と詳細)

 

単刀直入に言います。先生個人が単一施設で行う研究デザインとしては

2群比較の観察研究

に的を絞って研究を行っていくのがよいと思います。(中略)さらに言うと、新規に患者さんをエントリーして今を起点として将来にわたってデータを取得していく前向き(prospective)研究ではなく、過去に遡って既にカルテに記載のあるデータを取得していく後ろ向き(retrospective)観察研究がより初学者向けでおススメです。

(原 正彦『臨床研究立ち上げから英語論文発表まで最速最短で行うための極意』2017年 金芳堂 41ページ)

practice gap とは?研究(成果)と臨床(実践)との間の溝

臨床研究は、日々の診療に役立てることを目的として行われています。それにも関わらず、臨床研究で得られた知見が、病院の医師たちによって直ちに受け入れられて診療に役立てられるかというと決しそんな単純に事は運ばないようです。

 

松原茂樹 編著『臨床研究と論文作成のコツ 読む・研究する・書く』で、研究と臨床との間のギャップが説明されていました。

  • せっかくの研究がしばしば生かされていない。いったい何のための研究だったのか。せっかくの貴重な研究結果が、臨床の現場で使われない。(25ページ)
  • Cochraneの主張は二つである。一つはRCTの必要性を強調したこと。もう一つは、その結果が放置されず、必要な人に利用されるようになることの重要性を説いたことである。(26ページ)
  • 研究され、その論文が必要な人に届けられ、読まれたとしても、適切に使わなければ、どうしようもない。(26ページ)
  • 研究をする人たちは新しいことが好きである。逆に実践する人は、そうそう毎日新しいことがあっては大変である。むしろあまり変わらない日々が重要である。(中略)研究者は新しいものにより批判的に、実践者は古いものにより批判的になる立場がもとめられる。(29~30ページ)

引用元:『臨床研究と論文作成のコツ 読む・研究する・書く』論文を読む 名郷直樹

 

 

プラクティス・ギャップ(Practice Gap)とは

A professional practice gap is the difference between a desirable or achievable state of practice and current reality. For example, “Current guidelines recommend X, but this is not commonly achieved in practice,” describes a practice gap. (エモリ―大学医学部)

 

参考

 

  1. Closing the Clinical Gap: Translating Best Practice Knowledge to Performance with Guidelines Implementation Lisa E. Ishii, MD, Published March 5, 2013  https://doi.org/10.1177/0194599813481203 本文有料 While thousands of clinical practice guidelines are in existence, a clinical gap exists between knowledge and clinical performance.
  2. What is a “Gap in Care?”

臨床研究のデザイン:介入研究、観察研究、横断研究、縦断研究、前向きコホート研究、症例対照研究、ほか

基礎生物学の研究をやっているときには、研究のデザインをわざわざ考える必要もなかったのですが、臨床研究の場合には、人を対象とするため研究のデザインにはいろいろな制約が生じることになり、典型的な研究の型というものが存在します。臨床研究は大きく2つにわけるなら、介入研究と観察研究に分けられます。基礎生物学の研究は、あえていうならほとんどが介入研究だったということになるでしょう。つまり実験動物を「対照群」と「実験群」とに分けて薬剤の効果を調べたり、遺伝子を破壊した効果を調べたりしていたわけです。ヒトを対象とする研究に比べれば動物を使った場合に倫理的な問題がほとんどないため、介入研究が一般的だったわけです。もちろん、ウニの発生をひたすら観察するといった、「観察研究」も当然あるわけですが、現代の生命科学研究ではメカニズムを調べないとなかなか良い研究だとみなされないため、マイナーな存在になっていると思います。

余談はさておき、臨床研究の種類を纏めておきます。研究のテーマから考えるか、研究のデザインから考えるか、どちらかといえば、まずは研究のテーマありきでしょう。日常の診療から生まれた素朴な疑問すなわちクリニカル・クエスチョンを、研究の対象となりえるような構造化されたリサーチ・クエスチョンにする際に、研究のデザインを考えることになります。

臨床研究の場合、研究テーマはいくつかのパターンに大きく分けて考えることができます。まずひとつは、「要因」と「アウトカム」との関係を調べること。例えば、何が原因で病気になるのか、予後予測因子が何か、といったことです。もうひとつが、治療や予防法の効果を調べること。どっちの治療が優れているのか、といったことです。臨床の目的がそもそも、病気の原因を知り、その治療法を考えることなので、この2つがメジャーな研究テーマになります。そのほかには、病気や診療の実態を調べる「記述研究」があります。例えば、川崎病を発見した川崎博士の症例報告は、このジャンルに分類されます。

  1. Infantile Acute febrile Muco-cutaneous lymph node syndrome: clinical observations of 50 cases. [英文抄録付き日本語論文] Jpn. J. Allerg. 1967; 16: 178–222. 英訳版 Pediatr Infect Dis J, 2002; 21(11):1–38(PDF)

また、診断法を評価する研究というものもあります。要因とアウトカムとの関係を調べる研究のデザインとしては、コホート研究(前向きコホート研究、後ろ向きコホート研究)が王道ですが、横断研究や症例対照研究も使われます。治療や予防法の効果を調べる研究は、介入研究が王道ですが、コホート研究も使われます。

記述研究 横断研究 コホート研究 症例対照研究 介入研究
病気や診療の実態
要因とアウトカムとの関係
治療・予防法の効果
診断法の評価

(参考:福原俊一『臨床研究の道標第2版下巻50ページ』

さて、研究の目的が決まったら次に研究のデザインを考えるわけですが、研究の型は上の表のようにいくつかに分類されており、その分類の基準となるのは、「介入」の有無(介入研究観察研究科)、「比較対照」の有無(分析的観察研究か記述研究か)、要因とアウトカムを一度に測るのか(横断研究)、時間的に異なるのか(縦断研究)。縦断研究の場合には、研究を始める時点でアウトカムが生じているか(後ろ向き研究)、それともこれからアウトカムが発生するのか(前向き研究)が分類のポイントになります。

  1. 福原俊一『臨床研究の道標第2版下巻』18ページ図5-1

研究の流れ

  1. Identification of research problem
  2. Carrying out a literature review
  3. Formulating the research question / research objective
  4. Proposal writing
  5. Institutional Review Board (IRB) approval and ethical consideration
  6. Data collection
  7. Data entry, cleaning, and management
  8. Data analyses
  9. Research dissemination

参考:INTRODUCTION TO CLINICAL RESEARCH FOR RESIDENTS 103 page PDF

臨床研究は、「介入」の有無により、介入研究(実験研究)と観察研究に大別されます。

 

介入研究

介入という言葉は、日常用語の意味、医師が良く使う意味、臨床研究の分類のために定義された意味の3つくらいの意味があるので注意を要します。日常用語としての「介入」は、割って入って何かをやることです。アメリカがベトナムに軍事介入した結果、ベトナム戦争が起きたといった具合です。医師が日常用語として使う「介入」は、患者に対して治療行為を行うことです。例えば、リハビリテーション治療介入を行ったり。そして3つ目が、臨床研究の分類としての介入研究です。「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」では次のように定義されています。

介入とは:

研究目的で,人の健康に関する様々な事象に影響を与える要因(健康の保持増進につながる行動,傷病の予防,診断や治療のための投薬・検査等)を制御する行為を行うこと.また,研究目的で実施される「通常の診療を超える医療行為」も含まれる.日本腹部救急医学会

この定義の前半部分は、傷病の治療方法,診断方法,予防方法,その他の研究対象者の健康に影響を与える要因に関して,作為又は無作為の割付けを行うことなどが含まれます。つまり、対照群と実験群とに分けて何かすればそれはすなわち介入というわけです。対照群を設けず単一群(シングルアーム)に特定の治療方法を割り付ける臨床研究も介入研究とみなされることになっています。

  1. 日本外科学会学術集会への演題応募における倫理的手続きに関するQ&A【令和元年7月9日改訂版】
  2. <介入の意味> 介入になる場合:対照群の無い単一群(シングルアーム)に特定の治療方法、予防方法など対象者の健康に影響を与えると考えられる要因を設定する場合も含まれます。 “通常の診療を超える医療行為”に該当しない場合でも、研究目的他の治療方法の選択を制約するか、研究計画書に基づいて作為又は無作為の割り付けを行うなど“制御”すれば「介入」 介入にならない場合:、研究目的で、診断及び治療のための投薬や検査等に関して“制御”することなく、その転帰や予後等の診療情報を収集するのみであれば、前向き(プロスペクティブ)に実施する場合も含めて「介入」を伴わない研究、すなわち観察研究

通常の診療を超える医療行為とは、

通常の診療を超える医療行為とは:

未承認医薬品未承認医療機器の使用,既承認医薬品・医療機器の承認等の範囲(効能・効果,用法,用量等)を超える使用,その他に医療保険の適応となっていない新規の医療行為を指す.即ち,既承認医薬品や既承認医療機器の適応外使用,医薬品の過量投与が含まれる.(日本腹部救急医学会

つまり、臨床現場での日常会話で、「治療介入」という言葉がありますが、別に、手術したからといって必ずしも介入とはならないわけです。通常の診療の範囲での手術であって、患者ごとに割付け(手術のあり、なし)などをしていないのであれば、その患者さんの経過についての研究を前向きに行ったとしても、介入研究とは呼ばないことになります。

 

侵襲を伴う研究

研究のデザインとは趣旨がズレますが、「介入研究」と「侵襲を伴う研究」の定義や区別は、「特定臨床研究」に該当するかどうかや、インフォームドコンセントの取り方などにも影響する重要なことなので、侵襲とは何かを理解することも大事です。

侵襲の定義:

あくまで研究目的で行われる,穿刺,切開,薬物投与,放射線照射,心的外傷に触れる質問等によって,研究対象者の身体又は精神に傷害又は負担が生じること(日本消化器病学会

 

「軽微な侵襲」の例:

  • 研究目的のみの少量の採血(ただし、年齢や体格によっては少量でも侵襲になり得る)
  • 研究目的で実施する単純X線撮影
  • 造影剤を使用しないMRI 検査(ただし、小児や妊婦においては画像検査そのものが侵襲に相当する可能性がある
  • 診療目的での穿刺,切開,採血等に、研究目的で採取量を上乗せすること

 

  1. 研究倫理Guide No.3 Oct 2009 侵襲性を有する研究とは何か 「侵襲」の2つの意味

 

介入研究と侵襲を伴う研究との違い

侵襲を伴う研究が全て介入研究というわけではありません。侵襲+ー、介入+ーの組み合わせで、4通りがあります。

 

特定臨床研究

臨床研究法」の対象となる研究は、「特定臨床研究」と呼ばれます。特定臨床研究に該当するかどうかの判断は、臨床研究法の対象となるかどうかにかかわるため大事です。特定臨床研究とは、介入研究の中でも特に、

特定臨床研究とは:

医薬品等を人に対して用いることにより,当該医薬品等の有効性又は安全性を明らかにする研究」であり,「医薬品等製造販業者又はその特殊関係者から研究資金等の提供を受けて実施する臨床研究」または「未承認又は適応外の医薬品等を用いて実施する臨床研究」のいずれかに該当する研究(臨床研究の実践知 [第15回] 臨床研究法の適用範囲と特定臨床研究の流れ 連載 有吉 恵介 医学界新聞

と定められています。

 

観察研究は、比較のための対照の有無により、分析的観察研究と記述研究とに分類されます。分析的観察研究はさらに、暴露とアウトカムを観察するタイミングにずれがあるかどうかで横断研究(同時に観察)と縦断研究(暴露とアウトカムの間には時間的な距離がある)に分かれます。横断研究の場合は、暴露とみなした因子とアウトカムとみなした因子の間に因果関係があるかどうかはわかりません。因果関係が予想の逆ということもあり得ます。

  1. 「侵襲」「介入」の例

 

RCT ランダム化比較試験

臨床試験ではRCTが一番強いエビデンスだと言われています。RCTというと仰々しいですが、動物実験など基礎系の生物実験をやる身としては、自分が今までやっていた普通の実験がまさにRCTということになりましょう。対象がヒトじゃないだけで。

RCTの場合にはCONSORTという文書にまとめられた指針を守ることが大事です。

  1. CONSORT 2010声明ランダム化並行群間比較試験報告のための最新版ガイドライン

RCTの短所

RCT(ランダム化比較試験)が、ゴールドスタンダード(黄金律)として持ち上げられるのですが、実際にはRCTにも欠点があります。それは患者を組み入れる基準が厳格なため、ある特定の患者群における結果でしかなく、実際にリアワールドにおいて多様な臨床像を示す患者さんたちにそのまま当てはまるかどうかはわかないという点です。言い換えるなら、「外的妥当性」が低いのがRCTの短所であるともいえます。RCTが行われたからおしまいとはならず、RCTの結果を踏まえてリアルワールドデータを用いた研究によるエビデンスの構築が望まれるのです。例えば、糖尿病治療薬SGLT2阻害薬が腎保護作用を持つという結論がRCTにより得られましたが、その後、リアルワールドデータ(RWD)においてもそれが確かめられました。つまり、RCTとRWDは互いを補完する関係にある研究デザインだと言えます。

観察研究

観察研究というのは、臨床研究を大きく2つに分けた場合のタイプのうちの1つで、介入研究と観察研究というくくりになります。

観察研究を行う場合の指針としてSTROBEというものが制定されています。STROBEとは、 Strengthening the Reporting of Observational Studies in Epidemiologyの略です。

多くの医学研究は観察研究である。(中略)臨床専門の学術雑誌に掲載された論文のうち約10分の9は、観察研究による研究を記したものである。

(観察的疫学研究報告の質改善(STROBE)のための声明:解説と詳細)

  1. 観察的疫学研究報告の質改善(STROBE)のための声明:解説と詳細 原文は英文ですが、それの全訳および解説です。
  2. 疫学における観察研究の報告の強化(STROBE声明):観察研究の報告に関するガイドライン

 

横断研究

「横断研究」という研究デザインでは因果関係がわからないことを納得するために、身近な例を考えてみましょう。本か何かで例に挙げられていたのですが、テレビを近くで見ている人は目が悪くなるという仮説を考えます。横断研究により、テレビを近くで見ているかどうかと、目が悪いかどうかを調べたとしましょう。その結果、確かに眼が悪い人ほどテレビを近くで見ていたとという結果が得られたとします。しかしこの結果の解釈は、目が悪いからやむを得ずテレビに近づいてみていたのか、それとも、テレビを近くで見ていた結果として目が悪くなったのかは全くわかりません。

 

縦断研究

暴露群と非暴露群とを一定期間観察して、アウトカムの有無を調べるものを、縦断研究の中でも特にコホート研究といいます。コホートというのはある特徴・条件を満たす集団のことです。コホート研究は「前向き」コホート研究が多いため、単にコホート研究というと前向きコホート研究のことを指すような言葉遣いがなされることが多いようです。しかし実際には、後ろ向きコホート研究というものも存在します。

  1. コホート研究 cohort study
  2. Introduction to study designs – cohort studies
  3. What is a cohort study in medical research? Medical News Today
  4. Indian J Dermatol. 2016 Jan-Feb; 61(1): 21–25. doi: 10.4103/0019-5154.174011 PMCID: PMC4763690 PMID: 26955090 Methodology Series Module 1: Cohort Studies Maninder Singh Setia
  5. ケースコホート研究の理論と統計手法野間 久史 統計数理(2014)第62巻第1号25–44c©2014統計数理研究所
  6. サンプリングとコホート研究,ケース・コントロール研究 企画/コホート研究とケース・コントロール研究―研究デザインの最近の動向― 薬剤疫学Jpn J Pharmacoepidemiol,18�2� Dec 2013:95

 

前向き研究と後向き研究の言葉の定義

研究の起点が過去のものを後ろ向き研究と呼びます。

前向きと後向きの違いは、研究対象となる患者の観察が始まった時点(起点)の違いだけである(図4-4)。(『できる!臨床研究 最短攻略50の鉄則』康永秀生 著 60ページ)

 

教科書によってはやや異なる言葉遣いで説明しています。

「前向き」と「後ろ向き」の違いは、研究を始めた段階ですでに結果が起きているか否かだよ。(『ゼロからはじめる 臨床研究論文の読み方 浦島充佳 編著』40ページ)

つまりは暴露もイベントも過去と考えれば良いのでしょう。

 

前向き、後ろ向きの用語の意味の混乱

前向きといえば前向きコホート研究であったり、後ろ向きといえば、症例対照研究を指すつもりで使われることがあります。しかし厳格に言えば、コホート研究にも前向きと後ろ向きの2者があり、症例対照研究であっても2通りあります。そのため、これらの言葉が使われているときには、何を指しているのかを意識する必要があります。

われわれは研究を単純に「前向き(prospective)」とか「後ろ向き(retrospective)」と呼ぶことを勧めない。なぜなら、これらの用語の定義が明確ではないからである。
第1の使われ方では、前向きという用語はコホート研究を意味し、後ろ向きという用語はケース・コントロール研究を意味する。
第2の使われ方は、前向きコホート研究と後ろ向きコホート研究の区別であり、研究のアイデアが出た時期とデータ収集のタイミングにより区別している。
第3の使われ方は、前向きケース・コントロール研究と後ろ向きのケース・コントロール研究の区別であり、ケースが選択された時点で関心のある曝露についてのデータが存在するかどうかにより区別している。これらの用語の使われ方に対して、コホート研究を記述する際には「同時的(concurrent)」と「歴史的(historical)」で代用しようという意見もある。STROBEでは「前向き」あるいは「後ろ向き」という用語は使わず、さらに、その代用である「同時的」や「歴史的」という用語も用いていない。われわれは、著者がこれらの用語を使う際にはいつでも、これらの用語をどのような意味で用いたのかを定義して用いることを推奨する。(観察的疫学研究報告の質改善(STROBE)のための声明:解説と詳細

 

後ろ向きコホート研究

たまに外科領域の臨床研究で、症例マッチングなどを行って2群間のアウトカムを比較する研究を「症例対照研究」と銘打って論文化しているモノもありますが、私の理解ではそのネーミングは誤りかと思います。その典型例がこの研究です。タイトルには、胃癌に対する腹腔鏡手術VS開腹手術の長期成績を比較したケースコントロール・ケースマッチド研究となっていますが、術式選択は「アウトカム」ではなく、要因です。要因の有り無し(腹腔鏡か開腹か)で症例をマッチさせて、アウトカムを比較するわけですから、これは過去起点コホート研究ということになります。(研究デザインの「型」smallaki1003.sakura.ne.jp

始めて医師が臨床研究を行う場合のお勧めの研究デザインが、この後ろ向きコホート研究なんだそうです。

単刀直入に言います。先生個人が単一施設で行う研究デザインとしては

2群比較の観察研究

に的を絞って研究を行っていくのがよいと思います。(中略)さらに言うと、新規に患者さんをエントリーして今を起点として将来にわたってデータを取得していく前向き(prospective)研究ではなく、過去に遡って既にカルテに記載のあるデータを取得していく後ろ向き(retrospective)観察研究がより初学者向けでおススメです。

(原 正彦『臨床研究立ち上げから英語論文発表まで最速最短で行うための極意』2017年 金芳堂 41ページ)

  1. Terminology 101: Retrospective cohort study design. Apr 01, 2014 By Maher M. El-Masri, RN, PhD
  2. Retrospective cohort study From Wikipedia
  3. Literature Review: Observational Retrospective Cohort Studies

症例対照研究

症例対照研究とは、何かイベントが起った集団を「症例(ケース)」とし、同様にat riskな集団にも関わらずイベントが起らなかった集団を「対照(コントロール)」とし、そのイベントのリスク要因などを解析する研究を指します。(研究デザインの「型」smallaki1003.sakura.ne.jp

ケース・コントロール研究では,ケースの定義は比較的分かりやすいが,どうすればそのケースに適切なコントロール選択が可能かがいつも問題となる.しかし,コントロールは「もし疾病を発生すれば,ケースとしてその研究に登録されるであろう集団」から選択すれば妥当であるので,ケースが発生する背景にある仮想的なコホートを想定すれば,ケース・コントロール研究は常にコホート研究の一部と考えることができる(Rothman and Greenland, 1999).(疫学理論の発展と計量生物学 佐藤俊哉

2段階ケース・コントロール研究

症例対照研究はそのまま英語でケース・コントロール研究とも呼ばれます。

  1. 疫学理論の発展と計量生物学 佐藤俊哉

参考

  1. 人を対象とする医学系研究に関する倫理指針 平成26年12月22日 (平成29年2月28日一部改正) 文 部 科 学 省  厚 生 労 働 省
  2. 医学界新聞 研究デザインの選び方(小山田隼佑)連載2019.06.03
  3. )福原俊一.臨床研究の道標 第2版〈下巻〉.特定非営利活動法人健康医療評価研究機構;2017.
  4. 特定臨床研究の該当性に関するチェックリスト(厚労省)
  5. 第3話 研究編 「研究デザインって何?」 〜研究デザインについて〜 神奈川県臨床作業療法大会
  6. 臨床研究:実戦的 基礎知識 国立国際医療研究センター「初期臨床で身につけたい臨床研究のエッセンス」Vo l . 2第4章より抜粋・改変
  7. 国立研究開発法人国立国際医療研究センターにおける臨床研究に係る標準業務手順書第1.0版文書管理番号:CCS第0002号国立研究開発法人国立国際医療研究センターにおける臨床研究に係る標準業務手順書2016年8月24日第1.0版作成国立研究開発法人国立国際医療研究センター臨床研究センター
  8. INTRODUCTION TO CLINICAL RESEARCH FOR RESIDENTS 103 page PDF
  9. Module 4 – Epidemiologic Study Designs 1: Cohort Studies & Clinical Trials 非常にわかりやすい図を用いた解説

関連書籍

  1. Introduction to Health Research Methods: A Practical Guide by Kathryn H. Jacobsen | Feb 20, 2020
  2. Introduction to Clinical Research for Medical Students, Residents and Fellows. Tetyana L. Vasylyeva. 2012/2/1 アマゾン在庫切れ
  3. Introduction to Research and Medical Literature for Health Professionals 5th Edition March 25, 2019 by J. Glenn Forister (Author), J. Dennis Blessing (Author)
  4. Designing Clinical Research Fourth Edition July 10, 2013by Dr. Stephen B Hulley MD MPH (Author), Steven R Cummings MD (Author), Warren S Browner MD MPH (Author), Deborah G Grady MD MPH (Author), Thomas B Newman MD MPH (Author)
  5. Essential Concepts in Clinical Research: Randomised Controlled Trials and Observational Epidemiology 2nd Edition by Kenneth Schulz PhD MBA (Author), David A. Grimes MD (Author) October 17, 2018
  6. Publishing and Presenting Clinical Research Third Edition by Warren S. Browner MD (Author) May 15, 2012
  7. How to Read a Paper: The Basics of Evidence-based Medicine and Healthcare 6th Edition
  8. Fundamentals of Clinical Trials 5th ed. 2015 Edition by Lawrence M. Friedman (Author), Curt D. Furberg (Author), David L. DeMets (Author), David M. Reboussin (Author), Christopher B. Granger (Author)
  9. The Handbook of Clinical Trials And Other Research | Alan Earl-Slater | 2002/1/31