特001条-018条 総則 の攻略

特許法1条〜18条(手続総則)は、いわば「試験のOS」のような部分です。ここを単なる暗記ではなく、「なぜそのルールがあるのか?」という視点で整理すると、一気に視界が開けます。


狙われどころギュッと凝縮してまとめました。


1. 手続総則(1条〜18条)の全体像
このゾーンは、特許庁という行政機関に対して「誰が」「いつ」「どうやって」手続をするかの基本ルールを定めています。


四法横断のポイント
結論から言うと、特許法1条〜18条の規定のほとんどは、実案・意匠・商標で準用(そのまま適用)されます。
* 例外: 1条(目的)や2条(定義)は各法で異なりますが、3条以降の手続ルールは基本的に「四法共通」と考えてOKです。
* 注意: 商標法のみ、不変期間の延長(4条)などで独自の規定がある場合がありますが、まずは特許法を軸に固めるのが鉄則です。


2. 短答頻出!重要条文の深掘り整理
① 期間の計算と延長(3条・4条・5条)
短答では「いつまでに出せばセーフか?」が秒単位で問われます。
| 条文 | 役割 | 短答で狙われるポイント |
|—|—|—|
| 3条 | 期間の計算 | 初日不算入の原則。「発送日」か「到達日」か。 |
| 4条 | 期間の延長 | **「職権」**または「請求」で延長可。法定期間と指定期間の違い。 |
| 5条 | 遠隔地等の期間 | 交通不便な場所の人のための追加期間。 |
② 手続の能力(7条〜16条)
「誰が手続できるか」というルール。民法の知識を微妙に修正しているところが狙われます。
* 7条(未成年者等):
   * 原則:法定代理人によらなければならない。
   * 例外(重要): 未成年者・成年被後見人でも、**「独立して法律行為ができる場合」**は単独でOK。
* 8条(在外者の特許管理人):
   * 日本に住所がない人は、原則として「特許管理人」を通さないと手続不可。
* 9条(代理権の範囲):
   * **「特別の授権」**が必要な行為(取下げ、放棄、不服申立ての取下げなど)を暗記!
   * 「これらを行うには特別の委任が必要である。◯か✕か?」という形式で頻出。
* 14条(複数当事者の代表):
   * 原則:各人が全員を代表する(個別代表)。
   * 例外: 取下げや放棄などは、全員で行わなければならない(全員一致)。
③ 手続の補正と却下(17条・18条)
ここが最も「消去法の根拠」になる場所です。
| 条文 | 内容 | 覚え方・ポイント |
|—|—|—|
| 17条1項 | 手続の補正 | 原則として、事件が係属している間は補正できる。 |
| 17条3項 | 補正命令 | 方式違反(お金払ってない、印鑑忘れた等)に対し、長官が「直せ」と言う。 |
| 18条1項 | 手続の却下 | 17条3項の命令を無視した時、長官は手続を**「却下することができる」**(義務ではない)。 |


3. 「覚える」から「使う」への変換:短答攻略の軸
短答試験で迷わないための「思考の補助線」を授けます。
* 「主語」と「語尾」をチェックする
   * 「特許庁長官は……することができる」なのか「しなければならない」なのか。
   * 18条の却下は「できる(任意的却下)」です。「しなければならない」とあったら即バツです。
* 「不利益な行為」は慎重に
   * 9条(特別授権)や14条(全員一致)は、**「それをやったら権利が消えてしまうような行為」**に制限をかけています。
   * 「取下げ」「放棄」という言葉が見えたら、このルールを思い出してください。
* 「方式」と「実体」を分ける
   * 17条は「形式的な不備(方式)」の話です。中身(特許性があるか等)の話ではありません。


次のステップ:実践編
この整理をもとに、一度お手元の過去問(枝別過去問集など)の「手続総則」のページを開いてみてください。
「あ、これは9条の特別授権を聞いてるな」「これは18条の任意的却下の話だ」と、条文の番号が浮き上がって見えてくるはずです。

「特許法17条の2(要旨変更・補正)」は、短答試験だけでなく論文試験でも合否を分ける超重要条文です。
ここがややこしいのは、**「いつ(時期)」「どこまで(範囲)」「何のために(内容)」**という3つの軸が、手続の進行状況によって細かく変化するからです。

混乱の元となる「要旨変更」の考え方と、補正のルールを整理します。


1. 補正の全体像:3つのハードル
17条の2を攻略するには、以下の3つのステップで考えるのがコツです。
① 時期の制限(いつできるか?)
* 原則:**「事件が係属している間」**ならいつでも可能。
* 制限:審査官から「拒絶理由通知」が届いた後は、指定された期間内にしかできません。


② 範囲の制限(どこまで直せるか?)
* 「新規事項の追加禁止」(17条の2第3項):これが現代の「要旨変更」防止の核心です。
* 最初に出した明細書、特許請求の範囲、図面の**「範囲内」**でしか直せません。これを超えると「要旨変更」として拒絶・却下の対象になります。


③ 内容の制限(どう直すか?)
* 「最後の拒絶理由通知」や「拒絶査定不服審判」の段階では、さらにルールが厳しくなります。
* 「限定的減縮」(請求項を絞る)など、特定の目的のみ許可されます。


2. 短答で狙われる!「最後」の補正の特殊ルール
短答試験で最も受験生を苦しめるのが、**「最後の拒絶理由通知」**を受けた後の制限です。ここでは審査のやり直しを防ぐため、以下の「3段構え」の制限がかかります。
| 制限内容 | 根拠条文 | 短答での狙われどころ |
|—|—|—|
| 目的制限 | 17条の2第2項 | 誤記の訂正、明瞭化、限定的減縮等に限る。「広げる」補正はNG。 |
| 新規事項追加禁止 | 17条の2第3項 | 常に適用。願書添付書類の範囲を超えてはいけない。 |
| 独立特許要件 | 126条1項準用 | 補正後の請求項が、単独で特許をとれる状態(進歩性等がある)でなければならない。 |


【ポイント】
「最初」の拒絶理由への対応なら「独立特許要件」は問われません。「最後」の時だけ問われる、という違いがよく出題されます。


3. 四法比較:補正・要旨変更のルールの違い
ここは「横断整理」が最も効く部分です。
| 法域 | 補正の考え方 | 特徴 |
|—|—|—|
| 特許法 | 新規事項追加禁止 | 明細書等の範囲内ならOK。超えると拒絶理由。 |
| 実案法 | 非常に限定的 | 登録が早いため、補正できる時期が極めて短い。 |
| 意匠法 | 要旨変更禁止 | 意匠(見た目)の本質的な部分を変える補正は却下される(特許の新規事項より厳しいニュアンス)。 |
| 商標法 | 要旨変更禁止 | 商標そのものや、指定商品・役務の範囲を広げる補正は要旨変更として却下。 |


【ここが試験に出る!】
* 特許では「要旨変更」という言葉は、主に「新規事項の追加」を指す実務用語として使われますが、**意匠・商標では「要旨変更=補正却下」**という流れが明確に条文(意匠17条の2、商標16条の2)に規定されています。
* 「特許では補正が却下されたらどうなるか?(163条など)」と「意匠で補正が却下されたらどうなるか?」を比較させる問題は定番です。


4. 迷わないための「軸」
17条の2で迷ったら、以下の「審査官の気持ち」になって考えてみてください。
* 「後出しジャンケン」を許さない: 最初に出した書類に書いてないことを後から追加するのはダメ(新規事項追加禁止)。
* 審査の蒸し返しを許さない: 一度結論(最後)を出した後に、全然違う発明に書き換えて「もう一回審査して」と言うのはダメ(目的制限・独立特許要件)。
次のステップ:暗記のコツ
この17条の2を理解したら、次は**「17条の3(要約書の補正)」や「17条の4(優先権主張に伴う補正)」**をセットで見てください。
特に要約書は「いつでも補正できるが、要旨変更の対象にはならない(=特許の有効性に影響しない)」というユニークな性質があります。

(Gemini)